説明

流体サンプルを処理、制御及び/又は検出するための低減された死容積を有する流体サンプル輸送装置

本発明は、流体サンプル3を処理、制御又は検出するための、低減された死容積を有する流体サンプル輸送装置1に関し、当該装置は、その上面に少なくとも1つの処理、制御及び/又は検出素子19を有する基板2、前記基板の上面に配置される少なくとも1つのフレキシブル薄膜4、前記フレキシブル薄膜の上下運動を作動して流体フローを引き起こし及び/又は流体フローを停止させる少なくとも1つのプランジャ5及び/又は駆動素子9、フレキシブル薄膜の上部外側面又は下部外側面に配置される少なくとも1つのカバープレート6を有し、カバープレートはプランジャ及び/又は駆動素子を受け入れるための少なくとも1つの貫通孔10及び/又は切り取り部10を有し、プランジャ及び/又は駆動素子の運動が隣接配置されるフレキシブル薄膜領域のポンプ及び/又はバルブ作用を引き起こして基板上面とフレキシブル薄膜との間の流体フローを引き起こし、基板上の流体サンプルフローを導くための少なくとも1つのチャネルがフレキシブル薄膜により時間的に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体サンプルを処理、制御及び/又は検出するための低減された死容積を有する流体サンプル輸送装置に関する。本発明は、特に低減された死容積を有する分子診断アプリケーションに関する。本発明の低減された死容積を有する流体サンプル輸送装置は、分子診断において好ましくは用いられる。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジ分野は、しばしばlabs-on-a-chip(LOC)又は微小全分析システム(microTAS)と呼ばれる微小流体装置のような、サンプル操作及び分析のための小型化された流体サンプル輸送装置を開発することにかなりの努力を向けた。これらのシステムは、特定のバイオ分子(例えばDNA及びタンパク質)の検出及び分析のために用いられる。
【0003】
一般に微小システム装置は、ポンプ、バルブ、ミキサー、加熱器、並びに光センサ、磁気センサ及び/又は電気センサのようなセンサから成る、流体工学機能、電気的機能及び機械的機能を含む。典型的な分子診断検査法は、細胞溶菌、洗浄、PCRによる増幅及び/又は検出のようなプロセスステップを含む。
【0004】
集積化微小流体装置は、フィルタリング、混合、流体駆動、バルブ、加熱、冷却、及び光学的、電気的又は磁気的検出のような多くの機能を、1つのテンプレート上に組み合わせることを必要とする。モジュール式のコンセプトに従って、異なる機能は、(シリコン又はガラスのような)別々の機能基板上に実現されることができる。これらの機能は、一般的にプラスチックでできている微小流体チャネルシステムと共に組み立てられることを必要とする。小さいチャネル形状寸法によって、この集積化の態様は、非常に難しいプロセスになる。機能基板が費用対効果のために最小限のフットプリントを持たなければならない一方で、基板とチャネルプレートとの間の界面は非常に滑らかで精密であることを必要とし、チャネル形状寸法は再現可能なことを必要とする。特に電気的インタフェースと同様に流体インタフェースを必要とする機能に関して、濡れたインタフェースの分離は重大である。結合技術は、生化学試薬及び機能基板上に存在する表面処理と相性がよくなければならない。
【0005】
参照として組み込まれるUS-A1 2003/0057391は、微細加工流体システムにおいてポンプ及びバルブ動作を実行するための革命的なアプローチを医療診断マイクロチップのようなアプリケーションに提供する低電力集積化ポンプ及びバルブアレイを開示する。このアプローチは、微小シリンジに類似した微小チャネル内に封入されるポリマー、セラミック又は金属プラグに、低電力の高圧力源を集積化する。圧力源が作動すると、ポリマープラグは微小チャネル内でスライドし、プラグ周辺で流体が漏れることを許すことなく、プラグの反対側の流体をポンピングする。プラグは、微小バルブとして機能することもできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、US-A1 2003/0057391のポンプシステムは、十分に小さな死容積を提供せず、最適化された高速流体輸送を提供しない。さらに、プラグはサンプル流体の漏れを回避するために正の嵌合を持たなければならず、したがって、低電力集積化ポンプ及びバルブアレイは製造の低い垂直範囲で提供されることができない。
【0007】
ここ10年間において、より多くの機能を集積化するために相当な研究努力が微小流体システム装置の開発に対してなされたが、同時に、液体の分析サンプルボリュームを減少させた。
【0008】
この努力にもかかわらず、前述の従来技術の少なくとも1つの欠点を克服するために、微小流体システム装置、(しばしばBio Flipと呼ばれる)微小流体バイオチップ、LOC及びmicroTASのような流体サンプル輸送装置の必要性が依然として存在する。さらに、試薬及びサンプルのより経済的な使用を提供することと同様に小さい液体ボリュームのサンプルを分析することを可能にするオンチップ流体マニホールドのための革新的な低電力/圧力源を含む1つのマイクロチップ上への周辺機能の全体の集積化につながる技術を開発する必要性が存在する。特に、最小限に最適化された減少した死容積を有する流体サンプル輸送装置の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による(微小流体装置とも呼ばれる)流体サンプル輸送装置は、分子診断アプリケーションのための多くの機能の集積化を可能にする。本発明による流体サンプル輸送装置は、液体の小さいボリュームのサンプルを分析することができ、試薬及びサンプルのより経済的な使用を提供し、場合によっては分析を劇的に高速化する。
【0010】
さらに、本発明による分子診断アプリケーションのための流体サンプル輸送装置は、流体サンプルの横方向の流れを可能にする。これは、アッセイの流体サンプルの取り扱い、処理及び/若しくは分析のためのセンサ及び他の装置の垂直方向の集積化を可能にする。本発明による分子診断アプリケーションのための流体サンプル輸送装置に多数の機能を集積化するために、少なくとも1つの基板に全ての又は少なくともほとんどのこれらの機能を集積化することが提案される。
【0011】
さらに、本発明による流体サンプル輸送装置は、最小限に(好ましくはほぼゼロに)低減された最適化された死容積を伴う流体サンプル輸送を提供する。
【0012】
本発明によれば、流体サンプルの処理、制御及び/又は検出のための低減された死容積を有する流体サンプル輸送装置が提供され、当該装置は、
上面が少なくとも1つの処理、制御及び/若しくは検出素子を含む基板、
前記基板の前記上面に配置される少なくとも1つのフレキシブル薄膜、
前記フレキシブル薄膜の上への及び/若しくは下への運動を駆動して、流体フローを引き起こし及び/若しくは流体フローを停止させる、少なくとも1つのプランジャ及び/若しくは駆動素子、
前記フレキシブル薄膜の上部外側面若しくは下部外側面に配置される少なくとも1つのカバープレートを有し、カバープレートは、プランジャ及び/又は駆動素子を受け入れるための少なくとも1つの貫通孔及び/又は切り取り部を有し、前記プランジャ及び/又は駆動素子の運動が、隣接して配置されたフレキシブル薄膜領域のポンプ及び/又はバルブ作用を引き起こして前記基板の上面と前記フレキシブル薄膜の下面との間の流体フローを引き起こし、基板上の流体サンプルフローを導くための少なくとも1つのチャネルが、前記フレキシブル薄膜によって時間的に形成される。
【0013】
本発明による流体サンプル輸送装置は、好ましくは微小流体装置であることができる。本発明による流体サンプル輸送装置は、例えば分子診断アプリケーションにおいて、Lab-on-chip(LOC)として、又はMicro Total Analyses System(micro TAS)として用いられることができる。
【0014】
ここで使用しているように、用語「検出手段」又は「検出素子」は、公知技術の分析的検出技術を用いてサンプル処理区画内の流体サンプルに問い合わせることを可能にする任意の手段、構造又は配置を指す。したがって、検出手段は、サンプル処理区画に通じている1つ以上の開口、長手開口又は溝を含むことができ、流体サンプル輸送装置中を通過する(検体とも呼ばれる)流体サンプルを検出するために、外部検出機器又は装置がサンプル処理区画とインタフェースすることを可能にする。
【0015】
用語「流体サンプル」は、時間的に形成されるチャネルシステムを通してポンピングされることができる任意の化合物又は組成物を指すために用いられる。「流体サンプル」は、好ましくは液体である。
【0016】
本発明において用いられる用語「チャネル」又は「チャネルシステム」は管路を意味し、流体フローはその中を、例えば基板上に位置する所望のキャビティ、凹部及び/又は領域まで導かれることができる。
【0017】
チャネル又はチャネルシステムは、基板上に位置する少なくとも1つのキャビティ、凹部及び/又は領域と接続されることができ、そこで流体は、例えば処理され、収集され、制御され及び/又は検出されることができる。
【0018】
時間的チャネルは、フレキシブル薄膜を広げることによって又は引き伸ばすことによって形成され、フレキシブル薄膜は例えば基板上にトンネルのような湾曲を形成し、それを通して流体サンプルが流れることができる。
