説明

洗浄装置及びオゾン水生成装置

【課題】オゾン水による効率的な洗浄を可能とする洗浄装置、及びそのような洗浄装置に用いることができるオゾン水生成装置を提供する。
【解決手段】電子部品洗浄装置1は、オゾンガスを濃縮するオゾンガス濃縮部30と、オゾンガス濃縮部30で得られた濃縮オゾンガスを水に溶解させてオゾン水を得るオゾンガス溶解部50と、オゾンガス溶解部50で得られたオゾン水で電子部品を洗浄する洗浄部70と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子部品の洗浄に好適に利用される洗浄装置、及び洗浄装置に用いられるオゾン水生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のオゾン水製造装置が知られている。この装置は、放電型オゾン発生機で発生させた加圧状態のオゾンガスを、テフロン(登録商標)製多孔質中空糸膜を介して被処理水に溶解させてオゾン水を生成するものである。この装置では、中空糸膜の上流に中空糸内側の水圧を該オゾンガス圧より高く維持し、その水圧及び流量を制御する無段階可変速制御方式のポンプを設けると共に、処理水中のオゾン濃度をオゾンガス濃度により制御する制御機構を設けたものであり、上記無段階可変速制御方式のポンプの制御は、中空糸膜上流に流量計及び圧力計を設け、これらからの出力信号値を演算回路で処理して行う。また、前記水圧は、オゾンガス圧より高くするのがよいとされている。このようなオゾン水製造装置において、オゾン水の濃度を高くすることを望む場合には、飽和溶解オゾン濃度を上げるべく、水に接触するオゾンガス圧を高くするといった方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−196879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このオゾン水を半導体や液晶などの電子部品の洗浄に用いる場合、オゾンガス圧を高くすることでオゾン水の濃度を上げると、加圧されたオゾン水が洗浄ノズルから排出され大気に開放されたときに飽和溶解オゾン濃度が低下し、オゾン水中のオゾンが大気中に逃げてしまう。その結果、オゾン水が洗浄対象物の表面に到達したときには濃度が低下しており、洗浄効率が悪いといった問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み、本発明は、オゾン水による効率的な洗浄を可能とする洗浄装置、及びそのような洗浄装置に用いることができるオゾン水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗浄装置は、オゾンガスを濃縮するオゾンガス濃縮部と、オゾンガス濃縮部で得られた濃縮オゾンガスを水に溶解させてオゾン水を得るオゾンガス溶解部と、オゾンガス溶解部で得られたオゾン水で対象物を洗浄する洗浄部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この装置では、オゾンガス濃縮部によって濃縮オゾンガスが得られ、この濃縮オゾンガスをオゾン溶解部で水に溶解させてオゾン水を得ている。このように、オゾンガスを濃縮して水に溶解させることにより、オゾンガスの圧力が比較的低い状態でも、高濃度のオゾン水が得やすい。そして、水に溶解させるときのオゾンガスの圧力が比較的低いことから、オゾン水が大気に開放されたときにも、オゾン水中から大気中に逃げるオゾンの量が少なく抑えられる。従って、洗浄部において、例えば、オゾン水が洗浄ノズル等から噴射される場合に、対象物の表面に到達するオゾン水の濃度を比較的高く保つことができ、洗浄効率を向上することができる。
【0008】
また、オゾンガス溶解部は、オゾン水のオゾン濃度に基づいて、水に溶解させる濃縮オゾンガスの圧力を制御する溶解ガス圧力制御手段を有することとしてもよい。溶解ガス圧力制御手段が、水に溶解させる濃縮オゾンガスの圧力を調整することにより、飽和溶解オゾン濃度が変化し、得られるオゾン水の濃度が調整される。従って、溶解ガス圧力制御手段は、オゾン水の濃度を監視しながら濃縮オゾンガスの圧力を調整する制御により、オゾン水の濃度を安定させることができる。
