説明

流体の被除去物除去方法、流体の被除去物除去装置、ウェハの製造方法及び半導体装置の製造方法

【課題】 フィルタの表面に形成される第2のフィルタ膜が目詰まりを起こす事等によるフィルタの濾過能力低下を阻止するために、気泡発生装置により第2のフィルタ膜をコントロールするが、その方法が困難である課題があった。
【解決手段】 本発明の流体の被除去物除去装置およびそれを用いた被除去物除去方法によれば、原水タンク1底部に散気管26、27、28を設置する。そして、散気管26、27、28の両端から同圧力で空気を送り込むことで、散気管26、27、28から発生する気泡を均一にする。そのことで、フィルタ4表面に形成される第2のフィルタ膜21を調整し、フィルタの濾過能力を常に、一定の最適値に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタに形成される第2のフィルタ膜をエアーブローしながら、被除去物を含む流体を濾過するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、産業廃棄物を減らす事は、エコロジーの観点から重要なテーマであり、企業課題である。この産業廃棄物の中には、色々な排水や汚水がある。
【0003】
以下、水や薬品等の流体中に被除去物である物質が含まれているものを排水と呼び説明する。これらの排水は、高価な濾過処理装置等で前記被除去物が取り除かれ、排水がきれいな流体となり再利用されたり、除去できずに残ったものを産業廃棄物として処理している。特に水は、きれいな状態にして川や海等の自然界に戻されたり、再利用される。
【0004】
この事からも判るように、排水処理の技術は、環境汚染の意味からも、またリサイクルの点からも重要な問題であり、低イニシャルコスト、低ランニングコストのシステムが早急に望まれている。
【0005】
一例として、半導体分野に於ける排水処理を以下に説明していく。一般に、金属、半導体、セラミック等の板状体を研削または研磨する際、設備の温度上昇防止、潤滑性向上、研削屑または切削屑の板状体への付着等が考慮され、水等の流体が供給されている。
【0006】
一方、「環境に優しい」をテーマに、前記半導体ウェハの研削屑または研磨屑が混入された排水は、濾過されてきれいな水にして自然界に戻されたり、あるいは再利用され、濃縮された排水は、回収されている。
【0007】
現状の半導体製造に於いて、Siを主体とする屑の混入された排水処理には、凝集沈殿法、フィルタ濾過と遠心分離機を組み合わせた方法の二通りがあり、各半導体メーカーで採用している。
【0008】
しかし上記二通りの方法は、どちらともモータの電気代やフィルタの交換費用等のランニングコストが非常に大きく、またイニシャルコストも非常に大きいという問題があった(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
上記の問題に鑑みて、本出願人は、イニシャルコストとランニングコストが非常に安いシステムを開発した。以下にその概要を示す。
【0010】
最初に、このシステムの機構を説明する。
【0011】
図5における符号1は、原水タンクである。このタンク1の上方には、原水供給手段としてパイプ2が設けられている。このパイプ2は、被除去物が混入した流体の通過する所である。例えば、半導体分野で説明すると、ダイシング装置、バックグラインド装置、ミラーポリッシング装置またはCMP装置から流れ出る被除去物が混入された排水(原水)が通過する所である。尚、この排水は、ダイシング装置から流れるシリコン屑が混入された排水として説明していく。
【0012】
原水タンク1に貯められた原水3の中には、フィルタ4が複数個設置される。このフィルタ4の下方には、例えばパイプに小さい孔を開けたような、バブリング装置の如き、気泡発生装置5が設けられ、ちょうど第1のフィルタ膜の表面を通過するように孔の位置が調整されている。6は、エアーブローである。
【0013】
