説明

洗浄料及びその製造方法

【課題】多量の水膨潤性粘土鉱物を含有しつつ、チキソトロピー性をもったペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料を提供する。
【解決手段】水膨潤性粘土鉱物25〜50質量%、陰イオン性界面活性剤8〜25質量%、水25〜65質量%からなる3成分を含有し、この3成分の合計量の含有率が80質量%以上であることを特徴とする。洗浄料に洗浄基剤成分として配合される陰イオン性界面活性剤の作用で、水膨潤性粘土鉱物の膨潤度合いを調整することができ、水膨潤性粘土鉱物を洗浄効果が十分に発揮される多量を配合しても、チキソトロピー性をもったのびの良いペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として身体などの洗浄に用いられる洗浄料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水膨潤性粘土鉱物は、薄片状結晶が重なった層状構造を有しており、層間に水が入ると膨潤し、増粘する特性を有する。またこの結晶の表面に電荷を有しており、その電荷と反対のイオン性物質を吸着する特性も有する。水膨潤性粘土鉱物はこのような特性を有するため、増粘剤、沈降防止剤、吸着剤などとして化粧料や洗浄料に配合する成分として幅広く使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、水膨潤性粘土鉱物、セルロース系の弱アニオン性水溶液、石鹸よりなる透明ゲル状組成物を洗浄料として使用することが提案されており、また特許文献2には、高級脂肪酸エステル、水膨潤性粘土鉱物、一価あるいは多価のアルコールからなる洗浄剤組成物が提案されている。さらに特許文献3には、水膨潤性粘土鉱物と、水と、アニオン性界面活性剤を配合したゲル状洗浄料が提案されている。そしてこれら各特許文献で提供されている洗浄料において、水膨潤性粘土鉱物の含有量は、特許文献1では0.01〜5質量%、特許文献2では1〜5質量%、特許文献3では3〜15質量%である。
【0004】
一方、ベントナイトを代表例とする水膨潤性粘土鉱物は上記のように吸着性を有し、また微細な粒子であるため、水膨潤性粘土鉱物を用いて身体の洗浄をすると、毛穴の汚れまできれいに落としてさっぱりさせ、かつ薄片状結晶が一時的に皮膚表面に皮膜を形成し、洗い上がりは皮膚にしっとりとした感触を与えることができるものであり、水膨潤性粘土鉱物を用いたいわゆる泥による洗浄が近時盛んに行なわれるようになっている。
【0005】
従って、洗浄料に水膨潤性粘土鉱物を配合することによって、洗浄料に含有されている洗浄基剤成分による洗浄力に加えて、水膨潤性粘土鉱物の微細な粒子によるこのような洗浄効果が相乗され、優れた洗浄料が得られることが期待される。
【特許文献1】特開平9−110625号公報
【特許文献2】特開平10−45565号公報
【特許文献3】特開2007−254432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記の各特許文献にみられるように、従来から提供されている洗浄料においては、水膨潤性粘土鉱物の配合量はせいぜい15質量%までであり、このような少量の配合では水膨潤性粘土鉱物による上記のような洗浄効果など、水膨潤性粘土鉱物自体が有する特性を十分に発揮させることができない。
【0007】
そこで、洗浄料に水膨潤性粘土鉱物を多量に含有させることが検討されているが、水膨潤性粘土鉱物の量が増えるにつれて、水に分散させる際に水膨潤性粘土鉱物が凝集し易くなって、均一に混合することが困難になるものであり、水膨潤性粘土鉱物を20質量%以上も含有させると混合不良が発生し、機械によって混合しても固形状になってしまうものであった。
【0008】
一方、本発明者等は、洗浄料に水膨潤性粘土鉱物を含有させるにあたって、水膨潤性粘土鉱物の持つ上記のような特性を最大限に発揮させるためには、洗浄料がチキソトロピー性を有することが有効であり、特に、肌触りやのびがよく、容器から取り出したり皮膚に塗布したりする際の機能に優れていることをも考慮すると、洗浄料の剤型は、チキソトロピー性をもったペースト状乃至半固形状であることを見出した。
【0009】
