説明

洗浄剤組成物

【課題】 優れた洗浄力を有し、たれ落ちしにくく、皮膚に対する刺激が少なく、粉末汚れが混入しても泡立ちが良く、しかもさっぱりと洗い流せる洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】 下記成分(A)(B)(C)(D)を含有する洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物が25℃においてラメラ液晶相であることを特徴とする洗浄剤組成物である。
(A)両性界面活性剤
(B)アニオン界面活性剤
(C)炭素数8〜18のアシル基を有するモノ脂肪酸ジグリセリンエステル
(D)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄剤組成物に関する。さらに詳しくは、皮膚や毛髪の洗浄に適するものであって、優れた洗浄力を有し、皮膚に対する刺激が少なく、粉末汚れが混入しても泡立ちが良く、しかもさっぱりと洗い流せる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗浄剤は、その洗浄メカニズムの違いから界面活性剤型洗浄剤と溶剤型洗浄剤に大別される。
【0003】
皮膚及び毛髪用の各種洗浄剤には、乳化、分散、可溶化作用を利用した界面活性剤型洗浄剤が用いられてきた。
【0004】
界面活性剤型洗浄剤とは、界面活性剤の吸着などにより油汚れを基剤から脱離する、いわゆるローリングアップと呼ばれる汚れの除去により洗浄効果が得られる洗浄剤である。界面活性剤型洗浄剤は、大量に界面活性剤を使用した場合には身体への影響(安全性)が懸念されるため、少量の界面活性剤によっても高い洗浄力を有する洗浄剤が求められている。
一方、溶剤型洗浄剤とは、油などの溶剤を主成分とし、油汚れなどを溶解して基剤から脱離することにより洗浄効果が得られる洗浄剤である。油系の溶剤が主成分であることから、環境破壊や毒性、引火性、匂い、コストなどといった課題もある。
【0005】
これに対して、特許文献1には、界面活性剤型でありながら優れた洗浄性能を有する洗浄剤組成物として、バイコンティニュアスミクロエマルション相を用いた洗浄剤が記載されている。しかしながら、この洗浄剤組成物は、炭素数4〜8の液状アルコール/液状脂肪酸を用いることを特徴としており、そのような液状アルコール/液状脂肪酸は匂いおよび身体への毒性の点で問題があった。
【0006】
また、非特許文献1には、脂肪酸メチルエステルαスルホン酸のカルシウム塩を界面活性剤とし、モノ2−エチルヘキサン酸グリセリドをコサーファクタントとしてバイコンティニュアスミクロエマルション相を生成させる技術が記載されている。しかしながら、カルシウム塩の場合は、洗浄剤に求められる性能のうち泡立ちが低下する傾向がある。また、汚れの成分として油脂などに由来する脂肪酸を含む場合には不溶性の脂肪酸カルシウムを生成し洗浄性能が著しく低下する。
【0007】
これに対して、特許文献2には、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、モノ2−エチルヘキシルグリセリルエーテルまたはモノ2−エチルヘキサン酸グリセリド(モノ2−エチルヘキサン酸モノグリセリンエステル)、水を含有する洗浄剤組成物であって、25℃においてバイコンティニュアスミクロエマルション相であるか若しくはバイコンティニュアスミクロエマルション相と他の相とが共存する多相系であることを特徴とする洗浄剤組成物が記載されている。
しかしながら、モノ2−エチルヘキシルグリセリルエーテルおよびモノ2−エチルヘキサン酸グリセリド(モノ2−エチルヘキサン酸モノグリセリンエステル)は、短鎖の分岐アルキルを有し、皮膚および毛髪洗浄剤として使用した場合、皮膚および眼などへの刺激を生じる可能性がある。
【0008】
また、特許文献3には、親水性非イオン界面活性剤、水酸基を有する水溶性物質、油成分及び水から得られる液晶構造体を基剤とする液晶型油性化粧料が記載されている。しかしながら、親水性非イオン界面活性剤は起泡力に乏しく、この系においては汚れが混入した際に泡立てることができない。
【0009】
【特許文献1】特開2002−20791号公報
【特許文献2】特開2004−182760号公報
【特許文献3】特開昭62−53910号公報
【非特許文献1】R.Beckら J. Phys. Chem. B 2002, 106, 3335.
