波面コーディングを有するズームレンズシステム
光線角度の範囲にわたって入射光線を撮像するズームレンズシステムおよび方法を開示する。入射光線は、少なくとも位相によって特徴付けられる。ズームレンズシステムは、光軸を含み、少なくとも光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)によって特徴付けられる。ズームレンズシステムは、少なくとも2つの異なる焦点距離値の間で選択可能な可変焦点距離を有する少なくとも1つの可変光学素子を含む、光軸に沿って配置される光学群を含む。光学群はまた、波面コーディング素子も含む。2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、光線角度の範囲に対応する複数のMTFが、波面コーディング素子のない対応システムよりも、誤焦点様の収差に対して感度が低いように、波面コーディング素子は、少なくとも入射光線の位相を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/779,712号(2006年3月6日出願、名称「Zoom Lens Systems With Wavefront Coding」)の優先権の利益を主張するものであり、これはその全体を参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
現代のズームレンズシステムは、撮像システムの変化が、光軸に沿った光学素子の運動を介して達成されないという点で、従来のズームレンズシステムとは異なる。むしろ、現代のズームシステムにおける特定の光学素子の光学的性質は、光軸に平行ではない平面での電圧、圧力、移動、または回転の適用を通して変化する。現代のズームレンズシステムにおける可変光学素子の使用の一例は、従来のズームレンズシステムにおける1枚のレンズを、同じ物理的位置で可変光学レンズと交換することである。
【0003】
しかし、1つ以上の光学素子の光学的性質の変化を介して変化する現代のズームレンズシステムは、撮像性能を制限する働きをする収差をもたらす場合がある。このような収差は、撮像システムにおける光学素子の数が減少するにつれて、悪化する場合がある。このような現代のズームシステムの性能を制限する場合がある収差は、例えば、画像曲率、色収差、球面収差、非点収差、コマ収差、および加工、組立、および温度関連収差を含む。
【0004】
類似構成要素が様々な図の全体を通して類似参照番号によって示されている図面を参照すると、図1および2は、従来技術の例である、4群の従来のズームレンズシステムを図示する。この従来のズームレンズシステムでは、光学素子の移動は、概してシステムの光軸に平行である。図1に示されるような従来のズームレンズシステムの構成10では、焦点距離f1、f2、f3、およびf4をそれぞれ有する第1〜第4の光学素子12、14、16、および18の組み合わせは、像平面20で鮮明な像を形成するように構成される。破線は、構成10の光軸21を示す。従来のズームレンズシステムの構成10に進入する周辺光線22は、像平面20および光軸21の交差点で集束される。
【0005】
続けて図1を参照すると、第1および第2の光学素子12および14は、概して、構成10での従来のズームレンズシステムの倍率を制御すると考えることができる一方で、第3および第4の光学素子16および18は、概して、像平面20の位置を制御すると考えることができる。光学素子14は、倍率を制御する光学サブシステムとして定義される、「バリエータレンズ」または「バリエータ」と呼ぶことができる。光学素子16は、焦点を制御する光学サブシステムとして定義される、「補償器」と呼ぶことができる。場合によっては、特に少数の光学素子で形成されるズームレンズシステムでは、所与のサブシステムが、バリエータおよび補償器として同時に働くことができる。
【0006】
図2で、従来のズームレンズシステムの代替的構成10’では、第2の光学素子14’(例えば、バリエータ)は、倍率変化を達成するよう、矢印24で示されるように、光軸21に沿って、かつ像平面20に向かって、第1の光学素子12から遠ざけられる。像平面20を第4の光学素子18に対する固定位置に保つために、第3の光学素子16’(例えば、補償器)もまた、矢印26で示されるように、光軸21に沿って像平面20に向かって移動される。このような運動の両方の組み合わせを通して、従来のズームレンズシステムの変更構成10’の倍率は、図1に示される構成10のものから変更される一方で、像平面の位置は固定されたままである。言い換えると、図1の周辺光線22よりも第1の光学素子12の縁の近くに進入する周辺光線28は、こうして光軸21がある像平面20の交差点で集束することができる。
【0007】
図1および2に図示されるように、従来技術の従来のズームレンズシステムにおけるバリエータおよび補償器の移動は、光軸に沿った空間を必要とする。つまり、例えば、第2の光学素子14がそれを通って移動して構成10’を形成しなければならない空間内に、他の光学素子が位置してはいけない。空間に対する同様の要件は、光軸に沿った光学素子の移動を必要とする従来のズームレンズシステムに共通しており、結果として、光軸に沿った従来のズームレンズシステムの長さを縮小することが困難な場合がある。
【0008】
現代のズームレンズシステムは、光軸に沿った光学素子の物理的移動の必要性を低減または排除することができ、よって、従来のズームレンズシステムと比べてシステムの全体的な長さを縮小する。しかし、このような現代のズームレンズシステムの制限は、撮像の質、サイズ、および費用のさらなる改良を抑制する。例えば、現在利用可能な現代のズームレンズシステムは、倍率および焦点を同時に変えるために少なくとも2つの作動または可変素子を必要とする。また、ある現代のズームレンズシステムは、焦点を制御するための作動システムを必要とし、これは、画像の焦点を保つために、一定数の素子が変化することを必要とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、光線角度の範囲にわたって入射光線を撮像するためのズームレンズシステムを提供する。入射光線は、少なくとも位相によって特徴付けられる。ズームレンズシステムは、光軸を含み、少なくとも光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)によって特徴付けられる。ズームレンズシステムは、少なくとも2つの異なる焦点距離値間で選択可能な可変焦点距離を有する少なくとも1つの可変光学素子を含む、光軸に沿って配置される光学群を含む。光学群はまた、波面コーディング素子も含む。2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、光線角度の範囲に対応する複数のMTFが、波面コーディング素子のない同じズームレンズシステムよりも、誤焦点様の収差に対して感度が低くなるように、波面コーディング素子は、少なくとも入射光線の位相を変化させる。
【0010】
一実施形態では、ズームレンズシステムの使用方法は、光線角度の範囲にわたって入射光線を撮像する。入射光線は、少なくとも位相を含む。ズームレンズシステムは、光軸と、少なくとも2つの異なる焦点距離値間で選択可能な可変焦点距離を有する少なくとも1つの可変光学素子とを含む。ズームレンズシステムは、少なくとも光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)および2つの異なる焦点距離値によって特徴付けられる。該方法は、少なくとも2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、光線角度の範囲に対応する複数のMTFが、形状および大きさにおいて実質的に同様となるように、入射光線の位相を変更するステップを備える。
【0011】
一実施形態では、ズームレンズシステムは、光軸を含む。ズームレンズシステムはまた、光軸に沿って配置される光学群も含む。次に、光軸は、少なくとも2つの異なる焦点距離値間で選択可能な可変焦点距離を示す少なくとも1つの可変光学素子と、波面コーディング(WFC)素子とを含む。少なくとも1つの可変光学素子は、光軸に沿って移動可能ではない。光学群はまた、光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)および少なくとも2つの異なる焦点距離値によっても特徴付けられ、可変光学素子およびWFC素子は、複数のMTFが形状および大きさにおいて実質的に同様となるように、互いに協働する。
【0012】
本開示は、下記で簡潔に説明される図面と併せて得られる次の詳細な説明を参照することにより、理解することができる。図解の明確さの目的により、図面中のある素子は一定の縮尺で描かれない場合があることを注意する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本開示では、「ズームレンズシステム」および「ズーム撮像システム」は交換可能に使用され、「可変光学素子」は、光学素子のうちの1つ以上に対する電圧および/または圧力の印加、および光学素子のうちの1つ以上の移動および/または回転などの(しかしそれに限定されない)技術を使用することによって変更可能な光学的性質(焦点距離、透過率、および屈折率などであるがそれに限定されない)を有する光学素子を包含することを目的とする。
【0014】
ある非球面光学および信号処理の使用は、ある制限を軽減することによって、現代のズームレンズシステムに改良を提供することができる。本開示は、現代のズームレンズ撮像システムの性能、費用、およびサイズを改良するためのある非球面光学の使用に関する。検出されたぼやけた画像のような光学および信号処理は、ある収差の影響を低減または排除することができる。波面コーディングに対してそのような非球面および信号処理を利用するシステムは、例えば、米国特許第5,748,371号(以降、‘371特許)第6,873,733号(以降、‘733特許)、第6,842,297号(以降、‘297特許)、第6,911,638(以降、‘638特許)、および第6,940,649号(以降、‘649特許)で説明されており、そのそれぞれは参照することにより、本願に組み込まれる。ズームレンズシステムへの波面コーディングの追加は、焦点を制御するための作動システムの必要性を排除することができ、それにより、変化させる必要のある素子の数をさらに減少し、結果として、そのようなズームレンズシステムの費用およびサイズも削減する。高い信頼性、低費用、機械公差の低減、電力消費の低減、および熱的誘導変動および色依存などの環境因子への感度の低減を伴う、丈夫なズームレンズシステムを達成することが望ましい。
【0015】
現代のズーム撮像システムの簡単な例として、図3および図4に図示される2群撮像システムを考慮する。この撮像システムは、2つの図によって示される2つの構成を有する。図3に示される構成100では、被写体110は、像平面120上で光学群111および112によって撮像される。光学群111および112の各一つは、例えば、屈折素子、回折素子、ホログラフィック素子、および可変光学のうちの1つ以上を含む。検出器(図示せず)は、像平面120に位置し、撮像された被写体を検出する。被写体110が撮像システムの光軸121(破線で示される)上にあると、光学群111および112間を通過する被写体110からの光線は、図示されるように実質的に平行である。この場合、光学群111の焦点距離f1は、被写体110と光学群111の第1の主平面125との間の距離D1(双頭矢印で示される)に等しい。同様に、光学群112の焦点距離f2は、像平面120と光学群112の第2の主平面127との間の距離D2に等しい。
【0016】
図4は、2群撮像システムの変更構成100’を示す。図4の構成100’では、被写体110’は、図3の光学群111に対する被写体110の位置とは異なる、光学群111’に対する位置にある。光学群112が、図4で図3と同じである場合、像平面120上で被写体110’を明瞭に撮像するために、被写体110’の位置は、光学群111’の焦点距離の変化を必要とする。この場合、光学群111’の焦点距離f1’は、被写体110’と光学群111’の第1の主平面125との間の距離D1’に等しくあるべきである。
【0017】
なおも図3および図4を参照すると、被写体110および110’それぞれからの周辺光線は、122および122’として示される。図3および4の構成における像平面での周辺光線は、123と示される。2群撮像システムの全体的な倍率は、光軸121から測定されるような、像平面での周辺光線角度(θim)に対する、被写体での周辺光線角度(θObj)の比によって求められる。構成100と100’とを比較する際、構成100’における被写体での周辺光線角度は、θobjからθ’objへ増加する一方で、画像での周辺光線角度θimは固定されたままである。結果として、構成100’における倍率は、構成100よりも大きい。つまり、2つの光学群のうちの1つを変え、かつ被写体距離を変えることによって、像平面の位置を変えずに2群撮像システムの倍率が変化する。
【0018】
図5および6に示される別の状況では、被写体位置が変化しない。図5のズーム撮像システムの構成150では、光学群151および152は、被写体110を撮像する。光学群151は、バリエータとして働き、屈折力(例えば、倍率)を制御する。光学群152は、補償器として働き、像平面位置(例えば、焦点)を制御する。図6は、図5に示される同じズーム撮像システムの変更構成150’を示し、この場合、被写体での周辺光線角度θobjが不変のままである一方で、画像での周辺光線角度θ’imが構成150のθimから減少するように、光学群151’および152’の性質は、図5の光学群151および152とは異なる。言い換えると、図6の構成150’では、被写体110は、図5の光学群151に対する被写体110と同じ光学群151’に対する位置にあるが、光学群151’の右側への周辺光線が一点に集まる(図5の構成150に示されるように平行であることと比べて)という事実によって示されるように、光学群151’は、縮小した焦点距離をもたらす。よって、図6の光学群152’は、光学群152’の位置に対して固定された像平面120の位置(図5の光学群152に対する像平面120の位置と比べて)を保つために、増加した焦点距離(また、あるいは、低減した屈折力)を示す。結果として、構成150’におけるバリエータおよび補償器の組み合わせは、図5に示される構成に対する類似比と比べると、θ’imを超えるθobjの比によって得られる増加した全体的な倍率を伴う、像平面120での焦点画像をもたらす。つまり、像平面120での周辺光線123’の角度θ’imが、周辺光線123の角度θimよりも減少する一方で、被写体からの周辺光線122の角度θobjが一定のままであるため、図6の構成150’の全体的な倍率は、図5に示される構成150よりも増加する。よって、バリエータ(つまり、f1からf1’)および補償器(つまり、f2からf2’)の両方の焦点距離の変化により、固定距離での被写体の焦点画像の倍率が変化した。倍率の変化を達成するために、図5の光学群151および152と比べると、光学群151’および152’は、図6の被写体110および像平面120に対する光軸121に沿った物理的位置において変化しなかったことに注目する。
【0019】
よって、図3〜6は、同時に結果として生じる画像の焦点を保ちながらズーム撮像システムの倍率を変えるために、ズーム撮像システム中の構成要素の焦点距離に対する変更を利用することができることを図示する。倍率の変化をもたらすための光学素子の焦点距離の変化の利用は、例えば、電圧、圧力、移動、または回転を変更することによる、現代の光学素子の変動の利点を例示する。しかし、ズーム撮像システムの結果として生じる焦点距離変化はまた、生成される画像の質にも影響する場合がある。画質を低下させる場合のある光学収差もまた、焦点距離の変化によって影響される。このようなズーム撮像システムの実施例では、ズーム撮像システム内の構成要素の焦点距離が変化すると、ある基本的光学収差が変動する。特に、2種類の基本的光学収差、つまりフィールドまたは画像曲率および色収差は、このようなズーム撮像システムの性能の主な制限として働く場合がある。
【0020】
図7および8は、例示的ズーム撮像システム中の光学素子の焦点距離の変化が、このような基本的光学収差に影響を及ぼす1つの方法を図示する。図7および8は、従来の2レンズ撮像システムの2つの構成を示す。このシステムを説明するために使用される原則は、一般的な多素子の場合にも該当する。図7に示されるような2レンズ撮像システムの構成170は、各屈折率n1およびn2がある2つの光学素子171および172を含む。複数の光線180によって示されるように、これら2つの素子によって形成される画像は、湾曲像表面175上にある。像表面175の曲率の近似値は、光学素子171および172の屈折率を掛けた逆焦点距離を足すことによって、または概して、
【0021】
【数1】
によって決定することができ、式中、iは、光学素子に対応する整数であり、niは、i番目の光学素子の屈折率であり、fiは、i番目の光学素子の焦点距離である。像表面175の湾曲は、ある撮像用途では望ましくない。
【0022】
図8の変更構成170’は、光学素子171’および172’の屈折率が等しく(つまり、n1=n2)、光学素子171’および172’の焦点距離f1’およびf2’が互いのマイナスである(つまり、f1’=−f2’)、2レンズ撮像システムの特定構成を説明する。この構成では、像平面175’の曲率は、実質的にゼロであると考えてよい。図8の構成170’は、構成素子の実際の焦点距離および素子分離d(双頭矢印によって示される)によって決定される、特定の有効焦点距離を示す。素子分離dが固定されると、f1=−f2という関係からの光学素子171’および172’のいずれか一方の焦点距離のあらゆる変化は、像平面175’の湾曲をもたらす。結果として、2レンズ撮像システムの画質が低下し、撮像システムの倍率またはズーム位置の関数となる。
【0023】
図1に示されるような従来のズームレンズシステムは、個々の光学素子の焦点距離を変えることなく光軸21に沿った光学素子の移動を必要とするため、画像曲率の変化を受けないことが顕著である。そのような従来のズームレンズシステムにおける画像フィールドの近似曲率は、概して、倍率またはズーム位置が変わっても不変である。しかし、画像曲率の変化は、図3〜6に図示されるシステムのような、光軸に沿った光学素子の移動を利用しない現在利用可能な現代のズームレンズシステムにおいて発生する場合がある。
【0024】
光軸に沿った光学素子の移動を利用しない現代のズームレンズシステムにおいて遭遇される別の現象は、色収差の変動である。光軸に沿って光学素子を移動させることのない、光学素子の焦点距離の変化は、概して、システムによって示される色収差を変え、システム性能を制限する。
【0025】
図9および10は、光学素子の焦点距離の変化を伴う色収差の変化の簡単な例を図示する。図9および10は2素子レンズの2つの構成を示すものの、関与する原則は、焦点距離を変える複数の素子がある撮像システムに適用可能である。まず図9を参照すると、構成190は、光学素子191および192が近接近している(例えば、光学素子191および192間の距離が実質的にゼロである)2素子レンズシステムである。光学素子191および192は、異なる焦点距離、および一般に、異なるAbbe数またはV数を示す。周知のように、特定の光学材料のV数は、その光学材料に対する波長の関数として屈折率の変化を表す。光学素子191および192のパラメータは、概して、単色画像が最良焦点像平面で形成するように選択されるが、所与の材料の屈折率値の色依存(つまり、波長を伴う屈折率の変動)により、最良焦点の位置は、画像を形成するために使用される波長の関数となる。この効果は一般に色収差と呼ばれる。図9では、光193は、赤色照明195および青色照明197を含む。赤色照明195で形成される最良焦点画像は、赤色像平面196にあってよい一方で、青色照明197で形成される最良焦点画像は、青色像平面198にあってよい。所与の材料の屈折率が、概して波長の関数であるため、個々の光学素子の焦点距離もまた、波長の関数であり得る。波長を伴う所与の一式の光学素子に対する有効焦点距離の変化Δfは、その各V数で割った各光学素子の焦点距離の和によって、次式のように近似することができる。
【0026】
【数2】
図10に示される変更構成190’は、光学素子191’および192’のV数に対する焦点距離の比が互いのマイナスになるように(つまり、f1’/V1’=−f2’/V2’)、光学素子191’および192’のV数および焦点距離が選択される場合を図示する。パラメータのこの選択に対して、波長を伴う(各V数が有効である波長域以上)、一式の光学素子の有効焦点距離の変化Δfは、ほぼゼロである。よって、赤色照明195’および青色照明197’の両方が像平面198’で集束するように、一式の光学素子の有効焦点距離は、焦点距離およびV数の選択を介して、波長とはほぼ無関係にすることができる。しかし、構成190’における光学素子の焦点距離を不均等な割合で変更する(例えば、配置190’の全体的な倍率を変更する)と、Δfがゼロ以外になる場合があり、したがって、赤色照明195’および青色照明197’の両方が像平面198’で集束しなくなるように、色収差を再導入する場合がある。言い換えると、その中の1つ以上の光学素子の焦点距離の変動に基づく現代のズームレンズシステムは、倍率が変化すると色収差の変動を示す場合があり、したがって、低下した画質を提供する。
【0027】
図7〜10に図示される画像劣化の問題、ならびにその他の収差は、これから説明される波面コーディングを利用することによって、改善することができる。
【0028】
本開示で説明されるズームシステムは、光線角度にわたって入射光線を撮像する。このような入射光線は、ズームシステムによって撮像される波面を形成する少なくとも位相によって特徴付けられる。各ズームレンズシステムは、光軸により動作し、少なくとも光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)によって特徴付けられる。各ズームレンズシステムでは、光学群は、光軸に沿って配置され、少なくとも2つの異なる焦点距離値間で選択可能な可変焦点距離を有する少なくとも1つの可変光学素子を含む。光学群はまた、波面コーディング素子も含む。2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、光線角度の範囲に対応する複数のMTFが、波面コーディング素子のない同じズームレンズシステムよりも、誤焦点様の収差に対して感度が低くなるように、波面コーディング素子は、少なくとも入射光線の位相を変化させる。少なくとも2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、光線角度のそれぞれに対応するMTFは、形状および大きさにおいて実質的に同様である。
【0029】
波面コーディングがあるズームレンズシステムの一実施形態を図11および12に図示する。まず図5と合わせて図11を参照すると、構成200では、被写体110は、バリエータとして働く光学群151、および波面コーディング(WFC)補償器202によって撮像される。構成200では(図5の構成150のように)、被写体110からの光は、周辺光線122とともに、WFC補償器202へ向かって光学群151を通って移動する。光学群151を通って移動する光は、波面、ならびに光軸121に平行な周辺光線を含む。次いで、WFC補償器202は、ぼやけた画像が検出器210上に形成されるように、その上に入射する光の波面をコード化する。検出器210におけるぼやけた画像の電子的表示は、焦点関連収差を実質的に感じない最終像220を形成するデジタル信号プロセッサ(DSP)215へ向けられる。DSP215は、例えば、ぼやけた画像中のぼやけを除去するように、および/または、特定作業に対して適切な方式で最終像をフォーマットするように構成することができる。例えば、DSP215は、最終像200を機械または人間の観察に対してフォーマットすることができる。
【0030】
図6と併せて図12を参照すると、構成200’が示され、図中、バリエータの焦点距離は、構成200で示されるものから変更されている。つまり、光学群151’は、変更された焦点距離f1’を示し、ズームレンズシステムの倍率は、構成200で示されるものから変更されている。結果として、光学群151’の右側に現れる光は、図示されるように、波面ならびに光軸121に平行ではない周辺光線を含む。WFC補償器202’もまた、ぼやけた画像が検出器210上に形成するように、その上に入射する光の波面をコード化する働きをする。ぼやけた画像の電子的表示は、DSP215によってさらに処理され、焦点関連収差を実質的に感じない最終像220’を形成する。
【0031】
光学群151と光学群151’との違いは、この同じ光学群が、f1からf1’への焦点距離の変化を可能にする可変光学素子を含むことである。WFC補償器202とWFC補償器202’との違いは、この同じ光学素子を、例えば、WFC補償器によって示される焦点距離を、構成200でのf2から構成200’でのf’2に変更することによって、焦点の少なくとも粗調整を可能にするよう可変に構成することができることである。よって、図11および12にそれぞれ示される構成200および200’では、倍率および最良焦点位置の両方の調整を可能にするために、バリエータおよび補償器の両方が可変である。波面コーディングは、図9および10に図示されるような色収差などの、焦点関連収差の影響を低減するために、協働して使用される。
【0032】
波面コーディングがあるズームレンズシステムの別の実施形態を図13に示す。図11および12と併せて図13を参照すると、構成200”では、バリエータの焦点距離は、図11の構成200に示されるものから再び変更されている。つまり、光学群151”は、変更された焦点距離f1”を示し、ズームレンズシステムの倍率は、構成200に示されるものから再び変更されている。しかし、図12の構成200’とは違って、WFC補償器202は不変のままである。結果として、構成200”におけるWFC補償器202を通って伝達される周辺光線が、構成200の周辺光線204または構成200’の周辺光線204’とは異なる一方で、最終像220”を鮮明かつ明瞭に保つために必要な焦点変化は、固定WFC補償器202、検出器210、デジタル信号プロセッサ(DSP)215”の組み合わせによって達成することができる。DSP215”は、例えば、ズームシステムの特定構成に応じて信号処理を行うようにプログラムされる。一実施形態では、DSP215”は、光学群151”およびWFC補償器202の構成要素パラメータについての電子的フィードバックを取得する。別の実施形態では、DSP215”は、検出された画像からズームレンズシステムの構成またはパラメータを自動的に推測する。
【0033】