しかし上記のように、水膨潤性粘土鉱物自体が持つ特性を十分に発揮することができる多量の水膨潤性粘土鉱物を含有させることは困難であり、多量の水膨潤性粘土鉱物を含有しつつ、チキソトロピー性をもったペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料を得ることは、困難であるという問題があった。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、多量の水膨潤性粘土鉱物を含有しつつ、チキソトロピー性をもったペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る洗浄料は、水膨潤性粘土鉱物25〜50質量%、陰イオン性界面活性剤8〜25質量%、水25〜65質量%からなる3成分を含有し、この3成分の合計量の含有率が80質量%以上であることを特徴とするものである。
【0012】
洗浄料に配合される陰イオン性界面活性剤の作用で、水膨潤性粘土鉱物の膨潤度合いを調整することができ、陰イオン性界面活性剤や水の配合量をこの範囲に調整することによって、水膨潤性粘土鉱物を洗浄効果が十分に発揮される25〜50質量%という多量に配合しても、チキソトロピー性をもったのびの良いペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料を得ることができるものである。
【0013】
また本発明において、上記水膨潤性粘土鉱物は膨潤力が10ml/2g以上であることが好ましい。
【0014】
このような水膨潤性粘土鉱物を用いることによって、チキソトロピー性をもったペースト状乃至半固形状の剤型に洗浄料を調製することが容易になるものである。
【0015】
また本発明において、上記陰イオン性界面活性剤は脂肪酸カリウムであることが好ましい。
【0016】
脂肪酸カリウムを用いることによって、起泡性に優れ、水膨潤性粘土鉱物によって得られるしっとりとした感触を残しつつ、さっぱりとした洗い上がりの感触を得ることができるものであり、さらに洗浄料の硬さの調整が容易になると共に、生分解性にも優れるものである。
【0017】
また本発明において、上記3成分は、陰イオン性界面活性剤の存在下で、水膨潤性粘土鉱物と水が混合されたものであることが好ましい。
【0018】
陰イオン性界面活性剤の存在下で水膨潤性粘土鉱物と水を混合することによって、陰イオン性界面活性剤で膨潤度合いを調整しつつ、水で水膨潤性粘土鉱物を膨潤させることができ、水膨潤性粘土鉱物を多量に配合しても、チキソトロピー性をもったペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料を容易に得ることができるものである。
【0019】
本発明に係る洗浄料の製造方法は、上記の洗浄料を製造するにあたって、陰イオン性界面活性剤の存在下で、水膨潤性粘土鉱物と水を混合することによって、水膨潤性粘土鉱物と陰イオン性界面活性剤と水の3成分の混合を行なうことを特徴とするものである。
【0020】
陰イオン性界面活性剤の存在下で水膨潤性粘土鉱物と水を混合して洗浄料を製造するにあたって、陰イオン性界面活性剤で膨潤度合いを調整しつつ、水で水膨潤性粘土鉱物を膨潤させることができ、水膨潤性粘土鉱物を多量に配合しても、チキソトロピー性をもったペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料を容易に製造することができるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水膨潤性粘土鉱物を洗浄効果が十分に発揮される25〜50質量%という多量に配合しても、チキソトロピー性をもったのびの良いペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料を得ることができるものであり、水膨潤性粘土鉱物で毛穴などの汚れを落とす洗浄効果を高く発揮させることができると共に、泡質はクリーミーであって、洗いあがりは皮膚や毛髪にしっとりした感触を与えることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0023】
本発明において水膨潤性粘土鉱物は、洗浄中に皮膚や毛髪などの汚れを吸着して取り除いたり、その微細な粒子により毛穴の汚れを洗い落としたりする洗浄効果を得るために配合されるものであり、また水膨潤性粘土鉱物の配合によって、洗い上がりは皮膚や毛髪にしっとりとした感触を与えることができるものである。さらに水膨潤性粘土鉱物による増粘効果で、洗浄料の泡質をクリーミーにし、洗浄料の剤型をチキソトロピー性を持ったペースト状乃至半固形状にすることができるものである。
