流体の密度及び圧力を使用した複合材部品の製造方法
複合材部品を製造するための、金型組合せ体(1)を含む製造システムを提供する。金型組合せ体(1)は、比較的剛性の金型部分(3)と、弾性変形可能な金型部分(5)と、流体(12)の密度及び/又は圧力による流体圧力を前記弾性変形可能な金型部分に加えるための流体圧力手段と、金型部分を互いに合わせたときにこれらの金型部分間に形成された金型チャンバ(8)に樹脂(23)を供給するための樹脂供給手段(17)とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料で形成された複合材部品の製造方法に関し、詳細には、流体の密度及び圧力、及び好ましくは、流体の温度を使用した複合材部品の製造方法に関する。本発明を、船殻の製造における使用に関して説明する。しかしながら、本発明はこの用途に限定されず、他の用途も考えられるということは理解されよう。
【背景技術】
【0002】
現在、大型の船殻の製造に繊維強化複合材料を使用することが一般的に行われている。これは、強度が比較的高く且つ軽量であるためである。船殻の製造に一般的に使用されている方法には、スプレーレイアップ法及びハンドレイアップ法が含まれる。スプレーレイアップ法は、細断した強化繊維及び触媒を添加した樹脂のスプレーを使用し、これを金型の表面に適用する。ハンドレイアップ法では、織布、編成布、縫合布、又は結合布を、手作業でローラーやブラシを使用して金型の表面に堆積(lay-up)する。これらの方法の両方において、樹脂を放置し、標準的な大気条件で硬化させる。
【0003】
上述の二つの方法では、樹脂が大気に対して露呈されるため、樹脂から大量の揮発性物質、詳細にはスチレンガスが放出され、空気中を漂う揮発性物質の濃度が、健康にとって危険なレベルに達するのに十分に高くなる。政府の健康専門家が、このようなエミッションを制御するための立法措置を導入したため、造船所は、こうしたエミッションを最少にする方法に移行する必要がある。
【0004】
こうした方法の一つが真空バッグ法として知られている。この方法では、上述のハンドレイアップ法を使用して適用した複合材料製レイアップに、解放フィルム、ガス抜きフィルム、及び最後に真空バッグフィルムを置く。次いで、真空バッグフィルムをその縁部に沿ってシールし、真空ポンプを使用して空気をフィルムの下から排出する。この真空バッグ法は、複合材料製レイアップを良好に固めるのを補助し、繊維を確実に良好に湿潤するとともに硬化中に放出される揮発性物質の量を減少するのを補助する。
【0005】
この真空バッグ法の更なる発展において、真空バッグフィルムを乾燥した複合材料製レイアップに堆積し、触媒を添加した樹脂を注入法を使用してレイアップに引き込むと同時に真空バッグフィルムの下の空気を真空ポンプで排出した。真空バッグスキンの下でのレイアップに亘る樹脂の分配を補助するため、編成した非構造布又は樹脂分配注入を複合材料製レイアップに重ねてもよい。このような方法は、例えば、米国特許第4,902,215号及び米国特許第5,052,906号に記載されている。
【0006】
真空バッグを用いたこれらの方法は、空気中を漂う揮発性物質のエミッションの減少するのを補助するけれども、非常に時間がかかる方法であって、フィルムを適用するのに、及び真空バッグフィルムを通した空気漏れがないことを確認するのに非常な注意を払わなければならない。空気漏れがないことを確認するための注意が不十分である場合、及び樹脂が適正に混合されていない場合には、樹脂の注入が不完全になり、樹脂で湿潤されていない領域がレイアップに残されてしまう。こうしてできた乾燥領域は、船殻を使用不能のものにしてしまう。更に、この方法で使用される真空バッグフィルム並びに解放フィルム及びガス抜きフィルムは一度しか使用できず、その後廃棄しなければならないため、費用が高くなってしまう。樹脂分配ライン等の他の樹脂分配構成要素もまた、廃棄する必要がある。
【0007】
以上の方法は全て、それにも関わらず、船殻の一回限りの製造又は小規模な製造にしか適しておらず、こうした船殻の大量生産には適していない。航空宇宙産業や自動車産業用の特に高精度の複合材部品の製造で使用されてきた別の成形品製造方法は、樹脂トランスファー成形(RTM)である。この製造方法は、互いに合わせた状態に保持したときに成形キャビティを形成する固体雄金型ダイ及び雌金型ダイを使用する必要がある。強化繊維及び他の材料を成形キャビティに注意深く置き、樹脂をキャビティに高圧で注入する。
【0008】
船殻の製造でRTMを使用することと関連した多くの問題点がある。即ち、
a)寸法上の許容差が高い、高価な適合する雄金型ダイ及び雌金型ダイを製造する必要がある。
b)触媒を添加した樹脂の硬化中の発熱反応により複合材料製レイアップ内でかなりの温度上昇が生じる。適合する金型ダイを使用する場合には、このような温度上昇を制御するのは困難である。
c)RTMでは、樹脂の湿潤を容易にするため、中央フォームコアを持つ繊維強化積層体プレフォームを使用するのが一般的である。強化積層体が成形キャビティ内に正しく堆積されなかった場合には、キャビティを通る樹脂の流れを遮断し妨害するように作用し、その結果、樹脂によってほとんど又は全く湿潤されていない領域が生じる。従って、強化繊維を適切に堆積するのに注意を払わなければならず、その結果、製造時間が長くなる。
d)船殻のシェルの硬化後、バルクへッド等の直立した継手及びウェブ強化体を船殻のシェルに固定しなければならない。これは、製造時間を全体として長くしてしまうばかりでなく、材料特性が、船殻のシェルとバルクへッドとの間の接合線に沿って不連続になるため、船殻とバルクへッドとの間の接合領域が船殻内に弱い領域を形成してしまう。
【0009】
米国特許第5,971,742号には、固体の金型ダイの各々の代りに、成形面を提供する薄く半剛性のガラス繊維膜を支持する剛性ハウジングを使用することが記載されている。ハウジング及び膜は、互いに、非圧縮性の伝熱性流体で充填された流体チャンバを形成する。チャンバ内の流体の温度を制御するため、温度制御コイルが各流体チャンバ内に延びている。この構成は、第1の問題点を緩和するのを補助するけれども、樹脂の硬化によって発生する高温のため、それでも、各製造手順後に製造プラントで冷却期間を必要とする。更に、変形が最少の半剛性成形壁を使用しても、繊維プレフォームが向き合った金型壁間の幾つかの点に引っ掛かり、樹脂が流れることができない接触点を形成する可能性が残る。一体の直立継手を形成しようとすることと関連した実際上の問題点として、樹脂を繊維プレフォームの直立部分に注入する上での困難が依然として残っている。
【0010】
本明細書中における文献、システム、作用、又は知識についての議論は、本発明を説明するために含まれている。従来技術の基礎を形成する何らかの事項、又は本願の優先日又はそれ以前の任意の国における関連技術の一般的な知識であると考えられるべきではない。
【特許文献1】米国特許第4,902,215号
【特許文献2】米国特許第5,052,906号
【特許文献3】米国特許第5,971,742号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上文中に説明したRTM製造法を含む従来技術の製造方法の欠点の少なくとも一つをなくす、複合材部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このことに留意すると、本発明のある特徴によれば、比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を有する金型組合せ体を使用した複合材部品の製造方法が提供される。この方法は、
比較的剛性の金型部分と弾性変形可能な金型部分との間に形成された金型チャンバ内に繊維強化材料を配置し、比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を互いに合わせる工程と、
流体の密度及び/又は圧力により、流体圧力を少なくとも弾性変形可能な金型部分に加える工程と、
樹脂を金型チャンバに供給することにより、金型チャンバ内に配置された強化材料を湿潤する工程とを備えている。
【0013】
比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを持つ雌金型部分であってもよい。弾性変形可能な金型部分は、雄金型面を持つ雄金型部分であってもよい。しかしながら、比較的剛性の金型部分は、雄金型部分であってもよく、その場合、弾性変形可能な金型部分は、雌金型部分であってもよい。
【0014】
弾性変形可能な金型部分は、繊維強化材料の厚さの変化に合わせて形状を一致させることができる。繊維強化材料は、この材料でできたシートの重なり層を使用して提供してもよい。これにより、合わせダイを合わせたときに特定の領域で繊維強化材料が余計な厚さを持つためにこうした領域への樹脂の流入を妨げる、RTMと関連した褶曲ゾーンの問題がなくなる。
【0015】
比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを持つ雌金型部分であってもよく、弾性変形可能な金型部分は、雄金型面を持つ雄金型部分であってもよい。本方法は、
繊維強化材料を雌金型キャビティ内に配置する工程と、
雄金型面を提供する外面及び流体を収容するための内部部分を有するような雄金型部分及び雌金型部分を互いに合わせ、雌金型キャビティと雄金型面との間に形成された金型チャンバに繊維強化材料を配置する工程と、
雄金型部分の少なくとも内部部分を流体で充填し、流体によって流体柱圧力を雄金型部分の内面に加え、雄金型面の形態を金型チャンバ内に配置された強化材料とほぼ一致させる工程と、
樹脂供給手段によって金型チャンバに樹脂を供給することにより、金型チャンバ内に配置された強化材料を湿潤する工程とを備えている。
【0016】
本明細書中、「繊維強化材料」という用語は、予備切断した繊維材料で形成された乾燥状態の強化繊維束、及びこの材料でできた織製層、又はフォーム又は他のコア及び樹脂を予備含浸していない強化繊維布を組み込んだ積層体に関して使用される。
【0017】
内部部分内の流体は、雄金型部分の内部部分の内面に流体柱圧力を加える。雄金型部分が弾性変形可能な材料で形成されるため、雄金型部分に加わった流体柱圧力は、下にある雌金型キャビティ上に堆積した繊維強化材料の形状と雄金型面の形状を一致させるように作用する。更に、流体によって加えられた流体柱圧力は、金型チャンバに供給された樹脂によって及ぼされる流体柱圧力と相互作用する。詳細には、流体柱圧力は、金型チャンバ内の樹脂の柱圧力と自然に均衡し、その結果、加えられた圧力が均衡するものと考えられる。これには、樹脂を金型チャンバ内で均等に分配し、繊維強化材料を完全に湿潤するという効果がある。
【0018】
内部部分の充填に使用される流体の流体密度は、金型チャンバに供給される樹脂の流体密度と値が近いように選択されてもよい。袋内の液体と、雌金型キャビティと雄金型面との間の金型チャンバに引き込まれた樹脂との間の「均衡密度」効果により、樹脂を分配できる。均衡密度の原理は、本出願人の国際特許出願第PCT/AU02/00078号に記載してある。同特許を示すことにより、この特許に開示された内容は本明細書中に含まれるものとする。均衡密度の原理は、弾性変形可能な膜のいずれかの側に作用する流体圧力が均衡をうしなった場合に生じ、成形キャビティが所定の角度で傾斜している場合でも、樹脂を均等に分配できる。
【0019】
樹脂は、代表的には、内部部分の充填に代表的に使用される水よりも密度が高い。しかしながら、樹脂及び水の密度は、水を予熱することにより樹脂を加熱し、その密度を下げることによって調節してもよい。更に、この目的で樹脂を予熱してもよい。水よりも密度が高い流体を内部部分内で使用することもできる。別の態様では、グリコール等の比熱が高い流体を使用してもよい。雄金型部分の両側に均衡した圧力を作用するための別の態様は、雄金型部分の上方の流体の高さを大きくすることによって、雌金型部分の内面の流体柱圧力を上昇することである。
【0020】
雄金型部分が、好ましくは幾つかの箇所を強化した弾性変形可能な材料で形成されているため、雄金型面は、流体と樹脂との間の相互作用により形状が変形し、これによって樹脂を複合材料に押し込むとともに、レイアップを通って隅部及び他の「困難」領域に樹脂を分配するのを補助する。雄金型面に弾性変形可能な材料を使用するとともに密度及び/又は圧力を均衡させ、更に真空を使用することにより更に複雑な構造を形成できる。これには、バルクへッド及びストリンガーを持ち、船殻シェルと一体成形された任意の他のウェブを持つ船殻シェルの製造が含まれる。更に、従来のRTM法における流路の厳密な許容差による樹脂の分配の制限がないため、強化繊維材料を堆積する上で高い精度が要求されない。
【0021】
流体圧力と樹脂の圧力との相互作用だけで樹脂を分配できるけれども、金型チャンバ内を真空にすることによって、複合材料内への樹脂の注入を容易にしてもよい。この目的のため、本発明による方法は、金型チャンバを真空にしながら、金型チャンバに樹脂を供給する工程を含む。真空にすることは、複合材料内に捕捉された空気を除去するのを補助するとともに、樹脂を金型チャンバに引き込むことによって複合材料を樹脂で湿潤するのを補助する。
【0022】
