説明

注文仕様のシート状金属ストリップの製造方法

【課題】種々の材料品質および/または厚さを有する少なくとも2つのシート状金属ストリップを長手方向縁部に沿って連続プロセスで互いに溶接する方法を、比較的高レベルの溶接シーム強度が得られるように改善することにある。
【解決手段】本発明は、種々の材料品質および/または厚さを有する少なくとも2つのシート状金属ストリップが、長手方向縁部に沿って連続プロセスで互いに溶接される構成の注文仕様のシート状金属ストリップの製造方法に関する。この方法により製造されるシート状金属ストリップが比較的高レベルの溶接シーム強度が得られるようにするため、溶接すべきシート状金属ストリップとして、未コーティングのシート状金属ストリップが使用されること、および溶接により未コーティングのシート状金属ストリップから形成された注文仕様のシート状金属ストリップが次にコーティングされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の材料品質および/または厚さを有する少なくとも2つのシート状金属ストリップが長手方向縁部に沿って連続プロセスで互いに溶接される、注文仕様のシート状金属ストリップ、より詳しくはスチールストリップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この形式の方法は、例えば下記特許文献1から知られている。この形式の方法は、いわゆる「注文仕様のストリップ」すなわち注文仕様のシート状金属ストリップ、より詳しくは注文仕様のスチールストリップの製造に使用されている。注文仕様のストリップを製造するには、種々の材料品質および/またはシート状金属の種々の厚さを有する複数のスリットストリップ(通常は、コイルの形態に巻回された2つまたは3つのスリットストリップ)が巻き解かれ、レーザーにより長手方向縁部に沿って連続プロセスで互いに溶接される。注文仕様のストリップは軽量形鋼構造として非常に好都合に使用されており、最初の状態から完成コンポーネント(目的製品)に存在する応力状態に至るまで適合できる。注文仕様のストリップは、連続複合工具により、好都合に機械加工、より詳しくは形削りおよびトリミング加工できる。
【0003】
注文仕様のストリップの製造に使用されるスリットストリップは、それぞれのスリットストリップを腐食から保護するため、一般に、その一面または両面には、例えば亜鉛層またはオイル層のコーティングが施される。実際に、このようにして製造された注文仕様のシート状金属ストリップが成形されかつ高い応力を受けると、溶接シームに早期欠陥および不定欠陥が生じることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0 438 612(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が対処すべき問題は、上記形式の方法により製造されるシート状金属ストリップが比較的高レベルの溶接シーム強度を呈するように、上記形式の方法を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題は、特許請求の範囲の請求項1に記載の特徴を有する方法により解決される。
【0007】
本発明による方法では、溶接すべきシート状金属ストリップとして、未コーティングのシート状金属ストリップが使用される。溶接により未コーティングのシート状金属ストリップから形成された注文仕様のシート状金属ストリップは、溶接プロセスの後にコーティングされる。
【0008】
例えば、液体亜鉛、アルミニウム−シリコンまたは防錆オイルが、コーティング剤として注文仕様のシート状金属ストリップの一面または両面に塗布される。
【0009】
本発明は、注文仕様のストリップを形成すべく、金属材料で作られかつコーティングされたスリットストリップを溶接する間に、使用されるスリットストリップのコーティングの元素および残留物質が溶接シームに浸透してしまうという事実を見出したことに基づいている。これらのシーム不純物は、注文仕様のストリップが成形されまたは応力が付与される場合に、溶接シームに早期欠陥および不定欠陥を引き起こす。この問題は、本発明の方法により信頼性をもって解決される。本発明の方法により製造されるシート状金属ストリップは、かなり優れた溶接シーム強度を有することに特徴を有している。
【0010】
本発明による方法の有利な構成は、例えばフェライトステンレス鋼の場合に、コーティングの前の再加熱による局部熱処理を受ける注文仕様のシート状金属ストリップのそれぞれの溶接シームにある。溶接シームのこのような局部的再加熱の結果として、溶接シームおよび該溶接シームに隣接する領域における応力集中が緩和され、溶接シームの強度が更に最適化される。
【0011】
本発明による方法の他の好ましい形態では、注文仕様のシート状金属ストリップ(注文仕様ストリップ)は、その全幅に亘ってまたはそのシート状金属ストリップ(スリットストリップ)のうちの一方のシート状金属ストリップの幅に亘って一時的に加熱される。かくして、注文仕様のシート状金属ストリップの顕微鏡組織は均質化される。
【0012】
