説明

活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物の製造方法及び積層体。

【課題】 微細な形状の金型への注入性と硬化性に優れ、得られる硬化物が耐熱性及び低吸湿性に優れる活性エネルギー線硬化性組成物、及び支持体の表面にその硬化物を有する積層体を提供する。
【解決手段】 トリアリルイソシアヌレート、ジシクロペンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性組成物、上記活性エネルギー線硬化性組成物を金型の表面に塗付した後、活性エネルギー線硬化性組成物の塗付面に支持体を圧接させ、次いで支持体面側又は金型面側から支持体又は金型を通して活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる硬化物の製造方法及び支持体の表面に上記の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物を有する積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物の製造方法及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性組成物を用いた微細賦型技術はフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、導光板、光拡散板、プリズムシート等の光学物品の製造に応用されてきている。更に、微細賦型技術は、近年、より微細なナノ領域の微細賦型技術、いわゆるナノインプリント技術への展開が注目され、光記録媒体、磁気記録媒体、半導体素子等に応用されている。
【0003】
従来、微細賦型用組成物としてはアクリル系ラジカル重合性組成物が多く使用されているが、ナノ領域の形状を再現するためには高粘度なものが必要とされる場合が多い他、耐熱性が不十分で、後加工性が十分とは言えなかった。また、アクリル系ラジカル重合性組成物では得られる硬化物の吸湿による形状変化という問題もあった。
【0004】
例えば、特許文献1には、耐熱性等を改善するためにトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の環構造を有する硬化性組成物が提案されている。しかしながら、得られる硬化物の熱変形温度は100℃前後であり、十分とは言えない。
【0005】
特許文献2には、トリアジン骨格を有する(メタ)アクリレートを含有する硬化性及び耐熱性に優れた光硬化性組成物が提案されている。しかしながら、例示されているトリアジン骨格を有する(メタ)アクリレートは常温で固体のものが多いことから、得られる組成物の粘度が高くなり、微細賦型に適さない他、トリアジン骨格を有する(メタ)アクリレート成分が経時的に析出する等の問題がある。また、得られる硬化物は耐湿性の点で十分とは言えない。
【0006】
また、特許文献3には、耐熱性及び耐湿性に優れた光カチオン性の紫外線硬化型樹脂組成物が提案されているが、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化速度、得られる硬化物の強度及び原料コストの点で十分とは言えない。
【特許文献1】特開2003−137938号公報
【特許文献2】特開平9−118707号公報
【特許文献3】特開2005−320434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、微細な形状の金型への注入性と硬化性に優れ、得られる硬化物が耐熱性及び低吸湿性に優れる活性エネルギー線硬化性組成物、及び支持体の表面にその硬化物が積層された積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨とするところは、トリアリルイソシアヌレート(以下、「(A)成分」という)、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(以下、「(B)成分」という)及び光重合開始剤(以下、「(C)成分」という)を含む活性エネルギー線硬化性組成物(以下、「本発明組成物」という)を第1の発明とする。
【0009】
また、本発明組成物を金型の表面に塗付した後、本発明組成物の塗付面に支持体を圧接させ、次いで支持体面側又は金型面側から支持体又は金型を通して活性エネルギー線を照射して本発明組成物を硬化させる硬化物の製造方法を第2の発明とする。
【0010】
更に、支持体の表面に本発明組成物の硬化物が積層された積層体を第3の発明とする。
【0011】
また、支持体の表面に上記の方法で得られた硬化物が積層された積層体を第4の発明とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物は微細な形状の金型への注入性に優れ、得られる硬化物の耐熱性及び低吸湿性に優れることから、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、導光板、光拡散板、プリズムシート等の微細賦型技術を利用して得られる光学物品や光記録媒体、磁気記録媒体、半導体素子等のナノインプリント製品に適した硬化物や積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は本発明組成物の金型への注入性を低下させずに硬化物に耐熱性を付与するための成分である。
【0014】
本発明組成物中の(A)成分の配合量は、得られる硬化物の耐熱性の点で、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部中に10〜70質量部が好ましく、20〜60質量部がより好ましい。
【0015】
<(B)成分>
本発明において、(B)成分は得られる硬化物に低吸湿性を付与するための成分である。
【0016】
本発明組成物中の(B)成分の配合量は、得られる硬化物の低吸湿性の点で、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部中に30〜90質量部が好ましく、40〜80質量部がより好ましい。
【0017】
<(C)成分>
本発明において、(C)成分は本発明組成物を活性エネルギー線照射により効率的に硬化させるために配合される。
【0018】
(C)成分としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルホリノブチロフェノン及び2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オンが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0019】
これらの中で、本発明組成物の硬化性及び得られる硬化物の表面硬度を良好とする点で、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0020】
本発明組成物中の(C)成分の配合量は、本発明組成物の硬化性及び得られる硬化物の強度の点で、本発明組成物の(A)成分、(B)成分及び後述するその他の不飽和二重結合含有化合物の合計量100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0021】
<本発明組成物>
本発明組成物は、前記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有するが、本発明組成物の硬化物の表面硬度や屈折率の微調節等の目的に応じて、(A)成分及び(B)成分以外の単量体成分としてその他の不飽和二重結合含有化合物を含有することができる。
【0022】
その他の不飽和二重結合含有化合物としては、例えば、モノ(メタ)アクリレート;(B)成分以外のジ(メタ)アクリレート及び3官能以上のポリ(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0023】
モノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−メチルビシクロヘプタン(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノリルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0024】
(B)成分以外のジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−2−エトキシプロピルイソシアヌレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシフルオレンエタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのγ−ブチロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジオールのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのカプロラクトン付加物(n+m=2〜5)のジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート及びビス(2−(メタ)アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレートが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0025】
3官能以上のポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリスエトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性トリメチロールプロパントリアクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート及びトリス(2−(メタ)アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレートが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0026】
エポキシポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるものが挙げられる。
【0027】
上記のポリエポキシ樹脂としては、例えば、ジオール化合物とエピクロルヒドリンとの縮合反応で得られるもの及びポリオレフィン樹脂と過酸化水素との反応で得られるものが挙げられる。
【0028】
上記のジオール化合物としては、例えば、アルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリブタジエンジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、アミドジオール、ビスフェノール類及びスピログリコール化合物が挙げられる。
【0029】
上記のビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びそれらの水素添加物又はアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0030】
ウレタンポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、前記のエポキシポリ(メタ)アクリレートと、有機ジイソシアネート化合物及び必要に応じてヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるもの;有機ジイソシアネート化合物又はジオール化合物に有機ジイソシアネート化合物を付加して得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの;及びジオール化合物に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基と1個のイソシアネート基を有する有機モノイソシアネート化合物を反応させて得られるものが挙げられる。
【0031】
上記の有機ジイソシアネート化合物としては分子中に2個のイソシアネート基を有するものが挙げられる。
【0032】
有機ジイソシアネート化合物の具体例としては、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類;キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート類;及びこれらのビューレット体又はアロハネート体が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0033】
上記のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、分子中に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン又はγ−ブチロラクトンの開環付加物(例えば、ダイセル化学(株)製プラクセルF単量体及びUCC社製トーンM単量体)、(メタ)アクリル酸へのエチレンオキシドの開環付加物、(メタ)アクリル酸へのプロピレンオキシドの開環付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの2量体又は3量体、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の反応物、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−2−エトキシプロピルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0035】
ポリエステルポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等から選ばれる多塩基酸と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等から選ばれる多価アルコールと、(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応で得られるものが挙げられる。
【0036】
また、上記以外に、その他の不飽和二重結合含有化合物として、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン及びN−ビニルカプロラクタムが挙げられる。
【0037】
前記の化合物の中で、その他の不飽和二重結合含有化合物としては、得られる硬化物に耐熱性を付与できる点で3官能以上のポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(ポリ)メタクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートが好ましく、得られる硬化物の強度向上の点でウレタンポリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0038】
また、ウレタンポリ(メタ)アクリレートの中で、得られる硬化物に強度と耐熱性を付与できる点でエポキシポリ(メタ)アクリレート類と、有機ジイソシアネート化合物及び必要に応じてヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの;並びに有機ジイソシアネート化合物にヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるものが好ましい。
【0039】
