説明

活性成分粒子を含み増大した活性成分流量を有する経皮治療システム

本発明は、経皮治療システム、好ましくは経皮パッチであって、例えば、ゴム及び合成ポリマーのような実質的に水不溶性の基材から成る活性成分含有マトリックスを有し、その中に、超微粉砕した又はナノスケールの活性成分粒子を含む、例えば、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールから成る水溶性及び/又は水膨潤性の封入体が組み込まれている、経皮治療システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分、例えば、皮膚上の水分によって活性化される、内包された微粒子状活性成分(封入体)を備えた経皮治療システム、及びそのようなシステムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮治療システム(TTS)は、古くから当業者の間で知られており、上市もされている。経皮治療システムは、皮膚に貼付されるものであり、一定の適用範囲を有し、時間及び量に従ってコントロールされる方式で薬剤を人間又は動物の体に送達する、自己接着性の医薬製剤である。
【0003】
従来の投与形態と比較して、これらのシステムの治療上の進歩している点は、活性成分が、例えば、錠剤を摂取する場合のように間歇的ではなく、連続的に体内へ供給されることである。
【0004】
これは結果的に、一方では薬剤の作用の持続時間を延長させ、他方で、不必要な血中濃度ピークを回避することにより副作用の実質的な防止をもたらす。
【0005】
その様なシステムのために通常採用される形態は、層状で、平面であり、種々のポリマーを使用し、そのポリマーの一例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリイソブチレン、ポリシロキサンが挙げられる。
【0006】
湿った表面への接着性を改善する目的で、当業者に公知の多数の物質(樹脂、油、充填剤、安定化剤)以外に、水に可溶性/膨潤性の添加物(欧州特許第0307187号)を導入することができる。経皮送達のための賦形剤として、成功は限られるが、ナノ粒子状賦形剤もまた実験的に使用されている(J. Microencaps. (1991), p.369-374)。より慣習的なポリマー性賦形剤の他に、活性成分、例えば、インドメタシン用にナノ構造の脂質担体を用いた実験も行われている(J. Pharm. Sei. (2005), p.1149-1159)。
【0007】
経皮システムの初期に専門家の間に広まっていた見解は、皮膚を経由する送達の主な難しさは、送達の速度をコントロールする必要があるということであった。この理由のため、活性成分、及び、とりわけ、任意の吸収促進剤をもコントロールする膜が、そのようなシステムに導入された(例えば、米国特許第4,460,372号)。マイクロ粒子及びナノ粒子まで寸法を変化させた粒子サイズによる方法で、送達のコントロールを調整する試みもなされた (米国特許第4,687,481号)。
【0008】
しかしながら、人間の皮膚は、対象となる全ての薬剤に対して十分な透過性を持たないため、従来型の経皮治療システムで使用することができるのは少数の活性成分だけである。それ故、皮膚の自然な透過性を増大させることを目的として、多数の試みがなされている。
【0009】
その1つの可能性は、いわゆる浸透促進剤又は吸収促進剤を使用することである。これらは、皮膚の微細構造との化学的/物理的な相互作用によって活性成分流量の著しい増加をもたらす物質のことを意味する。しかし、これらの物質の多くは、皮膚に対して毒性作用を有し又は炎症を引き起こす。更に、これら吸収促進剤の効果の発現は十分早いとは限らないため、その作用をコントロールすることは困難である。
【0010】
別の可能性は、例えば、イオントフォレシス、超音波を利用した透過促進(超音波導入)又は他に極微針の使用のような物理的な原理の使用である(例えば、米国特許第3,964,482号)。しかしながら、これらの方法は、経皮治療システムの中に比較的精巧な更なる装置を必要とし、それは通常この種の治療を非経済的にする。
【0011】
皮膚の透過性を高くする根本的に異なる方法は、活性成分の熱力学的活性を高めることである。このことへの試みは、透過性を高めるために、外側から作用する活性成分の濃度を高めることを目指したものである。これらの努力は、活性成分の濃度を飽和溶解度以上に増加させることは、一般に可能性がないという事実によって限定された。一方、経皮治療システム中の活性成分に対して大きな溶解度を有する製剤用基材の使用は、そのような場合、ネルンストの分配の法則に従った分配係数と溶解度の間の関係が作用して制限作用を有するため、助けにはならない。
【0012】
