説明

洗浄装置

【課題】省スペース化を図ることができ、以って作業者単独によるワーク搬入出作業を軽減することの可能な洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄槽と、洗浄前のワークを収容するワーク搬送治具を略垂直姿勢で滞留させる入口バッファと、洗浄後のワークを収容するワーク搬送治具を略垂直姿勢で滞留させる出口バッファと、前記ワーク搬送治具を略垂直姿勢で入口バッファから洗浄槽へ搬送し、洗浄後に洗浄槽から出口バッファへ搬送する搬送装置とを具備する洗浄装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プリント基板は、エッチング処理等の化学処理によってパターン配線を形成し、このパターン配線によって複数の電子部品を相互接続することによって所望の電子回路を基板上に構成するものである。このようなプリント基板は、複数の製造工程を経て製造されるが、製造工程の1つに、穴あけ加工及びめっき処理からなるスルーホール形成工程を経た基板の表面を専用の基板洗浄装置によって洗浄する洗浄工程がある。下記非特許文献1には、このようなプリント基板の製造工程に供される基板洗浄装置の一例が開示されている。
【0003】
前記製造工程では、一般的に定形サイズの板から複数枚同時に製造し、出荷前に実装する形状にルーターやシャーリング等で分割加工が行われる。この加工時に発生した切粉等を基板の表面から洗浄する工程が行われている。
外形加工洗浄機では、種々の寸法のプリント基板が流れるため、これらの基板は一般的にローラーやネットコンベア等の搬送装置を用いて水平搬送中に水洗、乾燥(水切り)処理が行われている。プリント基板の進行方向に対して水洗ゾーンでは、スプレーノズルが複数段上下に、また乾燥ゾーンではブロアノズルが複数段上下に配置されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.yamagata-kikai.co.jp/wash/index.html?lid=509[2010/01/19 13:46:15]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の基板洗浄装置は、水平搬送方式が採用されているため水洗ゾーン、乾燥ゾーンともスプレーノズル、ブロアノズルが複数配置されていることから、装置全体として構造が大型化して占有床面積が大きくなる。また、従来の基板洗浄装置では、ローダーやアンローダーを使用せずに作業者が単独でプリント基板の搬入出作業を行うケースが多く、基板洗浄装置の占有床面積が大きいと作業領域が広くなり負担増となる問題がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、省スペース化を図り、以って作業者単独によるワーク搬入出作業を軽減することの可能な洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、洗浄装置に係る第1の解決手段として、洗浄槽と、洗浄前のワークを収容するワーク搬送治具を略垂直姿勢で滞留させる入口バッファと、洗浄後のワークを収容するワーク搬送治具を略垂直姿勢で滞留させる出口バッファと、前記ワーク搬送治具を略垂直姿勢で入口バッファから洗浄槽へ搬送し、洗浄後に洗浄槽から出口バッファへ搬送する搬送装置とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、洗浄装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記ワーク搬送治具は、前記入口バッファ及び出口バッファに対して略垂直姿勢での載置を可能とする載置部を有し、前記入口バッファ及び出口バッファは、前記載置部を利用して略垂直姿勢で載置されたワーク搬送治具を略垂直姿勢を維持したまま下流側へ順次搬送して滞留させる機構を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、洗浄装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記ワーク搬送治具は、前記搬送装置による略垂直姿勢での搬送を可能とする、断面形状がV字形状の鉤受け部を有し、前記搬送装置は、前記ワーク搬送治具の鉤受け部に掛止されると共に当該鉤受け部のV字部分より長さが短いV字形状の鉤部を有しており、当該鉤部の位置制御によって前記ワーク搬送治具の略垂直姿勢での搬送を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