フィルタ4に固定されたパイプ7は、フィルタ4で濾過された濾過流体が通過し、第1のバルブ9を介して原水タンク1側に向かうパイプ10と、再利用(または排水される)側に向かうパイプ11に選択輸送される。また原水タンク1の側壁および底面には、第2のパイプ12、第3のパイプ13、第4のパイプ14および第5のパイプ15が取り付けられている。
【0014】
パイプ2から供給された原水3は、原水タンク1に貯められ、フィルタ4により濾過される。このフィルタに取り付けられた第1のフィルタ膜20(図6参照)の表面は、気泡が通過し、気泡の上昇力や破裂により、第1のフィルタ膜20にトラップしたシリコン屑を動かし、常にその濾過能力が低下しないように維持されている。
【0015】
また第1のフィルタ膜20が新規に取り付けられたり、休日により長期間停止された後に濾過を再開したり、またはパイプ7にシリコン屑が混入されている場合は、バルブ9を使って、濾過流体がパイプ10を介して原水タンク1に循環する様に設計されている。それ以外は、バルブ9は、パイプ11に切り替えられており、濾過流体は再利用される。
【0016】
シリコン屑が所定の混入率よりも高かった場合、濾過流体は異常水と判断し、自動的に循環が開始されたり、またはポンプが止められ濾過が停止される。また循環する時は、排水がタンク1から溢れる事を考慮して、パイプ2からタンク1への流体供給が停止されても良い。
【0017】
またセンサ17は、シリコン屑を常時センシングしている。センサ17として、受光・発光素子の付いた光センサを用いて、濾過流体の透明度を検出することにより、濾過流体中のシリコン屑の量を検出できる。発光素子は、発光ダイオードやレーザが考えられる。またセンサ17は、パイプ7の途中あるいはパイプ10の途中に取り付けても良い。
【0018】
一方、原水タンク1は、時間とともに濃縮されてくる。そして所望の濃度になった場合、濾過作業を停止し、凝集沈殿させ、放置する。するとタンクの中の原水3は、だいたい層状に分かれる。つまり上層から下層に従い、やや透明な水からシリコン屑で全く非透明な液体に分布される。これらをパイプ12〜15を使い分けて回収する。
【0019】
以上述べたように、図5のシステムでは、原水タンク1、フィルタ4、小型ポンプ8で構成される。
【0020】
次に、このシステムで採用するフィルタ4の構造について説明する。
【0021】
図6(A)に示す符号19は、額縁の如き形状の枠であり、この枠19の両面には、第1のフィルタ膜20が貼り合わされ固定されている。そして枠19、第1のフィルタ膜20で囲まれた内側の空間18には、パイプ7を吸引する事により、第1のフィルタ膜20により濾過された濾過流体が発生する。そして枠19にシールされて取り付けられているパイプ7を介して濾過流体が取り出されている。もちろん第1のフィルタ膜20と枠19は、排水が第1のフィルタ膜20以外から前記空間に侵入しないように完全にシールされている。
【0022】
図6(A)の第1のフィルタ膜20は、薄い樹脂膜であるため、吸引されると内側に反り、破壊に至る場合もある。そのため、この空間18をできるだけ小さくし、濾過能力を大きくするために、この空間18を多数個形成する必要がある。これを示したものが、図6(B)である。図では、空間18が9個しか示されていないが、実際は数多く形成される。また実際に採用した第1のフィルタ膜20は、約0.1mm厚さのポリオレフィン系の高分子膜であり、図の如く、薄い第1のフィルタ膜20が袋状に形成されており、図6(B)では、FTで示した。この袋状のフィルタFTの中に、パイプ7が一体化された枠19が挿入され、枠19とフィルタFTが貼り合わされている。符号RGは、押さえ手段であり、第1のフィルタ膜20が貼り合わされた枠19を両側から押さえるものである。そして押さえ手段の開口部OPからは、第1のフィルタ膜20が露出している。
【0023】
このフィルタ4の動作を概念的に示したものが図7である。ここでは、パイプ7側をポンプ等で吸引すれば、ハッチング無しの矢印のように、水が流れ濾過されることになる。
【0024】