溶解した活性成分濃度が飽和溶解度を超えた所謂過飽和状態は、例えば、飽和溶液を冷やした場合に、一時的に発生させることができる。そのようなシステムは、例えば、米国特許第5,174,995号に記載されており、この場合、活性成分の飽和溶液を皮膚にのせ、皮膚の水分の非可溶化作用の影響によって、過飽和となり、従って、活性成分の輸送が増大される。その様な液体の状態の利用は、活性物質が沈殿し、そしてその結果、濃度の低下及び送達速度の低下を起こしてすぐに役に立たなくなることは明らかである。過飽和の状態は、経皮的に通例の接着性ポリマー内で発生させることができ、液体媒体の溶液におけるより長く維持することができる(J.Pharm. Sei. (2004), p.2039-2048)。この場合は、飽和溶解度の4倍までの濃度が、数分から数日の間うまく維持された。しかし、この安定性でさえ、十分に市場性のある経皮システムには程遠い。しかしながら、例えば、スコポラミンのように融点が室温よりあまり高くない或る種の活性成分を用いて、そのような過飽和を、技術的な生産手段によって、場合によっては、十分に長時間安定化させることができる(米国特許第6,238,700号)。
【0013】
活性成分が微粒子の形態であり、その融点が室温より明らかに高い(従って、約50℃より高い)活性成分に対する、この提案された解決策では安定したシステムを達成することはできない。しかし、皮膚からの水分の到達を制限する層と、ドイツ特許第3910543号に開示されているような、活性成分を含む封入体がその中に存在する水不溶性基材によるマトリックスを組み合わせることにより、貯蔵可能なシステムを実現することは可能であり、そのシステムは皮膚からの水分に暴露した時にのみ過飽和の状態になり、従って、使用時にのみ所望する増大した活性成分流量をもたらす。
【0014】
残念ながら、現在の技術水準に従ったこの問題の解決策は、未だ不利な点を伴っている。従って、ドイツ特許第3910543号に提案された解決策は、組み込まれる活性成分が溶解した形態(固溶体)であることを必要とする。これは、溶液中の活性成分は固体の結晶形態よりも不安定であるため、鋭敏な活性成分は化学分解により早期に不活性化される危険性に関係している(米国特許第5,716,636号)。過飽和の程度及び時間的経過を調節するのは更に難しい。何故なら、それらは、水分の到達を制限する必須の層に接続している封入体(アイランド(island))の膨潤の程度に大きく依存するからである。この先行技術の更なる難点は、やはり溶解した活性成分の内部相を設ける必要があるため、アイランドの基材用に比較的大量の賦形剤を使用する必要があることであり、そうしなければ、僅かしか溶解しない薬剤を固溶体に変換することができないためである。このことは、消費者及び患者から好まれる柔軟で薄いパッチを設計することを困難又は不可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、以下に詳細に説明する本発明の目的は、増大した活性成分流量、そして先行技術と比較して改善された安定性、増大した活性成分流量の提供における改善された均一性及び賦形剤のより少量の使用を備えた経皮治療システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、本発明に従って、好ましくは水の拡散を制限する外側に面した裏張り層を有し、粘着性の本質的に水不溶性の外側の相(基材)の中にあって、水溶性又は水膨潤性の材料から成り、製剤の活性成分内容物の大部分を含み、その内容物の大部分は微粒子、マイクロ粒子又はナノ粒子の状態で存在する、互いに分離した多数の封入体(アイランド)を有する経皮治療システムによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一例として挙げられる基材の基本的な構成要素は、ゴム、ゴム様の合成ホモポリマー、コポリマー又はブロックポリマー、ポリアクリル酸エステル及びそのコポリマー、ポリウレタン、エチレン・コポリマー、ポリイソブチレン、ポリブチレン及びポリシロキサンのようなポリマー類である。本質的に水不溶性で、皮膚と直接に及び間接的に接触して人間に悪影響を及ぼさないポリマーは、全て原則として適切である。
【0018】
更に適用される接着剤層によって接着力による結合が生じるので、必ずしも基材が主体的に接着性を持つように製剤化する必要はないが、この特性は、特に薄くて柔軟な非塗布用(non-applying)のシステム構造にとって好ましく、それは単層システムをも可能にする可能性がある。更に、例えば、可塑剤、粘着付与剤、吸収促進剤、安定剤又は充填剤などのような、当業者に公知の、基材に機能的な影響を与える物質を使用することができる。
【0019】
