説明

活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤、それを塗布した活性エネルギー線粘着力消失型粘着シート

【課題】光重合開始剤がエッチング液等の薬液へ溶出しない活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤、および、それを塗布した活性エネルギー線粘着力消失型粘着シートを提供する。
【解決手段】下記一般式で表される光重合開始剤と、活性エネルギー線反応性化合物と、弾性重合体とを含む活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リジッドプリント回路基板・フレキシブル回路基板製造工程、半導体素子収納用パーケージ、金属、プラスチック及び半導体ウエハ等の表面もしくは裏面保護又は補強等に用いられる活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤、それを塗布した活性エネルギー線粘着力消失型粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント回路基板や半導体素子収納用パーケージ等に使用される回路基板は、各種電子機器の高性能化に伴い高密度化が進み、回路幅と回路ピッチを20μm以下にすることが求められている。
【0003】
そこで、微細な回路パターンの形成方法として、紫外線照射により粘着力が低下する感圧接着剤層を担持する粘着シート表面に回路パターン形成用の金属箔を貼付してエッチング法等を用いて金属箔の不要な部分を除去して回路パターンとし、これを転写シートとして有機樹脂を含む絶縁性基板と圧着させたのち、紫外線を照射して粘着力を低下させ、粘着シートを剥離することで回路パターンを絶縁性基板に転写する方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によれば、絶縁基板が各種薬液に接触しないので、薬液による基板の特性低下を防止することができる。また、回路パターンが絶縁基板上に埋め込まれるので、両者の密着性は良好であり、平坦度が高いという利点も有している。
【0004】
また、プリント回路基板を多層化する方法として、紫外線照射により粘着力が低下する感圧接着剤層を担持する粘着シート上に金属製の円錐台突起を形成し、形成された金属製の円錐台突起を絶縁性フィルムに突き刺したのち、紫外線を照射して粘着力を低下させ、粘着シートを剥離することにより配線膜間接続用部材を作成し、これを用いて多層配線回路基板を製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
金属製の円錐台突起は、金属層上にエッチングレジストを積層する工程、フォトマスク等を介して露光、現像する工程、ケミカルエッチング等により円錐台突起非形成部の金属層を除去する工程、及び金属製の円錐台突起上に残存したエッチングレジストをカセイソーダ等のアルカリ水溶液を用いて剥離する工程を経て粘着シート状に形成される。
【0006】
紫外線照射により粘着力が低下する感圧接着剤としては、半導体ウエハのダイシング工程用フィルムに用いられているような紫外線照射により粘着力が低下する感圧接着剤が知られている。公知の紫外線照射により粘着力が低下する感圧接着剤は、メインポリマー、例えばアクリル系ポリマーと、光重合開始剤や紫外線反応性化合物、例えばアクリロイル基やメタクリロイル基を2個以上有するモノマーやオリゴマーと、その他の硬化剤等の添加剤とが配合されたものである。
【0007】
しかし、公知の紫外線照射により粘着力が低下する感圧接着剤を用いて回路パターンを形成した場合、次に挙げる重大な問題が発生する。すなわち、エッチング工程で用いられる塩化第二鉄や塩化第二銅などの酸性水溶液や、その後のエッチングレジスト剥離工程で用いられるカセイソーダなどのアルカリ性水溶液等の薬液に、回路パターン形成部と感圧接着剤層の界面、及び回路パターン非形成部の感圧接着剤が暴露されるため、感圧接着剤中に配合されている光重合開始剤や紫外線反応性化合物等の低分子成分がそれら薬液中に溶出してしまう。これら溶出分の中でも光重合開始剤の溶出が重大である。
【0008】
回路パターン非形成部や回路パターン形成部と感圧接着剤層の界面から光重合開始剤が溶出すると、紫外線照射を行ったときに粘着力が低下しなければならない回路パターン形成部の感圧接着剤層の粘着力が低下しないため、剥離操作の際に回路パターン金属表面に感圧接着剤が残留し、剥離後に回路側へ汚染が生じる。
【0009】
また、回路パターンを絶縁性基板に転写する際に、紫外線を照射して粘着シートを剥離するが、光重合開始剤が溶出したことで絶縁性基板と回路パターン非形成部の間の粘着力が低下しないため、粘着シートの剥離が難しくなりプリント回路基板の歩留まりの低下や生産性及び作業性が大きく低下する。
【0010】
【特許文献1】特開平10−173316号公報
【特許文献2】特開2000−309370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、光重合開始剤がエッチング液等の薬液へ溶出しないことで、エッチング後も活性エネルギー線照射により粘着力消失が可能な活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤、それを塗布した活性エネルギー線粘着力消失型粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、以上の諸問題点を考慮し解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される光重合開始剤と、活性エネルギー線反応性化合物と、弾性重合体とを含む活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤に関する。
【0013】
一般式(1)
【化1】

【0014】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、または置換もしくは未置換のアルケニル基を表す。また、R1とR2とが一体となって環を形成してもよい。
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、またはCOR5を表す。また、R3とR4とが一体となって環を形成してもよい。
5は、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、または置換もしくは未置換の複素環オキシ基を表す。
Xは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族環縮合基を表し、
Ar1は下記一般式(2)を表す。)
【0015】
一般式(2)
【化2】

【0016】
(式中、R6〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアシル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアシルオキシ基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニルオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の複素環チオ基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のジアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、置換もしくは未置換のジアリールアミノ基、置換もしくは未置換のアルキルアリールアミノ基、またはハロゲン原子を表す。また、R6〜R10は、一体となって芳香環を形成してもよい。)
【0017】
更に本発明は、Xが、下記一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、または一般式(6)である、上記活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤に関する。
【0018】
一般式(3)
【化3】

【0019】
一般式(4)
【化4】

【0020】
一般式(5)
【化5】



【0021】
一般式(6)
【化6】

【0022】
(式中、YおよびZは、それぞれ独立に、−O−、−S−、>S=O、>SO2、−N(R11)−、−CO−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH=CH−、炭素原子数2〜6のアルキリデン基もしくは直接結合を表し、
Uは、−O−、−S−、または−N(R11)−を表し、
VおよびWは、窒素原子を表し、
11は、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、または置換もしくは未置換の複素環オキシ基を表す。)
【0023】
更に本発明は、Xが、一般式(3)である、上記活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤に関する。
【0024】
更に本発明は、基材フィルム上に、上記活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤からなる層を積層した活性エネルギー線粘着力消失型粘着シートに関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤、及びそれを塗布した活性エネルギー線粘着力消失型粘着シートは、感圧接着剤層中に含まれる光重合開始剤がエッチング液等の薬液中へ溶出することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤は、感圧性であることから、圧力をかけて被着体と接着させることができ、更に、活性エネルギー線を照射することにより粘着力を低下させ、基材フィルムなどから容易に剥離することができる。本発明による活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤は、光重合開始剤、活性エネルギー線反応性化合物を含み、光重合開始剤は、活性エネルギー線照射による硬化前の感圧接着剤が、例えばエッチング液に触れたときに、エッチング液に溶出し難いものである。
【0027】
まず、光重合開始剤について説明する。本発明のラジカル重合開始剤は一般式(1)で表記される構造を有しており、α−アミノアセトフェノン誘導体のベンゼン環部位を、芳香族アシル基を有するヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる芳香族環縮合基に置き替えた特徴的な構造を有する。この芳香族環縮合基を導入することにより、本発明の化合物は250nmから450nmの波長領域に好適な光の吸収特性を持つことができ、光照射に対する大幅な高感度化を実現している。また、この構造を有することにより、本発明の化合物は該波長領域の光照射に対して、非常に効率的に分解するため、その結果、多量のラジカルを効率的に発生する高感度な材料として機能することが可能となっている。
【0028】
一般式(1)
【化7】

