説明

流体制御弁

【課題】 流体制御弁を高温の圧力流体を供給する流体供給源と接続する場合に、外部に熱交換器を設けなくても、部材の熱膨張による影響がなく、圧力や流量を精度よく制御できる流体制御弁を提供することである。
【解決手段】 ボディ1に、弁部材11,13を組み込むとともに、この弁部材11,13に対して圧力流体を導く流入ポート7と、弁部材11,13によって圧力もしくは流量を制御された流体を流出させる流出ポート8と、流体供給源からの圧力流体を導く導入ポート6とを設け、上記導入ポート6と流入ポート7とを接続する冷却用迂回路9を、上記弁部材よりも外側におけるボディ1内に設ける。そして、この冷却用迂回路9を通過する過程で、高温の圧力流体がボディ1外の空気と熱交換して冷却されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高温流体を制御するための流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高温流体を制御する流体制御弁は、流体供給源と当該制御弁の流入ポートとの接続過程に、高温流体を冷却するための熱交換器を必要としていた。なぜならば、高温流体を当該制御弁の流入ポートに直接導くと、流体の高温の作用でポペットやシート部等が熱膨張して、それらの寸法に狂いが生じてしまうからである。
なお、制御対象である高温流体としては、例えば、燃料電池用の水素ガスが考えられる。この水素ガスは、水素吸蔵合金から放出されるが、水素吸蔵合金は、低温になると水素の放出能力が落ちてしまう性質がある。そこで、水素吸蔵合金から水素ガスを効率的に放出させるためには、水素吸蔵合金の加熱が不可欠である。この加熱温度は、合金の種類によって異なるが、現実には、80℃〜300℃に加熱して用いている。このように加熱された水素吸蔵合金から放出される水素は当然高温となる。
【0003】
このような高温の水素ガスの圧力を必要な圧力まで減圧したり、あるいはその流量を調整したりしようとすると、当該流体制御弁の構成部品は耐熱材料で構成しなければならない。また、部品を耐熱部材で構成したとしても、当該流体制御弁の各構成部品が高温で膨張してしまい、流体の圧力や流量を正確に制御できないという問題が発生する。そのため、実際には、高温の流体を供給する流体供給源と、流体制御弁との間に、上記したように熱交換器を設けて、流体供給源側の高温流体を冷却してから流体制御弁に導くようにしていた。
【特許文献1】特開2007−148465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来は、高温流体を制御する流体制御弁を用いるときには、流体供給源と流体制御弁との間に、冷却用の熱交換器を設けなければならなかったので、その熱交換器の分だけシステムが大きくなってしまうという問題があった。
この発明の目的は、上記熱交換器を不要にした流体制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、ボディに、流入ポートと流出ポートとを形成するとともに、この流入ポートから流出ポートへ流れる流体の圧力もしくは流量を制御する弁部材を上記ボディに組み込んだ流体制御弁を前提とする。
上記流体制御弁を前提とし、第1の発明は、上記ボディには、流体供給源からの圧力流体を導く導入ポートを設け、この導入ポートと上記流入ポートとを連通させる冷却用迂回路を、上記弁部材よりも外側におけるボディ内に設けた点に特徴を有する。
【0006】
第2の発明は、上記冷却用迂回路を、ボディ外周に沿って螺旋状に形成した点に特徴を有する。
第3の発明は、導入ポートと流入ポートとの間を接続する複数の冷却用迂回路を形成した点に特徴を有する。
第4の発明は、上記ボディの外周に、放熱手段を設けた点を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、流体制御弁のボディに圧力流体の冷却用迂回路を形成したので、流体供給源から供給される高温の圧力流体が、冷却用迂回路を通過する間に、ボディを介して外部の空気と熱交換することができる。このように、高温の圧力流体が冷却用迂回路を通過する間に熱交換により冷却されるので、減圧弁の外部に熱交換器を設けなくても、流体制御弁の流入ポートには冷却された流体が流入することになる。そのため、高温の圧力流体によって、弁部材などの部品が熱膨張して寸法が狂ってしまうことがなくなる。
従って、圧力流体の圧力や流量を精度よく制御するために、熱交換機を必要としない。つまり、システムが大型化しない。