流体圧力及び樹脂の圧力は、個々に変化させてもよいし、互いに対して所定の関係で変化させてもよい。例えば、樹脂の圧力は、最初、比較的大量の樹脂で金型チャンバを溢れさせる程高くてもよい。樹脂のこの容積は、弾性変形可能な金型部分が繊維複合材料から遠ざかる方向で外方に移動することによって吸収できる。次いで、流体圧力を上昇させ、弾性変形可能な金型部分が複合繊維材料に押し戻されるに従って、余分の樹脂を分配し且つ押し出す。これにより、繊維強化材料を更に迅速に湿潤させる。樹脂の圧力及び/又は流体圧力をパルス状にすることにより、樹脂の分配を容易にすることもまた考えられる。
【0023】
高粘度の樹脂の場合には、金型組合せ体及び金型チャンバを加熱してもよい。これにより繊維強化材料の湿潤を容易にする。これは、この樹脂を加熱することにより、金型チャンバに亘って分配されるときの樹脂の粘度が低下するためである。
【0024】
本方法は、更に、金型組合せ体の両側に均衡した流体圧力を加える工程を含む。これによって得られる一つの利点は、製造される複合材部品に亘る圧力が更に均等になり、完成した成形品に亘る材料特性が更に均等になるということである。この均衡した圧力を加えることができる製造システムを以下に説明する。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、複合材部品を製造するための製造システムにおいて、比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を持つ金型組合せ体と、流体の密度及び/又は圧力による流体圧力を弾性変形可能な金型部分に加えるための流体圧力手段と、金型部分を互いに合わせたときに金型部分間に形成される金型チャンバに樹脂を供給するための樹脂供給手段とを含む、製造システムが提供される。
【0026】
比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを持つ雌金型部分又は雄金型面を持つ雄金型部分のいずれによって提供されてもよい。弾性変形可能な金型部分は、前記雄金型部分又は前記雌金型部分のいずれかによって対応して提供されてもよい。
【0027】
樹脂供給手段は、金型チャンバと流体連通した少なくとも一つの樹脂供給ラインによって提供されてもよい。樹脂供給ラインは、雄金型面又は雌金型キャビティの開口部と連通していてもよいし、又は、雄金型部分及び雌金型部分の外周間に設けられた開口部に入っていてもよい。
【0028】
更に、金型チャンバから空気を排出するのに真空生成を使用する場合、少なくとも一つの真空ラインが金型チャンバと流体連通していてもよい。この目的のため、金型チャンバに対して少なくとも実質的に気密のシールを提供するため、雌金型部分と雄金型部分との間にシール手段が設けられていてもよい。真空ラインは、雄金型面又は雌金型キャビティの開口部と連通していてもよく、又は、雌金型部分及び雄金型部分の外周間に設けられた開口部に入っていてもよい。
【0029】
雄金型部分は、少なくとも大部分がゴム又は他の同様に弾性変形可能な材料で形成されていてもよい。好ましくは、雄金型部分は所定の材料から形成されていてもよく、及び/又は別の態様では、雄金型部分は、複合材部品を完全に硬化させたとき、複合材部品から容易に分離する雄金型面の表面を備えていてもよい。これにより、解放フィルム流れ膜やガス抜きフィルム等を金型チャンバ内に設ける必要をなくす。
【0030】
繊維複合材料と隣接した雄金型面の表面には、その表面に沿って延びる一連のチャンネルが設けられていてもよい。好ましくは、これらのチャンネルは、雄金型面の全面に亘ってメッシュパターンをなして延びていてもよい。これらのチャンネルは、空気の排出及び繊維複合材料に亘る樹脂の分配を容易にするため、樹脂及び空気が通過できる通路を提供する。雄金型面は、雄金型面の反対側に十分に高い流体圧力が加えられたときにチャンネルが平らになるように、十分な変形自在性を備えていてもよい。これにより繊維複合材料内に樹脂を容易に押し込む。
【0031】
本発明の別の特徴によれば、複合材部品を製造するための製造システムにおいて、
金型組合せ体を含み、該金型組合せ体は、
雌金型キャビティを有する比較的剛性の雌金型部分と、
雌金型キャビティの周囲を取り囲む、樹脂を内部に供給できるリングチャンバを含むリング部分及びリングチャンバに樹脂を供給するための樹脂供給手段を含む、周囲部分と、
弾性変形可能な材料で形成された、外側の雄金型面及び液体を収容するための内部部分を持つ雄金型部分と、
雄金型部分及び雌金型部分を互いに合わせたとき、雌金型キャビティと雄金型面との間に形成された金型チャンバと、
金型チャンバ内を真空にするための真空生成手段とを備えた、製造システムが提供される。
【0032】
リングチャンバは、雄金型部分を取り囲み且つ支持する比較的剛性の周囲リングフランジによって形成されてもよく、リングフランジは、雌金型キャビティを取り囲む周囲部分と係合する。リングチャンバに対して少なくとも実質的に気密のシールを提供するため、シール手段、例えば弾性シールリブがリングフランジとリング部分との間に設けられていてもよい。
【0033】
リングチャンバ内の樹脂のプールは、二つの目的で役立つ。先ず最初に、金型チャンバ内の強化材料を湿潤するための樹脂源を提供する。更に、金型チャンバを真空にすることができるようにする液体シールを成形キャビティの周囲に提供する。
【0034】
強化材料の少なくとも周囲部分は、リングチャンバの領域内に延びていてもよく、樹脂を毛管作用によって強化材料の残りに染み込ませることができる芯として作用する。
【0035】
一連の樹脂ラインが、チャンバに沿って分配された点で、樹脂をリングチャンバに供給してもよい。別の態様では、単一の樹脂供給ラインがリングチャンバと平行に延びていてもよく、供給ラインには、このラインに沿って間隔が隔てられた一連のブリードラインが設けられており、これらのブリードラインから樹脂をリングチャンバ内に排出できる。
【0036】
真空生成手段は、真空ポンプ及び少なくとも一つの真空ラインを含んでもよい。第1真空ラインが金型チャンバと連通していてもよい。第1真空ラインは、雄金型部分内に設けられた開口部に連結されていてもよく、これによって金型チャンバを真空にする。好ましくは、第2真空ラインがリングチャンバと連通状態に設けられており、これによってリングチャンバを真空にする。バルブが、第1及び第2の真空ラインの両方によって加えられた真空状態を制御する。バルブの第1位置では、両真空ラインが真空とされ、リングチャンバ内に溜まった樹脂に亘って圧力差がほとんど又は全くない。これは、リングチャンバから金型チャンバ内への樹脂の移送を制限する。第2位置では、第1真空ラインが遮断/閉鎖されており、リングチャンバ内の真空状態を停止し、次いで大気に対して開放し、第2真空ラインのみが真空状態となる。これにより、リングチャンバ内に保持された樹脂の前後の圧力差がいきなり上昇し、これによって樹脂の「波」を金型チャンバ内に圧送する。樹脂がリングチャンバからほとんど無くなったとき、第1真空ラインを再び開放することによってリングチャンバを再び真空にする。装置は、これによって、樹脂の定期的な波を金型チャンバに入れることができる。
【0037】
別の態様では、高圧ガスのパルスを加圧ガス供給源からリングチャンバに定期的に供給してもよい。この高圧パルスの効果は、リングチャンバ内の樹脂を、樹脂の「波」で金型チャンバに押し込むことによって金型チャンバ内に移送することである。この樹脂の波は、樹脂を複合材料内に更に迅速に且つ更に効率的に移送し注入することにより、複合材料を完全に湿潤するのを補助する。リングチャンバ内の樹脂の液面高さが、それ以上下がると樹脂シールが壊れてしまう低点(low point) に達したとき、及び樹脂をこれ以上供給する必要がない高点(high point)に達したときを決定するため、リングチャンバの低部分及び高部分に樹脂センサが夫々設けられている。樹脂が低点に達したとき、圧力差及び/又はリングチャンバへの高圧ガスの供給を停止し、次いで樹脂を更に送出でき、リングチャンバ内への供給を補充する。
【0038】
表面に取り付けられた機械式外部振動装置等の振動手段を使用し、金型組合せ体を振動し、複合材料を完全に湿潤させる。
【0039】
米国特許第6,149,844号には、均衡させた圧力を使用して複合材部品を製造するための装置が記載されている。この装置は、二つの向き合った圧力チャンバを有する。一方のチャンバは、浮動剛性金型を支持し、他方のチャンバは、弾性変形可能な金型面を有する。複合レイアップを金型に堆積してもよく、次いで真空バッグをレイアップ上に配置し、排気し、これによってレイアップを圧縮し、レイアップから空気の大部分を引き出す。次いで、圧力チャンバを互いに合わせて弾性変形可能な金型面を真空バッグ上に配置する。真空バッグの下には複合レイアップが配置されている。次いで、高圧高温の流体を各圧力チャンバを通して循環し、均衡した圧力及び均等な温度を複合レイアップに加える。これにより、RTMを含む従来の方法で得られるよりも材料の品質が高い複合材部品を製造する。均衡した圧力は、更に、本発明に従って使用できる。この目的のため、雌金型部分は、第1圧力チャンバを形成するため、第1ハウジングに浮動構成で支持されていてもよく、雄金型部分は、第2圧力チャンバを形成するため、第2ハウジングに支持されていてもよい。本発明による装置は、複合繊維材料を排気するのに別体の真空バッグを使用することを必要とせず、雄金型/スキン部分を複合繊維材料と直接接触させてもよい。流体循環手段は、製造プロセス中、各圧力チャンバを通して高圧の流体を循環させることができる。流体圧力は、両チャンバで実質的に等しくてもよく、これによって、均衡した圧力の追加の利点を提供する。
【0040】
高温硬化樹脂を使用する場合、又は樹脂の全体としての粘度及び従って流体の密度を下げるために樹脂を加熱する必要がある場合、各圧力チャンバを通して高温の流体を循環させることも考えられる。次いで、樹脂が硬化するとき、圧力チャンバを通して低温の手段を循環させ、成形品を冷却する。
【0041】
本発明は、船殻の製造に現在使用されているRTM製造法を越える特定の利点を有する。第1に、高価で重量のある金型ダイを製造する必要がない。確かに、雌金型部分は、大きな圧力又は重量を支持する必要がないため、比較的安価な材料で製造できる。雄金型部分の袋構造は、ゴム等の弾性変形可能な材料から簡単に形成できる。形態が比較的簡単であるとともに、雄金型部分の重量は剛性金型ダイの場合よりも遥かに小さい。
【0042】
更に、均衡した圧力及び真空状態は、樹脂を強化繊維材料内に均等に分配する遥かに効果的な手段である。この効率のため、金型チャンバの形状を更に複雑にでき、例えば船殻のバルクへッドを形成するための容積を含んでいてもよい。更に、連結ラグ等の別体の構成要素を最終的な複合材部品内に配置してもよく、一体に埋め込んでもよい。これにより、船殻を単一の一体のユニットとして形成でき、船殻に亘る材料特性が更に均等になり、潜在的に弱い領域がない。更に、船殻の様々な構成要素を同時に形成できるため、製造時間が大幅に短縮される。更に、特に高級な樹脂及び高品質の繊維材料を必要とする従来のRTM法と比較すると、本発明は様々な樹脂及び繊維材料を使用できる。
【0043】
次に、本発明の好ましい実施形態を例示する添付図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。この他の構成が可能であり、従って、添付図面は、以上の本発明の説明の一般性を損なうものであるとは理解されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の様々な好ましい実施形態の対応する特徴には、明瞭化を図る目的で全体に同じ参照番号が付してある。
【0045】
先ず最初に図1を参照すると、この図には、製造システム、即ち雌金型部分3及び雄金型部分5を含む金型組合せ体1の基本的形体が示してある。雌金型部分3は雌金型キャビティ7を備えており、比較的剛性の材料で形成されている。雌金型部分3は、金型支持装置4上の所定位置にしっかりと保持される。雄金型部分5は、ゴム等の弾性変形可能な材料で形成されており、雄金型部分5の雄金型面を提供する外面9を含む。雄金型部分5は、更に、製造プロセス中に液体13を収容するための内部部分11を含む。
【0046】
本発明の方法によれば、先ず最初に、繊維強化材料15を雌金型部分3上に置き、次いで、雄金型部分5の内部部分11を流体12で充填する。この流体12は、便利には水であるが、密度が高く且つ比熱が高いグリコール等の他の流体を使用することも考えられる。次いで、樹脂供給ライン19及び樹脂タンク21を含む樹脂供給手段17が、触媒を添加した及び/又は混合した液体樹脂を、供給ライン19を通して、雄金型面9の最も下の点に設けられた開口部25に供給する。雌金型面7と雄金型面9との間の狭幅の容積が形成する金型チャンバ8に樹脂23を供給する。樹脂23は、樹脂タンク21から金型チャンバ8に圧送されるか或いは、樹脂タンク21を内部部分11内の流体13の液面高さよりも上の所定の高さに保持し、樹脂23を金型チャンバ8に流入する。開口部25のところでの金型チャンバ8内の圧力は、雄金型部分5の最も下の点の上方の流体柱の高さの関数である。
【0047】
