説明

流体アクチュエータ

【課題】ロッドに対して作用する曲げ方向の力を大幅に低減し、ロッドの構造に制約が生じることを抑制し、寸法の長大化を抑制して設置スペースのコンパクト化を図る。
【解決手段】シリンダ11には、流体が供給及び排出される。本体部12は、固定側構造体101に対して固定され、シリンダ11が一体に設けられる。ピストン13は、シリンダ11内でシリンダ室(17a、17b)を区画するとともにシリンダ11の内壁に対して摺動する。ロッド14は、ピストン13に対して一体に設けられ、シリンダ11に対して伸張及び収縮するように変位する。リンク部材15は、シリンダ11の軸方向に対して平行に又はシリンダ11の軸方向と平行な方向に対して斜めに延びるように設置され、一端側が可動側構造体102に対して揺動可能に連結される。連結部材16は、ロッド14に固定されるとともに、リンク部材15の他端側が揺動可能に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が供給及び排出されることで作動し、固定側構造体に対して揺動可能に連結された可動側構造体を揺動させるように駆動する、流体アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
流体が供給及び排出されることで作動し、固定側構造体に対して揺動可能に連結された可動側構造体を揺動させるように駆動する流体アクチュエータとして、特許文献1においては、航空機の舵面を駆動するための流体アクチュエータが開示されている。特許文献1の図9に開示された流体アクチュエータは、シリンダ本体(12)、ピストン(13)、ピストン(13)が固定されたロッド(15)、リンク(19)を備えて構成されている。そして、リンク(19)は、一端側が、ロッド(15)に対して揺動自在に連結され、他端側が、可動側構造体としての舵面側の部材に対して揺動自在に連結されている。
【0003】
また、特許文献2の図1に開示された流体アクチュエータは、シリンダ本体(35)、ピストン(36)、基端がピストン(36)に一体形成された円筒状の外筒(38)、ロッド(39)を備えて構成されている。そして、ロッド(39)は、基端側が外筒(38)内に遊嵌されるとともに、基端がピストン(36)に固定されている。更に、このロッド(39)は、先端が可動側構造体としての舵面側の部材に対して揺動自在に連結されるとともに、撓み変形容易なように縦弾性係数が比較的小さな材料で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−65011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された流体アクチュエータは、固定側構造体に固定されたシリンダ本体に対してロッドが伸張及び収縮することで、ロッドに対してリンクを介して又は直接に連結された可動側構造体が駆動される。このため、シリンダ本体が固定側構造体に対して揺動することがないため、流体アクチュエータの設置スペースのコンパクト化が図られることになる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された流体アクチュエータにおいては、可動側構造体を駆動する際に生じる反力がロッドに作用することで、ロッドに対して軸力方向と垂直な曲げ方向の力も加わることになる。
【0007】
特許文献1の図9に開示された流体アクチュエータの場合、曲げ方向の力によってロッドがシリンダ本体の先端壁の貫通孔に対して押し付けられることになる。このため、上記の曲げ方向の力が大きくなると、焼き付き或いは固着等の虞が生じることになる。これに対して、ロッドと可動側構造体とを連結するリンクの長さを長くすることで、上記の曲げ方向の力を低減することができる。しかし、この場合、流体アクチュエータの寸法の長大化を招いてしまうことになり、設置スペースのコンパクト化が困難となる。
【0008】
一方、特許文献1の図1に開示された流体アクチュエータの場合は、ロッドが、外筒内に遊嵌され、撓み変形容易な材料で形成されている。このため、ロッドがシリンダ本体の先端壁の貫通孔に押し付けられてしまうことが防止される。しかし、外筒内に遊嵌されたロッドが撓むことで可動側構造体を駆動する構造のため、ロッドの構造に制約を生じ易くなり、更に、この制約に伴い、ロッドが撓むことによって揺動可能となる可動側構造体の揺動可能範囲にも制約を生じ易くなる。また、外筒からロッドが長く突出するように構成されることで、前述の曲げ方向の力によってロッドに生じる応力を小さくすることができ、ロッドの撓みによる可動側構造体の揺動可能範囲の制約を緩和することも考えられる。しかし、この場合、流体アクチュエータの寸法の長大化を招いてしまうことになる。