説明

洗浄液および液滴吐出装置

【課題】インクとの置換性に優れ、液滴吐出装置のインクの流路における汚れ、液滴吐出ヘッドの目詰まりを好適に解消できる洗浄液、このような洗浄液を用いた液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の洗浄液は、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられる、顔料が分散媒に分散したインクの液滴吐出装置を洗浄するための洗浄液であって、液性媒体と、分散剤と含み、前記液性媒体は、前記インクに含まれる前記分散媒を構成する成分である液体を含むことを特徴とする。洗浄液の分散剤は、前記インクに含まれる分散剤を構成する成分の少なくとも一部を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液および液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、顔料、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造において形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、着色層形成用の材料(着色層形成用組成物)の液滴の吐出位置等の制御が容易で、着色層形成用組成物の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。このような液滴を構成するカラーフィルター用インク(インク)は、一般に、光、熱等の耐候性に優れた顔料を液性媒体に分散させたものが用いられる。
【0004】
ところで、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置(産業用)は、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なるものであり、例えば、大量生産を行うため、大量の液滴を長時間にわたって吐出することが求められる。また、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置(産業用)では、プリンターに適用されるもの(民生用)で用いるインクに比べて、一般に、粘度が高いものであるため、吐出時の液切れも悪く、インクジェットヘッドの吐出口(ノズル)にインクが残存しやすい。この結果、継続して吐出した場合、インクに含まれる成分が液滴吐出装置のインクの流路に付着し、液滴吐出ヘッドへのインクの供給が不安定になる。また、凝集した顔料等の固形分によって液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まりが起こりやすく、液滴の飛行曲がりが頻発する。このため、例えば、液滴吐出装置のカラーフィルター用の基板(ワーク)のない部分で液滴を吐出することによる行う方法(つば吐き)や、吸引手段を用いて液滴吐出ヘッド内に溜まっているインクを強制的に吸引する方法により、液滴吐出ヘッドやインクの流路に存在する凝集物、付着物等を取り除き、インク等による汚れ、目詰まりの解消を行う。しかしながら、このような方法のみでは、十分に凝集物、付着物を取り除くことができず、再び液滴の吐出を行うと比較的短期間で、液滴の吐出量が不安定になったり、吐出口が再び目詰まりする問題があった。このような場合、液滴吐出ヘッドや他の部材を頻繁に交換する必要があり、カラーフィルターの生産性を極端に落とすものとなっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−372613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、インクとの置換性に優れ、液滴吐出装置のインクの流路における汚れ、液滴吐出ヘッドの目詰まりを好適に解消できる洗浄液、このような洗浄液を用いた液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の洗浄液は、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられる、顔料が分散媒に分散したインクの液滴吐出装置を洗浄するための洗浄液であって、
液性媒体と、分散剤Aとを含み、
前記液性媒体は、前記インクに含まれる前記分散媒を構成する成分である液体a1を含むことを特徴とする。
これにより、インクとの置換性に優れ、液滴吐出装置のインクの流路における汚れ、液滴吐出ヘッドの目詰まりを好適に解消できる洗浄液を提供することができる。
【0008】
本発明の洗浄液では、前記分散剤Aは、前記インクに含まれる分散剤Bを構成する成分の少なくとも一部を含むものであることが好ましい。
これにより、洗浄時において、液滴吐出ヘッド、インク流路内に存在する、顔料等の固形物、付着物を容易かつ確実に洗浄液中に分散、溶解させることができ、インクの流路内の汚れ、液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まりを確実に解消することができる洗浄液を提供することができる。
本発明の洗浄液では、洗浄液における前記分散剤Aの含有率は、0.1〜20wt%であることが好ましい。
これにより、インクの流路内に付着した汚れや吐出口の目詰まりをより確実に解消できる洗浄液を提供することができる。
【0009】
本発明の洗浄液では、洗浄液における前記液体a1の含有率は、40〜99wt%であることが好ましい。
これにより、インクとの置換性に特に優れ、目詰まり、汚れを特に素早く解消することができる洗浄液を提供することができる。
本発明の洗浄液では、前記液体a1は、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートであることが好ましい。
これにより、洗浄液への顔料等の分散性を特に優れたものとすることができ、液滴吐出ヘッドの目詰まり、インクの流路の汚れを特に容易に解消することができる洗浄液を提供することができる。
【0010】
本発明の洗浄液では、前記液性媒体は、前記液体a1とは異なる組成の液体a2を含み、
洗浄液における前記液体a2の含有率は、3〜45wt%であり、
20℃での前記分散剤Aの前記液体a1への溶解度は、前記分散剤Aの前記液体a2への溶解度よりも小さいものであることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドの目詰まり、インクの流路の汚れの付着を特に容易に解消できる洗浄液を提供することができる。
【0011】
本発明の洗浄液では、前記液体a2は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、またはシクロヘキサノンであることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドの目詰まり、インクの流路の汚れの付着を特に容易に解消できる洗浄液を提供することができる。
【0012】
本発明の洗浄液では、洗浄液の表面張力は、前記インクよりも低いものであることが好ましい。
これにより、洗浄時において、液滴吐出装置の洗浄部位に好適に洗浄液が濡れ広がることができる。このため、洗浄後における洗浄部位に残存する汚れが特に少ないものとなる。
【0013】
本発明の洗浄液では、洗浄液の粘度は、前記インクよりも低いものであることが好ましい。
これにより、洗浄時において、液滴吐出装置の洗浄部位に好適に洗浄液が濡れ広がることができる。このため、洗浄後における洗浄部位に残存する汚れが特に少ないものとなる。
本発明の洗浄液では、前記液滴吐出装置中の、前記インクの流路を洗浄するものであることが好ましい。
これにより、液滴吐出装置のインクの流路における汚れの付着、吐出口の目詰まりを確実に防止することができる洗浄液を提供することができる。
【0014】
本発明の液滴吐出装置は、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置であって、
洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、インクを貯留するインク貯留槽とを有し、
前記インクは、顔料が分散媒中に分散しており、
前記洗浄液は、液性媒体と分散剤とを含み、
前記液性媒体は、前記インクに含まれる前記分散媒を構成する液体の少なくとも一種を含むことを特徴とする。
これにより、長期にわたって液滴の吐出の安定性に優れ、個体間での特性のばらつきの小さなカラーフィルターを効率よく生産することができる液滴吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《洗浄液》
本発明の洗浄液(クリーニングインク)は、カラーフィルターの製造に用いられる液滴吐出装置の洗浄をするものであり、特に、顔料が分散媒中に分散したカラーフィルター用インク(インク)による液滴吐出装置の汚れ、目詰まり等を好適に解消するものである。
【0016】
ところで、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置(産業用)は、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なるものであり、例えば、大量生産を行うため、大量の液滴を長時間にわたって吐出することが求められる。また、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置(産業用)では、プリンターに適用されるもの(民生用)で用いるインクに比べて、一般に、粘度が高いものであるため、吐出時の液切れも悪く、インクジェットヘッドの吐出口(ノズル)にインクが残存しやすい。この結果、継続して液滴を吐出した場合、インクに含まれる成分が液滴吐出装置のインクの流路に付着し、液滴吐出ヘッドへのインクの供給が不安定になる。また、凝集した顔料等の固形分によって液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まりがおこりやすくなる。この結果、液滴吐出装置は、液滴吐出時における液滴量の均一性、吐出性が劣るものとなり、液滴の飛行曲がりが頻発し、得られるカラーフィルターは、個体間での均一性に劣るものとなる。このため、例えば、液滴吐出装置のカラーフィルター用の基板(ワーク)のない部分で液滴を吐出する方法(つば吐き)や、ピエゾを高周波数で微振動させて、吐出口付近に付着したインクのメニスカス表面を振動させる方法、吸引手段を用いて液滴吐出ヘッド内に溜まっているインクを強制的に吸引する方法により、液滴吐出ヘッドや、インクの流路に存在する凝集物、付着物等を取り除き、インク等による汚れ、目詰まりの解消を行う。しかしながら、このような方法のみでは、液滴吐出装置内にある凝集物、付着物を十分には取り除くことができず、吐出を再開した場合に、比較的短期間で、液滴の吐出量が不安定になったり、再び吐出口の目詰まり等が発生する問題があった。このような場合、液滴吐出ヘッドや他の部材を頻繁に交換する必要があり、カラーフィルターの生産性を極端に落とすものとなっていた。また、カラーフィルターにおいて、より広い色再現域を確保するために、近年、カラーフィルター用インクとして、顔料の含有率が高いものを用いる傾向があるが、顔料の含有率が高いほど、上記のようなインクによる液滴吐出装置の汚れ、目詰まりの問題は、より顕著なものとなる。
【0017】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、液滴吐出装置のインクの流路等を好適に洗浄できる洗浄液を用いることで、上記のような問題を解消できることを見出し、本発明に至った。すなわち、過酷な条件下で長期間にわたる吐出を安定して行うため、液滴吐出装置のインクの流路等を洗浄し、凝集した顔料等の固形物等によるを取り除き、インクの流路への汚れの付着、吐出口の目詰まり等を解消するための洗浄液を発明するに至った。
【0018】
本発明の洗浄液は、液性媒体と、顔料を分散することのできる後述するような分散剤Aとを含み、液性媒体は、カラーフィルター用インクに含まれる分散媒の構成をする成分である液体a1を含む。このように、洗浄液は、顔料を分散させることのできる分散剤Aを含むことにより、液滴吐出ヘッドや、インクの流路等の液滴吐出装置の部材に付着した顔料等の固形分の凝集物、付着物を容易に再分散、再溶解し、インクの流路内の汚れ、液滴吐出ヘッドの吐出口での目詰まり等を確実に解消することができる。また、洗浄液は、構成する液性媒体として、カラーフィルター用インクの分散媒と共通の液体a1を含むことにより、インクとの置換性に優れたものとなり、残存したインクと素早く混合、置換することができる。また、洗浄液は、インクとの置換性に優れているため、洗浄後に、インクを用いて、インク流路内にある洗浄液を容易に除去することができる。特に、洗浄後の、液滴吐出装置へのインクの充填時においては、洗浄液は、素早くインクと置換することができ、残存する洗浄液を極めて少ないものとすることができる。このため、このような洗浄液を用いることによって、液滴吐出装置のインクの流路、液滴吐出ヘッド等の部材を効率よく洗浄でき、洗浄後の液滴吐出装置へのインクの再充填が容易なものとなる。
【0019】