【0024】
この水膨潤性粘土鉱物としては、天然品、合成品いずれでも特に制限なく用いることができるものであり、具体的には、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト等のスメクタイト類や、膨潤性の雲母、モンモリロナイトを主成分としたベントナイトなどを好適に挙げることができ、これらは必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0025】
これらの市販品としては、例えば、モンモリロナイトを含有するものとして、(株)ホージュン製の「ベンゲル」「ベンゲルHVP」「ベンゲルA」「ベンゲルFW」「ベンゲル ブライト25」「ベンゲルW−100」、クニミネ工業(株)製の「クニピアG」「クニピアF」、アメリカンコロイド社製の「ウェスタンボンド」、ドレッサーミネラルズ社製の「イエローストーン」等を、またサポナイトを含有するものとして、バンダービルド社製の「ビーガムT」「ビーガムHV」「ビーガムF」「ビーガムK」等を、さらにヘクトライトを含有するものとして、アメリカンコロイド社製の「ヘクタブタイトAW」「ヘクタブタイト200」「ベントンEW」、ナショナルリード社製の「マカロイド」等を挙げることできる。また合成スメクタイトとして、水澤化学工業(株)製の「イオナイトH」、コープケミカル(株)製の「ルーセンタイトSWN」、ラポルテインダストリー社製の「ラポナイト」、クニミネ工業(株)製「スメクトンS」等を挙げることができる。
【0026】
そしてこの水膨潤性粘土鉱物は、洗浄料にチキソトロピー性を付与し、のびのよい硬さを得るために、10ml/2g以上の膨潤力を発現するものであることが好ましい。尚、本発明で規定する水膨潤性粘土鉱物の膨潤力は、第十五改正日本薬局方に定められたベントナイトの試験方法を準用し、水膨潤性粘土鉱物2gの膨潤体積(ml)で表わしたものである。具体的には、水を入れた100mlのメスシリンダーに水膨潤性粘土鉱物2.0gを10回に分けて投入し、これを24時聞放置したときのメスシリンダーの器底に堆積する塊の見かけ容積を測定した数値であり、単位はml/2gで表される。ただし、水膨潤性粘土鉱物の試料2.0gを10回に分けて投入するにあたっては、先に加えた試料がほとんど水中に沈着した後、次の試料を加えることとする。二種以上の水膨潤性鉱物を混合して用いる場合は、混合した試料について同様に測定した数値である。水膨潤性粘土鉱物の膨潤力の上限は特に設定されるものではないが、通常80ml/2g程度が上限である。
【0027】
本発明の洗浄料に用いる陰イオン性界面活性剤は、洗浄力を得るための洗浄基剤として配合されるものであるが、洗浄料を製造する際には水膨潤性粘土鉱物の膨潤度合いを調整する作用も果たすものである。通常、水膨潤性粘土鉱物を水に対して均一に分散させるためには、わずかな量しか配合することができないが、水に水膨潤性粘土鉱物を分散させる系中に陰イオン性界面活性剤が存在すると、陰イオン性界面活性剤が水に溶解したときに生じる陰イオンが、水膨潤性粘土鉱物の結晶層面或いは端面に存在する電荷に電気的な影響を与え、水膨潤性粘土鉱物の層間への水の浸入を抑制して膨潤の度合いを下げるように作用し、水に水膨潤性粘土鉱物がよりなじみやすくなる。この結果、水膨潤性粘土鉱物を多量に配合しても固形になることなく、ペースト状乃至半固形状の剤型に洗浄料を形成することができるものである。従って、水膨潤性粘土鉱物に水と共に陰イオン性界面活性剤を混合することによって、通常の配合可能な量よりも多量の水膨潤性粘土鉱物を配合しても、のびのよいペースト状乃至半固形状の剤型の洗浄料を得ることが可能になるものである。
【0028】
陰イオン性界面活性剤としては、一般に洗浄料に用いられるものであれば、特に制限はなく用いることができるものであり、具体的には、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(以下POEと略す)ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸等のリン酸エステル塩、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイルグルタミン酸モノナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、POEアルキルエーテルカルボン酸、POEアルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキルアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン等が挙げることができ、これらは必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。