【0009】
また、オゾンガス溶解部は、濃縮オゾンガスの圧力を低下させる排ガスポンプを有することとしてもよい。濃縮オゾンガスの濃度によっては、オゾンの急激な分解を確実に防止し安全性を確保するために、水に溶解させる濃縮オゾンガスの圧力を大気圧よりも低くしなければならない場合もある。このオゾンガス溶解部の排ガスポンプによれば、水に溶解させる濃縮オゾンガスの圧力を大気圧よりも低くする対応が可能になり、オゾンガス溶解部における安全性を確保することができる。
【0010】
また、本発明の洗浄装置は、オゾンガス溶解部に供給される濃縮オゾンガスに希釈用の酸素ガスを加える希釈ガス供給部と、濃縮オゾンガスに加える酸素ガスの流量を、オゾンガス溶解部における濃縮オゾンガスの圧力に基づいて制御する希釈ガス流量制御部と、を更に備えることとしてもよい。
【0011】
洗浄に要求されるオゾン水の濃度が高くなった場合、それに伴って濃縮オゾンガスの圧力を高くするものとすれば、結局、大気に開放されたときにオゾン水中から大気中に逃げるオゾンの量が多くなり、対象物の表面に到達するオゾン水の濃度が低下してしまう。ところが、この洗浄装置の構成によれば、希釈用の酸素ガスの流量によって、オゾンガス溶解部に供給される濃縮オゾンガスの濃度を調整することができる。従って、オゾンガス溶解部における濃縮オゾンガスの圧力が所定よりも高い場合には、濃縮オゾンガスの圧力を更に上げることなく、希釈用の酸素ガスの流量を絞ることによって、洗浄に要求されるオゾン水の濃度を確保することができる。
【0012】
また、具体的には、本発明の洗浄装置は、オゾンガス溶解部を複数備えており、オゾンガス濃縮部は、複数のオゾンガス溶解部に対して濃縮オゾンガスを供給することとしてもよい。
【0013】
またこの場合、複数のオゾンガス溶解部の各々に濃縮オゾンガスを供給する各々の濃縮オゾンガス供給ライン上には、それぞれ、オゾンガス溶解部側の濃縮オゾンガスの圧力を調整する圧力調整手段と、オゾンガス溶解部側の濃縮オゾンガスの流量を調整する流量調整手段と、が設けられていることとしてもよい。オゾンガス溶解部が複数ある場合に、濃縮オゾンガス供給ライン上のそれぞれの圧力調整手段と流量調整手段とによって、各々のオゾンガス溶解部が安定した量のオゾンガスの供給を受けることができる。
【0014】
また、複数の圧力調整手段及び流量調整手段よりも上流側に、オゾンガス濃縮部から供給される濃縮オゾンガスの圧力を調整する供給圧力調整手段が設けられていることとしてもよい。この構成によれば、圧力調整手段及び流量調整手段の上流側における濃縮オゾンガスの圧力を、下流側よりもある程度高い圧力で安定させることができる。従って、複数のオゾンガス溶解部のそれぞれに、要求に係る圧力の濃縮オゾンガスを安定供給することができる。また、圧力調整手段及び流量調整手段の上流側の濃縮オゾンガスの圧力が過剰に高くならないように、供給圧力調整手段によって調整することができる。
【0015】
また、本発明のオゾン水生成装置は、オゾンガスを濃縮するオゾンガス濃縮部と、オゾンガス濃縮部で得られた濃縮オゾンガスを水に溶解させてオゾン水を得るオゾンガス溶解部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この装置では、オゾンガス濃縮部によって濃縮オゾンガスが得られ、この濃縮オゾンガスをオゾン溶解部で水に溶解させてオゾン水を得ている。このように、オゾンガスを濃縮して水に溶解させることにより、オゾンガスの圧力が比較的低い状態でも、高濃度のオゾン水が得られる。そして、水に溶解させるときのオゾンガスの圧力が比較的低いことから、オゾン水が大気に開放されたときにも、オゾン水中から大気中に逃げるオゾンの量が少なく抑えられる。従って、例えば、このオゾン水が洗浄ノズル等から噴射され対象物の洗浄に用いられる場合に、対象物の表面に到達するオゾン水の濃度を比較的高く保つことができ、洗浄効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オゾン水による効率的な洗浄を可能とする洗浄装置、及びそのような洗浄装置に用いることができるオゾン水生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電子部品洗浄装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1における電子部品洗浄装置の濃縮部を詳細に示すブロック図である。
