説明

洗浄装置および洗浄方法

【課題】硫酸を用いた洗浄システムにおいて、高度に清浄な表面が要求されるシリコンウエハ、液晶用ガラス基板、フォトマスク基板などの電子材料基板を効率的かつ確実に洗浄する。
【解決手段】被洗浄材(半導体基板30)を収容して、加熱された硫酸溶液4で前記被洗浄材の洗浄を行う洗浄装置(洗浄槽10)を備える。好適には前記洗浄槽1で被洗浄材から剥離した汚染物を含む硫酸溶液4をそのまま又は分解槽20に送液して過酸化水素水供給装置(過酸化水素水供給管3または22)によって過酸化水素水を添加する。加熱硫酸溶液で被洗浄材を洗浄することで被洗浄材に付着した主には有機物を確実に剥離除去でき、被洗浄材から剥離して硫酸溶液に移行した汚染物は過酸化水素水の添加によって確実に分解できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハなどの基板などの上に付着した汚染物を高温濃硫酸溶液で洗浄剥離する洗浄装置および洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超LSI製造工程におけるウエハ洗浄技術は、レジスト残渣、微粒子、金属および自然酸化膜などを剥離洗浄するプロセスであり、濃硫酸と過酸化水素の混合溶液(SPM)あるいは、濃硫酸にオゾンガスを吹き込んだ溶液(SOM)が多用されている。高濃度の硫酸に過酸化水素やオゾンを加えると硫酸が酸化されて過硫酸イオンが生成される。過硫酸イオンは自己分解する際に強い酸化力を発するため洗浄能力が高く、上記ウエハなどの洗浄に役立つことが知られている。
【特許文献1】特開平7−335606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、レジストにはリンや砒素などの金属元素が注入されるが、注入時のエネルギー、具体的には、加速電圧が高いほどレジストがウエハ上に強固に密着していて、剥離が難しい。また、イオン注入量が多いほどレジスト剥離が難しい。特に、SPMには、過硫酸イオンが分解して減少する分を補うための過酸化水素水の補給が必要であり、過酸化水素水中の水で希釈された場合には、レジスト剥離効果が著しく低下するという問題がある。一方のSOMでは液が希釈されることがなく、一般的にSPMより溶液を長い期間利用できるものの、オゾンによる過硫酸イオンの生成効率が低く、洗浄効果においてはSPMよりやや劣るという課題がある。
【0004】
また、レジストには多くの種類があると同時に、リンや砒素などのドーズ種、その注入時のエネルギー等のドーズ条件により、さらにレジスト剥離および溶解性を異にする。具体的には、注入時の加速電圧が高いほどレジスト剥離は難しい。集積度が増すにつれ、剥離しづらいレジストおよびドーズ条件が増え、従来のSPMやSOMではこれまでのスループットを確保できないことが生じている。
【0005】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、高濃度にイオンが注入されたレジストの除去などに際しても、アッシングプロセスなどの前処理工程を省略してレジストなどを良好に洗浄除去することができ、複雑な装置も必要としない洗浄装置および洗浄方法を提供することを基本的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1記載の洗浄装置の発明は、135℃以上の硫酸溶液を用いて被洗浄材の洗浄を行う洗浄装置を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の洗浄装置の発明は、請求項1に記載の発明において、洗浄に用いられた前記硫酸溶液に過酸化水素を添加する過酸化水素添加装置を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の洗浄装置の発明は、請求項2記載の発明において、前記過酸化水素添加装置によって過酸化水素が添加される前記硫酸溶液を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の洗浄装置の発明は、請求項2または3に記載の発明において、洗浄に用いられた前記硫酸溶液を収容する分解槽を有し、該分解槽に前記過酸化水素添加装置が備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の洗浄方法の発明は、135℃以上に加熱した硫酸溶液で被洗浄材を洗浄して被洗浄材から