また第1の第1のフィルタ膜20、およびこの膜20で捕獲されたシリコン屑の層でシリコン屑が捕獲されることにより、縦置きにされた濾過装置に第2のフィルタ膜21が形成されることになる。この際、第2のフィルタ膜21は、シリコン屑が付着したものであるため、第2のフィルタ膜21に外力を加えることで、第2フィルタ21を取り除いたり、また第2のフィルタ膜21の表層を取り除いたりすることができる。またこの取り除きは、気泡の上昇力を使って表面をこする、あるいは攪拌機等で簡単に実現できる。そしてこの外力により第2のフィルタ膜21の濾過能力は、常時リフレッシュし、ほぼ一定の値を維持することになる。
【特許文献1】特開2001−038352号公報(第10−13頁、第1−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上記したように、従来における濾過装置の気泡発生装置5では、気泡発生装置5は塩化ビニールパイプ等の散気管であり、フィルタ4下部に位置する散気管には多数の穴が形成されていた。そして、気泡発生装置5はブロアー6に接続されており、気泡発生装置5にはブロアー6から空気が送り込まれた。その結果、気泡発生装置5の散気管の穴から発生する気泡によりフィルタ4表面に形成される第2のフィルタ膜21の調整を行っていた。
【0026】
しかし、気泡発生装置5の一端は密閉されており、また、気泡発生装置5の他端はブロアー6に設置されているため、常に、ブロアー6に接続している他端からのみ空気が送り込まれていた。そのため、気泡発生装置5において、ブロアー6に近い側では多量の気泡を得ることができたが、ブロアー6に遠い側では近い側と比べて十分な気泡が発生しなかった。その結果、フィルタ4表面に形成される第2のフィルタ膜21が、気泡発生装置5に対する位置により厚みや性質等が異なり、十分な濾過能力を得ることができないという問題があった。
【0027】
更に、上記したように、原水タンク1内には複数のフィルタ4が設置されているが、従来における気泡発生装置5では複数のフィルタ4に対して均一に気泡を発生させることができなかった。その結果、フィルタ4表面に形成される第2のフィルタ膜21が、気泡発生装置5に対する位置により厚みや性質等が異なり、十分な濾過能力を得ることができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、上記した従来の課題に鑑みてなされたもので、本発明の流体の被除去物除去方法では、被除去物を含む流体内に複数枚のフィルタを浸漬し、前記フィルタに前記流体を通過させることにより、前記被除去物を除去する流体の被除去物除去方法において、前記フィルタの間隔を狭めることにより、前記フィルタ下方から発生した気泡がその形状を変形しながら、前記フィルタ間を通過することを特徴とする。
【0029】
更に、本発明の流体の被除去物除去方法では、前記フィルタにより前記気泡が変形し、前記気泡の変形に対する抗力により、前記フィルタの表面に外力を加えることを特徴とする。
【0030】
更に、本発明の流体の被除去物除去装置では、被除去物を含む流体内に複数枚のフィルタを浸漬することにより、前記流体の濾過を行う流体の被除去物除去装置において、前記フィルタは実質的に所定の間隔bにて配置され、前記フィルタ間を通過する気泡が変形するように、前記間隔bが設定されていることを特徴とする。
【0031】
更に、本発明の流体の被除去物除去装置では、前記フィルタ下方に設けられた気泡発生装置は、前記フィルタ面と直交するように配置されていることを特徴とする。
【0032】
更に、本発明のウェハの製造方法では、インゴットをウェハ状に機械加工する時に発生した流体内に複数枚のフィルタを浸漬し、前記フィルタに前記流体を通過させることにより、前記機械加工により発生した被除去物を除去し、濾過された前記流体を再利用するウェハの製造方法において、前記フィルタの間隔を狭めることにより、前記フィルタ下方から発生した気泡がその形状を変形しながら、前記フィルタ間を通過することを特徴とする。
【0033】
更に、本発明の半導体装置の製造方法では、半導体ウェハを機械加工する時に発生した流体内に複数枚のフィルタを浸漬し、前記フィルタに前記流体を通過させることにより、前記機械加工により発生した被除去物を除去し、濾過された前記流体を再利用する半導体装置の製造方法において、前記フィルタの間隔を狭めることにより、前記フィルタ下方から発生した気泡がその形状を変形しながら、前記フィルタ間を通過することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
