説明

洗浄装置および洗浄装置の制御方法

【課題】洗浄液の消費量を低減しつつ、効率的に被洗浄物の蒸気洗浄を行うことが可能な洗浄装置および洗浄装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】洗浄装置1は、被洗浄物2を出し入れするための開口部15および被洗浄物2が浸漬される洗浄槽3を有する本体部4と、本体部4の内部であって洗浄槽3の上方に形成される蒸気洗浄領域16に洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽5と、開口部15を開放および閉鎖するために開閉する蓋部材11と、本体部4内を減圧するための吸引手段12とを備えている。蓋部材11は、蒸気洗浄領域16での被洗浄物2の蒸気洗浄時に開口部15を閉鎖するとともに、被洗浄物2の蒸気洗浄後に開口部15を開放するために退避する。吸引手段12は、被洗浄物2の蒸気洗浄後、蓋部材11が退避する前に本体部4内を減圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の被洗浄物を洗浄するための洗浄装置および洗浄装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品や金属部品等の各種の部品(ワーク)の製造工程では、洗浄装置を用いてワークの洗浄処理が行われている。この種の洗浄装置として、下端側に洗浄槽が形成されたタンク本体と、ワークを蒸気洗浄するための溶剤蒸気を発生させる蒸気発生槽と、タンク本体と蒸気発生槽とを接続する配管と、この配管の途中に配置される電磁弁とを備える洗浄装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の洗浄装置では、タンク本体の上端は開放されている。また、タンク本体の上下方向の中間部に冷却コイルが配設されている。冷却コイルの下部と洗浄槽の溶剤液面との間には、ワークの蒸気洗浄を行うための処理エリアが形成されており、この処理エリアに蒸気発生槽から溶剤蒸気が供給されてワークの蒸気洗浄が行われる。また、この洗浄装置は、処理エリア内の溶剤蒸気を吸引するエアポンプを備えている。
【0004】
特許文献1に記載の洗浄装置では、ワークの蒸気洗浄時のみに処理エリアに溶剤蒸気が供給される。また、この洗浄装置では、エアポンプで常時、処理エリア内の溶剤蒸気が吸引されている。そのため、この洗浄装置では、タンク本体の上端が開放されている場合であっても、タンク本体外部への溶剤の蒸散が抑制され、溶剤の消費量が低減されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−74319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の洗浄装置では、エアポンプによって処理エリア内の溶剤蒸気が常時吸引されて、処理エリア内から排出されている。そのため、効率的にワークの蒸気洗浄を行うことは困難である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、洗浄液の消費量を低減しつつ、効率的に被洗浄物の蒸気洗浄を行うことが可能な洗浄装置および洗浄装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の洗浄装置は、被洗浄物を出し入れするための開口部および被洗浄物が浸漬される洗浄槽を有する本体部と、本体部の内部であって洗浄槽の上方に形成される蒸気洗浄領域に洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽と、開口部を開放および閉鎖するために開閉する蓋部材と、本体部内を減圧するための吸引手段とを備え、蓋部材は、少なくとも蒸気洗浄領域での被洗浄物の蒸気洗浄時に開口部を閉鎖するとともに、少なくとも被洗浄物の蒸気洗浄後に開口部を開放するために退避し、吸引手段は、被洗浄物の蒸気洗浄後、蓋部材が退避する前に本体部内を減圧することを特徴とする。
【0009】
本発明の洗浄装置では、蒸気洗浄領域での被洗浄物の蒸気洗浄時に蓋部材が開口部を閉鎖し、かつ、被洗浄物の蒸気洗浄後に吸引手段が本体部内を減圧している。そのため、被洗浄物の蒸気洗浄時に、蒸気洗浄領域に洗浄液の蒸気を充満させることができ、効率的に被洗浄物の蒸気洗浄を行うことが可能になる。
【0010】
