説明

流体供給システム

【課題】純度や清浄度を高度に維持・管理された流体を各ユースポイントに安定して供給することができる流体供給システム、とくに超臨界流体供給システムを提供する。
【解決手段】流体の常時循環系と、該流体を臨界圧力以上にすることが可能な加圧手段および/または臨界温度以上にすることが可能な加熱手段と、常時循環系から必要に応じてユースポイントに流体を供給する供給系と、を有することを特徴とする流体供給システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造(表面)等を有する被処理体を処理するユースポイントにおける装置(例えば、洗浄装置、乾燥装置、剥離装置など)へ、所定の流体(例えば、超臨界流体など)を供給するシステムに関し、特に、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)製造工程などの高清浄度が求められる(精密洗浄が求められる)場合に好適な、超臨界流体等の供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶ディスプレイなどの製造工程では、微細構造(表面)を有する被処理体を処理する工程が繰り返される。ウエハや基板など被処理体表面の汚染物を除去し、高度な清浄度を達成、維持することは製品の品質保持や歩留まり向上にとって重要であるため、洗浄処理の工程は必要不可欠でありその回数は多い。従来、洗浄工程で使用される最も一般的な洗浄装置は、洗浄媒質として(超)純水や、酸・アルカリ水溶液、有機溶剤などの薬液を利用したウェット洗浄装置である。また、洗浄装置に供給される(超)純水や薬液には高純度が要求される。半導体デバイス製造工場に供給する超純水の要求水質の一例として、抵抗率が18.2MΩ・cm以上、0.05μm以上の微粒子数1個/mL以下、TOC1μg/L以下、メタル5ng/L以下といった高純度の超純水が要求されている(例えば、特許文献1)。更に、デバイスの高度化、高集積化、微細化などが進むにつれ、要求水質は厳しくなる傾向にある。また、薬液についても同様に高純度が要求されている。
【0003】
近年、半導体デバイスをはじめとする被処理体の高度化、高集積化、微細化などが更に進むにつれて、従来の(超)純水や薬液を用いた洗浄、乾燥といったウェット洗浄処理の限界が指摘されはじめており、これを克服するため低粘性、低表面張力等の特徴をもつ超臨界流体、特に超臨界二酸化炭素を使用した洗浄処理装置が注目されている。超臨界流体とは、物質固有の臨界温度及び臨界圧力を超えた領域にある流体を指す。この超臨界流体は、密度が液体に近いが、低粘度・高拡散性で気体のような挙動を示し、浸漬力に優れ、汚れ成分を拡散しやすい性質があり、微細構造(表面)を有する被処理体を洗浄処理するのに適している。また、洗浄後に温度と圧力を常温常圧に戻すことで、乾燥が瞬時に行われる特徴がある。
【0004】
このような超臨界流体の媒質として採用される物質(材料)としては、二酸化炭素、亜酸化窒素、亜硫酸、エタン、プロパン、プロン等があるが、二酸化炭素は、不燃性、無害で、臨界温度が31℃、臨界圧力が7.4MPaと取り扱いが容易であるので好ましい(例えば、特許文献2、3)。
【0005】
しかし、従来の超臨界流体(例えば、超臨界二酸化炭素)の純度や清浄度は十分に管理されていない、あるいは十分に配慮されていないため、洗浄媒質である超臨界流体中の不純物が被処理体表面に付着し、逆に汚染されてしまう懸念がある。特に、半導体デバイスなど被処理体表面の極微量の汚染物や清浄度が製品の品質保持や歩留まりに大きく影響するような精密洗浄を行う場合、洗浄処理に伴う逆汚染を抑制・防止することが重要となる。
【0006】
近年のデバイスの高度化、高集積化、微細化の進行によって、従来では問題とされなかったレベルの不純物が問題視されるようになっており、不純物の低減、クリーン度の向上がますます重要になっている。従来のウェット洗浄装置で使用される超純水の要求水質が厳しくなっているのもこうしたことが背景にある。
【0007】