以上、説明したように本発明の流体の被除去物除去装置およびそれを用いた被除去物除去方法によれば、以下に示すような優れた効果を奏し得る。
【0035】
第1に、流体の被除去物除去装置において、原水タンク内に設置される複数のフィルタに対して散気管を直角方向に延在して形成させている。この位置関係にあることで、複数のフィルタに対して、少数の散気管で対処することができるので、濾過装置自体も簡素化した構造にできる。
【0036】
第2に、流体の被除去物除去装置において、原水タンク底部に設置された少数の散気管の両端を接続し、更に、それを1本の管に接続する。そして、その管をブロアーに接続することで、全ての散気管の両端から同圧力で空気を送り込むことができる。そのことにより、原水タンク内のフィルタに対して均一に気泡を発生させることができる。
【0037】
第3に、流体の被除去物除去方法において、原水タンク内に設置されたフィルタ間の距離を散気管から発生した気泡の直径よりも狭く設置する。そのことにより、散気管から発生した気泡はフィルタ間を通過する時、押し縮められる力に対する抵抗力が発生する。その結果、気泡がフィルタ間を通過する時、第2のフィルタ膜に確実に外力を与えることでフィルタの目詰まりを防止でき、フィルタの濾過能力を、常に、維持することが可能な流体の被除去物除去方法を実現できる。
【0038】
第4に、流体の被除去物除去方法において、上記したように、原水タンク内のフィルタに対して均一に気泡を発生させることができることで、フィルタの表面に形成された第2のフィルタ膜厚を均一の厚さにコントロールすることができる。そのことにより、フィルタの濾過能力を、常に、維持することが可能な流体の被除去物除去方法を実現できる。
【0039】
第5に、流体の被除去物除去方法において、濾過装置ON時における気泡量をその後の継続して行う時における気泡量よりも少なくして行うことができる。そのことにより、濾過装置のON時の第2のフィルタ膜を破壊することなく、かつ、早期に通常の第2のフィルタ膜の状態にすることができるので、フィルタの濾過能力を落とすことなく長期にわたり維持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1〜図4は本発明である気泡発生装置の実施例を説明するための図であり、図中、上記した従来の実施例と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、液体から被除去物を除去する機構は従来のものと同様である。そのため、従来例で説明した機構の説明はここでは割愛することとする。
【0041】
先ず、図3および図4を参照して、図7を用いて従来例でも簡単に説明した第1のフィルタ膜20、第2のフィルタ膜21について詳細に説明する。
【0042】
本発明は、金属、無機物または有機物等の被除去物が混入された流体(排水)を、被除去物から成るフィルタで除去するものであり、例えば、被除去物は、結晶インゴットをウェハ状にスライスする時、半導体ウェハをダイシングする時、バックグラインドする時、CMP(Chemical-Mechanical Polishing)またはウェハポリッシングする時等で発生する。
【0043】
この被除去物は、Si、酸化Si、Al、SiGe、封止樹脂等の有機物およびその他の絶縁材料や金属材料が該当する。また化合物半導体では、GaAs等の化合物半導体が該当する。
【0044】
また最近では、CSP(チップスケールパッケージ)の製造に於いてダイシングを採用している。これはウェハの表面に樹脂を被覆し、最後に封止された樹脂とウェハを一緒にダイシングするものである。またセラミック基板の上に半導体チップをマトリックス状に配置し、セラミック基板も含めて樹脂を被覆し、最後に封止された樹脂とセラミック基板をダイシングするものもある。これらもダイシングする際に被除去物が発生する。
【0045】