【0019】
用語「時間的(に)」は、チャネルに関して、チャネルが恒久的に形成されるわけではないことを意味する。これは、時間的に形成された薄膜チャネルが、基板に接触する平面的な又は平坦な薄膜デザインのような、非チャネルデザインに戻ることができることを意味する。
【0020】
一般に、薄膜は完全に基板と接触する。時間的薄膜チャネルが形成される場合には、時間的チャネルを形成する薄膜の部分は基板の表面と接触しない。
【0021】
カバープレートに関する用語「貫通孔」及び「貫通切り取り部」は、貫通孔及び貫通切り取り部が、カバープレートの上面からカバープレートの下面まで(一方の側から他方の側へ)延在することを意味する。
【0022】
したがって、基板が基板上に位置する少なくとも1つのキャビティ、凹部及び/又は領域を持ち、そこで流体サンプルが処理され、収集され、制御され及び/又は検出されることができることが好ましい。
【0023】
薄膜に面するカバープレートの下面が、平坦な及び/又は滑らかな面であることが好ましい。カバープレートの下面のこの形状は、時間的に形成可能なチャネルシステムに関する死容積を最小限に低減する。
【0024】
薄膜に面するカバープレートの下面は、少なくとも1つの貫通孔及び/又は少なくとも1つの貫通切り取り部を除いて、キャビティ及び/又は凹部を持たないことが好ましい。
【0025】
また、カバープレートが貫通孔及び/又は貫通切り取り部を有するこの領域を除いて、カバープレートの下面が、カバープレートに面する薄膜の上面と完全に接触することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を詳述する前に、本発明は、説明される装置の特定の構成部分又は説明される方法のプロセスステップには、そのような装置及び方法は変化することができるので、制限されないことが理解されるべきである。本願明細書において用いられる用語は、単に特定の実施の形態を説明することを目的とするのであって、制限的であることは意図されないことも理解されるべきである。明細書及び請求の範囲において用いられる単数形の用語は、文脈において別途明確に述べられない限り、単一の及び/又は複数のその語の対象物を含むことを留意しなければならない。したがって、例えば、「流体」を参照する場合には混合物を含み、「加熱装置」と参照する場合には2つ又はさらに多くのそのような装置を含み、「時間的に形成されるチャネル」と参照する場合には、少なくとも1つ以上のそのような時間的に形成されるチャネルを含むなどである。
【0027】
本発明は、微細加工流体システム中のフレキシブル薄膜によってポンプ及びバルブ動作を実行する新たなアプローチを医療診断マイクロチップのようなアプリケーションに提供し、フレキシブル薄膜は、その中に流体サンプルが押し込まれることができる時間的チャネルを形成する。カートリッジとも呼ばれる流体サンプル輸送装置のフレキシブル薄膜の使用によって、流体輸送のためのポンプとして又は調節バルブとして、効果的に利用されることができる。フレキシブル薄膜は可変の動作機能を持ち、時間的に形成されるチャネルを形成するために用いられることができ、バルブ機能又はポンピング機能を持つことができる。したがって、チップスケールの集積化サンプル調製システムが、本発明を利用して生み出されることができる。
【0028】
流体サンプル輸送装置は、その上で複数の同じ又は異なる流体サンプル処理、検出及び/又は制御ステップが、独立して、同時に及び/又は引き続いて実行されることができるように、設計されることができる。
【0029】
流体サンプル輸送装置が、薄膜によっておおわれる基板を含む使い捨てのカートリッジを有することが好ましい。
【0030】
処理、制御及び/又は検出素子が基板に配置されることが好ましい。基板はベース基板から構築されることができ、ベース基板の上面は、薄膜層とも呼ばれる少なくとも1つの薄い箔によっておおわれる。基板上に及び/又は薄い膜上に、少なくとも1つの試薬、回路、チップなどが集積化されることができる。ベース基板は、2枚、3枚、4枚又はそれ以上の複数の薄い箔によっておおわれることが好ましい。
【0031】
さらに、流体サンプル輸送装置は、少なくとも1つの時間的に形成されるチャネル又は時間的に形成されるチャネルシステムを有することができ、時間的チャネルはフレキシブル薄膜によって形成される。時間的に形成されるチャネルの部分は、基板の表面に接触する平面的な薄膜に退化することができる。
【0032】
流体サンプルを受け入れて及び/又は輸送するためのフレキシブル薄膜で形成される時間的チャネルのボリュームは、0.1 mm3〜2000 mm3, 好ましくは0.5 mm3〜1000 mm3、さらに好ましくは1 mm3〜50 mm3のボリュームを持つことができる。
【0033】
時間的に形成されたチャネルの(基板の上面から測定される)最大高さは、5ミクロン〜500ミクロン、好ましくは10ミクロン〜250ミクロン、さらに好ましくは20ミクロン〜100ミクロン、より好ましくは30ミクロン〜50ミクロンの範囲であることができる。
【0034】
時間的に形成されるチャネルの最大幅は、0.1ミクロン〜10000ミクロン、好ましくは5ミクロン〜2000ミクロン、さらに好ましくは50ミクロン〜500ミクロン、より好ましくは100ミクロン〜200ミクロンの範囲であることができる。
【0035】
本発明の好ましい実施の形態によれば、そのような基板は、その中を流体サンプルフローが押し込まれることができる恒久的なチャネル又は恒久的なチャネルアレイを持たない。
【0036】
しかしながら、時間的に形成される薄膜チャネルのほかに、基板がさらに、当該基板上に配置される少なくとも1つの恒久的なチャネルを提供することがなお好ましい。
【0037】
基板は、流体サンプルがそこで処理(例えば加熱、冷却、制御、反応、測定及び/又は分析)されることができる少なくとも1つの領域、凹部及び/又はキャビティを有することができる。
【0038】
基板が、流体サンプル及び/又は試薬を受け入れるための少なくとも1つのキャビティを持つことが好ましい。キャビティは、流体サンプル輸送装置の基板の上面又は下面に配置されることができる。
【0039】
時間的に形成されるチャネル又は時間的に形成されるチャネルシステムが領域及び/又はキャビティを接続することが好ましい。領域及び/又はキャビティは、少なくとも1つの流体サンプルを処理、制御及び/又は検出するための少なくとも1つの素子を有することができる。
【0040】
基板材料は、ガラス、セラミック、シリコン、金属及び/又はポリマーから成るグループから選択されることができる。
【0041】
基板の上に、フレキシブル薄膜が配置される。フレキシブル薄膜のサイズは、フレキシブル薄膜が完全に又は部分的に基板の上面をおおうように選択されることができる。また、フレキシブル薄膜が基板を包むことが好ましい。少なくともポンプ若しくはバルブ作用が望まれる全ての領域で、及び/又は、流体サンプルが検出、制御及び/若しくは処理されるキャビティ若しくは領域に流体サンプルを導くために時間的チャネルが形成されることを必要とする全ての領域で、フレキシブル薄膜が流体サンプル輸送装置を覆うことが最も好ましい。フレキシブル薄膜が、処理、制御及び/又は検出領域を同様に覆うことがさらに好ましい。しかしながら、フレキシブル薄膜が完全に基板の上面を覆うか又は包むことが最も好ましい。
【0042】
前記フレキシブル薄膜の上下運動は、前記時間的に形成されたチャネル中に位置する流体が基板上で輸送又は停止されるように、ポンプ作用又はバルブ作用を引き起こす。フレキシブル薄膜の上に向かう運動は吸引機能を引き起こすことができ、フレキシブル薄膜の下に向かう運動は、流体サンプルの流れを強制することができ、及び/又はバルブ機能を引き起こす。
【0043】
プランジャ、駆動素子等は、圧力及び/又は負圧をフレキシブル薄膜に適用するために用いられることができる。したがって、プランジャ並びに/又は駆動素子は、それらがフレキシブル薄膜に対して圧力機能、負圧機能及び/若しくはリフト機能を持つように選択されることができる。特にプランジャ、駆動素子等は、フレキシブル薄膜を上下に動かすために、それらが上昇及び/又は下降機能を持つように選択されることができる。そのような手段は、吸引手段、ポンピング手段及び/又は機械的手段を含むことができる。
【0044】
プランジャ、挿入物のような駆動素子は、フレキシブル薄膜を駆動してポンプ及び/又はバルブ作用を引き起こすことによって流体輸送を開始し、液体は、基板上の時間的に形成されるチャネルに押し込まれて、アッセイの次の処理ステップに強制される。本発明の薄膜による流体駆動システムは、高速であり、ほぼゼロにまで最小化された死容積を提供する。
【0045】
例えば、時間的に形成されたチャネルを閉じ若しくは最小化するため、及び/又はフレキシブル薄膜のポンプ若しくはバルブ作用を引き起こすために、圧力又は負圧がフレキシブル薄膜の上面に導かれることができる。圧力手段の作用に起因して、フレキシブル薄膜は、少なくとも圧力がかけられる領域で、基板に向けて下方に動かされる。負圧を用いることでフレキシブル薄膜を上方に動かすことができ、少なくとも負圧を受ける領域において、時間的な薄膜チャネルが形成されることができる。さらに、ポンプ及び/又はバルブ作用が流体サンプルに引き起こされることができる。
【0046】
