流体噴射装置
【課題】フィルタへのダメージを防ぐことが可能な流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】第1光の照射を受けて硬化する光硬化性材料が有機溶媒に溶解又は分散されてなる流体を媒体へ向けて噴射する噴射ヘッドと、前記媒体へ向けて前記第1の光を射出する第1光源と、前記噴射ヘッド及び前記第1光源の周囲の雰囲気を排気する排気機構と、前記排気機構による排気経路上に設けられ前記有機溶媒の分子を吸着するフィルタと、前記フィルタに設けられ、吸着した前記有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合手段とを備える。
【解決手段】第1光の照射を受けて硬化する光硬化性材料が有機溶媒に溶解又は分散されてなる流体を媒体へ向けて噴射する噴射ヘッドと、前記媒体へ向けて前記第1の光を射出する第1光源と、前記噴射ヘッド及び前記第1光源の周囲の雰囲気を排気する排気機構と、前記排気機構による排気経路上に設けられ前記有機溶媒の分子を吸着するフィルタと、前記フィルタに設けられ、吸着した前記有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化型インクは、紫外線を照射するまでは硬化が非常に遅く、紫外線を照射すると急速に硬化するという、印刷インクとして好ましい特性を有する。また、硬化にあたって溶剤を揮発させることがないので環境負荷が小さいという利点もある。
【0003】
更に、紫外線硬化型インクは、ビヒクルの組成により種々の媒体に高い付着性を発揮すると共に、硬化した後は化学的に安定しており、接着性、耐薬剤性、耐候性、耐摩擦性等が高く、屋外環境にも耐える等の優れた特性を有する。
【0004】
このため、紙、樹脂フィルム、金属箔等の薄いシート状の媒体の他、光記録媒体のレーベル面、テキスタイル製品など、ある程度立体的な表面形状を有するものに対しても画像を形成できる。
【0005】
紫外線硬化型インクを媒体に付着させる方法としては、塗布、印刷等もあり得るが、刷版なしに任意の画像またはパターンを精度よく形成できるインクジェット式記録装置の利用が期待されている。また、インクを吐出する記録ヘッドを移動させる主走査と、主走査方向に対して交差する方向に媒体を移動させる副走査とを組み合わせる構造により、限られた寸法のノズルを用いて、長尺あるいは面積の広い媒体に対しても任意の領域に画像が記録できる。
【0006】
下記特許文献1には、インクジェット記録装置において、インクに紫外線硬化剤を含有させて、記録直後の記録面に紫外線を照射することにより、記録面の速乾性を向上させることが記載されている。より具体的には、インクジェットプリンタにおいて、インクとして紫外線硬化型インクを使用して、記録ヘッドの主走査方向の両端に設置された紫外線ランプにより媒体に付着させたインクを即座に硬化させて定着させることが記載されている。
【0007】
紫外線硬化型インクを媒体に噴射する際、当該紫外線硬化型インクの溶媒が飛散し、ミストが生じやすいという問題がある。このため、ファンなどの排気機構を配置すると共にファンの排気経路上にフィルタを設けて、当該ミストをフィルタに吸着させる構成が提案されている。
【特許文献1】特開2004−155046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ミストを構成する有機溶媒はモノマーの状態であることが多く、引火温度が低くなっている。このため、紫外線ランプの発熱によってミストに引火する虞がある。特にミストを吸着させるフィルタにおいて有機溶媒の分子に引火する可能性があり、引火によってフィルタにダメージを与えてしまう虞がある。
【0009】
上述した事情に鑑み、本発明は、フィルタへのダメージを防ぐことが可能な流体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る流体噴射装置は、第1光の照射を受けて硬化する光硬化性材料が有機溶媒に溶解又は分散されてなる流体を媒体へ向けて噴射する噴射ヘッドと、前記媒体へ向けて前記第1の光を照射する第1光源と、前記噴射ヘッドの周囲及び前記第1光源の周囲の前記流体の飛沫を含む気体を排気する排気機構と、前記排気機構による排気経路上に設けられ前記有機溶媒の分子を吸着するフィルタと、前記フィルタに吸着した前記有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、排気機構による排気系路上に有機溶媒の分子を吸着するフィルタが設けられており、このフィルタに吸着される有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合手段が設けられているので、当該有機溶媒の分子同士がフィルタにおいて重合され、ポリマーとなる。有機溶媒の分子がポリマー化すると引火温度が高くなり、第1光源の発熱に対しても引火しにくくなる。これにより、有機溶媒の分子がフィルタにおいて引火するのを防ぐことができ、フィルタへのダメージを確実に防ぐことができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、支持面に前記媒体を支持しつつ回転する支持ドラムと、前記支持ドラムの回転軸方向と平行に延在する複数のガイド軸と、前記複数のガイド軸のうち第1ガイド軸に案内されて前記支持面に沿って往復移動可能に設けられ、前記噴射ヘッドを搭載する第1キャリッジと、前記複数のガイド軸のうち第2ガイド軸に案内されて前記支持面に沿って往復移動可能に設けられ、前記光源を搭載する第2キャリッジとを更に備える。
本発明では、支持面に媒体を支持しつつ回転する支持ドラムを有する構成において、上記重合手段を備える構成になっている。支持ドラムを有する構成では当該支持ドラムの回転に伴ってミストが広がりやすく、フィルタに多くのミストが吸着しやすい。本発明によれば、より多くのミストが吸着するフィルタにおいて当該ミストを構成する有機溶媒の分子同士を重合させてポリマー化することができる。これにより、フィルタにダメージを与えるのを確実に防ぐことができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記重合手段は、前記フィルタの表面及び前記フィルタの内部に設けられ前記有機溶媒の分子同士の重合反応を開始させる重合開始剤であることを特徴とする。
本発明によれば、重合手段がフィルタの表面及びフィルタの内部に設けられ有機溶媒の分子同士の重合反応を開始させる重合開始剤であることとしたので、当該有機溶媒の分子同士がフィルタの表面及びフィルタの内部で重合し、ポリマー化することとなる。これにより、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記有機溶媒は第2光の照射を受けて重合反応を開始する分子を含み、前記重合手段は、前記フィルタに向けて前記第2光を射出する第2光源であることを特徴とする。
本発明によれば、上記有機溶媒は第2光の照射を受けて重合反応を開始する分子を含み、重合手段が当該第2光をフィルタに向けて射出する第2光源であることとしたので、フィルタのうち第2光の照射領域において、有機溶媒の分子同士が第2光の照射によって重合することとなる。これにより、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0015】
上記の流体噴射装置は、前記フィルタは複数設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、フィルタが複数設けられているので、フィルタごとに異なる重合手段を設けることができる。例えば複数のフィルタのうち一部のフィルタには重合手段として重合開始剤を設けるようにし、他のフィルタには重合手段として第2光源を設けるようにするなどの設計が可能となる。このように、本発明によれば流体噴射装置の設計の幅が広がることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置100の概略構造を模式的に示す斜視図である。
【0017】
同図に示すように、インクジェット式記録装置(流体噴射装置)100は、互いに平行となるよう直立している一対のフレーム130間に設けられた記録部120と、給紙部112および排紙部114を含む給排紙部110とで構成されている。同図に示すように、給排紙部110と記録部120とは近接して設けられている。また、このインクジェット式記録装置100は、排気機構50及びフィルタ52を有している。