明では、洗浄装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記ワーク搬送治具の鉤受け部には切り欠きが設けられており、前記出口バッファは、前記搬送装置によって略垂直姿勢で載置されたワーク搬送治具を略垂直姿勢を維持したまま下流側へ順次搬送し、該下流側に設置された治具保持部材を前記鉤受け部によって囲まれた空間に挿入させることで、前記ワーク搬送治具を前記治具保持部材に略垂直姿勢で滞留させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、洗浄装置に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、前記ワーク搬送治具は、作業者による持ち運びを可能とする取っ手を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明では、洗浄装置に係る第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、乾燥槽をさらに具備し、前記搬送装置は、前記ワーク搬送治具を略垂直姿勢で入口バッファから洗浄槽へ搬送し、洗浄後に洗浄槽から乾燥槽へ搬送し、乾燥後に乾燥槽から出口バッファへ搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一般的なローラーやネットコンベア等の搬送装置を利用してワークの搬送を行う場合と比較して、各種サイズのワークを略垂直姿勢で(吊り下げ状態で)収容して搬送しながら洗浄することができる。従って、本発明によれば、洗浄装置の占有床面積を省スペース化することができ、以って作業者単独によるワーク(ワーク搬送治具)の搬入出作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態におけるハンガーH(ワーク搬送治具)の正面図(a)及び側面図(b)である。
【図2】本実施形態におけるハンガーHの開閉動作を示す側面図である。
【図3】本実施形態における洗浄装置Cの側面図である。
【図4】本実施形態における洗浄装置Cの正面図である。
【図5】本実施形態における洗浄装置Cの入口バッファ3の詳細構成図である。
【図6】本実施形態における洗浄装置Cの出口バッファ4の詳細構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
〔ワーク搬送治具〕
まず、基板等のワークを洗浄する際に当該ワークを搬送するために用いられるワーク搬送治具について説明する。なお、詳細は後述するが、本実施形態におけるワーク搬送治具は、洗浄装置に設けられた搬送装置によって略垂直姿勢(吊り下げられた状態)で搬送されるものであるため、以下ではワーク搬送治具をハンガーと称す。
【0016】
図1は、本実施形態におけるハンガーHの正面図(a)及び側面図(b)である。この図1に示すように、ハンガーHは、外ネット枠NF11、内ネット枠NF21、外ネット枠NF11と内ネット枠NF21とを開閉可能に連結する連結軸CN1及びCN2、外ネット枠NF11と内ネット枠NF21とを閉状態に固定するロック機構LC1及びLC2、搬送装置による略垂直姿勢での搬送を可能とするフック受け部(鉤受け部)16、作業者による持ち運びを可能とする取っ手17から構成されている。
【0017】
外ネット枠NF11は、ステンレス製の鋼管または丸棒(直径10mm程度)の左縦枠F11、右縦枠F12、上横枠F13及び下横枠F14により方形に形成された枠体FB11と、対向する左縦枠F11と右縦枠F12との間に一定間隔を空けて並列的に張設された複数の横線材12Xと、対向する上横枠F13と下横枠F14との間に一定間隔を空けて並列的に張設された複数の縦線材12Yとから構成されている。
【0018】
この外ネット枠NF11において、上横枠F13は下横枠F14より長く、上横枠F13の両端は枠体FB11から左右に突出している。これら突出している上横枠F13の両端部分は、後述の洗浄装置に設けられた入口バッファ及び出口バッファに対して略垂直姿勢でのハンガーHの載置を可能とする部位であるため、以下ではこれら突出している部位を載置部F13a、F13bと称す。
【0019】
内ネット枠NF21は、外ネット枠NF11と同様に、左縦枠F21、右縦枠F22、上横枠F23及び下横枠F24により方形に形成された枠体FB21と、対向する左縦枠F21と右縦枠F22との間に一定間隔を空けて並列的に張設された複数の横線材22Xと、対向する上横枠F23と下横枠F24との間に一定間隔を空けて並列的に張設された複数の縦線材22Yとから構成されている。内ネット枠NF21の枠体FB21の大きさは、外ネット枠NF11の枠体FB11より一回り小さく設定されている。