よって、図11〜13に図示される実施例は、波面コーディングを含む2部類のズームレンズシステムを説明する。1部類では、光学素子構成に起因する収差は、非球面光学および検出された画像の信号処理を利用することによって制御する。他方の部類では、画質を犠牲にすることなく、倍率を変えながら鮮明な画像を形成するために少なくとも1つ少ない可変光学素子を使用する。1つ以上の付加的な可変光学素子を含むことにより達成されることのある焦点移行は、固定WFC補償器(図13)および結果として生じた画像の信号処理によって提供される効果である。それにもかかわらず、両部類のそのようなズームレンズシステムは、単一ズームレンズシステムに組み込むことができる。つまり、WFC補償器および信号処理は、焦点の変化により、かつズームレンズシステムの特定レンズ構成の画像劣化収差により引き起こされる効果を低減することができる。したがって、1つ以上の可変光学素子を排除するよりもむしろ、波面コーディングがあるズームシステムは、WFC補償器および画像信号処理を伴わずに、必要とされるよりも粗い態様で(例えば、あまり精密でない制御で)変化する1つ以上の可変光学素子を利用することができる。
【0034】
光学特性を、電圧、圧力、移動、および回転などであるがそれに限定されないパラメータの変動によって変更することができる、特定種類の光学素子を、この直後に、改良されたズームレンズシステムとの関連で説明する。
【0035】
図14および15は、バリエータとして利用される液体レンズを示す。現在利用可能な少なくとも2種類の液体レンズがある。フランス、リヨンのVarioptic Companyより現在市販されている1種類は、電圧の変化に従って、形状を変化させる。カリフォルニア州、サンディエゴのRhevision Technology, Inc.より入手可能なもう1つの種類は、圧力の変化に従って、形状を変化させる。このような液体レンズは、光学素子が物理形状を変化させ、従来のズームレンズシステムのように、光軸に沿った光学素子の移動を必要とせずに、屈折力の変動をもたらすという点で、同様である(固定光学と比べて)。しかし、液体レンズが理想的な挙動を示したとしても、そのような液体レンズで構成されるズームレンズシステムは、なおも図7〜10を参照して論議されるような、画像曲率および/または色収差を抱える。球面収差、コマ収差、非点収差、および温度関連収差などのその他の収差、およびフォーム誤差もまた、そのようなシステムの画像性能を制限する場合がある。波面コーディングを液体レンズズームレンズシステムに含むと、改善した画質で画像を生成するようにそのような誤差を緩和することができる。
【0036】
図14は、波面コーディングを含む液体レンズズームレンズシステムの一構成250を示す。構成250では、液体レンズ251はバリエータとして働き、ズームレンズシステムの倍率を変更する。液体レンズ251を通って伝達される光は、波面、ならびに光軸121に実質的に平行である周辺光線を含む。WFC補償器252は、検出器210でぼやけた画像が形成するように波面をコード化する。WFC補償器252は、固定素子であってよく、またあるいは、像平面の位置(例えば、検出器210の理想的な位置)を制御するための、液体レンズ光学素子などの可変光学素子であってもよい。次いで、DSP215は、検出器210からのぼやけた画像を代表するデータを、人間および/または機械の観察に適しており、焦点関連収差を実質的に感じない最終像260に変換する。
【0037】
図15を参照すると、変更構成250’は、構成250の液体レンズ251と比べて、結果として生じるズームレンズシステムの倍率を変更し、図示されるように、周辺光線が光軸121に平行でなくなるように液体レンズ251’を通って伝達される光を変更する、液体レンズ251’を含む。固定および/または可変素子を含むことができるWFC補償器252’は、再度、検出器210でぼやけた画像が形成するように波面をコード化する。DSP215’により、最終像は、人間および/または機械の観察に適して、焦点関連収差を感じなくなる。構成250および250’のWFC補償器252および252’はそれぞれ、例えば、液体レンズ251および251’それぞれの変化に対する反応において変化するように構成することができる。次いで、DSP215および215’は、液体レンズ251および251’、および/またはWFC補償器252および252’の構成に左右される、またあるいは左右されない、処理を行うことができる。WFC補償器252または252’、およびDSP215または215’を含むことによって、ズームレンズシステム中の可変光学素子のうちの1つは、排除される、簡素化される、またはあまり精密ではない作動および/または変動を必要とすることができる一方で、波面コーディングのないズームレンズシステム構成に存在する収差の影響をなおも軽減する。
【0038】
図16および17は、液体レンズバリエータ251および251’の代わりに液晶バリエータ281、281’が利用されることを除いて、図14および15と同様の構成を示す。「電気的可変焦点高分子安定化液晶レンズ」と題された、米国特許出願公開第2005/0018127(A1)号(以降、‘127出願書)で説明されているもののような液晶光学構成要素は、液晶光学素子の光学特性を変化させるために電圧またはその他の手段を使用する。例えば、液晶光学素子の有効焦点距離は印加される電圧によって制御することが可能であり、それにより、該素子は、現代のズームレンズシステムでの使用に潜在的に適切となる。その他の液晶レンズは、Yeらによる「Liquid−cyristal lens with a focal length that is variable in a wide range」、Applied Optics、vol. 43、no. 35 (2004)、pp.6407−6412、およびOkadaらによる「フレネルレンズを有する液晶レンズ」と題された米国特許第4,904,063号で説明されている。ズームレンズシステムでの液晶バリエータの使用は、図7〜10を参照して上記で論議される種類の収差をなおも潜在的に引き起こし、よって性能を制限する場合がある。例えば、画像曲率、色収差、球面収差、非点収差、コマ収差、温度関連収差、および液晶バリエータの包含に起因する一般的なフォーム誤差のうちのいずれも、撮像性能を低減する場合がある。下記で説明されるような、WFC補償器282、282’、および信号処理215の包含を介したこのような種類のシステムに対する改良は、図14および15に示されるものと一般に同様である。より少ない可変光学素子、より低い電力消費、より短いシステム全長、およびより低い費用は、WFC補償器282、282’のない対応システムと比べて、図16および17に示されるシステムで達成することができるあらゆる改良である。
【0039】
図16および17の構成を詳細に考慮すると、図16は、結果として生じるズームレンズシステムの倍率を変更するためのバリエータとして働く液晶レンズ281がある構成280を示す。構成280では、液晶レンズ281を通って伝達される光は、波面、ならびに光軸121に実質的に平行である周辺光線を含む。WFC補償器282は、波面をコード化し、後に、検出器210でぼやけた画像を形成する。WFC補償器282は、像平面の位置(つまり、検出器210の理想的な位置)を制御するための、別の液晶レンズ、移動光学、および/または他の光学素子などの、固定または可変光学素子であってもよい。次いで、DSP215は、検出器210からのぼやけた画像の電子的表示を、人間および/または機械の観察に適しており、かつ焦点関連収差を実質的に感じない最終像290に変換する。
【0040】
図17では、変更構成280’は、結果として生じるズームレンズシステムの倍率を変えるよう、ならびに、それを通って伝達される周辺光線が光軸121に平行でなくなるように液晶レンズ281’を通って透過される光を変えるよう、液晶レンズ281と比べて変更される液晶レンズ281’を含む。再度、固定または可変要素いずれかを含むWFC補償器282’は、その上に入射する光の波面をコード化し、検出器210でぼやけた画像を形成する。DSP215’により、最終像290’は、人間および/または機械の観察に適して、焦点関連収差を感じなくなる。
【0041】
一実施形態では、ズームシステムにおいて使用される光学構成要素は、固定素子(例えば、固定高額性質があるが、必ずしも固定位置ではない素子)を含み、この固定要素は、光軸に沿っていないこともある方向にシステムに対して移動可能であることによって、システムを形成するために必要とされる長さを低減する。図18および19は、屈折力を変えるための1つの移動可能光学配置の例を示す。図18の光学配置300は、配置の有効屈折力または焦点距離が、光学素子のうちの1つの摺動運動を介して、少なくとも2つの値の間で変化することが可能となるように構成される2つの光学素子を含む。光学配置300では、固定および静止光学素子302は、開口304および正レンズ305の付近に配置される。静止光学素子302は、例えば、図示されるように、正曲率表面形状による屈折力を示す第1の部分306、および屈折力がない実質的に平面または平坦表面形状である第2の部分308といった、2つの部分を含む。光学配置300はまた、少なくとも2つの位置間で摺動可能に構成されている横摺動光学素子310も含む。摺動光学素子310は、図示されるように、負の曲率を含む第1の部分312、曲率または屈折力が実質的にない平面である第2の部分314、および正の曲率を示す第3の部分316といった、3つの部分を有する。図18では、摺動光学素子310は第1の位置で示され、図中、静止光学素子302の第1の部分306および第2の部分308は、図示されるように、素子310の第1の部分312および第2の部分314とそれぞれ並んでいる。開口304、静止光学素子302、および摺動光学素子310の第1および第2の部分312および314の組み合わせは、それを通って伝達される光に対する屈折力を提供しない。つまり、部分312の負の曲率の光学的効果が、部分306の正の曲率の光学的効果を相殺する一方で、部分308および314のそれぞれには効果がない。
【0042】
図19は、光学配置300の素子を含む光学配置300’を示すが、光学素子310は、光学配置300内のその位置と比べて、変更された位置にある。光学配置300’では、光学素子310は、光学配置300内のその位置に対する第2の位置への、システムの光軸(光軸は、概して、開口304の平面と直角であると定義される)に対して直角の方向にある、開口304の直径の約1/2である距離Sによって移動されている。摺動光学素子310が図19に示される第2の位置にあると、静止光学素子302の部分306は、摺動光学素子310の部分314と並び、静止光学素子302の部分308は、摺動光学素子310の部分316と並ぶ。結果として、開口304、静止光学素子302、および第2の位置にある摺動光学素子310の組み合わせを介して伝達される光は、正の屈折力に遭遇する。
【0043】
言い換えると、開口304と組み合わせた、静止光学素子302および摺動光学素子310の組み合わせは、摺動光学素子310の摺動運動に応じて、屈折力の2つの異なる値をもたらす。図18の光学配置300に示されるような第1の位置での配置は、ゼロの有効屈折力をもたらす。摺動光学素子310が図19に示されるような第2の位置に移行されると、素子の有効曲率は正の屈折力を提供する。よって、光軸に対して垂直に光学素子310を摺動させることによって、有効屈折力は、ゼロから所定のゼロ以外の値に変えることができる。図18および19に示される構成に対する薄いレンズの同等な表現は、光学配置300に対してゼロの屈折力がある平面/平面素子、および光学配置300’に対して正の屈折力がある平面/凸面素子である。一般に、光学配置300は、一連の屈折力を示すように構成することができ、その場合、図18のゼロ屈折力構成は特殊な場合である。
【0044】
図20および21に示されるような波面コーディングを使用するズームシステムに利益をもたらすために、前述の摺動光学配置を使用することができる。図20および21に示される構成では、図18および19の摺動光学配置はバリエータとして使用される。図20の構成400は、摺動光学素子310の位置が光学配置300に対する低屈折力をもたらすズームレンズシステムに対応する。この場合、固定されているか動的であるかのいずれかである、WFC補償器402は、結果として生じる被写体110の最終像410が実質的に焦点関連収差を感じないように、検出器210およびDSP215と協働する。そのような収差は、例えば、システムで使用される少数の光学素子では十分な収差制御が可能でないシステムの特定光学構成の結果であるか、あるいは、バリエータとして働く光学配置300の光学特性の引き起こされた変化によって生成される。図21に示されるように、変更構成400’は、摺動光学素子310の位置が、光学配置300によって提供されるよりも大きい屈折力がある光学配置300’を提供する状況を図示する。
【0045】
図22および23は、バリエータによって提供される屈折力が、平面/非球面光学素子の相対的位置とともに連続的に変化するような、摺動バリエータ構成での平面/非球面光学素子の使用を図示する。つまり、2つの可能な位置間で摺動光学素子310の相対的位置を選択することによって、光学配置300および300’が、屈折力の2つの値の間での選択を提供する一方で、平面/非球面光学素子の使用は、連続範囲の屈折力を提供する(例えば、連続範囲は、光軸121に垂直な方向に摺動光学素子を移動させることによって得られる)。
まず図20と併せて図22を参照すると、図20の構成400での光学配置300は、図22で示されるズームレンズシステムの構成420での光学配置430と交換される。光学配置430は光学配置300中にあるような開口304を含むが、光軸121に垂直な方向に互いに対して摺動可能である、平面/非球面の第1および第2の光学素子432および434も含む。図23を簡潔に参照すると、ズームレンズシステムの変更構成420’は、第1および第2の摺動光学素子432および434が、構成430でのそれらの位置と比べて、互いに対して移動されている、光学配置430’を含む。結果として、光学配置430’は、光学配置430によって提供されるものと比べると、異なる値の屈折力を提供する。構成420および420’は、最終像450を生成するWFC補償器442、検出器210、およびDSP215をさらに含む。WFC補償器442は、例えば、図11〜17および20〜21に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能するように構成され、さらに、光学配置430と協働するようにカスタマイズすることができる。
【0046】
光学配置430および430’として示されるレンズ構成は、一般的にアルバレスレンズと呼ばれる(例えば、米国特許第3,305,294号を参照)。アルバレスレンズの第1および第2の光学素子の非球面表面形状は、式
【0047】
【数3】
によって表される立方体として表現することができる。
【0048】
式中、yは、図22および23の紙面における垂直方向寸法であり、高さ(y)は、対向する平面から測定されるような各摺動光学素子の非球面表面の高さであり、aは定数パラメータである。
【0049】
図22および23に示されるような光学素子432および434の組み合わせは、素子432および434間での位置の相対的移行の量とともに近似的に変わる2次位相または屈折力を伴う複合光学素子に効果的に同等である。つまり、素子432および434の複合位相は、
【0050】
【数4】
として表現することができる。
【0051】
式中、zは、光軸121に沿った寸法であり、Δは、図23に示されるような、素子432および434間の相対的摺動距離である。式(2)で見ることができるように、第1および第2の摺動光学素子の組み合わせに関連する2つの位相項、つまり、y2の2次項および定数項がある。定数項は、Δに左右され、理想的には、結果として生じる画像に実質的に影響しないピストンと呼ばれるズームレンズシステムに、収差を加える。2次項は、Δに応じて、屈折力を提供する。定数パラメータaの変動は、素子432および434の相対的移動への結果として生じる屈折力の感度を増加または減少させる働きをする。したがって、互いに対して素子432および434を移行することによって、組み合わせの有効屈折力を変えることができる。
【0052】
図22および23に図示されるズームレンズシステム中のアルバレスレンズ(つまり、光学配置430および430’)は、アルバレスレンズによって提供される屈折力を変更するために、光軸121に垂直な平面で反対方向に移動する第1および第2の摺動光学素子432および434の両方を有する。例えば第2の摺動光学素子434だけといった、摺動光学素子のうちの1つのみが移動される場合、線形位相シフトが、移行された2つの素子の組み合わせに起因する。この位相シフトは、素子変位の関数Δとして、画像を空間的に変位させる働きをする。この位相シフトは、より複雑な形態の摺動可能光学素子が使用される場合に、除去することができる。例えば、移行された屈折力項の組み合わせが、屈折力の量および素子変位に応じて、線形位相シフトをもたらすように、屈折力の近似値を提供する2次項も含むことができる。屈折力項からの位相シフトは、素子の組み合わせをもたらす3次項からの位相シフトを相殺することが可能であり、その場合、単一の素子のみが、連続的可変量の屈折力があるアルバレスレンズをもたらすように移行される必要がある。
【0053】
図24および25は、1つの素子しか摺動しないが、各素子の両面が非球面である、バリエータとして働く連続的可変摺動光学素子の変動を図示する。図20と併せて図24を参照すると、図20の構成400中の光学配置300は、図24のズームレンズシステムの構成460では、光学配置470に置き換えられている。光学配置470は、光学配置300のように、開口304を含むが、第1の非球面/非球面素子472および摺動する第2の非球面/非球面素子474も含む。素子472は、前面475および裏面476を含み、その両方とも非球面表面形状を有する。素子474も、前面477および裏面478を含み、その両方とも非球面表面形状を有する。図24および25に図示される例では、素子472および474は、素子の外面(例えば、図示されるように、互いに向き合わない表面)上の屈折力および内面上の三次元表面を含む。つまり、素子472の表面475は負の屈折力を有し、素子472の表面476は三次元表面形状を有する。同様に、素子474の表面477は、素子472の第2の表面476の三次元表面形状に対応する三次元表面形状を有し、素子474の表面478は正の屈折力を有する。
【0054】
続けて図24を参照すると、光学配置470では、素子472は、開口304に対して静止したままであるように構成される。あるいは、素子472はまた、例えば、光軸121に直角である方向に、開口304に対して摺動可能に構成することができる。素子474は、光学配置470が屈折力の連続的変動を提供することが可能となるように、開口304および素子472に対して摺動可能である。素子472に対して空間的に移動する素子474は、光学配置470の有効屈折力の変化をもたらす。つまり、素子472および474の組み合わせは、素子474の摺動運動により連続的範囲の屈折力を生じ、検出器210に対して光軸121を中心に保ち、収差を最小化するために付加的な光学的自由度を提供するように構成することもできる。構成460は、最終像490を生成するWFC補償器482、検出器210、およびDSP215をさらに含む。WFC補償器482は、例えば、図11〜17および20〜23に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能し、さらに、光学配置470の固有の特徴に適合するようカスタマイズすることができる。
【0055】
素子474の摺動可能構成は、図24と併せて図25を参照することによって図示される。図24の光学配置470は、素子472および474が互いに完全に重なり合って示され、つまり、光軸121に沿って互いに対してほぼ中心にある。図25の光学配置470’では、素子474は、変位Δによって素子472に対して下方に移動されている。図24では、光学配置470は最小屈折力構成を提供し、図25では、光学配置470’はより大きい屈折力構成を提供する。
【0056】
非球面光学素子はまた、もう一方に対する回転する1つの非球面素子が屈折力の変化を引き起こすように、構成することもできる。この種類の回転素子の一例は、Bakerらの米国特許第4,650,292号(以降、’292特許)で説明されている。
【0057】
図26は、2つの素子を有する光学配置の屈折力の変化を達成するための素子の回転を図示する。ズームレンズシステムの構成500は、光学配置510を含む。図18および19と併せて図26を参照すると、光学配置510は、図18および19の光学配置300、300’に示されるような、開口304の付近に配置される静止光学素子302’を含む。光学素子302’は、負の屈折力を提供する部分、および屈折力を提供しない平面部分を含む。光学配置510は、反時計方向518(矢印で示されるような)または時計方向518’のいずれかに回転軸516の回りに回転可能である、第2の回転可能光学素子514をさらに含む。素子514は、非球面表面519および平面表面520を含む。あるいは、素子514は、図24に示される素子472および474のような非球面/非球面素子であってもよい。素子302’および514の表面曲率および軸516の位置は、素子514が軸516の回りを回転すると、光学配置510が可変の屈折力を提供するように選択される。よって、摺動可能光学素子を含む前述の光学配置のように、光学配置510は、従来のズームレンズシステムのように光軸に沿った付加的な長さを必要とせずに可変屈折力を提供するよう、光軸121に直角な平面での光学素子の移動を含む。構成500は、WFC補償器522、検出器210、およびDSP215をさらに含み、最終像530を生成する。WFC補償器522は、例えば、図11〜17および20〜25に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能し、さらに、光学配置510と協働するようにカスタマイズすることができる。
【0058】
図27および28は、改良されたズームレンズのバリエータで使用される摺動素子のさらに別の変動を図示する。図27および28で図示される場合では、単一の摺動非球面素子570は、第2の光学素子を使用せずに屈折力を変える。つまり、2つの補足素子のうちの少なくとも1つがもう1つに対して移動する図20〜26に示されるような構成とは対照的に、図27および28の構成550および550’はそれぞれ、単一の移動可能光学素子570しか含まない。
【0059】
まず図27を参照すると、光学配置560は、開口304、および開口304に対して移動可能である移動可能光学素子570を含む。移動可能光学素子570の連続または不連続移動によって、異なる屈折力に対応する素子570の異なる部分は、光学配置560が、開口304に対する素子570の相対的位置に応じて変化する屈折率を提供するように、開口304を通して照射される。図27が非球面表面572および平面表面574を含むものとしての素子570を示す一方で、素子570は、所望の屈折力変動を達成するように、非球面/非球面の組み合わせまたは平面/非球面の組み合わせなどの、その他の表面輪郭で構成することができる。
【0060】
図28は、光学配置560’を含む構成550’を示し、図中、移動可能光学素子570’は、非球面/平面表面輪郭の異なる部分が開口304を通して図示されるように、図の平面で下方に摺動されている。素子570が図27および28で移動可能(例えば、直線摺動として)に示されている一方で、移動可能光学素子もまた、他の方法で移動して屈折力の変動を提供することができる(例えば、図26に示されるように、回転軸の回りの回転によって)。構成550および550’は、それぞれWFC補償器582および582’、検出器210、およびDSP215をさらに含み、図示されるように、最終像590および590’をそれぞれ生成する。WFC補償器582および582’は、例えば、図11〜17および20〜26に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能し、さらに、光学配置560および560’の特定の特徴と協働するようカスタマイズすることができる。
【0061】
ズームシステムに使用するための摺動光学素子に対するさらに別の変動は、摺動開口、およびバリエータとして使用される非球面光学素子を伴う。米国特許第6,603,608号でToginoによって説明されているものなどの摺動開口は、非球面光学素子のある部分だけが一度に照射されるように、非球面光学素子に対して移動する。次に、開口のこの移動は、開口/非球面光学の組み合わせに対する不連続または連続的可変屈折力をもたらす。摺動開口および非球面光学素子の組み合わせは、変化する屈折力を提供する光学配置を効果的にもたらす。
【0062】
図29および30は、そのような摺動開口装置を含む改良されたズームレンズシステムの例を図示する。図29に示される構成600は、順に開口604および非球面光学素子606を含む光学配置602を含む。開口604の連続または不連続移動によって、異なる屈折力に対応する素子606の異なる部分は、光学配置602が、素子606に対する開口604の相対的位置に応じて可変屈折力を提供するように、開口604を通して照射される。構成600では、光学配置604がそれを通って伝達される光の第1の値を提供するように、開口604および素子606の両方は、図の平面で光軸121に対して中心となって示される。図30は、素子606の異なる部分を照射するよう光学配置602’が(図29の光学配置602中のその位置に対して)移動されている構成600’を示す。特に、光学配置602’を通って移動する光が、屈折力の異なる第2の値を経験するように、開口604は、光軸121に対して図の平面で上方に移動されて示されている。
【0063】
図29および30を続けて参照すると、素子606が非球面表面608および平面表面610を含むとして示される一方で、あるいは、非球面光学素子は、開口604と協働して所望の屈折力変動を達成するように、前述の非球面/非球面の組み合わせまたは平面/非球面の組み合わせなどであるがそれに限定されない、その他の表面構成で構成することができる。また、開口604は、横方向に摺動可能、または例えば図18〜28に示される移動可能光学素子の移動に類似している方式で、光軸に直角である平面で回転軸の周りを回転可能であってもよい。構成600および600’は、それぞれWFC補償器612および612’、検出器210、およびDSP215をさらに含み、最終像620および620’をそれぞれ生成する。WFC補償器600および600’は、例えば、図11〜17および20〜28に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能し、さらに、光学配置602および602’の特定の特徴と協働するようカスタマイズすることができる。
【0064】
図11〜17および20〜30を再び参照すると、入射光線角度(つまり、θobj内にある被写体110からの光線)の範囲は、ズームシステムのそれぞれによって撮像され、光線角度の範囲にわたるMTFが、大きさおよび形状において同様であり、ズームシステムが誤焦点様の収差に対して感度が低くなるように(波面コーディングのない同じズームシステムと比べて)、波面コーディング素子は、光線によって表される波面の位相を変更する。
