説明

洗米機

【課題】 洗米装置の上下方向の空間を有効利用できるようにする。
【解決手段】 米を洗米して洗米後の米を受け容器10へ排出する洗米装置2を支持部材3に取り付ける。前記支持部材3に対して洗米装置2を米排出位置から上下方向に移動させる移動機構5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に業務用に使用される洗米機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術においては、米を洗米して洗米後の米を内釜等の受け容器へ排出する洗米装置は、固定又は可搬式の支持部材に取り付けており、その取り付け高さは固定であって、その下方には受け容器を載せる台が配置されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−239731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術においては、厨房等の洗米機使用空間が狭いと、洗米装置は米を受け容器へ排出するとき以外、その高さ位置に存在することが邪魔になることがあり、洗米装置の上下方向の空間を有効利用したいという要望がある。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした洗米機を提供することを目的とする。
【0004】
本発明は、洗米装置を米排出位置から上下方向に移動可能にすることにより、洗米装置の上下方向の空間を有効利用できるようにした洗米機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、米を洗米して洗米後の米を受け容器へ排出する洗米装置を支持部材に取り付けている洗米機において、前記支持部材に対して洗米装置を米排出位置から上下方向に移動させる移動機構を設けている。
第2に、洗米装置の下方に前記受け容器を配置可能な流し台を配置している。
【0006】
第3に、前記流し台は、支持部材に対して固定している、または、支持部材に対して搬入・搬出可能にしている。
第4に、前記支持部材を建屋の壁に固定している。
本発明は、前述のような構成によって、次のような作用を奏する。
米排出時以外のとき、支持部材に対して洗米装置を米排出位置から上方向に移動させると、洗米装置の下方に大きな空間ができ、洗米装置を米排出位置から下方向に移動させると、洗米装置の上方に大きな空間ができ、下又は上の空間を有効利用できる。
【0007】
洗米装置の下方に受け容器を配置可能な流し台を配置しておれば、受け容器の支持に専用の部材が不要になり、米排出時以外のときに下方空間で流し台で洗い物をしたり、洗米装置を下げて上方空間で洗米装置への米供給を可能にしたしすることができる。
前記流し台を支持部材に固定すれば、支持部材とともに設置したり、可搬にしたりすることが可能になり、支持部材に対して搬入・搬出可能にすれば、支持部材から独立して製作し、移動することが可能になる。
【0008】
前記支持部材は、自立可能な枠構造体であると、所要の設置場所に設置でき、建屋の壁に固定していると、設置場所は限定されるが、部品代が安価になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗米装置の上下方向の空間を有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜7において、洗米機1は、米を洗米すると共に、この米を水加減水と共に受け容器へ排出するまでを自動で行う自動洗米機であり、パック米を1袋分全部投入して洗米することを可能としたパック米対応機である。
この洗米機1は、大別して、洗米装置2と、この洗米装置2を取り付けている支持部材3と、洗米装置2の下方の流し台4とを備え、前記支持部材3と洗米装置2との間に洗米装置2を上下方向に移動させる移動機構5を設けている。
【0011】
前記支持部材3は、自立可能な定置式枠構造体で構成されており、この支持部材3は建屋の床面Gに対して定置されている。符号Lは建屋の壁を示している。
前記流し台4は支持部材3の下部に固定又は一体構成されており、水洗い作業、貯水が可能なシンクタンク7と、水道等の給水設備8と、シンクタンクか7ら排水する排水設備9とを有する。前記シンクタンク7は受け容器10を収納・載置可能になっている。前記受け容器10は、炊飯器の内釜、洗米した米を受けるためのその他の容器又は炊飯器である。
