説明

流体噴射装置、流体噴射装置の制御方法および手術装置

【課題】流体を噴射して対象部位を切開または切除する流体噴射装置において、吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止すること。
【解決手段】流体噴射装置1は、初期電圧パルス波形群および定常電圧パルス波形を記憶する波形記憶部31を備えている。そして、流体が吐出される場合、出力増加期間において初期電圧パルス波形群の電圧パルス波形が順に圧電素子401に印加され、その後、出力安定期間において、定常電圧パルス波形が繰り返し圧電素子401に印加される。したがって、流体の吐出が行われる際、低い吐出圧力から徐々に高い吐出圧力に変化するため、吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止することができる。即ち、流体を噴射して対象部位を切開または切除する流体噴射装置において、吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を噴射して対象部位を切開または切除可能な流体噴射装置、流体噴射装置の制御方法および手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織を切開または切除する流体噴射装置として、ポンプ室の容積を圧電素子により変化させて流体の吐出動作を行うマイクロポンプと、マイクロポンプの出口流路に一方の端部が接続され、他方の端部が出口流路の直径よりも縮小された開口部(ノズル)が設けられた接続流路と、接続流路が穿設されマイクロポンプから流動される流体の脈動を前記開口部に伝達し得る剛性を有する接続管と、が備えられ、流体は脈動波群と休止部との繰り返しで流動され、高速で開口部から噴射される流体噴射装置というものが知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1記載の技術によれば、脈動する流体を高速で噴射することが可能であり、その制御も容易である。また、脈動する流体の噴射は手術等において組織の切開能力が高い一方、流体量が少なくてすむため、術野に流体が滞留することが少ない。従って、視認性が向上し、組織の飛散を防ぐ効果があった。
【特許文献1】特開2008−82202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の技術を含め、圧電素子を用いて、流体の収容室(以下、「流体室」と言う。)の容積を変化させ、流体を吐出させる流体噴射装置においては、対象物を切開あるいは切除した場合に、対象物において最初に流体が噴射された部位(以下、「噴射開始点」と言う。)が、以後に流体が噴射された部位よりも深く切開あるいは切除される可能性がある。
これは、吐出されて対象物に当たった流体が、噴射開始点に流れ込むためであると考えられる。
【0004】
したがって、例えば、手術等において、術者が組織を切開する目的でノズルを等速で移動させた場合に、噴射開始点における切開の深さが術者の意図するものより深くなる可能性がある。
このように、流体を噴射して対象部位を切開または切除する従来の流体噴射装置においては、吐出開始時に切開または切除の深さが増大する可能性があった。
本発明の課題は、流体を噴射して対象部位を切開または切除する装置において、吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、第1の発明は、
流体が流入する流体室(例えば、図2の流体室501)と、駆動信号により前記流体室の容積を変更する圧力発生素子(例えば、図2の圧電素子401)を備えた容積変更手段(例えば、図2の圧電素子401およびダイアフラム400)と、前記流体室に連通する入口流路および出口流路と、を有する脈動発生部(例えば、図2の脈動発生部100)と、前記出口流路から流出した流体を噴射する流体噴射口(例えば、図2の流体噴射口212)と、前記入口流路に流体を供給する流体供給手段(例えば、図1の流体容器10およびポンプ20)と、前記圧力発生素子に駆動信号を印加し、前記容積変更手段による前記流体室の容積の変更を制御する制御手段(例えば、図4の制御部30)とを備え、前記制御手段は、流体の吐出開始後、段階的に流体の吐出圧力を増加させることを特徴としている。
このような構成により、流体の吐出開始時に、流体の吐出圧力を徐々に高くすることができるため、流体の吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止することが可能な流体噴射装置を実現することができる。
【0006】
また、第2の発明は、
流体の吐出圧力が異なるものとなる複数の前記駆動信号の波形を記憶する波形記憶手段(例えば、図4の波形記憶部31)を備え、前記制御手段は、前記波形記憶手段に記憶された複数の前記駆動信号の波形を、流体の吐出圧力が異なるものから順に読み出して前記圧力発生素子に印加することを特徴としている。
このような構成により、電圧パルス波形の特性(振幅の変化のさせ方や印加する周波数等)を、波形記憶手段の記憶内容を書き換えることによって容易に変更することができる。
【0007】
また、第3の発明は、
前記制御手段は、前記駆動信号の振幅を異ならせた波形を、振幅の小さい波形から順に前記圧力発生素子に印加することを特徴としている。
このような構成により、波形の振幅が異なる駆動信号によって、流体の吐出圧力を徐々に高くすることができる。
また、第4の発明は、
前記制御手段は、前記駆動信号のスルーレートを異ならせた波形を、スルーレートの小さい波形から順に前記圧力発生素子に印加することを特徴としている。
このような構成により、波形のスルーレートが異なる駆動信号によって、流体の吐出圧力を徐々に高くすることができる。
【0008】