【図3】図1における電子部品洗浄装置の溶解部を詳細に示すブロック図である。
【図4】本発明に係る電子部品洗浄装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【図5】図4における電子部品洗浄装置の溶解部及び洗浄部近傍を詳細に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る洗浄装置及びオゾン水生成装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1に示されるように、電子部品洗浄装置1は、オゾンガス生成装置73を用いて高濃度オゾンガスを生成し、この高濃度のオゾンガスから生成した高濃度のオゾン水を半導体ウエハ、液晶、太陽電池、有機EL、プリント基板などの電子部品の表面に向けて噴射して洗浄する装置である。オゾンガス生成装置73は、オゾンガスを発生させるオゾナイザ10と、オゾナイザ10で発生したオゾン含有ガスを濃縮する濃縮部30と、を備えている。更に電子部品洗浄装置1のオゾン水生成装置71は、濃縮オゾンガスを生成するオゾンガス生成装置73と、このオゾンガスを超純水に溶解させて高濃度オゾン水を生成する溶解部50と、を備えている。そして、電子部品洗浄装置1は、このオゾン水生成装置71と、オゾン水生成装置71で得られた高濃度オゾン水で電子部品の表面を洗浄する洗浄部70と、を備えている。
【0021】
電子部品洗浄装置1は、酸素タンク3と、窒素タンク5とを備えている。オゾナイザ10には、酸素タンク3からラインL1を通じて酸素が供給される。また、ラインL1には、窒素タンク5からの窒素ガス供給ラインが合流しており、酸素ガスに微量の窒素ガスが混入されてオゾナイザ10に導入される。オゾナイザ10は、酸素ガスを原料として放電方式によりオゾンガスを生成する。このオゾナイザ10では、10vol%程度の比較的低濃度のオゾンガス(約90vol%の酸素ガスと約10vol%のオゾンガスとの混合気体)が生成する。また、原料の酸素ガスに微量混入された窒素ガスに起因して、オゾナイザ10で生成されたオゾンガス(以下、「非濃縮オゾンガス」という)には微量の窒素酸化物(NOx)ガスが含まれる。オゾナイザ10から送出される非濃縮オゾンガスは、ラインL2を通じて濃縮部30に導入される。
【0022】
濃縮部30は、オゾナイザ10で生成される非濃縮オゾンガスを濃縮し、ほぼ100vol%の高濃度のオゾンガスを生成するものである。図2にも示すように、濃縮部30は、真空断熱チャンバ31内に設けられたNOx除去部32と、ガス冷却部33と、分離タンク34と、気化器35と、熱交換部36と、を備えている。チャンバ31は、排気ポンプ37によって真空引きされる。
【0023】
ラインL2からの非濃縮オゾンガスは、濃縮部30のNOx除去部32に導入される。NOx除去部32は、導入された非濃縮オゾンガスを、NOxの凝固点以下にまで冷却して、NOxを固化させて捕捉し、非濃縮オゾンガスから分離除去する。NOxよりも凝固点が低い酸素及びオゾンは、気体の状態でNOx除去部32を通過し、ラインL31を通じてガス冷却部33に導入される。一方、NOx除去部32で捕捉されたNOxは、NOx除去部32の清掃運転時に昇温されて再び気化し、必要に応じてパージガス(例えば、酸素、窒素または非濃縮オゾンガスなど)に追い出されるようにしてラインL21を通じ、排ガスラインL20に排出される。なお、ラインL31とラインL21の流路の切り替えは、運転状態に合わせて適宜に実行される。