超臨界流体を用いた洗浄等の処理装置は、従来のウェット洗浄処理装置では適用困難な被処理体(例えば、最新又は次世代デバイス等)の処理装置としての位置付けもあるので、ここで使用される超臨界流体の純度や清浄度は極めて高度に維持、管理される必要がある。
【0008】
微粒子汚染は、製品の歩留まりに大きな影響を与える(例えば、ショート、断線等)。そのため、清浄度を維持・管理する上で重要な項目である。汚染源は、原料(二酸化炭素であれば、ボンベやタンクに充填された液化CO2 やCO2 ガス)に由来するもの、供給装置に由来するもの、洗浄装置や洗浄工程(操作)に由来するものなど様々である。
【0009】
例えば特許文献4に記載の技術では、液化二酸化炭素タンクから供給された洗浄媒質である二酸化炭素を、昇圧ポンプで昇圧し、加熱器で加熱し超臨界二酸化炭素として、使用点である洗浄室へ供給し、被洗浄物の洗浄が行われる。洗浄で使用された二酸化炭素は超臨界流体の状態のままフィルターで濾過されて冷却器で冷却された後、再度昇圧ポンプと加熱器に供給され再利用される。
【0010】
これに対し、特許文献5には、洗浄室の後に、洗浄で使用された後の二酸化炭素を気化室で超臨界状態から気体状態に変化させ、気体状態の二酸化炭素をフィルターで濾過し、液化室で気体状態から液体状態に変化させ、昇圧、加熱して超臨界二酸化炭素として再利用する洗浄方法及び洗浄装置が提案されている。
【0011】
また、特許文献3には、洗浄槽に循環経路を設け、洗浄中に洗浄媒質である超臨界流体を循環する洗浄装置が提案されている。また、この循環経路に濾過フィルターを設置することが提案されている。
【0012】
上記3つの公報は、洗浄室を含む循環系とその循環経路上にフィルターを有する点では共通しており、フィルター濾過による微粒子低減効果はある。しかし、どれも循環経路に洗浄室を含んでいるため、被処理体の出し入れ時に昇圧ポンプのON/OFFを頻繁に行う必要がある。ポンプのON/OFF時の大きな振動や衝撃により、多くの発塵がある(微粒子が発生する)。ポンプの後段にフィルターが設置されている場合は、フィルターでの捕捉も可能であるが、定常運転時に比べて微粒子がリークする確率は高まる。また、ポンプで発生した振動や衝撃が配管を伝わり、配管やバルブ内表面や、フィルター、洗浄室内面などでの発塵が発生しやすく、ポンプの後段にフィルターが設置されている場合でも、微粒子汚染の可能生が高い。
【0013】
一方、特許文献2及び特許文献6には、洗浄室(容器/槽)のバイパスラインを設置し、洗浄容器の開放中(被洗浄体の出し入れ中)や、洗浄装置の起動時や全停止中に、超臨界流体をバイパスラインを介して循環運転することが提案されている。これによって、次の始動時間を早めることができ、超臨界流体の供給側を洗浄装置と無関係に単独で運転することができる利点が挙げられている。しかし、洗浄室に超臨界流体の供給を開始または停止する際、バイパスラインの切り替え(弁の開閉)時に超臨界流体製造供給部(回収部を含む)の運転状況(圧力、流量など)が瞬間的に変化して、発塵がしやすい。この理由は、上述と同様に、振動や衝撃の発生に起因する。また、この洗浄室バイパスラインは、後段の分離槽や濾過器などの二酸化炭素の回収部に接続されている。回収部は、被洗浄体(表面)から除去した不純物(汚染物)を含む二酸化炭素を導入して、不純物と二酸化炭素を分離・精製して再利用する目的で設置される。すなわち、回収部内には少なくとも被洗浄体(表面)から除去される不純物が含まれている。一方、パイパスラインを通る二酸化炭素は、被洗浄体(表面)から除去される不純物を含んでおらず、洗浄室を通る二酸化炭素に比べて清浄度は高い。しかし、パイパスラインを通る相対的に清浄度の高い二酸化炭素は、回収部に入った時点で清浄度が低下し、再処理されてから再利用される。つまり、バイパスライン中ではきれいな二酸化炭素を、手間とコストがかかり、汚染のリスクがある回収部にわざわざ導入して再処理するといった問題がある。更に、バイパスラインの切り替え(弁の開閉)時には、回収部の運転状況(圧力、流量など)も瞬間的に変化して、分離槽での分離不良や発塵がしやすくなるといった問題がある。
【特許文献1】特開2004−267864号公報