また、第5の発明は、
前記制御手段は、前記駆動信号の周波数が時間の経過に伴って増加する波形を前記圧力発生素子に印加することを特徴としている。
このような構成により、周波数が増加する駆動信号によって、流体の吐出圧力を徐々に高くすることができる。
また、第6の発明は、
前記制御手段は、前記駆動信号の波形間の間隔を時間の経過に伴って縮小させて前記圧力発生素子に印加することを特徴としている。
このような構成により、同一の波形を用いながら、印加する波形の間隔が時間の経過に伴って縮小する駆動信号によって、流体の吐出圧力を徐々に高くすることができる。
【0009】
また、第7の発明は、
流体が流入する流体室と、駆動信号により前記流体室の容積を変更する圧力発生素子を備えた容積変更手段と、前記流体室に連通する入口流路および出口流路と、を有する脈動発生部と、前記出口流路から流出した流体を噴射する流体噴射口と、前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、前記圧力発生素子に駆動信号を印加し、前記容積変更手段による前記流体室の容積の変更を制御する制御手段とを備える流体噴射装置の制御方法であって、流体の吐出開始後、段階的に流体の吐出圧力を増加させる出力増加ステップ(例えば、制御部30が実行する図5の出力増加期間における制御)を含むことを特徴としている。
これにより、流体の吐出開始時に、流体の吐出圧力を徐々に高くすることができるため、流体の吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止することが可能となる。
【0010】
また、第8の発明は、
流体が流入する流体室と、駆動信号により前記流体室の容積を変更する圧力発生素子を備えた容積変更手段と、前記流体室に連通する入口流路および出口流路と、を有する脈動発生部と、前記出口流路から流出した流体を噴射する流体噴射口と、前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、前記圧力発生素子に駆動信号を印加し、前記容積変更手段による前記流体室の容積の変更を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、流体の吐出開始後、段階的に流体の吐出圧力を増加させることを特徴としている。
これにより、流体の吐出開始時に、流体の吐出圧力を徐々に高くすることができるため、流体の吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止することが可能な手術装置を実現することができる。
このように、本発明によれば、流体を噴射して対象部位を切開または切除する装置において、吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明による流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、物体の切断や切除、手術用のウォーターパルスメス等様々に採用可能であるが、以下に説明する実施の形態では、生体組織を切開または切除することに好適な手術装置としての流体噴射装置を例示して説明する。従って、実施の形態にて用いる流体は、水、生理食塩水、薬液等である。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体噴射装置1の概略構成を示す説明図である。図1において、流体噴射装置1は、基本構成として流体を収容する流体容器10と、一定の圧力を発生して脈動発生部100に流体を供給するポンプ20と、流体の噴射を制御する制御部30と、ポンプ20から供給される流体を脈動流動する脈動発生部100と、を備えている。なお、本実施形態において、制御部30とポンプ20とは一体のユニットとして構成され、制御部30と脈動発生部100とは、各種信号を入出力するための信号線によって接続されている。
【0013】
(流体経路の構成)
初めに、流体噴射装置1の流体経路の構成について説明する。
本実施形態において、脈動発生部100は、圧電素子によって発生させた圧力によって流体を噴射する流体噴射ユニットを構成している。なお、流体噴射ユニットは、液体噴射装置1をウォーターパルスメスとして構成した場合、手術等において術者が把持して使用するハンドピースに相当する。
脈動発生部100には、細いパイプ状の接続流路管200が接続され、接続流路管200の先端部には流路が縮小されたノズル211が挿着されている。
なお、接続流路管200を備えることなく、出口流路の2つの端部のうち、流体室とは反対側の端部にノズル211を挿着することも可能である。この場合、より簡素な構成とすることができる。ただし、流体噴射装置1を手術に用いる場合には、接続流路管200を備える構成とし、ハンドピース本体と流体噴射口とが一定の距離を有する構成とすることが好適である。
【0014】
この流体噴射装置1における流体の流動を簡単に説明する。流体容器10に収容された流体は、接続チューブ15を介してポンプ20によって吸引され、一定の圧力で接続チューブ25を介して脈動発生部100に供給される。脈動発生部100には流体室501(図2、参照)と、この流体室501の容積変更手段とを備えており、容積変更手段を駆動して脈動を発生して、接続流路管200、ノズル211を通して流体を高速で噴射する。脈動発生部100の詳しい説明については、図2、図3を参照して後述する。
なお、圧力発生部としてはポンプ20に限らず、輸液バッグをスタンド等によって脈動発生部100よりも高い位置に保持するようにしてもよい。従って、ポンプ20は不要となり、構成を簡素化することができる他、消毒等が容易になる利点がある。
【0015】