図31および32は、本開示に従ったズームレンズシステムの別の例を図示する。図31は、第1の光学群702(焦点距離f1を伴う)および第2の光学群704(焦点距離f2を伴う)を含む2群ズームレンズシステムの構成700を示す。第2の光学群704は、可変光学素子706およびWFC素子708を含む。第1および第2の光学群702および704は、光軸722と並ぶ。構成700は、図示されるように、軸上光線725および軸外光線727の両方を受け取るように構成される、広角システムとして示される。第1および第2の光学群702および704は、検出器210上に軸上および軸外光線725および727の両方を撮像するように構成される。検出器210によって生成される画像データは、DSP215において処理され、最終像720を生成する。第1および第2の光学群702および704は、屈折、回折、およびホログラフィック素子を含むがそれに限定されない、複数の光学素子を含むことができる。WFC素子708は、素子706の表面に形成される、またあるいは、それとともに一体的に形成される可変光学素子706から分離することができる。
【0065】
図32は、第2の光学群704’を含む構成700’を示す。構成700’では、可変光学素子706は、図31の素子706の焦点距離f2とは異なる焦点距離f2’を有する可変光学素子706’を形成するように変更される。焦点距離の変化は、例えば、可変レンズの上述の実施のうちの1つによって達成することができる。光学群704’もまた、光学群704のWFC素子708の特徴と同じ、または異なってもよい特徴があるWFC素子708’を有する。光学群704’もまた、構成700の光学群704および702の位置と比べて、光軸に沿って第1の光学群702(矢印730によって示される)により近い。構成700’は、検出器210上に撮像され、最終像720’を形成するようDSP215において処理される、軸上およびほぼ軸外の光線725’(破線の楕円によって示される)を受け入れる望遠システムとしての使用に適している。言い換えると、構成700および700’は、光軸722に沿った光学群706、706’の移動および可変光学群704、704’の焦点距離変動を組み合わせるズームレンズシステムの、広角および望遠状態をそれぞれ図示する。
【0066】
上記のように、WFC素子708の固有の特徴も変えてよい。例えば、WFC素子708によって達成される位相変動を、第2の光学群704および/または704’の構成に応じて変えることができるように、WFC素子708は、適応光学素子または空間光変調器を使用して実施することができる。また、構成700’でDSP215によって行われる信号処理は、構成700で行われるものと同じであっても、そうでなくてもよい。構成700’での信号処理は、第2の光学群704’の変化に適応するように変更することができる。
ズームレンズシステム中の少なくとも1つの光学群の移動および焦点距離変動を同時に達成することによって、図31および32に図示されるズームレンズシステムは、従来のズームレンズシステム単独によって必要とされるよりも少ない光軸にそった光学群の移動、および現代のズームレンズシステム単独によって必要とされるよりも少ない焦点距離変動を使用して、広角から望遠の一連の特徴を達成することができる。さらに、WFC素子708は、従来または現代のズームレンズシステム構成によって達成可能ではない収差補償を、さらに提供することができる。例えば、図11〜17および20〜30に示されるような、前述の改良されたズームレンズシステムのいずれも、このような前述のシステムに移動機構を備えてすでに示した焦点距離変動を補うことによって、図31および32で例示されるように、移動および焦点距離変動を同時に実施するように変更することができることが注目される。
【0067】
図31および32に図示されるような構成700および700’、およびWFC素子708のない同等の構成を、次の例示的特徴を使用して数値的にモデル作成した。構成700では、群702および704の組み合わせによって示される有効焦点距離は、2.7mmである。群702の焦点距離f1を、−6.62mmと想定し、群704の焦点距離f2は、3.41mmである。群702および704の主平面間の間隔は、4.33mmである。構成700’では、群702は静止したままであり、焦点距離f1は変化しない(なおも−6.62mm)一方で、群704’の焦点距離f2’は、4.04mmに変化する。群702および704’の組み合わせによって示される有効焦点距離が5.4mmとなるように、群702および704’の主平面間の間隔は、1.71mmである。光線の波長は、0.55ミクロンと想定され、検出器210は4ミクロン平方の画素を含むと想定される。
【0068】
様々な光学群の具体的な記述は、周知の垂下方程式に由来し、
【0069】
【数5】
式中、z=表面の垂下、c=表面曲率、k=円錐定数、r=頂点からの半径方向距離、およびan=非球面定数である。表面は、図31および32の構成700および700’で紙の左側からズームレンズシステムに接近する光線によって見られるものとして定義される。構成700および700’の数値的モデル化で使用される規定は、下記によって求められる。
【0070】
【表1】
WFC素子708の効果を図示するために、図31および32に図示される構成700および700’と同等であるが、WFC素子708のない光学配置に対応する光線遮蔽曲線のペアを図示する、図33〜36にまず注意が向けられる。図33〜36および46〜49の全てにおいて、軸「EY」は、像平面(例えば、検出器210の位置)の空間Y軸に対応し、軸「PY」は、瞳孔平面(例えば、入射光線によって遭遇される第1の光学群702の第1の表面)の空間Y軸に対応し、軸「EX」は、像平面の空間X軸に対応し、軸「PX」は、瞳孔平面のX軸に対応する。
【0071】
当技術分野で周知のように、光線遮蔽曲線は、所与のシステム中に存在する焦点関連収差の程度を示すことができる。光線遮蔽曲線は、瞳孔平面上の所与の光線位置に対して、光線が画像化する像平面上の対応する位置を描画することによって、算出される。例えば、完璧に焦点が合ったシステムに対しては、x軸およびy軸光線遮蔽曲線は、EY=0およびEX=0軸に沿ったまっすぐな水平線となるべきである。理想的な水平線からの逸脱は、システム中の種々の収差の存在を示す。例えば、傾斜した直線の光線遮蔽曲線(つまり、ゼロ以外の傾斜の直線)は、誤焦点、つまり、瞳孔位置とともに直線的に増加する像平面の高さを示す。また、yグラフおよびxグラフが異なる傾斜を示す場合、光線遮蔽曲線は、非点収差を示す。さらに、光線遮蔽曲線の傾斜が、画角の関数として変化する場合、光線遮蔽曲線はフィールド湾曲を示す。加えて、光線遮蔽曲線が三次曲線である場合、その光線遮蔽曲線は球面収差を示す。よって、光線遮蔽曲線は、所与の光学システムに存在する種々の収差を示すことができる。
【0072】
図33は、構成700を通過する軸上光線725に対応するがWFC素子708のない、y軸光線遮蔽曲線754およびx軸光線遮蔽曲線756についてのyグラフ750およびxグラフ752を示す。同様に、図34は、構成700を通して撮像されている軸外光線727に対応するがWFC素子708のない、y軸光線遮蔽曲線764およびx軸光線遮蔽曲線766についてのyグラフ760およびxグラフ762を示す。図35は、構成700’を通過する光線725’の軸上部分に対応するがWFC素子708のない、y軸光線遮蔽曲線774およびx軸光線遮蔽曲線776についてのyグラフ770およびxグラフ772を示す。図36は、構成700’を通過する光線725’の軸外部分に対応するがWFC素子708のない、y軸光線遮蔽曲線784およびx軸光線遮蔽曲線786についてのyグラフ780およびxグラフ782を示す。
【0073】
図33〜36のそれぞれを別々に対処すると、図33に示されるy軸およびx軸光線遮蔽曲線754および756は、実質的に一定傾斜の直線であり、よって誤焦点を示す。図34では、y軸光線遮蔽曲線764およびx軸光線遮蔽曲線766が異なる傾斜を示すため、誤焦点に加えて非点収差の存在を示す。図35および36では、光線遮蔽曲線774および776は、実質的に直線であるが、曲線760および766からの反対傾斜を有し、構成700’が構成700とは反対の誤焦点を示すことを示す。つまり、図33および34に示される誤焦点は、例えば、構成700での像平面(つまり、検出器210の位置)を傾斜させることによって部分的に修正できる一方で、像平面のそのような移動は、構成700’によって示される誤焦点を悪化させる。言い換えると、図33〜36に示される誤焦点の修正は、例えば、望ましくない構成の関数としての像平面の移動を必要とする。
【0074】
構成700および700’と同等であるがWFC素子708がない構成の非理想的性能をさらに図示するため、このような構成の算出された変調伝達関数(MTF)を図37に示す。グラフ800は、構成700および700’中の軸上および軸外光線に対応するがWFC素子708のない、複数のMTF曲線を含む。グラフ800の縦軸はMTFの大きさに対応し、グラフ800の横軸は、正規化空間周波数パラメータに対応する。1の最大空間周波数は、1以上(画素サイズの2倍)に対応する。理想的MTFは、0.5の大きさにおける水平線である。正規化空間周波数パラメータに対するカットオフ値(つまり、MTFが0.5を下回る、正規化空間周波数パラメータまたは空間周波数)を有することが多くの用途にとって容認可能である一方で、その特徴が、システムが異なる構成間の性能の大きな変動を示す、つまり、この場合、ある構成が他の物よりも性能が良い場合があることを示すため、異なる構成間のMTF曲線の大幅な変動は、非理想的と考えられる。異なる構成に対する均一な性能(つまり、同様のMTF曲線)が、概して好ましい。
【0075】
図37を続けて参照すると、第1のMTF群810は、図31の軸上および軸外光線725および727に対するMTF曲線を含み、第2のMTF群820は、図32の光線725’の軸上および軸外部分に対するMTF曲線を含む。具体的には、第1の軸上MTF曲線812は、軸上光線725に対するMTF曲線であり、第1の軸外MTF曲線814は、軸外光線727に対するMTF曲線であり、第2の軸上MTF曲線822は、光線725’の軸上部分に対するMTF曲線であり、第2の軸外MTF824は、光線725’の軸外部分に対するMTF曲線である。グラフ800で見ることができるように、構成700および700’それぞれと同等な構成に対応するがWFC素子708のない、第1および第2のMTF群810および820は、軸上および軸外光線に対して、互いに、ならびにそれら自身群内でも有意に異なる。さらに、MTF曲線824は、MTF曲線822および第1のMTF群810よりも有意に低く、よって、構成700’で示される光線725’の軸外部分に対する低下した性能を示す。
【0076】
WFC素子708のない構成700および700’の非理想的性能のなおも別の表示を図38および39に示す。図38および39は、図31および32と併せて、特定空間周波数値(これらの図に示される例では75線対/mm)に対するWFC素子708のない構成700および700’での、軸上および軸外光線に対するMTF曲線を示す。図38および39では、縦軸は、光学的伝達関数(OTF)の係数の大きさに対応し、つまり、MTF、および横軸は、ミリメートル単位の焦点移行に対応し、その場合、ゼロの焦点移行は、像平面(例えば、検出器210の位置)での完璧な焦点に対応する。図38のグラフ850は、図31の構成700での軸上光線725および軸外光線727に対応するがWFC素子708のない、第1群のMTF曲線852を含む。1つのMTF曲線のピーク高さをhMTFと標識し、hMTF/2の値での対応するピークの幅(例えば、曲線の半値全幅またはFWHM)を856と標識する。図38に示される例では0.2mm未満であるFWHM856は、下記の図41に関連して論議されるように、WFC素子が構成700で利用されると、増加することができる。
【0077】
グラフ850で見ることができるように、MTF曲線852群のピークは、ゼロ焦点移行での理想的焦点854の線の右に位置している。同様に、図39のグラフ860は、図32の構成700’での光線725’の軸上および軸外部分に対応するがWFC素子708のない、第2群のMTF曲線862を含む。グラフ860では、MTF曲線862群のピークは、理想的焦点854の線の左に位置している。像平面位置が第1群のMTF曲線852または第2群のMTF曲線862のいずれかのピークにあるように、WFC素子708のない構成700、700’によって表されるシステムに調整を行うことができる(例えば、検出器210の位置、それにより、像平面は、第1および第2の光学群702および704または704’のより近くまたは遠くに移動することができる)一方で、1つの構成の性能を向上させるためにシステムを調整すると、他の構成の性能を悪化させ、逆の場合も同じである。言い換えると、構成700および700’の両方において良好な性能を達成する検出器210に対する1つの位置を選択することは可能ではない。
【0078】
図31および32の構成700および700’での、DSP215と組み合わせたWFC素子708の包含は、これから説明するように、ズームレンズシステムの性能を向上することができる。
【0079】
数値的モデル化の目的で、WFC素子708は、第2の光学群704および704’の第1の表面の前に予備素子を追加することによって説明される。1つの特定のWFC素子708は、
【0080】
【数6】
として表現される前面を持つとしてシミュレーションされ、式中、xおよびyは、光軸に直角である平面での空間変数であり、a3=1.418・10−3、a5=−0.5766・10−3、a7=1.388・10−3、a9=7.88・10−3、およびr0=0.42mmである。WFC素子708のその他の構成が可能である。
【0081】
図40は、構成700および700’を通して撮像された軸上および軸外光線に対するMTFのグラフ900を示し、今回は、WFC素子708の効果が数値的モデル化に考慮されている。第1のMTF群910は、図31の軸上および軸外光線725および727、ならびに図32の光線725’の軸上および軸外部分に対するMTF曲線を含み、よってDSP215による処理がない広角構成700および望遠構成700’の両方に対応する。グラフ900で見ることができるように、第1のMTF群910内の個々のMTF曲線は、互いにかなり類似している。つまり、MTF群910の実質的に同様のMTF曲線を、図37の前述のMTF群810および820と比較することにより、WFC素子708を利用すると、各構成内ならびに異なる構成での異なる光線角度に対する性能の均一性が向上することが示唆される。
【0082】
なおも図40を参照すると、グラフ900はまた、構成700を通して撮像された軸上および軸外光線725および727、ならびにDSP215による処理を伴って、構成700’を通して撮像された光線725’の軸上および軸外部分に対するMTF曲線に対応する、第2のMTF群920も含む。DSP215の詳細は、下記の論議中の適切な連接において説明する。第2のMTF群920の検討によって分かるように、第2のMTF群920内のMTF曲線の全体的な大きさは、第1のMTF群910内の曲線よりも増加する一方で、MTF性能の均一性(MTF群920における曲線の実質的に同様な大きさおよび形状によって示される)を保つ。さらに、第2のMTF群920内のMTF曲線は、全体的に見ると、正規化空間周波数パラメータ範囲にわたって大きさが0.5より大きい。言い換えると、WFC素子708およびDSP215による処理が含まれると、両構成700および700’は、本開示のズームレンズシステムの改良された性能を達成する。
【0083】
WFC素子708を含むが信号処理のない構成700および700’の性能の別の解説では、図41および42は、特定の空間周波数値(図38および39のように75lp/mm)に対する構成700および700’での軸上および軸外光線に対するMTF曲線を示す。再度、像平面での完璧な焦点は、ゼロの焦点移行に対応する。図41のグラフ950は、WFC素子708を含むがDSP215による信号処理のない、図31の構成700での軸上および軸外光線に対応する第1群のMTF曲線952を含む。1つのMTFのピーク高さをhMTFと標識し、対応するピーク(例えば、hMTF/2の値で)のFWHMを956と標識する。図42のグラフ960は、WFC素子708があるがDSP215による信号処理のない、図32の構成700’での軸上および軸外光線に対応する第2群のMTF曲線962を含む。第1および第2群のMTF曲線952および962のそれぞれの中の個々のMTF曲線はそれぞれ、各群内で互いにかなり類似している。この特徴は、構成にわたる、ならびに光線角度にわたる、均一な性能を示すことが分かる。
【0084】
図41および42を前述の図38および39と比較することによって、理想的焦点854の線が、ピークMTFの大きさから遠くない点において両群のMTF曲線952および962に交差するように、第1および第2群のMTF曲線952および962の両方のピークが平坦化して拡大していることが分かる(実際、第2群のMTF曲線962内に含まれるMTF曲線は、非常に類似しているため、事実上互いに重なり合う)。つまり、グラフ950および960は、像平面を実際に移動させる必要なく高いMTF値を得ることができる広い範囲の設定があることを示す。FWHM956は、0.2mm未満である図38の対応するFWHM856と比べて、図41では約0.6mmであると見なされる。図41では、群952のその他のMTF曲線が、図38の群852のMTF曲線の対応するピーク幅よりも全て大きい同様の幅を有することが分かる。図39を図42と比較することによって、群962のMTF曲線の対応するピーク幅(つまりFWHM)が、群862のMTF曲線の対応するピーク幅よりも広いことが同様に分かる。よって、光線角度にわたる誤焦点に対するMTF曲線の幅の増加により、WFC素子708がある両構成700および700’は、WFC素子708がない対応する構成700および700’よりも、検出器210によって撮像される光線角度の範囲にわたる誤焦点および/または誤焦点様収差に対して感度が低くなる。つまり、WFC素子708を利用するズームレンズシステムは、少なくとも1つの空間周波数で焦点移行の範囲にわたって、該1つの空間周波数にあり、システムによって撮像される光線角度の範囲にわたって、システムの任意の焦点距離における1つの空間周波数で、対応システムによって形成されたMTF曲線より広いFWHMによって示されるように、対応するWFC素子708がないズームレンズシステムより広いMTF曲線を有する。
【0085】
DSP215によって適用されるアルゴリズムの仕様を図43に示す。図43は、図40に示される結果を生成するために使用された線形フィルタの網状レンダリングである。図43は、線形フィルタ1010を含む3Dグラフ1000を示す。線形フィルタ1010の網目の各点の特定値を下記の表2に示す。表2の値の全ての合計が1であることに注目される。線形フィルタ1010は、2次元の線形たたみ込みとしてDSP215によって適用され、図40に示されるMTF曲線920を生成するために、検出器210から受け取られるデータを撮像する。
【0086】
【表2】
図44〜70は、3群ズームレンズシステムの数値的モデル化の例を図示する。図44および45は、本開示に従った3群ズームレンズシステムの2つの異なる構成を図示する。図44は、第1の光学群1102(焦点距離f1を伴う)、第2の光学群1104(焦点距離f2を伴う)、および第3の光学群1106(焦点距離f3を伴う)を含む構成1100を示す。光学群1102および1104は、1つ以上の光学素子を含むことができる。光学群1106は、光学1108、および光学1108に隣接または近接して形成するか、またはそれとともに一体的に形成することができるWFC素子1110を含む。図31と類似して、構成1100は、軸上光線725および軸外光線727の両方(システムズームシステム1100によって撮像される入射光線の範囲を包含する)を受け入れ、第1、第2、および第3の光学群を通して検出器210上にこれらの光線を撮像するように構成される広角システムである。検出器210によって生成される画像データは、データが処理されて最終像1120を形成するDSP215に向けられる。光学群1102、1104、および1106は全て光軸1122に沿って一列に並ぶ。
【0087】
図45は、3つの光学群が構成1100で示される相対的位置にとどまっている(例えば、光軸1122に沿った光学群の移動なしで)構成1100’を示す。構成1100’では、構成1100’が望遠システムシステムとして機能するように、第2の光学群1104’は、焦点距離f2’を示し、第3の光学群1106’は、焦点距離f3’をもたらすよう変更された光学1108’を含む。検出器210での検出およびDSP215での信号処理の後、最終像1120’が生じる。WFC素子1110および/またはDSP215は、構成1100および1100’間で同一であってよく、または説明される焦点距離変動によりシステムの変化に適応するように変更してもよい。
【0088】
一般に、3群の光学素子の使用は、ズームレンズシステムのある固定収差を制御するのに役立つ。第1の光学群1102が図44および45では静止した非可変光学群であると示される一方で、3つの光学群の位置は、例えば、静止光学群が入射光線によって遭遇される第2または第3の群となるように、変更することができる。
【0089】
図44および45に図示されるような構成1100および1100’、およびWFC素子1110がない同等の構成を、次の例示的特徴を使用して数値的にモデル作成した。0.75mmの画像高さを想定した。光学群1102、1104、および1106の組み合わせの有効焦点距離はそれぞれ、(広角)構成1100に対しては4.8mm、(望遠)構成1100’に対しては14.2mmである。光線の波長は0.55ミクロンと想定し、検出器210は4ミクロン平方である画素を含むと想定する。構成1100では、光学群1102の焦点距離f1を−14.86mmと想定し、光学群1104の焦点距離f2を23.91mmと想定し、光学群1106の焦点距離f3を6.55mmと想定する。構成1100’では、第1の光学群1102の焦点距離f1は−14.86mmのままであり、第2の光学群1104の焦点距離f2’を6.03mmと想定し、第3の光学群1106の焦点距離f3’を−4.94mmと想定する。様々な光学群の具体的な規定は再度、表3Aおよび3Bに示されるパラメータによる方程式(3)に由来する。
【0090】
【表3A−1】
【0091】
【表3A−2】
【0092】
【表3B】
図46〜53は、WFC素子1110が存在しない場合に図44および45で示される構成の非理想的性能を図示する。図46〜49は、図44および45に示される構成1100および1100’に対応する一連の光線遮蔽曲線を示す。図46は、構成1100を通過するがWFC素子1110がない、軸上光線725に対応するy軸光線遮蔽曲線1154およびx軸光線遮蔽曲線1156があるyグラフ1150およびxグラフ1152を示す。同様に、図47は、構成1100を通して撮像されているがWFC素子1110がない、軸外光線727に対応するy軸光線遮蔽曲線1164およびx軸光線遮蔽曲線1166があるyグラフ1160およびxグラフ1162を示す。図48は、構成1100’を通過するがWFC素子1110がない、光線725’の軸上部分に対応するy軸光線遮蔽曲線1174およびx軸光線遮蔽曲線1176があるyグラフ1170およびxグラフ1172を示す。図49は、構成1100’を通過するがWFC素子1110がない、光線725’の軸外部分に対応するy軸光線遮蔽曲線1184およびx軸光線遮蔽曲線1186があるyグラフ1180およびxグラフ1182を示す。
【0093】
次に、図46〜49のそれぞれを検討すると、図46に示されるy軸およびx軸光線遮蔽曲線1154および1156は、実質的に一定傾斜の直線であり、よって誤焦点を示す。図47では、y軸光線遮蔽曲線1164およびx軸光線遮蔽曲線1166は同様に直線である。図48および49では、光線遮蔽曲線は、実質的に直線であるが、図46および47に示されるものとは反対の傾斜を有することによって、構成1100’が構成1100からの反対の誤焦点を示すことを示唆する。つまり、図46および47に示される誤焦点は、例えば、構成1100での像平面(つまり、検出器210の位置)を移動することによって部分的に修正できる一方で、像平面のそのような移動は、構成1100’によって示される誤焦点を悪化させる。言い換えると、図46〜49に示される誤焦点の修正は、例えば、構成の関数としての像平面の移動を必要とするが、それは望ましいことではない。
【0094】
図50および51は、WFC素子1110がない構成1100および1100’での軸上および軸外光線に対する、空間周波数(ミリメートル毎のサイクル(または線対)の単位)の関数としての算出されたMTFを示す。図50では、グラフ1200は、図44の構成1100を通して撮像されるがWFC素子1110がない、軸上および軸外光線に対応するMTF曲線1210群を含む。同様に、図51のグラフ1220は、再度WFC素子1110がない、図45の構成1100’を通して撮像される軸上および軸外光線に対応する、別のMTF曲線1230群を含む。グラフ1200および1220に示されるように、MTF曲線1210および1230の両群は、空間周波数の増加に伴って大きな低下および変動を示し、各構成内および2つの構成間の不均一な性能ならびに大きな誤焦点を示す。さらに、両群のMTF曲線1210および1230は、MTFが実質的にゼロまで低下する空間周波数値を含む。MTF値におけるこのようなゼロは、画像データの損失を示すため、特に望ましくない。
【0095】
図52および53は、図38および39のように、特定の空間周波数値(75lp/mm)に対する波面コーディングがない構成1100および1100’での、軸上および軸外光線に対するMTF曲線を示す。図52および53では、縦軸は、OTFの係数の大きさに対応し、つまり、MTF、および横軸は、ミリメートル単位の焦点移行に対応し、その場合、ゼロの焦点移行は、像平面(例えば、検出器210の位置)での完璧な焦点に対応する。図52のグラフ1250は、図44の構成1100での軸上および軸外光線に対応するがWFC素子1110のない、第1群のMTF曲線1252を含む。グラフ1250で見ることができるように、第1群のMTF曲線1252のピークは、ゼロ焦点移行での理想的焦点1254の線の右に位置する。MTF曲線1252群内の個々のMTF曲線は、形状が幅広く異なり、誤焦点に加えて非点収差およびフィールド湾曲を示す。FWHM1256は、曲線のうちの1つに対して示され、0.3mm未満の値を有すると見なすことが可能である。図53のグラフ1260は、図45の構成1100’での軸上および軸外光線に対応するがWFC素子1110のない、第2群のMTF曲線1262を含む。グラフ1260では、第2群のMTF曲線1262のピークは、理想的焦点1254の線の左に位置する。したがって、図38および39との関連で先に図示された構成700および700’のように、図52および53のグラフ1250および1260はそれぞれ、両構成1100および1100’での良好な性能を達成する検出器210に対する1つの位置を選択することが可能ではないことを示唆する。
【0096】