これに対し、洗浄液が分散剤Aを含まない場合、上述したような効果は十分に得られない。すなわち、インクの分散媒を含み、分散剤Aを含まない洗浄液は、十分に液滴吐出装置内のインクの流路等を十分には洗浄できず、インクの流路や液滴吐出ヘッド等に顔料等の固形物の凝集物、汚れが残存しやすい。これは、以下のように考えられる。洗浄液と、インクとが混合された際に、これらの混合液中で分散剤の濃度が低くなる。この結果、インク流路内に付着した汚れ、顔料等の凝集体を分散、溶解することが困難となる。また、上記混合液中に分散していた顔料も、混合液中の分散剤濃度が低いため、安定して分散しにくくなる。このため、洗浄液を用いて洗浄しているにもかかわらず、顔料等の固形物による凝集体の発生、インク流路内への顔料等の付着が発生しやすくなる。また、例えば、洗浄開始時に、洗浄液とインクが接触した際に、インク中の分散質、溶質は洗浄液中へ拡散する。このとき、インク中の分散剤は、分散媒中に溶解しているため、洗浄液中に拡散しやすい。これに対し、インク中の顔料は、分散媒中に分散しており、比較的重いため拡散しにくい。このため、分散媒中の分散剤が少なくなった結果、インク中の顔料は、安定して分散しにくいものとなり、インクの流路内へ再付着しやすいものとなる。また、洗浄液中も、分散剤の量が少ないため、顔料は安定して分散しにくく、顔料による凝集体の再発生、インク流路への顔料の再付着が起きやすいものとなる。結果として、上記のような洗浄剤を用いて洗浄を行っても好適に洗浄できず、長期間に渡って液滴の吐出と洗浄を繰り返した場合、液滴吐出装置の液滴量の均一性、吐出性を十分に優れたものとすることができない。
【0020】
また、洗浄液の液性媒体として、インクを構成する分散媒を用いず、インクを構成する分散媒とは異なる組成で、インクを構成する成分の溶解、分散性に優れる液性媒体を用いることも考えられるが、この場合、インクの流路等を洗浄する際に、洗浄液とインクとが置換しにくく、洗浄に時間がかかる。また、洗浄後にインクをインクの流路、液滴吐出ヘッド等に充填する際に、液滴吐出装置内の洗浄液が容易には取り除かれない問題がある。このため、インクに微量の洗浄液が混入して、インクの粘度等の物性が変化し、液滴吐出時における液滴量が安定しないものとなる。
【0021】
以下、洗浄液を構成する各成分について、詳細に説明する。
<分散剤A>
分散剤Aは、顔料等を容易に洗浄液中に分散させることのできる成分である。このように、顔料を分散させることのできる分散剤Aを含むことにより、液滴吐出ヘッドの吐出口や、インクの流路等の液滴吐出装置の部材に付着した顔料等の固形分の凝集物、付着物を容易に再分散、再溶解し、インクの流路内での汚れ、液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まり等を確実に解消することができる。
【0022】
洗浄液に用いることのできる分散剤Aとしては、特に限定されないが、インクに含まれる分散剤Bを構成する成分の少なくとも一部を含むことが好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出ヘッド、インク流路内に存在する、顔料等の固形物、付着物を容易かつ確実に洗浄液中に分散、溶解させることができ、インクの流路内の汚れ、液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まり等を確実に除去することができる。また、洗浄後に、インクによって液滴吐出装置の流路、液滴吐出ヘッドを置換した際に、微量に洗浄液が残存した場合であっても、インクの粘度等の物性の変化を極めて少ないものとすることができる。
【0023】
また、特に、分散剤Aは、液滴吐出装置に用いる全ての種類のインクについて、すなわち後述するカラーフィルター用インクセットを構成する全ての種類のインクについて、インクの分散剤を構成する成分の少なくとも一部を含むことが好ましい。これにより、液滴吐出装置に用いるカラーフィルター用インクの種類に関わらず、上述した効果を得ることができる。また、吐出に用いるインクの種類を変更する場合であっても、液滴吐出ヘッド、インクの流路の洗浄、インクの置換を容易に行うことができる。
【0024】
また、洗浄液における分散剤Aの含有率は、0.1〜20wt%であることが好ましく、1.2〜18.5wt%であることがより好ましい。これにより、顔料の分散性を特に優れたものとしつつ、洗浄液の粘度を十分に低いものとすることができる。このため、液滴吐出装置の洗浄時において、インクの流路内に付着した汚れや液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まりをより確実に解消できる。
【0025】
また、上述したように、洗浄液に用いることのできる分散剤としては、特に限定されないが、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類;ポリエチレンイミン類等のほか、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子(株)製)、Disperbyk(ビックケミー・ジャパン(株)製)、ソルスパース3000,5000,11200,12000,13240,13650,13940,16000,17000,18000,20000,21000,22000,24000SC,24000GR(日本ルブリゾール(株)製)、ダイノール、サーフィノール(エアープロダクト社製)等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
また、分散剤Aとしては、例えば、シアメリド環を有する化合物を用いることができる。このような化合物を分散剤Aとして用いることにより、洗浄時における洗浄液への顔料の分散性を特に優れたものとすることができる。
また、分散剤Aとしては、例えば、下記式(I)および下記式(II)で表される部分構造を有する化合物を用いることができる。このような化合物を分散剤Aとして用いることにより、洗浄時における洗浄液への顔料の分散性を特に優れたものとすることができる。
【0027】
【化1】

(式中、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R、R及びRのうち2つ以上が互いに結合して環状構造を形成する。Rは水素原子又はメチル基を表す。Xは2価の連結基を表し、Yは対アニオンを表す。)
【0028】
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)
【0029】
<液性媒体>
液性媒体(液状媒質)は、後述するようなインクの構成成分を溶解、分散させる機能を有するものである。液性媒体は、特に、インクに含まれる顔料を、分散する機能を有するものである。
液性媒体は、カラーフィルター用インクに含まれる分散媒の構成をする成分である液体a1を含むものである。また、後述するインクの分散媒を構成する液体のうち、液体a1は、最も含有量が多い液体である。これにより、凝集体、付着物等を、分散剤Aを含む液性媒体に容易に再分散、再溶解させることができ、インクの流路内の汚れ、液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まり等を確実に解消することができる。また、洗浄液は、インクを構成する成分と同様の液体a1を含むことにより、インクとの置換性に優れたものとなり、残存したインクと素早く混合、置換することができる。また、洗浄後の、液滴吐出装置へのインクの充填時においては、洗浄液は、素早くインクと置換することができ、残存する洗浄液を極めて少ないものとすることができる。また、インクの流路、液滴吐出ヘッドをインクで置換した際に、洗浄液が残存した場合であっても、インクの物性の変化を極めて小さいものとすることができ、液滴吐出時における液滴量を均一にすることができる。
【0030】
液性媒体として用いることのできる液体は、特に限定されないが、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、(1)多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、(2)多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、(3)分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、(4)多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。液性媒体を構成する液体として用いることのできる化合物としては、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、グルタル酸メチル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシプロパノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n−ノニルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
液体a1は、後述するインクの分散媒にも含まれる成分であるが、上述した中でも、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートであることが好ましい。これにより、洗浄液への顔料等の分散性を特に優れたものとすることができ、液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まり、インクの流路汚れを特に容易に解消することができる。また、液滴吐出ヘッドやインクの流路中の樹脂部材の膨潤、変形を極めて長期にわたって確実に防ぐことができる。
【0032】
また、上述した中でも、液体a1が1,3−ブチレングリコールジアセテート、または、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートである場合、これらの液体を液体a1として含んだ洗浄液は、蒸気圧が低いため揮発しにくく、粘度が低いためインクの流路中で滞留しずらい。また、分散剤Aを好適に溶解できるものである。以上により、洗浄液は、洗浄性、インクとの置換性が特に優れたものとなる。
【0033】
また、洗浄液中における液体a1の含有率は、40〜99wt%であることが好ましく、60〜95wt%であることがより好ましい。これにより、インクと洗浄液とは、特に容易に置換することができ、液滴吐出装置の目詰まり、汚れを特に素早く解消することができる。また、洗浄後にインクで流路、液滴吐出ヘッドを充填した際に、残存する洗浄液を特に少ないものとすることができる。
【0034】
また、液性媒体は、20℃での分散剤Aの溶解度が液体a1よりも高い液体a2を含むことが好ましい。これにより、分散剤Aが付着した顔料等の固形物を、より確実に液性媒体中に分散、溶解させることができる。このため、液滴吐出ヘッド、インクの流路の目詰まり、汚れの付着を特に容易に解消できるものとなる。また、洗浄液は、このように分散剤Aと相溶性の高い液体を含むことにより、比較的分散剤Aの濃度が低い場合であっても、顔料を安定して分散させることができ、一旦洗浄液中に分散した顔料の再凝集や、液滴吐出装置への再付着を容易かつ確実に防ぐことができる。
【0035】
また、このような液体a2としては、20℃での分散剤Aの溶解度が液体a1よりも高いものであれば特に限定されず、例えば、上述したような液体を用いることができるが、液体a2は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、またはシクロヘキサノンであることが好ましい。これにより、分散剤Aが付着した、顔料等の固形物をより確実に液性媒体中に分散、溶解させることができる。このため、液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まり、インクの流路の汚れを特に容易に解消できるものとなる。また、インク中に樹脂材料が含まれている場合、通常、樹脂材料は、インクの液性媒体に溶解したものであるが、インクの流路に樹脂材料が付着し、硬化する場合がある。このような場合であっても、洗浄液が液体a2として上記のような液体であることにより、このような硬化した樹脂材料も好適に再溶解させることができる。このため、洗浄液は、特に洗浄性に優れたものとなる。
【0036】
また、上述した中でも、液体a2がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、または、γ−ブチロラクトンである場合、これらの液体は、特に顔料の分散性に特に優れている。また、これらの液体は、極性が強く、インク中に含まれる樹脂材料等の成分を確実に溶解できるものである。このため、洗浄液は、液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まり、インクの流路の汚れを特に容易に解消できるものとなる。また、一旦分散した顔料等の固形分を安定して分散させ、固形分の再凝集や、再付着を確実に防止することができる。
【0037】
また、液体a1が1,3−ブチレングリコールジアセテートであり、液体a2がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、または、γ−ブチロラクトンのいずれかである場合、以下のような効果が得られる。液体a2としてのこれらの液体と、1,3−ブチレングリコールジアセテートとは、相溶性に特に優れるものである。このため、分散剤が付着した顔料は、特に容易に液性媒体中に分散しやすくなる。また、洗浄液とインクが混合された場合、このような液体a2は、特に容易に混合用液中を拡散することができる。このため、洗浄部位の隅等の洗浄液が行き渡りにくい部分へも、分散剤を含んだ液体a2が容易に拡散し、洗浄部位の隅に存在する顔料等が付着した汚れを確実に除去することができる。以上により、洗浄液は、特に洗浄性に優れたものとなる。また、洗浄後に、インクにて洗浄した部位を置換した場合、洗浄液に含まれた液体a2としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、または、γ−ブチロラクトンは、液体a1としての1,3−ブチレングリコールジアセテートを含むインクに特に容易に混ざることができる。このため、洗浄後に、インクを流路に流した際に、液体a2は特に素早く除去され、洗浄液中の液体a2が残存することを確実に防ぐことができ、洗浄液は、インクとの置換性に特に優れたものとなる。