フレキシブル薄膜が流体シーリング機能を持つので、プランジャ及び/又は駆動素子は、流体サンプルと接触してない。フレキシブル薄膜の定められた領域のみが上又は下に動かされることができるように、プランジャ及び/又は駆動素子は、特定の領域でフレキシブル薄膜の上面を動かす。
【0047】
フレキシブル薄膜表面は、液体サンプルの漏れを回避するために、少なくともフレキシブル薄膜がポンプ作用、バルブ作用を持つ領域に隣接する領域において、及び/又はフレキシブル薄膜が時間的チャネルを形成することが望まれる領域に隣接する領域において液体封止されることが好ましい。特に、流体サンプルが偶然に失われる可能性がないように、漏れが無いように薄膜が基板に接続されることが好ましい。
【0048】
フレキシブル薄膜は、取付け具とも呼ばれるカバープレートによってさらに固定されることができる。カバープレートは、少なくとも1つの貫通孔、切り込み部及び/又は切り取り部を有することができる。駆動されたフレキシブル薄膜に関するポンプ及び/若しくはバルブ作用を引き起こすために並びに/又は時間的フレキシブル薄膜チャネルを形成するためにフレキシブル薄膜が上下に動かされることができるように、孔、切り込み部及び/又は切り取り部は、プランジャ素子及び/又は駆動素子を挿入するために用いられることができる。さらに、カバープレートの少なくとも1つの貫通孔が、冷却作用のために用いられることができる。
【0049】
カバープレートは、基板の少なくとも3つの外面を取り囲むハウジングの形状を持つことができる。カバープレートが少なくとも1つの切り取り部を持つことができることが好ましい。
【0050】
しかしながら、貫通切り込み部及び/又は貫通孔が前記カバープレート中に連結されたチャネルシステムを形成することが好ましい。
【0051】
さらに、カバープレートは、フレキシブル薄膜によって覆われ又は包まれた基板(カートリッジ)上に取り外し可能に配置されることが好ましい。カバープレートがフレキシブル薄膜を有する基板に取り外し可能に配置されることができるので、カバープレートを再利用することが可能である。フレキシブル薄膜によって覆われ又は包まれる基板(すなわちカートリッジ)は、使用後は流体サンプルによって汚染され、カートリッジ(フレキシブル薄膜を有する基板)は、使用された後は使い捨てである。
【0052】
取り外し可能なカバープレートが使われる場合には、異なる孔、切り込み部及び/又はチャネル構造デザインを有するカバープレートと交換することが可能である。これは例えば、流体サンプルが同じカートリッジ上で異なって処理及び/又は分析されることができることを可能にする。
【0053】
カバープレートは、固定手段(例えばクランプ、接続手段、ネジなど)によって、その上にフレキシブル薄膜を有する基板上に取り付けられることができる。
【0054】
しかしながら、カバープレートがフレキシブル薄膜を有する基板上に固定され、すなわち、カバープレートがフレキシブル薄膜を有する基板から取り外されることができないことも可能である。
【0055】
好ましくは、薄膜は、少なくともフレキシブル薄膜が時間的チャンバ及び/又は時間的チャネルを形成することができない全ての領域において、基板上に固定される。しかしながら、薄膜が少なくとも前記時間的チャンバ及び/又は時間的チャネルの境界に沿って基板上に固定されることが可能である。前記境界又は前記領域において薄膜を基板上に液密固定するために、薄膜はカバープレートと基板との間にクランプされることができる。しかしながら、薄膜が接着材等によって固定されることも可能である。
【0056】
時間的チャンバ及び/又は時間的チャネルを形成することが意図されるフレキシブル薄膜の領域又は部分は固定されないことは、エキスパートにとって明らかであると思われる。
【0057】
フレキシブル薄膜の上向きの動き、特に時間的に形成されるチャネルの薄膜を受け入れるために、カバープレートが、フレキシブル薄膜表面に面する少なくとも1つの貫通孔、貫通切り込み部及び/又は凹部を有することが好ましい。カバープレートの貫通孔、貫通切り込み部及び/又は凹部の構造は、時間的に形成されたチャネル、プランジャ及び/又は駆動素子によって、流体サンプルが検出、制御及び/又は処理される所望の領域又は区域に流体サンプルが導かれることができるように設計される。
【0058】
用語「凹部」は、貫通孔又は貫通切り込み部ではない穴又は切り込みを意味する。例えば凹部は、時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネルのフレキシブル薄膜部分を受け入れることができる。
【0059】
したがって、時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネルがそのチャネル中に受け入れられることができるように、チャネル構造又は凹部構造面を有するカバープレートを使用することが可能である。流体サンプルフローは、基板上の前記時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネル中に引き起こされることができる。しかしながら、流体が時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネルの下面とフレキシブル薄膜の上面との間で導かれるので、流体サンプルはカバープレートのチャネル又は凹部と接触しない。
【0060】
フレキシブル薄膜の時間的チャネルを形成するために、並びに/又は、流体サンプルフローを引き起こすように前記フレキシブル薄膜のポンプ及び/若しくはバルブ機能を作動させるために、カバープレートの少なくとも1つの貫通孔又は切り込み部は、負圧及び/又は圧力装置に接続されることができる。
【0061】
フレキシブル薄膜の時間的に形成されたチャネルを受け入れるために、薄膜の上面の上に配置されたカバープレートが、少なくとも1つのチャネル又はチャネル構造を、前記薄膜の上面に面する表面に有することが好ましい。カバープレートのチャネル又はチャネル構造は、流体サンプルフローが、流体サンプルがそこで検出、制御及び/若しくは処理される少なくとも1つのキャビティ、凹部並びに/又は領域に基板上で導かれることができるように設計される。
【0062】
さらにカバープレートは、時間的チャネルを形成するために、チャネル中の流体サンプルフローを引き起こすために、及び/又は、基板上の流動を停止するために、フレキシブル薄膜の上及び/又は下向きの運動を駆動するためのプランジャ及び/又は駆動素子がその中にはめ込まれ又は接続されることができる少なくとも1つの貫通孔及び/又は切断部を含むことができる。したがって、フレキシブル薄膜がかみ合うことができる少なくとも1つの貫通孔及び/又は切り込み部をカバープレートが持つことも可能であるので、カバープレートはフレキシブル薄膜に面する表面上にチャネル又はチャネル構造を持つことは必要ない。さらに、カバープレートが、少なくとも1つの貫通孔及び/又は切り込む部と同様に、フレキシブル薄膜が上方向の運動の際にその中にかみ合うチャネル又はチャネル構造を持つことが好ましい。
【0063】
チャネル構造及び/又は凹部は、一般的な既知の技術によって前記カバープレート中に形成されることができる。カバープレートがプラスチック材料でできていることが好ましい。本発明では、カバープレートの外側の下面がポリマー層でコーティングされ、チャネル及び/又は凹部が前記ポリマー層中に形成されることが可能である。
【0064】
プランジャを用いる場合、フレキシブル薄膜に接触するプランジャの降下運動が流体圧力及び/又はフレキシブル薄膜のバルブ作用を引き起こすように、プランジャの下面サイズは下の表面の形状と一致することが好ましい。プランジャはフレキシブル薄膜の上面に接続されることができ、プランジャは薄膜の一部であることができ、並びに/又は、プランジャの上下運動がフレキシブル薄膜のポンプ及び/若しくはバルブ作用を作動させるように、プランジャは孔、切り込み部にフィットする。プランジャがフレキシブル薄膜の一部である場合、圧縮がポンプ及び/又はバルブ作用を引き起こすように、プランジャは中空であることができる。プランジャは、プラスチック、金属、ガラス及び/又はセラミック材料でできていることができる。
【0065】
定められた領域、すなわちフレキシブル薄膜がその位置において固定されていない領域におけるフレキシブル薄膜のポンプ及び/又はバルブ効果によって、流体サンプルは、フレキシブル薄膜によって時間的に形成される微小チャネルシステムを通して所望のキャビティ、凹部及び/又は領域に輸送されることができる。したがって、流体サンプルは、流体サンプルが検出、制御及び/又は処理される複数の異なる場所に、基板上の時間的に形成されたフレキシブル薄膜を通して輸送されることができる。
【0066】
したがって、本発明の流体サンプル輸送装置は、時間的に形成されるフレキシブル薄膜チャネルを通しての複数の前後の流体サンプル輸送を可能にすることができる。
【0067】
さらに、本発明の流体サンプル輸送装置の集積化されたフレキシブル薄膜は、高速流体輸送、最小限に抑えられたポンプ及びバルブ死容積を提供し、好ましくは、死容積は、製造の低い垂直範囲と同様にゼロに近い。最小限に抑えられた死容積は、本発明による流体サンプル輸送装置の1つの利点である。
【0068】
本発明において、流体サンプルがその中を基板上で輸送される全チャネルのうちの全死容積(容量%)は、好ましくは0%以上10%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満、最も好ましくは0.01%未満である。容量%での死容積は、流体サンプルがその中を基板上で輸送されることができる全チャネル容量に基づく。