ポンプ20の吐出圧力は概ね3気圧(0.3MPa)以下に設定する。また、輸液バッグを用いる場合には、脈動発生部100と輸液バッグの液上面との高度差が圧力となる。輸液バックを用いるときには0.1〜0.15気圧(0.01〜0.15MPa)程度になるように高度差を設定することが望ましい。
なお、この流体噴射装置1を用いて手術をする際には、術者が把持する部位は脈動発生部100である。従って、脈動発生部100までの接続チューブ25はできるだけ柔軟であることが好ましい。そのためには、柔軟で薄いチューブで、流体を脈動発生部100に送液可能な範囲で低圧にすることが好ましい。
また、特に、脳手術のときのように、機器の故障が重大な事故を引き起こす恐れがある場合には、接続チューブ25の切断等において高圧な流体が噴出することは避けなければならず、このことからも低圧にしておくことが要求される。
【0016】
次に、本実施形態による脈動発生部100の構造について説明する。
図2は、本実施形態に係る脈動発生部100の構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は分解図である。なお、図2(a)は、後述する図3におけるA−A’断面図である。
図2において、脈動発生部100には、流体の脈動を発生する脈動発生手段を含み、流体を吐出する流路としての接続流路201を有する接続流路管200が接続されている。
脈動発生部100は、上ケース500と下ケース301とをそれぞれ対向する面において接合され、4本の固定螺子(図示は省略)によって螺着されている。下ケース301は、鍔部を有する筒状部材であって、一方の端部は底板311で密閉されている。この下ケース301の内部空間に圧電素子401が配設される。
【0017】
圧電素子401は、積層型圧電素子であってアクチュエータを構成する。圧電素子401の一方の端部は上板411を介してダイアフラム400に、他方の端部は底板311の上面312に固着されている。
また、ダイアフラム400は、円盤状の金属薄板からなり、下ケース301の凹部303内において周縁部が凹部303の底面に密着固着されている。圧電素子401に駆動信号を入力することで、圧電素子401の伸張、収縮に伴いダイアフラム400を介して流体室501の容積を変更する。
ダイアフラム400の上面には、中心部に開口部を有する円盤状の金属薄板からなる補強板410が積層配設される。
【0018】
上ケース500は、下ケース301と対向する面の中心部に凹部が形成され、この凹部とダイアフラム400とから構成され流体が充填された状態の回転体形状が流体室501である。つまり、流体室501は、上ケース500の凹部の封止面505と内周側壁501aとダイアフラム400によって囲まれた空間である。流体室501の略中央部には出口流路511が穿設されている。
出口流路511は、流体室501から上ケース500の一方の端面から突設された出口流路管510の端部まで貫通されている。出口流路511の流体室501の封止面505との接続部は、流体抵抗を減ずるために滑らかに丸められている。
【0019】
なお、以上説明した流体室501の形状は、本実施形態(図2、参照)では、両端が封止された略円筒形状としているが、側面視して円錐形や台形、あるいは半球形状等でもよく限定されない。例えば、出口流路511と封止面505との接続部を漏斗のような形状にすれば、後述する流体室501内の気泡を排出しやすくなる。
出口流路管510には接続流路管200が接続されている。接続流路管200には接続流路201が穿設されており、接続流路201の直径は出口流路511の直径より大きい。また、接続流路管200の管部の厚さは、流体の圧力脈動を吸収しない剛性を有する範囲に形成されている。
【0020】
接続流路管200の先端部には、ノズル211が挿着されている。このノズル211には流体噴射開口部212が穿設されている。流体噴射開口部212の直径は、接続流路201の直径より小さい。
上ケース500の側面には、ポンプ20から流体を供給する接続チューブ25を挿着する入口流路管502が突設されており、入口流路管502に入口流路側の接続流路504が穿たれている。接続流路504は入口流路503に連通されている。入口流路503は、流体室501の封止面505の周縁部に溝状に形成され、流体室501に連通している。
【0021】
上ケース500と下ケース301との接合面において、ダイアフラム400の外周方向の離間した位置には、下ケース301側にパッキンボックス304、上ケース500側にパッキンボックス506が形成されており、パッキンボックス304,506にて形成される空間にリング状のパッキン450が装着されている。
ここで、上ケース500と下ケース301とを組立てたとき、ダイアフラム400の周縁部と補強板410の周縁部とは、上ケース500の封止面505の周縁部と下ケース301の凹部303の底面によって密接されている。この際、パッキン450は上ケース500と下ケース301によって押し圧されて、流体室501からの流体漏洩を防止している。
【0022】
流体室501内は、流体吐出の際に30気圧(3MPa)以上の高圧状態となり、ダイアフラム400、補強板410、上ケース500、下ケース301それぞれの接合部において流体が僅かに漏洩することが考えられるが、パッキン450によって漏洩を阻止している。
図2に示すようにパッキン450を配設すると、流体室501から高圧で漏洩してくる流体の圧力によってパッキン450が圧縮され、パッキンボックス304,506内の壁にさらに強く押し圧するので、流体の漏洩を一層確実に阻止することができる。このことから、駆動時において流体室501内の高い圧力上昇を維持することができる。
【0023】
続いて、上ケース500に形成される入口流路503について図面を参照してさらに詳しく説明する。
図3は、入口流路503の形態を示す平面図であり、上ケース500を下ケース301との接合面側から視認した状態を表している。