また、本発明では、被洗浄物の蒸気洗浄時に蓋部材が開口部を閉鎖しているため、蒸気洗浄時における本体部外への洗浄液の蒸散を防止することが可能になる。また、蓋部材が退避して開口部を開放する前に吸引手段が本体部内を減圧しているため、蒸気洗浄時に蒸気洗浄領域に洗浄液の蒸気が充満していて本体部内の圧力が高くなっている場合であっても、開口部の開放時には本体部内は減圧されている。したがって、被洗浄物を取り出す際に、洗浄液が本体部外へ蒸散するのを抑制することができる。その結果、本発明では、洗浄液の消費量を低減することが可能になる。
【0011】
本発明において、吸引手段の吸引側は、蒸気洗浄領域に接続されていることが好ましい。このように構成すると、蒸気洗浄の際に蒸気洗浄領域に充満する洗浄液の蒸気を蒸気洗浄後、効率良く吸引することができる。
【0012】
本発明において、吸引手段の排出側は、洗浄槽に接続されていることが好ましい。このように構成すると、吸引された洗浄液の蒸気を液化して再利用することが可能となり、洗浄液の消費量をさらに低減することが可能となる。
【0013】
本発明において、洗浄装置は、洗浄槽からの被洗浄物の引上げ方向と逆の方向に、かつ、被洗浄物に向かって洗浄液を噴射するシャワー部材を洗浄槽の上方に備えることが好ましい。このように構成すると、洗浄槽の液面に塵埃が浮遊していて、洗浄槽から被洗浄物を引き上げる際に被洗浄物に塵埃が付着する場合であっても、シャワー部材から噴射される洗浄液によって被洗浄物の表面に付着する塵埃を除去することが可能になる。また、被洗浄物の引上げ方向と逆方向にシャワー部材から洗浄液が噴射されるため、被洗浄物が軽量であっても、洗浄槽から引き上げる際の被洗浄物の姿勢を一定に保つことが可能になる。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、本発明は、被洗浄物を出し入れするための開口部および被洗浄物が浸漬される洗浄槽を有する本体部と、開口部を開放および閉鎖するために開閉する蓋部材とを備える洗浄装置の制御方法であって、開口部から本体部内に被洗浄物が搬入された後、蓋部材で開口部を閉鎖する閉鎖ステップと、本体部内に搬入された被洗浄物を洗浄槽に浸漬して洗浄する液体洗浄ステップと、本体部内であって洗浄槽の上方に形成される蒸気洗浄領域で、開口部を閉鎖した状態で、洗浄液の蒸気によって被洗浄物を洗浄する蒸気洗浄ステップと、蒸気洗浄ステップ後、本体部内を減圧する減圧ステップと、減圧ステップ後、開口部を閉鎖する蓋部材を退避させて開口部を開放する開放ステップとを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の洗浄装置の制御方法では、蒸気洗浄ステップで、開口部を閉鎖した状態で、洗浄液の蒸気によって被洗浄物を洗浄するとともに、蒸気洗浄ステップ後の減圧ステップで、本体部内を減圧している。そのため、本発明では、被洗浄物の蒸気洗浄時に、蒸気洗浄領域に洗浄液の蒸気を充満させることができ、効率的に被洗浄物の蒸気洗浄を行うことが可能になる。
【0016】
また、本発明では、蒸気洗浄ステップで、開口部を閉鎖しているため、蒸気洗浄時における本体部外への洗浄液の蒸散を防止することが可能になる。また、開放ステップでは、減圧ステップ後に蓋部材を退避させて開口部を開放しているため、蒸気洗浄時に蒸気洗浄領域に洗浄液の蒸気が充満していて本体部内の圧力が高くなっている場合であっても、開口部の開放時には本体部内は減圧されている。したがって、開口部から被洗浄物を搬出する際に、洗浄液が本体部外へ蒸散するのを抑制することができる。その結果、本発明では、洗浄液の消費量を低減することが可能になる。
【0017】
本発明の洗浄装置の制御方法は、閉鎖ステップ後、液体洗浄ステップ前に本体部内を減圧する初期減圧ステップを備えることが好ましい。このように構成すると、開口部を閉鎖した後の蓋部材と本体部とを密着させることが可能になる。したがって、蒸気洗浄時に、蒸気洗浄領域に洗浄液の蒸気を確実に充満させることができ、より効率的に被洗浄物の蒸気洗浄を行うことが可能になる。また、蒸気洗浄時における本体部外への洗浄液の蒸散を確実に防止することが可能になる。
【0018】