【0069】
さらに、チャネル、キャビティ、凹部及び/又は領域を含めて、流体サンプルがその中を基板上で輸送されることができる流体サンプル輸送装置の全死容積(容積%)は、好ましくは0%以上10%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満である。
【0070】
本発明によって用いられるフレキシブル薄膜は、液体流体が動作の間フレキシブル薄膜を貫通しないように、好ましくは液密である。薄膜は可撓性で弾性があることが好ましい。適切な薄膜材料は、ポリマー、好ましくは天然又は合成ゴムである。
【0071】
フレキシブル薄膜は、1μmから500μm、好ましくは10μmから300μm、最も好ましくは50μmから200μmの厚さを持つことが好ましい。薄膜があまりに薄いと、薄膜の劣化の危険性があり、流体サンプルの漏れにつながる可能性がある。しかしながら、薄膜があまりに厚い場合、流体輸送に関する前記薄膜のポンプ及び/又はバルブ効果の動作不良の危険がある。さらに、薄膜があまりに厚い場合、時間的チャネルを形成できない。50μmと200μmとの間の厚さを持つゴム薄膜が最も好ましい。
【0072】
流体サンプル輸送装置は、処理、制御及び/又は検出素子を有することができる。処理、制御及び/又は検出素子は、好ましくは基板上に及び/又は基板中に配置される。ヒーター、センサ、検出器などを含む前記処理、制御及び/又は検出素子は、薄膜技術によって集積化されることができる。一般に、本発明による流体サンプル輸送装置は、電子デバイス(例えば薄膜電子デバイス)を有することができる。
【0073】
基板は、少なくとも1つの層から成ることができる。しかしながら、本発明の流体サンプル輸送装置の基板は少なくとも2つの層を有することが好ましい。
【0074】
基板は、当該基板を形成する複数の薄膜層を含むことができる。好ましくは、基板は、少なくとも1つの外側面を薄膜層によって覆われるベース層を有する。適切な薄膜層は、とりわけ、電場を適用するための電極、センサ、トランスデューサ、光学ベースの装置、音響ベースの装置(例えば超音波エネルギーを適用するためのピエゾベースの発振器)、電場ベースの装置及び磁場ベースの装置から成るグループから選択される少なくとも1つの電子デバイスを有する。センサは、とりわけ、熱電対、サーミスタ(例えば抵抗性加熱装置)、pn接合、変性バンドギャップセンサなどのような温度センサ、光センサ(例えばフォトダイオード又は他の光電子工学装置)、圧力センサ(例えば圧電素子)、例えば圧力又は加熱素子からの熱損失の速度の検知に基づく流体流速センサ、及び電気的センサであることができる。
【0075】
好ましくは、電子デバイスは、処理、制御及び/又は検出手段(素子とも呼ばれる)を有する。処理手段は、流体の温度制御のための電子デバイス、流体を加熱及び/又は冷却するための電子デバイス、流体の特性を検知又は変更するように構成される電子デバイスを含む。さらに、処理素子とも呼ばれる処理手段は、試薬を含む。
【0076】
電子デバイスは、当該電子デバイスが、サンプル処理、並びに/又は、流体サンプルフローがそこに導かれることができるチャネルシステム、領域、凹部及び/若しくはキャビティ中の流体サンプルのモニタリングに関与することができるように配置されることができる。したがって電子デバイスは、処理領域に対してより効率的に配置されることができ、サンプルを操作する態様における更なる柔軟性を可能にする。さらに、流体サンプル処理の関連した態様に関与する装置(例えばヒーター/冷却器と温度センサ)は、実質的に同じ流体ボリュームの温度を変更及び検知するために、より協力的な空間的関係で配置されていることができる。
【0077】
薄膜電子デバイスのような電子デバイス及びそのようなデバイスを集積化する方法が、US-A1 20040151629に開示されており、この文献を本願に引用として組み込む。
【0078】
好ましくは、処理、制御及び/又は検出素子は、少なくとも1つの電極、センサ、トランスデューサ、加熱素子、光学ベースの装置(例えば導波路、レーザ)、音響ベースの装置、電場ベースの装置及び/又は磁場ベースの装置を含む。処理素子は、例えば細胞溶菌、洗浄、混合、PCRによる増幅及び/又は検出を含む。
【0079】
より詳しくは、流体サンプル輸送装置は、時間的に形成可能なチャネルのアレイを提供し、時間的チャネルは、基板上に配置されるフレキシブル薄膜によって形成される。フレキシブル薄膜は、基板上で覆われ又は包まれることができる。さらに、カバープレートは、薄膜が基板と取り外し可能なカバープレートとの間に挟まれるように、薄膜の上面に取り付けられることができ、好ましくは取り外し可能に取り付けられることができる。
【0080】
カバープレートは、時間的に形成されたチャネルを受け入れるために少なくとも1つの凹部又は切り込み部を持つ。したがって、カバープレートは、時間的に形成されたチャネルがその中にかみ合うことができるネガ型構造のチャネル構造を持つ。薄膜の上面に面したカバープレート構造は2つの機能を持つことができる。カバープレートの第1の機能は、薄膜を基板上に固定することである。したがって、カバープレートの下面が、その面上にフレキシブル薄膜を固定するために平らな面を持つことが好ましい。カバープレートの第2の機能は、時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネルの膨張を受け入れることである。時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネルを受け入れるために、カバープレートは、その下面上の少なくとも1つの凹部及び/又は少なくとも1つの切り込み部を有し、その中に拡張したフレキシブル薄膜チャネルがかみ合うことができる。
【0081】
流体サンプルは、時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネルを通って基板上を流れることができる。時間的に形成されるフレキシブル薄膜チャネルは、カバープレートの凹部及び/又は貫通切り込み部によって与えられる定められた方向を持つ。したがって、流体サンプルフローは、少なくとも1つのキャビティ、凹部及び/又は領域へと基板上で導かれることができ、そこで流体サンプルは検出、制御及び/又は処理される。
【0082】
駆動素子は、貫通切り込み部に挿入されることができる。駆動素子は、挿入物、圧力源及び/又は負圧源であることができる。挿入物の上への及び/若しくは下への運動又は圧力/負圧源の圧力/負圧は、隣接して配置されたフレキシブル薄膜の対応する運動を引き起こすことができる。例えば、前記駆動素子の圧力が時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネルの基板に向かう下方向の運動を引き起こすので、切り込み部中に位置する挿入物の下向きの運動は、下の時間的に形成されたチャネル中に流体フローを引き起こすことができる。同じことが圧力/負圧源に当てはまる。さらに、カバープレートは、少なくとも1つの貫通孔を提供することができ、その中にプランジャがはめ込まれることができ又は駆動素子が接続されることができる。
【0083】
製造の低い垂直範囲を有する本発明による流体サンプル輸送装置は、少なくとも2つの構成要素を含む。(a) 集積化された分析的、電気的及び/又は光学的機能(例えば試薬、センサ及び/又はアクチュエータ)並びに必要ならば電気的インフラストラクチャを有する基板。(b) 基板を覆い又は包むフレキシブル薄膜。当該フレキシブル薄膜は、流体サンプルフローを導き及び/又は制御するための少なくとも1つの時間的チャネルを形成する。(c) 流体サンプルに対するバルブ及び/若しくはポンプ機能を持つプランジャ及び/若しくは駆動素子を受け入れるための少なくとも1つの貫通孔又は貫通切り込み部を有するカバープレート。
【0084】
本発明の流体サンプル輸送装置の好ましい実施の形態によれば、装置は、流体サンプルを受け入れるためのキャビティを備えた基板を有し、当該基板はフレキシブル薄膜によって包まれる。フレキシブル薄膜によって覆われ又は包まれる基板の上に、カバープレートが取り外し可能に取り付けられ、フレキシブル薄膜は、基板とカバープレートとの間にはさまれる。カバープレートは、第1のプランジャを受け入れるための第1の貫通孔を有する。プランジャの降下運動が下のフレキシブル薄膜に接触し、流体サンプルが基板のキャビティから押し出されるように、カバープレートの前記第1の貫通孔の下部開口の位置は、流体サンプルキャビティの上部開口と一致する。キャビティデザインに関する死容積が最小限であって好ましくはゼロであるように、薄膜と接触してキャビティにかみ合うプランジャ部分は、ポジの嵌合いを持つことが好ましい。さらに、第1の貫通孔に隣接して、貫通切り込み部が前記カバープレート中に形成され、その中に挿入物が配置される。前記貫通切り込み部の端の部分で、第2のプランジャを受け入れる第2の貫通孔が前記カバープレート中に形成される。前記第1のプランジャの下方向の運動は、キャビティから流体サンプルを押し出す。流体サンプルフローが時間的フレキシブル薄膜チャネルの形成を引き起こし、フレキシブル薄膜の膨張は、貫通切り込み部によって受け入れられる。貫通切り込み部中に配置された挿入物の下向きの運動は、フレキシブル薄膜が基板の上面に向かって押し下げられるので、第2のプランジャの方向への流体サンプルの流体フローを引き起こし、第2のプランジャは、当該プランジャに接触する薄膜上面によって押し上げられる。第1のプランジャ、挿入物及び第2のプランジャの交互の上下運動は、ポンプ及び/又はバルブ作用を引き起こし、流体サンプルが時間的に形成されるチャネルを通して基板上で往復して輸送されることができる。基板が少なくとも1つの処理、制御及び/又は検出素子を提供することが好ましい。