【0038】
また、洗浄液中における液体a2の含有率は、3〜45wt%であることが好ましく、4〜20wt%であることがより好ましい。これにより、分散剤Aが付着した、顔料等の固形物を液体a2を含む液性媒体中により確実に分散、溶解させることができる。このため、液滴吐出ヘッドの吐出口の目詰まり、インクの流路の汚れを特に容易に解消できるものとなる。また、洗浄後に、インクを流路に流した際に、液体a2は素早く除去され、洗浄液中の液体a2が残存することを確実に防ぐことができ、洗浄液は、インクとの置換性に特に優れたものとなる。
また、液性媒体は、上述したような液体a1、液体a2以外の液体が含まれるものであってもよい。
【0039】
また、洗浄液は、後述するカラーフィルター用インクセットを構成するインクの少なくとも一種以上のインクより25℃での表面張力が低いものであることが好ましく、カラーフィルター用インクセットを構成する全てのインクより25℃での表面張力が低いものであることがより好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置の洗浄部位に好適に洗浄液が濡れ広がることができる。このため、洗浄後における洗浄部位に残存する汚れが特に少ないものとなる。
【0040】
25℃における洗浄液の表面張力は、特に限定されないが、例えば、25.0〜35.0dyn/cmであるのが好ましく、26.0〜32.5dyn/cmであるのがより好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置の洗浄部位に好適に洗浄液が濡れ広がることができ、洗浄液の洗浄性を優れたものとすることができる。また、洗浄液が微量に残存した場合であっても、後述するインクの表面張力への影響を極めて少ないものとすることができる。なお、本明細書において、表面張力は、JIS K 3362に準拠して測定される値を採用することができる。
【0041】
洗浄液は、後述するカラーフィルター用インクセットを構成するインクの少なくとも一種以上のインクより25℃における粘度が低いものであることが好ましく、カラーフィルター用インクセットを構成する全てのインクより25℃での粘度が低いものであることがより好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置の洗浄部位に好適に洗浄液が濡れ広がることができる。また、洗浄時において、洗浄液は、インクの流路内での流速を早いものとすることができる。このため、洗浄後における洗浄部位に残存する汚れが特に少ないものとなる。
【0042】
25℃における洗浄液の粘度は、特に限定されないが、例えば、2.0〜9.0mPa・sであるのが好ましく、3.0〜7.0mPa・sであるのがより好ましい。これにより、洗浄時において、液滴吐出装置の洗浄部位に好適に洗浄液が濡れ広がることができ、洗浄液の洗浄性を優れたものとすることができる。また、洗浄液が微量に残存した場合であっても、後述するインクの粘度への影響を極めて少ないものとすることができる。なお、本明細書において、粘度の値としては、振動式粘度計を用いて25℃で測定して求められる値を採用することができ、特に、JIS Z8809に準拠して25℃で測定して求められる値を採用することができる。
【0043】
以下、上述したような洗浄液が好適に用いられる、カラーフィルター用インクおよび液滴吐出装置について説明する。
《カラーフィルター用インク》
本実施形態のカラーフィルター用インクは、カラーフィルターの製造(カラーフィルターの着色部の形成)に用いられるインクであり、特に、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。
カラーフィルター用インク(インク)は、顔料、当該顔料を分散する分散媒、樹脂材料等を含むものである。
【0044】
<顔料>
カラーフィルターは、通常、異なる複数色の着色部(一般に、RGBに対応する3色の着色)を有している。顔料は、通常、形成すべき着色部の色調に応じて選択される。
本実施形態において、カラーフィルター用インクは、着色部の形成に用いるものであり、顔料を含むものである。カラーフィルター用インクに顔料が含まれる場合、得られるカラーフィルターは、色再現範囲を広いものとしつつ、色濃度が十分に高いものとなる。また、長時間にわたって光が照射されるカラーフィルターには、カラーフィルターを構成する各材料に光や熱に対する耐性が要求されるが、顔料は、光や熱に対する耐性が優れており、このような要求を十分に満たすものである。
【0045】
一方で、顔料を分散媒に分散させたインクは、粘度が高くなりやすく、液滴吐出装置のインクの流路や、液滴吐出ヘッドの吐出口(ノズル)にインクが残存しやすい。このため、液滴吐出装置の流路の汚れ、吐出口の目詰まりがおきやすいものであった。特に、緑色のカラーフィルター用インクでは、カラーフィルターの色再現範囲を広いものとするため、一般に、インク中の顔料の濃度を比較的高いものとすることが求められるが、このような場合、カラーフィルター用インクの粘度が高いものとなってしまい、液滴吐出装置のインクの流路の汚れ、目詰まりは顕著なものとなりやすかった。しかしながら、上述したような洗浄液を用いて、定期的に液滴吐出装置を洗浄することにより、顔料を含み、比較的粘度の高いカラーフィルター用インクであっても、長期間に渡って、安定して液滴の吐出を行うことができる。
【0046】
カラーフィルター用インクに用いることのできる顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド2,3,5,17,22,23,38,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,52:1,53:1,57:1,63:1,81,101,102,105,106,108,108:1,112,122,144,146,149,166,170,176,177,178,179,185,202,207,209,254、C.I.ピグメントグリーン7,15,17,18,19,26,36,50、C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,27,28,29,35,36,60,80、C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,17,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,73,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,129,138,139,150,151,153,154,157,168,184,185、C.I.ピグメントバイオレット1,3,19,23,50,14,16、C.I.ピグメントオレンジ5,13,16,20,20:1,36,43,104、C.I.ピグメントブラウン7,11,25,33、各種金属誘導体、フタロシアニン化合物等が挙げられ、これらから選択される2種以上の成分を組み合わせて用いることができる。
【0047】
カラーフィルター用インク中における顔料の平均粒径は、20〜200nmであるのが好ましく、30〜180nmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐候性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性や、カラーフィルターにおける発色性および消偏性を特に優れたものとすることができる。
カラーフィルター用インク中における顔料の含有率は、2〜20wt%であるのが好ましく、3〜15wt%であるのがより好ましい。顔料の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができ、より鮮明な画像表示に用いることができる。
【0048】
また、顔料としては、上記のような材料で構成された粉末に、例えば、親液化処理(後に詳述する分散媒に対する親和性を向上させる処理)等の表面処理を施したものを用いてもよい。これにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散性、分散安定性を特に優れたものとすることができる。この結果、液滴吐出装置において、顔料が凝集して、凝集物が発生することを確実に防止でき、また、インクの流路に顔料が付着することを確実に防止することができる。顔料に対する表面処理としては、例えば、顔料粒子表面をポリマーで改質する処理等が挙げられる。顔料の粒子表面を改質するポリマーとしては、例えば、特開平8−259876号公報等に記載されたポリマーや、市販の各種の顔料分散用のポリマーまたはオリゴマー等が挙げられる。
【0049】
<分散媒>
分散媒は、上述したような顔料を分散する機能を有するものである。そして、通常、分散媒は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。
また、分散媒は、上述したような洗浄液の液性媒体と共通の成分である液体a1を含むものである。このように、分散媒が、洗浄液の液性媒体と共通の液体を含むことで、インクと、洗浄液が置換しやすいものとなる。結果として、洗浄時に、洗浄部位に存在するインクを確実に取り除くことができ、また、洗浄後にインクを液滴吐出装置に補充した際に、残存する洗浄液が極めて少ないものとなる。
【0050】
液体a1として用いることのできる液体は、特には限定されず、例えば、上述したような液体を用いることができる。
上述した中でも、分散媒が、液体a1として1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、または、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含むものである場合、カラーフィルター用インクは、特に顔料の分散性に特に優れたものなり、また、一旦凝集した顔料等を好適に際分散できるものとなる。また、カラーフィルター用インクは、粘度が特に低いものとなる。また、上述したような液体は、飽和蒸気圧が比較的低いものであるため、カラーフィルター用インクの分散媒の不本意な揮発を確実に防ぐことができる。この結果、液滴吐出装置の汚れ、目詰まり等の問題をより効果的に防止することができる。また、インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクの製造時において、特に容易に顔料を分散させることができる。
また、分散媒中における液体a1の含有率は、40〜99wt%であることが好ましく、60〜95wt%であることがより好ましい。これにより、上述したような洗浄時におけるインクと洗浄液との置換をより容易かつ確実に行うことができる。
【0051】
分散媒の大気圧(1気圧)下における沸点は、180〜300℃であるのが好ましく、190〜290℃であるのがより好ましく、230〜280℃であるのがさらに好ましい。分散媒の大気圧下における沸点が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
【0052】
分散媒の25℃における粘度は、特に限定されないが、1.2〜4.5mPa・sであるのが好ましく、1.5〜3.8mPa・sであるのがより好ましい。分散媒の25℃における粘度が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用の液滴吐出ヘッドからの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとし、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0053】
カラーフィルター用インク中における分散媒の含有率は、70〜98wt%であるのが好ましく、80〜95wt%であるのがより好ましい。分散媒の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
また、カラーフィルター用インクは、分散媒として、液体a2に加え、他の液体を含むものであっても良い。このような液体としては、特に限定されないが、上述した洗浄液に用いることのできる液体が挙げられる。
【0054】
<分散剤>
カラーフィルター用インク中には、分散剤(分散剤B)が含まれる。これにより、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、液滴吐出装置のインクの流路、液滴吐出ヘッドでの顔料の凝集、目詰まりを確実に防ぐことができる。
このような分散剤Bとしては、特に限定されず、例えば、上述したような分散剤が挙げられる。
また、分散剤Bとしては、例えば、シアメリド環を有する化合物を用いることができる。このような化合物を分散剤として用いることにより、カラーフィルター用インク中における顔料の分散性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0055】
また、分散剤Bとしては、例えば、前記式(II)および前記式(III)で表される部分構造を有する化合物を用いることができる。このような化合物を分散剤Bとして用いることにより、カラーフィルター用インク中における顔料の分散性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