活性成分含有封入体を構築するために第一に使用することができる適切な賦形剤は、水溶性又は水膨潤性のポリマーである。取り上げるべきそれらの例は、ポリビニルアルコール及びそのコポリマー、ポリビニルピロリドン及びそのコポリマー、好ましくは1,000ダルトンを超える分子量を有する(従って、室温で固体である)ポリエチレングリコールである。上記のポリマーは、基材中の封入体の分散をコントロールするのに有利になるように、それ自体が粒子状の架橋構造から成るものでもよい。好都合に使用することができる更なるポリマーは、アルギン酸塩、プルラン、アラビアゴム又は他の植物性ガム入りグァーガム、セルロース、特に微結晶性セルロース、及び例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロースなどのその誘導体、並びに、例えば、澱粉、特に好ましくはその誘導体又は変性された形態である。しかし、コラーゲン及びゼラチンのようなペプチドポリマーも、また完全に適切である。水溶性及び水膨潤性のポリマーは、水を吸収すると、突然ではなく、ほんの徐々に、より可塑性にそしてより分散性になり、従って包含される活性成分をより均一に送達させるという利点を有する。これは、特に、分散された活性成分の粒子を、活性成分送達が段階的にしか行われないプロセスに含めなければならない用途において価値がある。
【0020】
より迅速な移行が好まれる場合、より小さな分子量の水溶性の物質を、活性成分含有封入体を構築するための単独又は混合賦形剤として使用することが有利である。この目的に第一に適切なものは、ガラス状の固体を形成する拡散抵抗性の粒子を形成する特性があるという理由から、糖類及びそれらの誘導体であり、主としてショ糖、グルコース、乳糖、果糖、並びにソルビトール又はマンニトールのような糖アルコールである。また、原則として適切なのは、約98パーセントの相対湿度の(皮膚によって提供されるような)水蒸気圧下で液化する特性を有する、例えば、塩化ナトリウム、尿素、リンゴ酸、クエン酸のような、薬学的に適合する水溶性物質の全てである。
【0021】
更なる機能性を達成するための当業者に公知の添加剤、例えば、安定剤(特に、抗酸化剤)、充填剤、及びミセル形成作用を有する変性剤(レシチン)などは、特定の要求に応じて添加することができる。
【0022】
封入体が孤立した内部相として基材/外部相内に形成されることが、本発明の目的にとって不可欠であるので、相形成剤として、微粒子の親水性粒子、例えば、微細分散したシリカゲル、二酸化ケイ素のナノ分散物、硫酸カルシウム、及びセルロース誘導体の様なポリマー、及び封入体用に可能性のあるポリマーの例として既に前に言及した他の物質を添加することができる。
【0023】
本発明にとって不可欠であって、基材及び封入体から成り、最も単純な場合は、単に裏張り層と一緒に完全なTTSシステムを形成することができる複合体の他に、当業者に公知の更なるシステム構成要素を、本発明の原理と組み合わせることは可能であり有益である。
【0024】
本発明のTTS、好ましくは経皮パッチの形態のTTSは、従って、原則として従来技術で知られているシステムのような構造を有することができる。本発明にとって不可欠である差異は、本発明によって改善され、活性成分粒子(微粒子相)を含む水溶性又は水膨潤性の封入体を有する、本質的に水不溶性の基材から成る活性成分貯蔵体(活性成分マトリックス)を含む。
【0025】
上述の更なるシステム構成要素のうち、言及すべきものは、例えば、ポリマーを含有する層、或いは皮膚への活性成分の流量をコントロールする、或いは皮膚からの水分の過度に速い取り込みを調節できる特性を有することができる膜である。
【0026】
通常、そのような膜の素材として当業者に公知のものは、ポリエチレン、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル・コポリマー、及び低分子量物質で満たされた多孔質層である。膜の使用なしで又はそれを使用して、皮膚への定着を向上させる追加の接着剤層を適用することもまた可能であり、その本質的な賦形剤は、すでに前に基材の説明の中で述べている。本明細書で言及すべき特に好ましいものは、例えば、ポリシロキサン及びアクリルレート・コポリマーのような、高度の拡散性を有する親油性ポリマーである。本発明の原理は、更に、吸収促進のための更なる方法と組み合わせることができる。従って、皮膚の透過性を高める浸透促進剤を加えること、及びイオントフォレシス、電気穿孔又は超音波及び極微針のような物理的な原理を使用することが可能である。
【0027】
活性成分粒子のために使用される適切な活性成分は、好ましくは融点が50℃を越える物質である。例として本明細書で言及すべきものは、アトロピン、クロルプロマジン、ハロペリドール、エフェドリン、プロパノロール、クロニジン、モキソニジン、フェンタニール、インドメタシン、エチニルエストラジオール、デソゲストレル、テストステロン、グラニセトロン、プラミペキソール、テトラヒドロカンナビノール、ビンポセチンの他多くの他の物質である。しかし、室温で液体である活性成分でも、それがコロイド形態に変換できるものである限り適切である。このグループとしては、例えばニコチン、ニトログリセリン、セレギリン、ブプロピオンが挙げられる。
【0028】