図3において、入口流路503は、上ケース500の封止面505の周縁部溝状に形成されている。
入口流路503は、一方の端部が流体室501に連通し、他方の端部が接続流路504に連通している。入口流路503と接続流路504との接続部には、流体溜り507が形成されている。そして、流体溜り507と入口流路503との接続部は滑らかに丸めることによって流体抵抗を減じている。
【0024】
また、入口流路503は、流体室501の内周側壁501aに対して略接線方向に向かって連通している。ポンプ20(図1、参照)から一定の圧力で供給される流体は、内周側壁501aに沿って(図中、矢印で示す方向)流動して流体室501に旋回流を発生する。旋回流は、旋回することによる遠心力で内周側壁501a側に押し付けられるとともに、流体室501内に含まれる気泡は旋回流の中心部に集中する。
そして、中心部に集められた気泡は、出口流路511から排除される。このことから、出口流路511は旋回流の中心近傍、つまり回転形状体の軸中心部に設けられることがより好ましい。従って、本実施形態において、入口流路503は旋回流発生部である。図3では、入口流路503は平面形状が湾曲されている。入口流路503は、直線で流体室501に連通させてもよいが、狭いスペースの中で所望のイナータンスを得るために、入口流路503の流路長を長くする必要性から湾曲させている。
【0025】
なお、図2に示したように、ダイアフラム400と入口流路503が形成されている封止面505の周縁部との間には、補強板410が配設されている。補強板410を設ける意味は、ダイアフラム400の耐久性を向上することである。入口流路503の流体室501との接続部には切欠き状の接続開口部509が形成されるので、ダイアフラム400が高い周波数で駆動されたときに、接続開口部509近傍において応力集中が生じて疲労破壊を発生することが考えられる。そこで、切欠き部がない連続した開口部を有している補強板410を配設することで、ダイアフラム400に応力集中が発生しないようにしている。
【0026】
また、上ケース500の外周隅部には、4箇所の螺子孔500aが開設されており、この螺子孔位置において、上ケース500と下ケース301とが螺合接合される。
なお、図示は省略するが、補強板410とダイアフラム400とを接合し、一体に積層固着することができる。固着手段としては、接着剤を用いる貼着としても、固層拡散接合、溶接等を採用することが可能であるが、補強板410とダイアフラム400とが、接合面において密着されていることがより好ましい。
【0027】
(制御系統の機能構成)
続いて、流体噴射装置1の制御系統の機能構成について説明する。
本実施形態において、脈動発生部100から流体を吐出させるために圧電素子401に駆動信号が入力される場合、制御部30が流体の吐出開始から徐々に圧電素子401の出力を高めて行き、設定した時間経過後において、一定の出力となるよう制御する。
具体的には、圧電素子401に駆動信号を入力する過程を、流体の吐出開始時から流体の吐出圧力を増加させる出力増加期間と、出力増加期間に続いて一定の吐出圧力で流体を吐出する出力安定期間とによって構成している。
【0028】
図4は、流体噴射装置1の制御系統を示す機能構成図である。
図4において、液体噴射装置1の制御系統は、制御部30は、波形記憶部31と、信号制御部32と、電圧増幅器33とを備えている。
波形記憶部31は、圧電素子の駆動信号(ただし、増幅前の原信号)を表す各種電圧パルス波形を記憶している。
【0029】
図5は、波形記憶部31が記憶している電圧パルス波形の具体例を示す模式図である。なお、波形記憶部31は、デジタル値として電圧パルス波形を記憶しているが、図5においては、説明の便宜のため、アナログ形式で電圧パルス波形を示している。また、ここでは、電圧パルス波形として、負極から正極の順に振幅する正弦波を例として示している。
図5に示すように、波形記憶部31は、出力増加期間の時系列順に、小さい振幅から大きい振幅まで段階的に振幅の大きさを異ならせた複数の電圧パルス波形(以下、「初期電圧パルス波形群」と言う。)と、出力安定期間に対応する1つの電圧パルス波形(以下、「定常電圧パルス波形」と言う。)とを記憶している。初期電圧パルス波形群の振幅は、小さいものから段階的に大きくなり、最大のものが定常電圧パルス波形の振幅より一段小さい値となるように設定されている。
【0030】
なお、上述の通り、図5に示す電圧パルス波形は模式図であり、波形記憶部31の記憶領域には、出力増加期間の時系列に沿って、図5に示す初期電圧パルス波形群の各電圧パルス波形を示す電圧値と、出力安定期間の定常電圧パルス波形を示す電圧値とが、所定時間(サンプリング間隔)毎のデジタル値として記憶されている。
電圧パルス波形をデジタル値として波形記憶部31に記憶しておくことで、初期電圧パルス波形群の特性(振幅の変化のさせ方や印加する周波数等)を、記憶内容を書き換えることによって容易に変更することができる。
【0031】
信号制御部32は、流体噴射装置1全体を制御する機能を有している。具体的には、信号制御部32は、後述する吐出制御処理を実行し、不図示のフットスイッチ等から流体の吐出開始を指示する吐出開始信号が入力されると、吐出開始から出力増加期間内は徐々に吐出圧力を高めていき、出力増加期間が経過した後、出力安定期間となると一定の吐出圧力とする吐出制御を行う。
具体的には、信号制御部32は、吐出開始信号が入力されると、波形記憶部31から初期電圧パルス波形群の各電圧パルス波形と、定常電圧パルス波形とを読み出す。そして、読み出した各電圧パルス波形を示すデジタル信号(増幅前の原信号)を、設定された時系列順に電圧増幅器33に出力する。
【0032】