また、流体制御弁において、弁部材などの部品を構成する材料の耐熱性のレベルを下げることができるので、材料選択の自由度が高まる。そのため、安価な材料を選択して、材料コストを下げることもできる。さらに、樹脂など、加工しやすい材料を用いることにより、加工コストを下げることも可能になる。
【0008】
第2の発明では、螺旋状にすることによって、冷却用迂回路の長さを長くできる。そのため、高温の圧力流体がボディを介して熱交換する放熱面積が大きくなり、圧力流体を十分冷却できる。
第3の発明によれば、冷却用迂回路の数を多くして、高温の圧力流体の放熱面積を大きくすることができ、圧力流体を十分に冷却できる。
第4の発明によれば、冷却用迂回路を通過する圧力流体と外部空気との熱交換効率をさらに高めることができる。熱交換効率を高くできる分、冷却用迂回路を短くすることもでき、流量制御弁を小型化することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1、図2に、この発明の第1実施形態を示す。
この第1実施形態は、内部に円柱状の空間を有する第1本体2、第2本体3、蓋部4及び基台5によって、ボディ1を構成するとともに、ボディ1内に弁部材を組み込み、その作用によって、流体供給源から供給される圧力流体を減圧してから流出させるための減圧弁である。
そして、上記蓋部4には、図示しない流体供給源から供給される高温の圧力流体を導く導入ポート6を開口させるとともに、上記第2本体3には、上記導入ポート6から導入される一次流体を、減圧機構に導く一次側ポート7と、減圧された流体を排出する二次側ポート8とを形成している。これら一次側ポート7がこの発明の流入ポートであり、二次側ポート8がこの発明の流出ポートである。
【0010】
そして、蓋部4に形成した導入ポート6と上記第2本体3に形成した一次側ポート7とを、後で詳しく説明する複数の冷却用迂回路9を介して接続している。
また、第2本体3において、一次側ポート7と二次側ポート8との間には、スプリング室3aとシート部10を形成し、このシート部10を開閉する位置にポペット11を組み込んでいる。このポペット11は、上記スプリング室3a側に位置するポペット部11aと、このポペット部11aの両側にポペット部11aと一体的に設けた第1ロッド部11bと第2ロッド部11cとを備えている。そして、上記基台5側の第1ロッド部11bの先端側を、基台5に形成した支持凹部5a内に摺動自在に挿入し、この第1ロッド部11bと反対側の第2ロッド部11cを上記シート部10から第1本体2側に向かって突出させている。また、上記スプリング室3aでは、ポペット部11aと基台5との間にスプリング12を介在させ、このスプリング12によってポペット11にシート部10を閉じる方向の弾性力を作用させている。
【0011】
さらに、ボディ1内であって、上記ポペット11の第2ロッド部11cの先端側には、第1、第2本体2,3の内周を摺動して軸方向に移動可能なピストン13を組み込み、このピストン13と第1本体2のスプリング室2aの端面2bとの間にスプリング14を介在させている。そして、このスプリング14によって、ピストン13にポペット11方向への弾性力を作用させている。また、このピストン13の外周にはシール部材15を設け、スプリング室2aに圧力流体が流入しないようにしている。
なお、上記ピストン13側のスプリング14の弾性力を、ポペット11側のスプリング12より大きくし、ポペット11及びピストン13に流体圧が作用していないとき、ポペット11が、シート部10より、図1の下方へ移動し、シート部10を全開状態にするようにしている。但し、上記スプリング14の弾性力を、図示しない調整手段によって調整可能にすることもできる。
【0012】
このように構成した減圧弁の作用は次のとおりである。
上記ポペット11とピストン13とには、図1において上方に向かう力として、ポペット11側のスプリング12の弾性力、一次側ポート7から導入される一次圧及び二次側ポート8の二次圧が作用し、図中下方に向かう力として、ピストン13側のスプリング14の弾性力が作用する。従って、これらの力のバランスによって、上記ポペット11及びピストン13が上下方向に移動してシート部10の開度を調整する。
【0013】