カラーフィルター用インク中における分散剤Bの含有率は、0.5〜15wt%であるのが好ましく、0.5〜8wt%であるのがより好ましい。
【0056】
<樹脂材料>
カラーフィルター用インクは、通常、樹脂材料(バインダー樹脂)を含むものである。これにより、製造されるカラーフィルターにおいて、着色層を基板との密着性に優れたものとすることができ、カラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。
カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂等、いかなる樹脂材料を用いてもよいが、多官能性分子が重合したアクリル樹脂や、エポキシ系樹脂であるのが好ましい。これらの樹脂材料は、透明性が高く、硬度が高いものであるとともに、熱収縮量が小さい。このため、着色部の基板への密着性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料としては、エポキシ系樹脂の中でも、特に、シリルアセテート構造(SiOCOCH)と、エポキシ構造とを有するエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。これにより、インクジェット方式による液滴吐出を好適に行うことができるとともに、着色層と基板との密着性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0057】
カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率は、0.5〜10wt%であるのが好ましく、1〜5wt%であるのがより好ましい。樹脂材料の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用の液滴吐出ヘッドからの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができる。これに対し、樹脂材料の含有率が低すぎると、カラーフィルター用インクの吐出性(吐出安定性)が低下したり、形成される着色部の硬度が低下し製造されるカラーフィルターの耐久性が低下する。一方、樹脂材料の含有率が高すぎると、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することが困難となる。
【0058】
<その他の成分>
カラーフィルター用インクは、必要に応じて、種々の他の成分を含むものであってもよい。このような成分(他の添加剤)としては、例えば、各種架橋剤;各種重合開始剤;銅フタロシアニン誘導体等の青色顔料誘導体や黄色顔料誘導体等の分散助剤;ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフロロアルキルアクリレート等の高分子化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤;2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤;メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、グリセリン等のインクジェット吐出性能安定化剤;以下商品名で、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、新秋田化成(株)製)、メガファックF171、同F172、同F173、同F178K(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子(株)製)、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業(株)製)等の界面活性剤等が挙げられる。
【0059】
また、カラーフィルター用インクは、顔料に加え、染料を含むものであってもよい。染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン,ポリメチン染料等が挙げられる。染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,28,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247、C.I.アシッドレッド35,42,51,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,145,151,154,157,158,211,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,319,336,337,361,396,397、C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55、C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46、C.I.ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101、C.I.アシッドバイオレット5,9,11,34,43,47,48,51,75,90,103,126、C.I.リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34、C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48、C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,58,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163、C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227、C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42、C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー9,45,80,83,90,185、C.I.ベーシックオレンジ21,23等が挙げられる。
また、カラーフィルター用インクは、熱酸発生剤や酸架橋剤を含有するものであってもよい。前記熱酸発生剤は、加熱により酸を発生する成分であり、その例としては、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩等が挙げられ、特に、スルホニウム塩およびベンゾチアゾリウム塩が好ましい。
【0060】
カラーフィルター用インクの25℃における粘度は、特に限定されないが、5〜12mPa・sであるのが好ましく、6〜10mPa・sであるのがより好ましい。カラーフィルター用インクの25℃における粘度が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用の液滴吐出ヘッドからの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとし、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0061】
また、カラーフィルター用インクの25℃での表面張力は、いずれも、25〜38dyn/cmであるのが好ましく、25〜35dyn/cmであるのがより好ましく、25〜32dyn/cmであるのがさらに好ましい。これにより、液滴の吐出性を特に安定したものとすることができ、製造されるカラーフィルターの個体間での特性差を特に少ないものとすることができる。また、液滴吐出時におけるインクの基板への濡れ性を優れたものとすることができる。
【0062】
《インクセット》
上述したようなカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。カラーフィルターは、通常、フルカラー表示に対応するため、複数色の着色部(通常は、光の三原色に対応するRGBの3色)を有している。そして、これら複数色の着色部の形成には、それぞれに対応する色の複数種のカラーフィルター用インクが用いられる。すなわち、カラーフィルターの製造には、複数色のカラーフィルター用インクを備えるインクセットが用いられる。また、このような複数色のカラーフィルター用インクの分散媒は、異なる組成であってもよいが、各インク間での物性の差を少ないものとし、複数種のインクの廃液を混合した際における粘度上昇、凝集等の発生を防止するため、通常、同様の組成となっている。このような場合、複数色のカラーフィルター用インクの分散媒は、全て液体a1を含むものとなり、本発明の洗浄液は、カラーフィルター用インクセットのすべてのインクについて特に好適に用いることができる。すなわち、このような場合、液滴吐出装置のインクの種類を変更する際に、残存した元のインクを洗浄液で洗い流し、さらに新しいインクを充填することを、特に容易かつ迅速に行うことができる。
【0063】
《液滴吐出装置》
次に、本発明の洗浄液が適用される液滴吐出装置の一例について説明する。
インクジェット方式によるカラーフィルター用インクの吐出は、例えば、図1〜図4に示すような液滴吐出装置を用いて行う。図1は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図2は、図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図、図3は、図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図、図4は、図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。また、上述したような洗浄液は、例えば、液滴吐出装置100におけるカラーフィルター用インクの流路に流すことによって液滴吐出装置100を洗浄し、カラーフィルター用インクの流路に残存した顔料等の固形分の凝集体、流路への付着物を除去するものである。
【0064】
図1に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101からカラーフィルター用インク2が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)114をキャリッジ105に搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁13が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッド114とは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッド114のそれぞれにカラーフィルター用インク2が圧縮空気によって供給される。
【0065】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、後述する図5cに示すようなカラーフィルター用インク2を付与すべきセル14を有する基板11をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
【0066】
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッド114の相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板11と、液液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、カラーフィルター用インク2を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0067】
図2に示すように、液滴吐出手段103は、それぞれほぼ同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド114と、これらの液滴吐出ヘッド114を保持するキャリッジ105とを有している。本実施形態では、液滴吐出手段103に保持される液滴吐出ヘッド114の数は8個である。それぞれの液滴吐出ヘッド114は、後述する複数のノズル118が設けられた底面を有している。それぞれの液滴吐出ヘッド114のこの底面の形状は、2つの長辺と2つの短辺とを有する多角形である。液滴吐出手段103に保持された液滴吐出ヘッド114の底面はステージ106側を向いており、さらに、液滴吐出ヘッド114の長辺方向と短辺方向とは、それぞれX軸方向とY軸方向とに平行である。
【0068】
図3に示すように、液滴吐出ヘッド114は、X軸方向に並んだ複数のノズル118を有する。これら複数のノズル118は、液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXPが所定の値となるように配置されている。ノズルピッチHXPの具体的な値は、特に限定されないが、例えば、50〜90μmとすることができる。ここで、「液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXP」は、液滴吐出ヘッド114におけるノズル118のすべてをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