【0010】
また、洗浄においては、泡を生じることは機能性面、使用感触面で望ましい。即ち、泡立てて洗浄することにより、肌への負担を少なく汚れを落とし、スピーディーに洗い流すことができ、洗いあがり時にさっぱり感が感じられる。しかしながら、従来の界面活性剤型洗浄剤の多くは、油や疎水化処理粉末等の汚れ等が混入すると著しく泡立ちが低下する。また、石鹸やシャンプー等の泡量の多い洗浄料は、疎水化処理粉末を含む化粧料等の落とし難い汚れを落とすことが出来ない。一方、溶剤型洗浄剤には起泡性を付与するのが困難であった。
【0011】
溶剤型洗浄においては、液体状のものが多いが、その粘度の低さから皮膚や毛髪に塗布する際にたれ落ちしやすく、塗布しづらいという問題があった。バイコンティニュアスミクロエマルション相であるか若しくはバイコンティニュアスミクロエマルション相と他の相とが共存する多相系においても同様の問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、上述の問題点に鑑み、炭素数8〜18のアシル基を有するモノ脂肪酸ジグリセリンエステルを含有する界面活性剤型洗浄剤を、ラメラ液晶相に調製すると、優れた洗浄力を有し、皮膚に対する刺激が減少し、身体に対する安全性を十分に配慮した洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の目的は、優れた洗浄力を有し、塗布時にたれ落ちすることなく、皮膚に対する刺激が少なく、粉末汚れが混入しても泡立ちが良く、洗い流し時にはさっぱり感が感じられ、かつ乾燥後にはしっとり感が感じられる洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、下記成分(A)(B)(C)(D)を含有する洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物が25℃においてラメラ液晶相であることを特徴とする洗浄剤組成物を提供するものである。
(A)両性界面活性剤
(B)アニオン界面活性剤
(C)炭素数8〜18のアシル基を有するモノ脂肪酸ジグリセリンエステル
(D)水
【0015】
また、本発明は、成分(A)と成分(B)との質量比が2:8〜9:1の範囲であることを特徴とする上記の洗浄剤組成物を提供するものである。
【0016】
さらに、本発明は、成分(C)のモノ脂肪酸ジグリセリンエステルの(無機性値/有機性値)比の平均値が0.8〜1.5の範囲内であることを特徴とする上記の洗浄剤組成物を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、洗浄剤組成物が、皮膚又は毛髪洗浄料であることを特徴とする上記の洗浄剤組成物を提供するものである。
【0018】
さらに、本発明は、下記ステップ(1)〜(4)に示す方法によりラメラ液晶相を得る、上記の洗浄剤組成物の製造方法を提供するものである。
(1):成分(A)と成分(B)の混合比の異なる両性/アニオン界面活性剤混合物を調製し、それぞれに等量の成分(D)を添加する。
(2):(1)の混合比の異なる各界面活性剤水溶液の界面張力を測定し、界面張力が低い値を示す成分(A)と成分(B)の混合範囲を決定する。この混合範囲とは、最も界面張力が低下した混合比を中心とし、その両側±2程度の範囲である。
(3):(2)で求めた成分(A)と成分(B)の混合比の界面活性剤水溶液に対し、成分(C)を徐々に添加し、攪拌・混合し、外観が異方性を示す成分(C)の添加濃度を決定する。
(4):得られた組成物がラメラ液晶相であることを確認する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗浄剤組成物は下記の優れた効果を有している。
(1)洗浄力に優れている。
(2)塗布時にたれ落ちしにくい。
(3)皮膚に対する刺激が少ない。
(4)泡立ちが良い。特に粉末汚れが混入しても泡立ちが良い。
(5)洗い流し過程にさっぱり感を感じることができる。
(6)乾燥後にはしっとり感を感じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に用いる成分(A)の両性界面活性剤は、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を少なくとも1つずつ有し、溶液が酸性のときにはカチオン性、アルカリ性のときにはアニオン性となり、等電点付近では非イオン界面活性剤に近い性質を有している。
両性界面活性剤は、アニオン基の種類により、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型およびリン酸エステル型に分類される。本発明に好ましくはカルボン酸型、硫酸エステル型およびスルホン酸型である。カルボン酸型はさらにアミノ酸型とベタイン型に分類される。特に好ましくはベタイン型である。具体的には、イミダゾリニウムベタイン、アルキルベタイン、アミドベタインが挙げられる。
【0021】