【0020】
上述の外ネット枠NF11において、左縦枠F11及び右縦枠F12には、複数の掛止片15Yが縦方向に一定間隔で外側向きに突設されている。上横枠F13及び下横枠F14には、複数の掛止片15Xが横方向に一定間隔で正面向きに突設されている。横線材12Xは、対向する掛止片15Yに掛止されることにより張設されている。縦線材12Yは、対向する掛止片15Xに掛止されることにより張設されている。横線材12X及び縦線材12Yは、枠体FB11の片側面に一定間隔で互いに直交して張設されることで格子状に配置されている。
【0021】
また、上述の内ネット枠NF21において、左縦枠F21及び右縦枠F22には、複数の掛止片25Yが縦方向に一定間隔で外側向きに突設されている。上横枠F23及び下横枠F24には、複数の掛止片25Xが横方向に一定間隔で正面向きに突設されている。横線材22Xは、対向する掛止片25Yに掛止されることにより張設されている。縦線材22Yは、対向する掛止片25Xに掛止されることにより張設されている。横線材22X及び縦線材22Yは、枠体FB21の片側面に一定間隔で互いに直交して張設されることで格子状に配置されている。
【0022】
上述の横線材12X、縦線材12Y、横線材22X及び縦線材22Yは、糸状線材であり、直径が0.5mm程度の断面円形であって、伸縮性がほとんど無いのが好ましく、撥水性を有する編み糸、例えば釣り糸等で使用されている超高分子ポリエチレンを原糸としたPEラインである。このPEラインは、ポリエチレン系の新素材(ダイニーマやテクミロン素材)の組み糸で、同じ太さのナイロンに比べ2.5〜3倍の直線強度を有している。
【0023】
連結軸CN1及びCN2は、外ネット枠NF11の下横枠F14と内ネット枠NF21の下横枠F24とを開閉可能に連結する。すなわち、ハンガーHは、回転軸である連結軸CN1及びCN2を中心に開閉可能である。ハンガーHでは、外ネット枠NF11の枠体FB11が、内ネット枠NF21の枠体FB21より一回り小さいので、閉状態時には、外ネット枠NF11に内ネット枠NF21が入り込む。
ロック機構LC1及びLC2は、閉状態時に、外ネット枠NF11と内ネット枠NF21とを固定するものであり、外ネット枠NF11の上横枠F13と内ネット枠NF21の上横枠F23とに設けられた穴部に止め具が差し込まれることにより閉状態を固定する。
【0024】
フック受け部16は、ハンガーHの搬送時に、搬送装置による略垂直姿勢での搬送を可能とするコの字形状部品であって、その一端は外ネット枠NF11の上横枠F13に接続されており、他端は上横枠F13との間に隙間(切り欠き)が形成されるように未接続状態となっている。また、このフック受け部16において上横枠F13と平行な部分(搬送装置のフックに掛止される部分)の断面形状はV字形状に設定されている。
取っ手17は、作業者による持ち運びを可能とするL字形状部品であって、その一端は外ネット枠NF11の上横枠F13に接続されており、他端はフック受け部16に接続されている。
【0025】
図2は、ハンガーHの開閉動作を示す側面図である。ハンガーHでは、外ネット枠NF11及び内ネット枠NF21が開いた状態で、どちらか一方の線材上にワークとしての基板Wが載置され、他方が閉じられることで、基板Wが外ネット枠NF11の横線材12X及び縦線材12Yと、内ネット枠NF21の横線材22X及び縦線材22Yとによって挟持される。
【0026】
このように基板Wを収容したハンガーHは、後述の洗浄装置に設けられた搬送装置によって略垂直姿勢で搬送され、洗浄槽の内部に上方から搬入される。ハンガーH内に収容された基板Wは、洗浄槽の内部においてハンガーHが吊り下げられた状態で上下動される過程で、槽内部の両側から噴射される高圧の洗浄液により両面が洗浄される。
【0027】
なお、基板Wの板厚が厚い場合には、横線材12X、縦線材12Y、横線材22X、縦線材22Yに線径が太いものを使用すれば保持力が安定する。細い線径の場合は、複数本(2〜3本)の線材をより合わせて太くしたものを使用しても良い。また、各縦線材12Y、各縦線材22Yの間隔は、少なくとも洗浄の対象となる基板Wの最小サイズの1/2以下に設定するのが好ましい。
【0028】
〔洗浄装置〕
次に、上述したハンガーHを略垂直姿勢(吊り下げた状態)で搬送しつつ、ハンガーH内に収容された基板Wの洗浄を行う洗浄装置について説明する。