【0029】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、または置換もしくは未置換のアルケニル基を表す。また、R1とR2とが一体となって環を形成してもよい。
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、またはCOR5を表す。また、R3とR4とが一体となって環を形成してもよい。
5は、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、または置換もしくは未置換の複素環オキシ基を表す。
Xは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族環縮合基を表し、
Ar1は下記一般式(2)を表す。)



【0030】
一般式(2)
【化8】

【0031】
(式中、R6〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアシル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアシルオキシ基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニルオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の複素環チオ基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のジアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、置換もしくは未置換のジアリールアミノ基、置換もしくは未置換のアルキルアリールアミノ基、またはハロゲン原子を表す。また、R6〜R10は、一体となって芳香環を形成してもよい。)
【0032】
次に、本発明の光重合開始剤の構造について詳細に説明する。
【0033】
本発明の光重合開始剤はその特性を阻害しない範囲において、一般式(1)に示したように、各種の置換基を導入することが可能である。置換基の導入により、本発明の光重合開始剤は吸収極大波長や透過率などのエネルギー線の吸収特性、併用する樹脂や溶剤に対する溶解度を適当に調整して用いることができる。
【0034】
一般式(1)における置換基R1およびR2は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、または置換もしくは未置換のアルケニル基である。
【0035】
置換もしくは未置換のアルキル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
置換もしくは未置換のアリール基としては、炭素数6から24の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、9−アンスリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、2−フルオレニル基、9−フルオレニル基、3−ペリレニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,5−キシリル基、メシチル基、p−クメニル基、p−ドデシルフェニル基、p−シクロヘキシルフェニル基、4−ビフェニル基、o−フルオロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−カルボキシフェニル基、o−メルカプトフェニル基、p−シアノフェニル基、m−ニトロフェニル基、m−アジドフェニル基等が挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
置換もしくは未置換の複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素原子数4〜24の芳香族あるいは脂肪族の複素環基が挙げられ、2−チエニル基、2−ベンゾチエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、3−チアントレニル基、2−チアンスレニル基、2−フリル基、2−ベンゾフリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、2−アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、3−フェニキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、チオキサントリル基、4−キノリニル基、4−イソキノリル基、3−フェノチアジニル基、2−フェノキサチイニル基、3−クマリニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
置換もしくは未置換のアルケニル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルケニル基が挙げられ、それらは構造中に複数の炭素−炭素二重結合を有していてもよく、具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、R1およびR2は、上記以外の置換位置で一般式(1)の炭素原子と結合していてもよく、それらも本発明のR1およびR2で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0039】
また、R1とR2は一体となって環を形成してもよい。
【0040】
1とR2が一体となって環を形成する場合、形成される部位としては、置換もしくは未置換の、炭素原子数2〜8からなるアルキレン基、炭素原子数3〜9のオキサアルキレン基、もしくは炭素原子数3〜9のアザアルキレン基が挙げられる。
【0041】
ここで、炭素原子数2〜8からなるアルキレン基である場合に形成される環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
炭素原子数3〜9のオキサアルキレン基、もしくは炭素原子数3〜9のアザアルキレン基である場合に形成される環としては、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環、ピペリジン環等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
上記置換基のうち、R1としては合成の難易度の面や、ラジカル発生剤としての感度の点で、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、ベンジル基、p−メチルベンジル基、または2−プロペニル基が特に好ましい。
【0044】
一般式(1)中の置換基R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、またはCOR5である。
【0045】
3およびR4における置換もしくは未置換のアルキル基としては、前述のアルキル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
3およびR4における置換もしくは未置換のアリール基としては、前述のアリール基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
3およびR4における置換もしくは未置換の複素環基としては、前述の複素環基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
3およびR4における置換もしくは未置換のアルケニル基としては、前述のアルケニル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
5は、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、または置換もしくは未置換の複素環オキシ基である。
【0050】
5における置換もしくは未置換のアルキル基としては、前述のアルキル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
5における置換もしくは未置換のアリール基としては、前述のアリール基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
5における置換もしくは未置換の複素環基としては、前述の複素環基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
5における置換もしくは未置換のアルケニル基としては、前述のアルケニル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
5における置換もしくは未置換のアルコキシル基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基があげられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
5における置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、炭素数4〜18の単環または縮合多環アリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1ーナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、アリール基と酸素原子が上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR5で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0056】
一般式(1)中の置換基R5における置換もしくは未置換の複素環オキシ基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環または縮合多環状の複素環オキシ基が挙げられ、具体例としては、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、複素環基と酸素原子が上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR5で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0057】
また、R3とR4は一体となって環を形成してもよい。
【0058】
3およびR4が一体となって環を形成する場合、形成される部位としては、炭素原子数2〜6のアルキレン基、炭素原子数2〜6のオキサアルキレン基、炭素原子数2〜6のチアアルキレン基、もしくは炭素原子数2〜6のアザアルキレン基が挙げられる。
【0059】
ここで、炭素原子数2〜6のアルキレン基である場合に形成される環としては、プロピレンイミン環、ピロリジン環、ピペリジン環、またはピペコリン環等を形成することを例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
炭素原子数2〜6のオキサアルキレン基、炭素原子数2〜6のチアアルキレン基、もしくは炭素原子数2〜6のアザアルキレン基である場合に形成される環としては、モルホリン環、チオモルホリン環、チアゾリジン環、ピペラジン環、またはホモピペラジン環等を形成することを例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
上記置換基のうち、R3およびR4としては合成の難易度の面や、ラジカル発生剤としての感度の点で、アルキル基、アルケニル基、R3およびR4が一体となって形成する炭素原子数2〜6のアルキレン基、R3およびR4が一体となって形成する炭素原子数2〜6のオキサアルキレン基、R3およびR4が一体となって形成する炭素原子数2〜6のチアアルキレン基もしくは、R3およびR4が一体となって形成する炭素原子数2〜6のアザアルキレン基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、またはピペラジノ基が特に好ましい。
【0062】
一般式(1)中のAr1は、上記一般式(2)で表される。
【0063】
一般式(2)中の置換基R6〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアシル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアシルオキシ基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニルオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の複素環チオ基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のジアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、置換もしくは未置換のジアリールアミノ基、置換もしくは未置換のアルキルアリールアミノ基、置換もしくは未置換のベンジルアミノ基、置換もしくは未置換のジベンジルアミノ基、またはハロゲン原子である。
【0064】
6〜R10における置換もしくは未置換のアルキル基としては、前述のアルキル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
6〜R10における置換もしくは未置換のアリール基としては、前述のアリール基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
6〜R10における置換もしくは未置換の複素環基としては、前述の複素環基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
6〜R10における置換もしくは未置換のアルケニル基としては、前述のアルケニル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
6〜R10における置換もしくは未置換のアシル基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族基が結合したカルボニル基、炭素数6から18の単環状あるいは縮合多環状アリール基が結合したカルボニル基、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環または縮合多環状の複素環基が結合したカルボニル基が挙げられ、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、シンナモイル基ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、9−アンスリルカルボニル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、アリール基とカルボニル基、複素環基とカルボニル基は、それぞれ上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR6〜R10で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0069】
6〜R10における置換もしくは未置換のアルコキシル基としては、置換基R5におけるアルコキシル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
6〜R10における置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、置換基R5におけるアリールオキシ基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
6〜R10における置換もしくは未置換の複素環オキシ基としては、置換基R5における複素環オキシ基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
6〜R10における置換もしくは未置換のアシルオキシ基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族基が結合したカルボニルオキシ基、あるいは、炭素数6から18の単環状あるいは縮合アリール基が結合したカルボニルオキシ基、あるいは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環または縮合多環状の複素環基が結合したカルボニルオキシ基が挙げられ、具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、オレオイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、2−ナフトイルオキシ基、シンナモイルオキシ基、3−フロイルオキシ基、2−テノイルオキシ基、ニコチノイルオキシ基、イソニコチノイルオキシ基、9−アンスロイルオキシ基、5−ナフタセノイルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、アリール基とカルボニルオキシ基、複素環基とカルボニルオキシ基は、それぞれ上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR6〜R10で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0073】
6〜R10における置換もしくは未置換のアルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素原子数1〜12の炭酸エステル基が挙げられ、具体例としてはtert−ブトキシカルボニルオキシ基、tert−ペンチルオキシカルボニルオキシ基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルオキシ基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルオキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルオキシ基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
6〜R10における置換もしくは未置換のアルキルチオ基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキルチオ基が挙げられ、具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