【0069】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド114における複数のノズル118は、ともにX軸方向に延びるノズル列116Aと、ノズル列116Bとをなす。ノズル列116Aと、ノズル列116Bとは、間隔を空けて並行に配置されている。そして、本実施形態においては、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれにおいて、90個のノズル118が一定間隔LNPでX軸方向に一列に並んでいる。LNPの具体的な値は、特に限定されないが、100〜180μmとすることができる。
ノズル列116Bの位置は、ノズル列116Aの位置に対して、ノズルピッチLNPの半分の長さだけX軸方向の正の方向(図3の右方向)にずれている。このため、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズルピッチLNPの半分の長さである。
【0070】
したがって、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズル線密度は、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズル線密度の2倍である。なお、本明細書において「X軸方向のノズル線密度」とは、複数のノズルをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像の単位長さ当たりの数に相当する。もちろん、液滴吐出ヘッド114が含むノズル列の数は、2つだけに限定されない。液滴吐出ヘッド114はM個のノズル列を含んでもよい。ここで、Mは1以上の自然数である。この場合には、M個のノズル列のそれぞれにおいて複数のノズル118は、ノズルピッチHXPのM倍の長さのピッチで並ぶ。さらに、Mが2以上の自然数の場合には、M個のノズル列のうちの一つに対して、他の(M−1)個のノズル列は、ノズルピッチHXPのi倍の長さだけ重複無くX軸方向にずれている。ここで、iは1から(M−1)までの自然数である。
【0071】
さて、本実施形態では、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれが90個のノズル118からなるため、1つの液滴吐出ヘッド114は180個のノズル118を有する。ただし、ノズル列116Aの両端のそれぞれ5ノズルは「休止ノズル」として設定されている。同様に、ノズル列116Bの両端のそれぞれ5ノズルも「休止ノズル」として設定されている。そして、これら20個の「休止ノズル」からはカラーフィルター用インク2が吐出されない。このため、液滴吐出ヘッド114における180個のノズル118のうち、160個のノズル118がカラーフィルター用インク2を吐出するノズルとして機能する。
【0072】
図2に示すように、液滴吐出手段103においては、複数個の上記液滴吐出ヘッド114がX軸方向に沿って2列に配置されている。一方の列の液滴吐出ヘッド114と他方の列の液滴吐出ヘッド114とは、休止ノズル分を考慮して、Y軸方向から見て一部重なるように配置されている。これにより、液滴吐出手段103においては、基板11のX軸方向の寸法分の長さに渡り、カラーフィルター用インク2を吐出するノズル118が前記ノズルピッチHXPでX軸方向に連続するように構成されている。
本実施形態の液滴吐出手段103では、基板11のX軸方向の寸法分の長さ全体をカバーするように液滴吐出ヘッド114を配置しているが、本発明における液滴吐出手段は、基板11のX軸方向の寸法分の長さの一部をカバーするようにものでもよい。
【0073】
図4(a)および(b)に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、インクジェットヘッドである。より具体的には、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、タンク101から孔131を介して供給されるカラーフィルター用インク2が常に充填される液たまり129が位置している。
【0074】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129からカラーフィルター用インク2が供給される。
【0075】
また、ノズルプレート128のノズル118付近は、フッ化アルキル基を有するシリカ膜で表面付近が覆われている。これにより、ノズル118は、撥液性に優れたものとなり、インク2を特に好適にはじくことができる。特に、ノズルプレート128がこのようなシリカ膜を有することで、ノズル118付近での顔料等の固形分による不本意な凝集体の発生を防ぐことができる。このため、確実に液滴吐出時の飛行曲がりの発生や、液滴量の変動、ノズル118の目詰まりを確実に防止することができ、極めて長期にわたって、カラーフィルター用インク2の液滴の吐出性を特に優れたものとすることができる。
【0076】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bとを含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118からカラーフィルター用インク2が吐出される。なお、ノズル118からZ軸方向にカラーフィルター用インク2が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0077】
制御手段112(図1参照)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル118から吐出されるカラーフィルター用インク2の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル118毎に制御されてもよい。また、制御手段112は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作を行わないノズル118とを設定することでもできる。
【0078】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124とを含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つの液滴吐出ヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。
なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルター1の製造においては、複数色のカラーフィルター用インク2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
なお、本実施形態では、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してカラーフィルター用インクを吐出する構成であってもよい。
【0079】
また、液滴吐出装置100は、図1に示すようなインク貯留槽132および洗浄液貯留槽133を有するものである。インク貯留槽132には、カラーフィルター用インク2が貯留され、洗浄液貯留槽133には、洗浄液4が貯留されている。液滴吐出時においては、搬送路134によって、タンク101へ、カラーフィルター用インク2が搬送され、カラーフィルター1の製造に用いられる。また、洗浄時においては、搬送路134によって、タンク101へ洗浄液4が搬送されてカラーフィルター用インク2と置換されて貯留され、貯留された洗浄液4をカラーフィルター用インク2の流路に沿って流すことにより、タンク101、チューブ110、液滴吐出手段103等にあるカラーフィルター用インク2の流路の洗浄が行われる。このようにインク貯留槽132および洗浄液貯留槽133を有することにより、より簡便かつ確実にインクの流路を洗浄することができる。また、洗浄後に、効率よくカラーフィルター用インク2を流すことができ、素早く洗浄液4をカラーフィルター用インク2に置換できる。結果として、液滴吐出装置100を効率よく作動させることができ、カラーフィルター1の生産性を優れたものとすることができる。
【0080】
《液滴吐出装置の洗浄方法》
上述したような液滴吐出装置に対して、本発明の洗浄液を用いてインクの流路を洗浄することができる。
洗浄は、いかなるときに行ってもよいが、例えば、液滴吐出の休止時、カラーフィルター用インク2の交換、補給時、液滴吐出装置100を作動させる前後、液滴吐出ヘッド交換時、インクの流路にある部品の交換時等に行うことができる。このような期間に定期的に洗浄液4による洗浄を行うことにより、液滴吐出装置100のインクの流路における汚れの付着、ノズル118の目詰まりを確実に防止することができる。また、液滴吐出装置の各部品の寿命を極めて長いものとすることができ、例えば、液滴吐出ヘッド114の劣化による交換を少ないものとすることができる。
【0081】
カラーフィルター用インク2の流路としては、例えば、タンク101、チューブ110、液滴吐出ヘッド114等が挙げられる。特に、液滴吐出ヘッド114におけるノズル(吐出口)118は、顔料等の固形分が凝集しやすく、この結果、目詰まり、液滴の飛行曲がりが頻発しやすいものであった。しかしながら、洗浄液4を用いて洗浄を行うことにより、これらの問題を確実に解決することができる。
【0082】
また、洗浄液4による液滴吐出装置100の洗浄は、いかなる方法を用いてもよく、例えば、図1に示すように、カラーフィルター用インク2が通常流れる方向に沿って洗浄液4を流路に流すものであってもよい。また、例えば、洗浄液4をカラーフィルター用インク2が通常流れる方向とは反対の方向に沿って洗浄液4を流路に流すものであってもよい。また、例えば、液滴吐出装置100の洗浄部位に洗浄液4を塗布するものであってもよいし、噴霧するものであってもよい。
このように、洗浄液4を、液滴吐出装置100におけるカラーフィルター用インク2の流路に接触させることによって液滴吐出装置100を洗浄し、カラーフィルター用インク2の流路に残存した顔料等の固形分の凝集体、流路への付着物を確実に除去することができる。また、分散した顔料等の固形分の流路への再付着を確実に防止することができる。
【0083】
特に、本発明の洗浄液は、カラーフィルター用インクとの置換性に優れ、顔料等の固形分を容易に分散、溶解することができるものである。このため、残存したカラーフィルター用インクと洗浄液は、素早く混合することができ、流路等に付着した凝集物、固形物を確実に除去することができる。また、洗浄後において、容易にカラーフィルター用インクと混合することができるため、確実にカラーフィルター用インクの流路から洗浄液を除去することができ、カラーフィルター用インクの液滴吐出装置への充填を素早く行うことができる。以上のように上述したような洗浄液を用いて洗浄を行うことにより、液滴吐出装置を用いて行った液滴の吐出は、吐出量が安定し、目詰まり等の少ないものとなり、長期に渡って吐出量、飛行精度等が安定したものとなる。また、このような液滴吐出装置を用いて製造したカラーフィルター1は、個体間での特性のばらつきの小さなものとなる。また、容易かつ効率よく洗浄を行うことができる。このため、カラーフィルター用インクと所定の関係を満足する本発明の洗浄液を用いることにより、液滴吐出装置は、個体間での特性のばらつきの小さなカラーフィルターを効率よく生産することができるものとなる。
【0084】
《カラーフィルター》
次に、上述したようなカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されるカラーフィルターの一例について説明する。
図5は、本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
図5に示すように、カラーフィルター1は、基板11と、上述したカラーフィルター用インクを用いて成形された着色部12とを備えている。着色部12としては、互いに異なる色の第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cが設けられている。そして、隣接する着色部12の間には、隔壁13が設けられている。
【0085】
<基板>
基板11は、光透過性を有する板状の部材で、着色部12、隔壁13を保持する機能を有している。
基板11は、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター1を透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。
【0086】
また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルター1の製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。
【0087】
<着色部>
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものである。
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インクセットを用いて形成されたものであるため、各画素間での特性のばらつきが小さい。このため、カラーフィルター1は、色むら、濃度むら等の発生が抑制され、また、不本意な混色が防止されたものとなっており、信頼性が高いものとなっている。
各着色部12は、後述する隔壁13により囲まれた領域であるセル14内に設けられている。
【0088】