樹脂23は、開口部25を通って進入するとき、繊維材料15を通って分散する。これは、この点での圧力差のためであり、及び強化繊維材料15に対する樹脂の毛管吸引力により樹脂が繊維に沿って「毛管作用で滲み込む」ためである。樹脂23が金型チャンバ8に流入し続け、繊維束15の側部及び頂部に向かって拡がり、そして移動するに従って、雄金型部分5に作用する流体柱圧力は、流体の液面高さ13と隣接した最小値まで徐々に低下する。これにより、樹脂23が成形型内で上方に移動するに従って樹脂23の進行速度が低下するため、流体12の密度は、好ましくは樹脂23よりも高く、又は流体の液面高さ13は、最も高いところで、金型部分3、5よりも上方にあり、樹脂23を繊維束15を通して分散するのに十分な流体柱圧力が雄金型部分5に亘って加えられる。樹脂23又は流体12のいずれかを予熱することによって、樹脂23の粘度及び従って密度を低下することにより、長時間、例えば40Cに亘る部品の湿潤を更に容易にすると考えられる。選択された樹脂は、例えば60℃乃至80℃の高温でしか硬化しないように、触媒を添加し及び/又は混合してもよい。従って、部品を硬化させるためには、流体の温度を80℃まで急速に上昇し、これにより部品を硬化させる。
【0048】
供給された樹脂23は、これによって、繊維複合材料即ち繊維束15に亘って分配され且つ注入される。これは、内部部分11内に収容された流体12によって加えられた圧力が、金型チャンバ8内の触媒を添加した樹脂23による力と相互作用し且つ均衡しようとするためである。
【0049】
更に、雌金型部分3及び雄金型部分5を含む金型組合せ体1は、製造プロセス前に加熱してもよいし、製造プロセス中に加熱してもよい。これにより、粘度を低下させるのに加熱を必要とする高粘度の樹脂23を使用でき、これにより繊維強化材料15の湿潤が容易になる。
【0050】
雄金型部分5は、流体柱圧力を樹脂23に作用できるようにするため、並びに雄金型面の形態を雌金型キャビティ7内に支持された繊維束15と一致させるため、変形可能でなければならない。
【0051】
次に図2を参照すると、雄金型部分5が変形可能であり、内部部分11内に収容された流体12によって力が加えられることにより、更に複雑な形状の成形品を製造できる。図2は、直立部16を更に含むように堆積した繊維複合材料15を示す。これらの直立部分は、最終的には、完成した船殻の強化に必要な直立部分を提供し、これらの直立部分は、船殻の残りの部分と一体成形される。雄金型部分5は、これらの直立部分を船殻の残りと一体成形できるように賦形されていてもよい。樹脂23は、チャンネル18を通して上方に押圧される。チャンネル18は、その外面に加えられた流体柱圧力により、直立部分16の周囲と形態が一致する。
【0052】
複合材料15を通した樹脂の注入を容易にするため、成形チャンネル8内を真空にすることにより、空気を繊維強化材料15から排出するとともに、樹脂23を成形チャンネル8に引き込む。図3は、図1に示すのと同様であるが、真空生成手段27を更に含む製造システムを示す。雄金型部分5は、更に、雄金型部分5の変形可能な部分を取り囲み且つ支持する比較的剛性のリングフランジ29を含む。シール手段、例えば弾性シールリブ31が、リングフランジ29と、雌金型キャビティ7を取り囲む雄金型部分の周囲部分33との間に設けられる。これにより、成形チャンネル8内を真空にすることができる。真空生成手段は、真空ポンプ35と、成形チャンネル8と連通した真空ライン37とを含む。真空ライン37は、図3に、雄金型部分のリングフランジ29と雌金型部分3の周囲部分33との間に設けられた開口部(図示せず)を通して連通した状態で示してある。真空ライン37は、別の態様では、雄金型部分5又は雌金型部分3に設けられた、金型チャンバ8と流体連通した開口部に連結されていてもよいということは理解されよう。
【0053】
図4は、図3に示す実施形態と異なる本発明の別の例示の実施形態を示す。この実施形態では、雄金型部分5の最も下の部分に配置された開口部23に真空ライン37が連結してある。雌金型キャビティ7の周囲に形成された周囲肩部分33と雄金型部分5を支持する上壁36との間に形成された空間により、リングチャンバ39が形成される。上壁36は、流体の液面高さ13が金型部分3、5の上方のかなり高いところに置かれるように雌金型部分3の上方に延びている。これにより繊維束15に比較的高い流体柱圧力が加えられる。リングチャンバ39と連通した樹脂ライン19又は樹脂の容器は、リングチャンバ39内に所定容積の樹脂23を保持するように、樹脂23を樹脂タンク21からリングチャンバ39に供給する。樹脂23は、金型チャンバ8の周囲でリングシールとして作用し、これによって、金型チャンバ8を真空にすることができる。この真空状態により樹脂23を金型チャンバ8に引き込み、これによって繊維束15を湿潤させる。この際、リングチャンバ39内の樹脂23は、樹脂供給ライン19から補充される。更に、繊維束15の周囲の一部をリングチャンバ39に入れることにより、繊維束15は、樹脂23を繊維束15に送出するための芯として作用する。金型チャンバ8に加えられた流体柱圧力により、樹脂23は、繊維束15に亘って均等に分配される。
【0054】
図5及び図5Aは、樹脂23を通過させ、樹脂金型チャンバ8に供給できるリングチャンバ39を含むという点で即ち4に示す実施形態と同様の本発明の別の例示の実施形態を示す。しかしながらリングチャンバ39は、雄金型部分5のリングフランジ29と雌金型部分3の周囲部分33との間に形成された空間によって形成される。周囲部分33は、側壁33b及び上壁33aを含む。樹脂供給ライン19は、周囲部分の側壁33bから延びており、リングチャンバ39と連通している。更に、上下の樹脂センサ41a及び41bが側壁33b内に配置されている。本実施形態では、第1及び第2の真空ライン37a及び37bが、夫々、リングチャンバ39及び雄金型部分5に設けられた開口部25と連通している。製造プロセス中、樹脂23がリングチャンバ39の少なくとも大部分を充填する。シール31が雄金型部分5のリングフランジ29と周囲部分の上壁33aとの間に設けられており、これによって真空生成ライン37aでリングチャンバ39を適正に排気できる。シール31は、樹脂23による汚染をなくすため、常に樹脂23の液面高さの上方に配置される。第2真空ライン37bは、第1バルブ36aを通して各真空ライン37a、37bに連結された真空ポンプ35によって、金型チャンバ8を直接真空にすることができる。バルブ36aにより、真空ポンプ35を両真空ラインに同時に連結でき、又は一方の真空ラインにだけ連結できる。両真空ライン37a及び37bが真空ポンプ35に連結されている場合には、リングチャンバ39と金型チャンバ8との間の圧力差は最小である。従って、リングチャンバ39内に保持された樹脂23は、リングチャンバ内に保持され、このチャンバ内に溜まる。リングチャンバ39と連通した第1真空ライン37aは、第2真空ライン37bが真空ポンプ35に連結された状態で、大気に対して閉鎖でき且つ通気でき、これによって、リングチャンバ39内の真空状態を解放する。樹脂リングの前後の圧力差、即ちリングチャンバ39と金型チャンバ8との間の圧力差が、結果的に比較的いきなり上昇することにより、樹脂波46(図10参照)が発生し、この波がリングチャンバ39から金型チャンバ8を通って移動する。この樹脂波は、金型チャンバ8を通って移動するときに雄金型部分5に一時的膨出部を形成し、繊維束15内に入ってこれを濡らすとき、波46の前側の、樹脂23の前縁部である樹脂面を押すように作用する。この樹脂波は、繊維束15内への樹脂23の移動速度を高めるのを補助するように作用する。
【0055】
樹脂23を金型チャンバ8に押し込むのを補助するため、高圧ガスの定期的パルスをリングチャンバ39に加えることによって、リングチャンバ39から金型チャンバ8への樹脂23の移動を更に補助するのが有利である。圧力タンク40が第1真空ライン37aに第2バルブ36bを介して連結されている。第1バルブ36aは、先ず最初に、第2バルブ36bが圧力タンク40を真空ライン37aに連結する前に、真空ポンプ35からの真空ラインを遮断する。これにより、圧力タンク40からの高圧ガスを使用することによって、リングチャンバ39に圧力パルスを加えることができる。この高圧ガスのパルスは、リングチャンバ39内の樹脂23の液面高さが樹脂センサ41aの液面高さよりも下に低下するまで続けられる。その後、高圧ガスの供給を停止し、樹脂が第2樹脂センサ41bの高さに達するまで、リングチャンバを樹脂23で充填できるようにする。高圧ガスを使用することにより、更に、金型チャンバ8内への樹脂波46により樹脂23を移動するのを補助する。これにより、樹脂23の移動が更に容易になり、複合材料15を樹脂23によって完全に湿潤させる速度が上昇する。
【0056】
図6は、図5及び図5Aに示す実施形態の変形例を示す。この変形例では、真空生成手段27は、真空ライン37だけを通して雄金型部分5内の開口部25に連結されている。リングチャンバ39内の樹脂23は、金型チャンバ8に対してシールを提供するのに十分なレベルに維持され、これによって、その内部に真空状態を維持できる。
【0057】
図7は、図5及び図5Aに示す実施形態と同様の、本発明の更に別の実施形態を示す。相違点は、雌金型部分3がチャンバ内の流体によって支持されており、圧力チャンバ壁47に対し、弾性フランジ46を介して浮動関係でシールされているということである。これにより、雌金型部分3の下に第1圧力チャンバ51が形成される。更に、雄金型部分5は、第2外ハウジング49によって支持されており、これによって、雄金型部分5の上方に第2圧力チャンバ52を提供する。雄金型部分5を支持するリングフランジ29は、弾性フランジ46aを介して第2ハウジング49に連結されている。従って、雌金型部分3及び雄金型部分5は、両方とも、それらの外ハウジング47、49に対してシールされており且つ浮動関係で支持されている。第1圧力チャンバ51及び第2圧力チャンバ52の両方を通して高圧の液体を循環させることができる。これらの圧力チャンバ51、52の各々の内部の流体圧力は、雌金型部分3の周囲部分33及び雄金型部分5のリングフランジ29を互いに押圧することによって、シール手段31の開放を容易にするように作用する。逆の流体圧力は、雌金型部分3と雄金型部分5との間に配置された複合材料15全体に均衡した圧力を及ぼすように作用する。これは、繊維束15に亘って更に均等な圧力を及ぼすのを補助し、これにより繊維束15の空気の圧縮及び空気の除去を改善する。更に、高温硬化樹脂を使用した場合、圧力チャンバ51及び52を通して高温の流体を循環させることにより、必要な硬化温度を提供する。更に、高温により、粘度が比較的高い樹脂を使用できる。樹脂を加熱してその粘度を低下させることにより、繊維束15を通した樹脂の注入を容易にする。
【0058】
複合材料15への樹脂の注入は、金型組合せ体を振動させることによって容易にできる。従って、この目的のため、回転振動器53を金型組合せ体の一部に固定してもよい。振動器53は、例えば、雌金型部分3に取り付けてもよい。
【0059】
図8に示す実施形態もまた、圧力チャンバ51、52を使用する。図7の実施形態との主な相違点は、この実施形態では、樹脂ライン19が、雄金型部分5の最も下の部分に設けられた開口部25に樹脂を供給することである。単一の真空ライン37がリングチャンバ39に連結されている。この構成では、樹脂は、開口部25から金型チャンバ8を通ってリングチャンバ39に向かって移動する。リングチャンバ39に到達した余分の樹脂は、溢流ライン54を使用して溢流タンク55内に捕捉できる。
【0060】
図9A及び図9Bは、図8の実施形態を示し、圧力チャンバ装置を使用することによる利点を例示する。最終的に硬化させた複合材部品56から雄金型部分5を分離するのは困難である。これは、成形品と直接接触しているためである。それにも関わらず、図9A及び図9Bに示す引き剥がし手順で流体を圧力チャンバから圧送することによって、雄金型部分を成形品56から簡単に引き剥がすことができる。
【0061】
有利には、図10に示すように、樹脂波46を矢印で示す方向に移動することにより、樹脂面45を樹脂波46の前方で移動する。これらの樹脂波46の順序は、本発明に従って発生できる。
【0062】
図11は、図2に示す種類の直立部分16を更に詳細に示す。直立部分は、一層の強化クロス16bによって取り囲まれたフォーム16aの円錐体を含む。強化ロッド即ち強化材料16cが、直立部分の上縁部の上に強化体として設けられていてもよい。ロッド16cもまた、強化クロス16bによって包まれている。雄金型面9内のチャンネル18の形態は、直立部分16の周囲と一致する。これは、チャンネル18を取り囲む流体12の圧力のためである。チャンネル18及び直立材料16内に捕捉された空気は、気泡として上方に浮く傾向がある。これは、空気が、実際には、「水面下」で流体の液面高さ13の下にあるためである。従って、樹脂を垂直チャンネル18に引き込むのを補助するため、及びチャンネル18を通して空気を上方に逃がすため、別の真空ライン37cを設けてもよい。チャンネルを樹脂で充填した後、別の樹脂ライン19により、更に多くの樹脂をチャンネル18に及び繊維束15の残りに供給する。繊維複合材料15からの空気の排出及び繊維束15への樹脂を分配は、図12に示すように、雄金型部分5の外面9に一連のチャンネル6を設けることにより容易になる。これらのチャンネル6は、少なくとも外面9の大部分に亘ってメッシュパターンで設けられていてもよい。チャンネル6は、排出されるべき空気及び分配されるべき樹脂が通過できる通路を提供する。雄金型部分に作用する流体圧力を上昇すると、チャンネル6が平らになり、外面9全体が繊維複合材料15に当たる。繊維複合材料15及びチャンネル6内の余分の樹脂は、金型チャンバの外に余分の樹脂として押し出される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に従って複合材部品を製造するための製造システムの第1の好ましい実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図1の製造システムの概略側断面図である。