これらのなかでも、起泡性に優れ、水膨潤性粘土鉱物によって得られるしっとりとした感触を残しつつ、さっぱりとした洗い上がりの感触が得られ、生分解にも優れていることから脂肪酸塩を好ましく用いることができるものであり、脂肪酸塩のなかでも、水に易溶であって水膨潤性粘土鉱物の膨潤に作用し易く、しかも洗浄料の硬さの調整が容易になるため、脂肪酸カリウムがより好ましい。この脂肪酸カリウムとしては、起泡性や刺激性の観点から、炭素数12〜18から選ばれる混合脂肪酸のカリウム塩が特に好ましい。
【0029】
本発明の洗浄料に用いる水は、上記の水膨潤性粘土鉱物を膨潤させ、また陰イオン性界面活性剤とともに洗浄料の硬さを調整するために配合されるものである。この水の種類は、本発明の効果を損なわない範囲において特に限定されないものであり、硬水、軟水、水道水、ミネラル水、蒸留水、海洋深層水、温泉水、アルカリイオン水など任意のものを用いることができる。これらは必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0030】
上記の水膨潤性粘土鉱物、陰イオン性界面活性剤、水の3成分を混合したものが、本発明の洗浄料の主成分となるものであり、本発明では、この3成分中の水膨潤性粘土鉱物、陰イオン性界面活性剤、水の各含有量は、水膨潤性粘土鉱物25〜50質量%、陰イオン性界面活性剤8〜25質量%、水25〜65質量%の範囲(合計100質量%)に設定されるものである。
【0031】
水膨潤性粘土鉱物の含有量が25質量%未満であると、水膨潤性粘土鉱物の吸着性によって皮膚や毛髪などの汚れを吸着して取り除いたり、その微細な粒子により毛穴の汚れを洗い落としたりする洗浄効果を十分に得ることができないものであり、洗いあがりのしっとり感が感じられなくなる。また流動性が高くなってペースト状乃至半固形状の剤型に洗浄料を形成することができなくなる。そして何より、水膨潤性粘土鉱物を多量に配合することによる、いわゆる泥による洗浄という本発明の本来の趣旨を全うすることができない。逆に水膨潤性粘土鉱物の含有量が50質量%を超えると、陰イオン性界面活性剤の作用で水膨潤性粘土鉱物の膨潤性を調整することの限界を超え、硬くなってペースト状乃至半固形状の剤型に形成することができなくなる。水膨潤性粘土鉱物の含有量は30〜45質量%の範囲がより好ましい。
【0032】
また、陰イオン性界面活性剤の含有量が8質量%未満であると、洗浄基剤である陰イオン性界面活性剤による洗浄力が不十分になり、またクリーミーな泡立ちを十分に得ることができなくなる。そして陰イオン性界面活性剤による水膨潤性粘土鉱物の膨潤性の調整を十分に行なうことができなくなって、上記のように水膨潤性粘土鉱物を25質量%以上配合すると、硬くなってペースト状乃至半固形状の剤型に洗浄料を形成することができなくなる。逆に陰イオン性界面活性剤の含有量が25質量%を超えると、洗い上がりにつっぱり感が生じたり、皮膚に対する刺激が強くなったりし、さらには水膨潤性粘土鉱物が適度に膨潤しなくなり、所望の硬さのペースト状乃至半固形状の剤型に洗浄料を形成することができなくなる。陰イオン性界面活性剤の含有量は12〜20質量%の範囲がより好ましい。
【0033】
また、水の含有量が25質量%未満であると、洗浄料がペースト状乃至固形状にならず、のびが悪くなる。逆に水の含有量が65質量%を超えると、洗浄料は液状になってペースト状乃至半固形状に形成することができず、また他の成分と水が分離して剤型の安定性を保つことができなくなる。水の含有量は30〜60質量%の範囲がより好ましい。
【0034】
上記のように、水膨潤性粘土鉱物、陰イオン性界面活性剤、水の3成分を図1のグラフに示すように、水膨潤性粘土鉱物25〜50質量%、陰イオン性界面活性剤8〜25質量%、水25〜65質量%の範囲に設定することによって、水膨潤性粘土鉱物を洗浄効果が十分に発揮されるように多量に配合して、チキソトロピー性をもったのびの良いペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料を得ることができるものであり、また水膨潤性粘土鉱物で毛穴などの汚れを落とす洗浄効果を高く発揮させることができると共に、泡質はクリーミーであって、洗いあがりは皮膚や毛髪にしっとりした感触を与える洗浄料を得ることができるものである。