上記のウレタンポリ(メタ)アクリレートの原料として用いられるエポキシポリ(メタ)アクリレートとしては、得られる硬化物の耐熱性の点でビスフェノール系ポリエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA及びビスフェノールFから選ばれる少なくとも1種のビスフェノール系ポリエポキシ樹脂がより好ましい。
【0040】
上記のウレタンポリ(メタ)アクリレートの原料として用いられる有機ジイソシアネート化合物としては、得られる硬化物の耐熱性及び強度の点で芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及び芳香脂肪族ジイソシアネートが好ましい。これらの中で、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネートが、本発明組成物の粘度が作業上好ましい範囲に抑えられる点及び得られる硬化物の層の厚み制御が容易となる点でより好ましい。
【0041】
上記のウレタンポリ(メタ)アクリレートの原料として用いられるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、本発明組成物の粘度が作業上好ましい範囲に抑えられる点及び得られる硬化物の層の厚み制御が容易となる点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0042】
上記のエポキシポリ(メタ)アクリレートと、有機ジイソシアネート化合物及び必要に応じてヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタンポリ(メタ)アクリレートの製造方法としては公知の方法が挙げられる。その製造方法の具体例としては、ポリエポキシ樹脂のエポキシ基と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基とを反応させて得られる生成物中の水酸基に有機ジイソシアネート化合物のイソシアネート基を反応させる方法が挙げられる。
【0043】
上記のポリエポキシ樹脂のエポキシ基量、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基量及び生成物中の水酸基量の比率は特に限定されないが、ポリエポキシ樹脂のエポキシ基量と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基量は吸湿性の点で当量比が好ましい。また、上記の生成物中の水酸基量及び有機ジイソシアネート化合物のイソシアネート基量としては、0.5≦(有機ジイソシアネート化合物のイソシアネート基量)/(上記の生成物中の水酸基量)≦1.0が好ましい。この比率が0.5以上で強靭性及び低吸湿性に優れた硬化物が得られる傾向がある。また、この比率が1.0以下で本発明組成物の粘度が作業上好ましい範囲に抑えられ、基材への塗工性や得られる硬化物層の厚み制御の容易さに優れる傾向がある。
【0044】
また、前記の有機ジイソシアネート化合物にヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタンポリ(メタ)アクリレートの製造方法としては公知の方法が挙げられる。このときの有機ジイソシアネート化合物量及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート量の比率は特に限定されないが、有機ジイソシアネート化合物のイソシアネート基量とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの水酸基量の比率は0.7≦(有機ジイソシアネート化合物のイソシアネート基量)/(ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの水酸基量)≦1.0が好ましい。この比率が0.7以上で得られる硬化物に強靭性を付与できる傾向があり、1.0以下で得られる組成物の粘度が作業上好ましい範囲に抑えられ、基材への塗工性や得られる硬化物層の厚み制御の容易さに優れる傾向がある。
【0045】
本発明組成物中のその他の不飽和二重結合含有化合物の配合量は特に限定されないが、本発明組成物中に2〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。その他の不飽和二重結合含有化合物の配合量が2質量%以上で得られる硬化物の硬度が良好となる傾向がある。また、その他の不飽和二重結合含有化合物の配合量が50質量%以下で、支持体への接着性に優れる傾向がある。
【0046】
本発明においては、本発明組成物中にその他の不飽和二重結合含有化合物が本発明組成物中に2〜50質量%配合される場合、(A)成分の配合量は本発明組成物中に5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。また、(B)成分の配合量は本発明組成物中に20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
【0047】
本発明においては、本発明組成物中に、必要に応じて非反応性熱可塑性高分子、有機ベントン、ポリアミド、マイクロゲル、繊維素系樹脂等のレオロジー調節剤、シリコーンに代表される表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、垂れ止め剤等の添加剤を公知の手段を用いて適宜配合することができる。
【0048】
また、本発明組成物には本発明組成物の硬化収縮を低減し、得られる硬化物の表面硬度や耐熱性を付与するために無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー等の各種フィラーを添加することができる。
【0049】
本発明組成物を微細賦型に適用する場合の微細賦型としては、例えば、凹凸構造を支持体表面に賦型することが挙げられる。凹凸構造における凹凸のピッチの具体例としては0.01μm程度〜1,000μm程度で、その凸部の高さと凹部の深さとの高低差が0.01μm程度〜100μm程度であるものが挙げられる。また、支持体と本発明組成物の硬化物の界面から凸部の最大値までの厚みが300μm程度以下のものが具体例として挙げられる。
【0050】
<硬化物>
本発明においては、本発明組成物は活性エネルギー線の照射により硬化され、硬化物が得られる。
使用される活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線及び紫外線が挙げられ、汎用性の点で紫外線が好ましい。
【0051】
紫外線発生源としては、例えば、実用性や経済性の点で、一般的に用いられている紫外線ランプが挙げられる。
紫外線ランプとしては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ及びマグネトロンを利用した無電極UVランプが挙げられる。
【0052】
<支持体>
本発明においては、本発明組成物の硬化物は支持体の表面に積層され、積層体として使用することが好適である。
【0053】
本発明に使用される支持体の材料としては、例えば、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、結晶性ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等の樹脂及びガラスが挙げられる。これらの中で、透明性の点でポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂及びガラスが好ましい。
支持体の形状としては、例えば、フィルム状物及び板状物が挙げられる。
【0054】
本発明において、支持体の表面に微細賦型等を施す場合には、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