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、ロッドに対して作用する曲げ方向の力を大幅に低減できるとともに、ロッドの構造に制約が生じてしまことを抑制でき、更に、寸法の長大化を抑制して設置スペースのコンパクト化を図ることができる、流体アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1発明に係る流体アクチュエータは、流体が供給及び排出されることで作動し、固定側構造体に対して揺動可能に連結された可動側構造体を揺動させるように駆動する、流体アクチュエータに関する。そして、第1発明に係る流体アクチュエータは、流体が供給及び排出されるシリンダと、前記固定側構造体に対して固定され、前記シリンダが一体に設けられ又は固定された本体部と、前記シリンダ内でシリンダ室を区画するとともに当該シリンダの内壁に対して摺動するピストンと、前記ピストンに対して一体に設けられ又は固定され、前記シリンダに対して伸張及び収縮するように変位するロッドと、前記シリンダの軸方向に対して平行に又は前記シリンダの軸方向と平行な方向に対して斜めに延びるように設置されて、一端側が前記可動側構造体に対して揺動可能に連結されるリンク部材と、前記ロッドに固定されるとともに、前記リンク部材の他端側が揺動可能に連結される連結部材と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、ロッドは、ピストンの移動とともにシリンダ軸方向と平行に変位して、シリンダに対して伸縮する。ロッドの伸縮動作に伴い、ロッドに固定された連結部材が変位し、これにより、リンク部材が揺動して可動側構造体が揺動駆動される。また、上記の構成によると、一端側が可動側構造体に揺動可能に連結されるリンク部材は、シリンダ軸方向に平行に又は斜めに設置され、他端側がロッドに固定された連結部材に揺動可能に連結される。このため、ロッドの伸縮動作に伴う駆動出力を、連結部材及びリンク部材を介して反転させるようにして、ロッドがシリンダから突出する側と反対側の可動側構造体に作用させることができる。よって、上記の構成によると、リンク部材がシリンダと並んで設置される構造のため、出力レベルを低下させることなく、流体アクチュエータの長大化を抑制でき、シリンダの周囲のスペースを効率よく活用してリンク部材の長さを十分に確保することができる。これにより、ロッドに対して作用する曲げ方向の力を大幅に低減することができる。そして、上記の構成によると、シリンダ出力側のロッドの動きとリンク部材の動きとが反転する構造のため、可動側構造体が固定側構造体に対して揺動する揺動中心とリンク部材が可動側構造体に対して揺動する揺動中心との間の距離を短く設定でき、流体アクチュエータの設置スペースを少なくすることができる。このため、例えば、流体アクチュエータが舵面を駆動するアクチュエータとして用いられる場合であれば、翼内での流体アクチュエータの設置スペースである搭載エンベロープを少なくでき、薄翼化に対応することができる。
【0012】
また、上記の構成によると、外筒内に遊嵌されたロッドが撓むことで可動側構造体を駆動する構造のような制約がない。このため、ロッドの構造に制約が生じてしまうことを抑制できる。また、上記の構成によると、シリンダに対して一体に設けられた又は固定された本体部が固定側構造体に固定されるため、シリンダが固定側構造体に対して揺動することもない。よって、上記の構成によると、シリンダが固定側構造体に対して揺動せず、更に、流体アクチュエータの長大化を抑制できることから、設置スペースのコンパクト化を図ることができる。
【0013】
従って、本発明によると、ロッドに対して作用する曲げ方向の力を大幅に低減できるとともに、ロッドの構造に制約が生じてしまことを抑制でき、更に、寸法の長大化を抑制して設置スペースのコンパクト化を図ることができる、流体アクチュエータを提供することができる。
【0014】
第2発明に係る流体アクチュエータは、第1発明の流体アクチュエータにおいて、平行に設置された前記ロッドが複数備えられ、前記リンク部材は、複数の前記ロッドが平行に並ぶ面に対して垂直な方向において、複数の前記ロッドの間の領域に重なる位置に設置されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、複数のロッドの間の領域と垂直な方向において重なる位置にリンク部材が設置されるため、ロッドの数よりも少ない数のリンク部材で安定して効率よく駆動出力を可動側構造体に伝達することができる。これにより、作動の更なる安定性が軽量な構造で効率よく確保されることになる。
【0016】