【0024】
ガス冷却部33では、NOx除去後の非濃縮オゾンガスを、オゾンの沸点以下にまで冷却して、オゾンを液化させる。この液体オゾンは、ラインL32を通じて分離タンク34に導入され、当該分離タンク34の下部に溜まる。一方、オゾンよりも沸点が低い酸素等は、気体の状態でガス冷却部33及びラインL32を通過し、分離タンク34の上部に溜まる。分離タンク34上部に溜まる気体は、主に酸素であり、ラインL33を通じて分離タンク34外に送出される。
【0025】
前述のとおり、NOx除去部32とガス冷却部33においては、非濃縮オゾンガスの冷却のための低熱源が必要である。この濃縮部30では、極低温の低熱源としてクライオポンプ38を備えている。クライオポンプ38のクライオヘッド38aは、チャンバ31内部に挿入されており、クライオヘッド38aとNOx除去部32とが伝熱銅板39aで接続されている。また、クライオヘッド38aとガス冷却部33とが伝熱銅板39bで接続されている。この構成により、NOx除去部32とガス冷却部33とを、極低温に冷却することが可能となり、前述のNOx除去及びオゾン液化が実現される。
【0026】
分離タンク34の底部には、U字管41の一端が接続されている。このU字管41の他端は、気化器35の底部に接続されている。そして、分離タンク34内に溜まった液体オゾンは、U字管41内にも充填される。U字管41は、分離タンク34内の液体オゾンを気化器35に導くためのものであると共に、当該液体オゾンによって分離タンク34上部に溜まる酸素ガスと気化器35側とを液封するものである。
【0027】
このU字管41内には、毛細管力を発現し、U字管41内の液体オゾンを気化器35内に導く充填材41aが充填されている。ここでは、充填材41aは金網状のものが用いられ、毛細管力を発現すべく密に構成されていると共に、気化器35の底部の入口35aを通して気化器35内に進入する構成とされている。この構成により、U字管41内の液体オゾンは、入口35aを通じて気化器35内に徐々に導入されていく。なお、この充填材41aとしては、金網状の充填材に限定されるものではなく、例えば密に配置される細い金属材料やガラス繊維、例えば多数配置される細かいシリカゲルやポーラスシリカ等であっても良く、要は、毛細管力を発現する充填材であればよい。
【0028】
気化器35は、U字管41からの液体オゾンを気化するためのもので、円筒状の胴部を有し、下部が下細りの擂り鉢状に閉じられて下端に入口35aが設けられていると共に、上端にオゾンガス出口35bが設けられている。この気化器35の入口35aは、分離タンク34における液体オゾンの液面以上の高さに位置する。この入口35aを通して内部に進入する金網状の充填材41aは、液体オゾンを毛細管力により気化器35内に送り込むべく、当該気化器35の底部内面に沿って広がるように配置されている。
【0029】
気化器35内部に進入した充填材41aの上方には、加熱用のヒータ35cが設けられている。ヒータ35cは、気化器35の底部に供される液体オゾンを加熱して気化させる。前述のとおり、気化器35内には、酸素が分離除去された液体オゾンが導入されるので、気化器35内で気化されるオゾンは、ほぼ100vol%の濃度である。また、気化器35には、ラインL12を介して、酸素タンク3からの酸素が希釈用酸素ガスとして導入される。液体オゾンの気化で得られたほぼ濃度100vol%のオゾンは、ラインL12からの希釈用酸素ガスによって気化器35上部で適宜希釈され、オゾンガス出口35b及びラインL3を通じて、濃縮オゾンガスとして送出される。このラインL3の濃縮オゾンガスは、溶解部50に導入される。また、この濃縮オゾンガスの一部の余剰分は、ラインL3から分岐したラインL25を通じて排ガスラインL20に排出される。また、ラインL3には、酸素タンク3からのラインL13も合流しており、ラインL3の濃縮オゾンガスは、ラインL13からの酸素ガスで適宜希釈されて、溶解部50に導入される
【0030】