第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、互いに異なる色のものである。例えば、第1の着色部12Aを赤色フィルター領域(R)、第2の着色部12Bを緑色フィルター領域(G)、第3の着色部12Cを青色フィルター領域(B)とすることができる。そして、一組の異なる色の着色部12A、12B、12Cで1画素を構成している。そして、カラーフィルター1においては、その横方向および縦方向に、着色部12が所定数配置されている。例えば、カラーフィルター1が、ハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1366×768個の画素が配置されており、フルハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1920×1080個の画素が配置されており、スーパーハイビジョン用のカラーフィルターである場合には7680×4320個の画素が配置されている。なお、カラーフィルター1は、例えば、有効領域外に予備の画素を備えたものであってもよい。
【0089】
<隔壁>
隣接する着色部12の間には、隔壁(バンク)13が設けられている。これにより、隣接する着色部12同士が混色してしまうのを確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
隔壁13は、透明な材料で構成されたものであってもよいが、遮光性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、コントラストに優れた画像を表示することができる。隔壁(遮光部)13の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0090】
隔壁13の高さは、特に限定されないが、着色部12の膜厚よりも大きいものであるのが好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができる。隔壁13の具体的な厚さは、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3.5μmであるのがより好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができるとともに、カラーフィルター1を備えた画像表示装置、電子機器における視野角特性を優れたものとすることができる。
【0091】
隔壁13は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、主として樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、後述するような方法で、隔壁13を容易に所望の形状を有するものとして形成することができる。また、隔壁13が遮光部としての機能を有するものである場合、その構成材料として、カーボンブラック等の光吸収性の材料を含むものであってもよい。
【0092】
《カラーフィルターの製造方法》
次に、カラーフィルター1の製造方法の一例について説明する。
図6は、カラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
図6に示すように、本実施形態では、基板11を準備する基板準備工程(6a)と、基板11上に隔壁13を形成する隔壁形成工程(6b、6c)と、インクジェット方式によりカラーフィルター用インク2を隔壁13で囲まれた領域に付与するインク付与工程(6d)と、カラーフィルター用インク2から分散媒を除去し、固形状の着色部12とする着色部形成工程(6e)とを有している。
【0093】
<基板準備工程>
まず、基板11を準備する(6a)。本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0094】
<隔壁形成工程>
次に、基板11の隔壁形成用の感放射線性組成物を基板11の一方の面のほぼ全体に付与し、塗膜3を形成する(6b)。なお、基板11上に感放射線性組成物を付与した後、必要に応じて、プリベーク処理を行ってもよい。プリベーク処理は、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒という条件で行うことができる。
【0095】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、さらに、アルカリ現像液を用いた現像処理を行うことにより、隔壁13が形成される(6c)。PEBは、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒、放射線照射強度:1〜500mJ/cmという条件で行うことができる。また、現像処理は、例えば、液盛り法、ディッピング法、振動浸漬法等により行うことができ、現像処理時間は、例えば、10〜300秒とすることができる。また、現像処理の後、必要に応じて、ポストベーク処理を行ってもよい。ポストベーク処理は、例えば、加熱温度:150〜280℃、加熱時間:3〜120分という条件で行うことができる。
【0096】
<インク付与工程>
次に、インクジェット方式により、カラーフィルター用インク2を、隔壁13で囲まれたセル14内に付与する(6d)。
本工程は、形成すべき複数色の着色部12に対応する複数種のカラーフィルター用インク2を用いて行う。この際、隔壁13が設けられているため、2種以上のカラーフィルター用インク2が混ざり合うことが確実に防止される。
【0097】
また、カラーフィルター用インク2の付与は、上述したような図1〜図4に示された液滴吐出装置100を用いて、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応するカラーフィルター用インク2を、セル14内に付与することによりおこなう。上記のような液滴吐出装置および洗浄液を用いることにより、カラーフィルター用インク2の吐出性が優れたものとなり、セル14内に、効率よく所望の量のカラーフィルター用インク2を付与することができる。
【0098】
<着色部形成工程>
次に、セル14内のカラーフィルター用インク2から分散媒を除去し、固形状の着色部12とする(6e)。これにより、カラーフィルター1が得られる。また、本工程においては、必要に応じて、樹脂材料を架橋成分等と反応させてもよい。分散媒の除去は、例えば、加熱により行うことができる。また、この際、カラーフィルター用インク2が付与された基板11を、減圧環境下に置いてもよい。これにより、基板11等への悪影響の発生を防止しつつ、分散媒の除去をより効率よく進行させることができる。また、本工程においては、放射線の照射を行ってもよい。これにより、樹脂材料の架橋成分等との反応を効率よく進行させることができる。このようにして得られるカラーフィルター1は、各セル14内に所望の量のカラーフィルター用インク2が付与されることにより形成されたものであり、不本意な混色等も防止されたものであるため、色むら、濃度むら等の発生が抑制され、信頼性が高いものとなっている。
【0099】
《画像表示装置》
次に、カラーフィルター1を有する画像表示装置(電気光学装置)である液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
図7は、液晶表示装置の好適な実施形態を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置60は、カラーフィルター1と、カラーフィルター1の着色部12が設けられた面側に配された基板(対向基板)66と、カラーフィルター1と基板66との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層62と、カラーフィルター1の基板11の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図7中下側)に設けられた偏光板67と、基板66の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図7中上側)に設けられた偏光板68とを有している。そして、カラーフィルター1の着色部12および隔壁13が設けられた面(着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面)には、共通電極61が設けられており、基板(対向基板)66の液晶層62、カラーフィルター1に対向する面には、カラーフィルター1の各着色部12に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極65が配されている。さらに、共通電極61と液晶層62との間には配向膜64が設けられ、基板66(画素電極65)と液晶層62との間には配向膜63が設けられている。
【0100】
基板66は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
共通電極61、画素電極65は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
また、図中省略しているが、各画素電極65に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスタ)が設けられている。そして、各着色部12に対応する各画素電極65について、共通電極61との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部12(各画素電極65)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
【0101】
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、偏光板68側(図7中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層62を透過し、カラーフィルター1の各着色部12(12A、12B、12C)に入射した光は、各着色部12(12A、12B、12C)に対応する色の光として、偏光板67(図7中下側)から出射する。
上述したように、着色部12は、上述したような洗浄液を適用した液滴吐出装置およびカラーフィルター用インク2を用いて形成されたものであるため、各画素間での特性のばらつきが抑制されたものである。その結果、液晶表示装置60において、各部位での色むら、濃度むら等が抑制された画像を安定的に表示することができる。
【0102】
なお、上述したような画像表示装置は、例えば、パーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラ、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であるが、このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有する電子機器では、従来のカラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターを適用した場合、色むら、濃度むら等の問題を特に生じやすかったが、本発明の洗浄液を液滴吐出装置に適用しつつ、カラーフィルター用インクの吐出を行うことで、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような大型の表示部を有する電子機器に適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0103】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態においては、各色の着色部に対応するカラーフィルター用インクを、セル内に付与した後に、一括で、セル内の各色のカラーフィルター用インクから分散媒を除去するもの、すなわち、着色部形成工程を1回のみ行うものとして説明したが、インク付与工程および着色部形成工程は、各色に対応して、繰り返し行うものであってもよい。
【0104】
また、カラーフィルターは、着色部の基板に対向する面とは反対の面側に、着色部を被覆する保護膜が設けられていてもよい。これにより、着色部の損傷や劣化等をより効果的に防止することができる。
また、カラーフィルター、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
【0105】
また、前述した実施形態においては、洗浄液は、液性媒体と分散剤Aのみからなるものとして説明したが、他の成分を含むものであってもよい。例えば、顔料、樹脂材料等を含むものであってもよい。
また、洗浄液は、脱気等の処理が行われたものであってもよい。これにより、洗浄液中に溶解した溶存気体を確実に取り除くことができる。このため、洗浄液による洗浄時において、気泡等が発生し、インクの流路等に残存することを確実に防止することができる。
【0106】
また、前述した実施形態においては、洗浄液をインクの流路等のインクの洗浄にのみに対して用いたが、他の部分を洗浄するものであってもよい。例えば、液滴吐出装置のインクが付着した部分を洗浄するものであってもよい。
また、例えば、洗浄液は、液滴吐出装置の休止時等にインクの流路を満たすために用いてもよい。このようにインクの流路を液体で満たすことにより、液滴吐出装置のインクの流路の濡れ性、特に吐出口の濡れ性を優れたものとして維持することができる。
【0107】
また、例えば、液滴吐出装置のインクの流路が液体で満たされていないときに、洗浄液を流して、インクの流路を液体で満たすものであってもよい。本発明の洗浄液は、インクの流路に好適に濡れ広がることができ、気泡を好適に除去できる。また、洗浄液を流した後に、インクを流路に充填することにより、効率よくインクを充填することができる。
また、前述した実施形態においては、液滴吐出装置は、インク貯留槽と洗浄液貯留槽を備えるものとして説明したが、液滴吐出装置は、これらを備えていなくてもよい。
【実施例】
【0108】
[1]洗浄液およびカラーフィルター用インクの調製
(実施例1)
[洗浄液の調整]