本発明に用いる成分(B)のアニオン界面活性剤は、脂肪酸石鹸、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテル酢酸等のカルボン酸塩型、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸型、高級アルコール硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型等に分類される。好ましくは、カルボン酸塩型、スルホン酸型および硫酸エステル塩型であり、特に好ましくは硫酸エステル塩型である。具体的には、アルキルエトキシサルフェート塩が挙げられる。
【0022】
成分(A)の両性界面活性剤及び成分(B)のアニオン界面活性剤は、水溶液中で混合された場合に、油に対する界面張力が低下することが知られている。界面張力は特に油分の洗浄に対し重要な要因であり、油分との界面張力が低い溶液中で油汚れが自発的に球状になり基剤から脱離する、いわゆるローリングアップと呼ばれる汚れの除去過程は公知のものである。
成分(A)又は成分(B)の片方のみ用いた場合には、ラメラ液晶相が得られないか、あるいは、得られた場合であってもその生成領域が狭く、実質上の使用にあたって安定性を十分に満たすことができない場合がある。
【0023】
成分(A)の両性界面活性剤と成分(B)のアニオン界面活性剤の望ましい混合比は2:8〜9:1である。この範囲をはずれた場合には、界面張力の低下が充分でなく、洗浄効果が十分でない場合がある。特に好ましい混合比は、5:5〜8:2の混合比である。
【0024】
本発明においては、成分(A)の両性界面活性剤と成分(B)のアニオン界面活性剤は混合した状態で配合するが、水溶液中で混合することで両者に静電的相互作用により複合体が生じ、目や皮膚に対する刺激が大きく減少する。
【0025】
本発明に用いる成分(C)のモノ脂肪酸ジグリセリンエステルは下記一般式(1)で示されるモノ脂肪酸ジグリセリンエステルである。
【化1】

(4つのRのうち、任意の3個は−H、残りの1個は炭素数8〜18のアシル基である。)
これらは、25℃で液状、粘稠液状または固体状の界面活性助剤として機能する。すなわち、エステル基により結合した中〜長鎖アルキルが、親油基として機能する。また、ジグリセリンの有する4個の−OH基のうち、中〜長鎖アルキルのエステル結合により封鎖されている1個を除いた3個の−OH基が親水基として機能する。
しかしながら、モノ脂肪酸ジグリセリンエステルが界面活性助剤として機能するためには、親油基と親水基のバランスが重要である。その指標として、化合物の構造から有機性値、無機性値として親油性、親水性のバランスを数値化する方法がある。本発明において界面活性助剤として機能するためには、(無機性値/有機性値)比の値が0.8〜1.5の範囲内であることが必要である。モノ脂肪酸ジグリセリンエステルを混合して用いる場合には、各化合物の(無機性値/有機性値)比を求め、その平均値が0.8〜1.5の範囲内であることが必要である。特に望ましくは0.9〜1.3の範囲である。
成分(C)のモノ脂肪酸ジグリセリンエステルは、炭素数8〜18のアシル基を有している限り、それが直鎖であっても分岐であってもかまわない。また二重結合を有していても良い。特にモノ直鎖オクタン酸ジグリセリンエステル、モノ2−エチルヘキサン酸ジグリセリンエステル、モノデカン酸ジグリセリンエステル、モノドデカン酸ジグリセリンエステル、モノテトラデカン酸ジグリセリンエステル、モノヘキサデカン酸ジグリセリンエステル、モノオクタデカン酸ジグリセリンエステル、モノオレイン酸ジグリセリンエステル、モノイソステアリン酸ジグリセリンエステルからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
また、これらのモノ脂肪酸ジグリセリンエステルは、製造する際にジエステル体、トリエステル体、テトラエステル体が副生成物として生成し、不純物として混入している可能性が考えられるが、これらはいずれも界面活性助剤としての機能を発現するには好ましくない不純物である。そのため、モノ脂肪酸ジグリセリンエステル中のモノエステル体含量が80%以上であることが好ましい。さらに、トリグリセリン体、テトラグリセリン体等のポリグリセリン体が副生成物として生成し、不純物として混入している可能性もある。これらも、いずれも界面活性助剤としての機能を発現するには好ましくない不純物であるため、ジグリセリン体含量も80%以上であることが好ましい。
【0026】
成分(C)は界面活性剤と一定の比率で混合された界面膜を形成することで、系の親水性−親油性バランス(HLB)を変化させる。具体的には、親水性の球状ミセル、棒状ミセルなどを形成する成分(A)および成分(B)の混合物である両性/アニオン界面活性剤複合体のHLBをやや親油方向に変化させる。したがって、成分(A)と成分(B)の総量と成分(C)の比率は非常に重要である。その比率は成分(A)のアニオン/両性界面活性剤比や成分(C)の(無機性値/有機性値)比などによって左右される。
【0027】
成分(C)のモノ脂肪酸ジグリセリンエステルは、同等のアルキル鎖長を有するモノ脂肪酸モノグリセリンエステルに比べ、分子量が大きいため、洗浄剤組成物を洗い流す際には泡立てて洗い流せるという利点を有しつつ、さらに乾燥した後にしっとり感を感じることができる。この乾燥後のしっとり感はモノ脂肪酸モノグリセリンエステルでは発揮されない。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物は、上記の成分(A)〜(C)と、成分(D)の水を含有し、25℃においてラメラ液晶相となっているものである。