薬学的に経皮投与に適切であり、多数の効能・効果グループに属する全ての活性成分は、原則として使用することができるので、このリストは網羅的ではない。特に好ましい活性成分は、皮膚上の飽和流量が、吸収性を増強する更なる原理の使用なしでは不十分なものである。その様な特に適切な活性成分を見出すため、当業者は、不活性な媒体中で飽和状態で認められる、1平方センチメートル当たりの送達速度を定量することによる、分離した数片の皮膚上での透過性調査による予備試験を行なうであろう。従って、特に好ましい候補として、商業的に適切なシステム面積である30cm2に対して計算された飽和流量 (即ち、本発明の原理を使用しない送達速度)が、治療上必要な投与量の50%以下である活性成分を選択することが可能である。
【0029】
活性成分粒子の粒子サイズは、原則として、それが明らかに封入体の粒子サイズ(これは通常50μm以下、好ましくは10〜50μm)未満(好ましくは20%未満、特に好ましくは10%未満、そして更に特に好ましくは5%未満)である限り制限はない。本発明の最大限の効果は、飽和溶解度の上昇、従って熱力学的活性の増大を利用できる可能性によって、特に小さな粒子サイズの活性成分によって達成される。
【0030】
本発明の特別な利点も、同様に、非常に微細に粉末化された活性成分粒子に由来する。これに関連して言及されるべきことは、そうでなければ、良く知られた現象の「オストワルドの熟成」が物理的な不安定化を起こす。即ち、きれいに分散した微細化粒子又はナノスケールの粒子でさえ、粒子の粗大化を起こす傾向があり、その結果、表面エネルギーが減少する。この現象は特に活性成分粒子が拡散性の媒体によって互いに連接した場合に観察され、次いで、大きな粒子がより小さな粒子を犠牲にして成長し、小さな粒子はその後溶解する。
【0031】
本発明による、乾燥又は水若しくは溶媒の除去によって分散し難くなっている封入体の賦形剤複合体の提供は、結果として経皮治療システムをオストワルド熟成/再結晶の影響から実質的に保護された状態に維持する。従って、明らかに1〜10μm未満の、好ましくは更に50nm未満の直径を有する粒子でさえ、安定して保存することが可能である。このシステムが皮膚に適用されるとすぐに、熱力学的に関連する粒子の増大した飽和溶解度が、活性成分流量の増大に関してプラスに作用する。観測されるそのような小さな粒子の増大した飽和溶解度(単に溶解速度のみではなく)もオストワルドから導かれ、「オストワルド−フロインドリッヒの法則」の式によって説明される(“Physikalische Chemie”、VEB deutscher Verlag fur Grundstoffindustrie、Leipzig 1974、page 384)。
【0032】
その様に小さな粒子サイズの活性成分の結晶を生成する方法は、当業者には公知のものであり、本発明の機能性には重要ではない。沈殿をコントロールできる可能性のある方法は、例えば、溶媒中の活性成分飽和溶液に、連続的に攪拌しながら、貧溶媒を段階的に添加して混和することに由来する基本的な製薬操作の範疇に入る。
【0033】
得られる粒子は、事実上どの段階においても、コロイド段階でも、理想的には後に封入体として役立つ物質又は物質の混合物の添加に際してでも、溶媒を除去すること(乾燥、噴霧乾燥、表面乾燥)によって、作り出すことができる。ナノスケール又はマイクロスケールの活性成分を生成させる他の可能な方法は、ビーズ微粉砕の技術又は水性若しくは非水性環境での粒子の均質化に由来する。簡単な編集物の一例として、Bushrab and Muller(New Drugs, edition 5、2003)を参照することもできるし、また超臨界二酸化炭素(Kuemmel et al, GIT Labor - Fachzeitschrift 5/99, (1999) pages511-514)による生成技術のような他の方法を使用することもできる。
【0034】
本発明の目的のための経皮システムの裏張り層は、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)膜から成ってもよく、これは、水蒸気障壁閉鎖の効果を有し、活性成分の損失及び湿気の損失の両者から保護する。適切な厚みの適応又は適切な他の材料(ポリエチレン、ポリウレタン又は様々な熱可塑性原料のラミネート)の選択は、水蒸気の損失を調節し、従って封入体の膨潤又は溶解が生じる状態を正確に調節することを可能にする。
【0035】
本発明のシステム自体は、さまざまな方法で製造することができる。以下の可能性は、特に重要で好ましいが、つまるところは実施例としてであり、特に本発明の活性成分貯蔵体(活性成分含有封入体を備えた基材)の製造に関する。
【0036】
他の点では、本発明のTTSの構築/製造(層構造、材料、賦形剤及び添加物)は、先行技術からの当業者に公知の方法によって、下に記述されるように行われる(“Dermatological Formulation and Transdermal Systems”, Kenneth A. Walters and KeithR.Brain in Dermatological and Transdermal Formulations, NY2002, Marcel Dekker, pages319-399を参照):