6〜R10における置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、炭素数4〜18の単環または縮合多環アリールチオ基が挙げられ、具体例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、9−アンスリルチオ基、9−フェナントリルチオ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、アリール基と硫黄原子は上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR6〜R10で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0076】
6〜R10における置換もしくは未置換の複素環チオ基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環または縮合多環複素環チオ基が挙げられ、具体例としては、2−フリルチオ基、2−チエニルチオ基、2−ピロリルチオ基、6−インドリルチオ基、2−ベンゾフリルチオ基、2−ベンゾチエニルチオ基、2−カルバゾリルチオ基、3−カルバゾリルチオ基、4−カルバゾリルチオ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、複素環基と硫黄原子は、上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR6〜R10で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0077】
6〜R10における置換もしくは未置換のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、イソブチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、sec−ペンチルアミノ基、tert−ペンチルアミノ基、tert−オクチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、シクロドデシルアミノ基、1−アダマンタミノ基、2−アダマンタミノ基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
6〜R10における置換もしくは未置換のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、メチルイソブチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
6〜R10における置換もしくは未置換のアリールアミノ基としては、アニリノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、o−トルイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基、2−ビフェニルアミノ基、3−ビフェニルアミノ基、4−ビフェニルアミノ基、1−フルオレンアミノ基、2−フルオレンアミノ基、2−チアゾールアミノ基、p−ターフェニルアミノ基、インドリノ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
6〜R10における置換もしくは未置換のジアリールアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−フェニル−1−ナフチルアミノ基、N−フェニル−2−ナフチルアミノ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
6〜R10における置換もしくは未置換のアルキルアリールアミノ基としては、N−メチルアニリノ基、N−メチル−2−ピリジノ基、N−エチルアニリノ基、N−プロピルアニリノ基、N−ブチルアニリノ基、N−イソプロピル、N−ペンチルアニリノ基、N−エチルアニリノ基、N−メチル−1−ナフチルアミノ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
6〜R10におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0083】
上記置換基のうち、置換基R6〜R10としては、合成の難易度の面や、ラジカル発生剤としての感度の点で、置換基R6〜R10全てが同時に水素原子、置換基R6がメチル基で置換基R7〜R10が同時に水素原子、置換基R10がメチル基で置換基R6〜R9が同時に水素原子、置換基R8がメチル基で置換基R6、R7、R9、およびR10が同時に水素原子、である場合が特に好ましい。
【0084】
Ar1がアルキル基である場合は、本発明のラジカル重合開始剤に比べて、感度の面で劣る。つまり、高感度化のためには、本発明のように、Ar1が芳香族基であることが必要である。
【0085】
一般式(1)中のXは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族環縮合基である。
【0086】
本発明において、芳香族環縮合基とは、2つ以上の環が縮合したものであって、少なくとも1つの環が芳香族環であるものを示す。特に、前記芳香族環は、一般式(1)の2つのカルボニル基のうちの少なくとも一方と共役するように結合していることが好ましい。
【0087】
Xにおけるヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族環縮合基としては、特に限定はなく、ヘテロ原子の種類、ヘテロ原子の数、ヘテロ原子の置換位置についても特に限定はない。
【0088】
Xにおけるヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族基におけるヘテロ原子の種類は、特に限定はないが、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。
【0089】
Xにおけるヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族基におけるヘテロ原子の数は、特に限定はないが、0〜4個が好ましい。
【0090】
Xにおけるヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族基におけるヘテロ原子の置換位置は、特に限定はないが、Xの含む芳香族環と一般式(1)の2つのカルボニル基のうちの少なくとも一方との共役を遮らないように結合していることが好ましい。
【0091】
Xにおけるヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントレニル基、ナフタセニル基、ピレニル基、フェニルナフチル基、インデニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、アセナフテニル基、フラニル基、ピロリル基、チエニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インデニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、フルオレニル基ジベンゾ〔b,e〕〔1,4〕ジオキシニル基、フェノキサチイニル基、フェノチアジニル基、チアントレニル基、キサンテニル基、チオキサンテニル基、フェノキサジニル基、フェナジニル基、アクリジニル基、キサントニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、1,2−ベンズイソキサゾリル基、フェナナントリジニル基、フェナントロリニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、イミノスチルベニル基、アクリドニル基、トリフェニルアミン基、N−フェニルピロリル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
Xにおけるヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族基の好ましい例としては、一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、または一般式(6)である。
【0093】
一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、または一般式(6)中の置換基R11は、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、または置換もしくは未置換の複素環オキシ基である。
【0094】
11における置換もしくは未置換のアルキル基としては、前述のアルキル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
11における置換もしくは未置換のアリール基としては、前述のアリール基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
11における置換もしくは未置換の複素環基としては、前述の複素環基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
11における置換もしくは未置換のアルケニル基としては、前述のアルケニル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
11における置換もしくは未置換のアルコキシル基としては、前述のアルコキシル基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
11における置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、前述のアリールオキシ基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
11における置換もしくは未置換の複素環オキシ基としては、前述の複素環オキシ基として例示したものと同一の置換基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、または一般式(6)としては、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インデニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、フルオレニル基ジベンゾ〔b,e〕〔1,4〕ジオキシニル基、フェノキサチイニル基、フェノチアジニル基、チアントレニル基、キサンテニル基、チオキサンテニル基、フェノキサジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、1,2−ベンズイソキサゾリル基、イミノスチルベニル基、キサントニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、または一般式(6)のうち、合成の難易度の面や、ラジカル発生剤としての感度の点で、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、フルオレニル基ジベンゾ〔b,e〕〔1,4〕ジオキシニル基、フェノキサチイニル基、フェノチアジニル基、チアントレニル基、キサンテニル基、チオキサンテニル基、フェノキサジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基である場合が特に好ましい。
【0102】
上述したR1〜R11が有しても良い置換基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
【0103】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0104】
アルキル基としては炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0105】
アリール基としては、炭素数6〜18の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、1ーナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、9−フルオレニル基等が挙げられる。
【0106】
複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環または縮合多環複素環基が挙げられ、具体例としては、2−フラニル基、2−チエニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−アクリジニル基等が挙げられる。
【0107】
アシル基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニル基、あるいは、炭素数6から18の単環状あるいは縮合多環状アリール基が結合したカルボニル基、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状あるいは縮合多環状複素環基が結合したカルボニル基が挙げられ、それらは構造中に不飽和結合を有していてもよく、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、シンナモイル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、9−アンスロイル基、5−ナフタセノイル基等が挙げられる。
【0108】
アルコキシル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状あるいは縮合多環状アルコキシル基があげられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基等が挙げられる。
【0109】
アリールオキシ基としては、炭素数6〜18の単環状または縮合多環状アリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1ーナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基等が挙げられる。
【0110】
複素環オキシ基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状または縮合多環状複素環オキシ基が挙げられ、具体例としては、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基等が挙げられる。
【0111】
アシルオキシ基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニルオキシ基、あるいは、炭素数6から18の単環状または縮合多環状アリール基が結合したカルボニルオキシ基、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状または縮合多環状複素環基が結合したカルボニルオキシ基が挙げられ、具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、オレオイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、2−ナフトイルオキシ基、シンナモイルオキシ基、3−フロイルオキシ基、2−テノイルオキシ基、ニコチノイルオキシ基、イソニコチノイルオキシ基、9−アンスロイルオキシ基、5−ナフタセノイルオキシ基等が挙げられる。
【0112】
アルキルチオ基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキルチオ基が挙げられ、具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等が挙げられる。
【0113】
アリールチオ基としては、炭素数6〜18の単環状または縮合多環状アリールチオ基が挙げられ、具体例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、9−アンスリルチオ基、9−フェナントリルチオ基等が挙げられる。
【0114】
複素環チオ基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状または縮合多環状複素環チオ基が挙げられ、具体例としては、2−フリルチオ基、2−チエニルチオ基、2−ピロリルチオ基、6−インドリルチオ基、2−ベンゾフリルチオ基、2−ベンゾチエニルチオ基、2−カルバゾリルチオ基、3−カルバゾリルチオ基、4−カルバゾリルチオ基等が挙げられる。
【0115】
アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、イソブチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、sec−ペンチルアミノ基、tert−ペンチルアミノ基、tert−オクチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、シクロドデシルアミノ基、1−アダマンタミノ基、2−アダマンタミノ基等が挙げられる。
【0116】
ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、メチルイソブチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基等が挙げられる。
【0117】
アリールアミノ基としては、アニリノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、o−トルイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基、2−ビフェニルアミノ基、3−ビフェニルアミノ基、4−ビフェニルアミノ基、1−フルオレンアミノ基、2−フルオレンアミノ基、2−チアゾールアミノ基、p−ターフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0118】
ジアリールアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−フェニル−1−ナフチルアミノ基、N−フェニル−2−ナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0119】
アルキルアリールアミノ基としては、N−メチルアニリノ基、N−メチル−2−ピリジノ基、N−エチルアニリノ基、N−プロピルアニリノ基、N−ブチルアニリノ基、N−イソプロピル、N−ペンチルアニリノ基、N−エチルアニリノ基、N−メチル−1−ナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0120】
以上述べた光重合開始剤として、特に好ましい具体例を以下に示すが、本発明のラジカル重合開始剤の構造はそれらに限定されるものではない。
【0121】
【化9】