図50および51とは対照的に、図54および55は、WFC素子1110を含む構成1100および1100’に対してシミュレーションされるMTF曲線を示す。数値モデル化の目的で、a3=−2.858・10−3、a5=−0.08・10−3、a7=−1.707・10−3、a9=3.426・10−3、およびr0=0.60mmというパラメータがある式(4)の垂下方程式によれば、WFC素子1110は、第3の光学群1106および1106’の第1の表面の前に予備素子を追加することによって説明される。
【0097】
図50および51と併せて図54および55を参照すると、図54は、WFC素子1110を含むがDSP215による処理がない構成1100を通して撮像される軸上および軸外光線に対するMTF曲線1272群を含む、グラフ1270を示す。MTF曲線1272を図50に示されるMTF曲線1210と比較することによって分かるように、MTF値は、MTF曲線1210に対するよりもMTF曲線1272において大きく、よって、MTF値は、構成1100でのWFC素子1110の追加によって増加する。同様に、図55は、再度、WFC素子1110を含むがDSP215による処理がない構成1100’を通して撮像される軸上および軸外光線に対するMTF曲線1282群を含む、グラフ1280を示す。MTF曲線1282は、大きさ、性能の均一性、およびゼロの欠如といった点において、図51のMTF1230よりも改善を示すと見なすことができる。
【0098】
図56および57は、特定の空間周波数値(図52および53のように、75lp/mm)に対する構成1100および1100’での軸上および軸外光線に対するMTF曲線を示す。再度、像平面での完璧な焦点は、ゼロの焦点移行に対応する。図56のグラフ1290は、WFC素子1110を含むがDSP215による処理がない図44の構成1100での軸上および軸外光線に対応する、第1群のMTF曲線1292を含む。FWHM1296は、曲線のうちの1つに対して示され、ピークがグラフ1290に示される焦点移行値を超えるが少なくとも0.6mmであるため、グラフ1290を利用して測定できない値を有すると見なすことが可能である。図57のグラフ1295は、WFC素子1110があるがDSP215による処理がない、図45の構成1100’での軸上および軸外光線に対応する第2群のMTF曲線1297を含む。理想的焦点1294の線が、ピークMTFの大きさから遠くない点において両群のMTF曲線に交差するように、第1および第2群のMTF曲線1292および1297の両方のピークが平坦化して拡大していることが分かる。言い換えると、グラフ1290および1295は、像平面を実際に移動させる必要なく高いMTF値を得ることができる広い範囲の設定があることを示す。さらに、WFC素子1110を利用するズームレンズシステムは、少なくとも1つの空間周波数で焦点移行の範囲にわたって、該1つの空間周波数にあり、システムによって撮像される光線角度の範囲にわたって、システムの任意の焦点距離における1つの空間周波数で、対応システムによって形成されたMTF曲線より広いFWHMによって示されるように、対応するWFC素子1110がないズームレンズシステムより広いMTF曲線を有する。
【0099】
再び図31〜32、44〜45を参照すると、入射光線角度の範囲(例えば、軸上および軸外光線725および727それぞれによって示される)は、ズームシステムのそれぞれによって撮像され、光線角度の範囲にわたるMTFが、大きさおよび形状において同様であり、ズームシステムが誤焦点様収差に対して感度が低くなるように(波面コーディングのない同じズームシステムと比べて)、波面コーディング素子は、光線によって表される波面の位相を変更する。
【0100】
図44および45に示される構成でのWFC素子1110およびDSP215の追加によって得られるシステム性能の改良をさらに図示するために、点広がり関数(PSF)に関するこれらの構成の算出された評価を図58〜69に示す。図58〜61はそれぞれ、WFC素子1110が構成に含まれず、DSP215によって処理が行われない場合の点被写体に対する、構成1100を通して撮像された軸上光線に対する算出されたPSF1300、構成1100を通して撮像された軸外光線に対する算出されたPSF1302、構成1100’を通して撮像された軸上光線に対する算出されたPSF1304、構成1100’を通して撮像された軸外光線に対する算出されたPSF1306の視覚化に対応する。PSF1300、1302、1304、および1306の比較において分かるように、PSF1300、1302、1304、および1306は互いにかなり異なるため、構成内および構成間の3群ズームレンズシステムの撮像性能が幅広く異なる。
【0101】
図62〜65はそれぞれ、WFC素子1110が構成に含まれるが、DSP215によって処理が行われない場合の点被写体に対する、構成1100を通して撮像された軸上光線に対する算出されたPSF1310、構成1110を通して撮像された軸外光線に対する算出されたPSF1312、構成1100’を通して撮像された軸上光線に対する算出されたPSF1314、構成1100’を通して撮像された軸外光線に対する算出されたPSF1316の視覚化を示す。PSF1310、1312、1314、および1316は全て互いにかなり類似している。PSF1310、1312、1314、および1316は、理想ほど完璧な点ではないが、全てかなり均一であり、これらの図で9時および12時の方向にPSFを広げる同様な収差のみを含む。そのような収差は、WFC素子1110およびDSP215による処理の両方の効果が計算に含まれる場合の算出されたPSFを示す図66〜69で示されるように、単一線形フィルタを使用して修正することができる。
【0102】
図66〜69はそれぞれ、点被写体に対する、構成1100を通して撮像された軸上光線、構成1110を通して撮像された軸外光線、構成1100’を通して撮像された軸上光線、構成1100’を通して撮像された軸外光線に対応する。これより分かるように、算出されたPSF1320、1322、1324、および1326は、いくつかの画素のみを覆う均一な点に非常に近い。したがって、WFC素子1110およびDSP215による後の信号処理の追加により、広角から望遠の一連の構成に対する3群ズームレンズシステムによって、均一な性能を達成することができる。
【0103】
図70は、構成1100および1100’でDSP215によって適用される線形フィルタ1360を図示し、フィルタ1360は、グラフ1350で網状形式で示される。フィルタ1360は、構成1100および1100’でDSP215によって2次元の線形畳み込みとして適用され、図66〜69で示される算出されたPSFを生成するために、検出器210によって生成されるデータを撮像する。
【0104】
前述の実施形態のそれぞれは、特定の各配向性を有する様々な構成要素により図示されているが、本装置は、異なる位置および相互配向性に位置する構成要素がある異なる構成を採用し、本開示の精神および範囲内にとどまることができることを理解するべきである。さらに、様々な構成要素の代わりに、またはそれに加えて、適切な同等物を使用してもよい。そのような代用または追加構成要素の機能、および使用は、当業者に周知であり、したがって、本開示の範囲内であると見なされる。例えば、光学光子シーブを、光学群のうちの1つ以上の一部として、本開示のズームレンズシステムに追加してもよい。光学光子シーブについての詳細は、例えば、Andersenの「Large optical photon sieve」、Optics Letters、vol.30、no.22、November 2005、pp.2976−2978で見ることができる。そのような光学光子シーブは、ズームレンズシステム内の単純回折素子として働き、上記のような本開示の実施形態での光学素子のうちの1つ以上に取って代わるか、または補完することができる。別の可能な変更は、光学経路における高分子分散および高分子安定化液晶(PDLCまたはPSLC)光変調装置の追加を含む。そのようなPDLCまたはPSLC装置は、例えば、二元またはアナログ光弁として働き、ズームレンズシステムを通して伝達される光の量を調節することができる。あるいは、PDLCまたはPSLCは、付加的な光制御を提供するようにパターン化することができるか、または、可変LCレンズを含むズームレンズシステムの変動性を強化するよう可変液晶レンズに一体化することができる。PDLCおよびPSLCは、例えば、Drzaicの「Recent progress in dichroic polymer−dispersed liquid crystal materials」、Pure & Appl.Chem.、vol.68、no.7、pp.1435−1440、1996、および1997年11月25日に発行されたDoaneらの米国特許第5,691,795号で説明されている。光の波面を変える働きをするその他の現代の光学素子は、上記のような改良されたズームレンズシステム内に適切に構成することができる。
【0105】
したがって、本実施例は、実例的であって限定的ではないと考えられるべきであり、本願で挙げられる詳細に限定されないが、添付の請求項の範囲内で変更することができる。下記の請求項は、本願で説明される一般的および具体的な特徴、ならびに、言語の問題として、その間に該当すると言われる場合のある、本方法およびシステムの範囲の記述を対象とすることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、従来の光学を含む、従来技術の従来のズームレンズシステムの一構成の概略図である。図2は、図1の従来技術の従来のズームレンズシステムの代替的構成の概略図である。
【図3】図3は、現代の可変光学を含む、従来技術の現代のズームレンズシステムの一構成の概略図である。
【図4】図4は、図3の従来技術の現代のズームレンズシステムの代替的構成の概略図である。
【図5】図5は、現代の可変光学を含む、従来技術の現代のズームレンズシステムの別の実施例の一構成の概略図である。
【図6】図6は、図5の従来技術の現代のズームレンズシステムの代替的構成の概略図である。
【図7】図7は、従来技術の従来の2レンズ撮像システムの概略図であり、ここでは、2つのレンズが不均等な焦点距離および屈折率を示す場合の像平面の湾曲を図示するように示されている。
【図8】図8は、従来技術の従来の2レンズ撮像システムの概略図であり、ここでは、2つのレンズが均等な屈折率および互いのマイナスである焦点距離を示すように選択される場合の像平面の平坦化を図示するように示されている。
【図9】図9および10は、なおも別の従来技術の従来の2レンズ撮像システムの概略図であり、ここでは、レンズパラメータ選択に応じてそのようなシステムによって示される色収差の変動を図示するように示されている。
【図10】図9および10は、なおも別の従来技術の従来の2レンズ撮像システムの概略図であり、ここでは、レンズパラメータ選択に応じてそのようなシステムによって示される色収差の変動を図示するように示されている。
【図11】図11〜13は、波面コーディング補償器との可変光学の組み合わせを利用するズームレンズシステムの一実施形態の概略図である。
【図12】図11〜13は、波面コーディング補償器との可変光学の組み合わせを利用するズームレンズシステムの一実施形態の概略図である。
【図13】図11〜13は、波面コーディング補償器との可変光学の組み合わせを利用するズームレンズシステムの一実施形態の概略図である。
【図14】図14および15は、波面コーディング補償器と組み合わせて液体レンズバリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図15】図14および15は、波面コーディング補償器と組み合わせて液体レンズバリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図16】図16および17は、波面コーディング補償器と組み合わせて液晶バリエータを利用するズームレンズシステムのなおも別の実施形態の概略図である。
【図17】図16および17は、波面コーディング補償器と組み合わせて液晶バリエータを利用するズームレンズシステムのなおも別の実施形態の概略図である。
【図18】図18および19は、実施形態に従った、摺動可能光学素子構成の使用によって可変屈折力を提供するための光学配置の概略図である。
【図19】図18および19は、実施形態に従った、摺動可能光学素子構成の使用によって可変屈折力を提供するための光学配置の概略図である。
【図20】図20および21は、波面コーディング補償器と組み合わせて図18および19の光学配置を利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図21】図20および21は、波面コーディング補償器と組み合わせて図18および19の光学配置を利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図22】図22および23は、波面コーディング補償器と組み合わせて平面/球面摺動バリエータを利用するズームレンズシステムのさらに別の実施形態の概略図である。
【図23】図22および23は、波面コーディング補償器と組み合わせて平面/球面摺動バリエータを利用するズームレンズシステムのさらに別の実施形態の概略図である。
【図24】図24および25は、波面コーディング補償器と組み合わせて非球面/非球面摺動バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図25】図24および25は、波面コーディング補償器と組み合わせて非球面/非球面摺動バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図26】図26は、波面コーディング補償器と組み合わせて回転可能バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図27】図27および28は、波面コーディング補償器と組み合わせて摺動単一群バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図28】図27および28は、波面コーディング補償器と組み合わせて摺動単一群バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図29】図29および30は、波面コーディング補償器と組み合わせて摺動開口バリエータを利用する改良されたズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図30】図29および30は、波面コーディング補償器と組み合わせて摺動開口バリエータを利用する改良されたズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図31】図31および32は、実施形態に従った、波面コーディングがある2群ズームレンズシステムの2つの構成の概略図である。
【図33】図33〜36は、図31および32に示される構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図34】図33〜36は、図31および32に示される構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図35】図33〜36は、図31および32に示される構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図36】図33〜36は、図31および32に示される構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図37】図37は、図31および32に示される構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まない。
【図38】図38および39は、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであるが、特定の空間周波数値に対する波面コーディングおよび信号処理を含まない。
【図39】図38および39は、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであるが、特定の空間周波数値に対する波面コーディングおよび信号処理を含まない。
【図40】図40は、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングおよび信号処理の効果を含む。
【図41】図41および42は、特定の空間周波数値に対する、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングの効果を含む。
【図42】図41および42は、特定の空間周波数値に対する、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングの効果を含む。
【図43】図43は、図40のグラフを算出するために使用される信号処理において適用された、算出された線形フィルタの3D網状表示である。
【図44】図44および45は、実施形態に従った、波面コーディングがある3群ズームレンズシステムの2つの構成の概略図である。
【図45】図44および45は、実施形態に従った、波面コーディングがある3群ズームレンズシステムの2つの構成の概略図である。
【図46】図46〜49は、図44および45の構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図47】図46〜49は、図44および45の構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図48】図46〜49は、図44および45の構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図49】図46〜49は、図44および45の構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図50】図50および51は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まない。
【図51】図50および51は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まない。
【図52】図52および53は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであるが、特定の空間周波数値に対する波面コーディングおよび信号処理を含まない。
【図53】図52および53は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであるが、特定の空間周波数値に対する波面コーディングおよび信号処理を含まない。
【図54】図54および55は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングおよび信号処理の効果を含む。
【図55】図54および55は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングおよび信号処理の効果を含む。
【図56】図56および57は、特定の空間周波数値に対する、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングの効果を含む。
【図57】図56および57は、特定の空間周波数値に対する、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングの効果を含む。
【図58】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図59】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図60】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図61】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図62】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図63】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図64】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図65】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図66】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図67】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図68】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図69】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図70】図70は、図54〜55および66〜69の結果を算出するために使用される信号処理において適用された、算出された線形フィルタの3D網状表示である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/779,712号(2006年3月6日出願、名称「Zoom Lens Systems With Wavefront Coding」)の優先権の利益を主張するものであり、これはその全体を参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
現代のズームレンズシステムは、撮像システムの変化が、光軸に沿った光学素子の運動を介して達成されないという点で、従来のズームレンズシステムとは異なる。むしろ、現代のズームシステムにおける特定の光学素子の光学的性質は、光軸に平行ではない平面での電圧、圧力、移動、または回転の適用を通して変化する。現代のズームレンズシステムにおける可変光学素子の使用の一例は、従来のズームレンズシステムにおける1枚のレンズを、同じ物理的位置で可変光学レンズと交換することである。
【0003】
しかし、1つ以上の光学素子の光学的性質の変化を介して変化する現代のズームレンズシステムは、撮像性能を制限する働きをする収差をもたらす場合がある。このような収差は、撮像システムにおける光学素子の数が減少するにつれて、悪化する場合がある。このような現代のズームシステムの性能を制限する場合がある収差は、例えば、画像曲率、色収差、球面収差、非点収差、コマ収差、および加工、組立、および温度関連収差を含む。
【0004】
類似構成要素が様々な図の全体を通して類似参照番号によって示されている図面を参照すると、図1および2は、従来技術の例である、4群の従来のズームレンズシステムを図示する。この従来のズームレンズシステムでは、光学素子の移動は、概してシステムの光軸に平行である。図1に示されるような従来のズームレンズシステムの構成10では、焦点距離f1、f2、f3、およびf4をそれぞれ有する第1〜第4の光学素子12、14、16、および18の組み合わせは、像平面20で鮮明な像を形成するように構成される。破線は、構成10の光軸21を示す。従来のズームレンズシステムの構成10に進入する周辺光線22は、像平面20および光軸21の交差点で集束される。
【0005】
続けて図1を参照すると、第1および第2の光学素子12および14は、概して、構成10での従来のズームレンズシステムの倍率を制御すると考えることができる一方で、第3および第4の光学素子16および18は、概して、像平面20の位置を制御すると考えることができる。光学素子14は、倍率を制御する光学サブシステムとして定義される、「バリエータレンズ」または「バリエータ」と呼ぶことができる。光学素子16は、焦点を制御する光学サブシステムとして定義される、「補償器」と呼ぶことができる。場合によっては、特に少数の光学素子で形成されるズームレンズシステムでは、所与のサブシステムが、バリエータおよび補償器として同時に働くことができる。
【0006】
図2で、従来のズームレンズシステムの代替的構成10’では、第2の光学素子14’(例えば、バリエータ)は、倍率変化を達成するよう、矢印24で示されるように、光軸21に沿って、かつ像平面20に向かって、第1の光学素子12から遠ざけられる。像平面20を第4の光学素子18に対する固定位置に保つために、第3の光学素子16’(例えば、補償器)もまた、矢印26で示されるように、光軸21に沿って像平面20に向かって移動される。このような運動の両方の組み合わせを通して、従来のズームレンズシステムの変更構成10’の倍率は、図1に示される構成10のものから変更される一方で、像平面の位置は固定されたままである。言い換えると、図1の周辺光線22よりも第1の光学素子12の縁の近くに進入する周辺光線28は、こうして光軸21がある像平面20の交差点で集束することができる。
【0007】
図1および2に図示されるように、従来技術の従来のズームレンズシステムにおけるバリエータおよび補償器の移動は、光軸に沿った空間を必要とする。つまり、例えば、第2の光学素子14がそれを通って移動して構成10’を形成しなければならない空間内に、他の光学素子が位置してはいけない。空間に対する同様の要件は、光軸に沿った光学素子の移動を必要とする従来のズームレンズシステムに共通しており、結果として、光軸に沿った従来のズームレンズシステムの長さを縮小することが困難な場合がある。
【0008】
現代のズームレンズシステムは、光軸に沿った光学素子の物理的移動の必要性を低減または排除することができ、よって、従来のズームレンズシステムと比べてシステムの全体的な長さを縮小する。しかし、このような現代のズームレンズシステムの制限は、撮像の質、サイズ、および費用のさらなる改良を抑制する。例えば、現在利用可能な現代のズームレンズシステムは、倍率および焦点を同時に変えるために少なくとも2つの作動または可変素子を必要とする。また、ある現代のズームレンズシステムは、焦点を制御するための作動システムを必要とし、これは、画像の焦点を保つために、一定数の素子が変化することを必要とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、光線角度の範囲にわたって入射光線を撮像するためのズームレンズシステムを提供する。入射光線は、少なくとも位相によって特徴付けられる。ズームレンズシステムは、光軸を含み、少なくとも光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)によって特徴付けられる。ズームレンズシステムは、少なくとも2つの異なる焦点距離値間で選択可能な可変焦点距離を有する少なくとも1つの可変光学素子を含む、光軸に沿って配置される光学群を含む。光学群はまた、波面コーディング素子も含む。2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、光線角度の範囲に対応する複数のMTFが、波面コーディング素子のない同じズームレンズシステムよりも、誤焦点様の収差に対して感度が低くなるように、波面コーディング素子は、少なくとも入射光線の位相を変化させる。
【0010】