汚染物の剥離を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の洗浄方法の発明は、請求項5記載の発明において、前記硫酸溶液の硫酸濃度が16〜18.3Mの範囲内であることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の洗浄方法の発明は、請求項5または6に記載の発明において、前記剥離汚染物が移行した硫酸溶液に過酸化水素を添加して前記汚染物の分解を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の洗浄方法の発明は、請求項7記載の発明において、前記汚染物の分解を行う前記硫酸溶液の温度を80〜130℃の範囲内にすることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の洗浄方法の発明は、請求項5〜8のいずれかに記載の発明において、前記汚染物の剥離と、剥離汚染物の分解とを同一の槽内で行うことを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の洗浄方法の発明は、請求項5〜9のいずれかに記載の発明において、前記汚染物の剥離と、剥離汚染物の分解とをそれぞれ異なる槽内で行うことを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の洗浄方法の発明は、請求項5〜10のいずれかに記載の発明において、前記被洗浄材が半導体基板であることを特徴とする。
【0017】
すなわち、本発明によれば、高温の硫酸溶液で被洗浄材の洗浄を行うことで、剥離・酸化効果が高められ、被洗浄材の効果的な洗浄がなされる。
レジストなどの除去プロセスは、(1)レジストなどの剥離工程、(2)レジストなどの溶解工程、(3)レジストなどの酸化分解工程から成る。この3つの工程のうちで、(1)のレジスト剥離工程は、例えば硫酸溶液中に過硫酸イオンを含ませた場合でも過硫酸イオン濃度を高くしても効果が上がらない。硫酸濃度については、高い方が効果は良いが、イオン注入の際の加速電圧が大きいレジストについては、16Mの硫酸溶液で、通常のSPM洗浄を行う130℃では剥離が困難である。さらに硫酸濃度を16M以上にしても効果は飽和する。しかし本発明者らの研究の結果、レジスト剥離工程を高温の硫酸溶液中で行うことで効果が著しく改善されることが判明した。16M以上の濃度の硫酸溶液を135℃以上にまで高めることで、レジスト剥離速度は著しく改善される。さらに、140℃以上に加温すればレジスト剥離率は100%となるのでより好ましい。なお、常圧では200℃程度まで加熱して処理することが可能だが、硫酸溶液の温度が180℃程度より高くなると溶液が蒸散して失われるので、常圧では180℃以下とするのが望ましい。
【0018】
硫酸溶液は、加熱手段によって加熱することができる。加熱手段の構成は特に限定されるものではなく、ヒータや加熱蒸気を用いた熱交換器などを用いることができる。硫酸溶液の加熱は汚染物の剥離を行う槽外で行い、加熱した硫酸溶液を槽内に収容するようにしても良く、また、槽内に硫酸を加熱するようにしてもよい。
【0019】
また、硫酸は、被洗浄材からレジストなどを剥離する作用を十分に得るために、16〜18.3Mの濃度とするのが望ましい。16M未満の濃度では、十分な剥離作用が得られない。
【0020】
また、硫酸溶液を用いた洗浄によって被洗浄材から剥離したレジストなどの汚染物は硫酸溶液中に移行し、一部は溶解する。そして、硫酸溶液を用いた洗浄後に、該硫酸溶液に過酸化水素を添加して硫酸溶液中に移行したレジストなどの汚染物を分解することができる。硫酸溶液への過酸化水素の添加は、前記剥離洗浄を行った槽で行ってもよく、剥離洗浄を行った槽とは別の槽で行ってもよい。硫酸溶液に過酸化水素を添加することで硫酸溶液中にあるレジスト溶解物などが効果的に分解される。すなわち、過硫酸イオンは自己分解して酸化力を発揮し、汚染物を酸化分解することができる。
【0021】
なお、過酸化水素を添加して汚染物を分解する際に、硫酸溶液は80〜130℃とするのが望ましい。これは硫酸溶液の温度が80℃未満であると、汚染物の溶解が十分になされず、一方、溶液の温度が130℃を超えると、過酸化水素の添加によって生成される過硫酸イオンが早期に自己分解してしまい、汚染物の分解作用が低下するためである。