【0085】
基板上での複数の検出、処理及び/又は制御ステップを組み合わせるために、カバープレートは、複数の貫通孔及び貫通切り込み部並びに/又はその下面における複数の凹部を持つことが好ましい。
【0086】
基板は、基板上に位置する少なくとも1つのキャビティ、凹部及び/又は領域を有することができ、そこで流体サンプルは検出、制御及び/又は処理される。キャビティ、凹部及び/又は領域は、基板上での方向付けされ制御された流体サンプル輸送を達成するために、カバープレートのデザインと一致するように基板上に配置される。時間的に形成されうるチャネルシステム中の流体サンプルフローは、ポンプ及び/又はバルブ機能を持つプランジャ、挿入物並びに駆動素子のような手段によって、達成され、制御され、そして導かれる。
【0087】
本発明の他の実施例によれば、流体サンプル輸送装置は、複数の貫通孔及び貫通切り込み部並びに/又はその下面に複数の凹部を備えるカバープレートを有する。この流体サンプル輸送装置は、流体サンプルがそこで検出、制御及び/又は処理される基板上に位置する複数のキャビティ、凹部及び/又は領域への方向付けされ制御された流体サンプル輸送を提供する。
【0088】
述べられた上記の実施の形態は、流体サンプルが並列に検出、制御及び/又は処理されることができる流体サンプル輸送装置を提供する。さらに、流体サンプルが基板上の流路によって基板上で異なって処理されることが可能である。例えば、この種類の流体サンプル輸送装置は、流体サンプルフローが特定の処理のために基板上の種々の領域に導かれることができるので、異なるアッセイのために用いられることができる。
【0089】
しかしながら、単一の流体サンプルが複数の処理、制御及び/又は検出ステップを受ける流体サンプル輸送装置が最も好ましい。
【0090】
本発明による流体サンプル輸送装置は、好ましくは使い捨てのカートリッジである。支持板は、再使用可能であるか又は使い捨てであることができる。カバープレートは再利用されることができるが、薄膜によって覆われ又は包まれる基板は使い捨てであることが最も好ましい。したがって、流体サンプル輸送装置は、再使用可能なカバープレートによっておおわれる使い捨てのカートリッジでできていることができる。
【0091】
流体サンプル輸送装置又はカートリッジは、特に基板は、少なくとも1つの表面側にコネクタを持つことができ、そのコネクタは例えば制御システムとの電気的接触を提供する。
【0092】
図1は、流体サンプルを受け入れるためのキャビティ12を有する基板2を示す。基板12は、処理、制御及び/又は検出素子(図示せず)を備える複数の薄膜層(図示せず)に基づくことができる。
【0093】
一般に、処理、制御及び/又は検出素子は、好ましくは基板上に及び/又は基板中に配置される。前記処理、制御及び/又は検出素子は、薄膜技術によって集積化されることができる電子デバイス(例えばヒーター、センサ、検出器など)を有する。適切な電子デバイスは、とりわけ、電場を適用するための電極、センサ、トランスデューサ、光学ベースの装置、音響ベースの装置(例えば超音波エネルギーを適用するためのピエゾベースの発振器)、電場ベースの装置及び磁場ベースの装置である。また、処理、制御及び/又は検出素子は、例えば細胞溶菌、洗浄及びPCRによる増幅などのために使われる化合物を含むことができる。
【0094】
図2a、2b及び2cは、使い捨てのカートリッジの構築を示す。図2aは、図1のキャビティ12を有する基板2の部分側面図を示す。図2bは、図2aのキャビティ12を有する基板2の部分側面図を示し、キャビティは、流体サンプル3で満たされる。図2cは、図2bの流体サンプル3で満たされるキャビティ12を有する基板2の部分側面図を示し、基板2、キャビティ12及び流体サンプル3は、フレキシブル薄膜4によっておおわれる。流体サンプル3は、シリンジを介してキャビティの中へフレキシブル薄膜4を通して注入されることができる。あるいは、基板2はポート7(図示せず)を持っていることができる。流体サンプル3は、当該ポート7を介してキャビティ12の中に導入されることができる。
【0095】
変形例として、フレキシブル薄膜4が基板2を包む(図2cでは図示せず)ことが好ましく、それは基板2上のフレキシブル薄膜4の容易かつ良好な固定を提供する。
【0096】
図3a、3b、3c、3d及び3eは、本発明による流体サンプル輸送装置1のプランジャ5a/5b及び挿入物9のポンプ及びバルブ作用によって駆動される基板2上の流体サンプル3の方向付けされた流体フローを示す。
【0097】
図3aは、部分側面図で、基板2、フレキシブル薄膜4、カバープレート6から構成される流体サンプル輸送装置1を示し、基板2は処理、制御及び/又は検出手段(図示せず)を有し、基板はさらに流体サンプル3を収容するキャビティ12を有し、フレキシブル薄膜4は、基板2上に重ねられて流体サンプル3を漏れないように覆い、カバープレート6は、プランジャ5a及び5bを受け入れるための貫通孔並びに挿入物9を受け入れるための貫通切り込み部8を含む。プランジャ5a、挿入物9及びプランジャ5bはそれぞれ隣接して配置される。流体サンプル3は、プランジャ5aが取り外された後で、シリンジを介してキャビティの内へフレキシブル薄膜4を通して注入されることができる。プランジャ5aが軟かい材料であり及び/又はプランジャ5aが中空である場合には、シリンジを介してプランジャ5a及びフレキシブル薄膜4を通して流体サンプル3を注入することが可能である。あるいは、基板2はポートアクセス7(図示せず)を備えていることができ、それを通して流体サンプル3はキャビティ12の中へ導入されることができる。図3aから分かるように、プランジャ5aは上に動かされた位置にある。さらに、死容積を最小限に、好ましくはほぼゼロに低減するために、プランジャ5aの先の部分は、それがキャビティ12に精密にフィットするように(正の嵌合い)、キャビティのデザインに適応される。
【0098】
図3bは、プランジャ5a/5b及び挿入物9が上に動かされた位置にあることを除いて、図3aと同じ流体サンプル輸送装置1を示す。
【0099】
図3cは、プランジャ5aが下げられたことを除いて、図3bと同じ流体サンプル輸送装置1を示す。プランジャ5aの下端がフレキシブル薄膜領域4aに接触し、フレキシブル薄膜4aが押し下げられてキャビティ12にかみ合わされることが分かる。薄膜4に対するプランジャ5aのポンプ作用に起因して、流体サンプル3はキャビティ12から強制的に出されて、フレキシブル薄膜部分4cは薄膜4の膨張によって時間的チャネルを形成し、その中を流体サンプル3は流れることができ、それによって、プランジャ5bの下端の下の貫通孔中にフレキシブル薄膜チャンバ4bが形成され、その中に流体サンプル3が集まる。
【0100】
図3dは、図3cと同じ流体サンプル輸送装置1を示し、薄膜4aと接触しているプランジャ5aは、完全に下まで動かされて、キャビティ12に精密にフィットする。流体サンプル3がキャビティ12から完全に強制的に押し出されて、キャビティ12に関する死容積がほぼゼロであることが図3dから分かる。流体サンプル3は、プランジャ5aのポンプ作用のために、時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネル4cを通して、時間的に形成された薄膜チャンバ4bの方向に強制される。
【0101】
図3eは、図3dと同じ流体サンプル輸送装置1を示し、薄膜4cと接触している挿入物9が基板まで完全に下げられて、時間的に形成されたフレキシブル薄膜チャネル4cが取り払われ、流体サンプル3は、時間的に形成された薄膜チャンバ4bへ完全に転送された。基板2が微小チャネルを持たないので、流体サンプルは失われず、流体サンプル輸送装置1のチャネルシステムに関する死容積はほぼゼロである。
【0102】
流体サンプルはカバープレート6又はプランジャ5若しくは挿入物9のようなその部品と接触しないことが図3a〜3eからさらに分かる。したがって、カバープレート6、プランジャ5及び挿入物9は、再利用されることができる。しかしながら、カートリッジだけは流体サンプルによって汚染されるので、基板及び薄膜を有するカートリッジは使い捨てである。
【0103】