【0122】
【化10】

【0123】
【化11】

【0124】
【化12】

【0125】
【化13】

【0126】
【化14】

【0127】
【化15】

【0128】
【化16】

【0129】
【化17】

【0130】
【化18】

【0131】
【化19】

【0132】
【化20】

【0133】
【化21】

【0134】
【化22】

【0135】
【化23】

【0136】
【化24】

【0137】
【化25】

【0138】
【化26】

【0139】
【化27】

【0140】
【化28】

【0141】
【化29】

【0142】
【化30】

【0143】
【化31】

【0144】
【化32】

【0145】
【化33】

【0146】
【化34】

【0147】
活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤中の光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線反応性化合物100重量部に対して0.1〜30重量部、更に1〜25重量部が好ましい。光重合開始剤の含有量が0.1重量部未満であると、活性エネルギー線を照射しても活性エネルギー線反応性化合物を充分に反応させることが難しく、30重量部を越えると増加量に相当する効果を得ることができないので経済的に不利である。
【0148】
また、本発明の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤はさらに必要に応じて、他の光重合開始剤を併用することが可能である。
本発明の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤と混合して併用可能な他の光重合開始剤としては、イルガキュアー651、イルガキュアー184、ダロキュアー1173、イルガキュアー500、イルガキュアー1000、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379、イルガキュアー1700、イルガキュアー149、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、イルガキュアー819、イルガキュアー784、イルガキュアー261、イルガキュアーOXE−01(CGI124)、CGI242(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)、アデカオプトマーN1414、アデカオプトマーN1717(旭電化社)、Esacure1001M(Lamberti社)、ルシリンTPO(BASF社)、特公昭59−1281号公報、特公昭61−9621号公報ならびに特開昭60−60104号公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号公報ならびに特開昭61−243807号公報記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号公報、特公昭44−6413号公報、特公昭47−1604号公報ならびにUSP第3567453号明細書記載のジアゾニウム化合物公報、USP第2848328号明細書、USP第2852379号明細書ならびにUSP第2940853号明細書記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号公報、特公昭37−13109号公報、特公昭38−18015号公報ならびに特公昭45−9610号公報記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号公報、特開昭59−140203号公報ならびに「マクロモレキュルス(MACROMOLECULES)」、第10巻、第1307頁(1977年)記載のヨードニウム化合物をはじめとする各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109851号明細書、ヨーロッパ特許第126712号明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.IMAG.SCI.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の金属アレン錯体、特開昭61−151197号公報記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(COORDINATION CHEMISTRY REVIEW)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号公報記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報記載のアルミナート錯体、特開平2−157760号公報記載のホウ酸塩化合物、特開昭55−127550号公報ならびに特開昭60−202437号公報記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物、特開平5−213861号公報、特開平5−255347号公報、特開平5−255421号公報、特開平6−157623号公報、特開2000−344812号公報、特開2002−265512号公報、特願2004−053009号公報、ならびに特願2004−263413号公報記載のスルホニウム錯体またはオキソスルホニウム錯体、特開2001−264530号公報、特開2001−261761号公報、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、USP3558309号明細書(1971年)、USP4202697号明細書(1980年)、特開昭61−24558号公報、特表2004−534797号公報、ならびに特開2004−359639号公報記載のオキシムエステル化合物、特表2002−530372号公報記載の二官能性光開始剤などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0149】
また、本発明の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤はさらに必要に応じて増感剤を併用してもよい。
【0150】
本発明の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤と混合して併用可能な増感剤としては、ベンゾフェノン類、カルコン誘導体やジベンザルアセトンなどに代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノンなどに代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ−ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体などが挙げられ、その他さらに具体例には大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の色素および増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す色素や増感剤が挙げられ、これらは必要に応じて任意の比率で二種以上用いてもかまわない。上記、増感剤の中でチオキサントン誘導体としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどを挙げることができ、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどを挙げることができ、クマリン類としては、クマリン1、クマリン338、クマリン102などを挙げることができ、ケトクマリン類としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤に含まれる活性エネルギー線反応性化合物は、活性エネルギー線照射により3次元架橋することのできる化合物であり、例えば、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマー又はオリゴマーを挙げることができる。活性エネルギー線反応性化合物は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2個以上有するものであることが好ましく、3個以上有するものが更に好ましく、6個以上有するものが更に好ましい。またアクリロイル基又はメタクリロイル基の数の上限に特に制限は無いが、20個より多くても活性エネルギー線照射後の粘着力低下性はほとんど向上しない。活性エネルギー線反応性化合物は、活性エネルギー線照射により粘着力が充分低下するだけの量が含まれていれば良く、弾性重合体100重量部に対して好ましくは10〜300重量部、より好ましくは20〜200重量部、最も好ましくは30〜200重量部の割合で配合することができる。配合量が10重量部未満のときは、活性エネルギー線を照射したときに粘着力の低下が不十分であり、300重量部を越えると未反応の活性エネルギー線反応性化合物がエッチング化金属体を汚染する恐れがある。また、以下に使用することのできるモノマー及びオリゴマーを例示するが、これらに限定されず公知の化合物が使用できる。
【0152】
上記モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーを挙げることができる。
【0153】