図3は本実施形態における洗浄装置Cの側面図であり、図4は洗浄装置Cの正面図である。これらの図に示すように、本実施形態における洗浄装置Cは、洗浄槽1、乾燥槽2、入口バッファ3、出口バッファ4及び搬送装置5から概略構成されている。
【0029】
なお、これらの図において、X軸はハンガーHの搬送方向を示し、Y軸はX軸に直交して水平面をなす方向を示し、Z軸はXY平面に直交する方向(鉛直方向)を示している。また、図4は洗浄装置Cを搬送方向(X軸方向)の上流側から視た図であるが、この図4ではハンガーHが洗浄槽1内に搬入される様子を表すために、本来、洗浄槽1の上流側に位置する入口バッファ3の図示を省略している。
【0030】
洗浄槽1及び乾燥槽2は、後述の搬送装置5によって上方(Z軸方向の上側)から搬入されるハンガーHを略垂直姿勢で収容する容器であり、開口部(ハンガーHの出入口)を上にした状態でXY平面に対して略垂直に設置されている。また、洗浄槽1は搬送方向の上流側に設置されており、乾燥槽2は搬送方向の下流側であって且つ洗浄槽1に隣接する位置に設置されている。
【0031】
なお、図3及び図4では図示を省略しているが、洗浄槽1の内壁面の内、搬入されたハンガーHと対向する面には、ハンガーHに対して洗浄水を噴射する洗浄ノズルが配置されており、また、乾燥槽2の内壁面の内、搬入されたハンガーHと対向する面には、ハンガーHに対してエアーを噴射するエアーノズルが配置されている。これら洗浄ノズルによる洗浄水の噴射動作及びエアーノズルによるエアー噴射動作は、不図示の制御装置によって制御されている。
【0032】
入口バッファ3は、洗浄槽1の上流側に設置されたハンガーH用のバッファであり、洗浄前の基板Wを収容するハンガーHを略垂直姿勢で滞留させる。以下では、図3に加えて図5を参照しながら、入口バッファ3の詳細な構成について説明する。なお、図5(a)は入口バッファ3の上面図(Z軸方向の上側から視た図)であり、図5(b)は入口バッファ3の側面図(Y軸方向の手前側から視た図)である。
【0033】
図3及び図5に示すように、入口バッファ3は、洗浄槽1の正面から搬送方向の上流側へ延びるように並設された1対の支持板31、32と、この1対の支持板31、32上に設置された1対のバッファリング機構33、34とから構成されている。なお、これらの支持板31、32は、両者の間にハンガーHが略垂直姿勢で収まるように(言い換えれば外ネット枠NF11の上横枠F13がY軸方向と平行な状態で収まるように)、一定距離を隔てて配置されている。
【0034】
一方のバッファリング機構33は、支持板31上の下流側において回転自在に設置された駆動ローラ33aと、支持板31上の上流側において回転自在に設置された受動ローラ33bと、駆動ローラ33a及び受動ローラ33bに巻回された搬送ベルト33cと、駆動ローラ33aを回転駆動する駆動モータ33dと、駆動ローラ33aの近傍位置に設置されたストッパ33eとから構成されている。
【0035】
他方のバッファリング機構34は、支持板32上の下流側において回転自在に設置されていると共に駆動ローラ33aと同軸結合された駆動ローラ34aと、支持板32上の上流側において回転自在に設置された受動ローラ34bと、駆動ローラ34a及び受動ローラ34bに巻回された搬送ベルト34cと、駆動ローラ34aの近傍位置に設置されたストッパ34eとから構成されている。
【0036】
つまり、入口バッファ3におけるバッファリング機構33、34は、駆動モータ33dの回転によって一対の搬送ベルト33c、34cが搬送方向に対して同一速度で往復走行可能な構成となっている。なお、駆動モータ33dの回転動作は不図示の制御装置によって制御されている。
【0037】
このような構成の入口バッファ3において、ハンガーHは、図5(a)に示すように、外ネット枠NF11の上横枠F13の両端に設けられた載置部F13a、F13bがそれぞれ搬送ベルト33c、34cによって下方から支持されるように略垂直姿勢で載置される。入口バッファ3に対するハンガーHの載置は、作業者の手によって行っても良いし、或いは不図示のロボットアーム等によって自動的に行っても良い。このように搬送ベルト33c、34c上に載置されたハンガーHは、図5(b)に示すように、搬送ベルト33c、34cの走行によって略垂直姿勢を維持したまま下流側へ移動し、ストッパ33e、34eに当ってその場に滞留することになる。
【0038】
出口バッファ4は、乾燥槽2の下流側に設置されたハンガーH用のバッファであり、洗浄後の基板Wを収容するハンガーHを略垂直姿勢で滞留させる。以下では、図3に加えて図6を参照しながら、出口バッファ4の詳細な構成について説明する。なお、図6(a)は出口バッファ4の上面図(Z軸方向の上側から視た図)であり、図6(b)は出口バッファ4の側面図(Y軸方向の手前側から視た図)である。