【0035】
上記の水膨潤性粘土鉱物、陰イオン性界面活性剤、水の3成分は、洗浄料の全量中、80質量%以上を占めるように、洗浄料に含有されるものである。勿論、この3成分が100質量%であることも可能である。この3成分が80質量%未満であると、洗浄力が落ちて不十分になり、洗いあがりのしっとり感を十分に得ることができなくなる。またのびが悪くなって使用しやすい硬さにならないものである。
【0036】
本発明の洗浄剤には、上記の3成分の他に、20質量%以下の配合量で、通常の洗浄剤に用いられる各種の成分を本発明の効果を損なわない範囲において任意に配合することができる。例えば、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、エタノール等のアルコール類、プロピレングリコール、ソルビトール、グリセリン等のポリオール類、脂肪酸、スクワラン、ワセリン、流動パラフィン等の炭化水素類、シュガーエステル、ラノリン、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、炭、シリカ等の顔料、ヤシ油、オリーブ油、アーモンド油、ホホバ油等の植物油、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等の水溶性高分子、カチオン化セルロースエーテル誘導体等のカチオン性高分子、ヒアルロン酸、コラーゲン、尿素等の保湿剤、カミツレエキス、ヨモギエキス、ハトムギエキス等の天然抽出物、アンズ核末、米胚芽末、ポリエチレン末、粒塩等のスクラブ剤、殺菌剤、キレート剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、天然色素、合成色素等の着色料、天然精油、香料等の着香料などを配合することができる。尚、上記の3成分以外にこれらの他の成分を配合する場合、これらの他の成分に上記の3成分に相当するものが含まれている場合には、他の成分に含まれるこの3成分に相当するものも、上記の3成分の一部として含めて、水膨潤性粘土鉱物、陰イオン性界面活性剤、水の3成分の配合量を設定するものである。
【0037】
ここで、上記の水膨潤性粘土鉱物、陰イオン性界面活性剤、水の3成分を混合して洗浄料を調製するにあたっては、陰イオン性界面活性剤の存在下で、水膨潤性粘土鉱物と水を混合するようにするのが好ましい。陰イオン性界面活性剤の存在下で水膨潤性粘土鉱物と水を混合することによって、陰イオン性界面活性剤で膨潤度合いを調整しつつ、水で水膨潤性粘土鉱物を膨潤させることができるものであり、水膨潤性粘土鉱物を多量に配合しても、チキソトロピー性をもったペースト状乃至半固形状の剤型を有する洗浄料を容易に得ることができるものである。具体的には、陰イオン性界面活性剤と水を予め混合しておき、この混合物と水膨潤性粘土鉱物とを混合する方法、水膨潤性粘土鉱物と陰イオン性界面活性剤を予め混合しておき、この混合物と水とを混合する方法、水膨潤性粘土鉱物と陰イオン性界面活性剤と水の3成分を同時に混合する方法がある。水と水膨潤性粘土鉱物を先に混合すると、水膨潤性粘土鉱物の膨潤を陰イオン性界面活性剤の作用で制御することができないものであり、水膨潤性粘土鉱物の量が15質量%よりも少ない場合には均一に水と混合することは可能であるが、水膨潤性粘土鉱物の量が20質量%以上になると、水膨潤性粘土鉱物が凝集して水と均一に混ざらなくなり、その後に陰イオン性界面活性剤を混合しても、ペースト状乃至半固形状に調製することは困難になるものである。ちなみに、既述の特許文献3のものでは、水膨潤性粘土鉱物を水で膨潤させた後、陰イオン性界面活性剤を添加混合するようにしており、水膨潤性粘土鉱物を多量に配合する場合には、ペースト状乃至半固形状の剤型で洗浄料を製造することは困難である。
【0038】
そして上記の水膨潤性粘土鉱物、陰イオン性界面活性剤、水の3成分を混合し、さらに他の成分を混合して混練することによって、本発明に係る洗浄料を製造することができるものである。上記の3成分と、他の成分は同時に混合・混練するようにしてもよい。この混合・混練は、プラネタリミキサー、アジホモミキサー、ニーダー、プロッター等を用いて行なうことができるものである。さらにこのように混合・混練してペースト状乃至半固形状に製造した洗浄料を、クリーム充填機等によってジャーやチューブ等の容器に充填したり、バー状に押出して成形したりすることによって、製品化することができるものである。