上記オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレートオリゴマーやウレタンアクリレートオリゴマーが挙げられるがウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。ウレタンアクリレートオリゴマーは、例えばポリエステル又はポリエーテル等のポリオール化合物と多価イソシアネート化合物、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアネート等を反応させて得られる末端イソシアネートプレポリマーに、水酸基を有するアクリレートあるいはメタクリレート、例えばアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、又はペンタエリスリトールトリアクリレート等を公知の方法で反応させて得ることができる。ウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量は500〜30,000が好ましく、更に1,000〜20,000が好ましい。ウレタンアクリレートオリゴマー中のアクリロイル基又はメタクリロイル基の数は2〜10個が好ましく、更に4〜10個が好ましく、特に6〜10個が好ましい。
【0154】
活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤には、粘着力や凝集力を付与するために弾性重合体を含有している。弾性重合体は重量平均分子量5,000〜200万を用いることが好ましい。また弾性重合体は反応性官能基を有することも好ましく、例えば、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミド基、又はグリシジル基が挙げられる。
【0155】
弾性重合体としては、例えば(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、シリコン系ポリマー、天然ゴム系ポリマー、又は合成ゴム系ポリマー等が挙げられるが、その中でも(メタ)アクリル系ポリマー、又はウレタン系ポリマーが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーを用いるときは重量平均分子量が20万〜200万であることが好ましく、ウレタン系ポリマーを用いるときは重量平均分子量が5,000〜20万であることが好ましい。
【0156】
(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、及びそれと共重合可能なビニルモノマーの1種又は2種類以上との共重合体である。(メタ)アクリル系ポリマーは、ラジカル重合で合成され、反応形態は溶液重合、懸濁重合、乳化重合、光重合、又は塊状重合等公知の方法による。(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点は、粘着性及びタックを付与するために−60℃〜0℃に設定することが好ましい。−60℃未満のときは凝集力が不足して、0℃を越えると粘着力やタックが不足する。
前記アクリル系ポリマーの共重合に用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸イソブロピル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等を挙げることができる。
【0157】
前記アクリル系ポリマーの共重合に用いられるビニルモノマーとしては、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、又はビニルトルエン等を挙げることができる。
【0158】
ウレタン系ポリマーは、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオール等のポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるものであり、公知の方法及び公知の原料で合成できる。
【0159】
ポリエステルポリオールを構成する酸成分しては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、又はアゼライン酸等が挙げられ、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、又はジエチレングリコール等が挙げられ、ポリオール成分としては、例えば、グリセリン、トチメチロールプロパン、又はペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0160】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、又はポリテトラメチレングリコール等の官能基数が2以上のものが用いられる。
【0161】
ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの数平均分子量は1,000〜5,000が好ましく、2,500〜3,500がより好ましい。ポリオールの数平均分子量が1,000未満では反応が早くゲル化しやすくなり、5,000を超えると反応性が低くなり、得られるウレタン系ポリマーの凝集力も低くなる。ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させる際には、必要に応じて多価アミン類も併用できる。
【0162】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、又は脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0163】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイシシアネート、又は4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0164】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0165】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0166】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソフォロンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、又は1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0167】
また、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、又はイソシアヌレート環を有する3量体等も併用することができる。
【0168】
活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤に含まれる弾性重合体の含有量は特に限定されず、2種類以上用いても良い。
【0169】
活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤は凝集力を付与するため、前記反応性官能基と反応し得る硬化剤を用いることも好ましい。
【0170】
硬化剤としては、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、又はアジリジニル系化合物等が挙げられる。硬化剤の配合量は、感圧接着剤へ凝集力を付与できる量であれば良く特に限定しない。
【0171】
イソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、又はキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート、それらのトリメチロールプロパンアダクト体、ジイソシアネートと水とが反応したビュウレット体、又はイソシアヌレート環を有する3量体等が挙げられる。
【0172】
エポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンジルグリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、又はメタキシレンジアミンテトラグリシジルエーテル、及びそれらの水添化物等が挙げられる。
【0173】
アジリジニル系化合物としては、例えば、N,N’−ジフェニルメタン−4,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオナート、テトラメチロールメタンートリ−β−アジリジニルプロピオナート、又はN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0174】
活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤には、重合禁止剤を添加することも好ましい。重合禁止剤は、活性エネルギー線反応性化合物が、活性エネルギー線照射によらず、例えば熱により重合することを防止するために添加されるものであり、公知の重合禁止剤を使用できる。具体的には、ヒドロキノン、メトキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、フェノチアジン、又はニトロソアミン系化合物等を挙げることができる。重合禁止剤の添加量は、活性エネルギー線反応性化合物100重量部に対して0.001〜30重量部が好ましく、0.01〜20重量部が更に好ましい。重合禁止剤の添加量が0.001重量部未満のときは重合禁止作用が不足し、30重量部を越えるときは活性エネルギー線照射による反応が阻害される。
【0175】
活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤には、粘着付与樹脂(例えば、ロジンエステル)、無機微粒子化合物(例えば、シリカ化合物)、防錆剤、可塑剤、紫外線吸収剤、又は酸化防止剤等の公知の添加剤の1種又はそれ以上を配合することができる。