図4aは、本発明による流体サンプル輸送装置1を示す。基板2の上面は、フレキシブル薄膜4によっておおわれる。薄膜4は、前記基板2とカバープレート6との間にはさまれる。カバープレート6は第1の貫通孔を有し、その中にプランジャ5aがはめ込まれる。第1の貫通孔に隣接して貫通切り込み部8が配置され、その中に挿入物9がはめ込まれる。貫通切り込み部8の反対の位置で、それに隣接して、第2の貫通孔がカバープレート6に配置され、その中にプランジャ5bがはめ込まれる。プランジャ5a/5b及び挿入物9の上下運動が、フレキシブル薄膜4の下での基板上の方向付けされた流体サンプルフローを強制する。時間的チャネルは、フレキシブル薄膜4を引き伸ばすことによって形成されることができ、その中を流体サンプルが流れることができる。時間的に形成されたチャネルの膨張したフレキシブル薄膜は、カバープレート6の貫通切り込み部8の下の部分にかみ合うことができる。挿入物9を押し下げることで、時間的に形成されたチャネルの薄膜のポンプ作用を引き起こし、それによって、当該チャネルは平坦な薄膜4に戻される。このように、順方向及び/又は逆方向の流体サンプルフローが、プランジャ5a/5b及び挿入物9のポンプ及びバルブ機能によってフレキシブル薄膜を駆動することで引き起こされることができる。流体サンプル3は、シリンジを介してキャビティの中へフレキシブル薄膜4を通して注入されることができる。あるいは、基板2はポート7(図示せず)を備えていることができる。流体サンプル3は、当該ポート7を介してキャビティ12に導入されることができる。処理、制御及び/又は検出のための領域並びに装置は示されていない。さらに、カートリッジ(特に基板)は、少なくとも1つの表面側にコネクタ(図示せず)を持つことができ、それは、例えば制御システム(図示せず)との電気的接触を提供する。
【0104】
図4bは、プランジャ5a/5b、挿入物9、第1及び第2の貫通孔並びにその間に隣接して配置された貫通切り込み部8を有するカバープレート6、フレキシブル薄膜4及び流体サンプルプローブ3を受け入れるためのキャビティ12を有するカバープレート2を含む図4aの流体サンプル輸送装置1の部品を示す。死容積を最小限に、好ましくはほぼゼロに低減するために、プランジャ5aの下部は、それがキャビティ12に精密にフィットするように(正の嵌合い)、キャビティのデザインに適応された。プランジャ5a及び挿入物6の下の部分は、死容積が最小限に、好ましくはほぼゼロに低減されるように、下の基板2の上面のデザインに適応された。処理、制御及び/又は検出のための領域及び装置は示されていない。
【0105】
図5は、流体サンプル3を受け入れるためのキャビティ12及び様々な処理、制御及び/又は検出素子20を含む領域を有する基板2を示す。より詳しくは、基板は化学試薬収容チャンバ14を有する。流体サンプルは、前記チャンバ14中で取り扱われ及び/若しくは処理されることができ、又は、化学試薬は、それとともに流体サンプルが前記基板上の異なる領域で処理され若しくは取り扱われることができるように、チャンバから汲み出されることができる。チャンバ14a、b、c、d、e中の試薬は、同じであるか又は異なることができる。チャンバは、基板2の上面に形成される凹部又はキャビティのデザインを持つことができる。しかしながら、試薬が基板2の平坦な領域に配置されることも可能である。基板2はさらに、好ましくはヒーター及びセンサプレートを備えるPCRチャンバ15を含む。流体サンプルがそこで検出、制御及び/又は処理される所望の領域への基板2上での流体サンプルの流体フローを引き起こし若しくは止めるためのポンプ及び/又はバルブ作用を提供するために、基板2は窪み16を有することができ、その中にフレキシブル薄膜2(図示せず)がプランジャ5(図示せず)の作用によってかみ合わされることができる。さらに、廃棄チャンバ17が、使用済みの試薬、被処理流体サンプル等を受け入れるために基板2上に配置されることができる。また、溶菌及び/又は精製処置及び処理素子18が前記基板2に配置されることができ、そこで流体サンプルは、取り扱われ又は処理されることができる。検出するために、検出アレイ19が基板2に配置されることができる。検出アレイ19は、キャビティ又は凹部のような、基板2の窪みの中に配置されることができる。基板は、冷却及び/又は加熱を目的として、その外側表面に少なくとも1つのキャビティ20又は凹部20を備えていることができる。そのようにして、この領域20では基板材料が薄くされているので、容易かつ急速な冷却又は加熱作用が達成されることができる。
【0106】
図6は、図5にて説明されたのと同じ基板2を示し、化学試薬収容チャンバ14a、b、c、d、eの領域は、薄い箔21(例えば薄いアルミニウム箔21)によっておおわれる。試薬収容チャンバ14a、b、c、d、eに収容される試薬を放出するために、薄い箔を、例えば、プランジャ5(図示せず)又は駆動素子9(図示せず)を用いて引き裂いて開くことができる。
【0107】
図7は、フレキシブル薄膜4によって包まれる図6による基板2を示す。カートリッジ(特に基板)は、少なくとも1つの表面側に、例えば制御システム(図示せず)との電気的接点を提供するコネクタ(図示せず)を持つことができる。
【0108】
図8は、カバープレート6によっておおわれる図7によるフレキシブル薄膜4によって包まれる基板2のカートリッジを示す。カバープレート6は、薄膜4の上面の上に配置される。カバープレート6は、フレキシブル薄膜4によって包まれる前記基板2に取り外し可能なように取り付けられる。したがって、カバープレート6は再利用されることができ、一方カートリッジは使い捨てであることができる。カバープレート6は、複数の貫通孔10a-g及び貫通切り込み部8を持つ。貫通孔10aの下部開口の位置は、流体サンプル3を受け入れるためのキャビティ12と一致する(図5と比較せよ)。貫通孔10b-eの各々の下部開口の位置は、基板2の各々の窪み16と一致し(図5と比較せよ)、その中にフレキシブル薄膜2(図示せず)が、プランジャ5(図示せず)の作用によってかみ合わされる。さらに、貫通孔10fの下部開口の位置は、基板2上に位置するPCRチャンバ15の上部開口と一致し(図5と比較せよ)、貫通孔の10g下部開口の位置は、試薬収容チャンバ14a、b、c、d、eの開口と一致する(図5と比較せよ)。貫通孔10a-gはプランジャ5(図示せず)を受け入れ、一方、貫通切り込み部8は挿入物9(図示せず)を受け入れる。フレキシブル薄膜に隣接した貫通切り込み部の下側の部分は、膨張したフレキシブル薄膜の時間的に形成されたチャネルを受け入れるためにある。貫通切り込み部8及び貫通孔10a-gは、前記カバープレート6中に連結されたチャネルシステムを形成する。さらに、カバープレート6は廃棄チャンバ22を持つ。廃棄チャンバ22の下部開口は、基板2に配置される廃棄物チャンバ17(図示せず)と一致する。このように、廃液及び/又は被処理流体サンプルなどは、廃棄チャンバ22によって除去されることができる。あるいは、廃棄チャンバ22を介して試薬又は流体を取り込むことが可能である。流体サンプル3を取り込むポート7(図示せず)が、基板2の下面に配置されることができ、又は基板2の側面に、好ましくはキャビティ12の近傍に配置されることができる。カバープレート2の開口23は、基板2に配置される検出アレイ19の目視での観察を可能にする(図5及び6を比較せよ)。
【0109】
図9は、フレキシブル薄膜4によって包まれ、図8によるカバープレート6によっておおわれる基板2のカートリッジに基づく本発明による流体サンプル輸送装置を示す。プランジャ5a〜5gはそれぞれ貫通孔10a〜10g中に配置される。挿入物9は、貫通切り込み部8中に配置される。プランジャ5a-g及び挿入物9は、基板上の方向付けされた流体サンプルフローを可能にするために、上下に動かされることができる。プランジャ5a-5fは、ポンプ及びバルブ機能を持つ。プランジャ5gは、試薬収容チャンバ14a、b、c、d、e中に収容される所望の試薬を放出するために薄い箔21を破るための穿孔器として機能することができる。当該プランジャ5gの下端部のデザインが試薬チャンバの形状に一致するので、試薬チャンバに関する死容積は最小限に、好ましくはほぼゼロに低減される。したがって、試薬、好ましくは液体は、試薬チャンバ14から完全に取り出されることができる。あるいは、流体サンプル3が、少なくとも1つの前記試薬チャンバ14a、b、c、d、eに導かれることができる。流体サンプル3がそれとともに処理された後で、流体サンプルは、対応するプランジャ5aを作動させることによって完全に取り除かれることができる。流体サンプル3が前記基板2上の様々な試薬によって処理されることができ、又は複数の異なる流体サンプルが1つの試薬で処理されることができる。
【0110】
流体サンプル3は、貫通孔10aの下部開口に隣接する薄膜を通してシリンジを介してキャビティ12(図示せず)の中に持ち込まれることができる。あるいは、流体サンプル3は、好ましくはキャビティ12(図示せず)の非常に近くに配置されるポート7を介してキャビティ12の中へ持ち込まれることができる。ポート7は、サンプル容器(図示せず)を受け入れることができるように設計されることができる。サンプル容器は、流体サンプルがポート7(図示せず)を介してキャビティ12の中に完全に転送されることができるように作成されることが好ましい。
【0111】
貫通切り込み部8及び貫通孔10a-gは、前記カバープレート6中に連結されたチャネルシステムを形成する。したがって、プランジャ5aのポンプ作用によって、流体サンプル3は、キャビティ12から完全に強制的に押し出されることができる。隣接して配置された挿入物9が上に動き、流体サンプル3を受け入れるために時間的薄膜チャネルが形成され、膨張したフレキシブル薄膜部分4は、対応する切り込み部8の下側部分にかみ合う。前記挿入物9を押し下げてプランジャ5bを開くことで、時間的に形成された薄膜チャネルが退化し、流体サンプルは窪み16に集められる(図5及び6を比較せよ)。プランジャ5bを押し下げて、プランジャ5bと5cとの間に配置される挿入物9を持ちあげることによって、当該挿入物の下に形成される時間的チャネル中への流体サンプルフローが引き起こされる。降下位置にあるプランジャ5b及び5cはバルブ機能を持ち、したがって流体サンプルは、形成された時間的薄膜チャネル中に完全に集められる。プランジャ5a-5g及び挿入物9のポンプ及びバルブ機能によって、流体サンプルフローが基板上で所望の領域に導かれることができ、そこで流体サンプルが処理され、取り扱われ及び/又は制御されることはエキスパートにとって明らかであり、したがってさらに説明される必要はない。