なお、ラインL12は、気化器35よりも上流側で熱交換部36を通過している。熱交換部36では、分離タンク34からラインL33を通じて排出される排酸素ガスとラインL12の希釈用酸素ガスとの熱交換が行われる。これにより、希釈用酸素ガスは、熱交換部36で冷却され温度調整された後に気化器35内に導入される。また排酸素ガスは、熱交換部36から、ラインL23を通じて排ガスラインL20に排出される。
【0031】
図1に示すように、溶解部50は、ラインL3から導入される濃縮オゾンガスとラインL11から導入される超純水とを接触させる溶解モジュールを備えている。溶解モジュールとは、高分子膜、エジェクタ、マイクロリアクタなどオゾンガスを水に溶解させる装置をいう。溶解モジュールにおいては、超純水に濃縮オゾンガスが溶解し、高濃度のオゾン水が生成される。なお、超純水に溶解されなかった余剰の濃縮オゾンガスは、ガスラインL27を通じて排ガスラインL20に排出される。一方、オゾン水は、ラインL4を通じて洗浄部70に導入される。
【0032】
洗浄部70は、ラインL4から導入したオゾン水を、ノズルから半導体ウエハ、液晶、太陽電池、有機EL、プリント基板などの電子部品の表面に向けて噴射する。このようなオゾン水の噴射によって、電子部品の表面に形成されたレジストが洗浄除去される。すなわち、洗浄部70は、電子部品のレジスト除去の用途で用いられる。
【0033】
なお、前述のように、電子部品洗浄装置1の各部で発生する不要なガス(ラインL21の排NOxガス、ラインL23の排酸素ガス、ラインL25の排オゾンガス、及びL27の排オゾンガス)は、すべて合流して排ガスラインL20を通過する。そして、このラインL20の不要ガスは、触媒分解装置7と排気ガス冷却器8とを通過し、排気ポンプ9によって系外に排出される。触媒分解装置7は、不要ガスを例えば活性炭などの触媒と接触させることにより、不要ガス中のオゾンガスを比較的無害な酸素ガスに分解する。排気ガス冷却器8は、不要ガスを大気に排出する前に当該不要ガスを常温まで冷却する。
【0034】
続いて、溶解部50について、図3を参照しながら更に詳細に説明する。
【0035】
図3に示すように、溶解部50には、超純水がラインL11を通じて導入されると共に、酸素ガスで希釈されたオゾンガスがラインL3を通じて導入される。溶解部50は、導入されたオゾンガス(以下「導入オゾンガス」という)と超純水と導入して両者を接触させる溶解モジュール51を有している。以下では、高分子膜を備えたタイプの溶解モジュール51を採用する場合を例として説明する。このタイプの溶解モジュール51は、中空糸膜の構造をなす溶解膜を有しており、この溶解膜の内側に超純水を流通させ、溶解膜の外側に導入オゾンガスを流通させる。この構成により、導入オゾンガスと超純水とが溶解膜を介して接触し、導入オゾンガスが溶解膜を通過して超純水に溶解することで、オゾン水が生成される。溶解モジュール51で生成されたオゾン水は、ラインL4を通じて洗浄部70に送出される。導入オゾンガスのうち超純水に溶解しきれなかった余剰分は、ラインL27を通じて溶解モジュール51から排出され、不要ガスとしてラインL20に排出される。なお、このような溶解膜の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン等が好適に用いられる。
【0036】
ここで、この溶解部50から送出されるオゾン水の濃度は、洗浄部70で要求される濃度に合わせて制御する必要がある。そこで、溶解部50は、ラインL27の開度調整により溶解モジュール51における導入オゾンガスの圧力を調整するバルブ(溶解ガス圧力制御手段)53を有している。このバルブ53の開度を小さくするほど、溶解モジュール51で超純水に接触する導入オゾンガスの圧力(以下「溶解圧力」という)が上昇する。その結果、ヘンリーの法則に従って飽和溶解オゾン濃度が上昇するので、溶解モジュール51で生成されるオゾン水の濃度が上昇し、ラインL4のオゾン水の濃度が上昇する。同様に、バルブ53の開度を大きくするほど、ラインL4のオゾン水の濃度が低下する。