【0039】
図3及び図6に示すように、出口バッファ4は、乾燥槽2の下流側の面から搬送方向の下流側へ延びるように並設された1対の支持板41、42と、この1対の支持板41、42上に設置された1対のバッファリング機構43、44と、ハンガーホルダ(治具保持部材)45とから構成されている。なお、入口バッファ3と同様に、これらの支持板41、42は、両者の間にハンガーHが略垂直姿勢で収まるように、一定距離を隔てて配置されている。
【0040】
一方のバッファリング機構44は、支持板42上の上流側において回転自在に設置された駆動ローラ44aと、支持板42上の下流側において回転自在に設置された受動ローラ44bと、駆動ローラ44a及び受動ローラ44bに巻回された搬送ベルト44cと、駆動ローラ44aを回転駆動する駆動モータ44dとから構成されている。
【0041】
他方のバッファリング機構43は、支持板41上の上流側において回転自在に設置されていると共に駆動ローラ44aと同軸結合された駆動ローラ43aと、支持板41上の下流側において回転自在に設置された受動ローラ43bと、駆動ローラ43a及び受動ローラ43bに巻回された搬送ベルト43cとから構成されている。
【0042】
つまり、出口バッファ4におけるバッファリング機構43、44は、駆動モータ44dの回転によって一対の搬送ベルト43c、44cが搬送方向に対して同一速度で往復走行可能な構成となっている。なお、駆動モータ44dの回転動作は不図示の制御装置によって制御されている。
【0043】
ハンガーホルダ45は、搬送方向の上流側から下流側へ向かって下方に傾斜する傾斜部45aと、その傾斜部45aの最下端から下流側へ向かって水平に延設された水平部45bとを有している。このようなハンガーホルダ45は、Y軸方向において傾斜部45aが支持板41と42との間の中央位置に位置するように(図6(a)参照)、且つX軸方向において傾斜部45aの最上端が受動ローラ43b、44bの直上に位置するように(図6(b)参照)、且つZ軸方向において傾斜部45aの最上端がハンガーHのフック受け部16より低く、外ネット枠NF11の上横枠F13より高い位置に位置する(図6(b)参照)ように設置されている。
【0044】
このような構成の出口バッファ4において、ハンガーHは、図3に示すように、外ネット枠NF11の上横枠F13の両端に設けられた載置部F13a、F13bがそれぞれ搬送ベルト43c、44cによって下方から支持されるように略垂直姿勢で載置される。ここで、出口バッファ4に対するハンガーHの載置は、後述の搬送装置5によって自動的に行われる。このように搬送ベルト43c、44c上に載置されたハンガーHは、図6(b)に示すように、搬送ベルト43c、44cの走行によって略垂直姿勢を維持したまま下流側へ移動する。
【0045】
この時、ハンガーHが受動ローラ43b、44bの直上付近に移動すると、ハンガーホルダ45の傾斜部45aの最上端がハンガーHのフック受け部16と上横枠F13とに囲まれた空間に挿入される。さらに、搬送ベルト43c、44cの走行が進んでハンガーHが搬送ベルト43c、44cから外れると、ハンガーHはフック受け部16によってハンガーホルダ45の傾斜部45aに吊り下がった状態となり、傾斜部45aに案内されながら水平部45bへ向かって滑落する。これにより、洗浄後の基板Wを収容するハンガーHは略垂直姿勢を維持したままハンガーホルダ45の水平部45bに滞留することになる。
【0046】
搬送装置5は、ハンガーHを略垂直姿勢で入口バッファ3から洗浄槽1へ搬送し、洗浄後に洗浄槽1から乾燥槽2へ搬送し、さらに乾燥後に乾燥槽2から出口バッファ4へ搬送するものであり、Z軸直動アクチュエータ51、X軸直動アクチュエータ52、フック取付アーム53及びフック54から構成されている(図3及び図4参照)。
【0047】
Z軸直動アクチュエータ51は、X軸直動アクチュエータ52をZ軸方向に沿って往復移動させる。X軸直動アクチュエータ52は、Z軸直動アクチュエータ51によってZ軸方向の位置が制御されると共に、フック取付アーム53をX軸方向に沿って往復移動させる。これらZ軸直動アクチュエータ51及びX軸直動アクチュエータ52は、例えばリニアガイドやボールネジ機構等によって構成されている。
【0048】
フック取付アーム53は、X軸直動アクチュエータ52においてY軸方向に対して平行な状態を維持したままX軸方向に移動自在に設置されており、X軸直動アクチュエータ52によってX軸方向の位置が制御される。フック54は、フック取付アーム53の先端部下面に吊り下げ状態で取り付けられた板状部材であり、その下方先端にはハンガーHのフック受け部16に掛止される鉤部54aが形成されている。