液晶相は、界面活性剤のような両親媒性分子がその濃度に応じて分子集合体を形成し、液体と固体の中間的な秩序および分子配列をもった状態のことである。中でもラメラ液晶相は、バイコンティニュアス相と類似した水および油の両方が連続である構造を形成しているが、光学的には異方的でありバイコンティニュアス相に比べてやや粘度が高い。ラメラ液晶相には層状構造、ベシクル状構造を形成するものなどがあり、その構造によって粘度も低粘度のものから高粘度のゲル状のものまでさまざまである。層状構造を形成するラメラ液晶相はさらにプレーナーラメラ液晶相、Lαなどとも称される。ベシクル構造を形成するラメラ液晶相はコンセントリックラメラ液晶相、Lαlなどとも称される。コンセントリックラメラ液晶相においては、その構造から、光学的異方性に乏しく偏光観察を行っても暗視野となるものもある。いずれのラメラ液晶相も、本発明においては優れた効果を与える。
本発明の組成をとり、成分(C)のモノ脂肪酸ジグリセリンエステルの濃度を変化させることにより、さまざまな組成範囲(領域)でラメラ液晶相を得ることができる。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物は、上記必須成分(A)(B)(C)と成分(D)の水とを混合し、必要に応じて洗浄料若しくは化粧料に配合されるその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加し、目的とする剤形に応じて常法により製造される。特に塩化ナトリウム、塩化カリウムを配合することが好ましい。これらは、入手しやすく、安価であり、親水性の界面活性剤であるアニオン/両性界面活性剤複合系の親水性−親油性バランスを、塩析の効果により釣り合わせる、即ちやや親油性方向に変化させる効果があり、その結果として、モノ脂肪酸ジグリセリンエステルの配合量を減じることができる望ましい添加剤である。
また、添加剤として、保湿剤、具体的には1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレンオキシドなどを配合するのも好ましい。これらは、入手しやすく、安価であり、使用感触を変化させる効果がある。また、配合する保湿剤の種類によって系の親水性−親油性バランスを親水性方向もしくは親油性方向に変化させる効果があり、その結果として、モノ脂肪酸ジグリセリンエステルの配合量を増減させることができる。
【0030】
本発明のラメラ液晶相である洗浄料組成物は具体的には下記のステップにより製造出来る。
(1):成分(A)と成分(B)の混合比を変えて、混合比が異なる両性/アニオン界面活性剤混合物を調製し、それぞれに成分(D)を添加する。この界面活性剤水溶液をサンプルとする。
(2):各サンプルの各界面活性剤水溶液の界面張力を測定して、界面張力が低い値を示す成分(A)と成分(B)の混合範囲を決定する(見出す)。この混合範囲とは、最も界面張力が低下した混合比を中心とし、その両側±2程度の範囲である。
界面張力測定例を図1に示す。図1は、成分(A)両性界面活性剤に2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、成分(B)アニオン界面活性剤にポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを用い、デカンに対する界面張力を測定したものである。図1より、成分(A)と成分(B)の混合比が5:5〜9:1が界面張力が低い混合範囲であることが分かるので、この混合比が決定される。
(3):(2)で求めた成分(A)と成分(B)の混合比の両性/アニオン界面活性剤混合水溶液に対し、洗浄剤組成物の配合する他の水溶性添加剤を添加し、攪拌・混合する。
その後、比較的強い攪拌力を加えながら、この界面活性剤混合水溶液に、成分(C)及び他の油溶性添加剤を徐々に添加し、攪拌・混合し、外観が異方性一相を示す成分(C)及び他の油溶性添加剤の添加濃度を決定する。すなわち、外観が異方性を示した時点で成分(C)及び他の油溶性添加剤の添加を止める。
(4):上記の工程で製造した組成物がラメラ相であることを確認する。ラメラ相であるかどうかは、例えば以下のステップにより確認できる。
(5):(3)までの工程で得られた最終洗浄剤料組成物を、ねじ口試験管(サンプル管)に入れ、激しく振とうし、25℃の恒温水槽中に静置、または遠心分離する。目視にて、組成物溶液が1相になっていることを確認する。「1相である状態」とは溶液全体が透明〜半透明で均一であることを指す(ファーストデターミンステップ)。
(6):その後、洗浄料組成物溶液を、偏光板2枚を90度の位相差で組み合わせた間に保持し、光の透過性を確認する(セカンドデターミンステップ)。
(7):さらに、ねじ口試験管を軽く振ることでこのサンプルの粘度を目視で確認する(サードデターミンステップ)。