【0037】
更に溶解部50は、ラインL4を流通するオゾン水の濃度を測定するオゾン水濃度計52と、オゾン水濃度計52で得られるオゾン水濃度測定値に基づいて、バルブ53の開度を調整するバルブ制御部(溶解ガス圧力制御手段)54を備えている。すなわち、バルブ制御部54は、例えば、オゾン水濃度計52の測定値が目標濃度よりも高い場合にはバルブ53の開度を大きくして溶解圧力を下げ、オゾン水濃度計52の測定値が目標濃度よりも低い場合にはバルブ53の開度を小さくして溶解圧力を上げる操作を行う。このように、バルブ制御部54が、ラインL4のオゾン水の濃度を監視しながらフィードバック制御することで、ラインL4からは目標濃度のオゾン水が安定して供給される。
【0038】
また、オゾン水の目標濃度が高くなると、それに応じて溶解圧力も高くする必要がある。ところが、溶解圧力を高くすることでオゾン水の濃度を上げようとすると、加圧されたオゾン水が洗浄部70の洗浄ノズルから排出され大気に開放されたときに飽和溶解オゾン濃度が低下し、オゾン水中のオゾンが大気中に逃げてしまう。その結果、オゾン水が電子部品の表面に到達したときには濃度が低下してしまい、洗浄効率が低下するといった問題が生じる。
【0039】
そこで、この電子部品洗浄装置1では、溶解圧力が所定の規定値を超えないように制御する制御手段が設けられている。具体的には、希釈用酸素ガスのラインL13上に、希釈用酸素ガスの流量調整を行う流量制御装置(希釈ガス流量制御手段)81が設けられると共に、当該流量制御装置81に設定流量を付与する希釈ガス流量制御部(希釈ガス流量制御手段)82が設けられている。この流量制御装置81の設定流量を小さくするほど、ラインL13からラインL3に合流する希釈用酸素ガスが少なくなるので、ラインL3で溶解モジュール51に導入される導入オゾンガスの濃度が上昇する。その結果、超純水に接触する導入オゾンガスの濃度が上昇する。ここで、水の飽和溶解オゾン濃度Cは、下式(1)で表される。
C=m・P …(1)
但し、
mは分配係数;m=-0.0120・θ+0.533
Pは水に接触するオゾンガスの濃度(mg/l)
【0040】
従って、流量制御装置81の設定流量を小さくするほど、溶解モジュール51に導入される導入オゾンガスの濃度が上昇し、それにより、式(1)から理解されるように飽和溶解オゾン濃度が上昇し、その結果、ラインL4のオゾン水の濃度が上昇する。また、同様に、流量制御装置81の設定流量を大きくするほど、ラインL4のオゾン水の濃度が低下する。
【0041】
更に、ラインL27上には溶解圧力を測定する圧力計(希釈ガス流量制御手段)83が設けられている。そして、希釈ガス流量制御部82は、圧力計83で得られる溶解圧力の測定値に基づいて、流量制御装置81に付与する設定流量を調整する。すなわち、希釈ガス流量制御部82は、例えば、圧力計83による溶解圧力の測定値が規定値を超えた場合には、流量制御装置81に付与する設定流量を小さくする操作を行う。なお、上記の規定値とは、洗浄部70における洗浄効率の悪化が許容されるような溶解圧力の上限値として予め定められる。例えば、この規定値は150kPaである。このように、流量制御装置81の設定流量を小さくすることで、規定値以下の比較的大気圧に近い溶解圧力を維持しながら、ラインL4のオゾン水の濃度を上昇させることができる。従って、洗浄部70において洗浄効率が悪化するといった前述の問題を抑えることができ、良好な洗浄効率を得ることができる。
【0042】
なお、このような制御を行うためには、溶解部50への導入前に、オゾンガスを希釈用酸素ガスで希釈することを前提としなければならない。電子部品洗浄装置1は、溶解部50の前段に、オゾンガスを濃縮する濃縮部30を備えているので、高濃度のオゾンガスを溶解部50に送り込むことも可能となる。そして、このオゾンガスを酸素ガスで希釈することを前提としながらも、十分な濃度の導入オゾンガスを溶解部50に導入することができる。
【0043】