一方、半導体分野以外でも被除去物が発生する所は数多くある。例えばガラスを採用する産業に於いて、液晶パネル、EL表示装置のパネル等は、ガラス基板のダイシング、基板側面の研磨等で発生するガラス屑が被除去物に該当する。また電力会社や鉄鋼会社では燃料として石炭を採用しており、石炭から発生する粉体が該当し、更には煙突から出る煙の中に混入される粉体も被除去物に相当する。また鉱物の加工、宝石の加工、墓石の加工から発生する粉体もそうである。更には、旋盤等で加工した際に発生する金属屑、セラミック基板等のダイシング、研磨等で発生するセラミック屑等も被除去物に該当する。
【0046】
これらの被除去物は、研磨、研削または粉砕等の加工により発生し、被除去物を取り去る事を目的として水や薬品等の流体を流す。そのためこの流体の中に被除去物が混入されてしまう。
【0047】
そして、以下に、上記したように流体、被除去物は、色々なものがあるが、ここでは流体として水が採用され、水の中に切削された被除去物が含まれたものとして説明してゆく。
【0048】
図3の符号20は第1のフィルタ膜で、22はフィルタ孔である。またフィルタ孔22の露出部および第1のフィルタ膜20の表面に層状に形成されている膜が、被除去物23、24であり、この被除去物23、24はフィルタ孔22を通過できない大きな被除去物23とフィルタ孔22を通過できる小さな被除去物24に分けられる。図では黒丸で示したものが通過できる小さな被除去物24である。
【0049】
またここで採用可能な第1のフィルタ膜20は、原理的に考えて有機高分子系、セラミック系とどちらでも採用可能である。しかしここでは、ポリオレフィン系の高分子膜を採用した。
【0050】
図3の第1のフィルタ膜20の上方には、被除去物が混入された排水があり、第1のフィルタ膜20の下方は、第1のフィルタ膜20により濾過された濾過流体が生成されている。矢印の方向に排水を流し、第1のフィルタ膜20を使って前記排水を濾過するため、水は、自然落下されるか、加圧されて図の下方に移る。また、濾過流体が在る側から排水が吸引される。また第1のフィルタ膜20は、水平に配置されているが図7の様に縦置きでも良い。
【0051】
上記したようにフィルタ膜を介して排水を加圧したり、吸引したりする結果、排水は、第1のフィルタ膜20を通過する。その際、フィルタ孔22を通過できない大きな被除去物23は、第1のフィルタ膜20の表面に残存する。
【0052】
本発明では、被除去物が第1のフィルタ膜20表面に捕獲されて残存した層を第2のフィルタ膜21として活用する。
【0053】
研削、研磨または粉砕等の機械加工により発生する被除去物は、その大きさ(粒径)が有る程度の範囲で分布し、しかもそれぞれの被除去物の形状が異なっている。また第1のフィルタ膜20が浸かっている排水の中で被除去物がランダムに位置している。そして大きな被除去物から小さな被除去物までが不規則にフィルタ孔22に移動していく。この時フィルタ孔22よりも小さな被除去物24は通過するが、フィルタ孔22よりも大きな被除去物23は捕獲される。そして捕獲された大きな被除去物23が第2のフィルタ膜21の初段の層となり、この層がフィルタ孔22よりも小さなフィルタ孔を形成し、この小さなフィルタ孔を介して大きな被除去物23から小さな被除去物24が捕獲されていく。この時、被除去物の形状がそれぞれ異なるために、被除去物と被除去物の間には、色々な形状の隙間ができ、水はこの隙間を通路として移動し、最終的には濾過される。これは、砂浜の水はけが良いのと非常に似ている。
【0054】
この第2のフィルタ膜21は、大きな被除去物23から小さな被除去物24をランダムに捕獲しながら徐々に成長し、水(流体)の通路を確保しながら小さな被除去物24をトラップする様になる。しかも第2のフィルタ膜21は、層状に残存しているだけで被除去物は容易に移動可能なので、層の付近に気泡を通過させたり、水流を与えたり、音波や超音波を与えたり、機械的振動を与えたり、更にはスキージ等でこすったりする事で、簡単に第2のフィルタ膜21の表層を排水側に移動させることができる。つまり第2のフィルタ膜21のフィルタ能力が低下しても、第2のフィルタ膜21に外力を加えることで、簡単にその能力を復帰させることができるメリットを有する。また別の表現をすれば、フィルタ能力の低下の原因は、主に目詰まりであり、この目詰まりを発生させている第2のフィルタ膜21の表層の被除去物を再度流体中に移動させる事ができ、目詰まりを解消させることができる。