本発明の洗浄装置の制御方法は、液体洗浄ステップ後、被洗浄物の略真上から被洗浄物に向かって洗浄液を噴射しながら洗浄槽から被洗浄物を引き上げる引上げステップを備えることが好ましい。このように構成すると、洗浄槽の液面に塵埃が浮遊していて、洗浄槽から被洗浄物を引き上げる際に被洗浄物に塵埃が付着する場合であっても、噴射される洗浄液によって被洗浄物の表面に付着する塵埃を除去することが可能になる。また、被洗浄物の略真上から洗浄液が噴射されるため、被洗浄物が軽量であっても、洗浄槽から引き上げる際の被洗浄物の姿勢を一定に保つことが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明にかかる洗浄装置および洗浄装置の制御方法では、洗浄液の消費量を低減しつつ、効率的に被洗浄物の蒸気洗浄を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(洗浄装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる洗浄装置1の概略構成を説明するための概略図である。
【0022】
本形態の洗浄装置1は、電子部品、金属部品、プリント配線基板あるいはガラス基板等の各種の被洗浄物(ワーク)2を洗浄処理するための装置である。たとえば、洗浄装置1は、ワーク2となる携帯電話用カメラのレンズ駆動機構等を洗浄処理するための装置である。
【0023】
この洗浄装置1は、図1に示すように、ワーク2を洗浄液に浸漬するための洗浄槽3を下端側に有する本体部4と、本体部4の内部へ洗浄液の蒸気を供給するための蒸気発生槽5と、洗浄槽3の上端側に取り付けられ洗浄液の蒸気を冷却して液化させるための冷却器6と、冷却器6で液化された洗浄液を回収して水と分離するための水分離槽7と、洗浄槽3から引き上げられるワーク2に向かって洗浄液を噴射するシャワー部材8と、洗浄槽3から排出される洗浄液を循環させて再利用するための循環経路9とを備えている。
【0024】
また、洗浄装置1は、本体部4の上面に形成された後述の開口部15を塞ぐための蓋部材11と、本体部4内を減圧するための吸引手段としてのエアポンプ12と、エアポンプ12で吸引された気体を冷却する第1冷却装置13と、蒸気発生槽5で発生した洗浄液の蒸気を冷却するための第2冷却装置14とを備えている。
【0025】
洗浄装置1で使用される洗浄液は、揮発性を有する有機溶剤であり、たとえば、HFC(ハイドロフルオロカーボン)やHFE(ハイドロフルオロエーテル)等のフッ素系溶剤、あるいは臭素系溶剤である。本形態の洗浄装置1では、洗浄液としてHFEが使用されている。
【0026】
本体部4は、中空の箱状に形成されており、上述のように、下端側に洗浄槽3を備えている。この本体部4の上面には、本体部4内にワーク2を搬入し、かつ、本体部4内からワーク2を搬出するための(すなわち、ワーク2を出し入れするための)開口部15が形成されている。具体的には、開口部15は、洗浄槽3を構成する後述の第1洗浄槽18の上方に形成されている。また、上下方向における本体部4の略中間位置には、蒸気発生槽5で発生した洗浄液の蒸気を用いてワーク2を蒸気洗浄するための蒸気洗浄空間16が形成されている。すなわち、本体部4の内部であって洗浄槽3の上方に蒸気洗浄空間16が形成されている。
【0027】
本形態の本体部4では、洗浄槽3が配置される領域は、ワーク2を洗浄液に浸漬して洗浄する液体洗浄領域となっている。また、蒸気洗浄空間16は、ワーク2の蒸気洗浄を行う蒸気洗浄領域となっている。さらに、後述のように冷却器6は蒸気洗浄空間16の上方に配置されており、蒸気洗浄空間16の上方の、冷却器6が配置される領域は、ワーク2を冷却乾燥する冷却領域となっている。
【0028】
洗浄槽3は、ワーク2を洗浄液に浸漬して仕上洗浄を行うための第2洗浄槽17と、ワーク2を洗浄液に浸漬して粗洗浄を行うための第1洗浄槽18と、第1洗浄槽18から溢れ出した洗浄液が流れ込むオーバーフロー槽19とを備えている。本形態の洗浄槽3では、ワーク2を洗浄するための洗浄液が第2洗浄槽17の底面から供給される。また、第1洗浄槽18は、第2洗浄槽17の周囲を囲むように配置されており、第2洗浄槽17から溢れ出した洗浄液が第1洗浄槽18へ流れ込む。
【0029】
第2洗浄槽17および第1洗浄槽18は洗浄液で満たされている。また、第2洗浄槽17の底面側には、浸漬されたワーク2を超音波を用いて洗浄するための超音波振動子20が配置され、同様に、第1洗浄槽18の底面側には、浸漬されたワーク2を超音波を用いて洗浄するための超音波振動子21が配置されている。オーバーフロー槽19の底面には、循環経路9の一端側が接続されている。また、第2洗浄槽17の底面には、循環経路9の他端側の一部が接続されている。なお、超音波振動子20、21は所定の配線を介して図示を省略する洗浄装置1の制御部に接続されている。