また、濃縮部30で濃縮された濃度が高い導入オゾンガスを用いることにより、前述の規定値(例えば、150kPa)以下といったような比較的大気圧に近い溶解圧力でも、電子部品洗浄に必要とされるオゾン水の濃度を十分に確保することができる。従って、大気圧解放後にオゾン水から大気中に逃げてしまうオゾンの量が抑えられ、洗浄効率を向上することができる。
【0044】
また、このような高濃度のオゾンガスを取り扱う場合には、オゾンの急激な分解を確実に防止するために、溶解部50における溶解圧力を低くしておく必要がある。特に、導入オゾンガスの濃度によっては、安全性確保のために溶解圧力を大気圧よりも低くしなければならない場合もある。そこで、溶解部50は、ラインL27上でバルブ53よりも下流側に設けられた排ガスポンプ56を有している。この排ガスポンプ56によれば、溶解モジュール51における導入オゾンガスの溶解圧力を大気圧よりも低くする対応が可能になり、溶解部50における安全性を確保することができる。
【0045】
(第2実施形態)
【0046】
続いて、図4及び図5を参照しながら本発明に係る電子部品洗浄装置の第2実施形態について説明する。図4及び図5に示す電子部品洗浄装置101は、特に、2つの溶解部50A,50Bと2つの洗浄部70A,70Bとを備える点において前述の電子部品洗浄装置1とは異なる。溶解部50Aは洗浄部70Aにオゾン水を供給し、溶解部50Bは洗浄部70Bにオゾン水を供給する。導入オゾンガスを供給するラインL3は、2つのラインL103A,103Bに分岐しており、ラインL103Aは溶解部50Aに、ラインL103Bは溶解部50Bに、導入オゾンガスを供給する。また、ラインL103A,103Bの分岐点の上流側において、ラインL3からラインL29が分岐しており、このラインL29は、排ガスラインL20に合流している。ラインL3の導入オゾンガスのうち一部の余剰なガスが、当該ラインL29を通じて、排ガスラインL20に排出される。
【0047】
2つの洗浄部70A,70Bでは、互いに異なる洗浄条件でそれぞれ電子部品洗浄を行うことができる。従って、洗浄部70A,70Bの洗浄条件にそれぞれ対応すべく、溶解部50A,50Bは、互いに異なる流量・濃度でオゾン水を供給する必要があると共に、洗浄条件の変動に応じて各溶解部50A,50Bへのオゾン水の流量・濃度を変動させる場合もある。よって、分岐ラインL103A,103Bを通じて各溶解部50A、50Bに送り込むべきオゾンガスの量も変動する場合がある。ところが、濃縮部30で生成されるオゾンガス量は、変動に急激に追従できないので、各溶解部50A,50Bで生成されるオゾン水の濃度が不安定になるおそれもある。
【0048】
そこで、このような溶解部50A,50Bにおけるオゾン濃度の変動を抑制すべく、図5に詳細に示すように、分岐ラインL103A上に、下流側の導入オゾンガスの圧力を一定化する減圧弁(圧力調整手段)85A、及び下流側の導入オゾンガスの流量を一定化する流量制御装置(流量調整手段)86Aが設けられており、分岐ラインL103B上にも、同様の減圧弁85B及び流量制御装置86Bが設けられている。このような減圧弁85A,85Bと流量制御装置86A,86Bとを設けることにより、各溶解部50A、50Bに対して安定した圧力及び量で導入オゾンガスを供給することができ、各溶解部50A、50Bにおいては安定してオゾン水が生成される。
【0049】
また、ラインL29上には、圧力調整装置(供給圧力調整手段)87が設けられ、ラインL3における導入オゾンガスの圧力を安定させる。従って、減圧弁85A,85B及び流量制御装置86A,86Bよりも上流側における導入オゾンガスの圧力を安定させ、下流側における導入オゾンガスの圧力よりも高い圧力とすることができる。よって、減圧弁85A,85Bが正しく作動し、2つの溶解部50A,50Bのそれぞれに、要求に係る圧力の導入オゾンガスを安定供給することができる。また、減圧弁85A,85B及び流量制御装置86A,86Bよりも上流側における導入オゾンガスの圧力が過剰に高くならないように、圧力調整装置87によって調整することができる。圧力調整装置87は、例えば、開度調整可能なバルブ87aと、当該バルブ87aを制御するPIC87bと、で構成される。