【0055】
しかし第1のフィルタ膜20が新規で取り付けられた場合、第1のフィルタ膜20の表面には被除去物23、24の層(第2のフィルタ膜21)が形成されていないので、また第1のフィルタ膜20に第2のフィルタ膜21の層が薄くしか形成されていない場合は、フィルタ孔22を介して小さな被除去物24が通過する。この時は、その濾過流体を再度排水が貯められている側に戻し、小さな被除去物24が第2のフィルタ膜21で捕獲されることを確認するまで待つ。そして確認した後は、通過した小さな被除去物24の如きサイズの小さな被除去物が次々と捕獲され、排水は所定の清浄度で濾過される。
【0056】
更に、本発明では、第2のフィルタ膜21が形成されていない場合、あるいは濾過流体に小さな被除去物24が残存する場合は、この濾過流体を排水側に戻す。この戻している最中に第1のフィルタ膜20の表面には、フィルタ孔22でトラップされた被除去物23、24が層状に膜として成長し、第1のフィルタ膜20表面の第2のフィルタ膜21は、色々なフィルタ孔径を作り出し、次々に小さい粒径から大きい粒径のものをトラップしてゆく。そして徐々に厚くなり、第1のフィルタ膜20で通過した小さな被除去物24やこの小さな被除去物24と同程度のサイズ、更にはこれよりも小さな被除去物をトラップし、濾過流体は殆ど被除去物が混入されていないきれいな状態となる。
【0057】
この状態を示すものが図4である。そして濾過流体に所望のサイズの被除去物が混入されないこと(また所定の混入の度合よりも小さくなったこと)を確認した後、この濾過流体を再利用すれば良い。更には、濾過流体を自然界に戻しても良い。
【0058】
また濾過流体に小さな被除去物24が残存している場合、この濾過流体を戻すのではなく、別のタンクに移し、この小さな被除去物24やこの被除去物24と同程度のサイズの被除去物が捕獲されるのを確認し、その後の濾過流体を再利用したり、自然界に戻したりしても良い。
【0059】
次に、本発明の流体の被除去物除去方法について、図1、図2および図7を参照にして説明する。
【0060】
上記したように、フィルタ能力の低下の原因は、主に目詰まりであり、この目詰まりを発生させている第2のフィルタ膜21の表層の被除去物を再度流体中に移動させる事で目詰まりを解消させることができる。
【0061】
図7では、第2のフィルタ膜21を取り除く方法として、気泡の上昇を活用した例を示した。斜線で示す矢印の方向に気泡が上昇し、この気泡の上昇力や気泡の破裂が直接被除去物に外力を与え、また気泡の上昇力や気泡の破裂により発生する水流が被除去物に外力を与える。そしてこの外力により第2のフィルタ膜21の濾過能力は、常時リフレッシュし、ほぼ一定の値を維持することになる。
【0062】
本発明の特徴としては、図1および図2に示した気泡発生装置を用いることで、常に、濾過能力を維持することにある。つまり第2のフィルタ膜21に目詰まりが発生してその濾過能力が低下しても、前記気泡のように、第2のフィルタ膜21を構成する被除去物を動かす外力を与えることで、第2のフィルタ膜21を構成する被除去物を排水側に動かすことができ、濾過能力を長期にわたり維持させることができる。
【0063】
その被除去物を動かす方法として、図1(A)に示したように、原水タンク1に設置された複数のフィルタ4下部には、等間隔に、例えば、3本の散気管26、27、28が設置されている。そして、3本の散気管26、27、28は両端で接続されており、更に、1本の管29に接続され、この管29がブロアー6に接続している。この3本の散気管26、27、28の低部には、多数のフィルタ4に均等に気泡を発生させることができるように穴31(図2(A)参照)が適当な間隔で形成されている。そのため、3本の散気管26、27、28には、常に、両端から一定の圧力で空気が送り込まれているため、原水タンク1内で任意の場所に位置する複数のフィルタ4に対して、均一に気泡を発生させることができる。そして、この気泡の均一性は、原水タンク1上から目視により確認することができるので、その都度調整が可能である。