一実施形態では、ズームレンズシステムの使用方法は、光線角度の範囲にわたって入射光線を撮像する。入射光線は、少なくとも位相を含む。ズームレンズシステムは、光軸と、少なくとも2つの異なる焦点距離値間で選択可能な可変焦点距離を有する少なくとも1つの可変光学素子とを含む。ズームレンズシステムは、少なくとも光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)および2つの異なる焦点距離値によって特徴付けられる。該方法は、少なくとも2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、光線角度の範囲に対応する複数のMTFが、形状および大きさにおいて実質的に同様となるように、入射光線の位相を変更するステップを備える。
【0011】
一実施形態では、ズームレンズシステムは、光軸を含む。ズームレンズシステムはまた、光軸に沿って配置される光学群も含む。次に、光軸は、少なくとも2つの異なる焦点距離値間で選択可能な可変焦点距離を示す少なくとも1つの可変光学素子と、波面コーディング(WFC)素子とを含む。少なくとも1つの可変光学素子は、光軸に沿って移動可能ではない。光学群はまた、光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)および少なくとも2つの異なる焦点距離値によっても特徴付けられ、可変光学素子およびWFC素子は、複数のMTFが形状および大きさにおいて実質的に同様となるように、互いに協働する。
【0012】
本開示は、下記で簡潔に説明される図面と併せて得られる次の詳細な説明を参照することにより、理解することができる。図解の明確さの目的により、図面中のある素子は一定の縮尺で描かれない場合があることを注意する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本開示では、「ズームレンズシステム」および「ズーム撮像システム」は交換可能に使用され、「可変光学素子」は、光学素子のうちの1つ以上に対する電圧および/または圧力の印加、および光学素子のうちの1つ以上の移動および/または回転などの(しかしそれに限定されない)技術を使用することによって変更可能な光学的性質(焦点距離、透過率、および屈折率などであるがそれに限定されない)を有する光学素子を包含することを目的とする。
【0014】
ある非球面光学および信号処理の使用は、ある制限を軽減することによって、現代のズームレンズシステムに改良を提供することができる。本開示は、現代のズームレンズ撮像システムの性能、費用、およびサイズを改良するためのある非球面光学の使用に関する。検出されたぼやけた画像のような光学および信号処理は、ある収差の影響を低減または排除することができる。波面コーディングに対してそのような非球面および信号処理を利用するシステムは、例えば、米国特許第5,748,371号(以降、‘371特許)第6,873,733号(以降、‘733特許)、第6,842,297号(以降、‘297特許)、第6,911,638(以降、‘638特許)、および第6,940,649号(以降、‘649特許)で説明されており、そのそれぞれは参照することにより、本願に組み込まれる。ズームレンズシステムへの波面コーディングの追加は、焦点を制御するための作動システムの必要性を排除することができ、それにより、変化させる必要のある素子の数をさらに減少し、結果として、そのようなズームレンズシステムの費用およびサイズも削減する。高い信頼性、低費用、機械公差の低減、電力消費の低減、および熱的誘導変動および色依存などの環境因子への感度の低減を伴う、丈夫なズームレンズシステムを達成することが望ましい。
【0015】
現代のズーム撮像システムの簡単な例として、図3および図4に図示される2群撮像システムを考慮する。この撮像システムは、2つの図によって示される2つの構成を有する。図3に示される構成100では、被写体110は、像平面120上で光学群111および112によって撮像される。光学群111および112の各一つは、例えば、屈折素子、回折素子、ホログラフィック素子、および可変光学のうちの1つ以上を含む。検出器(図示せず)は、像平面120に位置し、撮像された被写体を検出する。被写体110が撮像システムの光軸121(破線で示される)上にあると、光学群111および112間を通過する被写体110からの光線は、図示されるように実質的に平行である。この場合、光学群111の焦点距離f1は、被写体110と光学群111の第1の主平面125との間の距離D1(双頭矢印で示される)に等しい。同様に、光学群112の焦点距離f2は、像平面120と光学群112の第2の主平面127との間の距離D2に等しい。
【0016】
図4は、2群撮像システムの変更構成100’を示す。図4の構成100’では、被写体110’は、図3の光学群111に対する被写体110の位置とは異なる、光学群111’に対する位置にある。光学群112が、図4で図3と同じである場合、像平面120上で被写体110’を明瞭に撮像するために、被写体110’の位置は、光学群111’の焦点距離の変化を必要とする。この場合、光学群111’の焦点距離f1’は、被写体110’と光学群111’の第1の主平面125との間の距離D1’に等しくあるべきである。
【0017】
なおも図3および図4を参照すると、被写体110および110’それぞれからの周辺光線は、122および122’として示される。図3および4の構成における像平面での周辺光線は、123と示される。2群撮像システムの全体的な倍率は、光軸121から測定されるような、像平面での周辺光線角度(θim)に対する、被写体での周辺光線角度(θObj)の比によって求められる。構成100と100’とを比較する際、構成100’における被写体での周辺光線角度は、θobjからθ’objへ増加する一方で、画像での周辺光線角度θimは固定されたままである。結果として、構成100’における倍率は、構成100よりも大きい。つまり、2つの光学群のうちの1つを変え、かつ被写体距離を変えることによって、像平面の位置を変えずに2群撮像システムの倍率が変化する。
【0018】
図5および6に示される別の状況では、被写体位置が変化しない。図5のズーム撮像システムの構成150では、光学群151および152は、被写体110を撮像する。光学群151は、バリエータとして働き、屈折力(例えば、倍率)を制御する。光学群152は、補償器として働き、像平面位置(例えば、焦点)を制御する。図6は、図5に示される同じズーム撮像システムの変更構成150’を示し、この場合、被写体での周辺光線角度θobjが不変のままである一方で、画像での周辺光線角度θ’imが構成150のθimから減少するように、光学群151’および152’の性質は、図5の光学群151および152とは異なる。言い換えると、図6の構成150’では、被写体110は、図5の光学群151に対する被写体110と同じ光学群151’に対する位置にあるが、光学群151’の右側への周辺光線が一点に集まる(図5の構成150に示されるように平行であることと比べて)という事実によって示されるように、光学群151’は、縮小した焦点距離をもたらす。よって、図6の光学群152’は、光学群152’の位置に対して固定された像平面120の位置(図5の光学群152に対する像平面120の位置と比べて)を保つために、増加した焦点距離(また、あるいは、低減した屈折力)を示す。結果として、構成150’におけるバリエータおよび補償器の組み合わせは、図5に示される構成に対する類似比と比べると、θ’imを超えるθobjの比によって得られる増加した全体的な倍率を伴う、像平面120での焦点画像をもたらす。つまり、像平面120での周辺光線123’の角度θ’imが、周辺光線123の角度θimよりも減少する一方で、被写体からの周辺光線122の角度θobjが一定のままであるため、図6の構成150’の全体的な倍率は、図5に示される構成150よりも増加する。よって、バリエータ(つまり、f1からf1’)および補償器(つまり、f2からf2’)の両方の焦点距離の変化により、固定距離での被写体の焦点画像の倍率が変化した。倍率の変化を達成するために、図5の光学群151および152と比べると、光学群151’および152’は、図6の被写体110および像平面120に対する光軸121に沿った物理的位置において変化しなかったことに注目する。
【0019】
よって、図3〜6は、同時に結果として生じる画像の焦点を保ちながらズーム撮像システムの倍率を変えるために、ズーム撮像システム中の構成要素の焦点距離に対する変更を利用することができることを図示する。倍率の変化をもたらすための光学素子の焦点距離の変化の利用は、例えば、電圧、圧力、移動、または回転を変更することによる、現代の光学素子の変動の利点を例示する。しかし、ズーム撮像システムの結果として生じる焦点距離変化はまた、生成される画像の質にも影響する場合がある。画質を低下させる場合のある光学収差もまた、焦点距離の変化によって影響される。このようなズーム撮像システムの実施例では、ズーム撮像システム内の構成要素の焦点距離が変化すると、ある基本的光学収差が変動する。特に、2種類の基本的光学収差、つまりフィールドまたは画像曲率および色収差は、このようなズーム撮像システムの性能の主な制限として働く場合がある。
【0020】
図7および8は、例示的ズーム撮像システム中の光学素子の焦点距離の変化が、このような基本的光学収差に影響を及ぼす1つの方法を図示する。図7および8は、従来の2レンズ撮像システムの2つの構成を示す。このシステムを説明するために使用される原則は、一般的な多素子の場合にも該当する。図7に示されるような2レンズ撮像システムの構成170は、各屈折率n1およびn2がある2つの光学素子171および172を含む。複数の光線180によって示されるように、これら2つの素子によって形成される画像は、湾曲像表面175上にある。像表面175の曲率の近似値は、光学素子171および172の屈折率を掛けた逆焦点距離を足すことによって、または概して、
【0021】
【数1】
によって決定することができ、式中、iは、光学素子に対応する整数であり、niは、i番目の光学素子の屈折率であり、fiは、i番目の光学素子の焦点距離である。像表面175の湾曲は、ある撮像用途では望ましくない。
【0022】
図8の変更構成170’は、光学素子171’および172’の屈折率が等しく(つまり、n1=n2)、光学素子171’および172’の焦点距離f1’およびf2’が互いのマイナスである(つまり、f1’=−f2’)、2レンズ撮像システムの特定構成を説明する。この構成では、像平面175’の曲率は、実質的にゼロであると考えてよい。図8の構成170’は、構成素子の実際の焦点距離および素子分離d(双頭矢印によって示される)によって決定される、特定の有効焦点距離を示す。素子分離dが固定されると、f1=−f2という関係からの光学素子171’および172’のいずれか一方の焦点距離のあらゆる変化は、像平面175’の湾曲をもたらす。結果として、2レンズ撮像システムの画質が低下し、撮像システムの倍率またはズーム位置の関数となる。
【0023】
図1に示されるような従来のズームレンズシステムは、個々の光学素子の焦点距離を変えることなく光軸21に沿った光学素子の移動を必要とするため、画像曲率の変化を受けないことが顕著である。そのような従来のズームレンズシステムにおける画像フィールドの近似曲率は、概して、倍率またはズーム位置が変わっても不変である。しかし、画像曲率の変化は、図3〜6に図示されるシステムのような、光軸に沿った光学素子の移動を利用しない現在利用可能な現代のズームレンズシステムにおいて発生する場合がある。
【0024】
光軸に沿った光学素子の移動を利用しない現代のズームレンズシステムにおいて遭遇される別の現象は、色収差の変動である。光軸に沿って光学素子を移動させることのない、光学素子の焦点距離の変化は、概して、システムによって示される色収差を変え、システム性能を制限する。
【0025】
図9および10は、光学素子の焦点距離の変化を伴う色収差の変化の簡単な例を図示する。図9および10は2素子レンズの2つの構成を示すものの、関与する原則は、焦点距離を変える複数の素子がある撮像システムに適用可能である。まず図9を参照すると、構成190は、光学素子191および192が近接近している(例えば、光学素子191および192間の距離が実質的にゼロである)2素子レンズシステムである。光学素子191および192は、異なる焦点距離、および一般に、異なるAbbe数またはV数を示す。周知のように、特定の光学材料のV数は、その光学材料に対する波長の関数として屈折率の変化を表す。光学素子191および192のパラメータは、概して、単色画像が最良焦点像平面で形成するように選択されるが、所与の材料の屈折率値の色依存(つまり、波長を伴う屈折率の変動)により、最良焦点の位置は、画像を形成するために使用される波長の関数となる。この効果は一般に色収差と呼ばれる。図9では、光193は、赤色照明195および青色照明197を含む。赤色照明195で形成される最良焦点画像は、赤色像平面196にあってよい一方で、青色照明197で形成される最良焦点画像は、青色像平面198にあってよい。所与の材料の屈折率が、概して波長の関数であるため、個々の光学素子の焦点距離もまた、波長の関数であり得る。波長を伴う所与の一式の光学素子に対する有効焦点距離の変化Δfは、その各V数で割った各光学素子の焦点距離の和によって、次式のように近似することができる。
【0026】
【数2】
図10に示される変更構成190’は、光学素子191’および192’のV数に対する焦点距離の比が互いのマイナスになるように(つまり、f1’/V1’=−f2’/V2’)、光学素子191’および192’のV数および焦点距離が選択される場合を図示する。パラメータのこの選択に対して、波長を伴う(各V数が有効である波長域以上)、一式の光学素子の有効焦点距離の変化Δfは、ほぼゼロである。よって、赤色照明195’および青色照明197’の両方が像平面198’で集束するように、一式の光学素子の有効焦点距離は、焦点距離およびV数の選択を介して、波長とはほぼ無関係にすることができる。しかし、構成190’における光学素子の焦点距離を不均等な割合で変更する(例えば、配置190’の全体的な倍率を変更する)と、Δfがゼロ以外になる場合があり、したがって、赤色照明195’および青色照明197’の両方が像平面198’で集束しなくなるように、色収差を再導入する場合がある。言い換えると、その中の1つ以上の光学素子の焦点距離の変動に基づく現代のズームレンズシステムは、倍率が変化すると色収差の変動を示す場合があり、したがって、低下した画質を提供する。
【0027】
図7〜10に図示される画像劣化の問題、ならびにその他の収差は、これから説明される波面コーディングを利用することによって、改善することができる。
【0028】
本開示で説明されるズームシステムは、光線角度にわたって入射光線を撮像する。このような入射光線は、ズームシステムによって撮像される波面を形成する少なくとも位相によって特徴付けられる。各ズームレンズシステムは、光軸により動作し、少なくとも光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)によって特徴付けられる。各ズームレンズシステムでは、光学群は、光軸に沿って配置され、少なくとも2つの異なる焦点距離値間で選択可能な可変焦点距離を有する少なくとも1つの可変光学素子を含む。光学群はまた、波面コーディング素子も含む。2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、光線角度の範囲に対応する複数のMTFが、波面コーディング素子のない同じズームレンズシステムよりも、誤焦点様の収差に対して感度が低くなるように、波面コーディング素子は、少なくとも入射光線の位相を変化させる。少なくとも2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、光線角度のそれぞれに対応するMTFは、形状および大きさにおいて実質的に同様である。
【0029】
波面コーディングがあるズームレンズシステムの一実施形態を図11および12に図示する。まず図5と合わせて図11を参照すると、構成200では、被写体110は、バリエータとして働く光学群151、および波面コーディング(WFC)補償器202によって撮像される。構成200では(図5の構成150のように)、被写体110からの光は、周辺光線122とともに、WFC補償器202へ向かって光学群151を通って移動する。光学群151を通って移動する光は、波面、ならびに光軸121に平行な周辺光線を含む。次いで、WFC補償器202は、ぼやけた画像が検出器210上に形成されるように、その上に入射する光の波面をコード化する。検出器210におけるぼやけた画像の電子的表示は、焦点関連収差を実質的に感じない最終像220を形成するデジタル信号プロセッサ(DSP)215へ向けられる。DSP215は、例えば、ぼやけた画像中のぼやけを除去するように、および/または、特定作業に対して適切な方式で最終像をフォーマットするように構成することができる。例えば、DSP215は、最終像200を機械または人間の観察に対してフォーマットすることができる。
【0030】
図6と併せて図12を参照すると、構成200’が示され、図中、バリエータの焦点距離は、構成200で示されるものから変更されている。つまり、光学群151’は、変更された焦点距離f1’を示し、ズームレンズシステムの倍率は、構成200で示されるものから変更されている。結果として、光学群151’の右側に現れる光は、図示されるように、波面ならびに光軸121に平行ではない周辺光線を含む。WFC補償器202’もまた、ぼやけた画像が検出器210上に形成するように、その上に入射する光の波面をコード化する働きをする。ぼやけた画像の電子的表示は、DSP215によってさらに処理され、焦点関連収差を実質的に感じない最終像220’を形成する。
【0031】
光学群151と光学群151’との違いは、この同じ光学群が、f1からf1’への焦点距離の変化を可能にする可変光学素子を含むことである。WFC補償器202とWFC補償器202’との違いは、この同じ光学素子を、例えば、WFC補償器によって示される焦点距離を、構成200でのf2から構成200’でのf’2に変更することによって、焦点の少なくとも粗調整を可能にするよう可変に構成することができることである。よって、図11および12にそれぞれ示される構成200および200’では、倍率および最良焦点位置の両方の調整を可能にするために、バリエータおよび補償器の両方が可変である。波面コーディングは、図9および10に図示されるような色収差などの、焦点関連収差の影響を低減するために、協働して使用される。
【0032】
波面コーディングがあるズームレンズシステムの別の実施形態を図13に示す。図11および12と併せて図13を参照すると、構成200”では、バリエータの焦点距離は、図11の構成200に示されるものから再び変更されている。つまり、光学群151”は、変更された焦点距離f1”を示し、ズームレンズシステムの倍率は、構成200に示されるものから再び変更されている。しかし、図12の構成200’とは違って、WFC補償器202は不変のままである。結果として、構成200”におけるWFC補償器202を通って伝達される周辺光線が、構成200の周辺光線204または構成200’の周辺光線204’とは異なる一方で、最終像220”を鮮明かつ明瞭に保つために必要な焦点変化は、固定WFC補償器202、検出器210、デジタル信号プロセッサ(DSP)215”の組み合わせによって達成することができる。DSP215”は、例えば、ズームシステムの特定構成に応じて信号処理を行うようにプログラムされる。一実施形態では、DSP215”は、光学群151”およびWFC補償器202の構成要素パラメータについての電子的フィードバックを取得する。別の実施形態では、DSP215”は、検出された画像からズームレンズシステムの構成またはパラメータを自動的に推測する。
【0033】
よって、図11〜13に図示される実施例は、波面コーディングを含む2部類のズームレンズシステムを説明する。1部類では、光学素子構成に起因する収差は、非球面光学および検出された画像の信号処理を利用することによって制御する。他方の部類では、画質を犠牲にすることなく、倍率を変えながら鮮明な画像を形成するために少なくとも1つ少ない可変光学素子を使用する。1つ以上の付加的な可変光学素子を含むことにより達成されることのある焦点移行は、固定WFC補償器(図13)および結果として生じた画像の信号処理によって提供される効果である。それにもかかわらず、両部類のそのようなズームレンズシステムは、単一ズームレンズシステムに組み込むことができる。つまり、WFC補償器および信号処理は、焦点の変化により、かつズームレンズシステムの特定レンズ構成の画像劣化収差により引き起こされる効果を低減することができる。したがって、1つ以上の可変光学素子を排除するよりもむしろ、波面コーディングがあるズームシステムは、WFC補償器および画像信号処理を伴わずに、必要とされるよりも粗い態様で(例えば、あまり精密でない制御で)変化する1つ以上の可変光学素子を利用することができる。
【0034】
光学特性を、電圧、圧力、移動、および回転などであるがそれに限定されないパラメータの変動によって変更することができる、特定種類の光学素子を、この直後に、改良されたズームレンズシステムとの関連で説明する。
【0035】
図14および15は、バリエータとして利用される液体レンズを示す。現在利用可能な少なくとも2種類の液体レンズがある。フランス、リヨンのVarioptic Companyより現在市販されている1種類は、電圧の変化に従って、形状を変化させる。カリフォルニア州、サンディエゴのRhevision Technology, Inc.より入手可能なもう1つの種類は、圧力の変化に従って、形状を変化させる。このような液体レンズは、光学素子が物理形状を変化させ、従来のズームレンズシステムのように、光軸に沿った光学素子の移動を必要とせずに、屈折力の変動をもたらすという点で、同様である(固定光学と比べて)。しかし、液体レンズが理想的な挙動を示したとしても、そのような液体レンズで構成されるズームレンズシステムは、なおも図7〜10を参照して論議されるような、画像曲率および/または色収差を抱える。球面収差、コマ収差、非点収差、および温度関連収差などのその他の収差、およびフォーム誤差もまた、そのようなシステムの画像性能を制限する場合がある。波面コーディングを液体レンズズームレンズシステムに含むと、改善した画質で画像を生成するようにそのような誤差を緩和することができる。
【0036】
図14は、波面コーディングを含む液体レンズズームレンズシステムの一構成250を示す。構成250では、液体レンズ251はバリエータとして働き、ズームレンズシステムの倍率を変更する。液体レンズ251を通って伝達される光は、波面、ならびに光軸121に実質的に平行である周辺光線を含む。WFC補償器252は、検出器210でぼやけた画像が形成するように波面をコード化する。WFC補償器252は、固定素子であってよく、またあるいは、像平面の位置(例えば、検出器210の理想的な位置)を制御するための、液体レンズ光学素子などの可変光学素子であってもよい。次いで、DSP215は、検出器210からのぼやけた画像を代表するデータを、人間および/または機械の観察に適しており、焦点関連収差を実質的に感じない最終像260に変換する。
【0037】
図15を参照すると、変更構成250’は、構成250の液体レンズ251と比べて、結果として生じるズームレンズシステムの倍率を変更し、図示されるように、周辺光線が光軸121に平行でなくなるように液体レンズ251’を通って伝達される光を変更する、液体レンズ251’を含む。固定および/または可変素子を含むことができるWFC補償器252’は、再度、検出器210でぼやけた画像が形成するように波面をコード化する。DSP215’により、最終像は、人間および/または機械の観察に適して、焦点関連収差を感じなくなる。構成250および250’のWFC補償器252および252’はそれぞれ、例えば、液体レンズ251および251’それぞれの変化に対する反応において変化するように構成することができる。次いで、DSP215および215’は、液体レンズ251および251’、および/またはWFC補償器252および252’の構成に左右される、またあるいは左右されない、処理を行うことができる。WFC補償器252または252’、およびDSP215または215’を含むことによって、ズームレンズシステム中の可変光学素子のうちの1つは、排除される、簡素化される、またはあまり精密ではない作動および/または変動を必要とすることができる一方で、波面コーディングのないズームレンズシステム構成に存在する収差の影響をなおも軽減する。
【0038】
図16および17は、液体レンズバリエータ251および251’の代わりに液晶バリエータ281、281’が利用されることを除いて、図14および15と同様の構成を示す。「電気的可変焦点高分子安定化液晶レンズ」と題された、米国特許出願公開第2005/0018127(A1)号(以降、‘127出願書)で説明されているもののような液晶光学構成要素は、液晶光学素子の光学特性を変化させるために電圧またはその他の手段を使用する。例えば、液晶光学素子の有効焦点距離は印加される電圧によって制御することが可能であり、それにより、該素子は、現代のズームレンズシステムでの使用に潜在的に適切となる。その他の液晶レンズは、Yeらによる「Liquid−cyristal lens with a focal length that is variable in a wide range」、Applied Optics、vol. 43、no. 35 (2004)、pp.6407−6412、およびOkadaらによる「フレネルレンズを有する液晶レンズ」と題された米国特許第4,904,063号で説明されている。ズームレンズシステムでの液晶バリエータの使用は、図7〜10を参照して上記で論議される種類の収差をなおも潜在的に引き起こし、よって性能を制限する場合がある。例えば、画像曲率、色収差、球面収差、非点収差、コマ収差、温度関連収差、および液晶バリエータの包含に起因する一般的なフォーム誤差のうちのいずれも、撮像性能を低減する場合がある。下記で説明されるような、WFC補償器282、282’、および信号処理215の包含を介したこのような種類のシステムに対する改良は、図14および15に示されるものと一般に同様である。より少ない可変光学素子、より低い電力消費、より短いシステム全長、およびより低い費用は、WFC補償器282、282’のない対応システムと比べて、図16および17に示されるシステムで達成することができるあらゆる改良である。
【0039】
図16および17の構成を詳細に考慮すると、図16は、結果として生じるズームレンズシステムの倍率を変更するためのバリエータとして働く液晶レンズ281がある構成280を示す。構成280では、液晶レンズ281を通って伝達される光は、波面、ならびに光軸121に実質的に平行である周辺光線を含む。WFC補償器282は、波面をコード化し、後に、検出器210でぼやけた画像を形成する。WFC補償器282は、像平面の位置(つまり、検出器210の理想的な位置)を制御するための、別の液晶レンズ、移動光学、および/または他の光学素子などの、固定または可変光学素子であってもよい。次いで、DSP215は、検出器210からのぼやけた画像の電子的表示を、人間および/または機械の観察に適しており、かつ焦点関連収差を実質的に感じない最終像290に変換する。
【0040】