【0037】
1.微粉化された又はナノスケールの活性成分粒子を賦形剤水溶液へ分散して活性成分含有封入体を構築して、活性成分粒子の溶解を回避し、その後乾燥する。乾燥は、例えば、噴霧乾燥によって行うことができ、その場合は、直ちに微粉化した粒子が得られ、或いは、表面乾燥後の粒子の粉砕によって行うことができる。この方法で得られた封入体を、有機溶媒溶液又は無溶媒 (ホットメルト迅速プロセス)の状態で存在する基材の溶液又は懸濁液に供給し、引き続いて裏張り層にコーティングし、層を乾燥した後、切り離すことによって、すでに機能可能な製品が得られる。活性成分貯蔵体(基材及び封入体)は、この場合、自己接着性になるように設計される。
【0038】
2.活性成分と一緒に固体の封入体の形成も、また既に提示した基材によって達成することができる。これを達成するために、基材の水不混和性有機溶媒溶液を攪拌によって生成させ、そしてこの中で、賦形剤の水性混合液又は少なくとも極性溶媒から成る液中の溶液又は分散液を生成して封入体(活性成分を含む)を構築し、これを基材の溶液中に分散させる。次いで、液体/液体の分散液を、裏張り層のシートに均一な厚さに同じようにコーティングする。その後の乾燥プロセスにより、封入体は溶媒を失い固体になる。乾燥プロセスの適切なコントロールは、溶剤除去の最終工程において、封入体内に活性成分のナノスケール又はマイクロスケールの沈殿形態を生み出し、その粒子の更なる成長は乾燥プロセスの停止によって抑制される。
【0039】
この第2のプロセスの1つの変形は、既にナノスケールになっている活性成分を完全な溶媒混合物に加えることである。通常未だ溶媒を含んでいる予め処方された封入体中での活性成分結晶の好ましい濃縮は、内相での極性の結果として改善される湿潤性によって起こる。
【0040】
層厚の寸法及び個別のシステム成分の極性の正確な選択は、もちろん、個々の用途に対して別々に設定しなければならない。本発明によって増大している活性成分流量の範囲をコントロールするための2つの方法に、本発明の利点を発現させるために注目すべきである:
1.封入体の粒子状活性成分内容物の粒子サイズの選択:これは、前に述べた「オストワルド−フロインドリッヒの法則」によって、対応するより高い飽和溶解度をもたらす;そして
2.経皮システムの層の熱によって起こる乾燥から生じ、熱によって引き起こされる過飽和に帰着する可能性がある付加的効果。
【0041】
〔実施例1〕
微粒子の製造:
ゼラチン(2.5g)を水(100mL)に50℃で溶解した。次いで、活性成分結晶(微粉化したテストステロン)(0.5g)をゼラチン溶液に懸濁させた(4枚翼攪拌器、500〜1,000rpm)。次に、その懸濁液をアラビアゴム(2.5%、質量/体積)の水溶液の入ったガラスビーカーに加えた。水(400mL)を添加し、塩酸(1N)を用いてpHを3.0〜4.3に下げ、混合物を4℃に冷却した。マイクロカプセルを2時間析出させた後、上清をデカントして除き、沈降物にエタノール(2×150mL)を添加して粒子を固化した。最後に、マイクロカプセルを濾取し、恒量になるまで通夜乾燥した。
【0042】
生成した粒子を、シリコーン接着剤(例えば、Bio PSA 4201)(10.0g)に懸濁し、均質に撹拌して組成物を作成した。次いで、この組成物を手動式ナイフコーターを用いて、フラワー重合した(flour polymerized)100μmのPETフィルム上に、50〜100μmの層厚で延展し、30℃で乾燥して、透明な15μmのPETフィルムを積層した。
【0043】
〔実施例2〕
テストステロン(0.5g)を、エチルセルロースのエタノール溶液(濃度27.3%、10.0g)に溶解した。次いで、その溶液をシリコーン接着剤(例えば、Bio Psa 4201)(14.0g)中に懸濁し、均質に撹拌して組成物を作成した。次に、この組成物を手動式ナイフコーターを用いてフラワー重合した(flour polymerized)100μmのPETフィルム上に、50〜100μmの層厚に延展し、80℃で乾燥して、透明な15μmのPETフィルムを積層した。
【0044】
本発明を、例として図1〜3によって、更により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】2層だけから成る本発明のTTS(経皮パッチ)を示す。(1)は、外側に面している裏張り層;(2)は、活性成分を含有する活性層の基材;(3)は、活性成分粒子(4)を含む封入体;そして(5)は、使用前のTTSを保護する脱着可能な保護フィルムを意味する。保護フィルム(5)を除去した後、TTSはこの自己接着面で皮膚に貼付される。
【図2】付加的な接着剤層(6)を有する、本発明のTTSを示す。
【図3】付加的にコントロール膜(7)を有する、本発明のTTSを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分粒子を含む水溶性及び/又は水膨潤性の封入体を有する本質的に水不溶性基材を含む、活性成分含有マトリックスを備えた経皮治療システム(TTS)。