【特許文献2】特開昭63−179530号公報
【特許文献3】特開平8−206485号公報
【特許文献4】特開平5−47732号公報
【特許文献5】特開平7−284739号公報
【特許文献6】特開平5−226311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、純度や清浄度を高度に維持・管理された超臨界流体を含む流体(例えば、超臨界二酸化炭素)を製造し、ユースポイントのある処理装置へ、安定して供給することができる流体供給システム、とくに超臨界流体供給システムを提供することを目的とする。特に、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、MEMS製造工程などの高清浄度が要求される精密洗浄装置へ、高清浄度の超臨界流体を製造供給するのに適した流体供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る流体供給システムは、流体の常時循環系と、該流体を臨界圧力以上にすることが可能な加圧手段および/または臨界温度以上にすることが可能な加熱手段と、前記常時循環系から必要に応じてユースポイントに流体を供給する供給系と、を有することを特徴とするシステムからなる。該流体としては気相または液相または気液混合相あるいは超臨界相が挙げられる。
【0016】
この流体供給システムにおいては、上記常時循環系に前記流体の貯槽を設けておくことができる。
【0017】
また、上記常時循環系は、ユースポイントに供給されなかった残余の流体を前記貯槽に戻す循環系に構成することができる。また、上記常時循環系は、ユースポイントへの前記供給系以前で分岐されたリターン系を介して前記流体を前記貯槽に戻すことが可能な循環系に構成することもできる。さらに、上記常時循環系内に、該流体を臨界圧力以上にすることが可能な加圧手段および/または臨界温度以上にすることが可能な加熱手段が設けられている構成とすることもできる。
【0018】
また、上記常時循環系は、上記加圧手段および/または加熱手段に加え、減圧手段および/または冷却手段も設けられている構成とすることができる。例えば、上記流体が、この減圧手段および/または冷却手段を経た後気相および/または液相にて前記貯槽に戻される構成とすることができる。
【0019】
なお、加圧手段および加熱手段の両方を設ける場合は、加圧手段、加熱手段の順に設けることが好ましく、減圧手段および冷却手段の両方を設ける場合は、冷却手段、減圧手段の順に設けることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る流体供給システムにおいては、前記流体のユースポイントへの供給系に、流体の供給を制御するための弁が設けられていることが好ましい。
【0021】
また、上記常時循環系および上記ユースポイントへの供給系の少なくともいずれかの位置に、前記流体の精製手段が設けられている構成とすることができる。精製手段は、少なくとも濾過手段を含んでいる構成とでき、濾過手段には例えば膜濾過手段を用いることができる。
【0022】
さらに、本発明に係る流体供給システムにおいては、前記ユースポイントに供給された流体の少なくとも一部を処理して前記常時循環系に戻す回収系が設けられている構成とすることができる。この処理は、膜濾過、蒸留、モレキュラーシーブ、シリカゲル、ポーラスビーズ等の吸着剤、二酸化炭素分離膜のうち少なくとも一つの処理であることが好ましい。
【0023】
このような本発明に係る流体供給システムにおける前記流体としては、例えば、その主成分が二酸化炭素からなる流体を用いることができ、被処理体の洗浄等に供することができる。
【0024】