【0030】
蒸気発生槽5の内部には、洗浄液を温めて気化させるためのヒータ22が配置されている。また、蒸気発生槽5の上端側には、配管23の一端側が接続され、配管23の他端側には、分岐する2本の配管24、25の一端側が接続されている。配管24の途中には電磁弁26が配置され、配管25の途中には電磁弁27が配置されている。なお、ヒータ22および電磁弁26、27は、所定の配線を介して洗浄装置1の制御部(図示省略)に接続されている。
【0031】
配管24の他端側は蒸気洗浄空間16に接続されている。すなわち、蒸気発生槽5の上端側は、配管23、24を介して蒸気洗浄空間16に接続されており、ヒータ22によって気化された洗浄液は、電磁弁26が開状態になると蒸気洗浄空間16に供給される。また、配管25の他端側は第2冷却装置14に接続されている。すなわち、蒸気発生槽5の上端側は、配管23、25を介して第2冷却装置14に接続されている。なお、本形態では、第1洗浄槽18から洗浄液が蒸気発生槽5に流れ込んで、蒸気発生槽5に洗浄液が補充される。
【0032】
冷却器6は、たとえば、ペルチェ素子であり、本体部4の上端側の周囲を囲むように配置されている。具体的には、冷却器6は、蒸気洗浄空間16の上端の周囲を囲むように配置されている。この冷却器6は、本体部4の、蒸気洗浄空間16の上端側の内壁を冷却する。そのため、蒸気洗浄空間16内の洗浄液の蒸気は、冷却器6によって冷却され液化されて蒸気洗浄空間16の上端側の内壁につく。本形態の洗浄装置1では、蒸気洗浄空間16の上端側の内壁についた液体状の洗浄液は、その後、水分離槽7に流れ込む。
【0033】
また、冷却器6が蒸気洗浄空間16の上端側の内壁を冷却するため、蒸気洗浄空間16の上端側の蒸気圧が下がる。したがって、後述のように、蒸気洗浄が行われた後のワーク2が冷却器6の内周側に配置されると、ワーク2の表面に凝縮していた液体状の洗浄液が気化する。その結果、ワーク2の表面は乾燥する。すなわち、冷却器6は、洗浄液の蒸気を冷却して液化させる機能に加え、ワーク2を乾燥させる機能を果たしている。なお、冷却器6は、所定の配線を介して洗浄装置1の制御部(図示省略)に接続されている。
【0034】
水分離槽7は、水の比重と洗浄液の比重との違いを利用して、水と洗浄液とを分離する。この水分離槽7では、冷却器6で液化された洗浄液等が上面側から流れ込み、底面から水と分離された洗浄液が排出される。上述のように、本形態では、洗浄液としてHFEが使用されており、HFEは、水よりも比重が大きい。そのため、このように構成された水分離槽7によって、水と洗浄液とを分離することが可能となっている。なお、水分離槽7から排出される洗浄液はオーバーフロー槽19に流れ込む。
【0035】
シャワー部材8はたとえば、ステンレス鋼等の金属部材からなる扁平な直方体状の中空部材であり、本体部4内に配置されている。このシャワー部材8の上面側には、循環経路9の他端側の一部が接続されている。また、シャワー部材8の下面には、洗浄液を噴射するための複数の噴射孔(図示省略)が所定の間隔で形成されている。本形態のシャワー部材8は、第2洗浄槽17の上方に固定されており、第2洗浄槽17から引き上げられるワーク2の略真上からワーク2に向かって洗浄液を噴射する。すなわち、シャワー部材8は、ワーク2の引上げ方向とは逆の方向となる下方向に向かって洗浄液を噴射する。
【0036】
循環経路9は、図1に示すように、洗浄槽3(具体的には、オーバーフロー槽19)から排出される洗浄液を第2洗浄槽17およびシャワー部材8に向かって送るポンプ30と、第2洗浄槽17に向かって送られる洗浄液をろ過して洗浄液に含まれる塵埃等の不純物を取り除くフィルター31と、シャワー部材8に向かって送られる洗浄液をろ過して塵埃等の不純物を取り除くフィルター32とを備えている。また、循環経路9は、オーバーフロー槽19に接続される配管33と、第2洗浄槽17に接続される配管34と、シャワー部材8に接続される配管35と、電磁弁36、37とを備えている。
【0037】