【0176】
本発明において活性エネルギー線とは、エネルギーを有する電磁波を意味し、電子線、紫外線、又は放射線等が挙げられる。なかでも、装置の安価さやランニングコストから紫外線が好ましい。
【0177】
紫外線照射装置としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、各種半導体レーザ、YAGレーザ、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源、電子線、γ線、ArFエキシマーレーザ、KrFエキシマーレーザ、F2レーザ等が挙げられる。
【0178】
紫外線を用いるときの照射量は、10mJ/cm2〜3,000mJ/cm2が好ましく、50mJ/cm2〜3,000mJ/cm2が更に好ましく、100mJ/cm2〜3,000mJ/cm2が更に好ましい。10mJ/cm2未満であると感圧接着層の硬化が不足して十分な粘着力の低下が生じない恐れがあり、3,000mJ/cm2を越えると照射に時間が掛かり経済的に不利である。
【0179】
電子線照射装置としては、例えば、真空管型やドラム型等が挙げられる。電子線の照射量は、0.1〜10kGyが好ましい。
【0180】
本発明の活性エネルギー線粘着力消失型粘着シートは、基材フィルム上に、光重合開始剤、活性エネルギー線反応性化合物含む活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤からなる層が形成されているものである。
【0181】
本発明において基材フィルムとしては、活性エネルギー線が透過可能な、可とう性を有する任意のプラスチックフィルムを用いることができる。具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、又はエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、又はポリ塩化ビニリデン等のビニル類、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、あるいはシクロオレフィン樹脂等のフィルムが挙げられる。
【0182】
基材フィルムは、エッチング工程後に剥離するので、耐熱性及び耐酸性を有するもの、例えばポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0183】
基材フィルムの厚みは、5〜200μm程度が好ましい。5μm未満だと取扱い性が悪くなり、200μmを越えてもフレキシブル性が無くなり、取扱い性が悪くなる。基材フィルムの金属箔を貼付する面(すなわち、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を担持する面)には、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤との接着性を良くする為に、易接着処理を施してもよい。易接着処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、又はフレーム処理等の乾式処理と、プライマー処理等の湿式処理がある。
【0184】
活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤の塗布方法としては、例えば、コンマコート、リップコート、カーテンコート、ブレードコート、グラビアコート、キスコート、リバースコート、又はマイクログラビアコート、等が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0185】
活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤の厚みは、0.5μm〜100μm程度であることが好ましい。1μm〜50μmであることが更に好ましい。感圧性接着剤の厚みが0.5μm未満であると十分な接着性が得られず、また100μmを越えると、厚みの増加に相当する効果を得ることができないので経済的に不利である。
【0186】
以下に、活性エネルギー線粘着力消失型粘着シートの使用例、例えばプリント回路基板製造で使用されるエッチング金属体の製造方法について説明する。
【0187】
エッチング化金属体は下記方法で製造することが好ましい。
(1)金属箔と基材フィルムとを、前記活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を介して貼付する工程;
(2)前記金属箔の選択的エッチングによってエッチング金属層を形成する工程;
(3)基材フィルム、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤、及びエッチング金属層からなる積層体のエッチング金属層を絶縁性基板と組み合わせる工程;及び
(4)前記基材フィルムを前記エッチング金属層から剥離する工程
を含み、前記工程(1)の後と工程(4)の前との間に活性エネルギー線照射を少なくとも1回行うことが好ましい。
【0188】
(1)貼付工程
貼付工程(1)における金属箔と基材フィルムとの貼付は、例えば、基材フィルムの片面に活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を積層して活性エネルギー線粘着力消失型粘着シートを作製し、この粘着シートの接着剤層面と金属箔とを貼り合わせることにより行うことができる。粘着シートの作製方法としては、2つあり、1つは基材フィルムに直接、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を積層する方法であり、もう1つはセパレータ上に活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を塗布し、基材フィルムと貼り合わせる方法である。
【0189】
金属箔と粘着シートとの貼付は、ラミネーターやプレス機を用いて行うことが好ましく、必要に応じて加熱、加圧、及び/又は真空等の条件で行ってもよい。
【0190】
貼付工程(1)で用いられる金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、クロム、又はチタン等の金属、あるいはそれらの2種以上を組み合わせた合金が挙げられる。なかでも、導電性や回路加工の容易さ、価格の面から銅、ニッケル、アルミニウム及びそれらの合金が好ましく、銅及び銅合金が更に好ましい。金属表面は、後工程でのエッチングレジストとの密着を向上させるために必ずしも平滑である必要は無く、表面がマット状で微細な凹凸があってもよい。金属表面の粗化方法としては、研磨機等の物理的粗化や過酸化水素−硫酸等の化学粗化、又は電解金属箔製造時に表面粗さをコントロールする手法があるが、特に限定しない。
【0191】
(2)エッチング工程
エッチング工程(2)では、前記金属箔の選択的エッチングによってエッチング金属層を形成する。エッチング金属層の形成は、公知のプリント回路基板製造方法で形成できる。金属箔に公知の方法でエッチングレジストを積層したのち、エッチング液で金属箔を選択的にエッチングすることにより行う。エッチングレジストは、エッチング液に対して耐性を有し金属を保護するものであり、スクリーン印刷法、ドライフィルム/写真法、又は液体レジスト/写真法により金属箔上に積層することができる。
【0192】
エッチング液としては、公知のエッチング液、例えば塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液を用いることができる。エッチング液の濃度は、金属箔の厚みや処理速度にもよるが、例えば塩化第二鉄のときは、通常150〜250g/リットル程度である。液温は、40〜80℃の範囲が好ましい。
【0193】
金属箔をエッチング液に曝露する方法としては、例えば、エッチング液中への金属箔の浸漬、金属箔へのエッチング液のシャワーリング、又はエッチング液気相中への金属箔の曝露などがあるが、エッチング精度の安定性の点から、金属箔へのエッチング液のシャワーリングが好ましい。
【0194】
エッチング金属層上に残存するエッチングレジストは、エッチング後にエッチングレジスト剥離液で剥離することが好ましい。エッチングレジスト剥離液としては、有機物を溶解できる水溶液、例えばアルカリ性水溶液が用いられ、コストや有機物除去性からカセイソーダ水溶液が好ましい。カセイソーダ水溶液の濃度は、エッチングレジストの厚みや処理速度にもよるが、通常1〜5重量%程度である。液温は20〜60℃の範囲が好ましい。被剥離物を剥離液に曝露する方法としては、例えば、剥離液中へのエッチングレジストが残存する金属箔の浸漬、エッチングレジストが残存する金属箔へのシャワーリング、又は剥離剤気相中へのエッチングレジストが残存する金属箔の曝露などがある。エッチングレジスト剥離後にエッチング金属層へ残存したカセイソーダを中和するために、塩酸等の酸性水溶液でのシャーリングまたは浸漬による処理を行うことも好ましい。
本発明の一般式(1)で表される光重合開始剤は、エッチング液のみならず、カセイソーダ等のアルカリ性溶液及び塩酸、硫酸、硫酸銅等の酸性溶液に対しても溶出しがたい特性を有する。
【0195】
エッチング工程(2)で形成されるエッチング金属層の形状は、連続でも不連続でもよく、規則的でも不規則でもよい。不規則で連続(一部が不連続であってもよい)のエッチング金属層は、プリント回路基板用や半導体素子収納用パーケージ等の配線回路パターンとして用いられることが好ましい。また、不連続の円錐台状のエッチング金属層は、多層配線回路接続用部材として用いられることが好ましい。
【0196】
(3)組合せ工程