第3発明に係る流体アクチュエータは、第1発明又は第2発明の流体アクチュエータにおいて、平行に設置された前記ロッドが複数備えられ、前記連結部材は、複数の前記ロッドの端部を一体に結合するように複数の当該ロッドに対して固定されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によると、連結部材によって複数のロッドが一体に結合されているため、複数のロッド間においてロッドの位置のずれが生じて逆方向にリンク部材を付勢し合うフォースファイトが発生してしまうことが効率よく防止されることになる。これにより、更なる作動の安定性及び作動の同期化が効率よく達成されることになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ロッドに対して作用する曲げ方向の力を大幅に低減できるとともに、ロッドの構造に制約が生じてしまことを抑制でき、更に、寸法の長大化を抑制して設置スペースのコンパクト化を図ることができる、流体アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る流体アクチュエータが航空機の翼及び舵面に対して取り付けられた状態を示す模式図である。
【図2】図1に示す流体アクチュエータの斜視図である。
【図3】図2に示す流体アクチュエータの正面図である。
【図4】図2に示す流体アクチュエータの平面図である。
【図5】図2に示す流体アクチュエータの底面図である。
【図6】図2に示す流体アクチュエータの側面図である。
【図7】図2に示す流体アクチュエータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、航空機の動翼を駆動するために用いられる流体アクチュエータとして構成された形態を例にとって説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態で例示した形態に限らず、流体が供給及び排出されることで作動し、固定側構造体に対して揺動可能に連結された可動側構造体を揺動させるように駆動する流体アクチュエータに関して広く適用することができるものである。例えば、航空機、ヘリコプター、或いは、飛しょう体において用いられる流体アクチュエータに対して、本発明を適用することができる。また、航空機及びヘリコプターに関しては、有人機及び無人機のいずれで用いられる流体アクチュエータに対しても本発明を適用することができる。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係る流体アクチュエータ1が航空機の翼101及び舵面102に対して取り付けられた状態を示す模式図である。図1に示す流体アクチュエータ1は、図1にて翼101及び舵面102のみを二点鎖線で図示して主要部の図示を省略した航空機に設置される。そして、流体アクチュエータ1は、航空機の舵面102を駆動するために用いられる。
【0022】
本実施形態においては、翼101として構成された固定側構造体と、翼101に対して支点軸103を介して揺動可能に連結された舵面102として構成された可動側構造体と、舵面102を揺動させるように駆動する流体アクチュエータ1と、が例示されている。また、舵面102を構成する航空機の動翼(操縦翼面)として、補助翼(エルロン)、方向舵(ラダー)、昇降舵(エレベータ)などが挙げられる。また、流体アクチュエータ1は、フラップやスポイラー等として構成される動翼を駆動する機構として用いられてもよい。
【0023】
尚、近年においては、燃費向上のための機体の効率向上を目的として翼の薄型化を図る薄翼化の対応が望まれている。そして、薄翼化の対応に伴って、翼に設置される流体アクチュエータの出力レベルを低下させることなく、その流体アクチュエータの設置スペースである搭載エンベロープのコンパクト化が図られることが望まれている。これに対し、流体アクチュエータ1によると、後述するように、出力レベルを低下させることなく、寸法の長大化を抑制して設置スペースのコンパクト化を図ることができる。このため、薄翼化された翼101に対して揺動可能に連結された舵面102を駆動する機構として、流体アクチュエータ1が好適となる。
【0024】
以下、図1〜図7を参照しつつ、流体アクチュエータ1について詳しく説明する。図2は、流体アクチュエータ1の斜視図である。図3は、流体アクチュエータ1の正面図である。図4は、流体アクチュエータ1の平面図である。図5は、流体アクチュエータ1の底面図である。図6は、流体アクチュエータ1の左側面図である。図7は、流体アクチュエータ1の右側面図である。
【0025】
図1〜図7に示す流体アクチュエータ1は、シリンダ11(11a、11b)、本体部12、ピストン13、ロッド14(14a、14b)、リンク部材15、連結部材16、等を備えて構成されている。尚、図1では、ロッド14aの一部、ピストン13、シリンダ11aが、断面で図示されている。