【図3】本発明による製造システムの第2の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図4】本発明による製造システムの第3の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図5】本発明による製造システムの第4の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図5A】図5の断面Aの詳細図である。
【図6】本発明による製造システムの第5の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図7】本発明による製造システムの第6の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図8】本発明による製造システムの第7の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図9】図9A及び図9Bは、図8に示す本発明の実施形態の中の完成した成形品からの雄金型部分の分離を示す概略断面図である。
【図10】本発明による樹脂波を示す概略詳細図である。
【図11】本発明に従って形成した、強化した直立部分を示す概略詳細図である。
【図12】本発明による雄金型部分の一実施形態の概略詳細図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料で形成された複合材部品の製造方法に関し、詳細には、流体の密度及び圧力、及び好ましくは、流体の温度を使用した複合材部品の製造方法に関する。本発明を、船殻の製造における使用に関して説明する。しかしながら、本発明はこの用途に限定されず、他の用途も考えられるということは理解されよう。
【背景技術】
【0002】
現在、大型の船殻の製造に繊維強化複合材料を使用することが一般的に行われている。これは、強度が比較的高く且つ軽量であるためである。船殻の製造に一般的に使用されている方法には、スプレーレイアップ法及びハンドレイアップ法が含まれる。スプレーレイアップ法は、細断した強化繊維及び触媒を添加した樹脂のスプレーを使用し、これを金型の表面に適用する。ハンドレイアップ法では、織布、編成布、縫合布、又は結合布を、手作業でローラーやブラシを使用して金型の表面に堆積(lay-up)する。これらの方法の両方において、樹脂を放置し、標準的な大気条件で硬化させる。
【0003】
上述の二つの方法では、樹脂が大気に対して露呈されるため、樹脂から大量の揮発性物質、詳細にはスチレンガスが放出され、空気中を漂う揮発性物質の濃度が、健康にとって危険なレベルに達するのに十分に高くなる。政府の健康専門家が、このようなエミッションを制御するための立法措置を導入したため、造船所は、こうしたエミッションを最少にする方法に移行する必要がある。
【0004】
こうした方法の一つが真空バッグ法として知られている。この方法では、上述のハンドレイアップ法を使用して適用した複合材料製レイアップに、解放フィルム、ガス抜きフィルム、及び最後に真空バッグフィルムを置く。次いで、真空バッグフィルムをその縁部に沿ってシールし、真空ポンプを使用して空気をフィルムの下から排出する。この真空バッグ法は、複合材料製レイアップを良好に固めるのを補助し、繊維を確実に良好に湿潤するとともに硬化中に放出される揮発性物質の量を減少するのを補助する。
【0005】
この真空バッグ法の更なる発展において、真空バッグフィルムを乾燥した複合材料製レイアップに堆積し、触媒を添加した樹脂を注入法を使用してレイアップに引き込むと同時に真空バッグフィルムの下の空気を真空ポンプで排出した。真空バッグスキンの下でのレイアップに亘る樹脂の分配を補助するため、編成した非構造布又は樹脂分配注入を複合材料製レイアップに重ねてもよい。このような方法は、例えば、米国特許第4,902,215号及び米国特許第5,052,906号に記載されている。
【0006】
真空バッグを用いたこれらの方法は、空気中を漂う揮発性物質のエミッションの減少するのを補助するけれども、非常に時間がかかる方法であって、フィルムを適用するのに、及び真空バッグフィルムを通した空気漏れがないことを確認するのに非常な注意を払わなければならない。空気漏れがないことを確認するための注意が不十分である場合、及び樹脂が適正に混合されていない場合には、樹脂の注入が不完全になり、樹脂で湿潤されていない領域がレイアップに残されてしまう。こうしてできた乾燥領域は、船殻を使用不能のものにしてしまう。更に、この方法で使用される真空バッグフィルム並びに解放フィルム及びガス抜きフィルムは一度しか使用できず、その後廃棄しなければならないため、費用が高くなってしまう。樹脂分配ライン等の他の樹脂分配構成要素もまた、廃棄する必要がある。
【0007】
以上の方法は全て、それにも関わらず、船殻の一回限りの製造又は小規模な製造にしか適しておらず、こうした船殻の大量生産には適していない。航空宇宙産業や自動車産業用の特に高精度の複合材部品の製造で使用されてきた別の成形品製造方法は、樹脂トランスファー成形(RTM)である。この製造方法は、互いに合わせた状態に保持したときに成形キャビティを形成する固体雄金型ダイ及び雌金型ダイを使用する必要がある。強化繊維及び他の材料を成形キャビティに注意深く置き、樹脂をキャビティに高圧で注入する。
【0008】
船殻の製造でRTMを使用することと関連した多くの問題点がある。即ち、
a)寸法上の許容差が高い、高価な適合する雄金型ダイ及び雌金型ダイを製造する必要がある。
b)触媒を添加した樹脂の硬化中の発熱反応により複合材料製レイアップ内でかなりの温度上昇が生じる。適合する金型ダイを使用する場合には、このような温度上昇を制御するのは困難である。
c)RTMでは、樹脂の湿潤を容易にするため、中央フォームコアを持つ繊維強化積層体プレフォームを使用するのが一般的である。強化積層体が成形キャビティ内に正しく堆積されなかった場合には、キャビティを通る樹脂の流れを遮断し妨害するように作用し、その結果、樹脂によってほとんど又は全く湿潤されていない領域が生じる。従って、強化繊維を適切に堆積するのに注意を払わなければならず、その結果、製造時間が長くなる。
d)船殻のシェルの硬化後、バルクへッド等の直立した継手及びウェブ強化体を船殻のシェルに固定しなければならない。これは、製造時間を全体として長くしてしまうばかりでなく、材料特性が、船殻のシェルとバルクへッドとの間の接合線に沿って不連続になるため、船殻とバルクへッドとの間の接合領域が船殻内に弱い領域を形成してしまう。
【0009】
米国特許第5,971,742号には、固体の金型ダイの各々の代りに、成形面を提供する薄く半剛性のガラス繊維膜を支持する剛性ハウジングを使用することが記載されている。ハウジング及び膜は、互いに、非圧縮性の伝熱性流体で充填された流体チャンバを形成する。チャンバ内の流体の温度を制御するため、温度制御コイルが各流体チャンバ内に延びている。この構成は、第1の問題点を緩和するのを補助するけれども、樹脂の硬化によって発生する高温のため、それでも、各製造手順後に製造プラントで冷却期間を必要とする。更に、変形が最少の半剛性成形壁を使用しても、繊維プレフォームが向き合った金型壁間の幾つかの点に引っ掛かり、樹脂が流れることができない接触点を形成する可能性が残る。一体の直立継手を形成しようとすることと関連した実際上の問題点として、樹脂を繊維プレフォームの直立部分に注入する上での困難が依然として残っている。
【0010】
本明細書中における文献、システム、作用、又は知識についての議論は、本発明を説明するために含まれている。従来技術の基礎を形成する何らかの事項、又は本願の優先日又はそれ以前の任意の国における関連技術の一般的な知識であると考えられるべきではない。
【特許文献1】米国特許第4,902,215号
【特許文献2】米国特許第5,052,906号
【特許文献3】米国特許第5,971,742号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上文中に説明したRTM製造法を含む従来技術の製造方法の欠点の少なくとも一つをなくす、複合材部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このことに留意すると、本発明のある特徴によれば、比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を有する金型組合せ体を使用した複合材部品の製造方法が提供される。この方法は、
比較的剛性の金型部分と弾性変形可能な金型部分との間に形成された金型チャンバ内に繊維強化材料を配置し、比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を互いに合わせる工程と、
流体の密度及び/又は圧力により、流体圧力を少なくとも弾性変形可能な金型部分に加える工程と、
樹脂を金型チャンバに供給することにより、金型チャンバ内に配置された強化材料を湿潤する工程とを備えている。
【0013】
比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを持つ雌金型部分であってもよい。弾性変形可能な金型部分は、雄金型面を持つ雄金型部分であってもよい。しかしながら、比較的剛性の金型部分は、雄金型部分であってもよく、その場合、弾性変形可能な金型部分は、雌金型部分であってもよい。
【0014】
弾性変形可能な金型部分は、繊維強化材料の厚さの変化に合わせて形状を一致させることができる。繊維強化材料は、この材料でできたシートの重なり層を使用して提供してもよい。これにより、合わせダイを合わせたときに特定の領域で繊維強化材料が余計な厚さを持つためにこうした領域への樹脂の流入を妨げる、RTMと関連した褶曲ゾーンの問題がなくなる。
【0015】
比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを持つ雌金型部分であってもよく、弾性変形可能な金型部分は、雄金型面を持つ雄金型部分であってもよい。本方法は、
繊維強化材料を雌金型キャビティ内に配置する工程と、
雄金型面を提供する外面及び流体を収容するための内部部分を有するような雄金型部分及び雌金型部分を互いに合わせ、雌金型キャビティと雄金型面との間に形成された金型チャンバに繊維強化材料を配置する工程と、
雄金型部分の少なくとも内部部分を流体で充填し、流体によって流体柱圧力を雄金型部分の内面に加え、雄金型面の形態を金型チャンバ内に配置された強化材料とほぼ一致させる工程と、
樹脂供給手段によって金型チャンバに樹脂を供給することにより、金型チャンバ内に配置された強化材料を湿潤する工程とを備えている。
【0016】
本明細書中、「繊維強化材料」という用語は、予備切断した繊維材料で形成された乾燥状態の強化繊維束、及びこの材料でできた織製層、又はフォーム又は他のコア及び樹脂を予備含浸していない強化繊維布を組み込んだ積層体に関して使用される。
【0017】
内部部分内の流体は、雄金型部分の内部部分の内面に流体柱圧力を加える。雄金型部分が弾性変形可能な材料で形成されるため、雄金型部分に加わった流体柱圧力は、下にある雌金型キャビティ上に堆積した繊維強化材料の形状と雄金型面の形状を一致させるように作用する。更に、流体によって加えられた流体柱圧力は、金型チャンバに供給された樹脂によって及ぼされる流体柱圧力と相互作用する。詳細には、流体柱圧力は、金型チャンバ内の樹脂の柱圧力と自然に均衡し、その結果、加えられた圧力が均衡するものと考えられる。これには、樹脂を金型チャンバ内で均等に分配し、繊維強化材料を完全に湿潤するという効果がある。
【0018】
内部部分の充填に使用される流体の流体密度は、金型チャンバに供給される樹脂の流体密度と値が近いように選択されてもよい。袋内の液体と、雌金型キャビティと雄金型面との間の金型チャンバに引き込まれた樹脂との間の「均衡密度」効果により、樹脂を分配できる。均衡密度の原理は、本出願人の国際特許出願第PCT/AU02/00078号に記載してある。同特許を示すことにより、この特許に開示された内容は本明細書中に含まれるものとする。均衡密度の原理は、弾性変形可能な膜のいずれかの側に作用する流体圧力が均衡をうしなった場合に生じ、成形キャビティが所定の角度で傾斜している場合でも、樹脂を均等に分配できる。
【0019】