組合せ工程(3)では、基材フィルム、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤、及びエッチング金属層からなる積層体のエッチング金属層面を絶縁性基板と組み合わせる。組合せ工程(3)は、例えば、エッチング金属層を絶縁性基板の表面に貼付けるか、エッチング金属層を絶縁性基板に貫通させるか、又はエッチング金属層を絶縁性基板の内部に埋め込む工程である。この際に、例えば、ラミネーターやプレス機等を用いることができる。この組合せ工程(3)の前に、積層体のエッチング金属層側から活性エネルギー線を照射して、粘着力を低下させてもよい。
【0197】
絶縁性基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、若しくはポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、若しくはEVA等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、若しくはポリ塩化ビニリデン等のビニル類、あるいはポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、若しくはフェノール樹脂等のフィルムや板が挙げられる。
【0198】
絶縁性基板は、室温で半硬化状態であってもよい。また、絶縁性基板は、無機質充填材や繊維状基材を含有してもよく、その場合に絶縁性基板を構成する樹脂は、室温で液状であってもよい。
【0199】
エッチング金属層面を絶縁性基板の表面へ貼付するときには、エッチング金属層面と絶縁性基板の間に転写用接着剤を介在させてもよい。転写用接着剤としては、公知のプリント回路基板用の接着剤が使用され、耐熱性がある接着剤が好ましい。エッチング金属層によって絶縁性基板を貫通させる場合には、例えば、前記エッチング工程(2)において、多層配線基板における回路間の層間接続手段として用いられる金属バンプ群をエッチング金属層として形成し、この金属バンプ群の上に絶縁性基板を熱ローラなどで圧着することによって、金属バンプ群の間に絶縁性樹脂層としての絶縁性基板を挿入することができる。また、エッチング金属層面を絶縁性基板へ埋め込むときには、絶縁性基板としては、無機質充填材或いは繊維状基材を含有するエポキシ樹脂を半硬化させたものが好ましい。すなわち、半硬化状態の絶縁性基板の表面からエッチング金属層を(その高さ方向の全体又は一部分で)押し込んで埋め込み、絶縁性基板を硬化させて実施することができる。
【0200】
(4)剥離工程
剥離工程(4)では、前記基材フィルムを前記エッチング金属層から剥離し、目的のエッチング化金属体(etched metal article)を得ることができる。前記基材フィルムを前記エッチング金属層から剥離するためには、その剥離工程(4)の前に、活性エネルギー線照射によって活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤の粘着力を低下させておく。
【0201】
活性エネルギー線照射は、前記工程(1)〜(4)において、少なくとも1回行えばよい。活性エネルギー線照射は、任意の回数、任意の時に行うことができる。特に、前記金属箔の選択的エッチングによってエッチング金属層を形成した後に、活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。なお、複数回照射によって、段階的に粘着力を低下させることができる。
【0202】
上記エッチング化金属体の製造方法において、金属箔と活性エネルギー線粘着力消失型感圧性接着剤との粘着力は、活性エネルギー線照射前は30g/25mm〜3000g/25mmであり、活性エネルギー線照射後は30g/25mm未満であることが好ましい。前記粘着力が活性エネルギー線照射前に30g/25mm未満であると、エッチング工程(2)において、金属箔の剥離や、金属箔と感圧接着剤層との間へのエッチング液浸入の恐れが生じる。3000g/25mmを越えると、活性エネルギー線を照射しても粘着力が低下しない。また、活性エネルギー線照射後に30g/25mmを越えると、エッチングして作製したエッチング金属層が安定的に、絶縁性基板へ転写せず、エッチング化金属体へ接着剤が残留する汚染が生じる恐れがある。なお、本明細書において、粘着力は、JIS Z 0237で規定された方法(180°ピール)で測定した値である。
【0203】
また、絶縁性基板と活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤との活性エネルギー線照射前のループタックは、エッチング液(例えば、塩化第二銅の200g/リットル水溶液)曝露前は50g/25mm〜3,000g/25mmであり、エッチング液曝露後に活性エネルギー線を照射した後は、50g/25mm未満であることが好ましい。ループタックが50g/25mm未満であるときは同時に粘着力も低く、感圧接着剤層と金属箔との間へエッチング液浸入が生じる恐れがあり、3,000g/25mmを越えると活性エネルギー線を照射しても、ループタックが低下しない。また、エッチング液浸漬後に活性エネルギー線照射したときに50g/25mmを越えると絶縁性基板からの感圧接着剤の剥離が難しくなる。
【0204】
ループタックは、エッチング金属層の形成後に活性エネルギー線照射により活性エネルギー線粘着力消失感圧性接着剤の粘着力が低下するか否かを確認するための物性値であり、JIS Z−0237に規定された方法で測定することができる。
【0205】
本発明で使用される活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤は、エッチング液とエッチングレジスト剥離液に連続して浸漬しても、前述のループタック値を満たすことができる。
【0206】
本発明方法によってエッチング化金属体を製造する際には、常法と同様に、貼付工程(1)の前(すなわち、金属箔を基材フィルムへ貼付する前)に、金属箔表面から防錆剤等の有機物除去のために洗浄処理(例えば、3%硫酸水溶液による洗浄)を実施することが好ましい。この洗浄処理によって、金属箔表面の酸化被膜も除去され、そして洗浄処理の直後に再び形成されてしまうが、酸化被膜を除去する観点からも、前記洗浄処理を行うことが好ましい。この洗浄後の金属(例えば、銅板)に対してX線光電子分光分析装置(例えば、XPS:島津製作所/Kratos製「AXIS−HS」)を用いて、炭素、窒素、酸素、及び銅の原子濃度を測定することができる。本発明方法においては、洗浄後の金属(例えば、銅板)における炭素、窒素、酸素、及び銅の合計原子濃度に対する銅原子濃度は、20%〜40%程度であることが好ましい。なお、銅原子濃度が100%にならない理由は、洗浄処理後の銅表面にすぐに形成される酸化皮膜や、洗浄で除去しきれなかった有機物によるものと推測される。
【0207】
一方、本発明方法によって製造されたエッチング化金属体の金属(例えば、銅板)に対しても、同様に、X線光電子分光分析装置を用いて、炭素、窒素、酸素、及び銅の原子濃度を測定することができる。本発明においては、活性エネルギー線を照射してエッチング金属層から基材フィルムを剥離したときのエッチング化金属体表面の金属原子濃度を、基材フィルム積層前における金属箔表面の金属原子濃度に対して50%以上、好ましくは75%以上に維持することができる。
【0208】
本明細書において、金属原子濃度(C)は、洗浄済み金属表面の金属元素原子濃度(A)を基準(分母)とし、金属表面に本発明の粘着シートを貼付してから活性エネルギー線を照射し、更に粘着シートを剥離した後の金属表面の金属元素原子濃度(B)を分子とした値の百分率、すなわち、
C=(B/A)×100
で表記される。
【0209】
金属原子濃度(C)が10%未満であると金属表面上に汚染が多量に存在しているとみなすことができる。その場合、絶縁性基板にシミが発生して外観の悪化、或いはプリント回路基板を多層化したとき層間接続信頼性の不足が生じる恐れがある。また、後工程、例えばカバーレイ圧着工程等でエッチング化金属体とカバーレイの密着性が阻害される等が生じる恐れがある。
【0210】
本発明のエッチング化金属体の製造方法により、電子回路、フレキシブルプリント回路基板、リジッド回路基板、リジッドプリント回路基板にフレキシブルプリント回路基板を接合したリジッドフレキ回路基板、半導体素子収納用パッケージ、又は多層配線回路接続用部材を製造することができる。
【0211】
本発明の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤はエッチング化金属体の製造方法以外にも、エッチング液を用いる使用条件下、及び活性エネルギー線照射前に酸性溶液やアルカリ性溶液に曝露される使用条件下等で使用することができる。
【実施例】
【0212】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。また、評価は下記の方法で行った。
[粘着力]
JIS Z 0237で規定された方法(180°ピール)で測定した。また、紫外線照射後粘着力は被着体に貼り付けた24時間後に紫外線(メタルハライドランプ120W 積算照度700mJ)を照射して測定した。
[ループタック]
JIS Z 0237で規定された方法で測定した。
[金属原子濃度]
X線光電子分光分析装置(島津製作所/Kratos製「AXIS−HS」)を用いて
金属元素の原子濃度を測定し、計算式
C=(B/A)×100
(式中、Cは、金属原子濃度であり、Bは粘着シート剥離後の金属元素原子濃度であり、そしてAは、洗浄後の金属元素原子濃度である)
から有機物汚染性の値を算出した。
【0213】
次に、実施例に用いた本発明の化合物を表1に示す。
【0214】
【表1】