即ち、信号制御部32は、流体の吐出開始時、初期電圧パルス波形群の各電圧パルス波形を、振幅の小さいものから順に電圧増幅器33に出力し、続いて、定常電圧パルス波形を電圧増幅器33に出力する。その後、信号制御部32は、吐出開始信号が入力されている間、定常電圧パルス波形を繰り返し電圧増幅器33に出力する。
なお、吐出開始信号は、対象部位の切開等を行う際、流体噴射装置1から流体の噴射を開始させるために術者がスイッチを操作して入力する信号である。
電圧増幅器33は、例えばプッシュプル回路を備える増幅器によって構成され、信号制御部32から入力された電圧パルス波形のデジタル信号をアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を増幅して脈動発生部100の圧電素子401に印加する。
【0033】
(動作)
次に、本実施形態における動作について説明する。
(流体噴射装置1の制御動作)
図6は、信号制御部32が実行する吐出制御処理を示すフローチャートである。
吐出制御処理は、流体噴射装置1の電源投入と共に実行が開始され、電源投入中は繰り返し実行される。
図6において、吐出制御処理が開始されると、信号制御部32は、吐出開始信号が入力されているか否かの判定を行い(ステップS1)、吐出開始信号が入力されていないと判定した場合、ステップS1の処理を繰り返す。
【0034】
一方、ステップS1において、吐出開始信号が入力されていると判定した場合、信号制御部32は、電圧パルス波形の順番を示すパラメータiに初期値として“1”を設定(i=1)する(ステップS2)。
次に、信号制御部32は、波形記憶部31に記憶された初期電圧パルス波形群のうち、時系列における第i番目の電圧パルス波形を読み出す(ステップS3)。
そして、信号制御部32は、読み出した電圧パルス波形を示すデジタル信号を電圧増幅器33に出力する(ステップS4)。
【0035】
さらに、信号制御部32は、パラメータiが初期電圧パルス波形群に含まれる電圧パルス波形の個数imaxと一致しているか否かの判定を行う(ステップS5)。即ち、ステップS5では、初期電圧パルス波形群の電圧パルス波形全てが出力されたか否かが判定される。
ステップS5において、パラメータiがimaxに一致していないと判定した場合、信号制御部32は、パラメータiを“1”インクリメント(i=i+1)して(ステップS6)、ステップS3の処理に移行する。
一方、ステップS5において、パラメータiがimaxに一致していると判定した場合、信号制御部32は、波形記憶部31に記憶された定常電圧パルス波形を読み出し(ステップS7)、読み出した定常電圧パルス波形を示すデジタル信号を電圧増幅器33に出力する(ステップS8)。
【0036】
次いで、信号制御部32は、吐出開始信号の入力が中止されたか否かの判定を行い(ステップS9)、吐出開始信号の入力が中止されていないと判定した場合、信号制御部32は、ステップS8の処理に移行し、吐出開始信号の入力が中止されたと判定した場合、吐出制御処理を繰り返す。
吐出制御処理が実行されることにより、吐出開始直後は低い吐出圧力で流体を吐出し、徐々に吐出圧力を高めて所定の吐出圧力とすることができる。
【0037】
(流体噴射装置1全体の動作)
続いて、上記制御動作が行われた場合の流体噴射装置1全体の動作について説明する。
本実施形態の脈動発生部100の流体吐出は、入口流路側のイナータンスL1(合成イナータンスL1と呼ぶことがある)と出口流路側のイナータンスL2(合成イナータンスL2と呼ぶことがある)の差によって行われる。
まず、イナータンスについて説明する。
イナータンスLは、流体の密度をρ、流路の断面積をS、流路の長さをhとしたとき、L=ρ×h/Sで表される。流路の圧力差をΔP、流路を流れる流体の流量をQとした場合に、イナータンスLを用いて流路内の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
【0038】
つまり、イナータンスLは、流量の時間変化に与える影響度合いを示しており、イナータンスLが大きいほど流量の時間変化が少なく、イナータンスLが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
また、複数の流路の並列接続や、複数の形状が異なる流路の直列接続に関する合成イナータンスは、個々の流路のイナータンスを電気回路におけるインダクタンスの並列接続、または直列接続と同様に合成して算出することができる。
なお、入口流路側のイナータンスL1は、接続流路504が入口流路503に対して直径が十分大きく設定されているので、イナータンスL1は、入口流路503の範囲において算出される。この際、ポンプ20と入口流路を接続する接続チューブは柔軟性を有するため、イナータンスL1の算出から削除してもよい。
【0039】
また、出口流路側のイナータンスL2は、接続流路201の直径が出口流路よりもはるかに大きく、接続流路管200の管部(管壁)の厚さが薄いためイナータンスL2への影響は軽微である。従って、出口流路側のイナータンスL2は出口流路511のイナータンスに置き換えてもよい。
なお、接続流路管200の管壁の厚さは、流体の圧力伝播には十分な剛性を有している。
そして、本実施形態では、入口流路側のイナータンスL1が出口流路側のイナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路503の流路長及び断面積、出口流路511の流路長及び断面積を設定する。
【0040】
次に、脈動発生部100の動作について説明する。
ポンプ20によって入口流路503には、常に一定圧力の液圧で流体が供給されている。その結果、圧電素子401が動作を行わない場合、ポンプ20の吐出力と入口流路側全体の流体抵抗値の差によって流体は流体室501内に流動する。
ここで、フットスイッチ等の操作により、制御部30に吐出開始信号が入力されたとする。