【0026】
シリンダ11は、複数備えられ、本実施形態では、シリンダ軸方向が互いに平行に設置される2つのシリンダ11a及びシリンダ11bが備えられている。各シリンダ(11a、11b)は、流体が供給及び排出される円筒状の構造部として設けられている。尚、各シリンダ(11a、11b)の両端側には、ロッド14が貫通する端部壁がそれぞれ設けられている。そして、各シリンダ(11a、11b)の内部には、図示しない航空機の機体側に設置された流体供給装置から圧力流体が供給される。尚、圧力流体としては、圧油、圧油以外の圧力液体、圧縮空気、等が挙げられ、本実施形態では、圧力流体として圧油が供給される。
【0027】
本体部12は、固定側構造体である翼101に対して固定され、複数のシリンダ(11a、11b)が一体に設けられた構造部として構成されている。そして、本体部12は、架橋部12a、支点軸取付部12b、固定部12c、等を備えて構成されている。
【0028】
架橋部12aは、平行に設置されるシリンダ11aとシリンダ11bとを架橋するように一体に結合する部分として設けられている。また、固定部12cは、架橋部12aに一体に設けられ、翼101に対して、例えば、締結部材を介して固定される部分として設けられている。この固定部12cは、例えば、シリンダ11a及びシリンダ11bが並ぶ面に対して垂直な方向に向かって架橋部12aから突出する部分として設けられている。
【0029】
また、支点軸取付部12bは、架橋部12aに一体に設けられるとともに、架橋部12aからシリンダ(11a、11b)の軸方向と平行な方向に沿って舵面102側に向かって突出する部分として設けられている。尚、本実施形態では、支点軸取付部12bは、先端側において、シリンダ(11a、11b)の軸方向に対して僅かに傾斜するように屈曲して延びるように設けられている。
【0030】
この支点軸取付部12bは、架橋部12aから突出する先端側において、可動側構造体である舵面102を翼101側に対して揺動自在に支持する支点軸103に対して取り付けられている。尚、支点軸取付部12bは、例えば、軸受或いは円筒状の摺動用部材としてのブッシュを介して支点軸103に対して回転自在に取り付けられている。また、舵面102には、支点軸103に対して回転自在に連結される支点側連結部102aが設けられている(図1を参照)。そして、支点軸取付部12bにおいて支点軸103に対して回転自在に取り付けられる端部は、二股状に形成されており、この二股状の端部の間において、舵面102の支点側連結部102aが支点軸103に対して連結される。
【0031】
ピストン13は、複数備えられ、各シリンダ(11a、11b)のそれぞれの内部に設置されている。そして、各ピストン13は、各シリンダ(11a、11b)内で一対のシリンダ室(17a、17b)を区画している。また、各ピストン13は、各シリンダ(11a、11b)において、各シリンダ(11a、11b)の内壁に対して摺動自在に設置されている。
【0032】
尚、航空機の流体供給装置から供給された圧力流体は、一対のシリンダ室(17a、17b)の一方に供給され、その供給タイミングと同時タイミングで、一対のシリンダ室(17a、17b)の他方から流体が排出される。これにより、各シリンダ(11a、11b)に対して各ピストン13が変位する。また、一対のシリンダ室(17a、17b)の他方から排出された流体は、航空機の機体側に設置されたリザーバ回路へと戻され、上記の流体供給装置で昇圧され、循環して用いられる。シリンダ室(17a、17b)に対する流体の供給経路及び排出経路は、図示しない制御弁によって切り替えられる。
【0033】
ロッド14は、複数備えられ、各ピストン13に対してそれぞれ一体に設けられた2つのロッド14a及びロッド14bが備えられている。これらの複数のロッド(14a、14b)は、平行に設置されている。そして、各ロッド(14a、14b)は、各ピストン13とともに変位し、各シリンダ(11a、11b)に対して伸張及び収縮するように変位する。尚、ロッド14aはシリンダ11aに対して伸縮するように設置され、ロッド14bはシリンダ11bに対して伸縮するように設置される。また、各シリンダ(11a、11b)と同軸線上で延びるように設置された各ロッド(14a、14b)は、支点軸取付部12bと反対側に向かって、各シリンダ(11a、11b)の端部壁から外部に突出するように設置されている。
【0034】