【0018】
記録部120は、一対のフレーム130の間に支持された支持ドラム140およびガイド軸132、134、136、138を有する。
支持ドラム140はフレーム130によって軸支された回転軸142を有している。当該回転軸142を中心として、図1中に示す矢印Rの方向に支持ドラム140が回転するようになっている。支持ドラム140の回転は、不図示のドラム駆動部により制御されるようになっている。支持ドラム140の表面は記録用紙(媒体)150を支持する支持面144になっており、当該支持面144に記録用紙150を保持した状態で回転可能になっている。
【0019】
記録部キャリッジ170は記録ヘッド180を搭載する筐体であり、支持ドラム140の支持面144に近接するように設けられている。記録部キャリッジ170には、支持ドラム140の回転軸142の方向に沿って2つの貫通孔が設けられている。互いに平行な4本のガイド軸132、134、136、138のうち、2つのガイド軸132、134は、記録部キャリッジ170の当該貫通孔をそれぞれ貫通するように設けられている。記録部キャリッジ170はこの貫通孔においてガイド軸132、134に支持されている。また、記録部キャリッジ170には不図示の駆動機構が設けられており、当該駆動機構によりガイド軸132、134によって支持された状態で当該ガイド軸の軸方向に移動可能になっている。記録部キャリッジ170がガイド軸の軸方向に移動することにより、記録ヘッド180が同方向に搬送されるようになっている。
【0020】
照射部キャリッジ160は紫外線照射部(第1光源)162を搭載する筐体であり、支持ドラム140の支持面144に沿って設けられている。照射部キャリッジ160には支持ドラム140の回転軸142の方向に沿って2つの貫通孔が設けられている。上記4本のガイド軸のうち残り2つのガイド軸136、138は、照射部キャリッジ160の当該貫通孔をそれぞれ貫通するように設けられている。照射部キャリッジ160はこの貫通孔においてガイド軸136、138にそれぞれ支持されている。また、照射部キャリッジ160には不図示の駆動機構が設けられおり、当該駆動機構によりガイド軸136、138に支持された状態で当該ガイド軸の軸方向に移動可能に設けられている。照射部キャリッジ160がガイド軸の軸方向に移動することにより、紫外線照射部162が同方向に搬送されるようになっている。
【0021】
給紙部112は、複数枚積層されたシート状の記録用紙150を収納すると共に記録用紙150を1枚ずつ支持ドラム140に向けて供給するようになっている。支持ドラム140に向けて供給された記録用紙150は、支持ドラム140の支持面144に巻き付けられ、支持ドラム140と共に回転するようになっている。
【0022】
記録部キャリッジ170に搭載された記録ヘッド180は、回転する支持ドラム140に保持された記録用紙150に対して紫外線硬化型インクを吐出して付着させる。照射部キャリッジ160に搭載された紫外線照射部162は、記録用紙150に付着した紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射し、紫外線硬化型インクを硬化させる。硬化した紫外線硬化型インクは画像として記録用紙150の表面に固定される。
【0023】
支持ドラム140が1回転すると、記録要旨150について支持ドラム140の長手方向の一部領域において記録用紙150に画像が記録されると、記録部キャリッジ170はガイド軸132、134に沿って移動して、上記領域に隣接した領域に対して同様の記録動作を実行する。
【0024】
その後、記録ヘッド180が記録動作をしながら支持ドラム140が1回転以上する毎に記録部キャリッジ170が移動するという動作を繰り返すことにより、記録用紙150表面全体に画像が形成される。
【0025】
換言すれば、インクジェット式記録装置100においては、支持ドラム140の回転方向が主走査方向であり、記録部キャリッジ170の移動方向が副走査方向となる。つまり、キャリッジの移動方向が主走査方向となり、記録用紙150の搬送方向がキャリッジの副走査方向と一致する多くの記録装置と異なっている。
【0026】
なお、紫外線照射部162を搬送する照射部キャリッジ160は、記録部キャリッジ170の移動に従って移動して、記録ヘッド180から記録用紙150上に吐出された直後の紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射する。
【0027】
好ましくは、照射部キャリッジ160および記録部キャリッジ170の移動開始のタイミングを僅かにずらすことにより、インクジェット式記録装置100の電源部に対する負荷のピークを軽減する。
【0028】
即ち、照射部キャリッジ160および記録部キャリッジ170を一体とした場合には、キャリッジの移動を開始する場合に加速の対象となる慣性質量が著しく大きくなるので、駆動機構への負荷が著しく大きくなる。また、大きな質量を安定に加速・減速させる場合には、強度が高く、重量の大きなフレーム130が求められる。従って、照射部キャリッジ160および記録部キャリッジ170を分離する構造により、電源装置の容量を低減して、装置規模の縮小、コストダウン等を図っている。
【0029】
こうして画像を記録された記録用紙150は、支持ドラム140から剥離されて、排紙部114に送り込まれて蓄積される。
【0030】
図2は、記録部120の構造を示す断面図である。
記録部120において、記録部キャリッジ170は、一対のガイド軸132、134に支持されると共に、インクタンク174を備えて、記録ヘッド180を支持する。
【0031】
インクタンク174は、不図示のインクカートリッジから補給されるインクを所定量保持して、記録ヘッド180に一定量のインクを安定的に供給する。
【0032】
記録ヘッド180は、支持ドラム140の支持面144に保持された記録用紙150に対向して配置され、記録用紙150に向かってインクを吐出する。
【0033】
紫外線照射部162は、支持ドラム140の回転方向に沿って整列された複数のランプユニット161を含む。これにより、支持ドラム140の回転に従って移動する記録用紙150の回転移動方向に沿って複数のランプユニット161が配される。従って、個々のランプユニット161の出力が小さい場合であっても、記録用紙150が回転する間に十分な紫外線照射量が得られる。
【0034】
このような記録部120において、記録ヘッド180から吐出されたインクが付着した記録用紙150は、支持ドラム140の回転に従って、図中に矢印Rにより示す方向に回転移動する。
【0035】
照射部キャリッジ160に支持された紫外線照射部162は、回転方向において記録ヘッド180の下流側に配置される。従って、記録ヘッド180から吐出されて記録用紙150に付着した紫外線硬化型インクは、即座に紫外線を照射されて硬化する。
【0036】
図3は、記録ヘッド180を搭載した記録部キャリッジ170を示す斜視図である。
記録部キャリッジ170は、ガイド軸132、134が挿通される一対の水平な貫通穴176と、インクタンク174とを備えたキャリッジ本体172を有する。記録ヘッド180は、キャリッジ本体172の上面に搭載される。
【0037】
図4は、記録ヘッド180を、図3に矢印Fで示す方向から見た様子を示す正面図である。
記録ヘッド180は、5個のヘッドユニット(噴射ヘッド)181、182、183、184、185を備える。ヘッドユニット181〜185の各々は、互いに種類の異なるインクを吐出するようになっている。具体的には、例えば、ホワイトW、マゼンタM、イエローY、シアンC、クリアCRの各インクが、ヘッドユニット181〜185のいずれかから吐出される。
【0038】
ヘッドユニット181〜185の各々は、支持ドラム140に対向する面にノズルプレート191〜195が配されている。ノズルプレート191〜195の各々には、紫外線硬化型インクを吐出するノズル孔が列状に形成される。具体的には、各ノズルプレート191〜195には、2つのノズル列L1,L2が形成され、各ノズル列L1,L2は、例えば、180個のノズルN(#1〜#180)から形成される。
【0039】
なお、ヘッドユニット181〜185からインクを吐出させる駆動構造としては、静電力等によりインクの液滴を吸引する方式、水晶振動子、圧電素子等を用いてインクを打ち出す方式など、種々の方法が既に知られており、用途に応じて適宜選択できる。