なお、このフック54の鉤部54aは、図3に示すように、ハンガーHのフック受け部16の断面形状と同様なV字形状をなしているが、そのV字部分の長さはフック受け部16のV字部分より短く設定されている。
【0049】
このように、搬送装置5は、Z軸直動アクチュエータ51及びX軸直動アクチュエータ52の一軸往復動作によってフック54(鉤部54a)の位置(XZ座標)が制御される構成となっている。なお、Z軸直動アクチュエータ51及びX軸直動アクチュエータ52の一軸往復動作は不図示の制御装置によって制御されている。
【0050】
以上が本実施形態における洗浄装置Cの構成に関する説明であり、以下では上記のように構成された洗浄装置Cの動作について説明する。
【0051】
まず、作業者の手によって、或いは不図示のロボットアームによって、洗浄前の基板Wを収容するハンガーHが入口バッファ3の搬送ベルト33c、34cに略垂直姿勢で載置される。ここで、作業者の手によってハンガーHを入口バッファ3に載置する場合、取っ手17を利用してハンガーHを持ち運びできるため、入口バッファ3に対するハンガーHの載置作業が容易となる。また、取っ手17をハンガーHに設けることにより、同じ向きでハンガーHを入口バッファ3に載置することを作業者に促すことができるため、誤った向きでハンガーHが搬送及び洗浄されて洗浄効果が低下してしまうことを回避することができる。
【0052】
搬送ベルト33c、34c上に載置されたハンガーHは、搬送ベルト33c、34cの走行によって略垂直姿勢を保持したまま下流側へ移動し、ストッパ33e、34eに当ってその場に滞留する。ここで、ハンガーHは、外ネット枠NF11の上横枠F13の両端に設けられた載置部F13a、F13bがそれぞれ搬送ベルト33c、34cによって下方から支持された状態で搬送されるため、安定した搬送が可能となり、搬送時の振動衝撃が軽減されて基板Wの破損を回避することができる。
【0053】
そして、搬送装置5のZ軸直動アクチュエータ51及びX軸直動アクチュエータ52によってフック54(鉤部54a)の位置制御がなされ、鉤部54aが入口バッファ3に滞留している最下流側のハンガーHのフック受け部16に掛止される(図3参照)。ここで、鉤部54aのV字部分の長さはフック受け部16のV字部分より短く設定されているため、入口バッファ3に複数のハンガーHが密着状態で滞留している場合であっても、最下流側のハンガーHのみを確実に鉤部54aに掛止させることができる。
【0054】
そして、ハンガーHは、搬送装置5によってフック54に吊り下げられた状態で入口バッファ3から洗浄槽1へ搬送され、略垂直姿勢で洗浄槽1の内部に上方から搬入される(図3、図4参照)。洗浄槽1の内部では、ハンガーHが上下移動される過程で、洗浄ノズルから噴射される高圧の洗浄液により基板Wの洗浄処理がなされる。
【0055】
そして、洗浄槽1による洗浄後、ハンガーHは、搬送装置5によってフック54に吊り下げられた状態で洗浄槽1から乾燥槽2へ搬送され、略垂直姿勢で乾燥槽2の内部に上方から搬入される(図3参照)。乾燥槽2の内部では、ハンガーHが上下移動される過程で、エアーノズルから噴射される高圧のエアーにより基板Wの乾燥処理がなされる。
【0056】
そして、乾燥槽2による乾燥後、ハンガーHは、搬送装置5によってフック54に吊り下げられた状態で乾燥槽2から出口バッファ4へ搬送され、出口バッファ4の搬送ベルト43c、44cに略垂直姿勢で載置される。このように搬送ベルト43c、44c上に載置されたハンガーHは、搬送ベルト43c、44cの走行によって略垂直姿勢を維持したまま下流側へ移動する。ここで、ハンガーHは、外ネット枠NF11の上横枠F13の両端に設けられた載置部F13a、F13bがそれぞれ搬送ベルト43c、44cによって下方から支持された状態で搬送されるため、安定した搬送が可能となり、搬送時の振動衝撃が軽減されて基板Wの破損を回避することができる。
【0057】
そして、ハンガーHが受動ローラ43b、44bの直上付近に移動すると、ハンガーホルダ45の傾斜部45aの最上端が、ハンガーHのフック受け部16と上横枠F13とに囲まれた空間に挿入され、ハンガーHはフック受け部16によってハンガーホルダ45の傾斜部45aに吊り下がった状態となり、傾斜部45aに案内されながら水平部45bへ向かって滑落する(図3参照)。
【0058】