【0012】
前記一体構成の支持部材3及び流し台4は、4柱脚4aの上部にシンクタンク7を固定し、このシンクタンク7の後部に背壁4bを設け、この背壁4bから上方へ左右一対の支持支柱12を立設し、左右支持支柱12の上端を連結部材13で連結している。
前記4柱脚4a、背壁4b左右一対の支持支柱12、上端の連結部材13等によって支持部材3が構成されている。
【0013】
前記左右各支持支柱12は、対向面側に開放のガイドレール溝12aと、このガイドレール溝12aと平行のラック12bとを有しており、洗米装置2の背面には左右支持支柱12間に位置する左右基台14が固定され、この左右各基台14にガイドレール溝12aを転動する上下一対のコロ15と、ラック12bと噛合する荷重軽減手段16付きピニオン17とが設けられている。
【0014】
前記荷重軽減手段16は、ロータリアブソーバと一方向クラッチ19とを有する。ロータリアブソーバはオイルの粘性抵抗により発生する制動力を利用したダンパであり、そのロータ軸18に下降方向の回転時に係合状態になる一方向クラッチ19を介してピニオン17が固定されている。
即ち、前記ピニオン17がラック12bと噛合した状態で洗米装置2がその自重により下降すると、ピニオン17の回転が一方向クラッチ19を介してロータリアブソーバのロータ軸18を回転することになり、ロータ軸18にオイルの粘性抵抗が加わることにより、洗米装置2の降下に制動力がかかる状態になり、洗米装置2の荷重の大半が支持支柱12によって支えられ、自重でゆっくりと下降することになる。
【0015】
前記洗米装置2を持ち上げるときは、ピニオン17が回転しても一方向クラッチ19が遊転状態になり、ロータ軸18が回転しないので制動力がかからなく、洗米装置2をその重量に対応する力だけで持ち上げられる。
図4〜6における符号20はロック手段であり、ピニオン17の軸心と平行なロック杆21の両端に円弧形状のロック部材22が固定され、平面視コ字形状のロックハンドル23の両端が連結されている。
【0016】
前記ロックハンドル23は、前後中途部に設けた左右支持部23aが支軸24を介して洗米装置2のフレーム2aに揺動自在に枢支されており、ロック部材22はラック12bに噛合可能に歯が形成されていて、前記ロックハンドル23を下方向に揺動することにより、ロック部材22が上動しながらラック12bに近づき、ラック12bと噛合(係合)するようになっている。
【0017】
前記洗米装置2のフレーム2aから前方へ手動ハンドル25が突設されており、このハンドル25を持って、洗米装置2を人為的に持ち上げ、押し下げを行う。この手動ハンドル25と前記ロックハンドル23とは略平行でかつ近傍に位置しており、片手でも手動ハンドル25を持ちながらロックハンドル23を上下揺動操作可能になっている。
前記ロック手段20の支軸24はロック部材22より前上位に位置しており、ロックハンドル23の前部を押し下げると、ロック部材22は上昇しながらラック12bに噛合し、その状態で洗米装置2は支持部材3に対して位置がロックされる。洗米装置2の荷重はロック部材22をラック12bに更に噛合する力を発生するので、洗米装置2は下降せず、またロック部材22が離脱することもない。
【0018】
前記ロック状態からロックハンドル23の前部を引き上げると、ロック部材22は下降しながらラック12bから離脱し、その状態で洗米装置2を下降させるか、または手動ハンドル25を持って洗米装置2を引き上げる。
なお、ロックハンドル23には、ロック部材22をラック12bに噛合する方向の力を与える引っ張りスプリングを設けたり、ロック部材22を離脱位置で止めるストッパを設けておくことが好ましい。
【0019】
前記ガイドレール溝12a、ラック12b、コロ15、荷重軽減手段16、ピニオン17、ロック手段20及び手動ハンドル25等によって移動機構5が構成されており、洗米装置2を正姿勢のまま上下方向に移動可能にし、移動した上下位置で停止してその位置に固定できる。
前記洗米機1は、米を洗米して洗米後の米を受け容器10へ排出するとき、受け容器10の大きさに応じた最適な排出高さに洗米装置2を位置させ、排米が終わってパック米を供給するとき、洗米装置2を前記排出高さより低くしてパック米供給を容易にしたり、パック米を供給した後に、洗米装置2の下方で流し台4を使用して洗い物をするとき、洗米装置2を前記排出高さから持ち上げて下方空間を有効利用したりすることができる。