【0040】
図5は、照射部キャリッジ160に搭載された紫外線照射部162を示す斜視図である。
紫外線照射部162は、共通の照射部フレーム164に装着された複数のランプユニット161、163、165、167、169を備える。ランプユニット161〜169は、その長手方向に複数のランプユニット161〜169が整列されると共に、記録ヘッド180のヘッドユニット181〜185に対応して5列に配列される。
【0041】
なお、ランプユニット161〜169の個々の照射範囲の幅は、ヘッドユニット181〜185の個々の記録幅よりも広くすることが好ましい。これにより、照射部キャリッジ160および記録部キャリッジ170の移動のタイミングがずれる場合にも、記録用紙150に付着した紫外線硬化型インクに十分な照射量の紫外線を照射できる。
【0042】
また、ランプユニット161〜169としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等をいずれも例示できる。より具体的には、Fusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いることができる。
【0043】
更に、紫外帯域で発光するLEDを用いてランプユニットを形成することもできる。また、ランプユニット161〜169は、不可避に熱を発生するので、ランプユニット161〜169に放熱部を設ける他、強制的に冷却する設備を設けることも好ましい。
【0044】
なお、紫外線硬化型インクとしては、ビヒクル、光重合開始剤および顔料の混合物に、消泡剤、重合禁止剤等の補助剤を添加して調合され、有機溶媒に溶解又は分散された状態になっている。ビヒクルは、光重合硬化性を有するオリゴマー、モノマー等を、反応性希釈剤により粘度調整して調合される。従って、インクを硬化させる目的で溶媒を揮発させることはない。
【0045】
ビヒクルとしては、単官能あるいは多官能の重合性化合物が使用できる。より具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー(プレポリマー)を例示でき、インクとしての粘度を調整する反応性希釈剤もこれらの材料を用いることができる。
【0046】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系が広く用いられる。より具体的には、4−benzoyl−N,N,N−trimethyl benzene methaneannmonium chloride、2−hydroxy 3−(4−benzoyl−phenoxy)−N,N,N−trimethyl 1−propane annmonium chloride、4−benzoyl−N,N−dimethyl N−[2−(1−oxo−2−propenyloxy) ethyl] benzene methammonium bromide等、第4級アンモニウム塩型の水溶性有機物等を用いることができる。
【0047】
この種の光重合開始剤は、その組成に応じて、紫外線吸収特性、反応開始効率、黄変性等が異なるので、インクとしての色等に応じて使い分けられる。
【0048】
重合禁止剤としては、ラジカル捕捉能力を有してラジカル重合を阻害する化合物であれば何れも使用できる。ただし、インクジェット式記録装置における吐出適性等を配慮すると、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類から選択された少なくとも1種類以上の化合物が好ましい。
【0049】
ハイドロキノン類としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチルハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等を例示できる。カテコール類としては、カテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール等を例示できる。ヒンダードアミン類としては、テトラメチルピペリジニル基を有する化合物等を例示できる。
【0050】
また、フェノール類としては、フェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸アルキルエステル等を例示できる。フェノチアジン類としては、フェノチアジン等を例示できる。前記縮合芳香族環のキノン類としては、ナフトキノン等を例示できる。
【0051】
更に、重合禁止剤は、カーボンブラックまたは表面に重合防止官能基を導入した無機・有機微粒子であってもよい。重合防止官能基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、テトラメチルピペリジニル基、縮合芳香族環等を例示できる。
【0052】
図2に戻って、インクジェット式記録装置100に設けられた排気機構50及びフィルタ52について説明する。排気機構50には、排気ファン51と当該排気ファン51の回転を制御する不図示の制御機構とが設けられている。排気ファン51はインクジェット式記録装置100のうち装置外部に接する位置に設けられている。排気ファン51が回転することにより、インクジェット式記録装置100の内部、特に記録部キャリッジ170及び照射部キャリッジ180の周囲の雰囲気が図中破線矢印で示すような排出経路に沿って外部に排出されるようになっている。
【0053】
フィルタ52は、インクジェット式記録装置100の内部であって排気機構50の排気経路上の位置、例えば排気ファン51の内部側に近接する位置に設けられている。ヘッドユニット181〜185によってインクが記録用紙150に噴射されると、インクのうち例えば有機溶媒などがミスト状になって雰囲気中に飛散する。このフィルタ52は、排気される雰囲気に有機溶媒が含まれないようにするため、排気ファン51によって排気経路上を移動してきた雰囲気のうち有機溶媒を吸着する。フィルタ52の表面及び内部には、有機溶媒の分子を重合させる重合開始剤53が含まれている。
【0054】
フィルタ52に含まれる重合開始剤53として、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物等が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。具体的には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4−、PF6−、AsF6−、SbF6−、CF3SO3−塩を挙げることができる。また、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、鉄アレン錯体などが挙げられる。フィルタ52に含まれる重合開始剤により、当該フィルタ52に付着した有機溶媒の分子同士が重合反応を起こしてポリマー化するようになっている。
【0055】
本実施形態によれば、排気機構50による排気系路上に有機溶媒の分子を吸着するフィルタ52が設けられており、このフィルタ52には吸着される有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合開始剤53が設けられているので、当該有機溶媒の分子同士がフィルタ52において重合され、ポリマーとなる。有機溶媒の分子がポリマー化すると引火温度が高くなり、紫外線照射部162の発熱に対しても引火しにくくなる。これにより、有機溶媒の分子がフィルタ52において引火するのを防ぐことができ、フィルタ52へのダメージを確実に防ぐことができる。
【0056】
また、本実施形態では、支持面144に記録用紙150を支持しつつ回転する支持ドラム140を有する構成において、重合開始剤を含んだフィルタ52を備える構成になっている。支持ドラム140を有する構成では当該支持ドラム140の回転に伴ってミストが広がりやすく、フィルタ52に多くのミストが吸着しやすい。本実施形態によれば、より多くのミストが吸着するフィルタ52において当該ミストを構成する有機溶媒の分子同士を重合させてポリマー化することができる。これにより、フィルタ52にダメージを与えるのを確実に防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、有機溶媒の分子同士の重合反応を開始させる重合開始剤がフィルタ52の表面及びフィルタ52の内部に設けられていることとしたので、当該有機溶媒の分子同士をフィルタ52の表面及びフィルタ52の内部で重合させ、ポリマー化させることができる。このように、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、フィルタの構成が第1実施形態とは異なっているので、当該相違点を中心に説明する。また、第1実施形態と同一の構成要素は第1実施形態と同一の符号を付して示すこととし、その説明を簡略化または省略する。