樹脂は、代表的には、内部部分の充填に代表的に使用される水よりも密度が高い。しかしながら、樹脂及び水の密度は、水を予熱することにより樹脂を加熱し、その密度を下げることによって調節してもよい。更に、この目的で樹脂を予熱してもよい。水よりも密度が高い流体を内部部分内で使用することもできる。別の態様では、グリコール等の比熱が高い流体を使用してもよい。雄金型部分の両側に均衡した圧力を作用するための別の態様は、雄金型部分の上方の流体の高さを大きくすることによって、雌金型部分の内面の流体柱圧力を上昇することである。
【0020】
雄金型部分が、好ましくは幾つかの箇所を強化した弾性変形可能な材料で形成されているため、雄金型面は、流体と樹脂との間の相互作用により形状が変形し、これによって樹脂を複合材料に押し込むとともに、レイアップを通って隅部及び他の「困難」領域に樹脂を分配するのを補助する。雄金型面に弾性変形可能な材料を使用するとともに密度及び/又は圧力を均衡させ、更に真空を使用することにより更に複雑な構造を形成できる。これには、バルクへッド及びストリンガーを持ち、船殻シェルと一体成形された任意の他のウェブを持つ船殻シェルの製造が含まれる。更に、従来のRTM法における流路の厳密な許容差による樹脂の分配の制限がないため、強化繊維材料を堆積する上で高い精度が要求されない。
【0021】
流体圧力と樹脂の圧力との相互作用だけで樹脂を分配できるけれども、金型チャンバ内を真空にすることによって、複合材料内への樹脂の注入を容易にしてもよい。この目的のため、本発明による方法は、金型チャンバを真空にしながら、金型チャンバに樹脂を供給する工程を含む。真空にすることは、複合材料内に捕捉された空気を除去するのを補助するとともに、樹脂を金型チャンバに引き込むことによって複合材料を樹脂で湿潤するのを補助する。
【0022】
流体圧力及び樹脂の圧力は、個々に変化させてもよいし、互いに対して所定の関係で変化させてもよい。例えば、樹脂の圧力は、最初、比較的大量の樹脂で金型チャンバを溢れさせる程高くてもよい。樹脂のこの容積は、弾性変形可能な金型部分が繊維複合材料から遠ざかる方向で外方に移動することによって吸収できる。次いで、流体圧力を上昇させ、弾性変形可能な金型部分が複合繊維材料に押し戻されるに従って、余分の樹脂を分配し且つ押し出す。これにより、繊維強化材料を更に迅速に湿潤させる。樹脂の圧力及び/又は流体圧力をパルス状にすることにより、樹脂の分配を容易にすることもまた考えられる。
【0023】
高粘度の樹脂の場合には、金型組合せ体及び金型チャンバを加熱してもよい。これにより繊維強化材料の湿潤を容易にする。これは、この樹脂を加熱することにより、金型チャンバに亘って分配されるときの樹脂の粘度が低下するためである。
【0024】
本方法は、更に、金型組合せ体の両側に均衡した流体圧力を加える工程を含む。これによって得られる一つの利点は、製造される複合材部品に亘る圧力が更に均等になり、完成した成形品に亘る材料特性が更に均等になるということである。この均衡した圧力を加えることができる製造システムを以下に説明する。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、複合材部品を製造するための製造システムにおいて、比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を持つ金型組合せ体と、流体の密度及び/又は圧力による流体圧力を弾性変形可能な金型部分に加えるための流体圧力手段と、金型部分を互いに合わせたときに金型部分間に形成される金型チャンバに樹脂を供給するための樹脂供給手段とを含む、製造システムが提供される。
【0026】
比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを持つ雌金型部分又は雄金型面を持つ雄金型部分のいずれによって提供されてもよい。弾性変形可能な金型部分は、前記雄金型部分又は前記雌金型部分のいずれかによって対応して提供されてもよい。
【0027】
樹脂供給手段は、金型チャンバと流体連通した少なくとも一つの樹脂供給ラインによって提供されてもよい。樹脂供給ラインは、雄金型面又は雌金型キャビティの開口部と連通していてもよいし、又は、雄金型部分及び雌金型部分の外周間に設けられた開口部に入っていてもよい。
【0028】
更に、金型チャンバから空気を排出するのに真空生成を使用する場合、少なくとも一つの真空ラインが金型チャンバと流体連通していてもよい。この目的のため、金型チャンバに対して少なくとも実質的に気密のシールを提供するため、雌金型部分と雄金型部分との間にシール手段が設けられていてもよい。真空ラインは、雄金型面又は雌金型キャビティの開口部と連通していてもよく、又は、雌金型部分及び雄金型部分の外周間に設けられた開口部に入っていてもよい。
【0029】
雄金型部分は、少なくとも大部分がゴム又は他の同様に弾性変形可能な材料で形成されていてもよい。好ましくは、雄金型部分は所定の材料から形成されていてもよく、及び/又は別の態様では、雄金型部分は、複合材部品を完全に硬化させたとき、複合材部品から容易に分離する雄金型面の表面を備えていてもよい。これにより、解放フィルム流れ膜やガス抜きフィルム等を金型チャンバ内に設ける必要をなくす。
【0030】
繊維複合材料と隣接した雄金型面の表面には、その表面に沿って延びる一連のチャンネルが設けられていてもよい。好ましくは、これらのチャンネルは、雄金型面の全面に亘ってメッシュパターンをなして延びていてもよい。これらのチャンネルは、空気の排出及び繊維複合材料に亘る樹脂の分配を容易にするため、樹脂及び空気が通過できる通路を提供する。雄金型面は、雄金型面の反対側に十分に高い流体圧力が加えられたときにチャンネルが平らになるように、十分な変形自在性を備えていてもよい。これにより繊維複合材料内に樹脂を容易に押し込む。
【0031】
本発明の別の特徴によれば、複合材部品を製造するための製造システムにおいて、
金型組合せ体を含み、該金型組合せ体は、
雌金型キャビティを有する比較的剛性の雌金型部分と、
雌金型キャビティの周囲を取り囲む、樹脂を内部に供給できるリングチャンバを含むリング部分及びリングチャンバに樹脂を供給するための樹脂供給手段を含む、周囲部分と、
弾性変形可能な材料で形成された、外側の雄金型面及び液体を収容するための内部部分を持つ雄金型部分と、
雄金型部分及び雌金型部分を互いに合わせたとき、雌金型キャビティと雄金型面との間に形成された金型チャンバと、
金型チャンバ内を真空にするための真空生成手段とを備えた、製造システムが提供される。
【0032】
リングチャンバは、雄金型部分を取り囲み且つ支持する比較的剛性の周囲リングフランジによって形成されてもよく、リングフランジは、雌金型キャビティを取り囲む周囲部分と係合する。リングチャンバに対して少なくとも実質的に気密のシールを提供するため、シール手段、例えば弾性シールリブがリングフランジとリング部分との間に設けられていてもよい。
【0033】
リングチャンバ内の樹脂のプールは、二つの目的で役立つ。先ず最初に、金型チャンバ内の強化材料を湿潤するための樹脂源を提供する。更に、金型チャンバを真空にすることができるようにする液体シールを成形キャビティの周囲に提供する。
【0034】
強化材料の少なくとも周囲部分は、リングチャンバの領域内に延びていてもよく、樹脂を毛管作用によって強化材料の残りに染み込ませることができる芯として作用する。
【0035】
一連の樹脂ラインが、チャンバに沿って分配された点で、樹脂をリングチャンバに供給してもよい。別の態様では、単一の樹脂供給ラインがリングチャンバと平行に延びていてもよく、供給ラインには、このラインに沿って間隔が隔てられた一連のブリードラインが設けられており、これらのブリードラインから樹脂をリングチャンバ内に排出できる。
【0036】
真空生成手段は、真空ポンプ及び少なくとも一つの真空ラインを含んでもよい。第1真空ラインが金型チャンバと連通していてもよい。第1真空ラインは、雄金型部分内に設けられた開口部に連結されていてもよく、これによって金型チャンバを真空にする。好ましくは、第2真空ラインがリングチャンバと連通状態に設けられており、これによってリングチャンバを真空にする。バルブが、第1及び第2の真空ラインの両方によって加えられた真空状態を制御する。バルブの第1位置では、両真空ラインが真空とされ、リングチャンバ内に溜まった樹脂に亘って圧力差がほとんど又は全くない。これは、リングチャンバから金型チャンバ内への樹脂の移送を制限する。第2位置では、第1真空ラインが遮断/閉鎖されており、リングチャンバ内の真空状態を停止し、次いで大気に対して開放し、第2真空ラインのみが真空状態となる。これにより、リングチャンバ内に保持された樹脂の前後の圧力差がいきなり上昇し、これによって樹脂の「波」を金型チャンバ内に圧送する。樹脂がリングチャンバからほとんど無くなったとき、第1真空ラインを再び開放することによってリングチャンバを再び真空にする。装置は、これによって、樹脂の定期的な波を金型チャンバに入れることができる。
【0037】
別の態様では、高圧ガスのパルスを加圧ガス供給源からリングチャンバに定期的に供給してもよい。この高圧パルスの効果は、リングチャンバ内の樹脂を、樹脂の「波」で金型チャンバに押し込むことによって金型チャンバ内に移送することである。この樹脂の波は、樹脂を複合材料内に更に迅速に且つ更に効率的に移送し注入することにより、複合材料を完全に湿潤するのを補助する。リングチャンバ内の樹脂の液面高さが、それ以上下がると樹脂シールが壊れてしまう低点(low point) に達したとき、及び樹脂をこれ以上供給する必要がない高点(high point)に達したときを決定するため、リングチャンバの低部分及び高部分に樹脂センサが夫々設けられている。樹脂が低点に達したとき、圧力差及び/又はリングチャンバへの高圧ガスの供給を停止し、次いで樹脂を更に送出でき、リングチャンバ内への供給を補充する。
【0038】
表面に取り付けられた機械式外部振動装置等の振動手段を使用し、金型組合せ体を振動し、複合材料を完全に湿潤させる。
【0039】
米国特許第6,149,844号には、均衡させた圧力を使用して複合材部品を製造するための装置が記載されている。この装置は、二つの向き合った圧力チャンバを有する。一方のチャンバは、浮動剛性金型を支持し、他方のチャンバは、弾性変形可能な金型面を有する。複合レイアップを金型に堆積してもよく、次いで真空バッグをレイアップ上に配置し、排気し、これによってレイアップを圧縮し、レイアップから空気の大部分を引き出す。次いで、圧力チャンバを互いに合わせて弾性変形可能な金型面を真空バッグ上に配置する。真空バッグの下には複合レイアップが配置されている。次いで、高圧高温の流体を各圧力チャンバを通して循環し、均衡した圧力及び均等な温度を複合レイアップに加える。これにより、RTMを含む従来の方法で得られるよりも材料の品質が高い複合材部品を製造する。均衡した圧力は、更に、本発明に従って使用できる。この目的のため、雌金型部分は、第1圧力チャンバを形成するため、第1ハウジングに浮動構成で支持されていてもよく、雄金型部分は、第2圧力チャンバを形成するため、第2ハウジングに支持されていてもよい。本発明による装置は、複合繊維材料を排気するのに別体の真空バッグを使用することを必要とせず、雄金型/スキン部分を複合繊維材料と直接接触させてもよい。流体循環手段は、製造プロセス中、各圧力チャンバを通して高圧の流体を循環させることができる。流体圧力は、両チャンバで実質的に等しくてもよく、これによって、均衡した圧力の追加の利点を提供する。
【0040】
高温硬化樹脂を使用する場合、又は樹脂の全体としての粘度及び従って流体の密度を下げるために樹脂を加熱する必要がある場合、各圧力チャンバを通して高温の流体を循環させることも考えられる。次いで、樹脂が硬化するとき、圧力チャンバを通して低温の手段を循環させ、成形品を冷却する。
【0041】
本発明は、船殻の製造に現在使用されているRTM製造法を越える特定の利点を有する。第1に、高価で重量のある金型ダイを製造する必要がない。確かに、雌金型部分は、大きな圧力又は重量を支持する必要がないため、比較的安価な材料で製造できる。雄金型部分の袋構造は、ゴム等の弾性変形可能な材料から簡単に形成できる。形態が比較的簡単であるとともに、雄金型部分の重量は剛性金型ダイの場合よりも遥かに小さい。
【0042】
更に、均衡した圧力及び真空状態は、樹脂を強化繊維材料内に均等に分配する遥かに効果的な手段である。この効率のため、金型チャンバの形状を更に複雑にでき、例えば船殻のバルクへッドを形成するための容積を含んでいてもよい。更に、連結ラグ等の別体の構成要素を最終的な複合材部品内に配置してもよく、一体に埋め込んでもよい。これにより、船殻を単一の一体のユニットとして形成でき、船殻に亘る材料特性が更に均等になり、潜在的に弱い領域がない。更に、船殻の様々な構成要素を同時に形成できるため、製造時間が大幅に短縮される。更に、特に高級な樹脂及び高品質の繊維材料を必要とする従来のRTM法と比較すると、本発明は様々な樹脂及び繊維材料を使用できる。
【0043】
次に、本発明の好ましい実施形態を例示する添付図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。この他の構成が可能であり、従って、添付図面は、以上の本発明の説明の一般性を損なうものであるとは理解されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の様々な好ましい実施形態の対応する特徴には、明瞭化を図る目的で全体に同じ参照番号が付してある。