【0039】
上記のようにして得られる本発明の洗浄料は、チキソトロピー性をもったペースト状乃至半固形状であり、例えば顔用の洗顔料やメイク落とし、身体用のボディシャンプー、毛髪用のシャンプー等に好ましく用いることができるものである。
【0040】
尚、本発明において洗浄料の剤型は次のように規定される。レオメータを用いて、容器に入れた洗浄料に円柱状プローブを貫入速度100mm/minで30mm貫入させたときの、円柱状プローブの断面積あたりの最大荷重(Pa)を測定し、最大荷重が1×10Pa以上50×10Pa未満のときはペースト状、50×10Pa以上100×10Pa未満のときは半固形状、100×10Pa以上のときは固形状、1×10Pa未満のときは液状と、規定される。またチキソトロピー性については、直径32mm、厚さ1.5mmの円板を取り付けたローターを用い、洗浄料中に円板を完全に沈めた状態でローターをモーターで回転させ、このときのモーターにかかる負荷電流値を測定し、回転開始から1秒毎に30秒間測定した値の平均値を算出する。そしてローターの回転数を100rpmと500rpmの2段階に設定してこの測定を行ない、回転数100rpmのときの負荷電流値の平均値Aと回転数500rpmのときの負荷電流値の平均値Aの比(A/A)を求め、この比が1を超える場合、チキソトロピー性を有すると規定される。またこの比が大きいほどチキソトロピー性が良好であり、本発明ではこの比が3以上であることが好ましい。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0042】
水膨潤性粘土鉱物として表1の「A」欄に示すようにベントナイトを用いた。「A」欄のベントナイトにおいて、*1は(株)ホージュン社製「ベンゲルHVP」(膨潤力42ml/2g)、*2はホージュン社製「ベンゲル」(膨潤力35ml/2g)、*3はホージュン社製「ベンゲル ブライト11」(膨潤力6ml/2g)である。
【0043】
また陰イオン性界面活性剤として表1の「B」欄の、ヤシ油脂肪酸カリウム(ミヨシ油脂(株)製「アンホレックスKW−33」)、ミリスチン酸カリウム(日本油脂(株)製「ノンサールMK−1」)、ラウレス硫酸ナトリウム(新日本理化(株)製「シノリンSPE1200−K」)を用いた。尚、「アンホレックスKW−33」は有効性成分33質量%の水溶液であり、「シノリンSPE1200−K」は有効成分30質量%の水溶液である。いずれも「B」欄に示したのは有効成分の配合量であり、残りの水は、「C」欄の水に含まれている。
【0044】
そして、「B」欄の陰イオン性界面活性剤と「C」欄の水、及び「D」欄の成分をプラネタリミキサーに投入して、5分間均一に混合し、これに「A」欄のベントナイトを投入して10分間、均一に混合・混練することによって、実施例1〜13及び比較例1〜4の洗浄料を得た。また実施例14,15については、「A」欄のベントナイトを投入して10分間混合・混練をした後、さらに「E」欄のオリーブ油を投入して5分間、均一に混合・混練することによって洗浄料を得た。
【0045】
上記のようにして得た洗浄料について、「外観」、「硬さ」、「チキソトロピー性」、「のびのよさ」、「洗浄力」、「泡質」及び「洗い上がりの感触」を評価し、結果を表1に示す。各項目についての評価の方法は下記に示した方法によって行なった。
【0046】
(1)外観
洗浄料の外観を目視により観察し、ペースト状乃至半固形状の剤型のものは「O」、液体状や固体状等その他の剤型のものは「×」と評価した。
【0047】
(2)硬さ
洗浄料を直径80mmのビーカーに300ml入れて24時間放置した後、今田製作所製「PCM−500型粉体圧縮試験機」を用いて、直径40mmの円柱状プローブを貫入速度100mm/minで30mm貫入したときの、円柱状プローブにかかる断面積あたりの最大荷重(Pa)を測定した。測定温度は25℃で行なった。
【0048】
そして最大荷重が1×10Pa以上50×10Pa未満のときはペースト状、50×10Pa以上100×10Pa未満のときは半固形状、100×10Pa以上のときは固形状、1×10Pa未満のときは液状と判定した。
【0049】
(3)チキソトロピー性