図17では、変更構成280’は、結果として生じるズームレンズシステムの倍率を変えるよう、ならびに、それを通って伝達される周辺光線が光軸121に平行でなくなるように液晶レンズ281’を通って透過される光を変えるよう、液晶レンズ281と比べて変更される液晶レンズ281’を含む。再度、固定または可変要素いずれかを含むWFC補償器282’は、その上に入射する光の波面をコード化し、検出器210でぼやけた画像を形成する。DSP215’により、最終像290’は、人間および/または機械の観察に適して、焦点関連収差を感じなくなる。
【0041】
一実施形態では、ズームシステムにおいて使用される光学構成要素は、固定素子(例えば、固定高額性質があるが、必ずしも固定位置ではない素子)を含み、この固定要素は、光軸に沿っていないこともある方向にシステムに対して移動可能であることによって、システムを形成するために必要とされる長さを低減する。図18および19は、屈折力を変えるための1つの移動可能光学配置の例を示す。図18の光学配置300は、配置の有効屈折力または焦点距離が、光学素子のうちの1つの摺動運動を介して、少なくとも2つの値の間で変化することが可能となるように構成される2つの光学素子を含む。光学配置300では、固定および静止光学素子302は、開口304および正レンズ305の付近に配置される。静止光学素子302は、例えば、図示されるように、正曲率表面形状による屈折力を示す第1の部分306、および屈折力がない実質的に平面または平坦表面形状である第2の部分308といった、2つの部分を含む。光学配置300はまた、少なくとも2つの位置間で摺動可能に構成されている横摺動光学素子310も含む。摺動光学素子310は、図示されるように、負の曲率を含む第1の部分312、曲率または屈折力が実質的にない平面である第2の部分314、および正の曲率を示す第3の部分316といった、3つの部分を有する。図18では、摺動光学素子310は第1の位置で示され、図中、静止光学素子302の第1の部分306および第2の部分308は、図示されるように、素子310の第1の部分312および第2の部分314とそれぞれ並んでいる。開口304、静止光学素子302、および摺動光学素子310の第1および第2の部分312および314の組み合わせは、それを通って伝達される光に対する屈折力を提供しない。つまり、部分312の負の曲率の光学的効果が、部分306の正の曲率の光学的効果を相殺する一方で、部分308および314のそれぞれには効果がない。
【0042】
図19は、光学配置300の素子を含む光学配置300’を示すが、光学素子310は、光学配置300内のその位置と比べて、変更された位置にある。光学配置300’では、光学素子310は、光学配置300内のその位置に対する第2の位置への、システムの光軸(光軸は、概して、開口304の平面と直角であると定義される)に対して直角の方向にある、開口304の直径の約1/2である距離Sによって移動されている。摺動光学素子310が図19に示される第2の位置にあると、静止光学素子302の部分306は、摺動光学素子310の部分314と並び、静止光学素子302の部分308は、摺動光学素子310の部分316と並ぶ。結果として、開口304、静止光学素子302、および第2の位置にある摺動光学素子310の組み合わせを介して伝達される光は、正の屈折力に遭遇する。
【0043】
言い換えると、開口304と組み合わせた、静止光学素子302および摺動光学素子310の組み合わせは、摺動光学素子310の摺動運動に応じて、屈折力の2つの異なる値をもたらす。図18の光学配置300に示されるような第1の位置での配置は、ゼロの有効屈折力をもたらす。摺動光学素子310が図19に示されるような第2の位置に移行されると、素子の有効曲率は正の屈折力を提供する。よって、光軸に対して垂直に光学素子310を摺動させることによって、有効屈折力は、ゼロから所定のゼロ以外の値に変えることができる。図18および19に示される構成に対する薄いレンズの同等な表現は、光学配置300に対してゼロの屈折力がある平面/平面素子、および光学配置300’に対して正の屈折力がある平面/凸面素子である。一般に、光学配置300は、一連の屈折力を示すように構成することができ、その場合、図18のゼロ屈折力構成は特殊な場合である。
【0044】
図20および21に示されるような波面コーディングを使用するズームシステムに利益をもたらすために、前述の摺動光学配置を使用することができる。図20および21に示される構成では、図18および19の摺動光学配置はバリエータとして使用される。図20の構成400は、摺動光学素子310の位置が光学配置300に対する低屈折力をもたらすズームレンズシステムに対応する。この場合、固定されているか動的であるかのいずれかである、WFC補償器402は、結果として生じる被写体110の最終像410が実質的に焦点関連収差を感じないように、検出器210およびDSP215と協働する。そのような収差は、例えば、システムで使用される少数の光学素子では十分な収差制御が可能でないシステムの特定光学構成の結果であるか、あるいは、バリエータとして働く光学配置300の光学特性の引き起こされた変化によって生成される。図21に示されるように、変更構成400’は、摺動光学素子310の位置が、光学配置300によって提供されるよりも大きい屈折力がある光学配置300’を提供する状況を図示する。
【0045】
図22および23は、バリエータによって提供される屈折力が、平面/非球面光学素子の相対的位置とともに連続的に変化するような、摺動バリエータ構成での平面/非球面光学素子の使用を図示する。つまり、2つの可能な位置間で摺動光学素子310の相対的位置を選択することによって、光学配置300および300’が、屈折力の2つの値の間での選択を提供する一方で、平面/非球面光学素子の使用は、連続範囲の屈折力を提供する(例えば、連続範囲は、光軸121に垂直な方向に摺動光学素子を移動させることによって得られる)。
まず図20と併せて図22を参照すると、図20の構成400での光学配置300は、図22で示されるズームレンズシステムの構成420での光学配置430と交換される。光学配置430は光学配置300中にあるような開口304を含むが、光軸121に垂直な方向に互いに対して摺動可能である、平面/非球面の第1および第2の光学素子432および434も含む。図23を簡潔に参照すると、ズームレンズシステムの変更構成420’は、第1および第2の摺動光学素子432および434が、構成430でのそれらの位置と比べて、互いに対して移動されている、光学配置430’を含む。結果として、光学配置430’は、光学配置430によって提供されるものと比べると、異なる値の屈折力を提供する。構成420および420’は、最終像450を生成するWFC補償器442、検出器210、およびDSP215をさらに含む。WFC補償器442は、例えば、図11〜17および20〜21に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能するように構成され、さらに、光学配置430と協働するようにカスタマイズすることができる。
【0046】
光学配置430および430’として示されるレンズ構成は、一般的にアルバレスレンズと呼ばれる(例えば、米国特許第3,305,294号を参照)。アルバレスレンズの第1および第2の光学素子の非球面表面形状は、式
【0047】
【数3】
によって表される立方体として表現することができる。
【0048】
式中、yは、図22および23の紙面における垂直方向寸法であり、高さ(y)は、対向する平面から測定されるような各摺動光学素子の非球面表面の高さであり、aは定数パラメータである。
【0049】
図22および23に示されるような光学素子432および434の組み合わせは、素子432および434間での位置の相対的移行の量とともに近似的に変わる2次位相または屈折力を伴う複合光学素子に効果的に同等である。つまり、素子432および434の複合位相は、
【0050】
【数4】
として表現することができる。
【0051】
式中、zは、光軸121に沿った寸法であり、Δは、図23に示されるような、素子432および434間の相対的摺動距離である。式(2)で見ることができるように、第1および第2の摺動光学素子の組み合わせに関連する2つの位相項、つまり、y2の2次項および定数項がある。定数項は、Δに左右され、理想的には、結果として生じる画像に実質的に影響しないピストンと呼ばれるズームレンズシステムに、収差を加える。2次項は、Δに応じて、屈折力を提供する。定数パラメータaの変動は、素子432および434の相対的移動への結果として生じる屈折力の感度を増加または減少させる働きをする。したがって、互いに対して素子432および434を移行することによって、組み合わせの有効屈折力を変えることができる。
【0052】
図22および23に図示されるズームレンズシステム中のアルバレスレンズ(つまり、光学配置430および430’)は、アルバレスレンズによって提供される屈折力を変更するために、光軸121に垂直な平面で反対方向に移動する第1および第2の摺動光学素子432および434の両方を有する。例えば第2の摺動光学素子434だけといった、摺動光学素子のうちの1つのみが移動される場合、線形位相シフトが、移行された2つの素子の組み合わせに起因する。この位相シフトは、素子変位の関数Δとして、画像を空間的に変位させる働きをする。この位相シフトは、より複雑な形態の摺動可能光学素子が使用される場合に、除去することができる。例えば、移行された屈折力項の組み合わせが、屈折力の量および素子変位に応じて、線形位相シフトをもたらすように、屈折力の近似値を提供する2次項も含むことができる。屈折力項からの位相シフトは、素子の組み合わせをもたらす3次項からの位相シフトを相殺することが可能であり、その場合、単一の素子のみが、連続的可変量の屈折力があるアルバレスレンズをもたらすように移行される必要がある。
【0053】
図24および25は、1つの素子しか摺動しないが、各素子の両面が非球面である、バリエータとして働く連続的可変摺動光学素子の変動を図示する。図20と併せて図24を参照すると、図20の構成400中の光学配置300は、図24のズームレンズシステムの構成460では、光学配置470に置き換えられている。光学配置470は、光学配置300のように、開口304を含むが、第1の非球面/非球面素子472および摺動する第2の非球面/非球面素子474も含む。素子472は、前面475および裏面476を含み、その両方とも非球面表面形状を有する。素子474も、前面477および裏面478を含み、その両方とも非球面表面形状を有する。図24および25に図示される例では、素子472および474は、素子の外面(例えば、図示されるように、互いに向き合わない表面)上の屈折力および内面上の三次元表面を含む。つまり、素子472の表面475は負の屈折力を有し、素子472の表面476は三次元表面形状を有する。同様に、素子474の表面477は、素子472の第2の表面476の三次元表面形状に対応する三次元表面形状を有し、素子474の表面478は正の屈折力を有する。
【0054】
続けて図24を参照すると、光学配置470では、素子472は、開口304に対して静止したままであるように構成される。あるいは、素子472はまた、例えば、光軸121に直角である方向に、開口304に対して摺動可能に構成することができる。素子474は、光学配置470が屈折力の連続的変動を提供することが可能となるように、開口304および素子472に対して摺動可能である。素子472に対して空間的に移動する素子474は、光学配置470の有効屈折力の変化をもたらす。つまり、素子472および474の組み合わせは、素子474の摺動運動により連続的範囲の屈折力を生じ、検出器210に対して光軸121を中心に保ち、収差を最小化するために付加的な光学的自由度を提供するように構成することもできる。構成460は、最終像490を生成するWFC補償器482、検出器210、およびDSP215をさらに含む。WFC補償器482は、例えば、図11〜17および20〜23に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能し、さらに、光学配置470の固有の特徴に適合するようカスタマイズすることができる。
【0055】
素子474の摺動可能構成は、図24と併せて図25を参照することによって図示される。図24の光学配置470は、素子472および474が互いに完全に重なり合って示され、つまり、光軸121に沿って互いに対してほぼ中心にある。図25の光学配置470’では、素子474は、変位Δによって素子472に対して下方に移動されている。図24では、光学配置470は最小屈折力構成を提供し、図25では、光学配置470’はより大きい屈折力構成を提供する。
【0056】
非球面光学素子はまた、もう一方に対する回転する1つの非球面素子が屈折力の変化を引き起こすように、構成することもできる。この種類の回転素子の一例は、Bakerらの米国特許第4,650,292号(以降、’292特許)で説明されている。
【0057】
図26は、2つの素子を有する光学配置の屈折力の変化を達成するための素子の回転を図示する。ズームレンズシステムの構成500は、光学配置510を含む。図18および19と併せて図26を参照すると、光学配置510は、図18および19の光学配置300、300’に示されるような、開口304の付近に配置される静止光学素子302’を含む。光学素子302’は、負の屈折力を提供する部分、および屈折力を提供しない平面部分を含む。光学配置510は、反時計方向518(矢印で示されるような)または時計方向518’のいずれかに回転軸516の回りに回転可能である、第2の回転可能光学素子514をさらに含む。素子514は、非球面表面519および平面表面520を含む。あるいは、素子514は、図24に示される素子472および474のような非球面/非球面素子であってもよい。素子302’および514の表面曲率および軸516の位置は、素子514が軸516の回りを回転すると、光学配置510が可変の屈折力を提供するように選択される。よって、摺動可能光学素子を含む前述の光学配置のように、光学配置510は、従来のズームレンズシステムのように光軸に沿った付加的な長さを必要とせずに可変屈折力を提供するよう、光軸121に直角な平面での光学素子の移動を含む。構成500は、WFC補償器522、検出器210、およびDSP215をさらに含み、最終像530を生成する。WFC補償器522は、例えば、図11〜17および20〜25に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能し、さらに、光学配置510と協働するようにカスタマイズすることができる。
【0058】
図27および28は、改良されたズームレンズのバリエータで使用される摺動素子のさらに別の変動を図示する。図27および28で図示される場合では、単一の摺動非球面素子570は、第2の光学素子を使用せずに屈折力を変える。つまり、2つの補足素子のうちの少なくとも1つがもう1つに対して移動する図20〜26に示されるような構成とは対照的に、図27および28の構成550および550’はそれぞれ、単一の移動可能光学素子570しか含まない。
【0059】
まず図27を参照すると、光学配置560は、開口304、および開口304に対して移動可能である移動可能光学素子570を含む。移動可能光学素子570の連続または不連続移動によって、異なる屈折力に対応する素子570の異なる部分は、光学配置560が、開口304に対する素子570の相対的位置に応じて変化する屈折率を提供するように、開口304を通して照射される。図27が非球面表面572および平面表面574を含むものとしての素子570を示す一方で、素子570は、所望の屈折力変動を達成するように、非球面/非球面の組み合わせまたは平面/非球面の組み合わせなどの、その他の表面輪郭で構成することができる。
【0060】
図28は、光学配置560’を含む構成550’を示し、図中、移動可能光学素子570’は、非球面/平面表面輪郭の異なる部分が開口304を通して図示されるように、図の平面で下方に摺動されている。素子570が図27および28で移動可能(例えば、直線摺動として)に示されている一方で、移動可能光学素子もまた、他の方法で移動して屈折力の変動を提供することができる(例えば、図26に示されるように、回転軸の回りの回転によって)。構成550および550’は、それぞれWFC補償器582および582’、検出器210、およびDSP215をさらに含み、図示されるように、最終像590および590’をそれぞれ生成する。WFC補償器582および582’は、例えば、図11〜17および20〜26に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能し、さらに、光学配置560および560’の特定の特徴と協働するようカスタマイズすることができる。
【0061】
ズームシステムに使用するための摺動光学素子に対するさらに別の変動は、摺動開口、およびバリエータとして使用される非球面光学素子を伴う。米国特許第6,603,608号でToginoによって説明されているものなどの摺動開口は、非球面光学素子のある部分だけが一度に照射されるように、非球面光学素子に対して移動する。次に、開口のこの移動は、開口/非球面光学の組み合わせに対する不連続または連続的可変屈折力をもたらす。摺動開口および非球面光学素子の組み合わせは、変化する屈折力を提供する光学配置を効果的にもたらす。
【0062】
図29および30は、そのような摺動開口装置を含む改良されたズームレンズシステムの例を図示する。図29に示される構成600は、順に開口604および非球面光学素子606を含む光学配置602を含む。開口604の連続または不連続移動によって、異なる屈折力に対応する素子606の異なる部分は、光学配置602が、素子606に対する開口604の相対的位置に応じて可変屈折力を提供するように、開口604を通して照射される。構成600では、光学配置604がそれを通って伝達される光の第1の値を提供するように、開口604および素子606の両方は、図の平面で光軸121に対して中心となって示される。図30は、素子606の異なる部分を照射するよう光学配置602’が(図29の光学配置602中のその位置に対して)移動されている構成600’を示す。特に、光学配置602’を通って移動する光が、屈折力の異なる第2の値を経験するように、開口604は、光軸121に対して図の平面で上方に移動されて示されている。
【0063】
図29および30を続けて参照すると、素子606が非球面表面608および平面表面610を含むとして示される一方で、あるいは、非球面光学素子は、開口604と協働して所望の屈折力変動を達成するように、前述の非球面/非球面の組み合わせまたは平面/非球面の組み合わせなどであるがそれに限定されない、その他の表面構成で構成することができる。また、開口604は、横方向に摺動可能、または例えば図18〜28に示される移動可能光学素子の移動に類似している方式で、光軸に直角である平面で回転軸の周りを回転可能であってもよい。構成600および600’は、それぞれWFC補償器612および612’、検出器210、およびDSP215をさらに含み、最終像620および620’をそれぞれ生成する。WFC補償器600および600’は、例えば、図11〜17および20〜28に示される前述のWFC補償器と同様の方式で機能し、さらに、光学配置602および602’の特定の特徴と協働するようカスタマイズすることができる。
【0064】
図11〜17および20〜30を再び参照すると、入射光線角度(つまり、θobj内にある被写体110からの光線)の範囲は、ズームシステムのそれぞれによって撮像され、光線角度の範囲にわたるMTFが、大きさおよび形状において同様であり、ズームシステムが誤焦点様の収差に対して感度が低くなるように(波面コーディングのない同じズームシステムと比べて)、波面コーディング素子は、光線によって表される波面の位相を変更する。
図31および32は、本開示に従ったズームレンズシステムの別の例を図示する。図31は、第1の光学群702(焦点距離f1を伴う)および第2の光学群704(焦点距離f2を伴う)を含む2群ズームレンズシステムの構成700を示す。第2の光学群704は、可変光学素子706およびWFC素子708を含む。第1および第2の光学群702および704は、光軸722と並ぶ。構成700は、図示されるように、軸上光線725および軸外光線727の両方を受け取るように構成される、広角システムとして示される。第1および第2の光学群702および704は、検出器210上に軸上および軸外光線725および727の両方を撮像するように構成される。検出器210によって生成される画像データは、DSP215において処理され、最終像720を生成する。第1および第2の光学群702および704は、屈折、回折、およびホログラフィック素子を含むがそれに限定されない、複数の光学素子を含むことができる。WFC素子708は、素子706の表面に形成される、またあるいは、それとともに一体的に形成される可変光学素子706から分離することができる。
【0065】
図32は、第2の光学群704’を含む構成700’を示す。構成700’では、可変光学素子706は、図31の素子706の焦点距離f2とは異なる焦点距離f2’を有する可変光学素子706’を形成するように変更される。焦点距離の変化は、例えば、可変レンズの上述の実施のうちの1つによって達成することができる。光学群704’もまた、光学群704のWFC素子708の特徴と同じ、または異なってもよい特徴があるWFC素子708’を有する。光学群704’もまた、構成700の光学群704および702の位置と比べて、光軸に沿って第1の光学群702(矢印730によって示される)により近い。構成700’は、検出器210上に撮像され、最終像720’を形成するようDSP215において処理される、軸上およびほぼ軸外の光線725’(破線の楕円によって示される)を受け入れる望遠システムとしての使用に適している。言い換えると、構成700および700’は、光軸722に沿った光学群706、706’の移動および可変光学群704、704’の焦点距離変動を組み合わせるズームレンズシステムの、広角および望遠状態をそれぞれ図示する。
【0066】
上記のように、WFC素子708の固有の特徴も変えてよい。例えば、WFC素子708によって達成される位相変動を、第2の光学群704および/または704’の構成に応じて変えることができるように、WFC素子708は、適応光学素子または空間光変調器を使用して実施することができる。また、構成700’でDSP215によって行われる信号処理は、構成700で行われるものと同じであっても、そうでなくてもよい。構成700’での信号処理は、第2の光学群704’の変化に適応するように変更することができる。
ズームレンズシステム中の少なくとも1つの光学群の移動および焦点距離変動を同時に達成することによって、図31および32に図示されるズームレンズシステムは、従来のズームレンズシステム単独によって必要とされるよりも少ない光軸にそった光学群の移動、および現代のズームレンズシステム単独によって必要とされるよりも少ない焦点距離変動を使用して、広角から望遠の一連の特徴を達成することができる。さらに、WFC素子708は、従来または現代のズームレンズシステム構成によって達成可能ではない収差補償を、さらに提供することができる。例えば、図11〜17および20〜30に示されるような、前述の改良されたズームレンズシステムのいずれも、このような前述のシステムに移動機構を備えてすでに示した焦点距離変動を補うことによって、図31および32で例示されるように、移動および焦点距離変動を同時に実施するように変更することができることが注目される。
【0067】
図31および32に図示されるような構成700および700’、およびWFC素子708のない同等の構成を、次の例示的特徴を使用して数値的にモデル作成した。構成700では、群702および704の組み合わせによって示される有効焦点距離は、2.7mmである。群702の焦点距離f1を、−6.62mmと想定し、群704の焦点距離f2は、3.41mmである。群702および704の主平面間の間隔は、4.33mmである。構成700’では、群702は静止したままであり、焦点距離f1は変化しない(なおも−6.62mm)一方で、群704’の焦点距離f2’は、4.04mmに変化する。群702および704’の組み合わせによって示される有効焦点距離が5.4mmとなるように、群702および704’の主平面間の間隔は、1.71mmである。光線の波長は、0.55ミクロンと想定され、検出器210は4ミクロン平方の画素を含むと想定される。
【0068】
様々な光学群の具体的な記述は、周知の垂下方程式に由来し、
【0069】
【数5】
式中、z=表面の垂下、c=表面曲率、k=円錐定数、r=頂点からの半径方向距離、およびan=非球面定数である。表面は、図31および32の構成700および700’で紙の左側からズームレンズシステムに接近する光線によって見られるものとして定義される。構成700および700’の数値的モデル化で使用される規定は、下記によって求められる。
【0070】
【表1】
WFC素子708の効果を図示するために、図31および32に図示される構成700および700’と同等であるが、WFC素子708のない光学配置に対応する光線遮蔽曲線のペアを図示する、図33〜36にまず注意が向けられる。図33〜36および46〜49の全てにおいて、軸「EY」は、像平面(例えば、検出器210の位置)の空間Y軸に対応し、軸「PY」は、瞳孔平面(例えば、入射光線によって遭遇される第1の光学群702の第1の表面)の空間Y軸に対応し、軸「EX」は、像平面の空間X軸に対応し、軸「PX」は、瞳孔平面のX軸に対応する。
【0071】
当技術分野で周知のように、光線遮蔽曲線は、所与のシステム中に存在する焦点関連収差の程度を示すことができる。光線遮蔽曲線は、瞳孔平面上の所与の光線位置に対して、光線が画像化する像平面上の対応する位置を描画することによって、算出される。例えば、完璧に焦点が合ったシステムに対しては、x軸およびy軸光線遮蔽曲線は、EY=0およびEX=0軸に沿ったまっすぐな水平線となるべきである。理想的な水平線からの逸脱は、システム中の種々の収差の存在を示す。例えば、傾斜した直線の光線遮蔽曲線(つまり、ゼロ以外の傾斜の直線)は、誤焦点、つまり、瞳孔位置とともに直線的に増加する像平面の高さを示す。また、yグラフおよびxグラフが異なる傾斜を示す場合、光線遮蔽曲線は、非点収差を示す。さらに、光線遮蔽曲線の傾斜が、画角の関数として変化する場合、光線遮蔽曲線はフィールド湾曲を示す。加えて、光線遮蔽曲線が三次曲線である場合、その光線遮蔽曲線は球面収差を示す。よって、光線遮蔽曲線は、所与の光学システムに存在する種々の収差を示すことができる。
【0072】
図33は、構成700を通過する軸上光線725に対応するがWFC素子708のない、y軸光線遮蔽曲線754およびx軸光線遮蔽曲線756についてのyグラフ750およびxグラフ752を示す。同様に、図34は、構成700を通して撮像されている軸外光線727に対応するがWFC素子708のない、y軸光線遮蔽曲線764およびx軸光線遮蔽曲線766についてのyグラフ760およびxグラフ762を示す。図35は、構成700’を通過する光線725’の軸上部分に対応するがWFC素子708のない、y軸光線遮蔽曲線774およびx軸光線遮蔽曲線776についてのyグラフ770およびxグラフ772を示す。図36は、構成700’を通過する光線725’の軸外部分に対応するがWFC素子708のない、y軸光線遮蔽曲線784およびx軸光線遮蔽曲線786についてのyグラフ780およびxグラフ782を示す。