上記本発明に係る流体供給システムでは、該流体供給システムに、洗浄装置(洗浄槽)等を介さない循環経路が設けられ、該循環系は常に流体を流すことのできる常時循環系に構成される。そして、「所定の流体の供給能力=洗浄装置等のユースポイントへの供給量(使用量)+残余の循環量(リターン量)」とし、最大使用量を超える供給能力でこの流体供給システムを定常的な安定運転とし、常に高清浄度の所定の流体、例えば超臨界流体を供給できるようにしておく。使用量の時間的な増減は基本的にリターン量の増減で吸収される。流体のリターン量は使用量の増減に伴う時間的な増減があるが、流体の供給系への影響はほとんどない。更に、循環系での精製処理を加えることによって、常時循環系には常に清浄な所定の流体が循環され、その常時循環系から必要に応じた量だけユースポイントに供給される流体も、常時望ましい清浄な状態に保たれることになる。
【0025】
また、超臨界流体等の流体供給システムの常時循環系から分岐したライン上に、洗浄装置等のユースポイントへの流体の供給を制御するための弁を設けた構成の場合、洗浄装置等への供給は、必要なとき必要なだけその弁を開ければよいことになる。弁の開閉操作や他の洗浄装置での使用状況に関わらず、一定圧力、一定温度の超臨界流体等の流体が供給できるように、後述の実施態様に示す如く、圧力調整弁や加熱器(又は冷却器の併用)を制御することが好ましい。特に循環系からの圧力差(ΔP)で流体を供給・制御することが好ましく、例えば、2次圧調整弁→ワーク槽(チャンバー)→ニードル弁(流量調整弁)→1次圧調整弁のようなラインとし、ΔP分の流量を流す(チャンバーに供給する)ことができる。供給系にポンプを配置せず、圧力差で流体を供給・制御することで、(ポンプ由来の)微粒子(発塵)などの不純物の発生を防止することなどの利点がある。本発明では、上述の如く、この弁開閉操作自身が製造供給系の超臨界流体等の流体の清浄度に影響することはない。また、弁をクリーンなものにする、弁開閉速度をゆっくりにして、振動や衝撃を少なくするなどして、洗浄装置等へ供給する超臨界流体等の流体の清浄度をより高くする工夫も容易にできる。
【0026】
また、この流体供給システムの常時循環系、又は、ユースポイントへの供給系のどこかに、精製手段(例えば、濾過膜)を設けておくことが好ましい。原料由来の不純物、システム装置内で発生した不純物等は除去しない限り、循環系内を循環し、不純物を含む超臨界流体等の流体が洗浄装置等のユースポイントへと供給されてしまう。原料由来の不純物の低減は、原料メーカーの努力によるところも大きいが、システム装置からの不純物は、極力発生させない、発生した場合は除去することが重要である。好ましくは、原料(例えば、二酸化炭素)の補給系、循環系、供給系にそれぞれ精製手段を設ける。補給系では、原料メーカーから運ばれた容器(ボンベやローリー)由来の不純物を除去する。微粒子の除去については、気体の方が効果的に行えるので、気化→精製(濾過)→液化とすることが好ましい。循環系については、ポンプの出口付近でリターンする場合と、洗浄装置等のユースポイント付近からリターンする場合がある。ポンプの出口付近でリターンする場合は、循環のエネルギーを抑えることができる点で好ましい。例えば、加熱手段の手前で戻すと、配管距離が短く配管圧損ΔPが少ない、エネルギーロスが少ないなどの利点がある。洗浄装置等のユースポイント付近からリターンする場合は、ユースポイントへの供給が安定するなどの利点がある。いずれの場合もサプライライン上では供給系のユースポイントの近く、および/または循環系の分岐点の近くに精製手段を設置するのが望ましく、リターンライン上では貯槽手前に設置するのが望ましい。また、循環系のリターンラインでは、微粒子の除去効果の点からは、気体状態にしてから処理することが好ましい(例えば二酸化炭素の場合:気化→精製(ろ過)→液化の順)。循環系には常に流体を流し精製する。
【0027】
使用後の流体(例えば、二酸化炭素)を分離精製して回収再利用する手段を設けることも好ましい。但し、上述の循環系に設置する精製手段とは別個独立に設けることが好ましい。つまり、回収再利用は地球環境にとって好ましいが、高い純度や清浄度の維持・管理が難しいので、上述の循環系とは別に用意するのである。回収した二酸化炭素等の品質に問題があった場合は、直ちに排気系で処分することが好ましい。
【0028】
なお、上記精製の操作に関しては、濾過膜を中心に、微粒子の管理について述べたが、その他、水分、有機物、メタル、O2 ガス、N2 ガス等の不凝縮性ガスなどの不純物についても同様な考え方ができる。除去したい不純物に応じて処理(精製)の単位操作を選べばよい。