一時的加熱プロセスは、種々の材料品質および/または厚さのシート状金属ストリップ(スリットストリップ)の溶接の直後に、連続プロセスで行うのが好ましい。より詳しくは、この目的のために少なくとも1つの放射炉または少なくとも1つの誘導装置を使用できる。注文仕様のシート状金属ストリップの連続プロセスでの一時的加熱により、対応製造プラントを連続的に作動させることができ、したがって、高レベルの生産性を達成できる。
【0013】
コイルを形成すべく巻き上げられる注文仕様のシート状金属ストリップの焼きなまし(Annealing、Gluehprozess(英、独訳))を、例えばフード型焼きなまし炉(hood-type
annealing furnace、Haubengluehofen(英、独訳))内で行うことを考えることもできる。
【0014】
本発明による方法の他の形態では、注文仕様のシート状金属ストリップは切断装置により所定長さに切断され、シート状金属ストリップの所定長さに切断された部分は、炉内で一時的に加熱される。これは、特に連続作動製造プラントの設置スペースが不充分な場合または他のスペース制限がある場合に、本発明による方法の他の連続作動形態と比較して好都合である。
【0015】
本発明による方法の他の有利な形態は、不活性ガス雰囲気中で注文仕様ストリップの一時的加熱を行うことにある。これにより、注文仕様のシート状金属ストリップのスケール発生が防止される。
【0016】
他の有利な形態では、注文仕様のシート状金属ストリップが、コーティングプロセスの熱処理中に一時的に加熱されることである。かくして、顕微鏡組織の均質化に加え、シート状金属ストリップは同時にコーティングされる。これにより、プラントレイアウトに関し、対応する製造プラントの生産性の増大および省スペース設計が達成される。更に、注文仕様のシート状金属ストリップの機械的特性が、コーティングプロセス中の熱処理により調節できる。
【0017】
本発明による方法の他の好都合な形態は、注文仕様のシート状金属ストリップが、一時的加熱および/またはコーティングの後に冷却されることに特徴を有する。かくして、注文仕様のシート状金属ストリップの次の取扱いが容易になる。この場合、注文仕様のシート状金属ストリップを巻き上げるのに、例えば高温用に設計されていない巻回装置を使用できる。
【0018】
本発明による方法の他の好ましくかつ有利な形態は、特許請求の範囲の従属項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、本発明の多数の実施形態を概略的に示す斜視図を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
【図1】本発明による方法を実施する装置の第1実施形態を示すものである。
【図2】本発明の変更形態による方法を実施する装置の第2実施形態を示すものである。
【図3】本発明の他の変更形態による方法を実施する装置の第3実施形態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
注文仕様ストリップ、すなわち注文仕様シート状金属ストリップ、より詳しくはスチールストリップを製造するため、種々の材料品質および/または厚さを有する2つまたは3つ以上のスリットストリップ1、2が、長手方向縁部に沿って互いに溶接される。互いに溶接すべきスリットストリップ1、2は、未だコーティングされておらずかつコイル3の形態で供給される(図1参照)。個々のスリットストリップすなわちスチールストリップ1、2は、ひとたびそれぞれのコイル3が巻き解かれると、最初に、別々のレベリング機械4、5によりレベル出しされる。次に縁部が機械加工され、ここでは、溶接すべきスリットストリップ1、2の少なくとも縁部が、次の溶接プロセスのために研摩機および/またはフライス盤6、7により加工される。
【0022】
スリットストリップ1、2は、別々の搬送手段(ドライバユニット)8、9およびストリップガイド手段、より詳しくはストリップガイドローラにより、ストリップの移動方向に連続的に配置された1つの溶接装置10に供給される。或いは、3つ以上のスリットストリップがある場合には、スリットストリップは、その数より1だけ少ない対応台数の溶接装置に供給され、ここで連続プロセスにより互いに溶接される。スリットストリップ1、2は、これらの相互に対向する長手方向縁部が、突合わせ継手の態様で互いに溶接により一体化される。しかしながら、スリットストリップ1、2は、本発明による方法の範囲内で、オーバーラップ態様で互いに溶接することもできる。
【0023】
スリットストリップ1、2は、互いに連続的に溶接される。溶接プロセスは種々の態様で実行され、好ましくはレーザー溶接が使用される。しかしながら、スリットストリップ1、2は、誘導溶接により溶接することもできる。
【0024】
溶接シーム13の酸化を防止するため、溶接ビームすなわちレーザービームの作用点11にはシールディングガス(不活性ガス)例えば窒素ガスを供給するのが好ましい。また、発生する虞のある応力集中を緩和しまたは少なくとも低減させるため、それぞれの溶接シーム13は再加熱による局部的熱処理を受ける。
【0025】