このとき、吐出制御処理を実行する信号制御部32によって、波形記憶部31から初期電圧パルス波形群の電圧パルス波形が順次読み出され、電圧増幅器33を経て圧電素子401に印加される。
【0041】
これにより、出力増加期間において、小さい振幅から大きい振幅まで段階的に振幅の大きさを異ならせた電圧パルス波形が、順に圧電素子401に印加される。
また、続いて、信号制御部32によって、波形記憶部31から定常電圧パルス波形が読み出され、電圧増幅器33を経て圧電素子401に繰り返し印加される。
そして、これらの電圧パルス波形が圧電素子401に入力され、急激に圧電素子401が伸張すると、流体室501内の圧力は、入口流路側及び出口流路側のイナータンスL1,L2が十分な大きさを有していれば急速に上昇して数十気圧に達する。
【0042】
この圧力は、入口流路503に加えられていたポンプ20による圧力よりはるかに大きいため、入口流路側から流体室501内への流体の流入はその圧力によって減少し、出口流路511からの流出は増加する。従って、前述した特許文献1による流体噴射装置のような、入口流路側に設けられる逆止弁は必要ない。
しかし、入口流路503のイナータンスL1は、出口流路511のイナータンスL2よりも大きいため、入口流路503から流体が流体室501へ流入する流量の減少量よりも、出口流路から吐出される流体の増加量のほうが大きいため、接続流路201にパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管200内を伝播して、先端のノズル211の流体噴射開口部212から流体が噴射される。
【0043】
ここで、ノズル211の流体噴射開口部212の直径は、出口流路511の直径よりも小さいので、流体は、さらに高圧、高速のパルス状の液滴として噴射される。
一方、流体室501内は、入口流路503からの流体流入量の減少と出口流路511からの流体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空状態となる。その結果、ポンプ20の圧力と、流体室501内の真空状態の双方によって一定時間経過後、入口流路503の流体は圧電素子401の動作前と同様な速度で流体室501内に向かう流れが復帰する。
入口流路503内の流体の流動が復帰した後、圧電素子401の伸張があれば、ノズル211からの脈動流を継続して噴射することができる。
【0044】
続いて、流体室501内の気泡の排除動作について説明する。
上述した脈動発生部100の動作において、流体室501が、略回転体形状を有し旋回流発生部としての入口流路503を備えていることと、出口流路511が略回転体形状の回転軸近傍に開設されていることから、流体室501内において旋回流が発生し、流体内に含まれる気泡は速やかに出口流路511から外部に排出される。
従って、圧電素子401による流体室501の微小な容積変化においても、気泡によって圧力変動が阻害されることなく、十分な圧力上昇が得られる。
【0045】
従って、前述した第1実施形態によれば、ポンプ20により一定圧力で入口流路503に流体を供給するため、脈動発生部100の駆動を停止した状態においても入口流路503及び流体室501に流体を供給するため、呼び水動作をしなくても初期動作を開始することができる。
また、出口流路511の直径よりも縮小された流体噴射開口部212から流体を噴出するため、液圧を出口流路511内よりも高めることから、高速の流体噴射を可能にする。
さらに、接続流路管200が、流体室501から流動される流体の脈動を流体噴射開口部212に伝達し得る剛性を有しているので、脈動発生部100からの流体の圧力伝播を妨げず、所望の脈動流を噴射することができるという効果を有する。
【0046】
また、入口流路503のイナータンスを、出口流路511のイナータンスよりも大きく設定していることから、入口流路503から流体室501への流体の流入量の減少よりも大きい流出量の増加が出口流路511に発生し、接続流路管200内にパルス状の流体吐出を行うことができる。従って、前述した特許文献1のように入口流路503側に逆止弁を設けなくてもよく、脈動発生部100の構造を簡素化できるとともに、内部の洗浄が容易になる他、逆止弁を用いることに起因する耐久性の不安を排除することができるという効果がある。
なお、入口流路503及び出口流路511双方のイナータンスを十分大きく設定することにより、流体室501の容積を急激に縮小すれば、流体室501内の圧力を急激に上昇させることができる。
【0047】
また、容積変更手段として圧電素子401とダイアフラム400とを採用する構造にすることにより構造の簡素化と、それに伴う小型化を実現できる。また、流体室501の容積変化の最大周波数を1KHz以上の高い周波数にすることができ、高速脈動流の噴射に最適である。
また、旋回流発生部により流体室501内の流体に旋回流を発生させることで、流体を遠心力により流体室の外周方向に押しやり、旋回流の中心部、つまり、略回転体形状の軸近傍に流体に含まれる気泡が集中し、略回転体形状の軸の近傍に設けられる出口流路511から気泡を排除することができる。このことから、流体室501内に気泡が滞留することによる圧力振幅の低下を防止することができ、脈動発生部100の安定した駆動を継続することができる。
【0048】
さらに、旋回流発生部を入口流路503により形成していることから、専用の旋回流発生部を用いることなく旋回流を発生させることができる。
また、流体室501の封止面505の外周縁部に、溝形状の入口流路503を形成しているので、部品数を増やすことなく旋回流発生部としての入口流路503を形成することができる。
また、ダイアフラム400の上面に補強板410を備えていることにより、ダイアフラム400は補強板410の開口部外周を支点として駆動するため、応力集中が発生しにくく、ダイアフラム400の耐久性を向上させることができる。