【0029】
処理(精製)手段としては、例えば二酸化炭素の場合、蒸留で水分、メタル及び蒸気圧の低い有機物を液側に残留・除去させて、二酸化炭素を精製することができる。蒸気圧の高い有機物や不凝縮性ガスは蒸気側(気体側)に除去し、二酸化炭素を精製することができる。蒸留の組み合わせによって、蒸気側と液側の両方を多段で精製することもできる。また、活性炭やモレキュラーシーブ、シリカゲル、ポーラスビーズ等の吸着剤を用いて(除去対象物質や処理条件などによって吸着剤は選定する)、二酸化炭素を精製することができる。さらに、二酸化炭素分離膜(例えば、特許第2086581号)のような分離膜(促進輸送膜)を用いて、二酸化炭素を精製することもできる。さらにまた、脱気操作や抽気操作によって、不凝縮性ガス等の不純物を除去し、二酸化炭素を精製することもできる。
【発明の効果】
【0030】
このように本発明によれば、純度や清浄度を高度に維持・管理された所定の流体、とくに超臨界流体(例えば、超臨界二酸化炭素)を、常にその高清浄度を維持した状態で準備しておき、要求に応じてユースポイントに供給できるようにしたので、ユースポイントの処理装置には、望ましい状態の流体を安定して供給することができるようになる。特に、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、MEMS製造工程などの高清浄度を求められる精密洗浄装置へ、高清浄度の超臨界流体を安定的に製造し供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。但し、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施態様に係る流体供給システム、とくに洗浄用流体としての二酸化炭素(CO2 )を超臨界状態にして各ユースポイントに供給する超臨界流体供給システムを示している。図1において、1は、ボンベや貯槽からなるCO2 源を示しており、CO2 源1では一般に液体CO2 として貯留されている。CO2 源1からのCO2 は、蒸発器(気化器)2で気化された後、フィルター3を通して、本発明における常時循環系4に送られる。常時循環系4では、CO2 源1から供給されてきたCO2 は、凝縮器5で凝縮され、液化または気液2相の状態とされて、CO2 貯槽6に貯留される。
【0032】
CO2 貯槽6に貯留されたCO2 は、本実施態様では、冷却手段としての冷却器7で冷却された後、ポンプ8により循環系4内を常時循環される。このポンプ8は、本発明で言う加圧手段を兼ねている。ポンプ8からのCO2 は、本実施態様では、流体精製手段、とくに濾過手段としてのフィルター9で濾過された後、加熱手段としての加熱器10で加熱されるようになっている。濾過手段としてのフィルター9は、膜濾過手段からなることが好ましい。これら加圧手段としてのポンプ8による加圧および加熱器10による加熱により、系内のCO2 を超臨界状態にすることが可能になっている。
【0033】
超臨界状態にされたCO2 は、再び、流体精製手段、とくに濾過手段としてのフィルター11で濾過された後、常時循環系4の分岐部に接続された流体供給系12により、必要に応じて必要な量だけ、各ユースポイントにある洗浄装置等のチャンバー13に供給される。この供給系12には、流体の供給を制御する弁14が設けられており、流体精製手段、とくに濾過手段としてのフィルター15を通して各チャンバー13に流体が供給されるようになっている。図示例では、流体供給系12は2系統のみ示してあるが、任意の数だけ設けることが可能である。
【0034】
常時循環系4内において、各ユースポイントに供給されなかった残余の超臨界CO2 は、常時循環系4のリターンラインを介して再びCO2 貯槽6に戻され、常時循環される。気相状態、気液混合相状態の場合は、凝縮器5を介して、図示するラインを通してCO2 貯槽6に戻すのが好ましく、液相状態の場合は、凝縮器5を介さずに、図示していないラインを通して直接CO2 貯槽6に戻すのが好ましい。