注文仕様のシート状金属ストリップ12の顕微鏡組織を均質化するため、シート状金属ストリップ12は、シームの再加熱に代えまたはシームの再加熱に加えて、その全幅に亘って一時的に加熱されるか、そのシート状金属ストリップ(スリットストリップ)1、2のうちの一方のシート状金属ストリップの幅に亘って一時的に加熱される。シート状金属ストリップ12は、200℃〜500℃の範囲内の温度に加熱される。一時的加熱は、不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。
【0026】
図1に示すように、一時的加熱は、連続プロセスでの溶接プロセスの直後に行われる。この目的のため、例えば少なくとも1つの加熱装置14(例えば放射炉または誘導装置)が使用される。
【0027】
図1に示す実施形態の代わりに、スリットストリップ1、2で形成されたストリップ12は、オフラインで、すなわち連続プロセスで行われる溶接プロセスとは別に、一時的に加熱することもできる。この目的のため、注文仕様のストリップ12は、巻回装置により巻き上げられ、次にその巻き上げられたコイルは、例えばフード型焼きなまし炉内で一時的に加熱される。
【0028】
図2には、一時的加熱がオフラインで行われる本発明による方法の他の変更例が示されている。種々の材料品質および/または厚さのスリットストリップ1、2で形成されたストリップ12は、切断装置15により所定長さに切断される。切断装置15として、例えば機械的な分離せん断機を使用できる。溶接装置10を連続的に作動させるため、切断装置15の上流側にストリップ保持タンク等(図示せず)が配置される。次に、シート状金属ストリップ12の所定長さに切断された部分12’の顕微鏡組織を標準化するため、該部分12’が、例えばフード型焼きなまし炉16内で一時的に加熱される。
【0029】
注文仕様のストリップ12または分離されたストリップ部分12’は、一時的加熱の後に、コーティング装置17、17’内で一面または両面がコーティングされる(図1および図2参照)。コーティングプロセスとして、例えば、高温亜鉛めっきプロセス、電解めっきプロセスまたは溶融アルミナイジングプロセスがある。或いは、コーティングプロセスは、防錆オイル18または保護ラッカー19の塗布により行うこともできる。防錆オイル18または保護ラッカー19は、例えばスプレー装置17’により塗布される。次に、注文仕様によるコーティングされた特定数のストリップ部分12’が、一体に組立てられるか、パレット20上またはパレットケージ等内に保管されて、発送の準備が整えられる。
【0030】
本発明による方法の好ましい形態では、注文仕様のストリップ12が、コーティング中の熱処理の間に連続プロセスで一時的に加熱される。この変更例が図3に示されている。この場合、ストリップ12は、溶接プロセスの後にコーティング浴17”を通って供給される。例えば、コーティング浴容器21内には溶融亜鉛が収容されており、液体コーティング剤は、例えば200℃〜500℃の範囲内の温度を有している。或いは、加熱された防錆オイルまたは防錆液、加熱された保護ラッカーを、コーティング剤としてコーティング浴容器21内に注ぐことができる。注文仕様のストリップ12に必要量のコーティング剤のみを塗布するため、過剰のコーティング剤を、例えば吹き飛ばし装置またはストリッピング装置(図示せず)によりストリップ12から分離して、コーティング浴17”内に戻すことができる。
【0031】
注文仕様のストリップ12または一時的加熱および/またはコーティングの後にストリップ12から分離されたストリップ部分12’(図2参照)の取扱いを容易にするため、加熱されたストリップ12または加熱されたストリップ部分12’を冷却することができる。このような強制冷却は、特に、長手方向縁部に沿って互いに溶接されたストリップが巻き上げられてコイル22を形成する場合に特に好都合である。加熱された注文仕様のストリップ12の温度は、巻回装置が過度に高温になるのが防止される程度まで、巻回装置の上流側に配置された冷却装置23により低下される。加熱されたストリップ12は、100℃未満、より好ましくは80℃未満の温度に冷却されるのが好ましい。
【0032】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。それどころか、設計が逸脱する場合であっても、特許請求の範囲に記載された本発明を使用する他の変更例を考えることができる。より詳しくは、注文仕様のストリップ12を、任意の中間保管のために、溶接プロセスと次のコーティングプロセスとの間で巻き上げることもできる。溶接すべきコイル3(スリットストリップ1、2)は未コーティングであること、およびコーティングプロセスは注文仕様のストリップ12を形成する溶接の後にのみ行うことは重要である。
【符号の説明】
【0033】
1、2 スリットストリップ
3 コイル
10 溶接装置
12 注文仕様のシート状金属ストリップ
12’ 所定長さに切断された部分
13 溶接シーム
14 加熱装置
15 切断装置
17 コーティング装置
17” コーティング浴