【0059】
図6は本実施形態に係るインクジェット式記録装置200のうち記録部220の概略構成を示す断面図であり、第1実施形態における図2に対応している。
同図に示すように、ジンクジェット式記録装置200の記録部220において、記録部キャリッジ170は、支持ドラム140に近接して設けられ、一対のガイド軸132、134に支持されている。記録部キャリッジ170はインクタンク174を備えており、記録ヘッド180を支持している。照射部キャリッジ160は紫外線照射部162を搭載しており、支持ドラム140の支持面144に沿って設けられている。
【0060】
インクジェット式記録装置200には排気機構250とフィルタ252とが設けられている。この排気機構250には、排気ファン251と当該排気ファン251の回転を制御する不図示の制御機構とが設けられている。排気ファン251はインクジェット式記録装置200のうち装置外部に接する位置に設けられている。排気ファン251が回転することにより、インクジェット式記録装置200の内部、特に記録部キャリッジ170及び照射部キャリッジ180の周囲の雰囲気が図中破線矢印で示すような排出経路に沿って外部に排出されるようになっている。
【0061】
フィルタ252は、インクジェット式記録装置200の内部であって排気機構250の排気経路上の位置、例えば排気ファン251の内部側に近接する位置に設けられている。このフィルタ252は、排気される雰囲気に有機溶媒が含まれないようにするため、排気ファン251によって排気経路上を移動してきた雰囲気のうち有機溶媒を吸着する。フィルタ252の近傍には、当該フィルタ252の表面に紫外線Lを照射する重合用ランプ(第2光源)253が設けられている。重合用ランプ253は、紫外線を射出する光源253aと、当該光源253からの紫外線をフィルタ252へ向けて反射するリフレクタ253bとを有している。
【0062】
有機溶媒には紫外線の照射によって分子同士が重合反応を起こすような材料を含んだ構成であっても良いし、あるいは重合開始剤が含まれた構成であっても構わない。重合用ランプ253からの光はフィルタ252のうち有機溶媒の分子が吸着する表面252aに照射される。当該紫外線の照射によって、有機溶媒の分子同士の間で重合反応が引き起こされ、有機溶媒の分子がポリマー化する。
【0063】
本実施形態によれば、有機溶媒は紫外線を照射することで重合反応を開始する分子を含んでおり、紫外線をフィルタ252に向けて射出する重合用光源253を設けることとしたので、フィルタ252のうち紫外線Lの照射領域において、有機溶媒の分子同士が紫外線の照射によって重合することとなる。これにより、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0064】
このような構成によれば、当該紫外線をフィルタ252に向けて射出する重合用光源であることとしたので、フィルタ252のうち紫外線の照射領域において、有機溶媒の分子同士が紫外線の照射によって重合することとなる。これにより、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0065】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、フィルタ52、252を1つの支持ドラム140に対して1つだけ配置する構成としたが、これに限られることは無く、図7に示すように、複数のフィルタ52、252を配置する構成であっても構わない。図7にはフィルタ52、252が2つ設けられている例を示されているが、フィルタ52、252が3つ以上設けられている構成であっても勿論構わない。また、図7にはフィルタ52が排気経路に沿って2重に配列されている例が示されているが、排気経路上であれば例えば図中一点鎖線で示す位置52A及び位置52Bのように2重になっていなくても構わない。
【0066】
また、複数のフィルタを配置する場合、複数のフィルタ52、252のそれぞれについて、重合開始剤を含ませる構成及び紫外線を照射する構成のどちらの構成を適用させても構わない。図7に示す構成の場合、2つのフィルタのうち一方のフィルタには重合開始剤を含ませておき、他方のフィルタには紫外線を照射する構成としても構わない。
【0067】
また、上記第2実施形態において、フィルタ252に照射する位置が排気経路の上流側の表面252aであるとしたが、これに限られることは無く、例えばフィルタ252を排気機構250とは離間させて配置し、フィルタ252に対して排気経路の下流側の表面に紫外線を照射する構成であっても構わない。
【0068】
また、上記各実施形態においては、ドラム型(円筒状)の支持部材に媒体を支持して、支持部材を回転させながら記録を行うドラム型のインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、紫外線硬化型インクを用いて記録するインクジェット記録装置であれば、他の構成であっても本発明の適用は可能である。
【0069】
また、上記第1実施形態ではフィルタ52に重合開始剤53を含ませる構成を、上記第2実施形態ではフィルタ252に紫外線を照射する構成を、それぞれ例に挙げて説明したが、これらの構成を組み合わせた構成、つまり、1つのフィルタに重合開始剤を含ませると共に当該フィルタに紫外線を照射する構成としても構わない。
【0070】
また、上記実施形態では、ミストを含んだ雰囲気がそのままフィルタ52、252を通過する構成としたが、これに限られることは無く、例えばミストを含んだ雰囲気についてある程度のミストを予め除去してからフィルタ52、252を通過させるように構成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット式記録装置の構成を示す図。
【図2】記録部の断面構造を示す図。
【図3】記録部キャリッジを示す斜視図。
【図4】記録ヘッドの正面図(図3の矢視F)。
【図5】紫外線照射部を示す斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態に係るインクジェット式記録装置の断面構造を示す図。
【図7】本発明のインクジェット式記録装置の他の構成を示す図。
【符号の説明】
【0072】
50、250…排気機構 51、251…排気ファン 52、252…フィルタ 100…インクジェット式記録装置(流体噴射装置) 150…記録用紙(媒体) 162…紫外線照射部(第1光源) 181〜185…ヘッドユニット(噴射ヘッド) 253…重合用ランプ(第2光源)
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化型インクは、紫外線を照射するまでは硬化が非常に遅く、紫外線を照射すると急速に硬化するという、印刷インクとして好ましい特性を有する。また、硬化にあたって溶剤を揮発させることがないので環境負荷が小さいという利点もある。
【0003】
更に、紫外線硬化型インクは、ビヒクルの組成により種々の媒体に高い付着性を発揮すると共に、硬化した後は化学的に安定しており、接着性、耐薬剤性、耐候性、耐摩擦性等が高く、屋外環境にも耐える等の優れた特性を有する。
【0004】
このため、紙、樹脂フィルム、金属箔等の薄いシート状の媒体の他、光記録媒体のレーベル面、テキスタイル製品など、ある程度立体的な表面形状を有するものに対しても画像を形成できる。
【0005】
紫外線硬化型インクを媒体に付着させる方法としては、塗布、印刷等もあり得るが、刷版なしに任意の画像またはパターンを精度よく形成できるインクジェット式記録装置の利用が期待されている。また、インクを吐出する記録ヘッドを移動させる主走査と、主走査方向に対して交差する方向に媒体を移動させる副走査とを組み合わせる構造により、限られた寸法のノズルを用いて、長尺あるいは面積の広い媒体に対しても任意の領域に画像が記録できる。
【0006】