まず、本発明組成物を所望の形状を有する金型に塗付する。次いで、本発明組成物の塗付面上に支持体を圧接させた後、支持体面側又は金型面側から活性エネルギー線を照射し、本発明組成物を硬化させる。この際、必要に応じて支持体の本発明組成物が接触する面に公知の方法及び処方にて易接着処理を施すことができる。
【0055】
<金型>
本発明で使用される金型は特に限定されるものではなく、例えば、前述した微細賦型の例として挙げた凹凸形状を有するものが挙げられる。また、金型の材質も、金属だけでなく、樹脂、ガラス等、目的に応じて任意のものを使用することができる。
【0056】
<積層体>
本発明の積層体は支持体の表面に本発明組成物の硬化物が積層されたものである。
本発明の積層体の形状としては、例えば、フィルム状物及び板状物が挙げられる。
【0057】
本発明の積層体の構造としては支持体の表面に硬化物が積層されていればよく、支持体の表面に直接硬化物が積層されたものであってもよいし、支持体の表面に中間層を介して硬化物が積層されたものでもよい。
中間層を使用する場合、目的に応じて公知のものを使用することができる。
【0058】
本発明においては、目的に応じて、積層体の硬化物の層の表面に更に反射防止層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、選択波長吸収層、電磁波シールド層、防汚層等の各種機能膜層を形成することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって、本発明を更に詳しく説明する。尚、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。また、活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物の評価方法は以下の通りである。
【0060】
(1)注型作業性
活性エネルギー線硬化性組成物の25℃における粘度をE型粘度計(東機産業(株)製TVE−20H型粘度計)を用いて測定し、下記基準で注型作業性を評価した。
○:活性エネルギー線硬化性組成物の粘度が500mPa・s以下で、注型作業性が良好である。
×:活性エネルギー線硬化性組成物の粘度が500mPa・sを超え、注型作業性が不良である。
【0061】
(2)耐熱性
長さ5mm、幅5mm及び厚み1mmの活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物を試験片として使用した。試験片のガラス転移温度(Tg)を熱機械試験機(TMA)(アルバック理工(株)製、商品名:TM9400)を用いて測定し、下記基準で耐熱性を評価した。
○:Tgが150℃以上で、耐熱性が良好である。
×:Tgが150℃未満で、耐熱性が不良である。
【0062】
(3)吸湿性
長さ40mm、幅40mm及び厚み1mmの活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物を湿潤試験機(スガ試験機(株)製、商品名:CT―3H)内に設置した。次いで、試験機内を温度50℃及び湿度98%の雰囲気として24時間放置し、試験前後の試験片の重量差より吸湿量を算出し、下記基準で吸湿性を評価した。
○:吸湿量が1.5%以下で、吸湿性は良好である。
×:吸湿量が1.5%を超え、吸湿性は不良である。
【0063】
[実施例1]
トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製、商品名:タイク)30部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレートDCPA)70部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア184)3部を配合し、活性エネルギー線硬化性組成物(1)を得た。
【0064】
厚さ1mmの両面テープ(綜研化学(株)製、商品名:JETテープJ−7710)で枠を設けた枠内の長さ50mm及び枠内の幅50mmのガラス板上に活性エネルギー線硬化性組成物(1)を数滴垂らして塗付し、ガラス板上に活性エネルギー線硬化性組成物(1)の塗膜を形成した。次いで、この塗膜の表面に、厚み188mmの易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、商品名:コスモシャインA4100)を、易接着処理面が塗膜面と接触するように圧接した。この後、高圧水銀灯を用い、ピーク照度87mW/cm、積算光量3,000mJ/cm(波長320〜380nmの紫外線積算エネルギー量)の紫外線をポリエチレンテレフタレートフィルム面側から照射して活性エネルギー線硬化性組成物(1)を硬化させ、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に厚み1mmの活性エネルギー線硬化性組成物(1)の硬化物(1)が積層された積層体を得た。尚、ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着処理面の反対面が塗膜面と接触するようにしたこと以外は上記と同様にして硬化物(1)を得、それをフィルムから剥離させて硬化物(1)の試験片とした。
【0065】
活性エネルギー線硬化性組成物(1)の注型作業性及び硬化物(1)の試験片を用いた各種評価結果を表1に示した。
【0066】
[実施例2、3及び比較例1〜3]
活性エネルギー線硬化性組成物の組成を表1に示す組成とする以外は実施例1と同様にして硬化物を得た。評価結果を表1に示す。
【表1】

【0067】
表中の符号及び略号は下記の通りである。
【0068】
TAIC:トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製、商品名:タイク)
DCPA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレートDCPA)
UA1:芳香族系6官能ウレタンポリアクリレート(ダイセルUCB(株)製、商品名:エベクリル220)
IT−1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア184)
TAEIC:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成(株)製、商品名:アロニックスM−315)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:ビスコート#295)
NDDA:1,9−ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:ビスコート#260)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアリルイソシアヌレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性組成物
【請求項2】
請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を金型の表面に塗付した後、活性エネルギー線硬化性組成物の塗付面に支持体を圧接させ、次いで支持体面側又は金型面側から支持体又は金型を通して活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる硬化物の製造方法。
【請求項3】
支持体の表面に請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物が積層された積層体。
【請求項4】
支持体の表面に請求項2に記載の方法で得られた硬化物が積層された積層体。

【公開番号】特開2009−227778(P2009−227778A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73594(P2008−73594)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】