【0035】
超臨界CO2 を製造するための初期供給状態に戻すために、本実施態様では、次のような流体温度・圧力制御系16が介装されている。すなわち、循環されてきた超臨界CO2 を冷却器17で冷却し、圧力調整弁18で圧力を調整した後、一旦蒸発/分離器19で蒸発させる。また、必要に応じて不要な流体をドレイン20、排気21として系外に排出する。蒸発/分離器19により気液2相の状態とされた流体の気体相がフィルター22で、液体相がフィルター23で、それぞれもしくはどちらか一方で濾過された後、圧力調整弁24で圧力が調整され、しかる後に上述の如く、CO2 貯槽6に戻される。高い精製を必要としない場合、精製手段である流体温度・圧力制御系16の蒸発/分離器19および/またはフィルター22、23を省略してもよい。
【0036】
上記常時循環系4におけるリターンラインは、破線ラインで示すように、各ユースポイントへの供給のための分岐部以前で、リターン、循環させてもよい。図示例では、フィルター9後加熱器10前の位置から圧力制御系25を介して、CO2 貯槽6に流体を戻すようにしている(ラインL)。このようにすれば、前述の如く、循環のエネルギーを小さく抑えることができる。つまり、配管距離を短くして圧損ロスを抑え、加熱器10手前から戻すことによりエネルギーロスも小さく抑えることが可能になる。なお、圧力制御系25は、圧力調整弁を介して直接CO2 貯槽6に戻すのが好ましく、具体的構成を省略した状態で図示してあるが、流体温度・圧力制御系16と同等の機器が配置された系統に構成されていてもよい。
【0037】
図2は、本発明の別の実施態様に係る超臨界CO2 供給システムを示している。本実施態様においては、図1に示した実施態様に比べ、各ユースポイントにおけるチャンバー13から使用済み、あるいは使用に供されなかったCO2 を回収ライン31を介して回収するようにした構成が付加されている。回収されるCO2 は、前記同様、CO2 貯槽6に戻されるようになっており、この回収ライン31に、前記同様の流体温度・圧力制御系32が介装されている。すなわち、回収されてきたCO2 を冷却器33で冷却し、圧力調整弁34で圧力を調整した後、一旦蒸発/分離器35で蒸発させるとともに、必要に応じて不要な流体をドレイン36、排気37として系外に排出する。回収系(部)のCO2 には、被洗浄体(表面)から除去された不純物が含まれる。蒸気圧の低い不純物であれば、蒸発/分離器35の液側にたまるので、ドレイン36から系外に排出する。蒸気圧の高い不純物であれば、蒸発/分離器35の気体側にたまるので、排気37から系外に排出する。そして、気体相を回収するときはフィルター38、液体相を回収するときはフィルター39で濾過され回収される。蒸発により気液2相の状態に分離された流体の気体相がフィルター38で、液体相がフィルター39で、それぞれ濾過された後、圧力調整弁40で圧力が調整され、しかる後に上述の如く、CO2 貯槽6に戻されて回収されるようになっている。回収したCO2 に問題がある場合、ドレイン36および/または排気37より系外に排出する。
【0038】
図1、図2に示したいずれの実施形態においても、常時循環系4においてCO2 流体が常時循環され、常時清浄な超臨界CO2 が製造されているので、この清浄な超臨界CO2 は、弁14の開閉操作により、必要に応じて必要な量だけ、清浄な状態を維持したまま、所望のユースポイントに供給されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る流体供給システムは、所定の状態で清浄な流体を必要に応じて必要な量だけ供給することが要求されるあらゆる用途に適用でき、とくに、超臨界CO2 等の超臨界流体を各ユースポイントに供給する、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、MEMS製造工程などの高清浄度の精密洗浄が求められる、超臨界流体の製造・供給システムに適用して好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施態様に係る流体供給システムとしての超臨界CO2 供給システムの概略構成図である。