(8):ファーストデターミンステップで均一透明1相であり、セカンドデターミンステップで光の透過が観察される場合は、液晶相であると考えられる。これらの場合、偏光顕微鏡観察およびX線構造解析によってその相を同定する。異方性の帯状模様が観察され、層間隔に対応する散乱ピークが出る場合はラメラ液晶相と考えられる。また、異方性の筋状模様が観察され、六方晶の棒状ミセル間隔周期に鋭い散乱ピークが出る場合はヘキサゴナル液晶相もしくは逆ヘキサゴナル液晶と考えられる。また、サードデターミンステップにおいて、低粘度液状であればプレーナーラメラ液晶相、やや高粘性液状であればコンセントリックラメラ液晶であることが確認できる。
すなわち、以上のステップを確認できれば、本発明における洗浄料組成物がラメラ液晶相の一相領域であることが確認できる。
【0031】
また、ラメラ液晶相である洗浄料組成物を製造するためには、簡便には図2に示すような相図を作成することにより、必須成分(A)〜(D)の配合量を決定できる。図2中の略称は、L1:ミセル相、L2:逆ミセル相、Lα:ラメラ液晶相をそれぞれ示す。
(A)両性界面活性剤に2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよび(B)アニオン界面活性剤にポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを用い、重量比(A):(B)=7:3で混合したものに対し、(D)水を添加して界面活性剤純分が18%となるように希釈する。この混合活性剤18%水溶液に対し、(C)各モノ脂肪酸ジグリセリンエステルをそれぞれ濃度を変えて添加し、それぞれのときの相状態を評価する。特定の組成範囲で本発明において優れた洗浄効果を示すラメラ液晶相(Lα)が得られることがわかる。
1:まず、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分をねじ口試験管に秤量し、激しく振とうしたのち恒温水槽中に静置し溶液の状態を観察する。濁りがなく完全に透明であれば1相である。濁りがある場合にはさらに長期間静置しそれぞれの相の分離を待つ。まれに相分離が非常に遅く、成分の劣化などが懸念される場合には遠心分離装置を用いる。この場合、温度コントロールが可能なタイプを用いることが必要である。
2:次に溶液が1相の場合にはバイコンティニュアスミクロエマルション相、ミセル水溶液相、液晶相、逆ミセル油溶液相などの可能性があるため、どの相であるかを決定する。決定の方法は、上述した粘度による判定、光学的等(異)方性、伝導度測定等の手法を用いる。
3:溶液が多相の共存状態である場合には、完全な相分離後に各相の光学的等(異)方性を確認する。また、この共存するいくつかの相のうち1つは、近接する1相領域の相である。確実に確認するためには、溶液の組成を近接する1相の領域に向かって徐々に変化させたいくつかの溶液を調製する、多相共存溶液のうち当該相の全溶液に占める容積が徐々に増加し、ついには1相となることから確認が可能である。また、比重を考慮し各相の試験管内の存在位置からの確認も可能である。本発明のラメラ液晶相は、水相およびミセル水溶液相よりも比重が軽く、油相(過剰なモノ脂肪酸ジグリセリンエステル)および逆ミセル油溶液相よりも比重が重いことが普通である。バイコンティニュアスミクロエマルション相とラメラ液晶相の比重は近いが、両者は光学的等方性により判別が可能である。
4:上記の手順により、多数の溶液を調製し、それぞれの組成において出現する相を特定し、領域を決定することにより、相図が完成する。
5:(A)と(B)との配合比が上記と異なる場合や混合活性剤濃度が異なる場合も図2の場合と全く同様にして相図を作成することができる。その図から、(C)の配合範囲を決定して、本発明の洗浄剤組成物を容易に製造することが可能である。
例えば、任意の(A)と(B)を選択し、目的とする製品の洗浄能力に応じて、(A):(B)=7:3になるような洗浄料組成物を製造する場合には、(A):(B)=7:3となるようにそれぞれの配合量をまず決める。そして、図2を作成した場合と同様にして相図を作成し、(C)のとり得る範囲を決定する。それを基本処方として、他の配合成分を添加し、25℃にて、ラメラ液晶相であることを確認する。
【0032】
なお、本発明の要件であるラメラ液晶相は熱力学的な平衡状態であり、添加順序に関わらず生成する。したがって、どのような添加順序でも製造することが可能である。しかしながら、最も速やかに平衡状態に到達させるためには、水、界面活性剤、塩など水溶性の物質を混合し、界面張力が十分に低下した水溶液を調製した後、モノ脂肪酸ジグリセリンエステルを撹拌しながら徐添することが望ましい。
【0033】
成分(A)〜(D)を含有する洗浄剤組成物が、ラメラ液晶相であるかどうかは、(1)外観による判定、(2)偏光顕微鏡観察およびX線構造解析、(3)相平衡図の作成、(4)電気伝導度測定、(5)NMRによる自己拡散係数の測定、(6)フリーズフラクチャー法を用いて調製したレプリカの電子顕微鏡観察等により決定できる。いずれの方法により決定してもよい。
(1)外観による判定では、液晶相は透明〜半透明な1相領域であり光学的には異方性である。光学的異方性の判定は偏光板2枚を90度の位相差で組み合わせた間にサンプルを保持し、光の透過があることを確認することで可能である。どの液晶相かを同定するためには、さらに(2)〜(6)の方法が有効である。