【請求項2】
層構造を有する、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
外側に向く裏張り層及び活性成分を含む層の2つの層を包含する、請求項2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
接着剤層を有する、請求項2又は3に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
コントロール膜を有する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
封入体が50μm未満の粒子サイズを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
活性成分粒子がマイクロ粒子又はナノ粒子の形態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
活性成分粒子のサイズが封入体粒子サイズの10%未満であり、そのサイズが好ましくは50nm未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
活性成分が50℃よりも高い融点を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
活性成分マトリックスの基材が、ゴム、ゴム様の合成ホモポリマー、コポリマー若しくはブロックポリマー、ポリアクリル酸エステル若しくはそのコポリマー、ポリウレタン、ポリイソブチレン、ポリブチレン又はポリシロキサンを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
封入体が、ポリビニルアルコール若しくはそのコポリマー、ポリビニルピロリドン若しくはそのコポリマー、ポリエチレングリコール、アルギン酸塩、プルラン、アラビアゴム入りグアーガム、セルロース若しくはその誘導体、又は澱粉若しくは澱粉誘導体を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
活性成分がアトロピン、クロルプロマジン、ハロペリドール、エフェドリン、プロプラノロール、クロニジン、モキソニジン、フェンタニール、インドメタシン、エチニルエストラジオール、デソゲストレル、テストステロン、グラニセトロン、プラミペキソール、テトラヒドロカンナビノール又はビンポセチンである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
活性成分マトリックスが更に賦形剤又は添加物を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の経皮治療システムの活性成分含有マトリックスの製造方法であって、
a)超微粉砕した又はナノスケールの活性成分粒子を賦形剤の溶液に分散させて封入体を構築し;
b)該分散液を乾燥し、そして得られた粒子を微粉砕し;そして
c)工程b)で得られた活性成分含有封入体を、基材の溶液又は懸濁液へ導入する;
工程を含む製造方法。
【請求項15】
工程c)における封入体の基材への導入が無溶媒で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程c)における封入体の基材への導入がホットメルト迅速プロセスによって行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の経皮治療システムの活性成分含有マトリックスの製造方法であって、
a)基材の水不混和性溶液、活性成分の溶液又は懸濁液、及び賦形剤から成る液体/液体分散液を製造して、水、極性溶媒又は水と極性溶媒の混合液中の封入体を構築し;そして
b)工程a)で得られた分散液を乾燥する;
工程を含む製造方法。
【請求項18】
賦形剤が相形成剤を包含する、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
患者の皮膚を経由して医薬活性成分を投与するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載の経皮治療システムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−539786(P2009−539786A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513577(P2009−513577)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004765
【国際公開番号】WO2007/140909
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】