液性媒体として、1,3−ブチレングリコールジアセテート(液体a1)と、N−メチル−2−ピロリドン(液体a2)とを用意し、これらを混合した。これに、分散剤AとしてのDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン社製、シアメリド環を有する化合物)を加えて、十分に攪拌、混合し、洗浄液を調製した。
【0109】
[カラーフィルター用インクの調製]
まず、樹脂材料としての樹脂pを以下のようにして合成した。
四つ口フラスコに、n−ヘキサン:320重量部、メタアクリル酸:86重量部、トリエチルアミン:111重量部を投入した後、この四つ口フラスコに、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口を取り付けた。この四つ口フラスコを、氷水で冷却しつつ、トリメチルクロルシラン:120重量部を滴下した。この際、反応系内の温度が25℃以下となるようにした。その後、25℃で1時間反応を続けた。次に、トリエチルアミンの塩酸塩を濾別し、得られたろ液から減圧下でn−ヘキサンを除去した後、減圧蒸留にて精製し、シリルアセテート構造を有するエチレン性不飽和単量体を得た。
【0110】
次に、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口が取り付けられ、溶媒としての1,3−ブチレングリコールジアセテート(液体a1):100重量部を仕込んだ四つ口フラスコを用意した。この四つ口フラスコ内の1,3−ブチレングリコールジアセテート(液体a1)を攪拌しつつ60℃まで昇温した後、上記エチレン性不飽和単量体:27重量部と、メタアクリル酸グリシジル:30重量部と、スチレン:38重量部と、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):6重量部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下後60℃にて1時間保持した後、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル):0.08重量部を加え、さらに60℃で6時間反応させ、その後、未反応のモノマーを減圧処理により除去することにより、シリルアセテート構造とエポキシ構造とを有するエポキシ系樹脂としての樹脂pの溶液を得た。
【0111】
一方、分散媒としての1,3−ブチレングリコールジアセテート(液体a1)を用意し、これに、分散剤BとしてのDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン社製、シアメリド環を有する化合物)と、顔料としてのC.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントイエロー150とを添加した。その後、ビーズミル(ジルコニアビーズ:0.65mm使用)へ導入し、顔料の粉砕を行ない、粉砕混合物を得た。得られた粉砕混合物に対して、分散剤BとしてのDisperbyk−161(ビックケミー・ジャパン社製、シアメリド環を有する化合物)をさらに添加し、超高圧ホモジナイザーLAB2000(エスエムテー(株)製)を用いて1000kg/cm、500cc/minの条件で分散処理を行い、顔料分散液を得た。
【0112】
その後、上記樹脂pの溶液と、顔料分散液とを混合することにより緑色のカラーフィルター用インク(グリーンインク)を調製した。グリーンインク中におけるC.I.ピグメントグリーン36とC.I.ピグメントイエロー150との混合物の平均粒径は、100nmであった。なお、顔料の平均粒径の測定は、レーザードップラー方式の粒度分布計により行った。
【0113】
(実施例2〜13)
分散剤A、液性媒体の種類を表に示すようにするとともに、各成分の使用量を表に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして洗浄液を調製した。また、分散剤B、分散媒の種類を表に示すようにするとともに、各成分の使用量を表に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インク(グリーンインク)を調製した。なお、分散媒の組成を変更する場合は、それにあわせて、組成が変更された溶媒を用いて樹脂aを合成し、このようにして合成された樹脂aの溶液をカラーフィルター用インクの調製に用いた。
【0114】
(比較例1、2)
液性媒体の種類を表に示すようにするとともに、各成分の使用量を表に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして洗浄液を調製した。また、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インク(グリーンインク)を調製した。
前記各実施例および各比較例について、洗浄液の組成・特性等を、表1にまとめて示した。また、カラーフィルター用インク(グリーンインク)の組成・特性等を、表2にまとめて示した。なお、表中、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、上記樹脂pを「p」、Disperbyk−161(分散剤)を「d1」、Disperbyk−2000(分散剤)を「d2」、ソルスパース22000(分散剤)を「d3」、1,3−ブチレングリコールジアセテートを「L1」、ビス(2−ブトキシエチル)エーテルを「L2」、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートを「L3」、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「L4」、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを「L5」、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテートを「L6」、N−メチル−2−ピロリドンを「L7」、シクロヘキサノンを「L8」、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを「L9」、γ−ブチロラクトンを「L10」で示した。また、表1中、カラーフィルター用インクの分散媒の液体a1の含有量の欄にある括弧は、分散媒における液体a1の含有量を記した。また、表中、「粘度」の欄には、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された25℃における粘度を示し、「表面張力」の欄には、JIS K 3362に準拠して測定される25℃でにおける表面張力を示した。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
[2]洗浄液の洗浄性、置換性評価
各実施例、比較例で調製したインクを、内径:2mm、長さ:30cmのテフロンチューブ(「テフロン」は登録商標)に封入し、各実施例、比較例で調製した洗浄液を、1.0ml/minの流速で、60秒間、テフロンチューブ(「テフロン」は登録商標)に流した。洗浄液を流し終えた際に、チューブ内に残存するインクを目視によって観察し、下記の3段階の基準に従い、評価した。チューブ内にインクが残存していないと、チューブ内は、顔料等が好適に分散された状態で除去され、洗浄液で置換されたものと考えられる。すなわち、洗浄液の洗浄性、置換性が高いものと考えられる。
A:チューブ内にインクが確認されない。
B:チューブ内にかすかにインクが残存しているのが確認される。
C:チューブ内にはっきりとインクが残存しているのが確認される。
【0118】
[3]液滴吐出の安定性評価(安定吐出性評価)
[3.1]着弾位置精度評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図1〜図4に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(グリーンインク)を用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、グリーンインクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、15000発(15000滴)の液滴の連続吐出を行った。その後、前記各実施例および各比較例の洗浄液にて、カラーフィルター用インクの流路を洗浄した。洗浄は、洗浄液を1.0ml/minの流速で、300秒間流すことによって行った。洗浄後、液滴吐出装置のインクの流路に同じインクを再び充填した。充填は、インクの流路内に、カラーフィルター用インクを1.0ml/minの流速で、300秒間流すことによって行った。その後、引き続き液滴吐出ヘッドの各ノズルから、15000発(15000滴)の液滴の連続吐出を行った。カラーフィルター用インクを充填した後の、液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された15000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
A:ズレ量dの平均値が0.03μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.03μm以上、0.08μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.08μm以上、0.12μm未満。
D:ズレ量dの平均値が0.12μm以上。
【0119】
[3.2]連続吐出試験(目詰まり評価)
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図1〜図4に示すような液滴吐出装置、前記各実施例および各比較例のグリーンインクを用いて、50%RHの環境下で、液滴吐出装置を28時間、連続で運転させることにより、カラーフィルター用インクセットを構成するグリーンインクの吐出を行った。このとき、6時間おきに洗浄液を用いて、洗浄を行い、再び、グリーンインクを充填して吐出を行った。洗浄は、洗浄液を1.0ml/minの流速で、300秒間流すことによって行った。洗浄後、液滴吐出装置のインクの流路に同じインクを再び充填した。充填は、カラーフィルター用インクをインクの流路内に、1.0ml/minの流速で、300秒間流すことによって行った。連続運転後における、液滴吐出ヘッドを構成するノズルの目詰まりの発生率([(目詰まりノズル数)/(全ノズル数)]×100)を求め、ノズルの目詰まりが発生しているものについては、可塑材料で構成されたクリーニング部材により、目詰まりの解消が可能であるか否かを調べた。その結果を、以下の4段階の基準に従い、評価した。
【0120】
A:ノズルの目詰まりの発生がない。
B:ノズルの目詰まりの発生率が0.5%未満(ただし、ゼロを除く)であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
C:ノズルの目詰まりの発生率が0.5%以上、1.0%未満であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
D:ノズルの目詰まりの発生率が1.0%以上、または、クリーニングによる目詰まりの解消が不可能。
なお、上記の評価は、各実施例および各比較例について、同様の条件で行った。
【0121】
[3.3]液滴吐出量の安定性評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図1〜図4に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(グリーンインク)を用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、グリーンインクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、10000発(10000滴)の液滴の連続吐出を行った。その後、前記各実施例および各比較例の洗浄液にて、カラーフィルター用インクの流路を洗浄した。洗浄は、洗浄液を1.0ml/minの流速で、300秒間流すことによって行った。洗浄後、液滴吐出装置のインクの流路に同じインクを再び充填した。充填は、カラーフィルター用インクをインクの流路内に、1.0ml/minの流速で、300秒間流すことによって行った。その後、引き続き液滴吐出ヘッドの各ノズルから、10000発(10000滴)の液滴の連続吐出を行った。液滴吐出ヘッドの左右両端の指定の2つのノズルについて、吐出された液滴の総重量を求め、上記2つのノズルから吐出された液滴の平均吐出量の差の絶対値ΔW[ng]を求めた。このΔWの、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(ΔW/W)を求め、以下の4段階の基準に従い、評価した。ΔW/Wの値が小さいほど、液滴吐出量の安定性に優れていると言える。すなわち、インクの流路等に、インク固形分による汚れや凝集体等による目詰まりが少ないと考えられる。
A:ΔW/Wの値が、0.020未満。
B:ΔW/Wの値が、0.020以上、0.420未満。
C:ΔW/Wの値が、0.420以上、0.720未満。
D:ΔW/Wの値が、0.720以上。
【0122】
[4]カラーフィルターの製造
まず、カラーフィルターの製造に先駆け、カラーフィルターの製造に用いるブルーインク、レッドインクの調製をおこなった。