該硫酸溶液の温度は適宜の加熱手段を用いることにより加熱調整することができる。この加熱手段の構成も特に限定されるものではなく、ヒータや加熱蒸気を用いた熱交換器などを用いることができる。なお、同一の槽内で被洗浄材からの汚染物の剥離と剥離汚染物の分解とを行う場合、剥離工程を終えた後、硫酸溶液の温度の降下を待って、または空冷、水冷などの適宜の冷却手段を用いて硫酸溶液を80〜130℃の温度に調整することができる。
また、この分解の際に槽内に被洗浄材を配置することで、被洗浄材に溶解物が再付着することなく被洗浄材および硫酸溶液を確実に清浄にすることができる。なお、剥離を行う槽と別の槽で汚染物の分解を行った際には、分解を行った硫酸溶液を剥離を行った槽に移送して再利用することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の洗浄装置および洗浄方法によれば、複雑な装置を要することなく高温硫酸溶液を用いて被洗浄材の洗浄を行って被洗浄材から汚染物の剥離を確実に行うことができる。さらに剥離を行った硫酸溶液に過酸化水素を添加すれば、硫酸溶液中の汚染物が過酸化水素によって生成される過硫酸イオンによって分解され清浄化される。該洗浄によれば、従来のSPM法で多用されてきたアッシング処理を省くことも可能で、ウエハなどの被洗浄材に対するダメージを回避した洗浄が行える。また、ウエットプロセスのみでレジスト等の除去が可能となるため、装置を移動する際のコンタミの付着を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施形態1)
以下に、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
この実施形態では、被洗浄材からの汚染物の剥離と剥離した汚染物の分解を行う洗浄槽1を備えている。該洗浄槽1は、槽内に収容した硫酸容液4を加熱するためのヒータ2が加熱手段として設けられている。また、洗浄槽1には、槽内の硫酸溶液に過酸化水素水を添加するための過酸化水素水供給管3が、過酸化水素添加装置として備えられている。
【0024】
以下に上記実施形態の動作について説明する。
洗浄槽1内に、好適には16〜18.3Mの濃度とした硫酸溶液4を収容し、さらに該硫酸溶液4内に被洗浄材である半導体基板30を浸漬する。また、ヒータ2を動作させて、前記硫酸溶液4を好適には135℃以上に加熱する。洗浄槽1内では、高濃度、高温の硫酸溶液の作用によって半導体基板30表面のレジスト残渣などの汚染物が効果的に剥離除去され、汚染物として硫酸溶液中に移行し、大部分が溶解する。
洗浄槽1での洗浄を所定時間行った後、硫酸溶液4の温度が80〜130℃になったことを確認し、その後は、必要に応じてヒータ2を動作させて硫酸溶液の温度を上記範囲内に保持する。さらに上記過酸化水素水供給管3から硫酸溶液中に過酸化水素水を添加する。この過酸化水素水の添加によって硫酸溶液4中には過硫酸イオンが生成される。この過硫酸イオンは、上記温度範囲に保持された硫酸溶液中で適度に自己分解して酸化力を発揮する。この酸化力によって硫酸溶液中に移行したレジスト残渣などの汚染物が効果的に分解される。さらに半導体基板30上に付着している汚染物の剥離除去、分解の作用もなされて確実に清浄化される。清浄化された硫酸溶液は、さらに別ロットの被洗浄材に洗浄に用いたり、他の用途に再利用することができる。
【0025】
(実施形態2)
次に、他の実施形態を図2に基づいて説明する。
この実施形態2では、被洗浄材からの汚染物の剥離を行う洗浄槽10と、剥離した汚染物の分解を行う分解槽20とを備えている。該洗浄槽10は、槽内に収容した硫酸容液4を加熱するためのヒータ11が加熱手段として設けられている。
上記洗浄槽10の底面に近い下方部には、送液管5の一端が接続されている。該送液管5は、開閉弁6および送液ポンプ7が介してその他端が分解槽20に接続されている。
分解槽20は、槽内に収容した硫酸溶液を加熱するためのヒータ21が備えられており、さらに、槽内に過酸化水素水を添加するための過酸化水素水供給管22が過酸化水素添加装置として付設されている。
【0026】
以下に上記実施形態2の動作について説明する。
洗浄槽10内に、好適には16〜18.3Mの濃度とした硫酸溶液4を収容し、さらに該硫酸溶液4に被洗浄材である半導体基板30を浸漬する。この際には開閉弁6を閉じておく。また、ヒータ2を動作させて、前記硫酸溶液4を好適には135℃以上に加熱する。洗浄槽1内では、高濃度、高温の硫酸溶液の作用によって半導体基板30表面のレジスト残渣などが剥離除去され、汚染物として硫酸溶液4中に移行し、溶解する。