【0073】
図33〜36のそれぞれを別々に対処すると、図33に示されるy軸およびx軸光線遮蔽曲線754および756は、実質的に一定傾斜の直線であり、よって誤焦点を示す。図34では、y軸光線遮蔽曲線764およびx軸光線遮蔽曲線766が異なる傾斜を示すため、誤焦点に加えて非点収差の存在を示す。図35および36では、光線遮蔽曲線774および776は、実質的に直線であるが、曲線760および766からの反対傾斜を有し、構成700’が構成700とは反対の誤焦点を示すことを示す。つまり、図33および34に示される誤焦点は、例えば、構成700での像平面(つまり、検出器210の位置)を傾斜させることによって部分的に修正できる一方で、像平面のそのような移動は、構成700’によって示される誤焦点を悪化させる。言い換えると、図33〜36に示される誤焦点の修正は、例えば、望ましくない構成の関数としての像平面の移動を必要とする。
【0074】
構成700および700’と同等であるがWFC素子708がない構成の非理想的性能をさらに図示するため、このような構成の算出された変調伝達関数(MTF)を図37に示す。グラフ800は、構成700および700’中の軸上および軸外光線に対応するがWFC素子708のない、複数のMTF曲線を含む。グラフ800の縦軸はMTFの大きさに対応し、グラフ800の横軸は、正規化空間周波数パラメータに対応する。1の最大空間周波数は、1以上(画素サイズの2倍)に対応する。理想的MTFは、0.5の大きさにおける水平線である。正規化空間周波数パラメータに対するカットオフ値(つまり、MTFが0.5を下回る、正規化空間周波数パラメータまたは空間周波数)を有することが多くの用途にとって容認可能である一方で、その特徴が、システムが異なる構成間の性能の大きな変動を示す、つまり、この場合、ある構成が他の物よりも性能が良い場合があることを示すため、異なる構成間のMTF曲線の大幅な変動は、非理想的と考えられる。異なる構成に対する均一な性能(つまり、同様のMTF曲線)が、概して好ましい。
【0075】
図37を続けて参照すると、第1のMTF群810は、図31の軸上および軸外光線725および727に対するMTF曲線を含み、第2のMTF群820は、図32の光線725’の軸上および軸外部分に対するMTF曲線を含む。具体的には、第1の軸上MTF曲線812は、軸上光線725に対するMTF曲線であり、第1の軸外MTF曲線814は、軸外光線727に対するMTF曲線であり、第2の軸上MTF曲線822は、光線725’の軸上部分に対するMTF曲線であり、第2の軸外MTF824は、光線725’の軸外部分に対するMTF曲線である。グラフ800で見ることができるように、構成700および700’それぞれと同等な構成に対応するがWFC素子708のない、第1および第2のMTF群810および820は、軸上および軸外光線に対して、互いに、ならびにそれら自身群内でも有意に異なる。さらに、MTF曲線824は、MTF曲線822および第1のMTF群810よりも有意に低く、よって、構成700’で示される光線725’の軸外部分に対する低下した性能を示す。
【0076】
WFC素子708のない構成700および700’の非理想的性能のなおも別の表示を図38および39に示す。図38および39は、図31および32と併せて、特定空間周波数値(これらの図に示される例では75線対/mm)に対するWFC素子708のない構成700および700’での、軸上および軸外光線に対するMTF曲線を示す。図38および39では、縦軸は、光学的伝達関数(OTF)の係数の大きさに対応し、つまり、MTF、および横軸は、ミリメートル単位の焦点移行に対応し、その場合、ゼロの焦点移行は、像平面(例えば、検出器210の位置)での完璧な焦点に対応する。図38のグラフ850は、図31の構成700での軸上光線725および軸外光線727に対応するがWFC素子708のない、第1群のMTF曲線852を含む。1つのMTF曲線のピーク高さをhMTFと標識し、hMTF/2の値での対応するピークの幅(例えば、曲線の半値全幅またはFWHM)を856と標識する。図38に示される例では0.2mm未満であるFWHM856は、下記の図41に関連して論議されるように、WFC素子が構成700で利用されると、増加することができる。
【0077】
グラフ850で見ることができるように、MTF曲線852群のピークは、ゼロ焦点移行での理想的焦点854の線の右に位置している。同様に、図39のグラフ860は、図32の構成700’での光線725’の軸上および軸外部分に対応するがWFC素子708のない、第2群のMTF曲線862を含む。グラフ860では、MTF曲線862群のピークは、理想的焦点854の線の左に位置している。像平面位置が第1群のMTF曲線852または第2群のMTF曲線862のいずれかのピークにあるように、WFC素子708のない構成700、700’によって表されるシステムに調整を行うことができる(例えば、検出器210の位置、それにより、像平面は、第1および第2の光学群702および704または704’のより近くまたは遠くに移動することができる)一方で、1つの構成の性能を向上させるためにシステムを調整すると、他の構成の性能を悪化させ、逆の場合も同じである。言い換えると、構成700および700’の両方において良好な性能を達成する検出器210に対する1つの位置を選択することは可能ではない。
【0078】
図31および32の構成700および700’での、DSP215と組み合わせたWFC素子708の包含は、これから説明するように、ズームレンズシステムの性能を向上することができる。
【0079】
数値的モデル化の目的で、WFC素子708は、第2の光学群704および704’の第1の表面の前に予備素子を追加することによって説明される。1つの特定のWFC素子708は、
【0080】
【数6】
として表現される前面を持つとしてシミュレーションされ、式中、xおよびyは、光軸に直角である平面での空間変数であり、a3=1.418・10−3、a5=−0.5766・10−3、a7=1.388・10−3、a9=7.88・10−3、およびr0=0.42mmである。WFC素子708のその他の構成が可能である。
【0081】
図40は、構成700および700’を通して撮像された軸上および軸外光線に対するMTFのグラフ900を示し、今回は、WFC素子708の効果が数値的モデル化に考慮されている。第1のMTF群910は、図31の軸上および軸外光線725および727、ならびに図32の光線725’の軸上および軸外部分に対するMTF曲線を含み、よってDSP215による処理がない広角構成700および望遠構成700’の両方に対応する。グラフ900で見ることができるように、第1のMTF群910内の個々のMTF曲線は、互いにかなり類似している。つまり、MTF群910の実質的に同様のMTF曲線を、図37の前述のMTF群810および820と比較することにより、WFC素子708を利用すると、各構成内ならびに異なる構成での異なる光線角度に対する性能の均一性が向上することが示唆される。
【0082】
なおも図40を参照すると、グラフ900はまた、構成700を通して撮像された軸上および軸外光線725および727、ならびにDSP215による処理を伴って、構成700’を通して撮像された光線725’の軸上および軸外部分に対するMTF曲線に対応する、第2のMTF群920も含む。DSP215の詳細は、下記の論議中の適切な連接において説明する。第2のMTF群920の検討によって分かるように、第2のMTF群920内のMTF曲線の全体的な大きさは、第1のMTF群910内の曲線よりも増加する一方で、MTF性能の均一性(MTF群920における曲線の実質的に同様な大きさおよび形状によって示される)を保つ。さらに、第2のMTF群920内のMTF曲線は、全体的に見ると、正規化空間周波数パラメータ範囲にわたって大きさが0.5より大きい。言い換えると、WFC素子708およびDSP215による処理が含まれると、両構成700および700’は、本開示のズームレンズシステムの改良された性能を達成する。
【0083】
WFC素子708を含むが信号処理のない構成700および700’の性能の別の解説では、図41および42は、特定の空間周波数値(図38および39のように75lp/mm)に対する構成700および700’での軸上および軸外光線に対するMTF曲線を示す。再度、像平面での完璧な焦点は、ゼロの焦点移行に対応する。図41のグラフ950は、WFC素子708を含むがDSP215による信号処理のない、図31の構成700での軸上および軸外光線に対応する第1群のMTF曲線952を含む。1つのMTFのピーク高さをhMTFと標識し、対応するピーク(例えば、hMTF/2の値で)のFWHMを956と標識する。図42のグラフ960は、WFC素子708があるがDSP215による信号処理のない、図32の構成700’での軸上および軸外光線に対応する第2群のMTF曲線962を含む。第1および第2群のMTF曲線952および962のそれぞれの中の個々のMTF曲線はそれぞれ、各群内で互いにかなり類似している。この特徴は、構成にわたる、ならびに光線角度にわたる、均一な性能を示すことが分かる。
【0084】
図41および42を前述の図38および39と比較することによって、理想的焦点854の線が、ピークMTFの大きさから遠くない点において両群のMTF曲線952および962に交差するように、第1および第2群のMTF曲線952および962の両方のピークが平坦化して拡大していることが分かる(実際、第2群のMTF曲線962内に含まれるMTF曲線は、非常に類似しているため、事実上互いに重なり合う)。つまり、グラフ950および960は、像平面を実際に移動させる必要なく高いMTF値を得ることができる広い範囲の設定があることを示す。FWHM956は、0.2mm未満である図38の対応するFWHM856と比べて、図41では約0.6mmであると見なされる。図41では、群952のその他のMTF曲線が、図38の群852のMTF曲線の対応するピーク幅よりも全て大きい同様の幅を有することが分かる。図39を図42と比較することによって、群962のMTF曲線の対応するピーク幅(つまりFWHM)が、群862のMTF曲線の対応するピーク幅よりも広いことが同様に分かる。よって、光線角度にわたる誤焦点に対するMTF曲線の幅の増加により、WFC素子708がある両構成700および700’は、WFC素子708がない対応する構成700および700’よりも、検出器210によって撮像される光線角度の範囲にわたる誤焦点および/または誤焦点様収差に対して感度が低くなる。つまり、WFC素子708を利用するズームレンズシステムは、少なくとも1つの空間周波数で焦点移行の範囲にわたって、該1つの空間周波数にあり、システムによって撮像される光線角度の範囲にわたって、システムの任意の焦点距離における1つの空間周波数で、対応システムによって形成されたMTF曲線より広いFWHMによって示されるように、対応するWFC素子708がないズームレンズシステムより広いMTF曲線を有する。
【0085】
DSP215によって適用されるアルゴリズムの仕様を図43に示す。図43は、図40に示される結果を生成するために使用された線形フィルタの網状レンダリングである。図43は、線形フィルタ1010を含む3Dグラフ1000を示す。線形フィルタ1010の網目の各点の特定値を下記の表2に示す。表2の値の全ての合計が1であることに注目される。線形フィルタ1010は、2次元の線形たたみ込みとしてDSP215によって適用され、図40に示されるMTF曲線920を生成するために、検出器210から受け取られるデータを撮像する。
【0086】
【表2】
図44〜70は、3群ズームレンズシステムの数値的モデル化の例を図示する。図44および45は、本開示に従った3群ズームレンズシステムの2つの異なる構成を図示する。図44は、第1の光学群1102(焦点距離f1を伴う)、第2の光学群1104(焦点距離f2を伴う)、および第3の光学群1106(焦点距離f3を伴う)を含む構成1100を示す。光学群1102および1104は、1つ以上の光学素子を含むことができる。光学群1106は、光学1108、および光学1108に隣接または近接して形成するか、またはそれとともに一体的に形成することができるWFC素子1110を含む。図31と類似して、構成1100は、軸上光線725および軸外光線727の両方(システムズームシステム1100によって撮像される入射光線の範囲を包含する)を受け入れ、第1、第2、および第3の光学群を通して検出器210上にこれらの光線を撮像するように構成される広角システムである。検出器210によって生成される画像データは、データが処理されて最終像1120を形成するDSP215に向けられる。光学群1102、1104、および1106は全て光軸1122に沿って一列に並ぶ。
【0087】
図45は、3つの光学群が構成1100で示される相対的位置にとどまっている(例えば、光軸1122に沿った光学群の移動なしで)構成1100’を示す。構成1100’では、構成1100’が望遠システムシステムとして機能するように、第2の光学群1104’は、焦点距離f2’を示し、第3の光学群1106’は、焦点距離f3’をもたらすよう変更された光学1108’を含む。検出器210での検出およびDSP215での信号処理の後、最終像1120’が生じる。WFC素子1110および/またはDSP215は、構成1100および1100’間で同一であってよく、または説明される焦点距離変動によりシステムの変化に適応するように変更してもよい。
【0088】
一般に、3群の光学素子の使用は、ズームレンズシステムのある固定収差を制御するのに役立つ。第1の光学群1102が図44および45では静止した非可変光学群であると示される一方で、3つの光学群の位置は、例えば、静止光学群が入射光線によって遭遇される第2または第3の群となるように、変更することができる。
【0089】
図44および45に図示されるような構成1100および1100’、およびWFC素子1110がない同等の構成を、次の例示的特徴を使用して数値的にモデル作成した。0.75mmの画像高さを想定した。光学群1102、1104、および1106の組み合わせの有効焦点距離はそれぞれ、(広角)構成1100に対しては4.8mm、(望遠)構成1100’に対しては14.2mmである。光線の波長は0.55ミクロンと想定し、検出器210は4ミクロン平方である画素を含むと想定する。構成1100では、光学群1102の焦点距離f1を−14.86mmと想定し、光学群1104の焦点距離f2を23.91mmと想定し、光学群1106の焦点距離f3を6.55mmと想定する。構成1100’では、第1の光学群1102の焦点距離f1は−14.86mmのままであり、第2の光学群1104の焦点距離f2’を6.03mmと想定し、第3の光学群1106の焦点距離f3’を−4.94mmと想定する。様々な光学群の具体的な規定は再度、表3Aおよび3Bに示されるパラメータによる方程式(3)に由来する。
【0090】
【表3A−1】
【0091】
【表3A−2】
【0092】
【表3B】
図46〜53は、WFC素子1110が存在しない場合に図44および45で示される構成の非理想的性能を図示する。図46〜49は、図44および45に示される構成1100および1100’に対応する一連の光線遮蔽曲線を示す。図46は、構成1100を通過するがWFC素子1110がない、軸上光線725に対応するy軸光線遮蔽曲線1154およびx軸光線遮蔽曲線1156があるyグラフ1150およびxグラフ1152を示す。同様に、図47は、構成1100を通して撮像されているがWFC素子1110がない、軸外光線727に対応するy軸光線遮蔽曲線1164およびx軸光線遮蔽曲線1166があるyグラフ1160およびxグラフ1162を示す。図48は、構成1100’を通過するがWFC素子1110がない、光線725’の軸上部分に対応するy軸光線遮蔽曲線1174およびx軸光線遮蔽曲線1176があるyグラフ1170およびxグラフ1172を示す。図49は、構成1100’を通過するがWFC素子1110がない、光線725’の軸外部分に対応するy軸光線遮蔽曲線1184およびx軸光線遮蔽曲線1186があるyグラフ1180およびxグラフ1182を示す。
【0093】
次に、図46〜49のそれぞれを検討すると、図46に示されるy軸およびx軸光線遮蔽曲線1154および1156は、実質的に一定傾斜の直線であり、よって誤焦点を示す。図47では、y軸光線遮蔽曲線1164およびx軸光線遮蔽曲線1166は同様に直線である。図48および49では、光線遮蔽曲線は、実質的に直線であるが、図46および47に示されるものとは反対の傾斜を有することによって、構成1100’が構成1100からの反対の誤焦点を示すことを示唆する。つまり、図46および47に示される誤焦点は、例えば、構成1100での像平面(つまり、検出器210の位置)を移動することによって部分的に修正できる一方で、像平面のそのような移動は、構成1100’によって示される誤焦点を悪化させる。言い換えると、図46〜49に示される誤焦点の修正は、例えば、構成の関数としての像平面の移動を必要とするが、それは望ましいことではない。
【0094】
図50および51は、WFC素子1110がない構成1100および1100’での軸上および軸外光線に対する、空間周波数(ミリメートル毎のサイクル(または線対)の単位)の関数としての算出されたMTFを示す。図50では、グラフ1200は、図44の構成1100を通して撮像されるがWFC素子1110がない、軸上および軸外光線に対応するMTF曲線1210群を含む。同様に、図51のグラフ1220は、再度WFC素子1110がない、図45の構成1100’を通して撮像される軸上および軸外光線に対応する、別のMTF曲線1230群を含む。グラフ1200および1220に示されるように、MTF曲線1210および1230の両群は、空間周波数の増加に伴って大きな低下および変動を示し、各構成内および2つの構成間の不均一な性能ならびに大きな誤焦点を示す。さらに、両群のMTF曲線1210および1230は、MTFが実質的にゼロまで低下する空間周波数値を含む。MTF値におけるこのようなゼロは、画像データの損失を示すため、特に望ましくない。
【0095】
図52および53は、図38および39のように、特定の空間周波数値(75lp/mm)に対する波面コーディングがない構成1100および1100’での、軸上および軸外光線に対するMTF曲線を示す。図52および53では、縦軸は、OTFの係数の大きさに対応し、つまり、MTF、および横軸は、ミリメートル単位の焦点移行に対応し、その場合、ゼロの焦点移行は、像平面(例えば、検出器210の位置)での完璧な焦点に対応する。図52のグラフ1250は、図44の構成1100での軸上および軸外光線に対応するがWFC素子1110のない、第1群のMTF曲線1252を含む。グラフ1250で見ることができるように、第1群のMTF曲線1252のピークは、ゼロ焦点移行での理想的焦点1254の線の右に位置する。MTF曲線1252群内の個々のMTF曲線は、形状が幅広く異なり、誤焦点に加えて非点収差およびフィールド湾曲を示す。FWHM1256は、曲線のうちの1つに対して示され、0.3mm未満の値を有すると見なすことが可能である。図53のグラフ1260は、図45の構成1100’での軸上および軸外光線に対応するがWFC素子1110のない、第2群のMTF曲線1262を含む。グラフ1260では、第2群のMTF曲線1262のピークは、理想的焦点1254の線の左に位置する。したがって、図38および39との関連で先に図示された構成700および700’のように、図52および53のグラフ1250および1260はそれぞれ、両構成1100および1100’での良好な性能を達成する検出器210に対する1つの位置を選択することが可能ではないことを示唆する。
【0096】
図50および51とは対照的に、図54および55は、WFC素子1110を含む構成1100および1100’に対してシミュレーションされるMTF曲線を示す。数値モデル化の目的で、a3=−2.858・10−3、a5=−0.08・10−3、a7=−1.707・10−3、a9=3.426・10−3、およびr0=0.60mmというパラメータがある式(4)の垂下方程式によれば、WFC素子1110は、第3の光学群1106および1106’の第1の表面の前に予備素子を追加することによって説明される。
【0097】
図50および51と併せて図54および55を参照すると、図54は、WFC素子1110を含むがDSP215による処理がない構成1100を通して撮像される軸上および軸外光線に対するMTF曲線1272群を含む、グラフ1270を示す。MTF曲線1272を図50に示されるMTF曲線1210と比較することによって分かるように、MTF値は、MTF曲線1210に対するよりもMTF曲線1272において大きく、よって、MTF値は、構成1100でのWFC素子1110の追加によって増加する。同様に、図55は、再度、WFC素子1110を含むがDSP215による処理がない構成1100’を通して撮像される軸上および軸外光線に対するMTF曲線1282群を含む、グラフ1280を示す。MTF曲線1282は、大きさ、性能の均一性、およびゼロの欠如といった点において、図51のMTF1230よりも改善を示すと見なすことができる。
【0098】
図56および57は、特定の空間周波数値(図52および53のように、75lp/mm)に対する構成1100および1100’での軸上および軸外光線に対するMTF曲線を示す。再度、像平面での完璧な焦点は、ゼロの焦点移行に対応する。図56のグラフ1290は、WFC素子1110を含むがDSP215による処理がない図44の構成1100での軸上および軸外光線に対応する、第1群のMTF曲線1292を含む。FWHM1296は、曲線のうちの1つに対して示され、ピークがグラフ1290に示される焦点移行値を超えるが少なくとも0.6mmであるため、グラフ1290を利用して測定できない値を有すると見なすことが可能である。図57のグラフ1295は、WFC素子1110があるがDSP215による処理がない、図45の構成1100’での軸上および軸外光線に対応する第2群のMTF曲線1297を含む。理想的焦点1294の線が、ピークMTFの大きさから遠くない点において両群のMTF曲線に交差するように、第1および第2群のMTF曲線1292および1297の両方のピークが平坦化して拡大していることが分かる。言い換えると、グラフ1290および1295は、像平面を実際に移動させる必要なく高いMTF値を得ることができる広い範囲の設定があることを示す。さらに、WFC素子1110を利用するズームレンズシステムは、少なくとも1つの空間周波数で焦点移行の範囲にわたって、該1つの空間周波数にあり、システムによって撮像される光線角度の範囲にわたって、システムの任意の焦点距離における1つの空間周波数で、対応システムによって形成されたMTF曲線より広いFWHMによって示されるように、対応するWFC素子1110がないズームレンズシステムより広いMTF曲線を有する。
【0099】
再び図31〜32、44〜45を参照すると、入射光線角度の範囲(例えば、軸上および軸外光線725および727それぞれによって示される)は、ズームシステムのそれぞれによって撮像され、光線角度の範囲にわたるMTFが、大きさおよび形状において同様であり、ズームシステムが誤焦点様収差に対して感度が低くなるように(波面コーディングのない同じズームシステムと比べて)、波面コーディング素子は、光線によって表される波面の位相を変更する。
【0100】
図44および45に示される構成でのWFC素子1110およびDSP215の追加によって得られるシステム性能の改良をさらに図示するために、点広がり関数(PSF)に関するこれらの構成の算出された評価を図58〜69に示す。図58〜61はそれぞれ、WFC素子1110が構成に含まれず、DSP215によって処理が行われない場合の点被写体に対する、構成1100を通して撮像された軸上光線に対する算出されたPSF1300、構成1100を通して撮像された軸外光線に対する算出されたPSF1302、構成1100’を通して撮像された軸上光線に対する算出されたPSF1304、構成1100’を通して撮像された軸外光線に対する算出されたPSF1306の視覚化に対応する。PSF1300、1302、1304、および1306の比較において分かるように、PSF1300、1302、1304、および1306は互いにかなり異なるため、構成内および構成間の3群ズームレンズシステムの撮像性能が幅広く異なる。
【0101】
図62〜65はそれぞれ、WFC素子1110が構成に含まれるが、DSP215によって処理が行われない場合の点被写体に対する、構成1100を通して撮像された軸上光線に対する算出されたPSF1310、構成1110を通して撮像された軸外光線に対する算出されたPSF1312、構成1100’を通して撮像された軸上光線に対する算出されたPSF1314、構成1100’を通して撮像された軸外光線に対する算出されたPSF1316の視覚化を示す。PSF1310、1312、1314、および1316は全て互いにかなり類似している。PSF1310、1312、1314、および1316は、理想ほど完璧な点ではないが、全てかなり均一であり、これらの図で9時および12時の方向にPSFを広げる同様な収差のみを含む。そのような収差は、WFC素子1110およびDSP215による処理の両方の効果が計算に含まれる場合の算出されたPSFを示す図66〜69で示されるように、単一線形フィルタを使用して修正することができる。
【0102】
図66〜69はそれぞれ、点被写体に対する、構成1100を通して撮像された軸上光線、構成1110を通して撮像された軸外光線、構成1100’を通して撮像された軸上光線、構成1100’を通して撮像された軸外光線に対応する。これより分かるように、算出されたPSF1320、1322、1324、および1326は、いくつかの画素のみを覆う均一な点に非常に近い。したがって、WFC素子1110およびDSP215による後の信号処理の追加により、広角から望遠の一連の構成に対する3群ズームレンズシステムによって、均一な性能を達成することができる。
【0103】
図70は、構成1100および1100’でDSP215によって適用される線形フィルタ1360を図示し、フィルタ1360は、グラフ1350で網状形式で示される。フィルタ1360は、構成1100および1100’でDSP215によって2次元の線形畳み込みとして適用され、図66〜69で示される算出されたPSFを生成するために、検出器210によって生成されるデータを撮像する。
【0104】