例えば、一次圧が大きい場合、ポペット11の上向きの力、すなわちシート部10の開度を小さくする方向の力が大きくなる。また、シート部10の開口から二次側ポート8へ流体が流れているとき、二次側ポート8の二次圧が、ピストン13に対して上向きの力として作用する。そこで、上記二次圧が高くなって、上向きの力がスプリング14の弾性力より大きくなると、上記ピストン13がスプリング14を撓ませて上方へ移動する。
【0014】
一方、上記両スプリング12,14の弾性力は対向する方向に作用するとともに、この減圧弁の作動中には、ポペット11に上向きの力として作用する一次圧の方が上記二次圧よりも高いため、ポペット11の第2ロッド部11cの先端はピストン13に押し付けられ、ポペット11はピストン13と一体的に移動するようになっている。そこで、上記のように、二次圧が高くなってピストン13が上昇すると、ポペット11もピストン13に追従して上昇することになる。ポペット11が上昇すれば、シート部10の開度が小さくなるので、二次圧の上昇を抑えることになる。
反対に、二次圧が低くなって、ピストン13に作用する上向きの力が小さくなれば、スプリング14の弾性力の作用によってピストン13が押し下げられる。このとき、ポペット11はピストン13によって押し下げられるので、ポペット部11aがシート部10から離れて開度を大きくし、二次圧の低下を抑える。
【0015】
このように、ポペット11及びピストン13に作用する力のバランスで、ポペット11が上下することによってシート部10の開度を調整し、二次圧を一定の圧力に保つことができる。つまり、上記ポペット11とピストン13とによって、この発明の弁部材を構成し、この弁部材とシート部10によって減圧機構を構成している。
【0016】
上記のような減圧弁の作用は、従来の減圧弁と同様であるが、この第1実施形態の減圧弁は、上記導入ポート6と一次側ポート7とを接続する複数の冷却用迂回路9を備えている点が特徴である。
この冷却用迂回路9は、図1に示すように、上記導入ポート6に連通する流体室16と第2本体3に形成した一次側ポート7とを接続する通路である。上記流体室16は、ボディ1の蓋部4と第1本体2との間に形成された円盤状の流体室であり、この流体室16の外周に沿って、複数の冷却用迂回路9を形成している(図2参照)。そして、この流体室16の外周に沿って冷却用迂回路9を形成した位置が、この発明の弁部材よりも外側におけるボディ1内に相当する。
そして、図示していないが、上記スプリング室3aには、上記冷却用迂回路9と同数の一次側ポート7を開口させ、上記複数の冷却用迂回路9は、上記流体室16と反対側の端部で、それぞれ一次側ポート7に接続している。
【0017】
このように、上記冷却用迂回路9は、ボディ1において、ポペット11及びピストン13からなる弁部材よりも外壁側に設けられ、導入ポート6から一次側ポート7までに一定以上の距離を保っている。そのため、流体供給源から上記導入ポート6へ供給される高温の圧力流体が、この複数の冷却用迂回路9を通過する間に、ボディ1の外壁を介して外部の空気と熱交換して冷却される。特に、この第1実施形態では、冷却用迂回路9を複数本設けることによって、流体がボディ外壁に接触する放熱面積を大きくするようにして、流体を十分に冷却できるようにしている。
【0018】
そのため、弁部材を構成するポペット11やシート部10の寸法が熱膨張によって変化して、圧力制御に影響を与えることを防止できる。
言い換えれば、上記第1実施形態の減圧弁は、ボディ1に冷却用迂回路9を設けたので、減圧弁のボディ1の外部に、別個に熱交換器を設けなくても、流体供給源から供給される圧力流体の高温の影響を受け難くなり、二次圧を精度よく制御できる。そして、減圧弁の外部に熱交換器を必要としない分、システムを小型化することができる。
【0019】
図3に示す第2実施形態は、冷却用迂回路9を、ボディ1の外周に沿った1本の螺旋状の通路にした減圧弁である。このように、冷却用迂回路9を螺旋状に形成することによって、1本の冷却用迂回路9の長さを長くすることができ、放熱面積を大きくして、冷却用迂回路9を通過する高温の圧力流体を十分に冷却できるようにしている。その他の構成は、上記第1実施形態と同じなので、第1実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を用いている。
また、この第2実施形態の減圧弁としての作用も第1実施形態と同様なので、その説明も省略する。
【0020】
この第2実施形態の減圧弁も、流体供給源から供給された高温の圧力流体は、導入ポート6から一次側ポート7に導入されるまでに螺旋状の冷却用迂回路9を通過し、その間でボディ1外の空気と熱交換する。