配管33の一端側はオーバーフロー槽19の底面に接続され、配管33の他端側には分岐する2本の配管34、35の一端側が接続されている。また、配管34の他端側は第2洗浄槽17の底面に接続され、配管35の他端側はシャワー部材8の上面側に接続されている。ポンプ30は、配管33の途中に配置されている。電磁弁36およびフィルター31は、配管34の一端側から他端側に向かってこの順番で、配管34の途中に配置されている。同様に、電磁弁37およびフィルター32は、配管35の一端側から他端側に向かってこの順番で、配管35の途中に配置されている。なお、ポンプ30および電磁弁36、37は、所定の配線を介して洗浄装置1の制御部(図示省略)に接続されている。
【0038】
蓋部材11は、本体部4の上面に取り付けられている。この蓋部材11は、図示を省略する開閉機構に連結されており、開口部15を開放および閉鎖するために開閉する。開閉機構はたとえば、図示を省略するモータあるいはシリンダ等の所定の駆動源に接続されている。また、この駆動源は、所定の配線を介して洗浄装置1の制御部(図示省略)に接続されている。
【0039】
エアポンプ12は、配管39を介して本体部4に接続されている。具体的には、エアポンプ12の吸引側が蒸気洗浄空間16に接続されており、本体部4内の気体(具体的には、洗浄液の蒸気等)を吸引して、本体部4内を減圧する。配管39の途中には、電磁弁40が配置されている。また、エアポンプ12の吐出側(排出側)は、配管41を介して第1冷却装置13の入口側に接続されている。なお、エアポンプ12および電磁弁40は、所定の配線を介して洗浄装置1の制御部(図示省略)に接続されている。
【0040】
第1冷却装置13は、エアポンプ12で吸引された気体をチラー水を用いて冷却する冷却槽である。第1冷却装置13の出口側は、配管42、43を介して第2洗浄槽17の底面に接続されており、第1冷却装置13で冷却され液化された洗浄液は第2洗浄槽17に供給される。なお、第1冷却装置13の出口側に配管42の一端側が接続され、配管42の他端側に配管43の一端側が接続されている。また、配管43の他端側は、第2洗浄槽17の底面に接続されている。
【0041】
第2冷却装置14は、蒸気発生槽5で発生した洗浄液の蒸気をチラー水を用いて冷却する冷却槽である。第2冷却装置14の出口側は、配管44、43を介して第2洗浄槽17の底面に接続されており、第2冷却装置14で冷却され液化された洗浄液は第2洗浄槽17に供給される。なお、第2冷却装置14の出口側に配管44の一端側が接続され、配管44の他端側に配管43の一端側が接続されている。
【0042】
ワーク2は、本体部4内に設置されるワーク保持治具(図示省略)に保持された状態で、本体部4内を移動する。すなわち、ワーク保持治具は、本体部4内に設置される移動機構(図示省略)に接続されており、本体部4内において少なくとも上下方向および図1の左右方向へ移動する。移動機構はたとえば、図示を省略するモータあるいはシリンダ等の所定の駆動源に接続されている。また、この駆動源は、所定の配線を介して洗浄装置1の制御部(図示省略)に接続されている。
【0043】
(洗浄装置の制御方法)
図2は、図1に示す洗浄装置1の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0044】
以上のように構成された洗浄装置1は以下のように制御されて、ワーク2の洗浄が行われる。なお、以下に示す各ステップは、洗浄装置1の制御部からの制御指令に基づいて自動で行われる。
【0045】
まず、ワーク2の洗浄を行うための初期状態に洗浄装置1を設定する。具体的には、エアポンプ12、第1冷却装置13、第2冷却装置14、ヒータ22およびポンプ30を起動する。また、洗浄装置1の制御部からの制御指令で電磁弁26、37、40を閉状態とし、電磁弁27、36を開状態にする。
【0046】
この初期状態では、開口部15は蓋部材11によって閉鎖されている。また、オーバーフロー槽19から排出される洗浄液は、フィルター31を通過した後、第2洗浄槽17に供給される。さらに、蒸気発生槽5で発生した洗浄液の蒸気は、第2冷却装置14で冷却されて液化された後、第2洗浄槽17に供給される。
【0047】
この初期状態からワーク2の洗浄を開始する。具体的には、図2に示すフローのように、まず、開口部15を塞いでいる蓋部材11を開閉機構によって退避させて開口部15を開放する(ステップS1)。その後、自動あるいは手動で本体部4内のワーク保持治具にワーク2をセットし(すなわち、本体部4内にワーク2を搬入し)、蓋部材11によって開口部15を閉鎖する(ステップS2)。
【0048】