リンク部材15は、本実施形態では1つ備えられており、シリンダ(11a、11b)の軸方向に対して平行に又は少し斜めに延びるように設置される部材として設けられている。そして、リンク部材15は、揺動軸取付部15a、拡幅部15b、軸部15c、連結軸取付部15dを備えて構成されている。揺動軸取付部15a、拡幅部15b、軸部15c、連結軸取付部15dは、一体に設けられており、この順番で、リンク部材15の一端側から他端側にかけて直列に並んで設けられている。
【0035】
揺動軸取付部15aは、リンク部材15の一端側の端部として設けられ、舵面102に対して揺動軸104を介して揺動自在に取り付けられる端部として構成されている。即ち、リンク部材15は、一端側の揺動軸取付部15aにおいて、舵面102に対して揺動可能に連結されている。尚、揺動軸取付部15aは、例えば、軸受或いは円筒状の摺動用部材としてのブッシュを介して揺動軸104に対して回転自在に取り付けられている。
【0036】
また、本実施形態においては、揺動軸取付部15aは、リンク部材15において、揺動軸104が貫通する3つに分岐した端部として構成されている。一方、舵面102には、揺動軸104に対して回転自在に連結される二股状の揺動側連結部102bが設けられている(図1を参照)。そして、揺動軸取付部15aを構成する上記の3つの端部の間において、二股状の揺動側連結部102bのそれぞれが揺動軸104に対して連結される。上記のように複数に分岐した箇所で揺動軸104に連結される構造のため、リンク部材15が舵面102をより安定して揺動駆動できることになる。
【0037】
軸部15cは、リンク部材15の長手方向に沿って直線状に延びる軸状又は柱状の構造部分として設けられている。この軸部15cにおける長手方向に垂直な断面の形状は、例えば、H型鋼と同様の断面形状に形成される。即ち、軸部15cは、一対で平行に設けられてそれぞれ断面が略長方形に形成された幅狭の平板状の部分が、それらの幅方向の中央でそれらに略垂直に設けられた厚肉の板状の部分で結合された形状として、構成されている。このような断面形状に形成されていることで、軸部26は、断面二次モーメントを効率よく確保し、重量増大を抑制しつつ高い剛性を確保できるように構成されている。尚、軸部15cの形状は、上記の通りでなくてもよい。例えば、軸部15cの形状が、円柱状、円筒状、角柱状、角筒状、等の種々の形状であってもよい。
【0038】
拡幅部15は、複数に分岐して設けられた揺動軸取付部15aと軸部15cとを一体に繋ぐ部分として設けられている。そして、拡幅部15bは、リンク部材15の長手方向に垂直な幅方向に広がって形成されている。尚、拡幅部15bにおいて軸部15cに連続する部分は、揺動軸取付部15a側から軸部15c側にかけて徐々に幅が狭まるように形成され、応力集中が抑制されるように構成されている。
【0039】
連結軸取付部15dは、リンク部材15の他端側の端部として設けられ、リンク部材15と後述の連結部材16とを回転自在に連結する連結軸18に対して揺動自在に取り付けられる端部として構成されている。尚、連結軸取付部15dは、例えば、軸受け或いは円筒状の摺動用部材としてのブッシュを介して連結軸18に対して回転自在に取り付けられている。
【0040】
また、リンク部材15は、複数のロッド(14a、14b)が平行に並ぶ面に対して垂直な方向において、複数のロッド(14a、14b)の間の領域に重なる位置に設置されている。
【0041】
連結部材16は、本実施形態では1つ備えられており、ロッド14に固定されるとともに、リンク部材15の他端側の端部である連結軸取付部15dが揺動可能に連結される部材として設けられている。この連結部材16は、複数のロッド(14a、14b)において舵面102側と反対側に向かってシリンダ11から突出する各端部を一体に結合するように複数のロッド(14a、14b)に対して固定されている。
【0042】
そして、連結部材16は、ロッド結合部16a及びリンク連結部16bを備えて構成されている。ロッド結合部16aは、シリンダ(11a、11b)が並ぶ方向と平行な方向に沿って延びるとともに、ロッド14aの舵面102側と反対側の端部と、ロッド14bの舵面102側と反対側の端部と、を結合する部分として設けられている。
【0043】
リンク連結部16bは、ロッド結合部16aにおいて複数のロッド(14a、14b)を結合するように延びる方向における中央部分から突出する二股状の部分として設けられている。そして、リンク連結部16bは、ロッド結合部16aから突出する先端側において、リンク部材15側に向かって屈曲するように延び、連結軸取付部15dに対して連結軸18を介して回転自在に連結されている。尚、連結軸取付部15dは、二股状のリンク連結部16bの間において、連結軸18に対して取り付けられている。
【0044】