【0020】
前記実施形態の洗米機1のように、支持部材3と流し台4とを一体的に構成する場合でも、脚部にキャスタ等の可搬手段を設けて可搬式にしてもよく、支持部材3を床面Gに対して固着することも可能である。
前記荷重軽減手段16付きピニオン17は左右各基台14に上下一対配置されているが、左右一つずつでもよく、ラック12bに対するピニオン17の噛合位置とロック手段20のロック部材22の噛合位置とが左右にずらされているが、左右方向を同一位置にして上下にずらしておいてもよい。
【0021】
また、荷重軽減手段16付きピニオン17を設ける代わりに、支持部材3の上部に滑車を配置し、その滑車にワイヤを巻き掛け、そのワイヤの一端を洗米装置2の基台14に連結し、他端に洗米装置2の荷重と見合う錘を連結し、洗米装置2の荷重をバランサで軽減するようにしてもよい。
図7は変形例を示しており、この洗米機1は支持部材3と流し台4とが分離されている。支持部材3は支持支柱12の上部だけでなく下部にも連結部材13を有して流し台4とと独立構成され、建屋の厨房内の壁Lに取り付け具27を介して(又は直接)固定されている。
【0022】
流し台4は脚部4aに可搬手段としてキャスタ28を設けていて、洗米装置2の下方へ搬入・搬出することが可能になっており、流し台4を搬出すると、洗米装置2の下方全域を有効利用できる。従って、排米後に流し台4を搬出して、洗米装置2を排米位置からさらに下降させれば、洗米装置2へのパック米供給がより容易になり、洗米装置2の上側に補給パック米を載置するのも容易になる。
【0023】
図1〜4、8〜10において、前記洗米装置2の内部構造を詳述している。洗米装置2は、前記フレーム2aと、このフレーム2aの上部に取付固定されたケース30と、このケース30の下面側に取付固定された洗米槽31と、この洗米槽31内に水を供給する給水手段32と、洗米槽31内の米及び水を攪拌する撹拌手段33とを備えている。
フレーム2aは上部がケース30の背壁部と連結され、ケース30は、背壁部と、仕切り部30aと、この仕切り部30aの上方に配置された駆動部34及び給水手段32等を覆うカバー体30bとを有している。
【0024】
カバー体30bは、左右の側面壁と上壁と前面壁と背面壁とから下端開放状に形成され、前記フレーム2a及び仕切り部30aに取付固定されている。このカバー体30bの上面は補給パック米を載せるのに使用される側面視V字形状の米載置面とされている。
洗米槽31は、米及び水を収容しこれらを攪拌することによりこの米を洗米するための洗米槽本体31aと、この洗米槽本体31a内の洗米水(研ぎ汁)の水面側の水や洗米水上に浮遊するゴミ等の不純物等を排水するためのオーバーフロー部31bと、洗米槽本体31aの下端側に設けられていて洗米槽本体31aの下端側から洗米水(研ぎ汁)を排水するための排水ジャケット36とを備えている。
【0025】
前記洗米槽31は、洗米槽本体31aとオーバーフロー部31bとを樹脂によって一体成形してなるオーバーフロー部一体型である。
洗米槽本体31aは、上下端部が開口状とされており、下部には下端開口に向けて先細りの円錐形円錐部が形成され、上部には円錐部から上方に延出された円形状の筒部が形成されている。
【0026】
この洗米槽本体31aの前記筒部の上側前部には、洗米槽本体31aの高さ方向中途部から上縁に行くに従って次第に大きく膨出し、平面視において、円筒形から径方向外方側に向けて(前方側に向けて)台形状に膨出した膨出部31cが形成されている。
そして、洗米槽本体31aの上端開口部分の内、ケース30のカバー体30bの前面から前方にはみ出た部分が、洗米槽31内に米を投入するための米投入口37とされ、特にパック米の米を投入する場合にパック米の袋の口を米投入口37から洗米槽本体31a内に挿入しやすいように構成されている。この米投入口37は合成樹脂製の蓋体39によって開閉自在に閉塞されている。
【0027】
排水ジャケット36は洗米槽本体31aとは別部品で構成されていて、取付金具で洗米槽本体31aの下端側に着脱自在に取り付けられており、下面側に洗米された米を排出する排米口36aが形成され、円錐状の排米弁40によって開閉自在に閉塞されている。