その後、電磁弁40を開状態にして、エアポンプ12で本体部4内を減圧する(ステップS3)。このステップS3では、ワーク2は第1洗浄槽18の上方で待機している。その後、電磁弁40を閉状態にする。また、ワーク2を下降させ、洗浄液で満たされた第1洗浄槽18の中にワーク2を浸漬して、ワーク2の粗洗浄を行う(ステップS4)。具体的には、第1洗浄槽18の中にワーク2を浸漬した後に超音波振動子21を起動して、所定時間、ワーク2の超音波洗浄を行う。
【0049】
その後、ワーク2を第1洗浄槽18から引き上げるとともに、洗浄液で満たされた第2洗浄槽17の中に浸漬して、ワーク2の仕上洗浄を行う(ステップS5)。具体的には、第2洗浄槽17の中にワーク2を浸漬した後に超音波振動子20を起動して、所定時間、ワーク2の超音波洗浄を行う。
【0050】
その後、ワーク2を第2洗浄槽17から引き上げて、蒸気洗浄空間16の、第2洗浄槽17の上方かつシャワー部材8の下方にワーク2を待機させる(ステップS6)。具体的には、ステップS6では、まず、電磁弁37を開状態にしてオーバーフロー槽19より排出される洗浄液をシャワー部材8から噴射させた状態で、第2洗浄槽17の中からワーク2を引き上げる。また、ワーク2を第2洗浄槽17から引き上げた後に、電磁弁37を閉状態にして、シャワー部材8からの洗浄液の噴射を停止する。
【0051】
その後、電磁弁26を開状態にし、蒸気洗浄空間16に洗浄液の蒸気を供給して、蒸気洗浄空間16に配置されたワーク2の蒸気洗浄を行う(ステップS7)。このステップS7では、蒸気洗浄空間16に洗浄液の蒸気が充満して、本体部4内の圧力は大気圧よりも高くなる。なお、このステップS7では、電磁弁27を開状態にしておいても良いし、閉状態にしておいても良い。その後、電磁弁26を閉状態にする。また、ワーク2を冷却器6の内周側まで移動させて、ワーク2の乾燥を行う(ステップS8)。
【0052】
その後、電磁弁40を開状態にして、エアポンプ12で本体部4内を減圧する(ステップS9)。すなわち、エアポンプ12によって蒸気洗浄空間16に充満する洗浄液の蒸気等を吸引して、本体部4内を減圧する。たとえば、ステップS9では、ステップS7で大気圧よりも高くなった本体部4内の圧力を大気圧まで減圧する。このステップS9では、エアポンプ12で吸引された洗浄液の蒸気は、第1冷却装置13で冷却されて液化された後、第2洗浄槽17に供給される。また、ステップS9では、ワーク2は冷却器6の内周側で待機している。
【0053】
その後、電磁弁40を閉状態にする。また、開口部15を塞いでいる蓋部材11を退避させて開口部15を開放し(ステップS10)、自動あるいは手動でワーク2をワーク保持治具から取り外し、本体部4外へ取り出した後(すなわち、ワーク2を搬出した後)、蓋部材11で開口部15を閉鎖して(ステップS11)、ワーク2の洗浄が完了する。
【0054】
なお、本形態では、ステップS2は、蓋部材11で開口部15を閉鎖する閉鎖ステップである。また、ステップS4、S5は、本体部4内に搬入されたワーク2を洗浄槽3に浸漬して洗浄する液体洗浄ステップであり、ステップS7は、蒸気洗浄空間16において、開口部15を閉鎖した状態で洗浄液の蒸気によってワーク2を洗浄する蒸気洗浄ステップである。さらに、ステップS9は、蒸気洗浄後、本体部4内を減圧する減圧ステップであり、ステップS10は、開口部15を閉鎖する蓋部材11を退避させて開口部15を開放する開放ステップである。
【0055】
また、ステップS3は、閉鎖ステップとなるステップS2後、液体洗浄ステップとなるステップS4、S5の前に本体部4内を減圧する初期減圧ステップであり、ステップS6は、ステップS4、S5後、ワーク2の略真上からワーク2に向かって洗浄液を噴射しながら洗浄槽3からワーク2を引き上げる引上げステップである。
【0056】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ステップS7において、蒸気洗浄空間16に配置されたワーク2の蒸気洗浄を行う際には、蓋部材11で開口部15を閉鎖している。また、ワーク2の蒸気洗浄後のステップS9で、エアポンプ12によって本体部4内を減圧しており、ステップS7では、本体部4内を減圧していない。そのため、本形態では、ワーク2の蒸気洗浄時には、蒸気洗浄空間16に洗浄液の蒸気を充満させることができ、効率的にワーク2の蒸気洗浄を行うことが可能になる。
【0057】