【0050】
本発明は、上述の第1及び第2実施形態に限定されるものではない。例えば、オゾンガスを濃縮する濃縮部としては、実施形態のような液化方式には限られず、吸着方式の濃縮部であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,101…電子部品洗浄装置、3…酸素タンク、30…濃縮部(オゾンガス濃縮部)、50,50A,50B…溶解部(オゾンガス溶解部)、52…オゾン水濃度計、53…バルブ(溶解ガス圧力制御手段)、54…バルブ制御部(溶解ガス圧力制御手段)、56…排ガスポンプ、70,70A,70B…洗浄部、81…流量制御装置(希釈ガス流量制御手段)、82…希釈ガス流量制御部(希釈ガス流量制御手段)、83…圧力計(希釈ガス流量制御手段)、85A,85B…圧力調整手段、86A,86B…流量調整手段、87…供給圧力制御手段、L13…ライン(希釈ガス供給部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンガスを濃縮するオゾンガス濃縮部と、
前記オゾンガス濃縮部で得られた濃縮オゾンガスを水に溶解させてオゾン水を得るオゾンガス溶解部と、
前記オゾンガス溶解部で得られたオゾン水で対象物を洗浄する洗浄部と、を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記オゾンガス溶解部は、
前記オゾン水のオゾン濃度に基づいて、前記水に溶解させる前記濃縮オゾンガスの圧力を制御する溶解ガス圧力制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記オゾンガス溶解部は、
前記濃縮オゾンガスの圧力を低下させる排ガスポンプを有することを特徴とする請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記オゾンガス溶解部に供給される前記濃縮オゾンガスに希釈用の酸素ガスを加える希釈ガス供給部と、
前記濃縮オゾンガスに加える前記酸素ガスの流量を、前記オゾンガス溶解部における前記濃縮オゾンガスの圧力に基づいて制御する希釈ガス流量制御部と、を更に備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記オゾンガス溶解部を複数備えており、
前記オゾンガス濃縮部は、
複数の前記オゾンガス溶解部に対して前記濃縮オゾンガスを供給することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
複数の前記オゾンガス溶解部の各々に前記濃縮オゾンガスを供給する各々の濃縮オゾンガス供給ライン上には、それぞれ、
前記オゾンガス溶解部側の前記濃縮オゾンガスの圧力を調整する圧力調整手段と、
前記オゾンガス溶解部側の前記濃縮オゾンガスの流量を調整する流量調整手段と、
が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項7】
複数の前記圧力調整手段及び前記流量調整手段よりも上流側に、前記オゾンガス濃縮部から供給される前記濃縮オゾンガスの圧力を調整する供給圧力調整手段が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の洗浄装置。
【請求項8】
オゾンガスを濃縮するオゾンガス濃縮部と、
前記オゾンガス濃縮部で得られた濃縮オゾンガスを水に溶解させてオゾン水を得るオゾンガス溶解部と、を備えたことを特徴とするオゾン水生成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−136286(P2011−136286A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297866(P2009−297866)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】