この排米弁40は弁棒41の下端に固定されており、弁棒41の上部はケース30の仕切り部30aを貫通してケース30内に挿入されると共に昇降手段42によって昇降自在に支持され、弁棒41を昇降することにより排米弁40が上下動して排米口36aが開閉される。
【0028】
前記オーバーフロー部31bの下方側で且つ排水ジャケット36の左斜め後方には、排水ボックス43が配置されている。この排水ボックス43の上面側はオーバーフロー部31bと連通され、右側面は排水ジャケット36に連通されている。
また、排水ボックス43の背面側には排水ホース44が接続され、排水ボックス43内の洗米水等が流し台4に排水されるように構成されている。
【0029】
前記給水手段32は、ケース30の仕切り部30aに取り付けられた左右一対の散水部材46と、この散水部材46に水を供給する給水管路35と、この給水管路35に接続された給水ホース38等を有し、水道等の圧力水源に接続されている。洗米装置2が上下方向に移動するので、給水ホース38及び排水ホース44は屈曲容易な可撓ホースが使用されている。
【0030】
ケース30内には、洗米機1を制御する制御装置47が設けられ、カバー体30bの前面側には、洗米槽31に投入する米の量等を制御装置47に入力するコントロールパネル48が設けられており、米を投入して蓋体39を閉め、コントロールパネル48に設けられたスタートスイッチを押すことにより、洗米槽本体31a内に水が給水されると共に撹拌手段33が駆動されて米が攪拌されて洗米され、洗米後、入力された米量に応じた量の水加減水が供給され、この水加減水と共に洗米槽本体31aから米が排出されるように自動制御される。
【0031】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜10に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、洗米機1は洗米装置2の上部又は流し台4の下部に貯米庫及び計量器を設けておいて、その貯米庫から計量排出した米を空気搬送手段等によって洗米槽31内に供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同正面図である。
【図4】同平面図である。
【図5】移動機構の断面平面図である。
【図6】移動機構の斜視図である。
【図7】本発明の変形例を示す側面図である。
【図8】洗米装置の断面正面図である。
【図9】洗米装置の断面側面図である。
【図10】洗米槽の平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 洗米機
2 洗米装置
3 支持部材
4 流し台
5 移動機構
7 シンクタンク
8 給水設備
9 排水設備
10 受け容器
12 支持支柱
16 荷重軽減手段
23 ロックハンドル
25 手動ハンドル
31 洗米槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米を洗米して洗米後の米を受け容器へ排出する洗米装置を支持部材に取り付けている洗米機において、
前記支持部材に対して洗米装置を米排出位置から上下方向に移動させる移動機構を設けていることを特徴とする洗米機。
【請求項2】
洗米装置の下方に前記受け容器を配置可能な流し台を配置していることを特徴とする請求項1に記載の洗米機。
【請求項3】
前記流し台を支持部材に対して固定していることを特徴とする請求項2に記載の洗米機。
【請求項4】
前記流し台は支持部材に対して搬入・搬出する可搬手段を有していることを特徴とする請求項2に記載の洗米機。
【請求項5】
前記支持部材は自立可能な枠構造体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗米機。
【請求項6】
前記支持部材を建屋の壁に固定していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗米機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−185592(P2007−185592A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5052(P2006−5052)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】