【0045】
先ず最初に図1を参照すると、この図には、製造システム、即ち雌金型部分3及び雄金型部分5を含む金型組合せ体1の基本的形体が示してある。雌金型部分3は雌金型キャビティ7を備えており、比較的剛性の材料で形成されている。雌金型部分3は、金型支持装置4上の所定位置にしっかりと保持される。雄金型部分5は、ゴム等の弾性変形可能な材料で形成されており、雄金型部分5の雄金型面を提供する外面9を含む。雄金型部分5は、更に、製造プロセス中に液体13を収容するための内部部分11を含む。
【0046】
本発明の方法によれば、先ず最初に、繊維強化材料15を雌金型部分3上に置き、次いで、雄金型部分5の内部部分11を流体12で充填する。この流体12は、便利には水であるが、密度が高く且つ比熱が高いグリコール等の他の流体を使用することも考えられる。次いで、樹脂供給ライン19及び樹脂タンク21を含む樹脂供給手段17が、触媒を添加した及び/又は混合した液体樹脂を、供給ライン19を通して、雄金型面9の最も下の点に設けられた開口部25に供給する。雌金型面7と雄金型面9との間の狭幅の容積が形成する金型チャンバ8に樹脂23を供給する。樹脂23は、樹脂タンク21から金型チャンバ8に圧送されるか或いは、樹脂タンク21を内部部分11内の流体13の液面高さよりも上の所定の高さに保持し、樹脂23を金型チャンバ8に流入する。開口部25のところでの金型チャンバ8内の圧力は、雄金型部分5の最も下の点の上方の流体柱の高さの関数である。
【0047】
樹脂23は、開口部25を通って進入するとき、繊維材料15を通って分散する。これは、この点での圧力差のためであり、及び強化繊維材料15に対する樹脂の毛管吸引力により樹脂が繊維に沿って「毛管作用で滲み込む」ためである。樹脂23が金型チャンバ8に流入し続け、繊維束15の側部及び頂部に向かって拡がり、そして移動するに従って、雄金型部分5に作用する流体柱圧力は、流体の液面高さ13と隣接した最小値まで徐々に低下する。これにより、樹脂23が成形型内で上方に移動するに従って樹脂23の進行速度が低下するため、流体12の密度は、好ましくは樹脂23よりも高く、又は流体の液面高さ13は、最も高いところで、金型部分3、5よりも上方にあり、樹脂23を繊維束15を通して分散するのに十分な流体柱圧力が雄金型部分5に亘って加えられる。樹脂23又は流体12のいずれかを予熱することによって、樹脂23の粘度及び従って密度を低下することにより、長時間、例えば40Cに亘る部品の湿潤を更に容易にすると考えられる。選択された樹脂は、例えば60℃乃至80℃の高温でしか硬化しないように、触媒を添加し及び/又は混合してもよい。従って、部品を硬化させるためには、流体の温度を80℃まで急速に上昇し、これにより部品を硬化させる。
【0048】
供給された樹脂23は、これによって、繊維複合材料即ち繊維束15に亘って分配され且つ注入される。これは、内部部分11内に収容された流体12によって加えられた圧力が、金型チャンバ8内の触媒を添加した樹脂23による力と相互作用し且つ均衡しようとするためである。
【0049】
更に、雌金型部分3及び雄金型部分5を含む金型組合せ体1は、製造プロセス前に加熱してもよいし、製造プロセス中に加熱してもよい。これにより、粘度を低下させるのに加熱を必要とする高粘度の樹脂23を使用でき、これにより繊維強化材料15の湿潤が容易になる。
【0050】
雄金型部分5は、流体柱圧力を樹脂23に作用できるようにするため、並びに雄金型面の形態を雌金型キャビティ7内に支持された繊維束15と一致させるため、変形可能でなければならない。
【0051】
次に図2を参照すると、雄金型部分5が変形可能であり、内部部分11内に収容された流体12によって力が加えられることにより、更に複雑な形状の成形品を製造できる。図2は、直立部16を更に含むように堆積した繊維複合材料15を示す。これらの直立部分は、最終的には、完成した船殻の強化に必要な直立部分を提供し、これらの直立部分は、船殻の残りの部分と一体成形される。雄金型部分5は、これらの直立部分を船殻の残りと一体成形できるように賦形されていてもよい。樹脂23は、チャンネル18を通して上方に押圧される。チャンネル18は、その外面に加えられた流体柱圧力により、直立部分16の周囲と形態が一致する。
【0052】
複合材料15を通した樹脂の注入を容易にするため、成形チャンネル8内を真空にすることにより、空気を繊維強化材料15から排出するとともに、樹脂23を成形チャンネル8に引き込む。図3は、図1に示すのと同様であるが、真空生成手段27を更に含む製造システムを示す。雄金型部分5は、更に、雄金型部分5の変形可能な部分を取り囲み且つ支持する比較的剛性のリングフランジ29を含む。シール手段、例えば弾性シールリブ31が、リングフランジ29と、雌金型キャビティ7を取り囲む雄金型部分の周囲部分33との間に設けられる。これにより、成形チャンネル8内を真空にすることができる。真空生成手段は、真空ポンプ35と、成形チャンネル8と連通した真空ライン37とを含む。真空ライン37は、図3に、雄金型部分のリングフランジ29と雌金型部分3の周囲部分33との間に設けられた開口部(図示せず)を通して連通した状態で示してある。真空ライン37は、別の態様では、雄金型部分5又は雌金型部分3に設けられた、金型チャンバ8と流体連通した開口部に連結されていてもよいということは理解されよう。
【0053】
図4は、図3に示す実施形態と異なる本発明の別の例示の実施形態を示す。この実施形態では、雄金型部分5の最も下の部分に配置された開口部23に真空ライン37が連結してある。雌金型キャビティ7の周囲に形成された周囲肩部分33と雄金型部分5を支持する上壁36との間に形成された空間により、リングチャンバ39が形成される。上壁36は、流体の液面高さ13が金型部分3、5の上方のかなり高いところに置かれるように雌金型部分3の上方に延びている。これにより繊維束15に比較的高い流体柱圧力が加えられる。リングチャンバ39と連通した樹脂ライン19又は樹脂の容器は、リングチャンバ39内に所定容積の樹脂23を保持するように、樹脂23を樹脂タンク21からリングチャンバ39に供給する。樹脂23は、金型チャンバ8の周囲でリングシールとして作用し、これによって、金型チャンバ8を真空にすることができる。この真空状態により樹脂23を金型チャンバ8に引き込み、これによって繊維束15を湿潤させる。この際、リングチャンバ39内の樹脂23は、樹脂供給ライン19から補充される。更に、繊維束15の周囲の一部をリングチャンバ39に入れることにより、繊維束15は、樹脂23を繊維束15に送出するための芯として作用する。金型チャンバ8に加えられた流体柱圧力により、樹脂23は、繊維束15に亘って均等に分配される。
【0054】
図5及び図5Aは、樹脂23を通過させ、樹脂金型チャンバ8に供給できるリングチャンバ39を含むという点で即ち4に示す実施形態と同様の本発明の別の例示の実施形態を示す。しかしながらリングチャンバ39は、雄金型部分5のリングフランジ29と雌金型部分3の周囲部分33との間に形成された空間によって形成される。周囲部分33は、側壁33b及び上壁33aを含む。樹脂供給ライン19は、周囲部分の側壁33bから延びており、リングチャンバ39と連通している。更に、上下の樹脂センサ41a及び41bが側壁33b内に配置されている。本実施形態では、第1及び第2の真空ライン37a及び37bが、夫々、リングチャンバ39及び雄金型部分5に設けられた開口部25と連通している。製造プロセス中、樹脂23がリングチャンバ39の少なくとも大部分を充填する。シール31が雄金型部分5のリングフランジ29と周囲部分の上壁33aとの間に設けられており、これによって真空生成ライン37aでリングチャンバ39を適正に排気できる。シール31は、樹脂23による汚染をなくすため、常に樹脂23の液面高さの上方に配置される。第2真空ライン37bは、第1バルブ36aを通して各真空ライン37a、37bに連結された真空ポンプ35によって、金型チャンバ8を直接真空にすることができる。バルブ36aにより、真空ポンプ35を両真空ラインに同時に連結でき、又は一方の真空ラインにだけ連結できる。両真空ライン37a及び37bが真空ポンプ35に連結されている場合には、リングチャンバ39と金型チャンバ8との間の圧力差は最小である。従って、リングチャンバ39内に保持された樹脂23は、リングチャンバ内に保持され、このチャンバ内に溜まる。リングチャンバ39と連通した第1真空ライン37aは、第2真空ライン37bが真空ポンプ35に連結された状態で、大気に対して閉鎖でき且つ通気でき、これによって、リングチャンバ39内の真空状態を解放する。樹脂リングの前後の圧力差、即ちリングチャンバ39と金型チャンバ8との間の圧力差が、結果的に比較的いきなり上昇することにより、樹脂波46(図10参照)が発生し、この波がリングチャンバ39から金型チャンバ8を通って移動する。この樹脂波は、金型チャンバ8を通って移動するときに雄金型部分5に一時的膨出部を形成し、繊維束15内に入ってこれを濡らすとき、波46の前側の、樹脂23の前縁部である樹脂面を押すように作用する。この樹脂波は、繊維束15内への樹脂23の移動速度を高めるのを補助するように作用する。
【0055】
樹脂23を金型チャンバ8に押し込むのを補助するため、高圧ガスの定期的パルスをリングチャンバ39に加えることによって、リングチャンバ39から金型チャンバ8への樹脂23の移動を更に補助するのが有利である。圧力タンク40が第1真空ライン37aに第2バルブ36bを介して連結されている。第1バルブ36aは、先ず最初に、第2バルブ36bが圧力タンク40を真空ライン37aに連結する前に、真空ポンプ35からの真空ラインを遮断する。これにより、圧力タンク40からの高圧ガスを使用することによって、リングチャンバ39に圧力パルスを加えることができる。この高圧ガスのパルスは、リングチャンバ39内の樹脂23の液面高さが樹脂センサ41aの液面高さよりも下に低下するまで続けられる。その後、高圧ガスの供給を停止し、樹脂が第2樹脂センサ41bの高さに達するまで、リングチャンバを樹脂23で充填できるようにする。高圧ガスを使用することにより、更に、金型チャンバ8内への樹脂波46により樹脂23を移動するのを補助する。これにより、樹脂23の移動が更に容易になり、複合材料15を樹脂23によって完全に湿潤させる速度が上昇する。
【0056】
図6は、図5及び図5Aに示す実施形態の変形例を示す。この変形例では、真空生成手段27は、真空ライン37だけを通して雄金型部分5内の開口部25に連結されている。リングチャンバ39内の樹脂23は、金型チャンバ8に対してシールを提供するのに十分なレベルに維持され、これによって、その内部に真空状態を維持できる。
【0057】
図7は、図5及び図5Aに示す実施形態と同様の、本発明の更に別の実施形態を示す。相違点は、雌金型部分3がチャンバ内の流体によって支持されており、圧力チャンバ壁47に対し、弾性フランジ46を介して浮動関係でシールされているということである。これにより、雌金型部分3の下に第1圧力チャンバ51が形成される。更に、雄金型部分5は、第2外ハウジング49によって支持されており、これによって、雄金型部分5の上方に第2圧力チャンバ52を提供する。雄金型部分5を支持するリングフランジ29は、弾性フランジ46aを介して第2ハウジング49に連結されている。従って、雌金型部分3及び雄金型部分5は、両方とも、それらの外ハウジング47、49に対してシールされており且つ浮動関係で支持されている。第1圧力チャンバ51及び第2圧力チャンバ52の両方を通して高圧の液体を循環させることができる。これらの圧力チャンバ51、52の各々の内部の流体圧力は、雌金型部分3の周囲部分33及び雄金型部分5のリングフランジ29を互いに押圧することによって、シール手段31の開放を容易にするように作用する。逆の流体圧力は、雌金型部分3と雄金型部分5との間に配置された複合材料15全体に均衡した圧力を及ぼすように作用する。これは、繊維束15に亘って更に均等な圧力を及ぼすのを補助し、これにより繊維束15の空気の圧縮及び空気の除去を改善する。更に、高温硬化樹脂を使用した場合、圧力チャンバ51及び52を通して高温の流体を循環させることにより、必要な硬化温度を提供する。更に、高温により、粘度が比較的高い樹脂を使用できる。樹脂を加熱してその粘度を低下させることにより、繊維束15を通した樹脂の注入を容易にする。
【0058】
複合材料15への樹脂の注入は、金型組合せ体を振動させることによって容易にできる。従って、この目的のため、回転振動器53を金型組合せ体の一部に固定してもよい。振動器53は、例えば、雌金型部分3に取り付けてもよい。
【0059】
図8に示す実施形態もまた、圧力チャンバ51、52を使用する。図7の実施形態との主な相違点は、この実施形態では、樹脂ライン19が、雄金型部分5の最も下の部分に設けられた開口部25に樹脂を供給することである。単一の真空ライン37がリングチャンバ39に連結されている。この構成では、樹脂は、開口部25から金型チャンバ8を通ってリングチャンバ39に向かって移動する。リングチャンバ39に到達した余分の樹脂は、溢流ライン54を使用して溢流タンク55内に捕捉できる。
【0060】