【0215】

これらの表1に記載の化合物は、特願2005−022871に記載されている合成方法を用いることで得ることができた。
【0216】
(実施例1)
化合物(1)の光重合開始剤1.5重量部、水酸基含有ウレタン系ポリマー溶液「サイアバインSP−205」100重量部、硬化剤「スミジュールHT」3.0重量部、及び10官能のウレタンアクリレートオリゴマー「UV−1700B」30重量部を配合して、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を得た。
【0217】
次に、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製「E5100」)の片面に、ポリエステルポリウレタン系アンカーコート剤(東洋モートン製「AD−335AE」)を厚さ(乾燥膜厚)0.2μmに塗布し、その上に、前記で得られた活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を厚さ5μmになるように塗布し、乾燥後に市販セパレータを貼り合わせて粘着シートを得た。
【0218】
粘着シートのプリプレグ(日立化成工業製「GEA−67BE(H)」)に対するループタックを測定し、エッチング液に曝露前のループタック値とした。
【0219】
得られた粘着シートの感圧接着剤が塗布された面に、厚さ18μmの銅箔(日鉱マテリアル製)を40℃で加圧ラミネート(6kg/cm2)した。ラミネートしてから24時間後に、感圧接着剤と銅箔との粘着力を測定した。
【0220】
得られた積層物の銅箔側に、エッチングレジスト(日立化成株式会社製「RAYCAST」)を塗工し、フォトマスクを介して露光、現像して銅箔上にエッチングレジストパターンを形成した後、塩化第二銅水溶液を3分間噴霧して銅箔をケミカルエッチングし、回路幅と回路ピッチが20μm幅の金属回路パターンを形成した。
【0221】
更に、金属回路パターンを形成した積層物を純水で水洗後に、3%カセイソーダを40℃で3分間噴霧して、金属回路パターン上のエッチングレジストを溶解、剥離し、純水で水洗して、熱風オーブン中で乾燥した。ここで、金属回路パターン面がプリプレグと接するように積層物をプリプレグに貼り合わせ、エッチング液に曝露後のループタックを測定した。
【0222】
金属回路パターン面がプリプレグと接するように、積層物とプリプレグとを真空プレス機により圧力30kg/m2で5分間加圧して、金属回路パターンをプリプレグに完全に埋め込ませた。この後、ポリエチレンテレフタレートフィルム側からメタルハライドランプ(120W)で400mJ/cm2になるように紫外線を照射して粘着力を低下させ、金属回路パターンをプリプレグへ転写した。このときの金属回路パターンと感圧接着剤との粘着力を測定した。
【0223】
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、エッチング化金属体表面の原子濃度を測定した。ポリエチレンテレフタレートフィルム剥離後のプリプレグを200℃にて5時間加熱処理して、単層のプリント回路基板を製造した。
【0224】
(実施例2)
アクリル酸ブチル94.6重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.4重量部、アクリル酸4重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、及び酢酸エチル185.9重量部からなるモノマー類混合物を窒素雰囲気下で加熱還流して7時間反応させて、重量平均分子量40万のアクリル系ポリマー溶液(不揮発分35重量%)を得た。前記アクリル系ポリマー溶液100.0重量部、硬化剤(住化バイエルウレタン製「スミジュールL−75」)0.9重量部、化合物(1)の光重合開始剤1.75重量部、及び10官能のウレタンアクリレートオリゴマー「UV−1700B」21重量部を配合して、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を得た。
【0225】
得られた活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を用い、実施例1と同様にして単層のプリント回路基板を製造した。
【0226】
(実施例3)
実施例2における光重合開始剤の化合物(2)を化合物(3)に置き換えた以外は実施例2と同様にして、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を得た。
【0227】
また、得られた活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を用い、実施例1と同様にして単層のプリント回路基板を製造した。
【0228】
(実施例4)
実施例2における光重合開始剤の化合物(2)を化合物(4)に置き換えた以外は実施例2と同様にして、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を得た。
【0229】
また、得られた活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を用い、実施例1と同様にして単層のプリント回路基板を製造した。
【0230】
(実施例5)
実施例2における光重合開始剤の化合物(2)を化合物(5)に置き換えた以外は実施例2と同様にして、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を得た。
【0231】
また、得られた活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を用い、実施例1と同様にして単層のプリント回路基板を製造した。
【0232】
(実施例6)
実施例2における光重合開始剤の化合物(2)を化合物(6)に置き換えた以外は実施例2と同様にして、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を得た。
【0233】
また、得られた活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を用い、実施例1と同様にして単層のプリント回路基板を製造した。
【0234】
(比較例1)
実施例1における光重合開始剤の化合物(2)を2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製光重合開始剤「イルガキュア907」)に置き換えた以外は実施例2と同様にして、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を得た。
【0235】
また、得られた活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を用い、実施例1と同様にして単層のプリント回路基板を製造した。
【0236】
(比較例2)
実施例2における光重合開始剤の化合物(2)を2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製光重合開始剤「イルガキュア907」)に置き換えた以外は実施例2と同様にして、活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を得た。
【0237】
また、得られた活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を用い、実施例1と同様にして単層のプリント回路基板を製造した。
【0238】
実施例及び比較例で測定した結果を表2に示す。
【0239】
表2
【表2】

【0240】
本発明の光重合開始剤を用いた活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤は、エッチング工程において用いられる薬液中への光重合開始剤の溶出が抑えられたため、エッチング液曝露後に粘着力を低下させることが出来た。光重合開始剤の薬液中への溶出が抑えられた原因について、詳細は明らかになっていないが、おそらく、本発明の光重合開始剤は高感度の割に比較的分子量が大きいために接着剤中へ留まることが出来たからだと推測される。また、本発明の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤を用いて製造されたエッチング化金属体は、エッチング金属層の剥離性が良好であり、また、粘着シート剥離後に金属体表面に感圧接着剤が残留することのない、すなわち、金属表面を汚染することのない、金属原子濃度が高いものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0241】
基材フィルムから絶縁性基板へのエッチング金属層の転写性と基材フィルムからのエッチング金属層の剥離性が良好で、接着剤残留による表面汚染がないエッチング化金属体を歩留まりよく製造することができる。
【0242】
本発明のエッチング化金属体の製造方法により、電子回路、フレキシブルプリント回路基板、リジッド回路基板、リジッドプリント回路基板にフレキシブルプリント回路基板を接合したリジッドフレキ回路基板、半導体素子収納用パッケージ、又は多層配線回路接続用部材を製造することができる。
【0243】
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される光重合開始剤と、活性エネルギー線反応性化合物と、弾性重合体とを含む活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤。
一般式(1)
【化1】




(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、または置換もしくは未置換のアルケニル基を表す。また、R1とR2とが一体となって環を形成してもよい。
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、またはCOR5を表す。また、R3とR4とが一体となって環を形成してもよい。
5は、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、または置換もしくは未置換の複素環オキシ基を表す。
Xは、ヘテロ原子を含んでも良い炭素原子数4〜16からなる2価の芳香族環縮合基を表し、
Ar1は下記一般式(2)を表す。)
一般式(2)
【化2】





(式中、R6〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアシル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換のアシルオキシ基、置換もしくは未置換のアルコキシカルボニルオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の複素環チオ基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のジアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、置換もしくは未置換のジアリールアミノ基、置換もしくは未置換のアルキルアリールアミノ基、またはハロゲン原子を表す。また、R6〜R10は、一体となって芳香環を形成してもよい。)
【請求項2】
Xが、下記一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、または一般式(6)である請求項1記載の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤。
一般式(3)
【化3】




一般式(4)
【化4】





一般式(5)
【化5】





一般式(6)
【化6】




(式中、YおよびZは、それぞれ独立に、−O−、−S−、>S=O、>SO2、−N(R11)−、−CO−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH=CH−、炭素原子数2〜6のアルキリデン基もしくは直接結合を表し、
Uは、−O−、−S−、または−N(R11)−を表し、
VおよびWは、窒素原子を表し、
11は、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、または置換もしくは未置換の複素環オキシ基を表す。)
【請求項3】
Xが、一般式(3)である請求項2記載の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤。
【請求項4】
基材フィルム上に、請求項1〜3いずれかに記載の活性エネルギー線粘着力消失型感圧接着剤からなる層を積層した活性エネルギー線粘着力消失型粘着シート。




















【公開番号】特開2008−24848(P2008−24848A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199928(P2006−199928)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】