前述の実施形態のそれぞれは、特定の各配向性を有する様々な構成要素により図示されているが、本装置は、異なる位置および相互配向性に位置する構成要素がある異なる構成を採用し、本開示の精神および範囲内にとどまることができることを理解するべきである。さらに、様々な構成要素の代わりに、またはそれに加えて、適切な同等物を使用してもよい。そのような代用または追加構成要素の機能、および使用は、当業者に周知であり、したがって、本開示の範囲内であると見なされる。例えば、光学光子シーブを、光学群のうちの1つ以上の一部として、本開示のズームレンズシステムに追加してもよい。光学光子シーブについての詳細は、例えば、Andersenの「Large optical photon sieve」、Optics Letters、vol.30、no.22、November 2005、pp.2976−2978で見ることができる。そのような光学光子シーブは、ズームレンズシステム内の単純回折素子として働き、上記のような本開示の実施形態での光学素子のうちの1つ以上に取って代わるか、または補完することができる。別の可能な変更は、光学経路における高分子分散および高分子安定化液晶(PDLCまたはPSLC)光変調装置の追加を含む。そのようなPDLCまたはPSLC装置は、例えば、二元またはアナログ光弁として働き、ズームレンズシステムを通して伝達される光の量を調節することができる。あるいは、PDLCまたはPSLCは、付加的な光制御を提供するようにパターン化することができるか、または、可変LCレンズを含むズームレンズシステムの変動性を強化するよう可変液晶レンズに一体化することができる。PDLCおよびPSLCは、例えば、Drzaicの「Recent progress in dichroic polymer−dispersed liquid crystal materials」、Pure & Appl.Chem.、vol.68、no.7、pp.1435−1440、1996、および1997年11月25日に発行されたDoaneらの米国特許第5,691,795号で説明されている。光の波面を変える働きをするその他の現代の光学素子は、上記のような改良されたズームレンズシステム内に適切に構成することができる。
【0105】
したがって、本実施例は、実例的であって限定的ではないと考えられるべきであり、本願で挙げられる詳細に限定されないが、添付の請求項の範囲内で変更することができる。下記の請求項は、本願で説明される一般的および具体的な特徴、ならびに、言語の問題として、その間に該当すると言われる場合のある、本方法およびシステムの範囲の記述を対象とすることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、従来の光学を含む、従来技術の従来のズームレンズシステムの一構成の概略図である。図2は、図1の従来技術の従来のズームレンズシステムの代替的構成の概略図である。
【図3】図3は、現代の可変光学を含む、従来技術の現代のズームレンズシステムの一構成の概略図である。
【図4】図4は、図3の従来技術の現代のズームレンズシステムの代替的構成の概略図である。
【図5】図5は、現代の可変光学を含む、従来技術の現代のズームレンズシステムの別の実施例の一構成の概略図である。
【図6】図6は、図5の従来技術の現代のズームレンズシステムの代替的構成の概略図である。
【図7】図7は、従来技術の従来の2レンズ撮像システムの概略図であり、ここでは、2つのレンズが不均等な焦点距離および屈折率を示す場合の像平面の湾曲を図示するように示されている。
【図8】図8は、従来技術の従来の2レンズ撮像システムの概略図であり、ここでは、2つのレンズが均等な屈折率および互いのマイナスである焦点距離を示すように選択される場合の像平面の平坦化を図示するように示されている。
【図9】図9および10は、なおも別の従来技術の従来の2レンズ撮像システムの概略図であり、ここでは、レンズパラメータ選択に応じてそのようなシステムによって示される色収差の変動を図示するように示されている。
【図10】図9および10は、なおも別の従来技術の従来の2レンズ撮像システムの概略図であり、ここでは、レンズパラメータ選択に応じてそのようなシステムによって示される色収差の変動を図示するように示されている。
【図11】図11〜13は、波面コーディング補償器との可変光学の組み合わせを利用するズームレンズシステムの一実施形態の概略図である。
【図12】図11〜13は、波面コーディング補償器との可変光学の組み合わせを利用するズームレンズシステムの一実施形態の概略図である。
【図13】図11〜13は、波面コーディング補償器との可変光学の組み合わせを利用するズームレンズシステムの一実施形態の概略図である。
【図14】図14および15は、波面コーディング補償器と組み合わせて液体レンズバリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図15】図14および15は、波面コーディング補償器と組み合わせて液体レンズバリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図16】図16および17は、波面コーディング補償器と組み合わせて液晶バリエータを利用するズームレンズシステムのなおも別の実施形態の概略図である。
【図17】図16および17は、波面コーディング補償器と組み合わせて液晶バリエータを利用するズームレンズシステムのなおも別の実施形態の概略図である。
【図18】図18および19は、実施形態に従った、摺動可能光学素子構成の使用によって可変屈折力を提供するための光学配置の概略図である。
【図19】図18および19は、実施形態に従った、摺動可能光学素子構成の使用によって可変屈折力を提供するための光学配置の概略図である。
【図20】図20および21は、波面コーディング補償器と組み合わせて図18および19の光学配置を利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図21】図20および21は、波面コーディング補償器と組み合わせて図18および19の光学配置を利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図22】図22および23は、波面コーディング補償器と組み合わせて平面/球面摺動バリエータを利用するズームレンズシステムのさらに別の実施形態の概略図である。
【図23】図22および23は、波面コーディング補償器と組み合わせて平面/球面摺動バリエータを利用するズームレンズシステムのさらに別の実施形態の概略図である。
【図24】図24および25は、波面コーディング補償器と組み合わせて非球面/非球面摺動バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図25】図24および25は、波面コーディング補償器と組み合わせて非球面/非球面摺動バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図26】図26は、波面コーディング補償器と組み合わせて回転可能バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図27】図27および28は、波面コーディング補償器と組み合わせて摺動単一群バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図28】図27および28は、波面コーディング補償器と組み合わせて摺動単一群バリエータを利用するズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図29】図29および30は、波面コーディング補償器と組み合わせて摺動開口バリエータを利用する改良されたズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図30】図29および30は、波面コーディング補償器と組み合わせて摺動開口バリエータを利用する改良されたズームレンズシステムの別の実施形態の概略図である。
【図31】図31および32は、実施形態に従った、波面コーディングがある2群ズームレンズシステムの2つの構成の概略図である。
【図33】図33〜36は、図31および32に示される構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図34】図33〜36は、図31および32に示される構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図35】図33〜36は、図31および32に示される構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図36】図33〜36は、図31および32に示される構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図37】図37は、図31および32に示される構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まない。
【図38】図38および39は、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであるが、特定の空間周波数値に対する波面コーディングおよび信号処理を含まない。
【図39】図38および39は、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであるが、特定の空間周波数値に対する波面コーディングおよび信号処理を含まない。
【図40】図40は、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングおよび信号処理の効果を含む。
【図41】図41および42は、特定の空間周波数値に対する、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングの効果を含む。
【図42】図41および42は、特定の空間周波数値に対する、図31および32の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングの効果を含む。
【図43】図43は、図40のグラフを算出するために使用される信号処理において適用された、算出された線形フィルタの3D網状表示である。
【図44】図44および45は、実施形態に従った、波面コーディングがある3群ズームレンズシステムの2つの構成の概略図である。
【図45】図44および45は、実施形態に従った、波面コーディングがある3群ズームレンズシステムの2つの構成の概略図である。
【図46】図46〜49は、図44および45の構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図47】図46〜49は、図44および45の構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図48】図46〜49は、図44および45の構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図49】図46〜49は、図44および45の構成に対応する光線遮蔽曲線のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まずに算出されている。
【図50】図50および51は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まない。
【図51】図50および51は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであるが、波面コーディングおよび信号処理の効果を含まない。
【図52】図52および53は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであるが、特定の空間周波数値に対する波面コーディングおよび信号処理を含まない。
【図53】図52および53は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであるが、特定の空間周波数値に対する波面コーディングおよび信号処理を含まない。
【図54】図54および55は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングおよび信号処理の効果を含む。
【図55】図54および55は、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングおよび信号処理の効果を含む。
【図56】図56および57は、特定の空間周波数値に対する、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングの効果を含む。
【図57】図56および57は、特定の空間周波数値に対する、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する焦点移行の関数としての算出された変調伝達関数のグラフであり、今回は、波面コーディングの効果を含む。
【図58】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図59】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図60】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図61】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図62】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図63】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図64】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図65】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図66】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図67】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図68】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図69】図58〜69は、波面コーディングおよび信号処理がないものとあるものの、図44および45の構成を通して撮像された軸上および軸外光線に対応する算出された点広がり関数である。
【図70】図70は、図54〜55および66〜69の結果を算出するために使用される信号処理において適用された、算出された線形フィルタの3D網状表示である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線角度の範囲にわたって入射光線を撮像するズームレンズシステムであって、
該入射光線は、少なくとも位相によって特徴付けられ、該ズームレンズシステムは、光軸を含み、少なくとも該光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)によって特徴付けられており、該ズームレンズシステムは、
該光軸に沿って配置される光学群であって、
少なくとも2つの異なる焦点距離値の間で選択可能な可変焦点距離を示す少なくとも1つの可変光学素子と、
波面コーディング素子と
を含む、光学群を備え、
該2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、該光線角度の範囲に対応する該複数のMTFが、該波面コーディング素子のない対応システムよりも、誤焦点様の収差に対して感度が低いように、該波面コーディング素子は、少なくとも該入射光線の位相を変化させる、ズームレンズシステム。
【請求項2】
少なくとも1つの空間周波数における前記MTFは、焦点移行の範囲にわたって、該1つの空間周波数における前記対応システムによって形成されるMTFよりも広い半値全幅を有する、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの可変光学素子は、前記光軸に沿って移動可能ではない、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項4】
前記光学群は、前記入射光線の位相を変化させるために構成される位相マスクを含む、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項5】
前記可変光学素子は、前面および裏面を含み、かつ前記位相マスクは、該可変光学素子の該前面および該裏面のうちの少なくとも一方から一体的に形成される、請求項4に記載のズームレンズシステム。
【請求項6】
前記波面コーディング素子は、前記位相マスクを備える、請求項4に記載のズームレンズシステム。
【請求項7】
前記光学群は、第2の光学素子を含む、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項8】
前記第2の光学素子はまた、少なくとも2つの異なる焦点距離値の間で選択可能な可変焦点距離を示す、請求項7に記載のズームレンズシステム。
【請求項9】
前記第2の光学素子は、前記入射光線の前記位相を変化させるために構成される位相マスクを含む、請求項7に記載のズームレンズシステム。
【請求項10】
前記波面コーディング素子は、前記位相マスクを備える、請求項9に記載のズームレンズシステム。
【請求項11】
前記第2の光学素子は、前記光軸に沿って移動可能である、請求項7に記載のズームレンズシステム。
【請求項12】
前記可変光学素子は、液体レンズである、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項13】
前記可変光学素子は、液晶レンズである、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項14】
前記可変光学素子は、開口および第1の非球面光学素子を含む、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項15】
前記可変光学素子の前記開口および前記第1の非球面光学素子のうちの少なくとも1つは、前記光軸に平行ではない平面において摺動可能である、請求項14に記載のズームレンズシステム。
【請求項16】
前記可変光学素子は、前記開口および前記第1の非球面光学素子のうちの少なくとも1つに対して摺動可能に配置される第2の非球面光学素子を含む、請求項14に記載のズームレンズシステム。
【請求項17】
前記非球面光学素子は、前記光軸に平行ではない平面において前記開口に対して回転可能である、請求項14に記載のズームレンズシステム。
【請求項18】
前記光学群は、光学像を形成するためにさらに構成され、
前記光線角度の範囲にわたって焦点電子画像を表すために前記光学像を電子的に処理する後処理装置をさらに備える、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項19】
前記後処理装置は、線形フィルタを含む、請求項18に記載のズームレンズシステム。
【請求項20】
光線角度の範囲にわたって入射光線を撮像するズームレンズシステムの使用方法であって、該入射光線は、少なくとも位相を含み、該ズームレンズシステムは、光軸と、少なくとも2つの異なる焦点距離値の間で選択可能な可変焦点距離を示す少なくとも1つの可変光学素子とを含み、該ズームレンズシステムは、少なくとも該光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)および該2つの異なる焦点距離値によって特徴付けられる、
方法であって、該方法は、
該少なくとも2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、該光線角度の範囲に対応する該複数のMTFが、形状および大きさにおいて実質的に同様であるように、該入射光線の位相を変更することを備える、方法。
【請求項21】
撮像された光線で光学像を形成することと、前記光線角度の範囲にわたって焦点電子画像を表すように該光学像を電子的に処理することとをさらに備える、請求項20に記載の方法。
【請求項1】
光線角度の範囲にわたって入射光線を撮像するズームレンズシステムであって、
該入射光線は、少なくとも位相によって特徴付けられ、該ズームレンズシステムは、光軸を含み、少なくとも該光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)によって特徴付けられており、該ズームレンズシステムは、
該光軸に沿って配置される光学群であって、
少なくとも2つの異なる焦点距離値の間で選択可能な可変焦点距離を示す少なくとも1つの可変光学素子と、
波面コーディング素子と
を含む、光学群を備え、
該2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、該光線角度の範囲に対応する該複数のMTFが、該波面コーディング素子のない対応システムよりも、誤焦点様の収差に対して感度が低いように、該波面コーディング素子は、少なくとも該入射光線の位相を変化させる、ズームレンズシステム。
【請求項2】
少なくとも1つの空間周波数における前記MTFは、焦点移行の範囲にわたって、該1つの空間周波数における前記対応システムによって形成されるMTFよりも広い半値全幅を有する、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの可変光学素子は、前記光軸に沿って移動可能ではない、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項4】
前記光学群は、前記入射光線の位相を変化させるために構成される位相マスクを含む、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項5】
前記可変光学素子は、前面および裏面を含み、かつ前記位相マスクは、該可変光学素子の該前面および該裏面のうちの少なくとも一方から一体的に形成される、請求項4に記載のズームレンズシステム。
【請求項6】
前記波面コーディング素子は、前記位相マスクを備える、請求項4に記載のズームレンズシステム。
【請求項7】
前記光学群は、第2の光学素子を含む、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項8】
前記第2の光学素子はまた、少なくとも2つの異なる焦点距離値の間で選択可能な可変焦点距離を示す、請求項7に記載のズームレンズシステム。
【請求項9】
前記第2の光学素子は、前記入射光線の前記位相を変化させるために構成される位相マスクを含む、請求項7に記載のズームレンズシステム。
【請求項10】
前記波面コーディング素子は、前記位相マスクを備える、請求項9に記載のズームレンズシステム。
【請求項11】
前記第2の光学素子は、前記光軸に沿って移動可能である、請求項7に記載のズームレンズシステム。
【請求項12】
前記可変光学素子は、液体レンズである、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項13】
前記可変光学素子は、液晶レンズである、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項14】
前記可変光学素子は、開口および第1の非球面光学素子を含む、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項15】
前記可変光学素子の前記開口および前記第1の非球面光学素子のうちの少なくとも1つは、前記光軸に平行ではない平面において摺動可能である、請求項14に記載のズームレンズシステム。
【請求項16】
前記可変光学素子は、前記開口および前記第1の非球面光学素子のうちの少なくとも1つに対して摺動可能に配置される第2の非球面光学素子を含む、請求項14に記載のズームレンズシステム。
【請求項17】
前記非球面光学素子は、前記光軸に平行ではない平面において前記開口に対して回転可能である、請求項14に記載のズームレンズシステム。
【請求項18】
前記光学群は、光学像を形成するためにさらに構成され、
前記光線角度の範囲にわたって焦点電子画像を表すために前記光学像を電子的に処理する後処理装置をさらに備える、請求項1に記載のズームレンズシステム。
【請求項19】
前記後処理装置は、線形フィルタを含む、請求項18に記載のズームレンズシステム。
【請求項20】
光線角度の範囲にわたって入射光線を撮像するズームレンズシステムの使用方法であって、該入射光線は、少なくとも位相を含み、該ズームレンズシステムは、光軸と、少なくとも2つの異なる焦点距離値の間で選択可能な可変焦点距離を示す少なくとも1つの可変光学素子とを含み、該ズームレンズシステムは、少なくとも該光線角度の範囲に対応する複数の変調伝達関数(MTF)および該2つの異なる焦点距離値によって特徴付けられる、
方法であって、該方法は、
該少なくとも2つの異なる焦点距離値のそれぞれに対して、該光線角度の範囲に対応する該複数のMTFが、形状および大きさにおいて実質的に同様であるように、該入射光線の位相を変更することを備える、方法。
【請求項21】
撮像された光線で光学像を形成することと、前記光線角度の範囲にわたって焦点電子画像を表すように該光学像を電子的に処理することとをさらに備える、請求項20に記載の方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図33】
【図34】
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【図38】
【図39】
【図40】
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【図49】
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【図60】
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【図69】
【図70】
【図3】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図17】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
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【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【公表番号】特表2009−529709(P2009−529709A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558510(P2008−558510)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/063423
【国際公開番号】WO2007/103944
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(505361451)オムニビジョン シーディーエム オプティクス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/063423
【国際公開番号】WO2007/103944
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(505361451)オムニビジョン シーディーエム オプティクス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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