従って、流体供給源から高温の圧力流体が導入ポート6に導入されても、ポペット11及びピストン13からなる弁部材が熱膨張の影響を受け難く、二次圧を精度よく制御することができる。そして、減圧弁の外部に熱交換器を必要としない分、システムを小型化することができる。
【0021】
なお、上記螺旋状の冷却用迂回路9は、どのようにして形成してもよいが、例えば、筒状のボディを、外筒と内筒とで構成される二重構造にすることによって形成することができる。具体的には、外筒の内壁に線状の凹部を螺旋状に形成し、この外筒の内壁に外壁が一致する内筒を挿入するか、外壁に螺旋状の凹部を形成した内筒を、凹部を形成していない外筒内に挿入するかして第1本体2及び第2本体3を構成する。あるいは、外筒の内周と内筒の外周の両方に螺旋状凹部を形成し、両者を一致させて、第1本体2及び第2本体3を構成する。このようにすれば、ボディ壁面の肉厚内に螺旋状の冷却用迂回路9を形成できる。
【0022】
そして、上記冷却用迂回路9内を流れる高温の圧力流体と外部空気との熱交換効率を高めるためには、高温の圧力流体がボディ1に接触する放熱面積を大きくする必要がある。そのために、第1実施形態では、冷却用迂回路9の数を多くし、第2実施形態では、1本の冷却用迂回路9の長さを長くしているが、複数の冷却用迂回路9を螺旋状に形成することによって、より放熱面積を大きくすることができる。
また、上記冷却用迂回路9を、ボディ1の外壁側に近づけて形成することも、熱交換効率を高めるために有効である。
【0023】
さらに、ボディ1の外周に、フィンや突起などの放熱手段を設けることによって、熱交換効率をさらに高めることもできる。
なお、この発明の流体制御弁は、上記第1、第2実施形態の減圧弁に限らない。この発明の流体制御弁としては、導入ポートと流入ポートとを弁部材の外側におけるボディ内に設けた冷却用迂回路9によって接続し、弁部材を用いて圧力流体の圧力や流量を制御するものであれば、その他の構造はどのようなものでもよい。
また、上記流体制御弁の制御対象となる圧力流体は、液体でもガスでもよい。例えば、水素吸蔵合金を、水素ガス供給源として用いる場合にも、この発明の流体制御弁を用いれば、水素吸蔵金属を加熱して水素の放出効率を高めながら、燃料電池への供給圧力もしくは流量を正確に制御する際に、冷却用の熱交換器を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態の断面図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】第2実施形態の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ボディ
2 第1本体
3 第2本体
4 蓋部
5 基台
6 導入ポート
7 (流入ポートである)一次側ポート
8 (流出ポートである)二次側ポート
9 冷却用迂回路
10 シート部
11 ポペット
13 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディに、流入ポートと流出ポートとを形成するとともに、この流入ポートから流出ポートへ流れる流体の圧力もしくは流量を制御する弁部材を上記ボディに組み込んだ流体制御弁において、上記ボディには、流体供給源からの圧力流体を導く導入ポートを設け、この導入ポートと上記流入ポートとを連通させる冷却用迂回路を、上記弁部材よりも外側におけるボディ内に設けた流体制御弁。
【請求項2】
上記冷却用迂回路を、ボディ外周に沿って螺旋状に形成した請求項1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
上記導入ポートと流入ポートとの間を接続する複数の冷却用迂回路を形成した請求項1または2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
上記ボディの外周に、放熱手段を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の流体制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−197939(P2009−197939A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41591(P2008−41591)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】