(2)偏光顕微鏡観察およびX線構造解析によれば、異方性の帯状模様が観察され、層間隔に対応する散乱ピークが出る場合はラメラ液晶相と考えられる。また、異方性の筋状模様が観察され、六方晶の棒状ミセル間隔周期に鋭い散乱ピークが出る場合はヘキサゴナル液晶相と考えられる。偏光顕微鏡観察で暗視野であり、キュービック対称性のスポットが出る場合は、キュービック液晶相と考えられる。
(3)相平衡図の作成では、水/油性成分/界面活性剤(油性成分にはコサーファクタントの界面活性助剤を含む)で構成される3成分系の相平衡図を作成すると、ラメラ液晶相が生成する濃度範囲は、ミセル水溶液相やバイコンティニュアスミクロエマルション相と隣接する領域である等の特長を有していることで同定可能であるが、この特長は構成される系(成分)によって異なる。
(4)電気伝導度測定では、液晶相は、それぞれの相の流動性や構造の連続性、異方性に起因する特長的な電気的性質を有するため、適切な条件下で伝導度測定を行うことにより相に関する情報を得ることが可能である。
(5)NMRによる自己拡散係数測定は、LindmanらによりJ. Colloid Interface Sci. 1981, 83, 569等に詳しく記載されている方法である。
(6)フリーズフラクチャー法を用いて調製した相サンプルの電子顕微鏡観察によれば、ラメラ液晶相の像を得ることが可能である。この像によればヘキサゴナル液晶相や他の相で得られる会合体像との区別が容易である。この方法については、今栄らによる文献Colloid Polym. Sci.1994, 272, 604に詳しく記載されている。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物は、従来のモノ2−エチルヘキサン酸グリセリンエステルを配合したバイコンティニュアスミクロエマルション相と比較すると、刺激が極めて小さいため、さらには使用時にたれ落ちがなく使用性が極めて良好であるので、皮膚又は毛髪洗浄料として特に好ましく利用される。
また、(C)成分のモノ脂肪酸ジグリセリンエステルの代わりにモノ脂肪酸モノグリセリンエステルを配合した場合と比べると、乾燥後のしっとり感に特に優れているため、皮膚又は毛髪洗浄料として特に好ましく利用される。
本発明の洗浄剤組成物が対象とする汚れとしては、メーク汚れ、油汚れ、皮脂、ほこり、整髪料などがあり、特にメーク汚れに対して効果を発揮するメーク落とし洗浄料としての利用が望ましい。
また、ガラス用洗浄剤、セラミックス用洗浄剤、プラスチック用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、食器用洗浄剤、容器用洗浄剤、工業用洗浄剤としても好ましく使用される。
【実施例】
【0035】
次に実施例により本発明をさらに具体的に詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。配合量は質量%を表わす。
【0036】
<洗浄効果>
本発明の洗浄剤組成物の洗浄効果を確認するため、以下の洗浄効果テストを行った。
「人工汚れの作成」
人工汚れ1:赤色色素スダンIIIを含むワセリンとステアリン酸を1:1の割合で、80℃で混合し自然冷却して作成
人工汚れ2:人工汚れ1に対し、さらに疎水化処理粉末を30%添加し、80℃で混合し自然冷却して作成
「洗浄効果評価法」
人工皮革にあらかじめ2cm×2cmの領域を設定し、人工汚れ0.1gを均一に塗布した。洗浄剤組成物を100mlスクリュー管に50mL入れ、人工汚れの塗布された人工皮革を洗浄液中に浸漬し、激しく5分間浸透した。そののち静かに人工皮革を引き上げ、人工汚れ残存量を色差計にて判定した。
「洗浄効果」の判定基準
◎ : 人工汚れ残存量が5%以下である
○ : 人工汚れ残存量が20%以下である
△ : 人工汚れ残存量が50%以下である
× : 人工汚れ残存量が50%を越える
<使用性>
本発明の洗浄剤組成物の使用性の良し悪しを確認するため、専門パネル8名によるたれ落ちの判定を行った。
「たれ落ち」の判定基準
○ : 8名中7名以上が、使用時にたれ落ちがなく使用性が良好であると回答
△ : 8名中5〜6名が、使用時にたれ落ちがなく使用性が良好であると回答
× : 8名中4名以上が、使用時にたれ落ちし使用性が良好でないと回答
<皮膚刺激>
本発明の洗浄剤組成物の皮膚刺激の有無を確認するため、専門パネル8名による皮膚への刺激感の判定を行った。
「皮膚刺激」の判定基準
◎ : 8名中8名が、刺激が感じられないと回答
○ : 8名中7名が、刺激が感じられないと回答
△ : 8名中6名が、刺激が感じられないと回答
× : 8名中3名以上が、刺激が感じられると回答
<泡立ち>
本発明の洗浄剤組成物の泡立ち特性を確認するため、泡立ちの視感判定を行った。洗浄剤組成物を界面活性剤純分が0.1質量%になるように希釈したサンプルを100mlスクリュー管に50mlとり、さらに人工汚れ2を0.1g加えたのち、激しく1分間振とうした。泡の状態を目視にて確認した。
「泡立ち」の判定基準
○ : 泡が充分に認められる
△ : 泡が僅かに認められる
× : 泡が認められない
<乾燥後しっとり感>