次に、流体アクチュエータ1の作動について説明する。流体アクチュエータ1による舵面102の駆動が行われる際には、図示しないコントローラからの指令に基づいて流体供給装置が作動し、流体アクチュエータ1の各シリンダ(11a、11b)に対して圧力流体の供給及び排出が行われる。この圧力流体の給排に伴って、各ロッド(14a、14b)が各シリンダ(11a、11b)に対して伸張及び収縮する変位を行うことになる。
【0045】
上記により、ロッド(14a、14b)がシリンダ(11a、11b)に対して伸縮して変位する動作を行うことで、ロッド(14a、14b)に結合された連結部材16もロッド(14a、14b)とともに変位することになる。そして、連結部材16が変位することで、連結部材16とともにリンク部材15も変位する。
【0046】
また、前述のように、リンク部材15は、一端側が揺動軸104に対して、他端側が連結軸18に対して、それぞれ回転自在に連結されている。このため、連結部材16とともにリンク部材15が変位する際、リンク部材15は、揺動しながら変位することになる。これにより、リンク部材15は、連結部材16とともに変位しながら連結部材16に対して連結軸18を中心として揺動し、揺動軸104を支点軸103を中心として揺動させて舵面102を揺動駆動する。即ち、舵面102が、流体アクチュエータ1によって、支点軸103を中心として揺動して駆動されることになる。尚、図1では、揺動軸104の中心が支点軸103の中心に対して揺動する範囲が一点鎖線の両端矢印で図示されており、揺動軸104の支点軸103に対する揺動角度も一点鎖線で図示されている。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によると、ロッド14は、ピストン13の移動とともにシリンダ軸方向と平行に変位して、シリンダ11に対して伸縮する。ロッド14の伸縮動作に伴い、ロッド14に固定された連結部材16が変位し、これにより、リンク部材15が揺動して舵面102が揺動駆動される。また、本実施形態によると、一端側が舵面102に揺動可能に連結されるリンク部材15は、シリンダ軸方向に平行に又は斜めに設置され、他端側がロッド14に固定された連結部材16に揺動可能に連結される。このため、ロッド14の伸縮動作に伴う駆動出力を、連結部材16及びリンク部材15を介して反転させるようにして、ロッド14がシリンダ11から突出する側と反対側の舵面102に作用させることができる。よって、本実施形態によると、リンク部材15がシリンダ11と並んで設置される構造のため、出力レベルを低下させることなく、流体アクチュエータ1の長大化を抑制でき、シリンダ11の周囲のスペースを効率よく活用してリンク部材15の長さを十分に確保することができる。これにより、ロッド14に対して作用する曲げ方向の力を大幅に低減することができる。そして、本実施形態によると、シリンダ出力側のロッド14の動きとリンク部材15の動きとが反転する構造のため、支点軸103及び揺動軸104の中心間距離を短く設定でき、流体アクチュエータ1の設置スペースである搭載エンベロープを少なくすることができる。これにより、翼101の薄翼化に対応することができる。
【0048】
また、本実施形態によると、特許文献1の図1に開示された流体アクチュエータのような構造の制約、即ち、外筒内に遊嵌されたロッドが撓むことで可動側構造体を駆動する構造のような制約がない。このため、ロッド14の構造に制約が生じてしまうことを抑制できる。また、本実施形態によると、シリンダ11に対して一体に設けられた本体部12が翼101に固定されるため、シリンダ11が翼101に対して揺動することもない。よって、本実施形態によると、シリンダ11が固定側構造体である翼101に対して揺動せず、更に、流体アクチュエータ1の長大化を抑制できることから、設置スペースのコンパクト化を図ることができる。
【0049】
従って、本実施形態によると、ロッド14に対して作用する曲げ方向の力を大幅に低減できるとともに、ロッド14の構造に制約が生じてしまことを抑制でき、更に、寸法の長大化を抑制して設置スペースのコンパクト化を図ることができる、流体アクチュエータ1を提供することができる。
【0050】
また、本実施形態によると、複数のロッド14(14a、14b)の間の領域と垂直な方向において重なる位置にリンク部材15が設置されるため、ロッド14の数よりも少ない数のリンク部材15で安定して効率よく駆動出力を舵面102に伝達することができる。これにより、作動の更なる安定性が軽量な構造で効率よく確保されることになる。
【0051】
また、本実施形態によると、連結部材16によって複数のロッド14(14a、14b)が一体に結合されているため、複数のロッド14間においてロッド14の位置のずれが生じて逆方向にリンク部材15を付勢し合うフォースファイトが発生してしまうことが効率よく防止されることになる。これにより、更なる作動の安定性及び作動の同期化が効率よく達成されることになる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0053】