C.I.ピグメントグリーン36およびC.I.ピグメントイエロー150の代わりに、レッドインクにはC.I.ピグメントレッド177、ブルーインクにはC.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントイエロー150をそれぞれ用い、さらに、分散媒の使用量を変更した以外は、前記実施例1の緑色のカラーフィルター用インク(グリーンインク)と同様にして、赤色のカラーフィルター用インク(レッドインク)、青色のカラーフィルター用インク(ブルーインク)を調製した。これにより、前記実施例1のグリーンインクに対応する、R、G、Bの3色のインクからなるインクセットが得られた。グリーンインク中におけるC.I.ピグメントレッド177の平均粒径、ブルーインク中におけるC.I.ピグメントブルー15:6の平均粒径は、いずれも、65nmであった。
また、上記と同様にして、各実施例および各比較例のグリーンインクに対応する、レッドインクおよびブルーインクをそれぞれ調製し、各実施例および各比較例のグリーンインクに対応するインクセットを得た。各実施例および各比較例でのレッドインクおよびブルーインクの分散媒は、グリーンインクの分散媒と同様のものとした。
【0123】
次に、調製したインクセットを用いて、以下のようにして、カラーフィルターを製造した。
まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した。
【0124】
次に、カーボンブラックを含む隔壁形成用の感放射線性組成物を、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し、塗膜を形成した。
次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、隔壁を形成した。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cmという条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:150℃、加熱時間:5分という条件で行った。形成された隔壁の厚さは、2.1μmであった。
【0125】
次に、チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図1〜図4に示すような液滴吐出装置を用いて、隔壁で囲まれた領域としてのセル内に、カラーフィルター用インクを吐出した。この際、3色のカラーフィルター用インクを用い、各色のカラーフィルター用インクが混色しないようにした。
その後、ホットプレート上にて100℃で10分間の加熱処理を施し、さらに200℃のオーブン内で1時間加熱処理を施すことにより、3色の着色部が形成された。これにより、図1に示すようなカラーフィルターが得られた。
【0126】
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて、それぞれ、5000枚のカラーフィルターを製造した。なお、液滴吐出装置は、1000枚の基板に対して吐出を終えるたびに、インクの流路を洗浄し、インクを再充填して用いた。また、液滴吐出装置は、このような洗浄液による洗浄に加え、液滴吐出装置のカラーフィルター用の基板(ワーク)のない部分で液滴を吐出することによる行う方法(つば吐き)、および吸引手段を用いて液滴吐出ヘッド内に溜まっているインクを強制的に吸引する方法によるインクの流路の洗浄を定期的に行った。
【0127】
[5]カラーフィルターの評価
上記のようにして得られた各カラーフィルターを用いて、以下のような評価を行った。
[5.1]色むら、濃度むら、光漏れ
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、3000枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図7に示すような液晶表示装置を製造した。
【0128】
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、緑色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。なお、赤色および青色の単色表示をした際に、各実施例、各比較例のインクセットを用いて製造されたカラーフィルターに色むら、濃度むら、光漏れは全く認められなかった。
【0129】
A:色むら、濃度むら、光漏れが全く認められない。
B:色むら、濃度むら、光漏れがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むら、光漏れがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むら、光漏れがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むら、光漏れが顕著に認められる。
なお、上記の評価においては、各液晶表示装置について、同様の条件で製造し、同様の条件で表示を行い、同様の条件で観察、測定を行った。
【0130】
[5.2]個体間での特性差
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、1000、2000、3000、4000、5000枚目に製造されたカラーフィルターを用意し、暗室で、緑色の単色表示、白色の単色表示を行い、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて測色した。その結果から、各実施例および各比較例について、それぞれ、上記の枚数目に製造されたカラーフィルターで最大となる色差(Lab表示系での色差ΔE)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0131】
A:色差(ΔE)が2未満。
B:色差(ΔE)が2以上、3未満。
C:色差(ΔE)が3以上、4未満。
D:色差(ΔE)が4以上、5未満。
E:色差(ΔE)が5以上。
なお、上記の評価においては、各カラーフィルターについて、同様の条件で観察、測定を行った。
【0132】
【表3】

【0133】
表3から明らかなように、本発明の洗浄液は、洗浄性に優れ、カラーフィルター用インクとの置換性に優れていた。また、洗浄液によって洗浄された液滴吐出装置を用いてカラーフィルター用インクの吐出を行ったところ、液滴の着弾位置精度、吐出量の均一性に優れ、飛行曲がり、目詰まりが好適に防止されていた。また、本発明のインクを含んだカラーフィルター用インクセットで製造されたカラーフィルターは、混色、色むら、濃度むら、光漏れの発生が抑制されており、個体間での特性のばらつきも小さかった。これに対し、各比較例では、満足な結果が得られなかった。
なお、各実施例および比較例2では、用いた分散剤Aの20℃の液体a1に対する溶解度は、用いた分散剤Aの20℃の液体a2に対する溶解度よりも、それぞれ低いものであった。
【0134】
また、各実施例および各比較例のグリーンインク以外のレッドインク、ブルーインクについて、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
また、市販の液晶テレビを分解し、液晶表示装置部分を、上記のようにして製造したものと交換して、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
また、液滴吐出装置のカラーフィルター用の基板(ワーク)のない部分で液滴を吐出することによる行う方法(つば吐き)、および吸引手段を用いて液滴吐出ヘッド内に溜まっているインクを強制的に吸引する方法による液滴吐出装置の洗浄を行わずに、各実施例および各比較例の洗浄液による液滴吐出装置の洗浄のみを行ない、上記と同様の液滴吐出の安定性評価、カラーフィルターの製造、カラーフィルターの評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
【0135】
これに対し、洗浄液を用いずに、つば吐きおよび吸引手段による液滴吐出装置の洗浄を定期的に行い、カラーフィルターの製造を行ったところ、短期間で液滴の吐出量が大きく変動し、液滴の飛行曲がりが頻発した。このため、洗浄液を適用しない液滴吐出装置では、連続して5000枚のカラーフィルターを製造することができず、液滴吐出装置を停止しての液滴吐出ヘッドの交換が必要であった。また、洗浄液を用いずに上記のような、つば吐き、吸引手段による液滴吐出装置の洗浄の頻度を増やしてカラーフィルターの製造を行った場合においても、同様に、短期間で液滴の吐出量が大きく変動し、液滴の飛行曲がりが頻発した。また、連続して5000枚のカラーフィルターを製造することができず、液滴吐出ヘッドの交換が必要であった。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図である。
【図3】図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図である。
【図4】図1に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図5】本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
【図6】カラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図7】液晶表示装置の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0137】
1…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁 14…セル 2…カラーフィルター用インク 3…塗膜 4…洗浄液 60…液晶表示装置 61…共通電極 62…液晶層 63、64…配向膜 65…画素電極 66…基板(対向基板) 67、68…偏光板 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置 105…キャリッジ 106…ステージ 108…第2位置制御装置 110…チューブ 112…制御手段 114…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 116A、116B…ノズル列 118…ノズル 120…キャビティ 122…隔壁 124…振動子 124A、124B…電極 124C…ピエゾ素子 126…振動板 127…吐出部 128…ノズルプレート 129…液たまり 130…供給口 131…孔 132…インク貯留槽 133…洗浄液貯留槽 134…搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられる、顔料が分散媒に分散したインクの液滴吐出装置を洗浄するための洗浄液であって、
液性媒体と、分散剤Aとを含み、
前記液性媒体は、前記インクに含まれる前記分散媒を構成する成分である液体a1を含むことを特徴とする洗浄液。
【請求項2】
前記分散剤Aは、前記インクに含まれる分散剤Bを構成する成分の少なくとも一部を含むものである請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
洗浄液における前記分散剤Aの含有率は、0.1〜20wt%である請求項1または2に記載の洗浄液。
【請求項4】
洗浄液における前記液体a1の含有率は、40〜99wt%である請求項1ないし3のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項5】
前記液体a1は、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートである請求項1ないし4のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項6】
前記液性媒体は、前記液体a1とは異なる組成の液体a2を含み、
洗浄液における前記液体a2の含有率は、3〜45wt%であり、
20℃での前記分散剤Aの前記液体a1への溶解度は、前記分散剤Aの前記液体a2への溶解度よりも小さいものである請求項1ないし5のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項7】
前記液体a2は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、またはシクロヘキサノンである請求項6に記載の洗浄液。
【請求項8】
洗浄液の表面張力は、前記インクよりも低いものである請求項1ないし7のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項9】
洗浄液の粘度は、前記インクよりも低いものである請求項1ないし8のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項10】
前記液滴吐出装置中の、前記インクの流路を洗浄するものである請求項1ないし9のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項11】
インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置であって、
洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽と、インクを貯留するインク貯留槽とを有し、
前記インクは、顔料が分散媒中に分散しており、
前記洗浄液は、液性媒体と分散剤とを含み、
前記液性媒体は、前記インクに含まれる前記分散媒を構成する液体の少なくとも一種を含むことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−3221(P2009−3221A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164696(P2007−164696)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】