【0112】
時間的に形成されたチャネルの部分が平坦な薄膜へと退化することができるので、カートリッジのチャネルシステムに関する死容積が最小限に、好ましくはほぼゼロに低減されることができる。
【0113】
図10aは基板2の上面図を示し、基板2は、その上面に試薬24(好ましくはフリーズドライ試薬)を含む第1のキャビティ12a、及び検出素子として集積化チップ25(好ましくはGMRセンサチップ)(GMR = Giant Magneto Resistance)を含む第2のキャビティ12bを有する。
【0114】
図10bは、図10aの基板2の背面図を示す。下面にはチップ25の下側の部分が見える。さらに電気的コンタクトパッド/インタフェース26が、側縁に隣接した端部分において、基板2の下面に配置される。コンタクトパッド26は、センサチップ25に導線を介して接続される。
【0115】
図11aは、図10aの基板に基づくカートリッジ27の上面図を示し、基板2の主な部分は、周囲をフレキシブル薄膜4によって包まれる。周囲を包むフレキシブル薄膜4は、基板2と接触する。しかしながら、薄膜4は基板を完全に覆うわけではなく、少なくとも基板2の端部分は前記薄膜4によって覆われない。フレキシブル薄膜4は、対向する端部において2つの開口13a及び13bを有する風船のマウスピースに似ている。
【0116】
図11bは、図11aのカートリッジ27の背面図を示す。電気的接点/インタフェース26は、薄膜4によって覆われていない端部分において基板2の下面に見ることができる。
【0117】
図11cは、図11aのカートリッジ27に基づく流体輸送装置1aの上面図を示し、カートリッジ27は、ハウジング29の形状を持つカバープレート中に配置される。ハウジング29は、下面及び側面においてカートリッジ27を取り囲む。ハウジング29は前記カートリッジ27の上面を覆わず、したがってハウジング29はその上面において開いている。
【0118】
図11dは、図11cの流体輸送装置1aの背面図を示す。電気的接点/インタフェース26は、薄膜4及びハウジング29によって覆われていない端部分において基板2の下面に見ることができる。ハウジング29の形状のカバープレートは、その下面に切り取り部10を持つ。
【0119】
図11eは、上面要素28の上面の上面図を示す。上面要素28は、ハウジング29の開口に配置されることができ、その開口を閉じる。
【0120】
図11fは、図11eの上面要素28の背面図を示す。上面要素28の下面側は、チャネル状の凹部11を持つ。チャネル状の凹部11は、膨張したフレキシブル薄膜部分(図示せず)で形成される時間的チャネルを受け入れることができる。
【0121】
図11gは、図11cの流体輸送装置1aに基づく流体輸送装置1bの上面図を示し、上面要素28は、ハウジング29の上部開口を閉じて、チャネル状の凹部11(図示せず)の領域以外において基板2にフレキシブル薄膜4を固定するために、ハウジング29の上部開口中に配置される。
【0122】
図11hは、図11gの流体輸送装置1bの背面図を示す。上面要素28の下面側は、チャネル状の凹部11を持つ。チャネル状の凹部11は、膨張したフレキシブル薄膜部分(図示せず)で形成される時間的チャネルを受け入れることができる。
【0123】
図11iは、図11gの流体輸送装置1bに基づく流体輸送装置1の上面図を示し、ハウジング29(カバープレート6がハウジングの形状を持つ)の切り取り部(10)(図示せず)において、2つのプランジャ5a及び5bが配置される(以下の図11j参照)。流体サンプル(3)(例えば唾液)は、基板2を包むフレキシブル薄膜4のマウスピースの開口13aに取り入れられることができる。フレキシブル薄膜は、上面要素28のチャネル状の凹部11(図示せず)に面する薄膜領域を除いて、ハウジング29の形のカバープレート及び上面要素28によって基板に圧迫固定される。プランジャ5aが上げられた位置にあり、プランジャ5bが下げられた位置にある場合、流体サンプルは、流体フローが第2のプランジャ5bのバルブ作用によって止められる部分まで基板2に沿って流れることができる。第1のプランジャ5aが押し下げられ、第2のプランジャ5bが開いている場合、流体サンプルフローは試薬に接触してセンサで分析されることができる。プランジャ5aの下向きの運動及びプランジャ5bの上向きの運動は、流体サンプル3の基板2上での輸送を引き起こす。ハウジング29、上面要素28及びプランジャ5a及び5bは、これらの要素は流体サンプルによって汚染されないので再利用されることができ、一方カートリッジは使い捨てである。
【0124】
図11jは、図11iの流体輸送装置1の背面図を示す。プランジャ5a及び5bは、ハウジング29の切り取り部10中に配置される。プランジャ5aは切り取り部10の外端縁に配置され、プランジャ5bはプランジャ5aの奥に配置される。フレキシブル薄膜4のマウスピースは、図11iにて説明したように、流体サンプル3(図示せず)を受け入れるための開口13aを持つ。
【0125】
図12aは、薄膜層とも呼ばれる薄い箔30の上面図を示す。薄い箔30は、少なくとも1つの処理、制御及び/又は検出素子(19)(図示せず)を受け入れるための孔31及び切り抜き部32を持つ。
【0126】
図12bは、集積回路33を有する薄い箔30の背面図を示す。
【0127】
図12cは、薄い箔30によってその上面を覆われる基板2を示す。基板2は、薄い箔30の貫通孔31と一致する貫通孔31を持つ。さらに、切り抜き部32は、下の基板の切り抜き部32と一致する。切り抜き部32が形成されてセンサ素子19を受け入れ、孔31がそこにPCRモジュールを配置するために形成される。
【0128】
図12dは、薄い箔30によってその上面が覆われる基板2の背面図を示す。基板はその下面において切り抜き部32及び貫通孔31を持つ。さらに基板は、その下面において、回路33に電気的にコンタクトするためのポート34を持つ。
【0129】
本発明の流体サンプル輸送装置は、生医学的アプリケーション(例えばmicroTAS及びLOC)、バイオセンサ、分子診断、食物及び環境センサにおいて、流体/電子/機械的装置のために用いられることができる。さらにそれは、化学的又は生物学的化合物の合成のために用いられることができる。
【0130】
好ましくは、本発明による流体サンプル輸送装置は、以下のために使われることができる。
- 生物学的流体(例えば卵黄、血、血清及び/若しくは血漿)の分析を含む、化学的、診断的、医学的及び/若しくは生物学的分析。
- 水、溶解された土壌抽出物及び溶解された植物抽出物の分析を含む環境分析。
- 化学的生産物、特に色素溶液若しくは反応溶液の分析を含む、反応溶液、分散及び/若しくは製剤分析。
- 品質保護分析。並びに/又は
- 化学的若しくは生物学的化合物の合成。
【0131】
ガラス基板及び集積化された機能の製造は、従来技術において既知の4マスク薄膜プロセスによって提供されることができる。
【0132】
ガラス基板及び集積化された機能の製造の例は以下に与えられる。
基板:0.4 mm Schott AF45
薄膜処理4マスクレベル
- 抵抗層:100nm Pt, 又はTi, Cr, Ni, Pt, Au, W
- 導体層:1ミクロンのAl又はCu, Au, Ag
- 誘電層:0.5 ミクロンのSiO2又はSiN
-ポリマー層:30ミクロンのSU8若しくはBCB、又は他のフォトポリマー
【0133】
ヒーター及び温度センサのための抵抗体素子は、好ましくはPtのような同じ薄膜層でできている。温度検出素子のために、選択された金属の抵抗の温度係数(TCR)が十分に大きいことが重要である。
【0134】
好ましくは、1ミクロンのアルミニウム導体層が用いられる。
【0135】
金属の組み合わせは、SiN又はSiO2の薄膜誘電層との相性が良いように選択されなければならない。
【0136】
処理、制御及び/又は検出のための領域のような微小チャネル並びに構造は、MicroResist Technology社によって供給されるSU8及び/又はDow Chemical社によって供給されるBCBフォトポリマーのようなフォトポリマーを用いた標準的なフォトリソグラフィプロセスによって、好ましくはガラス又はプラスチックの基板上に作成される。しかしながら、基板がこのように微小チャネルを含まないことが最も好ましい。
【0137】
アクチュエータ及びセンサを制御するために用いられるダイオードやトランジスタのような能動的な電気的機能は、従来技術において既知の低温ポリシリコン(LTPS)アクティブマトリックスLCD技術を用いて集積化されることができる。
【0138】
明細書を不必要に長くすることなく包括的な開示を提供するために、出願人は上記で参照された特許及び特許出願の各々を本明細書に参照として組み込む。
【0139】