【0064】
ここで、散気管26、27、28の下部に穴31は形成されているが、上述したように、原水3内には金属、無機物または有機物等の被除去物が混入されている。そのため、穴31を散気管26、27、28の低部に形成することで、被除去物が散気管26、27、28に堆積し散気管26、27、28の目詰まりを防ぐことができる。また、穴31の位置としては、散気管の底部に限定されず、被除去物が散気管内に堆積しない位置であれば良い。
【0065】
そして、3本の散気管26、27、28はフィルタ4に対して直角方向に延在して形成されている。この位置関係にあることで、複数のフィルタ4に対して、少数の散気管で対処することができるので、濾過装置自体も簡素化した構造にできる。また、原水タンク1の長側辺方向の両内壁にはフィルタ4を等間隔に設置するために、フィルタ押さえ25がフィルタの数に対応して形成されている。このフィルタ押さえ25により、フィルタ4の設置、取り外しも容易となり、後述するフィルタ4間の距離も正確に保てるようになる。更に、図1(B)に示したように、原水タンク1の内壁にはフィルタ4の深さ方向の位置も固定できるように点線30に示した位置に受け台30が形成されている。そのことで、フィルタ4はフィルタ4間および深さ方向においても、目的の位置に容易に設置することが可能となる。
【0066】
更に、本発明の被除去物を動かす方法の特徴として、図2(B)に示したように、原水タンク1内に複数設置されたフィルタ4間の距離よりも散気管27から発生した気泡の直径の方が大きいことである。
【0067】
具体的には、散気管27の穴31から発生した気泡32は原水3中で、例えば、直径aである球体を形成する。そして、気泡32は原水3表面へと浮上するが、その途中で、例えば、間隔bのフィルタ4間を通過する。このとき、本発明では、両者の関係はa>bとなるように設定されているため、気泡32は距離bのフィルタ4間を図示した33のように変形しながら通過する。そのことで、気泡33は第2のフィルタ膜21に対して確実に、そして、均一に外力を与えることができる。
【0068】
その結果、本発明の流体の被除去物除去方法では、目詰まりの原因である第2のフィルタ膜21を形成する被除去物を気泡32により発生する外力により捕獲を解除し、常に一定の濾過能力を維持させることができる。これは、外力を与えることで第2のフィルタ21の厚みをほぼ一定にしていると思われる。そして、あたかも被除去物1つ1つが原水3の入り口に栓をかけており、栓が外力により外れ、外れた所から原水3が浸入し、また栓が形成されたら再度外力により外すの繰り返しを行っているようなものである。上記したことは、気泡のサイズ、その量、気泡を当てている時間を調整することにより、常に濾過能力を維持できるメリットを有する。
【0069】
更に、本発明の被除去物を動かす方法の特徴として、濾過装置のON時における気泡量をその後の継続して行う時における気泡量よりも少なくして行うことである。
【0070】
具体的には、例えば、濾過装置をONしてから最初の3〜5分間は、フィルタ1枚当たりに1リットル/分の気泡を発生させ、その後は、通常通りに、例えば、フィルタ1枚当たりに2リットル/分の気泡を発生させる。この方法により、以下の効果を得ることができる。
【0071】
フィルタ4は濾過装置がOFF時にも原水3内に浸漬しているため、そのフィルタ4表面に形成された第2のフィルタ膜21も原水3内に浸漬している。そのため、第2のフィルタ膜21の膜組成は、濾過装置のON時と比較して原水3によりあきらかに緩く形成されている。この状態で、通常通りに、例えば、フィルタ1枚当たりに2リットル/分の気泡を発生させると第2のフィルタ膜21の表層の被除去物を再度流体中に移動させてしまう。その結果、第2のフィルタ膜21は完全に除去されたり、または、残存しても必要最低限の膜厚が得られなくなってしまい、フィルタ4の濾過能力は大幅に低減してしまう。そして、この状態で濾過を行うと、濾過流体中に多量の被除去物が混入してしまう。