【0049】
なお、補強板410のダイアフラム400との接合面の角部を丸めておけば、一層、ダイアフラム400の応力集中を緩和することができる。
また、補強板410とダイアフラム400とを積層し、一体に固着すれば、脈動発生部100の組立性を向上させることができる他、ダイアフラム400の外周縁部の補強効果もある。
また、ポンプ20から流体を供給する入口側の接続流路504と入口流路503との接続部に、流体を滞留する流体溜り507を設けているために、接続流路504のイナータンスが入口流路503に与える影響を抑制することができる。
【0050】
さらに、上ケース500と下ケース301との接合面において、ダイアフラム400の外周方向離間した位置にリング状のパッキン450を備えているために、流体室501からの流体の漏洩を防止し、流体室501内の圧力低下を防止することができる。
以上のように、本実施形態に係る流体噴射装置1は、初期電圧パルス波形群および定常電圧パルス波形を記憶する波形記憶部31を備えている。そして、流体が吐出される場合、出力増加期間において初期電圧パルス波形群の電圧パルス波形が順に圧電素子401に印加され、その後、出力安定期間において、定常電圧パルス波形が繰り返し圧電素子401に印加される。
【0051】
したがって、流体の吐出が行われる際、低い吐出圧力から徐々に高い吐出圧力に変化するため、吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止することができる。
即ち、本発明によれば、流体を噴射して対象部位を切開または切除する流体噴射装置において、吐出開始時に切開または切除の深さが増大する事態を防止することが可能となる。
なお、本実施形態においては、電圧パルス波形を負極から正極に振幅する正弦波であるものとして説明したが、電圧パルス波形の具体的形態は、正弦波以外のものとすることが可能である。
【0052】
図7は、振幅が徐々に大きくなるインパルス状波形(例えば正弦波の正極側を切り出した波形)を初期電圧パルス波形群とした場合を示す模式図である。
図7に示すように、電圧パルス波形として印加するインパルス状波形の振幅を徐々に大きくすることによっても、出力増加期間において、流体の吐出圧力を徐々に高めることができる。
【0053】
(応用例1)
第1実施形態においては、初期電圧パルス波形群として、出力増加期間の時系列順に、小さい振幅から大きい振幅まで段階的に振幅の大きさを異ならせた複数の電圧パルス波形を圧電素子401に印加する場合を例に挙げて説明したが、電圧パルス波形において変化させる特性は振幅以外のものとすることができる。
図8は、スルーレートが徐々に高くなる三角波を初期電圧パルス波形群とした場合を示す模式図である。
【0054】
ここで、スルーレートは、時間を横軸、電圧を縦軸としたときの電圧波形において、電圧の傾きとして定義される。
図8において、各三角波は負極から正極の順に振幅する波形を有しており、負極の最大振幅から正極の最大振幅に至る電圧変化領域(以下、「伸張部」と言う。)が、圧電素子401によって流体室501の容積が縮小される領域となる。
本応用例1においては、出力増加期間中に印加される電圧パルス波形は、伸張部のスルーレート(傾き)が第1波から順に大きくなっている。
【0055】
また、図9は、スルーレートが徐々に高くなるインパルス状波形を初期電圧パルス波形群とした場合を示す模式図である。
図9に示すように、三角波の他、インパルス状波形の場合にも、伸張部のスルーレートを徐々に高くすることができる。
このように、電圧パルス波形のスルーレートを徐々に大きくすることによって、流体の吐出圧力を徐々に高めることができる。
【0056】
(応用例2)
また、出力増加期間に電圧パルス波形において変化させる特性は、振幅やスルーレートの他、周波数とすることも可能である。
図10は、周波数が徐々に高くなる三角波を初期電圧パルス波形群とした場合を示す模式図である。
図10において、各三角波は負極から正極の順に振幅する波形を有しており、出力増加期間中に印加される電圧パルス波形は、周波数が第1波から順に高くなっている。
このように、電圧パルス波形の周波数を徐々に高くすることによって、流体の吐出圧力を徐々に高めることができる。
【0057】
(応用例3)
出力増加期間において印加される複数の電圧パルス波形間に平坦な信号部分が挿入されている場合、平坦な信号部分の周期を徐々に小さくすることによって、流体の吐出圧力を徐々に高めることができる。
図11は、インパルス状波形間に平坦な信号部分を有する初期電圧パルス波形群を示す模式図である。
図11において、出力増加期間における電圧パルス波形はそれぞれ同一であり、各電圧パルス波形間の平坦な信号部分の周期が、徐々に小さくなっている。
また、図12は、負極から正極の順に振幅する複数の台形波と各電圧パルス波形間に平坦な信号部分とを有する初期電圧パルス波形群を示す図である。
【0058】
インパルス状波形の場合の他、図12に示す波形の場合にも、電圧パルス波形間の平坦部分の周期を小さくすることにより、流体の吐出圧力を徐々に高めることができる。
図11および図12に示すように、同一の電圧パルス波形を、間隔を縮小しながら印加する場合、平坦な信号部分の長さが異なる波形を波形記憶31に記憶させて順に読み出す方法もあるが、波形記憶31には1つの電圧パルス波形を記憶して、信号制御部32が時間をカウントして印加間隔を制御しながら、同一の電圧パルス波形を繰り返し印加する方法とすることもできる。
このように、同一の電圧パルス波形を繰り返し印加する場合でも、各電圧パルス波形の間隔を徐々に小さくしながら印加することで、流体の吐出圧力を徐々に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流体噴射装置1の概略構成を示す説明図である。