上記の詳細な実施の形態における要素及び特徴の特定の組み合わせは、単なる例である。これらの教示を、本願及び参照として組み込まれた特許(出願)における他の教示と交換し及び置換することも、明らかに意図されている。当業者が認識するように、当業者は、請求の範囲に記載された発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において記載されたもののバリエーション、修正及び他の実施態様を思いつくことができる。したがって、上記の説明は単なる例であって、制限的であることは意図されない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等物において定められる。さらに、説明及び特許請求の範囲において使用される引用符号は、請求される本発明の範囲を制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】流体サンプルを受け入れるためのキャビティを有する基板の部分側面図。
【図2a】流体サンプルを受け入れるためのキャビティを有する図1の基板の部分側面図。
【図2b】流体サンプルを収容しているキャビティを有する図1の基板の部分側面図。
【図2c】流体サンプルを収容しているキャビティ及びフレキシブル薄膜を有する図1の基板の側面図。
【図3a】流体サンプル輸送装置の部分側面図。
【図3b】流体フローの準備ができている流体サンプル輸送装置の部分側面図。
【図3c】流体フロー時の流体サンプル輸送装置の部分側面図。
【図3d】流体フロー時の流体サンプル輸送装置の部分側面図。
【図3e】流体フロー後の流体サンプル輸送装置の部分側面図。
【図4a】流体サンプル輸送装置の部分側面図。
【図4b】図4aの流体サンプル輸送装置の構成要素を示す図。
【図5】PCRチャンバ及び集積化温度センサ及びヒーター素子を有する基板の側面図。
【図6】アルミニウムカバーを有する図5の基板の側面図。
【図7】フレキシブル薄膜によって包まれる図6の基板の部分側面図。
【図8】カバープレートを有する図7の基板の部分側面図。
【図9】プランジャ及び駆動素子を有する図8の基板の部分側面図。
【図10a】集積化されたセンサチップを有する基板の部分上面図。
【図10b】図10aの基板の部分背面図。
【図11a】包まれたチューブフレキシブル薄膜を有する図10aの基板の部分上面図。
【図11b】図11aの基板の部分背面図。
【図11c】ハウジング中の図11aの基板の部分上面図。
【図11d】図11cの基板の部分背面図。
【図11e】上面要素の部分上面図。
【図11f】チャネルを有する図11eの上面要素の部分背面図。
【図11g】プランジャのない流体サンプル輸送装置の部分側面図。
【図11h】図11gの流体サンプル輸送装置の部分背面図。
【図11i】プランジャを有する流体サンプル輸送装置の部分側面図。
【図11j】図11iの流体サンプル輸送装置の部分背面図。
【図12a】薄い箔30の平面図。
【図12b】薄い箔30の背面図。
【図12c】ベース基板2に取り付けられた薄い箔30の平面図。
【図12d】ベース基板2に取り付けられた薄い箔30の背面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体サンプルを処理、制御及び/又は検出するための、低減された死容積をもつ流体サンプル輸送装置であって、
その上面が少なくとも1つの処理、制御及び/又は検出素子を含む基板、
前記基板の前記上面に配置される少なくとも1つのフレキシブル薄膜、
前記フレキシブル薄膜の上への及び/若しくは下への運動を駆動して、流体フローを引き起こし及び/若しくは流体フローを停止させる、少なくとも1つのプランジャ及び/若しくは駆動素子、
前記フレキシブル薄膜の上部外側面又は下部外側面に配置される少なくとも1つのカバープレートを有し、
前記カバープレートは、プランジャ及び/又は駆動素子を受け入れるための少なくとも1つの貫通孔及び/又は切り取り部を有し、前記プランジャ及び/又は駆動素子の運動が、隣接して配置されたフレキシブル薄膜領域のポンプ及び/又はバルブ作用を引き起こして前記基板の上面と前記フレキシブル薄膜の下面との間の流体フローを引き起こし、前記基板上の流体サンプルフローを導くための少なくとも1つのチャネルが、前記フレキシブル薄膜によって時間的に形成される流体サンプル輸送装置。
【請求項2】
少なくとも1つのカバープレートが、流体サンプルがその中を流れることができる時間的薄膜チャネルを形成するために前記フレキシブル薄膜の上への及び/又は下への運動を駆動するための少なくとも1つの駆動素子を受け入れるための少なくとも1つの貫通切り込み部を有する、請求項1に記載の流体サンプル輸送装置。
【請求項3】
少なくとも1つの上面要素及び/又はカバープレートが下面にチャネル状の凹部を有し、時間的チャネルがフレキシブル薄膜によって形成される時までに、前記フレキシブル薄膜の上面が前記チャネル状の凹部にかみ合う、請求項1又は請求項2に記載の流体サンプル輸送装置。
【請求項4】
少なくとも1つのポートを有し、当該ポートを通して流体サンプル及び/又は試薬が前記基板に挿入される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の流体サンプル輸送装置。
【請求項5】
流体輸送装置の時間的に形成可能なチャネルボリューム全体のうちの死容積が、0%以上10%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満、最も好ましくは0.01%未満である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の流体サンプル輸送装置。
【請求項6】
前記基板がその上面及び/又は下面に、流体サンプル、試薬、検出素子、制御素子、処理素子、廃棄領域、溶菌及び/又は精製領域を受け入れるための少なくとも1つのキャビティ又は穴を有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体サンプル輸送装置。
【請求項7】
前記カバープレートが、プランジャを受け入れるための複数の貫通孔及び/又は駆動素子を受け入れるための複数の貫通切り込み部を有し、前記プランジャは、当該プランジャの下面に隣接した前記フレキシブル薄膜の上下運動を駆動するための圧力若しくは負圧を適用するのに適しており、前記駆動素子は、当該駆動素子の下面に隣接した前記フレキシブル薄膜の上下運動を駆動するための圧力若しくは負圧を適用するのに適している、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の流体サンプル輸送装置。
【請求項8】
前記フレキシブル薄膜が、1μmから500μm、好ましくは10μmから300μm、最も好ましくは50μmから200μmの厚さを持つ請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の流体サンプル輸送装置。
【請求項9】
少なくとも1つの処理、制御及び/又は検出素子が、流体サンプルの温度制御用の電子装置、流体サンプル及び/若しくは試薬の加熱若しくは冷却用の電子装置、流体サンプルの特性を検知若しくは変更する電子装置から成るグループから選択される電子装置であり、好ましくは、電極、センサ、トランスデューサ、光学ベースの装置、音響ベースの装置、電場ベースの装置及び/若しくは磁場ベースの装置から選択される電子装置である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の流体サンプル輸送装置。
【請求項10】
前記基板がベース基板を有し、当該ベース基板の上面が少なくとも1つの薄い箔によって覆われている、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の流体サンプル輸送装置。
【請求項11】
卵黄、血、血清及び/若しくは血漿のような生物学的流体の分析を含む、化学的、診断的、医学的及び/若しくは生物学的分析、
水、溶解された土壌抽出物及び溶解された植物抽出物の分析を含む環境分析、
化学的生産物、特に色素溶液若しくは反応溶液の分析を含む、反応溶液、分散及び/若しくは製剤分析、並びに/又は
品質保護分析、
のための、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の流体サンプル輸送装置の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図11e】
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【図11f】
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【図11g】
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【図11h】
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【図11i】
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【図11j】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【公表番号】特表2009−535636(P2009−535636A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508560(P2009−508560)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051475
【国際公開番号】WO2007/125468
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】