(1)前述の実施形態では、航空機の動翼を駆動するために用いられる流体アクチュエータとして構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。本発明は、固定側構造体に対して揺動可能に連結された可動側構造体を揺動させるように駆動する流体アクチュエータとして広く適用することができるものである。例えば、航空機、ヘリコプター、或いは、飛しょう体において用いられ、固定側構造体に対して可動側構造体を揺動させるように駆動する流体アクチュエータに対して、本発明を適用することができる。この場合、航空機及びヘリコプターに関しては、有人機及び無人機のいずれに対しても本発明を適用することができる。
【0054】
(2)前述の実施形態では、シリンダ及びロッドが2つ設けられ、連結部材及びリンク部材が1つ設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくもよい。シリンダ、ロッド、連結部材、リンク部材の数が変更された形態が実施されてもよい。
【0055】
(3)前述の実施形態では、本体部がシリンダに対して一体に設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくもよい。本体部がシリンダに対して固定された形態が実施されてもよい。また、前述の実施形態では、ロッドがピストンに対して一体に設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ロッドがピストンに対して固定された形態が実施されてもよい。
【0056】
(4)シリンダ、ロッド、連結部材、リンク部材の形状については、前述した実施形態で例示した形態に限らず、種々変更して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、流体が供給及び排出されることで作動し、固定側構造体に対して揺動可能に連結された可動側構造体を揺動させるように駆動する流体アクチュエータに関して広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 流体アクチュエータ
11、11a、11b シリンダ
12 本体部
13 ピストン
14、14a、14b ロッド
15 リンク部材
16 連結部材
17a、17b シリンダ室
101 翼(固定側構造体)
102 舵面(可動側構造体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が供給及び排出されることで作動し、固定側構造体に対して揺動可能に連結された可動側構造体を揺動させるように駆動する、流体アクチュエータであって、
流体が供給及び排出されるシリンダと、
前記固定側構造体に対して固定され、前記シリンダが一体に設けられ又は固定された本体部と、
前記シリンダ内でシリンダ室を区画するとともに当該シリンダの内壁に対して摺動するピストンと、
前記ピストンに対して一体に設けられ又は固定され、前記シリンダに対して伸張及び収縮するように変位するロッドと、
前記シリンダの軸方向に対して平行に又は前記シリンダの軸方向と平行な方向に対して斜めに延びるように設置されて、一端側が前記可動側構造体に対して揺動可能に連結されるリンク部材と、
前記ロッドに固定されるとともに、前記リンク部材の他端側が揺動可能に連結される連結部材と、
を備えていることを特徴とする、流体アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の流体アクチュエータであって、
平行に設置された前記ロッドが複数備えられ、
前記リンク部材は、複数の前記ロッドが平行に並ぶ面に対して垂直な方向において、複数の前記ロッドの間の領域に重なる位置に設置されていることを特徴とする、流体アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の流体アクチュエータであって、
平行に設置された前記ロッドが複数備えられ、
前記連結部材は、複数の前記ロッドの端部を一体に結合するように複数の当該ロッドに対して固定されていることを特徴とする、流体アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43460(P2013−43460A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180308(P2011−180308)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】