【0027】
洗浄槽10での洗浄を所定時間行った後、開閉弁6を開くとともに送液ポンプ7を動作させて、洗浄槽10内の硫酸溶液4を送液管5を通して分解槽20に移送する。この移送に際し、硫酸溶液の温度が低下して適温よりも低温となった場合には、ヒータ21によって分解槽20内の硫酸溶液を好適には80〜130℃に加熱する。さらに過酸化水素水供給管22を通して過酸化水素水を分解槽20内に添加して混合溶液4aを得る。該混合溶液4aには、前記洗浄槽10で洗浄を行った半導体基板30を搬送して浸漬し、さらに洗浄を行う。分解槽20では、過硫酸イオンの自己分解による酸化力によって混合溶液4a中にある汚染物を酸化分解して清浄化するとともに、半導体基板30上に付着している汚染物を剥離除去、分解して清浄化する。
上記のようにこの実施形態では、被洗浄材に付着した汚染物を剥離する槽と、硫酸溶液中に移行した剥離汚染物を分解する槽とを別にしてそれぞれ処理を行うようにしたので、各行程での処理効率を大幅に向上させることが可能になる。
【0028】
(実施形態3)
さらに、他の実施形態を図3に基づいて説明する。
この実施形態3では、被洗浄材からの汚染物の剥離を行う洗浄槽として枚葉式洗浄槽を用いたものについて説明する。
枚葉式の洗浄装置15では、液滴噴流形成装置として液体スプレーノズル17を備えており、該液体スプレーノズル17の先端側噴出部が洗浄槽15内に位置している。該液体スプレーノズル17には、後述する貯液槽23との間で送液ポンプ27bを介して硫酸溶液が供給される硫酸供給管26bと、N2ガスの供給管18とが接続されている。液体スプレーノズル17は、硫酸供給管26bから供給される硫酸溶液と、N2ガスの供給管18から供給される高圧のNガスとを混合して、硫酸溶液の液滴を下方に向けて噴出するように構成されている。なお、硫酸供給管26bには、液体スプレーノズル17の接続部の直前に、加熱装置19が設けられており、液体スプレーノズル17に供給される硫酸溶液を好適には135℃以上に加熱する。
【0029】
また、洗浄槽15内には、液体スプレーノズル17の噴出方向に、基板保持具16が設置されている。基板保持具16には、被洗浄材である半導体基板30が保持(載置等)される。該基板保持具16または液体スプレーノズル17は、基板30の表面上に液滴はむらなく当たるように相対的に移動可能とするのが望ましい。
【0030】
そして、上記洗浄槽15の排液部には、戻り管26aが接続されており、該戻り管26aには硫酸溶液を送液するための送液ポンプ27aが介設されている。送液ポンプ27aの下流側には、貯液槽23に接続されている。貯液槽23は、剥離した汚染物の分解を行う分解槽を兼ねており、過酸化水素水を供給するための過酸化水素水供給管25が接続されている。また、所望により、収容されている硫酸溶液を加熱するためのヒータ24が備えられている。
【0031】
次に、上記構成よりなる洗浄装置の作用について説明する。
上記貯液槽23内に、硫酸濃度が16〜18.3Mの硫酸溶液を収容する。これを送液ポンプ27bによって供給管26bを通して洗浄槽15側に送液する。送液される硫酸溶液は、加熱装置19によって135℃以上に加熱されて液体スプレーノズル2に供給される。なお、貯液槽23内の硫酸溶液は、ヒータ24によって適宜加熱することも可能である。
【0032】
洗浄槽1では、液体スプレーノズル17において加熱硫酸溶液とNガスとが混合されて、高温の硫酸液滴が一定時間噴出される。基板保持具16上には基板30が保持されており、前記硫酸液滴によって基板30の表面の清浄がなされ、レジストなどが硫酸イオンの作用により剥離、除去される。
【0033】
噴出された硫酸溶液は、基板30を洗浄した後、飛散・落下して、レジスト溶解物などともに戻り管26aに排出される。戻り管21aでは、送液ポンプ27aによって上記硫酸溶液が貯液槽23へと送液される。
貯液槽23では、順次硫酸溶液の洗浄槽15への供給と返送とが繰り返されて硫酸溶液が循環する。洗浄槽15での洗浄が終了すると、硫酸溶液は、貯液槽23に収容された状態になり、ヒータ24の適宜の動作によってその温度を80〜130℃に維持する。この硫酸溶液に過酸化水素水供給管25から過酸化水素水を添加して混合溶液4aを得る。該混合溶液4aには、前記洗浄槽15で洗浄を行った半導体基板30を搬送して浸漬し、さらに洗浄を行うこともできる。貯液槽23では、過硫酸イオンの自己分解による酸化力によって混合溶液4a中にある汚染物を酸化分解して清浄化するとともに、半導体基板30上に付着している汚染物を剥離除去、分解して清浄化する。