下記特許文献1には、インクジェット記録装置において、インクに紫外線硬化剤を含有させて、記録直後の記録面に紫外線を照射することにより、記録面の速乾性を向上させることが記載されている。より具体的には、インクジェットプリンタにおいて、インクとして紫外線硬化型インクを使用して、記録ヘッドの主走査方向の両端に設置された紫外線ランプにより媒体に付着させたインクを即座に硬化させて定着させることが記載されている。
【0007】
紫外線硬化型インクを媒体に噴射する際、当該紫外線硬化型インクの溶媒が飛散し、ミストが生じやすいという問題がある。このため、ファンなどの排気機構を配置すると共にファンの排気経路上にフィルタを設けて、当該ミストをフィルタに吸着させる構成が提案されている。
【特許文献1】特開2004−155046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ミストを構成する有機溶媒はモノマーの状態であることが多く、引火温度が低くなっている。このため、紫外線ランプの発熱によってミストに引火する虞がある。特にミストを吸着させるフィルタにおいて有機溶媒の分子に引火する可能性があり、引火によってフィルタにダメージを与えてしまう虞がある。
【0009】
上述した事情に鑑み、本発明は、フィルタへのダメージを防ぐことが可能な流体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る流体噴射装置は、第1光の照射を受けて硬化する光硬化性材料が有機溶媒に溶解又は分散されてなる流体を媒体へ向けて噴射する噴射ヘッドと、前記媒体へ向けて前記第1の光を照射する第1光源と、前記噴射ヘッドの周囲及び前記第1光源の周囲の前記流体の飛沫を含む気体を排気する排気機構と、前記排気機構による排気経路上に設けられ前記有機溶媒の分子を吸着するフィルタと、前記フィルタに吸着した前記有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、排気機構による排気系路上に有機溶媒の分子を吸着するフィルタが設けられており、このフィルタに吸着される有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合手段が設けられているので、当該有機溶媒の分子同士がフィルタにおいて重合され、ポリマーとなる。有機溶媒の分子がポリマー化すると引火温度が高くなり、第1光源の発熱に対しても引火しにくくなる。これにより、有機溶媒の分子がフィルタにおいて引火するのを防ぐことができ、フィルタへのダメージを確実に防ぐことができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、支持面に前記媒体を支持しつつ回転する支持ドラムと、前記支持ドラムの回転軸方向と平行に延在する複数のガイド軸と、前記複数のガイド軸のうち第1ガイド軸に案内されて前記支持面に沿って往復移動可能に設けられ、前記噴射ヘッドを搭載する第1キャリッジと、前記複数のガイド軸のうち第2ガイド軸に案内されて前記支持面に沿って往復移動可能に設けられ、前記光源を搭載する第2キャリッジとを更に備える。
本発明では、支持面に媒体を支持しつつ回転する支持ドラムを有する構成において、上記重合手段を備える構成になっている。支持ドラムを有する構成では当該支持ドラムの回転に伴ってミストが広がりやすく、フィルタに多くのミストが吸着しやすい。本発明によれば、より多くのミストが吸着するフィルタにおいて当該ミストを構成する有機溶媒の分子同士を重合させてポリマー化することができる。これにより、フィルタにダメージを与えるのを確実に防ぐことができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記重合手段は、前記フィルタの表面及び前記フィルタの内部に設けられ前記有機溶媒の分子同士の重合反応を開始させる重合開始剤であることを特徴とする。
本発明によれば、重合手段がフィルタの表面及びフィルタの内部に設けられ有機溶媒の分子同士の重合反応を開始させる重合開始剤であることとしたので、当該有機溶媒の分子同士がフィルタの表面及びフィルタの内部で重合し、ポリマー化することとなる。これにより、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記有機溶媒は第2光の照射を受けて重合反応を開始する分子を含み、前記重合手段は、前記フィルタに向けて前記第2光を射出する第2光源であることを特徴とする。
本発明によれば、上記有機溶媒は第2光の照射を受けて重合反応を開始する分子を含み、重合手段が当該第2光をフィルタに向けて射出する第2光源であることとしたので、フィルタのうち第2光の照射領域において、有機溶媒の分子同士が第2光の照射によって重合することとなる。これにより、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0015】
上記の流体噴射装置は、前記フィルタは複数設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、フィルタが複数設けられているので、フィルタごとに異なる重合手段を設けることができる。例えば複数のフィルタのうち一部のフィルタには重合手段として重合開始剤を設けるようにし、他のフィルタには重合手段として第2光源を設けるようにするなどの設計が可能となる。このように、本発明によれば流体噴射装置の設計の幅が広がることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置100の概略構造を模式的に示す斜視図である。
【0017】
同図に示すように、インクジェット式記録装置(流体噴射装置)100は、互いに平行となるよう直立している一対のフレーム130間に設けられた記録部120と、給紙部112および排紙部114を含む給排紙部110とで構成されている。同図に示すように、給排紙部110と記録部120とは近接して設けられている。また、このインクジェット式記録装置100は、排気機構50及びフィルタ52を有している。
【0018】
記録部120は、一対のフレーム130の間に支持された支持ドラム140およびガイド軸132、134、136、138を有する。
支持ドラム140はフレーム130によって軸支された回転軸142を有している。当該回転軸142を中心として、図1中に示す矢印Rの方向に支持ドラム140が回転するようになっている。支持ドラム140の回転は、不図示のドラム駆動部により制御されるようになっている。支持ドラム140の表面は記録用紙(媒体)150を支持する支持面144になっており、当該支持面144に記録用紙150を保持した状態で回転可能になっている。
【0019】
記録部キャリッジ170は記録ヘッド180を搭載する筐体であり、支持ドラム140の支持面144に近接するように設けられている。記録部キャリッジ170には、支持ドラム140の回転軸142の方向に沿って2つの貫通孔が設けられている。互いに平行な4本のガイド軸132、134、136、138のうち、2つのガイド軸132、134は、記録部キャリッジ170の当該貫通孔をそれぞれ貫通するように設けられている。記録部キャリッジ170はこの貫通孔においてガイド軸132、134に支持されている。また、記録部キャリッジ170には不図示の駆動機構が設けられており、当該駆動機構によりガイド軸132、134によって支持された状態で当該ガイド軸の軸方向に移動可能になっている。記録部キャリッジ170がガイド軸の軸方向に移動することにより、記録ヘッド180が同方向に搬送されるようになっている。
【0020】
照射部キャリッジ160は紫外線照射部(第1光源)162を搭載する筐体であり、支持ドラム140の支持面144に沿って設けられている。照射部キャリッジ160には支持ドラム140の回転軸142の方向に沿って2つの貫通孔が設けられている。上記4本のガイド軸のうち残り2つのガイド軸136、138は、照射部キャリッジ160の当該貫通孔をそれぞれ貫通するように設けられている。照射部キャリッジ160はこの貫通孔においてガイド軸136、138にそれぞれ支持されている。また、照射部キャリッジ160には不図示の駆動機構が設けられおり、当該駆動機構によりガイド軸136、138に支持された状態で当該ガイド軸の軸方向に移動可能に設けられている。照射部キャリッジ160がガイド軸の軸方向に移動することにより、紫外線照射部162が同方向に搬送されるようになっている。
【0021】
給紙部112は、複数枚積層されたシート状の記録用紙150を収納すると共に記録用紙150を1枚ずつ支持ドラム140に向けて供給するようになっている。支持ドラム140に向けて供給された記録用紙150は、支持ドラム140の支持面144に巻き付けられ、支持ドラム140と共に回転するようになっている。