【図2】本発明の別の実施態様に係る流体供給システムとしての超臨界CO2 供給システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0041】
1 CO2
2 蒸発器(気化器)
3 フィルター
4 常時循環系
5 凝縮器
6 CO2 貯槽
7 冷却器
8 ポンプ
9 フィルター
10 加熱器
11 フィルター
12 流体供給系
13 チャンバー
14 弁
15 フィルター
16 流体温度・圧力制御系
17 冷却器
18 圧力調整弁
19 蒸発/分離器
20 ドレイン
21 排気
22 フィルター
23 フィルター
24 圧力調整弁
25 圧力制御系
31 回収ライン
32 流体温度・圧力制御系
33 冷却器
34 圧力調整弁
35 蒸発/分離器
36 ドレイン
37 排気
38 フィルター
39 フィルター
40 圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の常時循環系と、該流体を臨界圧力以上にすることが可能な加圧手段および/または臨界温度以上にすることが可能な加熱手段と、前記常時循環系から必要に応じてユースポイントに流体を供給する供給系と、を有することを特徴とする流体供給システム。
【請求項2】
前記常時循環系に前記流体の貯槽が設けられている、請求項1に記載の流体供給システム。
【請求項3】
前記常時循環系が、前記ユースポイントに供給されなかった残余の流体を前記貯槽に戻す循環系に構成されている、請求項2に記載の流体供給システム。
【請求項4】
前記常時循環系が、前記ユースポイントへの前記供給系以前で分岐されたリターン系を介して前記流体を前記貯槽に戻すことが可能な循環系に構成されている、請求項2に記載の流体供給システム。
【請求項5】
前記常時循環系内に、該流体を臨界圧力以上にすることが可能な加圧手段および/または臨界温度以上にすることが可能な加熱手段が設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の流体供給システム。
【請求項6】
前記常時循環系に、減圧手段および/または冷却手段が設けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の流体供給システム。
【請求項7】
前記流体が、前記減圧手段および/または前記冷却手段を経た後気相および/または液相にて前記貯槽に戻される、請求項6に記載の流体供給システム。
【請求項8】
前記流体のユースポイントへの供給系に、流体の供給を制御するための弁が設けられている、請求項1〜7のいずれかに記載の流体供給システム。
【請求項9】
前記常時循環系および前記ユースポイントへの供給系の少なくともいずれかの位置に、前記流体の精製手段が設けられている、請求項1〜8のいずれかに記載の流体供給システム。
【請求項10】
前記精製手段が、少なくとも濾過手段を含んでいる、請求項9に記載の流体供給システム。
【請求項11】
前記濾過手段が膜濾過手段からなる、請求項10に記載の流体供給システム。
【請求項12】
前記ユースポイントに供給された流体の少なくとも一部を処理して前記常時循環系に戻す回収系が設けられている、請求項1〜11のいずれかに記載の流体供給システム。
【請求項13】
前記処理が、膜濾過、蒸留、モレキュラーシーブ、シリカゲル、ポーラスビーズ等の吸着剤、二酸化炭素分離膜のうち少なくとも一つの処理である、請求項12に記載の流体供給システム。
【請求項14】
前記流体の主成分が二酸化炭素からなる、請求項1〜13のいずれかに記載の流体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−326429(P2006−326429A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151051(P2005−151051)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】