上記のような一連の動作が繰り返されることにより、入口バッファ3に滞留している洗浄前のハンガーHが順次、洗浄・乾燥され、洗浄・乾燥後のハンガーHが出口バッファ4のハンガーホルダ45に順次集められることになる。最後に、作業者はハンガーホルダ45に略垂直姿勢(吊り下げられた状態)で滞留しているハンガーHを取り外す必要があるが、各ハンガーHのフック受け部16には切り欠きが設けられているため、ハンガーホルダ45からの取り外し作業は容易である。
【0059】
以上のように、本実施形態における洗浄装置Cによれば、一般的なローラーやネットコンベア等の搬送装置を利用して基板Wの搬送を行う場合と比較して、各種サイズの基板Wを略垂直姿勢で(吊り下げ状態で)収容して搬送しながら洗浄することができる。従って、本実施形態によれば、洗浄装置Cの占有床面積を省スペース化することができ、以って作業者単独による基板W(ハンガーH)の搬入出作業を軽減することができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、洗浄槽1と乾燥槽2とが個別に設けられている場合を例示して説明したが、洗浄槽1内で洗浄処理及び乾燥処理の両方を行うことができる場合には、乾燥槽2を設ける必要はない。また、上記実施形態では、洗浄装置Cによって洗浄するワークとして基板Wを例示したが、本発明に係る洗浄装置はワーク搬送治具によって略垂直姿勢で搬送可能であれば、どのようなワークの洗浄にも適用することができる。従って、ワーク搬送治具の構造もワークの種類に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
C…洗浄装置、1…洗浄槽、2…乾燥槽、3…入口バッファ、4…出口バッファ、5…搬送装置、H…ハンガー(ワーク搬送治具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽と、
洗浄前のワークを収容するワーク搬送治具を略垂直姿勢で滞留させる入口バッファと、
洗浄後のワークを収容するワーク搬送治具を略垂直姿勢で滞留させる出口バッファと、
前記ワーク搬送治具を略垂直姿勢で入口バッファから洗浄槽へ搬送し、洗浄後に洗浄槽から出口バッファへ搬送する搬送装置と
を具備することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記ワーク搬送治具は、前記入口バッファ及び出口バッファに対して略垂直姿勢での載置を可能とする載置部を有し、
前記入口バッファ及び出口バッファは、前記載置部を利用して略垂直姿勢で載置されたワーク搬送治具を略垂直姿勢を維持したまま下流側へ順次搬送して滞留させる機構を有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記ワーク搬送治具は、前記搬送装置による略垂直姿勢での搬送を可能とする、断面形状がV字形状の鉤受け部を有し、
前記搬送装置は、前記ワーク搬送治具の鉤受け部に掛止されると共に当該鉤受け部のV字部分より長さが短いV字形状の鉤部を有しており、当該鉤部の位置制御によって前記ワーク搬送治具の略垂直姿勢での搬送を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記ワーク搬送治具の鉤受け部には切り欠きが設けられており、
前記出口バッファは、前記搬送装置によって略垂直姿勢で載置されたワーク搬送治具を略垂直姿勢を維持したまま下流側へ順次搬送し、該下流側に設置された治具保持部材を前記鉤受け部によって囲まれた空間に挿入させることで、前記ワーク搬送治具を前記治具保持部材に略垂直姿勢で滞留させることを特徴とする請求項3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記ワーク搬送治具は、作業者による持ち運びを可能とする取っ手を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
乾燥槽をさらに具備し、
前記搬送装置は、前記ワーク搬送治具を略垂直姿勢で入口バッファから洗浄槽へ搬送し、洗浄後に洗浄槽から乾燥槽へ搬送し、乾燥後に乾燥槽から出口バッファへ搬送することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−251235(P2011−251235A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125954(P2010−125954)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000232357)横河電子機器株式会社 (109)
【Fターム(参考)】