本発明の洗浄剤組成物の乾燥後しっとり感を確認するため、専門パネル8名による乾燥後のしっとり感の判定を行った。
「乾燥後しっとり感」の判定基準
○ : 8名中7名以上が、乾燥後にしっとりすると回答
△ : 8名中5〜6名が、乾燥後にしっとりすると回答
× : 8名中4名以上が、乾燥後にしっとりしないと回答
【0037】
各表に、実施例及び比較例の洗浄剤組成物についての評価結果を示す。
【0038】
【表1】

製法:
(1)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、イオン交換水を秤量し、攪拌・混合する。
(2)(1)に比較的強い攪拌力を加えながらモノ脂肪酸ジグリセリンエステルを徐々に添加し、攪拌・混合する。
(3)ラメラ液晶相であることを確認する。
【0039】
「表1」の結果より、モノ脂肪酸ジグリセリンエステルを含有する実施例1の洗浄剤組成物は、ラメラ液晶相一相を示し、皮膚刺激がなく、たれ落ちしにくく、洗浄効果が高く、かつ乾燥後にはしっとり感が感じられる、優れた洗浄剤であることがわかる。また、汚れに油および粉末が含まれている場合にも洗浄効果が高く、泡立ちの良好な優れた洗浄剤であることがわかる。2−エチルヘキサン酸モノグリセリンエステルを含有する比較例1は、やや皮膚刺激が感じられ、乾燥後にしっとり感が感じにくかった。1−ヘキサノールを含有する比較例2は、皮膚刺激が大きく皮膚洗浄剤としては適さない。
【0040】
【表2】

製法:
(1)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、イオン交換水を秤量し、攪拌・混合する。
(2)(1)に比較的強い攪拌力を加えながらモノ脂肪酸ジグリセリンエステルを徐々に添加し、攪拌・混合する。
(3)ラメラ液晶相であることを確認する。
【0041】
「表2」の結果より、モノドデカン酸ジグリセリンエステル(炭素数12のアシル基を有するジグリセリンエステル)を含有する実施例2、モノテトラデカン酸ジグリセリンエステル(炭素数14のアシル基を有するジグリセリンエステル)を含有する実施例3、モノヘキサデカン酸ジグリセリンエステル(炭素数16のアシル基を有するジグリセリンエステル)を含有する実施例4、モノオレイン酸ジグリセリンエステル(炭素数17の二重結合がある直鎖炭化水素基をもつ炭素数18のアシル基を有するモノグリセリンエステル)を含有する実施例5の洗浄剤組成物は、ラメラ液晶相一相を示し、皮膚刺激がなく、たれ落ちしにくく、洗浄効果が高く、かつ乾燥後にはしっとり感が感じられる、優れた洗浄剤であることがわかる。また、汚れに油および粉末が含まれている場合にも洗浄効果が高く、泡立ちの良好な優れた洗浄剤であることがわかる。成分(A)が配合されていない比較例3においては、界面張力の低下が十分でないために油および粉末に対する洗浄力は弱い。
【0042】
【表3】

製法:
(1)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、イオン交換水を秤量し、攪拌・混合する。
(2)(1)に比較的強い攪拌力を加えながらモノドデカン酸ジグリセリンエステルを徐々に添加し、攪拌・混合する。
(3)ラメラ液晶相であることを確認する。
【0043】
「表3」の結果より、保湿剤およびモノドデカン酸ジグリセリンエステルを含有する実施例6〜7の洗浄剤組成物は、ラメラ液晶相一相を示し、皮膚刺激がなく、たれ落ちしにくく、洗浄効果が高く、かつ乾燥後にはしっとり感が感じられる、優れた洗浄剤であることがわかる。また、汚れに油および粉末が含まれている場合にも洗浄効果が高く、泡立ちの良好な優れた洗浄剤であることがわかる。モノドデカン酸ジグリセリンエステルが配合されていない比較例4は、ラメラ液晶相が得られず、ラメラ液晶相に比べ油および粉末に対する洗浄力は弱く、乾燥後にはしっとり感が感じられない。














【0044】
【表4】

製法:
(1)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、イオン交換水を秤量し、攪拌・混合する。
(2)(1)に比較的強い攪拌力を加えながらモノ脂肪酸ジグリセリンエステルを徐々に添加し、攪拌・混合する。
(3)ラメラ液晶相であることを確認する。
【0045】
「表4」の結果より、モノ脂肪酸ジグリセリンエステルを2種以上含有する実施例8〜9の洗浄剤組成物は、ラメラ液晶相一相を示し、皮膚刺激がなく、たれ落ちしにくく、洗浄効果が高く、かつ乾燥後にはしっとり感が感じられる、優れた洗浄剤であることがわかる。また、汚れに油および粉末が含まれている場合にも洗浄効果が高く、泡立ちの良好な優れた洗浄剤であることがわかる。比較例5は、炭素数6のモノヘキサン酸ジグリセリンエステルを使用したために、ラメラ液晶相が得られず、油および粉末に対する洗浄力は弱く、また皮膚刺激が感じられる。














【0046】
【表5】

製法:
(1)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオキシエチレン(3モル)パルミチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3モル)パルミチルエーテル硫酸トリエタノールアミン、塩化カリウム、イオン交換水を秤量し、攪拌・混合する。