図9A及び図9Bは、図8の実施形態を示し、圧力チャンバ装置を使用することによる利点を例示する。最終的に硬化させた複合材部品56から雄金型部分5を分離するのは困難である。これは、成形品と直接接触しているためである。それにも関わらず、図9A及び図9Bに示す引き剥がし手順で流体を圧力チャンバから圧送することによって、雄金型部分を成形品56から簡単に引き剥がすことができる。
【0061】
有利には、図10に示すように、樹脂波46を矢印で示す方向に移動することにより、樹脂面45を樹脂波46の前方で移動する。これらの樹脂波46の順序は、本発明に従って発生できる。
【0062】
図11は、図2に示す種類の直立部分16を更に詳細に示す。直立部分は、一層の強化クロス16bによって取り囲まれたフォーム16aの円錐体を含む。強化ロッド即ち強化材料16cが、直立部分の上縁部の上に強化体として設けられていてもよい。ロッド16cもまた、強化クロス16bによって包まれている。雄金型面9内のチャンネル18の形態は、直立部分16の周囲と一致する。これは、チャンネル18を取り囲む流体12の圧力のためである。チャンネル18及び直立材料16内に捕捉された空気は、気泡として上方に浮く傾向がある。これは、空気が、実際には、「水面下」で流体の液面高さ13の下にあるためである。従って、樹脂を垂直チャンネル18に引き込むのを補助するため、及びチャンネル18を通して空気を上方に逃がすため、別の真空ライン37cを設けてもよい。チャンネルを樹脂で充填した後、別の樹脂ライン19により、更に多くの樹脂をチャンネル18に及び繊維束15の残りに供給する。繊維複合材料15からの空気の排出及び繊維束15への樹脂を分配は、図12に示すように、雄金型部分5の外面9に一連のチャンネル6を設けることにより容易になる。これらのチャンネル6は、少なくとも外面9の大部分に亘ってメッシュパターンで設けられていてもよい。チャンネル6は、排出されるべき空気及び分配されるべき樹脂が通過できる通路を提供する。雄金型部分に作用する流体圧力を上昇すると、チャンネル6が平らになり、外面9全体が繊維複合材料15に当たる。繊維複合材料15及びチャンネル6内の余分の樹脂は、金型チャンバの外に余分の樹脂として押し出される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に従って複合材部品を製造するための製造システムの第1の好ましい実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図1の製造システムの概略側断面図である。
【図3】本発明による製造システムの第2の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図4】本発明による製造システムの第3の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図5】本発明による製造システムの第4の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図5A】図5の断面Aの詳細図である。
【図6】本発明による製造システムの第5の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図7】本発明による製造システムの第6の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図8】本発明による製造システムの第7の好ましい実施形態の概略断面図である。
【図9】図9A及び図9Bは、図8に示す本発明の実施形態の中の完成した成形品からの雄金型部分の分離を示す概略断面図である。
【図10】本発明による樹脂波を示す概略詳細図である。
【図11】本発明に従って形成した、強化した直立部分を示す概略詳細図である。
【図12】本発明による雄金型部分の一実施形態の概略詳細図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を有する金型組合せ体を使用して複合材部品を製造する方法において、
前記比較的剛性の金型部分と前記弾性変形可能な金型部分との間に形成された金型チャンバ内に繊維強化材料を配置し、前記比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を互いに合わせる工程と、
流体の密度及び/又は圧力により、流体圧力を少なくとも前記弾性変形可能な金型部分に加える工程と、
樹脂を前記金型チャンバに供給することにより、前記金型チャンバ内に配置された前記強化材料を湿潤する工程と、
を備えた、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを有する雌金型部分であり、前記弾性変形可能な金型部分は、雄金型面を有する雄金型部分であり、
繊維強化材料を前記雌金型キャビティ内に配置する工程と、
前記雄金型面を提供する外面及び流体を収容するための内部部分を有するような前記雄金型部分及び前記雌金型部分を互いに合わせ、前記雌金型キャビティと前記雄金型面との間に形成された金型チャンバに前記繊維強化材料を配置する工程と、
前記雄金型部分の少なくとも前記内部部分を流体で充填し、前記流体によって流体柱圧力を前記雄金型部分の内面に加え、前記雄金型面の形態を前記金型チャンバ内に配置された前記強化材料とほぼ一致させる工程と、
樹脂供給手段によって前記金型チャンバに樹脂を供給することにより、前記金型チャンバ内に配置された強化材料を湿潤する工程と、
を備えた、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記内部部分を充填するのに使用される前記流体の流体密度は、前記金型チャンバに供給される樹脂の流体密度に近い値となるように選択される、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記流体を予熱することにより、前記樹脂を加熱し、この樹脂の密度を低下させる工程を更に備えた、方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法において、
前記樹脂を予熱し、これによって前記樹脂の密度を低下する工程を更に備えた、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、
前記雄金型部分の上方の前記流体の高さを大きくすることによって、前記雄金型部分の内面の前記流体柱圧力を上昇させる工程を更に備えた、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記金型チャンバを真空状態にして、前記金型チャンバに樹脂を供給する工程を更に備えた、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記金型組合せ体の両側に、均衡した流体圧力を加える工程を更に備えた、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記樹脂を供給する圧力を変化させる工程を更に備えた、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の方法において、
流体圧力を更に変化させる工程を更に備えた、方法。
【請求項11】
複合材部品を製造するための製造システムにおいて、
比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を有する金型組合せ体と、
流体の密度及び/又は圧力により、流体圧力を前記弾性変形可能な金型部分に加えるための流体圧力手段と、
前記2つの金型部分を互いに合わせたときに前記これらの金型部分間に形成される金型チャンバに樹脂を供給するための樹脂供給手段と、
を備えた、製造システム。
【請求項12】
請求項11に記載の製造システムにおいて、
前記比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを有する雌金型部分であり、前記弾性変形可能な金型部分は、雄金型面を有する雄金型部分である、製造システム。
【請求項13】
請求項12に記載の製造システムにおいて、
前記樹脂供給手段は、前記金型チャンバと流体連通した少なくとも一つの樹脂供給ラインによって提供される、製造システム。
【請求項14】
請求項13に記載の製造システムにおいて、
前記樹脂供給ラインは、前記雄金型面又は前記雌金型キャビティの開口部と連通しているか、あるいは前記雄金型部分及び前記雌金型部分の外周の間に設けられた開口部に入る、製造システム。
【請求項15】
請求項12乃至14のうちいずれか1項に記載の製造システムにおいて、
前記金型チャンバと流体連通した少なくとも一つの真空ラインと、
前記金型チャンバに対して少なくとも実質的に気密のシールを提供するため、前記雌金型部分と前記雄金型部分との間に設けられたシール手段と、
を更に備えた、製造システム。
【請求項16】
請求項15に記載の製造システムにおいて、
前記真空ラインは、前記雄金型面又は前記雌金型キャビティの開口部と連通しているか、あるいは前記雌金型部分及び前記雄金型部分の外周の間に設けられた開口部に入る、製造システム。
【請求項17】
請求項12乃至16のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記雄金型部分は、少なくとも実質的にゴム又は他の弾性変形可能な材料で形成されている、製造システム。
【請求項18】
請求項12乃至17のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記雄金型部分は所定の材料から形成されているか、あるいは前記雄金型部分は、前記複合材部品を完全に硬化させたとき、当該複合材部品から容易に分離する雄金型面の表面を有する、製造システム。
【請求項19】
複合材部品を製造するための製造システムにおいて、
金型組合せ体を含み、該金型組合せ体は、
雌金型キャビティを有する比較的剛性の雌金型部分と、
前記雌金型キャビティの周囲を取り囲む、樹脂を内部に供給できるリングチャンバを含むリング部分及び前記リングチャンバに樹脂を供給するための樹脂供給手段を有する、周囲部分と、
弾性変形可能な材料で形成された、外側の雄金型面及び液体を収容するための内部部分を有する雄金型部分と、
前記雄金型部分及び前記雌金型部分を互いに合わせたとき、前記雌金型キャビティと前記雄金型面との間に形成された金型チャンバと、
前記金型チャンバ内を真空にするための真空生成手段と、
を備えた、製造システム。
【請求項20】
請求項19に記載の製造システムにおいて、
前記リングチャンバは、前記雄金型部分を取り囲み且つ支持する比較的剛性の周囲リングフランジによって形成され、前記リングフランジは、前記雌金型キャビティを取り囲む周囲部分と係合する、製造システム。
【請求項21】
請求項20に記載の製造システムにおいて、
前記リングチャンバに対して少なくとも実質的に気密のシールを提供するための、前記リングフランジと前記リング部分との間に設けられたシール手段、例えば弾性シールリブを更に備えた、製造システム。
【請求項22】
請求項19乃至21のうちいずれか1項に記載の製造システムにおいて、
一連の樹脂ラインが、前記チャンバに沿って分配された複数の箇所で、樹脂を前記リングチャンバに供給する、製造システム。
【請求項23】
請求項19乃至21のうちいずれか1項に記載の製造システムにおいて、
単一の樹脂供給ラインが前記リングチャンバと平行に延びており、前記供給ラインには、このラインに沿って間隔が隔てられた一連の流出ラインが設けられており、これらの流出ラインから樹脂を前記リングチャンバ内に排出できる、製造システム。
【請求項24】
請求項19乃至23のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記真空生成手段は、真空ポンプ及び少なくとも一つの真空ラインを含む、製造システム。
【請求項25】
請求項24に記載の製造システムにおいて、
前記真空ラインのうちの第1真空ラインが前記金型チャンバと連通しており、前記真空ラインのうちの第2真空ラインが前記リングチャンバと連通しており、前記第1及び第2の真空ラインの両方によって生成された真空状態を制御するバルブが設けられている、製造システム。
【請求項26】
請求項25に記載の製造システムにおいて、
高圧ガスのパルスを前記リングチャンバに定期的に供給するための加圧ガス供給手段を更に備えた、製造システム。
【請求項27】
請求項19乃至26のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
樹脂の液面高さが、樹脂を更に供給することを必要とする低点に達したとき、及び樹脂をこれ以上供給する必要がない高点に達したときの各々を決定するため、前記リングチャンバ内に設けられた上下の樹脂センサを更に備えた、製造システム。
【請求項28】
請求項19乃至27のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記金型組合せ体を振動させるための振動手段を更に備えた、製造システム。
【請求項29】