【0022】
記録部キャリッジ170に搭載された記録ヘッド180は、回転する支持ドラム140に保持された記録用紙150に対して紫外線硬化型インクを吐出して付着させる。照射部キャリッジ160に搭載された紫外線照射部162は、記録用紙150に付着した紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射し、紫外線硬化型インクを硬化させる。硬化した紫外線硬化型インクは画像として記録用紙150の表面に固定される。
【0023】
支持ドラム140が1回転すると、記録要旨150について支持ドラム140の長手方向の一部領域において記録用紙150に画像が記録されると、記録部キャリッジ170はガイド軸132、134に沿って移動して、上記領域に隣接した領域に対して同様の記録動作を実行する。
【0024】
その後、記録ヘッド180が記録動作をしながら支持ドラム140が1回転以上する毎に記録部キャリッジ170が移動するという動作を繰り返すことにより、記録用紙150表面全体に画像が形成される。
【0025】
換言すれば、インクジェット式記録装置100においては、支持ドラム140の回転方向が主走査方向であり、記録部キャリッジ170の移動方向が副走査方向となる。つまり、キャリッジの移動方向が主走査方向となり、記録用紙150の搬送方向がキャリッジの副走査方向と一致する多くの記録装置と異なっている。
【0026】
なお、紫外線照射部162を搬送する照射部キャリッジ160は、記録部キャリッジ170の移動に従って移動して、記録ヘッド180から記録用紙150上に吐出された直後の紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射する。
【0027】
好ましくは、照射部キャリッジ160および記録部キャリッジ170の移動開始のタイミングを僅かにずらすことにより、インクジェット式記録装置100の電源部に対する負荷のピークを軽減する。
【0028】
即ち、照射部キャリッジ160および記録部キャリッジ170を一体とした場合には、キャリッジの移動を開始する場合に加速の対象となる慣性質量が著しく大きくなるので、駆動機構への負荷が著しく大きくなる。また、大きな質量を安定に加速・減速させる場合には、強度が高く、重量の大きなフレーム130が求められる。従って、照射部キャリッジ160および記録部キャリッジ170を分離する構造により、電源装置の容量を低減して、装置規模の縮小、コストダウン等を図っている。
【0029】
こうして画像を記録された記録用紙150は、支持ドラム140から剥離されて、排紙部114に送り込まれて蓄積される。
【0030】
図2は、記録部120の構造を示す断面図である。
記録部120において、記録部キャリッジ170は、一対のガイド軸132、134に支持されると共に、インクタンク174を備えて、記録ヘッド180を支持する。
【0031】
インクタンク174は、不図示のインクカートリッジから補給されるインクを所定量保持して、記録ヘッド180に一定量のインクを安定的に供給する。
【0032】
記録ヘッド180は、支持ドラム140の支持面144に保持された記録用紙150に対向して配置され、記録用紙150に向かってインクを吐出する。
【0033】
紫外線照射部162は、支持ドラム140の回転方向に沿って整列された複数のランプユニット161を含む。これにより、支持ドラム140の回転に従って移動する記録用紙150の回転移動方向に沿って複数のランプユニット161が配される。従って、個々のランプユニット161の出力が小さい場合であっても、記録用紙150が回転する間に十分な紫外線照射量が得られる。
【0034】
このような記録部120において、記録ヘッド180から吐出されたインクが付着した記録用紙150は、支持ドラム140の回転に従って、図中に矢印Rにより示す方向に回転移動する。
【0035】
照射部キャリッジ160に支持された紫外線照射部162は、回転方向において記録ヘッド180の下流側に配置される。従って、記録ヘッド180から吐出されて記録用紙150に付着した紫外線硬化型インクは、即座に紫外線を照射されて硬化する。
【0036】
図3は、記録ヘッド180を搭載した記録部キャリッジ170を示す斜視図である。
記録部キャリッジ170は、ガイド軸132、134が挿通される一対の水平な貫通穴176と、インクタンク174とを備えたキャリッジ本体172を有する。記録ヘッド180は、キャリッジ本体172の上面に搭載される。
【0037】
図4は、記録ヘッド180を、図3に矢印Fで示す方向から見た様子を示す正面図である。
記録ヘッド180は、5個のヘッドユニット(噴射ヘッド)181、182、183、184、185を備える。ヘッドユニット181〜185の各々は、互いに種類の異なるインクを吐出するようになっている。具体的には、例えば、ホワイトW、マゼンタM、イエローY、シアンC、クリアCRの各インクが、ヘッドユニット181〜185のいずれかから吐出される。
【0038】
ヘッドユニット181〜185の各々は、支持ドラム140に対向する面にノズルプレート191〜195が配されている。ノズルプレート191〜195の各々には、紫外線硬化型インクを吐出するノズル孔が列状に形成される。具体的には、各ノズルプレート191〜195には、2つのノズル列L1,L2が形成され、各ノズル列L1,L2は、例えば、180個のノズルN(#1〜#180)から形成される。
【0039】
なお、ヘッドユニット181〜185からインクを吐出させる駆動構造としては、静電力等によりインクの液滴を吸引する方式、水晶振動子、圧電素子等を用いてインクを打ち出す方式など、種々の方法が既に知られており、用途に応じて適宜選択できる。
【0040】
図5は、照射部キャリッジ160に搭載された紫外線照射部162を示す斜視図である。
紫外線照射部162は、共通の照射部フレーム164に装着された複数のランプユニット161、163、165、167、169を備える。ランプユニット161〜169は、その長手方向に複数のランプユニット161〜169が整列されると共に、記録ヘッド180のヘッドユニット181〜185に対応して5列に配列される。
【0041】
なお、ランプユニット161〜169の個々の照射範囲の幅は、ヘッドユニット181〜185の個々の記録幅よりも広くすることが好ましい。これにより、照射部キャリッジ160および記録部キャリッジ170の移動のタイミングがずれる場合にも、記録用紙150に付着した紫外線硬化型インクに十分な照射量の紫外線を照射できる。
【0042】
また、ランプユニット161〜169としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等をいずれも例示できる。より具体的には、Fusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いることができる。
【0043】
更に、紫外帯域で発光するLEDを用いてランプユニットを形成することもできる。また、ランプユニット161〜169は、不可避に熱を発生するので、ランプユニット161〜169に放熱部を設ける他、強制的に冷却する設備を設けることも好ましい。
【0044】
なお、紫外線硬化型インクとしては、ビヒクル、光重合開始剤および顔料の混合物に、消泡剤、重合禁止剤等の補助剤を添加して調合され、有機溶媒に溶解又は分散された状態になっている。ビヒクルは、光重合硬化性を有するオリゴマー、モノマー等を、反応性希釈剤により粘度調整して調合される。従って、インクを硬化させる目的で溶媒を揮発させることはない。
【0045】
ビヒクルとしては、単官能あるいは多官能の重合性化合物が使用できる。より具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー(プレポリマー)を例示でき、インクとしての粘度を調整する反応性希釈剤もこれらの材料を用いることができる。
【0046】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系が広く用いられる。より具体的には、4−benzoyl−N,N,N−trimethyl benzene methaneannmonium chloride、2−hydroxy 3−(4−benzoyl−phenoxy)−N,N,N−trimethyl 1−propane annmonium chloride、4−benzoyl−N,N−dimethyl N−[2−(1−oxo−2−propenyloxy) ethyl] benzene methammonium bromide等、第4級アンモニウム塩型の水溶性有機物等を用いることができる。