23 冷却装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々の材料品質および/または厚さを有する少なくとも2つのシート状金属ストリップ(1、2)が、長手方向縁部に沿って連続プロセスで互いに溶接される構成の注文仕様のシート状金属ストリップ(12、12’)の製造方法において、溶接すべきシート状金属ストリップとして、未コーティングのシート状金属ストリップ(1、2)が使用されること、および溶接により未コーティングのシート状金属ストリップ(1、2)から形成された注文仕様のシート状金属ストリップ(12、12’)が次にコーティングされることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記注文仕様のシート状金属ストリップ(12)のそれぞれの溶接シーム(13)が、そのコーティング前の再加熱により局部的熱処理を受けることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記注文仕様のシート状金属ストリップ(12)は、その全幅に亘って一時的に加熱されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記注文仕様のシート状金属ストリップ(12)は、そのシート状金属ストリップ(1、2)のうちの一方のシート状金属ストリップの幅に亘って一時的に加熱されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記一時的加熱プロセスは、種々の材料品質および/または厚さを有するシート状金属ストリップ(1、2)の溶接の直後に連続プロセスで行われることを特徴とする請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記一時的加熱は、少なくとも1つの放射炉(14)または少なくとも1つの誘導装置(14)により行われることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記注文仕様のシート状金属ストリップ(12)は切断装置(15)により所定長さに切断され、シート状金属ストリップ(12)の前記所定長さに切断された部分(12’)は炉(16)内で一時的に加熱されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記一時的加熱は不活性ガス雰囲気中で行われることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記一時的加熱は、コーティング時の熱処理中に行われることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記注文仕様のシート状金属ストリップ(12)は一時的加熱および/またはコーティングの後に冷却されることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記注文仕様のシート状金属ストリップ(12)は、100℃未満の温度、好ましくは80℃未満の温度に冷却されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記未コーティングのシート状金属ストリップ(1、2)は溶接すべきシート状金属ストリップとして使用されること、および溶接の結果として未コーティングのシート状金属ストリップ(1、2)から形成された注文仕様のシート状金属ストリップ(12)は、次に、高温亜鉛めっきプロセス、電解亜鉛めっきプロセスまたは溶融アルミナイジングプロセスにより一面または両面がコーティングされることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
溶接により未コーティングのシート状金属ストリップ(1、2)から形成されたシート状金属ストリップ(12)は、その一面または両面が保護ラッカーまたは防錆オイルでコーティングされることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記コーティングプロセスは、一時的加熱の後に保護ラッカーまたは防錆オイルにより行われることを特徴とする請求項13記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−510898(P2012−510898A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538929(P2011−538929)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065187
【国際公開番号】WO2010/063560
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511135787)ティッセンクルップ テイラード ブランクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Tailored Blanks GmbH
【住所又は居所原語表記】Prinz−Heinrich−Strasse 7, 47139 Duisburg, Germany
【Fターム(参考)】