請求項19乃至28のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記雌金型部分は、第1圧力チャンバを形成するため、第1ハウジング上で浮動するよう支持されており、前記雄金型部分は、第2圧力チャンバを形成するため、第2ハウジング上に支持されている、製造システム。
【請求項30】
請求項29に記載の製造システムにおいて、
前記圧力チャンバの各々を通して高温の流体を循環させるための流体循環手段を更に備えた、製造システム。
【請求項31】
請求項30に記載の製造システムにおいて、
前記流体循環手段は、高温で又は少なくとも比較的低温で流体を循環させる、製造システム。
【請求項32】
請求項11乃至31のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記弾性変形可能な金型部分は外面を有し、一連のチャンネルが前記外面に設けられている、製造システム。
【請求項33】
請求項32に記載の製造システムにおいて、
前記チャンネルは、前記外面の少なくとも大部分に亘ってメッシュ状のパターンで設けられている、製造システム。
【請求項34】
請求項32又は33に記載の製造システムにおいて、
前記チャンネルは、前記弾性変形可能な金型部分に十分に高い流体が加えられたとき、平らになる、製造システム。
【請求項1】
比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を有する金型組合せ体を使用して複合材部品を製造する方法において、
前記比較的剛性の金型部分と前記弾性変形可能な金型部分との間に形成された金型チャンバ内に繊維強化材料を配置し、前記比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を互いに合わせる工程と、
流体の密度及び/又は圧力により、流体圧力を少なくとも前記弾性変形可能な金型部分に加える工程と、
樹脂を前記金型チャンバに供給することにより、前記金型チャンバ内に配置された前記強化材料を湿潤する工程と、
を備えた、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを有する雌金型部分であり、前記弾性変形可能な金型部分は、雄金型面を有する雄金型部分であり、
繊維強化材料を前記雌金型キャビティ内に配置する工程と、
前記雄金型面を提供する外面及び流体を収容するための内部部分を有するような前記雄金型部分及び前記雌金型部分を互いに合わせ、前記雌金型キャビティと前記雄金型面との間に形成された金型チャンバに前記繊維強化材料を配置する工程と、
前記雄金型部分の少なくとも前記内部部分を流体で充填し、前記流体によって流体柱圧力を前記雄金型部分の内面に加え、前記雄金型面の形態を前記金型チャンバ内に配置された前記強化材料とほぼ一致させる工程と、
樹脂供給手段によって前記金型チャンバに樹脂を供給することにより、前記金型チャンバ内に配置された強化材料を湿潤する工程と、
を備えた、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記内部部分を充填するのに使用される前記流体の流体密度は、前記金型チャンバに供給される樹脂の流体密度に近い値となるように選択される、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記流体を予熱することにより、前記樹脂を加熱し、この樹脂の密度を低下させる工程を更に備えた、方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法において、
前記樹脂を予熱し、これによって前記樹脂の密度を低下する工程を更に備えた、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、
前記雄金型部分の上方の前記流体の高さを大きくすることによって、前記雄金型部分の内面の前記流体柱圧力を上昇させる工程を更に備えた、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記金型チャンバを真空状態にして、前記金型チャンバに樹脂を供給する工程を更に備えた、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記金型組合せ体の両側に、均衡した流体圧力を加える工程を更に備えた、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の方法において、
前記樹脂を供給する圧力を変化させる工程を更に備えた、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の方法において、
流体圧力を更に変化させる工程を更に備えた、方法。
【請求項11】
複合材部品を製造するための製造システムにおいて、
比較的剛性の金型部分及び弾性変形可能な金型部分を有する金型組合せ体と、
流体の密度及び/又は圧力により、流体圧力を前記弾性変形可能な金型部分に加えるための流体圧力手段と、
前記2つの金型部分を互いに合わせたときに前記これらの金型部分間に形成される金型チャンバに樹脂を供給するための樹脂供給手段と、
を備えた、製造システム。
【請求項12】
請求項11に記載の製造システムにおいて、
前記比較的剛性の金型部分は、雌金型キャビティを有する雌金型部分であり、前記弾性変形可能な金型部分は、雄金型面を有する雄金型部分である、製造システム。
【請求項13】
請求項12に記載の製造システムにおいて、
前記樹脂供給手段は、前記金型チャンバと流体連通した少なくとも一つの樹脂供給ラインによって提供される、製造システム。
【請求項14】
請求項13に記載の製造システムにおいて、
前記樹脂供給ラインは、前記雄金型面又は前記雌金型キャビティの開口部と連通しているか、あるいは前記雄金型部分及び前記雌金型部分の外周の間に設けられた開口部に入る、製造システム。
【請求項15】
請求項12乃至14のうちいずれか1項に記載の製造システムにおいて、
前記金型チャンバと流体連通した少なくとも一つの真空ラインと、
前記金型チャンバに対して少なくとも実質的に気密のシールを提供するため、前記雌金型部分と前記雄金型部分との間に設けられたシール手段と、
を更に備えた、製造システム。
【請求項16】
請求項15に記載の製造システムにおいて、
前記真空ラインは、前記雄金型面又は前記雌金型キャビティの開口部と連通しているか、あるいは前記雌金型部分及び前記雄金型部分の外周の間に設けられた開口部に入る、製造システム。
【請求項17】
請求項12乃至16のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記雄金型部分は、少なくとも実質的にゴム又は他の弾性変形可能な材料で形成されている、製造システム。
【請求項18】
請求項12乃至17のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記雄金型部分は所定の材料から形成されているか、あるいは前記雄金型部分は、前記複合材部品を完全に硬化させたとき、当該複合材部品から容易に分離する雄金型面の表面を有する、製造システム。
【請求項19】
複合材部品を製造するための製造システムにおいて、
金型組合せ体を含み、該金型組合せ体は、
雌金型キャビティを有する比較的剛性の雌金型部分と、
前記雌金型キャビティの周囲を取り囲む、樹脂を内部に供給できるリングチャンバを含むリング部分及び前記リングチャンバに樹脂を供給するための樹脂供給手段を有する、周囲部分と、
弾性変形可能な材料で形成された、外側の雄金型面及び液体を収容するための内部部分を有する雄金型部分と、
前記雄金型部分及び前記雌金型部分を互いに合わせたとき、前記雌金型キャビティと前記雄金型面との間に形成された金型チャンバと、
前記金型チャンバ内を真空にするための真空生成手段と、
を備えた、製造システム。
【請求項20】
請求項19に記載の製造システムにおいて、
前記リングチャンバは、前記雄金型部分を取り囲み且つ支持する比較的剛性の周囲リングフランジによって形成され、前記リングフランジは、前記雌金型キャビティを取り囲む周囲部分と係合する、製造システム。
【請求項21】
請求項20に記載の製造システムにおいて、
前記リングチャンバに対して少なくとも実質的に気密のシールを提供するための、前記リングフランジと前記リング部分との間に設けられたシール手段、例えば弾性シールリブを更に備えた、製造システム。
【請求項22】
請求項19乃至21のうちいずれか1項に記載の製造システムにおいて、
一連の樹脂ラインが、前記チャンバに沿って分配された複数の箇所で、樹脂を前記リングチャンバに供給する、製造システム。
【請求項23】
請求項19乃至21のうちいずれか1項に記載の製造システムにおいて、
単一の樹脂供給ラインが前記リングチャンバと平行に延びており、前記供給ラインには、このラインに沿って間隔が隔てられた一連の流出ラインが設けられており、これらの流出ラインから樹脂を前記リングチャンバ内に排出できる、製造システム。
【請求項24】
請求項19乃至23のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記真空生成手段は、真空ポンプ及び少なくとも一つの真空ラインを含む、製造システム。
【請求項25】
請求項24に記載の製造システムにおいて、
前記真空ラインのうちの第1真空ラインが前記金型チャンバと連通しており、前記真空ラインのうちの第2真空ラインが前記リングチャンバと連通しており、前記第1及び第2の真空ラインの両方によって生成された真空状態を制御するバルブが設けられている、製造システム。
【請求項26】
請求項25に記載の製造システムにおいて、
高圧ガスのパルスを前記リングチャンバに定期的に供給するための加圧ガス供給手段を更に備えた、製造システム。
【請求項27】
請求項19乃至26のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
樹脂の液面高さが、樹脂を更に供給することを必要とする低点に達したとき、及び樹脂をこれ以上供給する必要がない高点に達したときの各々を決定するため、前記リングチャンバ内に設けられた上下の樹脂センサを更に備えた、製造システム。
【請求項28】
請求項19乃至27のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記金型組合せ体を振動させるための振動手段を更に備えた、製造システム。
【請求項29】
請求項19乃至28のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記雌金型部分は、第1圧力チャンバを形成するため、第1ハウジング上で浮動するよう支持されており、前記雄金型部分は、第2圧力チャンバを形成するため、第2ハウジング上に支持されている、製造システム。
【請求項30】
請求項29に記載の製造システムにおいて、
前記圧力チャンバの各々を通して高温の流体を循環させるための流体循環手段を更に備えた、製造システム。
【請求項31】
請求項30に記載の製造システムにおいて、
前記流体循環手段は、高温で又は少なくとも比較的低温で流体を循環させる、製造システム。
【請求項32】
請求項11乃至31のうちのいずれか一項に記載の製造システムにおいて、
前記弾性変形可能な金型部分は外面を有し、一連のチャンネルが前記外面に設けられている、製造システム。
【請求項33】
請求項32に記載の製造システムにおいて、
前記チャンネルは、前記外面の少なくとも大部分に亘ってメッシュ状のパターンで設けられている、製造システム。
【請求項34】
請求項32又は33に記載の製造システムにおいて、
前記チャンネルは、前記弾性変形可能な金型部分に十分に高い流体が加えられたとき、平らになる、製造システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−544886(P2008−544886A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519772(P2008−519772)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000945
【国際公開番号】WO2007/003011
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(502321032)クイックステップ、テクノロジーズ、プロプライエタリ、リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】QUICKSTEP TECHNOLOGIES PTY,LTD.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000945
【国際公開番号】WO2007/003011
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(502321032)クイックステップ、テクノロジーズ、プロプライエタリ、リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】QUICKSTEP TECHNOLOGIES PTY,LTD.
【Fターム(参考)】
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