【図2】本実施形態に係る脈動発生部100の構造を示す図である。
【図3】入口流路503の形態を示す平面図である。
【図4】流体噴射装置1の制御系統を示す機能構成図である。
【図5】波形記憶部31が記憶している電圧パルス波形の具体例を示す模式図である。
【図6】信号制御部32が実行する吐出制御処理を示すフローチャートである。
【図7】振幅が徐々に大きくなるインパルス状波形を初期電圧パルス波形群とした場合を示す模式図である。
【図8】スルーレートが徐々に高くなる三角波を初期電圧パルス波形群とした場合を示す模式図である。
【図9】スルーレートが徐々に高くなるインパルス状波形を初期電圧パルス波形群とした場合を示す模式図である。
【図10】周波数が徐々に高くなる三角波を初期電圧パルス波形群とした場合を示す模式図である。
【図11】インパルス状波形間に平坦な信号部分を有する初期電圧パルス波形群を示す模式図である。
【図12】負極から正極の順に振幅する複数の台形波と各電圧パルス波形間に平坦な信号部分とを有する初期電圧パルス波形群を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 流体噴射装置、10 流体容器、15,25 接続チューブ、20 ポンプ、30 制御部、31 波形記憶部、32 信号制御部、33 電圧増幅器、100 脈動発生部、200 接続流路管、201 接続流路、211 ノズル、212 流体噴射開口部、401 圧電素子、501 流体室、503 入口流路、511 出口流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流体室と、駆動信号により前記流体室の容積を変更する圧力発生素子を備えた容積変更手段と、前記流体室に連通する入口流路および出口流路と、を有する脈動発生部と、
前記出口流路から流出した流体を噴射する流体噴射口と、
前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、
前記圧力発生素子に駆動信号を印加し、前記容積変更手段による前記流体室の容積の変更を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、流体の吐出開始後、段階的に流体の吐出圧力を増加させることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
流体の吐出圧力が異なるものとなる複数の前記駆動信号の波形を記憶する波形記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記波形記憶手段に記憶された複数の前記駆動信号の波形を、流体の吐出圧力が異なるものから順に読み出して前記圧力発生素子に印加することを特徴とする請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記駆動信号の振幅を異ならせた波形を、振幅の小さい波形から順に前記圧力発生素子に印加することを特徴とする請求項1または2記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記駆動信号のスルーレートを異ならせた波形を、スルーレートの小さい波形から順に前記圧力発生素子に印加することを特徴とする請求項1または2記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記駆動信号の周波数が時間の経過に伴って増加する波形を前記圧力発生素子に印加することを特徴とする請求項1または2記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記駆動信号の波形間の間隔を時間の経過に伴って縮小させて前記圧力発生素子に印加することを特徴とする請求項1または2記載の流体噴射装置。
【請求項7】
流体が流入する流体室と、駆動信号により前記流体室の容積を変更する圧力発生素子を備えた容積変更手段と、前記流体室に連通する入口流路および出口流路と、を有する脈動発生部と、
前記出口流路から流出した流体を噴射する流体噴射口と、
前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、
前記圧力発生素子に駆動信号を印加し、前記容積変更手段による前記流体室の容積の変更を制御する制御手段と、
を備える流体噴射装置の制御方法であって、
流体の吐出開始後、段階的に流体の吐出圧力を増加させる出力増加ステップを含むことを特徴とする流体噴射装置の制御方法。
【請求項8】
流体が流入する流体室と、駆動信号により前記流体室の容積を変更する圧力発生素子を備えた容積変更手段と、前記流体室に連通する入口流路および出口流路と、を有する脈動発生部と、
前記出口流路から流出した流体を噴射する流体噴射口と、
前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、
前記圧力発生素子に駆動信号を印加し、前記容積変更手段による前記流体室の容積の変更を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、流体の吐出開始後、段階的に流体の吐出圧力を増加させることを特徴とする手術装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−59939(P2010−59939A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229474(P2008−229474)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】