【0047】
この種の光重合開始剤は、その組成に応じて、紫外線吸収特性、反応開始効率、黄変性等が異なるので、インクとしての色等に応じて使い分けられる。
【0048】
重合禁止剤としては、ラジカル捕捉能力を有してラジカル重合を阻害する化合物であれば何れも使用できる。ただし、インクジェット式記録装置における吐出適性等を配慮すると、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類から選択された少なくとも1種類以上の化合物が好ましい。
【0049】
ハイドロキノン類としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチルハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等を例示できる。カテコール類としては、カテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール等を例示できる。ヒンダードアミン類としては、テトラメチルピペリジニル基を有する化合物等を例示できる。
【0050】
また、フェノール類としては、フェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸アルキルエステル等を例示できる。フェノチアジン類としては、フェノチアジン等を例示できる。前記縮合芳香族環のキノン類としては、ナフトキノン等を例示できる。
【0051】
更に、重合禁止剤は、カーボンブラックまたは表面に重合防止官能基を導入した無機・有機微粒子であってもよい。重合防止官能基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、テトラメチルピペリジニル基、縮合芳香族環等を例示できる。
【0052】
図2に戻って、インクジェット式記録装置100に設けられた排気機構50及びフィルタ52について説明する。排気機構50には、排気ファン51と当該排気ファン51の回転を制御する不図示の制御機構とが設けられている。排気ファン51はインクジェット式記録装置100のうち装置外部に接する位置に設けられている。排気ファン51が回転することにより、インクジェット式記録装置100の内部、特に記録部キャリッジ170及び照射部キャリッジ180の周囲の雰囲気が図中破線矢印で示すような排出経路に沿って外部に排出されるようになっている。
【0053】
フィルタ52は、インクジェット式記録装置100の内部であって排気機構50の排気経路上の位置、例えば排気ファン51の内部側に近接する位置に設けられている。ヘッドユニット181〜185によってインクが記録用紙150に噴射されると、インクのうち例えば有機溶媒などがミスト状になって雰囲気中に飛散する。このフィルタ52は、排気される雰囲気に有機溶媒が含まれないようにするため、排気ファン51によって排気経路上を移動してきた雰囲気のうち有機溶媒を吸着する。フィルタ52の表面及び内部には、有機溶媒の分子を重合させる重合開始剤53が含まれている。
【0054】
フィルタ52に含まれる重合開始剤53として、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物等が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。具体的には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4−、PF6−、AsF6−、SbF6−、CF3SO3−塩を挙げることができる。また、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、鉄アレン錯体などが挙げられる。フィルタ52に含まれる重合開始剤により、当該フィルタ52に付着した有機溶媒の分子同士が重合反応を起こしてポリマー化するようになっている。
【0055】
本実施形態によれば、排気機構50による排気系路上に有機溶媒の分子を吸着するフィルタ52が設けられており、このフィルタ52には吸着される有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合開始剤53が設けられているので、当該有機溶媒の分子同士がフィルタ52において重合され、ポリマーとなる。有機溶媒の分子がポリマー化すると引火温度が高くなり、紫外線照射部162の発熱に対しても引火しにくくなる。これにより、有機溶媒の分子がフィルタ52において引火するのを防ぐことができ、フィルタ52へのダメージを確実に防ぐことができる。
【0056】
また、本実施形態では、支持面144に記録用紙150を支持しつつ回転する支持ドラム140を有する構成において、重合開始剤を含んだフィルタ52を備える構成になっている。支持ドラム140を有する構成では当該支持ドラム140の回転に伴ってミストが広がりやすく、フィルタ52に多くのミストが吸着しやすい。本実施形態によれば、より多くのミストが吸着するフィルタ52において当該ミストを構成する有機溶媒の分子同士を重合させてポリマー化することができる。これにより、フィルタ52にダメージを与えるのを確実に防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、有機溶媒の分子同士の重合反応を開始させる重合開始剤がフィルタ52の表面及びフィルタ52の内部に設けられていることとしたので、当該有機溶媒の分子同士をフィルタ52の表面及びフィルタ52の内部で重合させ、ポリマー化させることができる。このように、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、フィルタの構成が第1実施形態とは異なっているので、当該相違点を中心に説明する。また、第1実施形態と同一の構成要素は第1実施形態と同一の符号を付して示すこととし、その説明を簡略化または省略する。
【0059】
図6は本実施形態に係るインクジェット式記録装置200のうち記録部220の概略構成を示す断面図であり、第1実施形態における図2に対応している。
同図に示すように、ジンクジェット式記録装置200の記録部220において、記録部キャリッジ170は、支持ドラム140に近接して設けられ、一対のガイド軸132、134に支持されている。記録部キャリッジ170はインクタンク174を備えており、記録ヘッド180を支持している。照射部キャリッジ160は紫外線照射部162を搭載しており、支持ドラム140の支持面144に沿って設けられている。
【0060】
インクジェット式記録装置200には排気機構250とフィルタ252とが設けられている。この排気機構250には、排気ファン251と当該排気ファン251の回転を制御する不図示の制御機構とが設けられている。排気ファン251はインクジェット式記録装置200のうち装置外部に接する位置に設けられている。排気ファン251が回転することにより、インクジェット式記録装置200の内部、特に記録部キャリッジ170及び照射部キャリッジ180の周囲の雰囲気が図中破線矢印で示すような排出経路に沿って外部に排出されるようになっている。
【0061】
フィルタ252は、インクジェット式記録装置200の内部であって排気機構250の排気経路上の位置、例えば排気ファン251の内部側に近接する位置に設けられている。このフィルタ252は、排気される雰囲気に有機溶媒が含まれないようにするため、排気ファン251によって排気経路上を移動してきた雰囲気のうち有機溶媒を吸着する。フィルタ252の近傍には、当該フィルタ252の表面に紫外線Lを照射する重合用ランプ(第2光源)253が設けられている。重合用ランプ253は、紫外線を射出する光源253aと、当該光源253からの紫外線をフィルタ252へ向けて反射するリフレクタ253bとを有している。
【0062】
有機溶媒には紫外線の照射によって分子同士が重合反応を起こすような材料を含んだ構成であっても良いし、あるいは重合開始剤が含まれた構成であっても構わない。重合用ランプ253からの光はフィルタ252のうち有機溶媒の分子が吸着する表面252aに照射される。当該紫外線の照射によって、有機溶媒の分子同士の間で重合反応が引き起こされ、有機溶媒の分子がポリマー化する。