また、本形態では、ステップS7での蒸気洗浄時には、蓋部材11が開口部15を閉鎖している。そのため、蒸気洗浄時における本体部4外への洗浄液の蒸散を抑制することができる。また、ステップS10では、エアポンプ12が本体部4内を減圧した後に蓋部材11を退避させて開口部15を開放している。そのため、蒸気洗浄時に蒸気洗浄空間16に洗浄液の蒸気が充満していて本体部4内の圧力が大気圧よりも高くなっている場合であっても、開口部15の開放時には本体部4内は減圧されている。したがって、開口部15を開放してワーク2を搬出する際に、洗浄液が本体部4外へ蒸散するのを抑制することができる。その結果、本形態では、洗浄液の消費量を低減することが可能になる。
【0058】
本形態では、開口部15を閉鎖した後であって、ワーク2の粗洗浄を行う前のステップS3で、本体部4内を減圧している。そのため、開口部15を覆う蓋部材11と本体部4とを密着させることが可能になる。したがって、蒸気洗浄時に、蒸気洗浄空間16に洗浄液の蒸気を確実に充満させることができ、より効率的にワーク2の蒸気洗浄を行うことが可能になる。また、蒸気洗浄時における本体部4外への洗浄液の蒸散を確実に防止することが可能になる。
【0059】
また、ワーク2の粗洗浄を行う前に本体部4内を減圧しているため、洗浄槽3の洗浄液の中に溶存している気体を抜くことができる。すなわち、洗浄液の脱気を行うことができる。したがって、洗浄槽3で超音波洗浄を行う際の超音波の透過率を高めることができ、洗浄槽3でのワーク2の洗浄効果を高めることができる。
【0060】
本形態では、ステップS6で、シャワー部材8を用いてワーク2の略真上からワーク2に向かって洗浄液を噴射しながら第2洗浄槽17からワーク2を引き上げている。そのため、第2洗浄槽17の液面に塵埃が浮遊していて、第2洗浄槽17からワーク2を引き上げる際にワーク2に塵埃が付着する場合であっても、噴射される洗浄液によってワーク2の表面に付着する塵埃を除去することが可能になる。また、ワーク2の略真上から洗浄液が噴射されるため、ワーク2が軽量であっても、第2洗浄槽17から引き上げる際のワーク2の姿勢を一定に保つことが可能になる。
【0061】
本形態では、エアポンプ12の吸引側は、蒸気洗浄空間16に接続されている。そのため、ステップS9で、蒸気洗浄空間16に充満する洗浄液の蒸気を効率良く吸引することができる。したがって、ワーク2を搬出する際に、洗浄液が本体部4外へ蒸散するのを効果的に抑制することができる。
【0062】
本形態では、エアポンプ12の吐出側は配管41を介して第1冷却装置13に接続され、第1冷却装置13は配管42、43を介して第2洗浄槽17に接続されている。すなわち、エアポンプ12の吐出側は、第2洗浄槽17に接続されている。そのため、エアポンプ12で吸引された洗浄液の蒸気を液化して再利用することができ、洗浄液の消費量を低減することができる。
【0063】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0064】
上述した形態では、ワーク2を本体部4内に搬入した後のステップS2で、開口部15を閉鎖している。この他にもたとえば、ステップS4でのワーク2の粗洗浄後、または、ステップS5でのワーク2の仕上洗浄後、あるいは、ステップS6でのワーク2の引上げ後に、開口部15を閉鎖しても良い。このように、ステップS7で蒸気洗浄が行われる前に開口部15を閉鎖すれば、上述した形態と同様に、効率的にワーク2の蒸気洗浄を行うとともに、洗浄液の消費量を低減することが可能になる。なお、この場合には、開口部15を閉鎖した後に、本体部4内を減圧しても良いし、減圧しなくても良い。
【0065】
上述した形態では、ワーク2の乾燥を行った後のステップS9で本体部4内を減圧している。この他にもたとえば、蒸気洗浄後に本体部4内を減圧して、その後、ワーク2の乾燥を行っても良い。すなわち、図2に示すフローにおいて、ステップS8とステップS9との順番を入れ替えても良い。また、蒸気洗浄後に、本体部4内を減圧し、開口部15を開放した後に、ワーク2の乾燥を行っても良い。すなわち、図2に示すフローにおいて、ステップS7の後にステップS9を行い、ステップS8をステップS10の後に行っても良い。
【0066】
上述した形態では、ステップS4での粗洗浄の前に電磁弁40を閉状態としている。この他にもたとえば、ステップS5でのワーク2の仕上洗浄前、または、ステップS6でのワーク2の引上げ前、あるいは、ステップS7でのワーク2の蒸気洗浄前に電磁弁40を閉状態としても良い。