なお、上記動作では、洗浄槽15における洗浄を終了した後に、貯液槽23で過酸化水素水を添加して剥離物の分解を行うようにしたが、洗浄槽15の洗浄中に貯液槽23で過酸化水素水を添加して剥離物の分解を同時に行うことも可能である。この際に貯液槽23での硫酸溶液の温度は80〜130℃に保持する。この際に、硫酸供給管26bと戻り管26aとの間に熱交換器を設けて硫酸溶液間での熱の授受を行うようにしてもよい。
【0034】
(実施形態4)
なお、上記実施形態3では、貯液槽で剥離物の分解を行うことを可能にしたが、分解槽を別に備えたものであっても良い。以下に、その実施形態を図4に基づいて説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0035】
枚葉式の洗浄槽15には、戻り管26a、硫酸供給管26bを介して貯液槽28が接続されて硫酸容器の循環使用が可能になっている。該貯液槽28の底面に近い下方部には、送液管5の一端が接続されている。該送液管5は、開閉弁6および送液ポンプ7が介してその他端が分解槽20に接続されている。分解槽20は、槽内に収容した硫酸溶液を加熱するためのヒータ21が備えられており、さらに、槽内に過酸化水素水を添加するための過酸化水素水供給管22が過酸化水素添加装置として付設されている。
【0036】
この実施形態4では、開閉弁6を閉じた状態で、前記実施形態3と同様に、貯液槽28と洗浄槽15との間で硫酸溶液を循環させつつ、135℃以上に加熱した硫酸溶液を液体スプレーノズル17からNガスともに高温の硫酸液滴として噴出する。基板保持具16上には基板30が保持されており、前記硫酸液滴によって基板30の表面の清浄がなされ、レジストなどが硫酸イオンの作用により剥離、除去され、剥離、除去物は硫酸溶液中に移行する。
上記洗浄槽15による洗浄が終了した後、開閉弁6を開いて送液ポンプ7の動作により貯液槽28内の硫酸溶液を送液管5を通して分解槽20に送液する。分解槽20内の硫酸溶液は、ヒータ21の適宜の使用などによって80〜130℃に保持する。さらに過酸化水素水供給管22を通して過酸化水素水を分解槽20内に添加して混合溶液4aを得る。該混合溶液4aには、前記洗浄槽10で洗浄を行った半導体基板30を搬送して浸漬し、さらに洗浄を行うことも可能である。分解槽20では、過硫酸イオンの自己分解による酸化力によって混合溶液4a中にある汚染物を酸化分解して清浄化するとともに、半導体基板30上に付着している汚染物を剥離除去、分解して清浄化する。
【0037】
以上本発明について、上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態の説明に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜変更が可能である。
【実施例1】
【0038】
上記実施形態2に示す装置を用いて、洗浄槽に、97%濃硫酸40リットルの高濃度硫酸溶液を収容して170℃に加熱保持した。洗浄槽には、160kVの加速電圧でリンを1×1016/cmイオン注入したレジスト付きの8インチのシリコンウエハ50枚を浸漬させて、レジスト剥離を行った。レジスト剥離が完了した時点で、硫酸溶液を送液ポンプで分解槽へと送った。ウエハも分解槽へと移動させて、過酸化水素水を8リットル添加した。レジスト剥離が完了した時点では、溶液は茶褐色に着色し、TOC濃度は30mg/lであったが、過酸化水素水の添加により、溶液は無色透明となりTOC濃度も検出限界以下となった。分解槽から引き上げたウエハを超純水でリンスして、そのうちの1枚をウエハアナライザで分析したところ、有機物残渣は300pg/cmと極めて清浄なウエハを得ることができた。洗浄槽には、新たに97%濃硫酸40リットルの高濃度硫酸溶液を収容して170℃に加熱保持して、洗浄を継続した。また、分解槽内の溶液は、硫酸の再生を行い、工業試薬として回収した。以上によりアッシング処理を施すことなくウエハ洗浄を継続することができた。
【0039】
(比較例1)