【0072】
そこで、本発明の方法により濾過装置を作動させることで、濾過装置のON時の第2のフィルタ膜21を破壊することなく、かつ、早期に通常の第2のフィルタ膜21の状態にすることができるので、フィルタ4の濾過能力を落とすことなく長期にわたり維持させることができる。
【0073】
尚、濾過能力を維持できれば、外力が常に加わっていても良いし、間欠的に加わっても良い。また、上記した本発明の実施の形態では、散気管が3本の場合について説明したが、特に限定する必要はなく、作業目的に応じて考慮されることが望ましい。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の流体の被除去物除去装置を説明する(A)平面図、(B)(A)におけるX−X線方向の断面図である。
【図2】本発明の流体の被除去物除去方法を説明する(A)断面図、(B)断面図である。
【図3】本発明の第1および第2のフィルタ膜を説明する図である。
【図4】本発明の第1および第2のフィルタ膜を説明する図である。
【図5】本発明および従来の濾過装置を説明する図である。
【図6】本発明および従来のフィルタを説明する(A)斜視図、(B)斜視図である。
【図7】本発明および従来の第1および第2のフィルタ膜を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被除去物を含む流体内に複数枚のフィルタを浸漬し、前記フィルタに前記流体を通過させることにより、前記被除去物を除去する流体の被除去物除去方法において、
前記フィルタの間隔を狭めることにより、前記フィルタ下方から発生した気泡がその形状を変形しながら、前記フィルタ間を通過することを特徴とする流体の被除去物除去方法。
【請求項2】
前記フィルタにより前記気泡が変形し、前記気泡の変形に対する抗力により、前記フィルタの表面に外力を加えることを特徴とする請求項1に記載の流体の被除去物除去方法。
【請求項3】
被除去物を含む流体内に複数枚のフィルタを浸漬することにより、前記流体の濾過を行う流体の被除去物除去装置において、
前記フィルタは実質的に所定の間隔bにて配置され、前記フィルタ間を通過する気泡が変形するように、前記間隔bが設定されていることを特徴とする流体の被除去物除去装置。
【請求項4】
前記フィルタ下方に設けられた気泡発生装置は、前記フィルタ面と直交するように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の流体の被除去物除去装置。
【請求項5】
インゴットをウェハ状に機械加工する時に発生した流体内に複数枚のフィルタを浸漬し、前記フィルタに前記流体を通過させることにより、前記機械加工により発生した被除去物を除去し、濾過された前記流体を再利用するウェハの製造方法において、
前記フィルタの間隔を狭めることにより、前記フィルタ下方から発生した気泡がその形状を変形しながら、前記フィルタ間を通過することを特徴とするウェハの製造方法。
【請求項6】
半導体ウェハを機械加工する時に発生した流体内に複数枚のフィルタを浸漬し、前記フィルタに前記流体を通過させることにより、前記機械加工により発生した被除去物を除去し、濾過された前記流体を再利用する半導体装置の製造方法において、
前記フィルタの間隔を狭めることにより、前記フィルタ下方から発生した気泡がその形状を変形しながら、前記フィルタ間を通過することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−51501(P2006−51501A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245979(P2005−245979)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【分割の表示】特願2001−202678(P2001−202678)の分割
【原出願日】平成13年7月3日(2001.7.3)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】