【0067】
上述した形態では、エアポンプ12の吸引側は、蒸気洗浄空間16に接続されている。この他にもたとえば、本体部4の、蒸気洗浄空間16の以外の部分にエアポンプ12の吸引側が接続されても良い。
【0068】
上述した形態では、洗浄槽3は、第2洗浄槽17と第1洗浄槽18との2個の洗浄用の槽を備えている。この他にもたとえば、洗浄槽3が備える洗浄用の槽の数は3個以上であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態にかかる洗浄装置の概略構成を説明するための概略図である。
【図2】図1に示す洗浄装置の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 洗浄装置
2 ワーク(被洗浄物)
3 洗浄槽
4 本体部
5 蒸気発生槽
8 シャワー部材
11 蓋部材
12 エアポンプ(吸引手段)
15 開口部
16 蒸気洗浄空間(蒸気洗浄領域)
S2 閉鎖ステップ
S3 初期減圧ステップ
S4、S5 液体洗浄ステップ
S6 引上げステップ
S7 蒸気洗浄ステップ
S9 減圧ステップ
S10 開放ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を出し入れするための開口部および前記被洗浄物が浸漬される洗浄槽を有する本体部と、前記本体部の内部であって前記洗浄槽の上方に形成される蒸気洗浄領域に前記洗浄液の蒸気を供給する蒸気発生槽と、前記開口部を開放および閉鎖するために開閉する蓋部材と、前記本体部内を減圧するための吸引手段とを備え、
前記蓋部材は、少なくとも前記蒸気洗浄領域での前記被洗浄物の蒸気洗浄時に前記開口部を閉鎖するとともに、少なくとも前記被洗浄物の蒸気洗浄後に前記開口部を開放するために退避し、
前記吸引手段は、前記被洗浄物の蒸気洗浄後、前記蓋部材が退避する前に前記本体部内を減圧することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記吸引手段の吸引側は、前記蒸気洗浄領域に接続されていることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記吸引手段の排出側は、前記洗浄槽に接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄槽からの前記被洗浄物の引上げ方向と逆の方向に、かつ、前記被洗浄物に向かって前記洗浄液を噴射するシャワー部材を前記洗浄槽の上方に備えることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の洗浄装置。
【請求項5】
被洗浄物を出し入れするための開口部および前記被洗浄物が浸漬される洗浄槽を有する本体部と、前記開口部を開放および閉鎖するために開閉する蓋部材とを備える洗浄装置の制御方法であって、
前記開口部から前記本体部内に前記被洗浄物が搬入された後、前記蓋部材で前記開口部を閉鎖する閉鎖ステップと、
前記本体部内に搬入された前記被洗浄物を前記洗浄槽に浸漬して洗浄する液体洗浄ステップと、
前記本体部内であって前記洗浄槽の上方に形成される蒸気洗浄領域で、前記開口部を閉鎖した状態で、洗浄液の蒸気によって前記被洗浄物を洗浄する蒸気洗浄ステップと、
前記蒸気洗浄ステップ後、前記本体部内を減圧する減圧ステップと、
前記減圧ステップ後、前記開口部を閉鎖する前記蓋部材を退避させて前記開口部を開放する開放ステップとを備えることを特徴とする洗浄装置の制御方法。
【請求項6】
前記閉鎖ステップ後、前記液体洗浄ステップ前に前記本体部内を減圧する初期減圧ステップを備えることを特徴とする請求項5記載の洗浄装置の制御方法。
【請求項7】
前記液体洗浄ステップ後、前記被洗浄物の略真上から前記被洗浄物に向かって前記洗浄液を噴射しながら前記洗浄槽から前記被洗浄物を引き上げる引上げステップを備えることを特徴とする請求項5または6記載の洗浄装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−119392(P2009−119392A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297494(P2007−297494)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】