洗浄槽に、97%濃硫酸40リットルの高濃度硫酸溶液を収容して130℃に加熱保持した。洗浄槽には、160kVの加速電圧でリンを1×1016/cmイオン注入したレジスト付きの8インチのシリコンウエハ50枚を浸漬させた。過酸化水素水8リットルを添加してレジスト剥離を行ったが、レジストを完全に剥離することができなかった。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同様に、洗浄槽に、97%濃硫酸40リットルの高濃度硫酸溶液を収容して表1に示す各温度に加熱保持した。洗浄槽には、160kVの加速電圧でリンを1×1016/cmイオン注入したレジスト付きの8インチのシリコンウエハ50枚を浸漬させて、実施例1と同時間でレジスト剥離を行った。
レジスト剥離を行ったシリコンウェハについて、画像処理によりレジスト剥離率を測定した。その結果を表1および図5に示す。表および図から明らかなように、硫酸温度140℃以上で100%のレジスト剥離率が得られており、硫酸温度135℃では剥離率100%に達しないものの、若干処理時間を長くすることで良好な剥離結果が得られる。一方、硫酸温度が135℃未満では良好なレジスト剥離が困難であることが明らかになった。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態の洗浄装置の概略を示す図である。
【図2】同じく、他の実施形態の洗浄装置の概略を示す図である。
【図3】同じく、さらに他の実施形態の洗浄装置の概略を示す図である。
【図4】同じく、さらに他の実施形態の洗浄装置の概略を示す図である。
【図5】同じく、実施例における硫酸溶液の温度とレジスト剥離率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1 洗浄槽
2 ヒータ
3 過酸化水素水供給管
4 硫酸溶液
5 送液管
6 開閉弁
7 送液ポンプ
10 洗浄槽
11 ヒータ
20 分解槽
21 ヒータ
22 過酸化水素水供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
135℃以上の硫酸溶液を用いて被洗浄材の洗浄を行う洗浄装置を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
洗浄に用いられた前記硫酸溶液に過酸化水素を添加する過酸化水素添加装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記過酸化水素添加装置によって過酸化水素が添加される前記硫酸溶液を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
洗浄に用いられた前記硫酸溶液を収容する分解槽を有し、該分解槽に前記過酸化水素添加装置が備えられていることを特徴とする請求項2または3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
135℃以上に加熱した硫酸溶液で被洗浄材を洗浄して被洗浄材から汚染物の剥離を行うことを特徴とする洗浄方法。
【請求項6】
前記硫酸溶液の硫酸濃度が16〜18.3Mの範囲内であることを特徴とする請求項5記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記剥離汚染物が移行した前記硫酸溶液に過酸化水素を添加して前記汚染物の分解を行うことを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記汚染物の分解を行う前記硫酸溶液の温度を80〜130℃の範囲内にすることを特徴とする請求項7記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記汚染物の剥離と、剥離汚染物の分解とを同一の槽内で行うことを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記汚染物の剥離と、剥離汚染物の分解とをそれぞれ異なる槽内で行うことを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項11】
前記被洗浄材が半導体基板であることを特徴とする請求項5〜10のいずれかに記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−103429(P2007−103429A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287848(P2005−287848)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】