直径10mmの回転軸の下端に直径32mm、厚さ1.5mmの円板を水平に取り付けたローターを用い、洗浄料を直径80mmのビーカーに300ml入れて24時間放置した後、円板を洗浄料中に15mmの深さに沈めた状態で、ローターをモーターで回転させた。このときのモーターにかかる回転負荷の負荷電流値を測定し、回転開始から1秒毎に30秒間測定した値の平均値を算出した。このとき、ローターの回転数を100rpmと500rpmの2段階に設定して測定を行ない、回転数100rpmのときの負荷電流値の平均値Aと回転数500rpmのときの負荷電流値の平均値Aの比(A/A)を求めた。測定温度は25℃で行なった。
【0050】
そしてA/Aの比が1を超える場合、チキソトロピー性を有すると判定し、また値が大きいほどチキソトロピー性が良好であると判定した。
【0051】
(4)のびのよさ、洗浄力、泡質(クリーミー性)、洗い上がりの感触については、20〜40歳代の男女20名をパネラーとし、洗浄料を用いて洗顔した時のそれぞれの項目について、下記に示す評価に従って0点から3点の点数で判定し、20名の平均値をもって評価した。平均点が1点以下の場合は「×」、1点を超え2点以下の場合は「○」、2点を超える場合は「◎」とした。
・のびのよさ
3点:非常にのびがよい
2点:のびがよい
1点:ややのびが悪い
0点:のびが悪い
・洗浄力
3点:非常に優れている
2点:優れている
1点:やや劣っている
0点:劣っている
・泡質(クリーミー性)
3点:泡が非常にクリーミーである
2点:泡がクリーミーである
1点:泡がやや粗い
0点:泡が粗い
・洗い上がりの感触
3点:非常にしっとりする
2点:しっとりする
1点:ややつっぱる
0点:つっぱる
【0052】
【表1】

【0053】
表1にみられるように、各実施例のものはいずれも、チキソトロピー性を有するペースト状乃至半固形状の剤型であり、またのびのよさ、洗浄力、泡質、洗い上がりの感触はいずれも良好なものであった。
【0054】
一方、ベントナイトの量が少なく水の量が多い比較例1〜3は、液状であってペースト状乃至半固形状の剤型にならないものであった。またベントナイトの量が多く水の量が少ない比較例4は、固形状であってペースト状乃至半固形状の剤型にならないものであった。尚、比較例4では、チキソトロピー性の測定において、ローターの円板を洗浄剤中に沈めることが困難であり、チキソトロピー性を正常に測定することができないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】水膨潤性粘土鉱物と陰イオン性界面活性剤と水の配合割合を示す三角ダイヤグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水膨潤性粘土鉱物25〜50質量%、陰イオン性界面活性剤8〜25質量%、水25〜65質量%からなる3成分を含有し、この3成分の合計量の含有率が80質量%以上であることを特徴とする洗浄料。
【請求項2】
水膨潤性粘土鉱物の膨潤力が10ml/2g以上であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄料。
【請求項3】
陰イオン性界面活性剤が脂肪酸カリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄料。
【請求項4】
上記3成分は、陰イオン性界面活性剤の存在下で、水膨潤性粘土鉱物と水が混合されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の洗浄料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の洗浄料を製造するにあたって、陰イオン性界面活性剤の存在下で、水膨潤性粘土鉱物と水を混合することによって、水膨潤性粘土鉱物と陰イオン性界面活性剤と水の3成分の混合を行なうことを特徴とする洗浄料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−167126(P2009−167126A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7030(P2008−7030)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(390029654)株式会社マックス (7)
【Fターム(参考)】