【0063】
本実施形態によれば、有機溶媒は紫外線を照射することで重合反応を開始する分子を含んでおり、紫外線をフィルタ252に向けて射出する重合用光源253を設けることとしたので、フィルタ252のうち紫外線Lの照射領域において、有機溶媒の分子同士が紫外線の照射によって重合することとなる。これにより、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0064】
このような構成によれば、当該紫外線をフィルタ252に向けて射出する重合用光源であることとしたので、フィルタ252のうち紫外線の照射領域において、有機溶媒の分子同士が紫外線の照射によって重合することとなる。これにより、有機溶媒の分子同士を効果的に重合させることができる。
【0065】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、フィルタ52、252を1つの支持ドラム140に対して1つだけ配置する構成としたが、これに限られることは無く、図7に示すように、複数のフィルタ52、252を配置する構成であっても構わない。図7にはフィルタ52、252が2つ設けられている例を示されているが、フィルタ52、252が3つ以上設けられている構成であっても勿論構わない。また、図7にはフィルタ52が排気経路に沿って2重に配列されている例が示されているが、排気経路上であれば例えば図中一点鎖線で示す位置52A及び位置52Bのように2重になっていなくても構わない。
【0066】
また、複数のフィルタを配置する場合、複数のフィルタ52、252のそれぞれについて、重合開始剤を含ませる構成及び紫外線を照射する構成のどちらの構成を適用させても構わない。図7に示す構成の場合、2つのフィルタのうち一方のフィルタには重合開始剤を含ませておき、他方のフィルタには紫外線を照射する構成としても構わない。
【0067】
また、上記第2実施形態において、フィルタ252に照射する位置が排気経路の上流側の表面252aであるとしたが、これに限られることは無く、例えばフィルタ252を排気機構250とは離間させて配置し、フィルタ252に対して排気経路の下流側の表面に紫外線を照射する構成であっても構わない。
【0068】
また、上記各実施形態においては、ドラム型(円筒状)の支持部材に媒体を支持して、支持部材を回転させながら記録を行うドラム型のインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、紫外線硬化型インクを用いて記録するインクジェット記録装置であれば、他の構成であっても本発明の適用は可能である。
【0069】
また、上記第1実施形態ではフィルタ52に重合開始剤53を含ませる構成を、上記第2実施形態ではフィルタ252に紫外線を照射する構成を、それぞれ例に挙げて説明したが、これらの構成を組み合わせた構成、つまり、1つのフィルタに重合開始剤を含ませると共に当該フィルタに紫外線を照射する構成としても構わない。
【0070】
また、上記実施形態では、ミストを含んだ雰囲気がそのままフィルタ52、252を通過する構成としたが、これに限られることは無く、例えばミストを含んだ雰囲気についてある程度のミストを予め除去してからフィルタ52、252を通過させるように構成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット式記録装置の構成を示す図。
【図2】記録部の断面構造を示す図。
【図3】記録部キャリッジを示す斜視図。
【図4】記録ヘッドの正面図(図3の矢視F)。
【図5】紫外線照射部を示す斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態に係るインクジェット式記録装置の断面構造を示す図。
【図7】本発明のインクジェット式記録装置の他の構成を示す図。
【符号の説明】
【0072】
50、250…排気機構 51、251…排気ファン 52、252…フィルタ 100…インクジェット式記録装置(流体噴射装置) 150…記録用紙(媒体) 162…紫外線照射部(第1光源) 181〜185…ヘッドユニット(噴射ヘッド) 253…重合用ランプ(第2光源)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光の照射を受けて硬化する光硬化性材料が有機溶媒に溶解又は分散されてなる流体を媒体へ向けて噴射する噴射ヘッドと、
前記媒体へ向けて前記第1の光を照射する第1光源と、
前記噴射ヘッドの周囲及び前記第1光源の周囲の前記流体の飛沫を含む気体を排気する排気機構と、
前記排気機構による排気経路上に設けられ前記有機溶媒の分子を吸着するフィルタと、
前記フィルタに吸着した前記有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合手段と
を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
支持面に前記媒体を支持しつつ回転する支持ドラムと、
前記支持ドラムの回転軸方向と平行に延在する複数のガイド軸と、
前記複数のガイド軸のうち第1ガイド軸に案内されて前記支持面に沿って往復移動可能に設けられ、前記噴射ヘッドを搭載する第1キャリッジと、
前記複数のガイド軸のうち第2ガイド軸に案内されて前記支持面に沿って往復移動可能に設けられ、前記光源を搭載する第2キャリッジと
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記重合手段は、
前記フィルタの表面及び前記フィルタの内部に設けられ前記有機溶媒の分子同士の重合反応を開始させる重合開始剤である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記有機溶媒は第2光の照射を受けて重合反応を開始する分子を含み、
前記重合手段は、前記フィルタに向けて前記第2光を射出する第2光源である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記フィルタは複数設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項1】
第1光の照射を受けて硬化する光硬化性材料が有機溶媒に溶解又は分散されてなる流体を媒体へ向けて噴射する噴射ヘッドと、
前記媒体へ向けて前記第1の光を照射する第1光源と、
前記噴射ヘッドの周囲及び前記第1光源の周囲の前記流体の飛沫を含む気体を排気する排気機構と、
前記排気機構による排気経路上に設けられ前記有機溶媒の分子を吸着するフィルタと、
前記フィルタに吸着した前記有機溶媒の分子同士の間に重合反応を起こさせる重合手段と
を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
支持面に前記媒体を支持しつつ回転する支持ドラムと、
前記支持ドラムの回転軸方向と平行に延在する複数のガイド軸と、
前記複数のガイド軸のうち第1ガイド軸に案内されて前記支持面に沿って往復移動可能に設けられ、前記噴射ヘッドを搭載する第1キャリッジと、
前記複数のガイド軸のうち第2ガイド軸に案内されて前記支持面に沿って往復移動可能に設けられ、前記光源を搭載する第2キャリッジと
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記重合手段は、
前記フィルタの表面及び前記フィルタの内部に設けられ前記有機溶媒の分子同士の重合反応を開始させる重合開始剤である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記有機溶媒は第2光の照射を受けて重合反応を開始する分子を含み、
前記重合手段は、前記フィルタに向けて前記第2光を射出する第2光源である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記フィルタは複数設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−183868(P2009−183868A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26691(P2008−26691)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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