(2)(1)に比較的強い攪拌力を加えながらモノデカン酸ジグリセリンエステルを徐々に添加し、攪拌・混合する。
(3)ラメラ液晶相であることを確認する。
【0047】
「表5」の結果より、塩およびモノデカン酸ジグリセリンエステルを含有する実施例10の洗浄剤組成物は、ラメラ液晶相一相を示し、皮膚刺激がなく、たれ落ちしにくく、洗浄効果が高く、かつ乾燥後にはしっとり感が感じられる、優れた洗浄剤であることがわかる。また、汚れに油および粉末が含まれている場合にも洗浄効果が高く、泡立ちの良好な優れた洗浄剤であることがわかる。モノデカン酸ジグリセリンエステルが配合されていない比較例6は、ミセル水溶液相を示し、ラメラ液晶相に比べ油および粉末に対する洗浄力は弱く、乾燥後にしっとり感が感じられない。
















【0048】
【表6】

製法:
(1)ヤシ脂肪酸アミドプロピルベタイン、ポリオキシエチレン(3モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸カルシウム、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸カリウム、イオン交換水を秤量し、攪拌・混合する。
(2)(1)に比較的強い攪拌力を加えながらモノオクタン酸ジグリセリンエステル及びモノイソステアリン酸ジグリセリンエステルを徐々に添加し、攪拌・混合する。
(3)ラメラ液晶であることを確認する。
【0049】
「表6」の結果より、モノオクタン酸ジグリセリンエステル及びモノイソステアリン酸ジグリセリンエステルを含有する実施例11〜13の洗浄剤組成物は、ラメラ液晶相一相を示し、皮膚刺激がなく、たれ落ちしにくく、洗浄効果が高く、かつ乾燥後にはしっとり感が感じられる、優れた洗浄剤であることがわかる。また、汚れに油および粉末が含まれている場合にも洗浄効果が高く、泡立ちの良好な優れた洗浄剤であることがわかる。成分(B)が配合されていない比較例7においては、界面張力の低下が十分でないために油および粉末に対する洗浄力は弱い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、優れた洗浄力を有し、たれ落ちしにくく、皮膚に対する刺激が少なく、粉末汚れが混入しても泡立ちが良く、しかもさっぱりと洗い流せる洗浄剤組成物を容易に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】両性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の混合比を変えたときのデカンに対する界面張力測定例である。
【図2】洗浄剤組成物におけるラメラ液晶相の組成範囲例を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)(B)(C)(D)を含有する洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物が25℃においてラメラ液晶相であることを特徴とする洗浄剤組成物。
(A)両性界面活性剤
(B)アニオン界面活性剤
(C)炭素数8〜18のアシル基を有するモノ脂肪酸ジグリセリンエステル
(D)水
【請求項2】
成分(A)と成分(B)との質量比が2:8〜9:1の範囲であることを特徴とする請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分(C)のモノ脂肪酸ジグリセリンエステルの(無機性値/有機性値)比の平均値が0.8〜1.5の範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
洗浄剤組成物が、皮膚又は毛髪洗浄料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
下記ステップ(1)〜(4)に示す方法によりラメラ液晶相を得る、請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法。
(1):成分(A)と成分(B)の混合比の異なる両性/アニオン界面活性剤混合物を調製し、それぞれに等量の成分(D)を添加する。
(2):(1)の混合比の異なる各界面活性剤水溶液の界面張力を測定し、界面張力が低い値を示す成分(A)と成分(B)の混合範囲を決定する。この混合範囲とは、最も界面張力が低下した混合比を中心とし、その両側±2程度の範囲である。
(3):(2)で求めた成分(A)と成分(B)の混合比の界面活性剤水溶液に対し、成分(C)を徐々に添加し、攪拌・混合し、外観が異方性を示す成分(C)の添加濃度を決定する。
(4):得られた組成物がラメラ液晶相であることを確認する。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−161736(P2007−161736A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355604(P2005−355604)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】