説明

流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造

【課題】流体圧シリンダにおいてピストンロッドに付着した塵埃を確実且つ安定的に除去し、シリンダ本体への進入を防止する。
【解決手段】流体圧シリンダ10を構成するシリンダチューブ12の端部には、ロッドカバー14が設けられ、そのロッド孔42にはピストンロッド18が挿通される。このロッドカバー14には、内周面に形成された装着溝50を介してスクレーパ58と、該スクレーパの内部に装着される環状のリング体66が設けられる。スクレーパ58は、自己潤滑性を有した樹脂製材料から断面U字状に形成され、その内部に弾性材料から断面円形状に形成されたリング体66が挿入される。そして、スクレーパ58の内筒部64が、ピストンロッド18の外周面18aに摺接すると共に、該内筒部64が、リング体66の弾性力によって前記外周面18a側に押圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力流体の供給作用下にシリンダ本体の内部に沿ってピストンを変位させる流体圧シリンダに用いられ、前記シリンダ本体内への塵埃等を進入を防止する塵埃除去構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワーク等の搬送手段として、例えば、圧力流体の供給作用下に変位するピストンを有する流体圧シリンダが用いられている。
【0003】
このような流体圧シリンダでは、筒状のシリンダ本体の内部に画成されたシリンダ室にピストンが変位自在に設けられると共に、前記シリンダ本体の両端部にそれぞれヘッドカバー及びロッドカバーが装着され、前記シリンダ室を閉塞している。また、ピストンには、軸状のピストンロッドが連結され、ロッドカバーに挿通されることによって変位自在に支持されている。また、流体圧シリンダでは、ピストンがロッドカバー側へ変位した際に、ピストンロッドが前記ロッドカバーを通じて外部に突出して露呈し、前記ピストンロッドの外周面に塵埃等が付着することがある。そのため、ロッドカバーの内周面には、このような塵埃を除去する目的でスクレーパが装着され、該スクレーパが前記ピストンロッドの外周面に摺接している。
【0004】
そして、ピストンロッドがシリンダチューブ内に引き込まれる際、例えば、ロッドカバーの内部に設けられたスクレーパによって前記ピストンロッドの外周面に付着した塵埃等が除去される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−218339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなスクレーパは、一般的に、ゴム等の弾性材料から形成されており、該弾性材料の弾性力を利用してピストンロッドの外周面に対して摺接させている。しかしながら、弾性材料の弾性力のみでは、スクレーパをピストンロッドに対して長期にわたって安定的に押し付けておくことが難しい。その結果、スクレーパの押圧力が不安定又は不十分となった場合に、塵埃等が十分に除去されることなくピストンロッドと共にシリンダ本体の内部へと進入してしまうことが懸念される。
【0007】
また、スクレーパがピストンロッドに対して摺接することによって外周面に付着した塵埃等を除去する際、同時に、前記外周面を潤滑する目的で塗布された潤滑剤を除去してしまうことが懸念され、その結果として、前記ピストンロッドとロッドカバーとの間の潤滑性が低下することが想定される。この場合、ピストンロッドを含むピストンが変位する際の変位抵抗が増加し、円滑に変位させることが困難となる。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、ピストンロッドに付着した塵埃を確実且つ安定的に除去し、シリンダ本体への進入を防止可能な流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、圧力流体が内部に導入されるシリンダ本体と、該シリンダ本体の内部に変位自在に設けられたピストンと、該ピストンに連結され前記シリンダ本体の外部へ突出するように変位するピストンロッドと、前記シリンダ本体に設けられ、前記ピストンロッドを変位自在に保持するロッドカバーとを備えた流体圧シリンダにおいて、前記ピストンロッドに付着した塵埃を除去する塵埃除去構造であって、
前記ロッドカバーには、樹脂製材料から弾性変形自在に形成され、前記ピストンロッドの外周面に摺接するスクレーパと、
前記スクレーパの内部に設けられ、該スクレーパを前記外周面側に向かって押圧する弾性を有した弾性部材と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、流体圧シリンダを構成するロッドカバーにおいて、樹脂製材料からなり、前記ロッドカバーによって変位自在に保持されたピストンロッドの外周面に摺接するスクレーパを設けると共に、前記スクレーパの内部に、弾性を有した弾性部材を設けている。また、スクレーパが、弾性変形自在に形成され、一方、弾性部材は、スクレーパをピストンロッドの外周面側に向かって押圧可能な弾性を有している。
【0011】
従って、スクレーパをピストンロッドの外周面に摺接させる際、弾性部材の弾性によって前記スクレーパを前記外周面側へと好適に押圧することができるため、該スクレーパを確実且つ安定的に摺接させることが可能となる。その結果、スクレーパによる塵埃除去機能が、長期間にわたって安定的に得られ、前記ピストンロッドの外周面に付着した塵埃を確実に除去し、シリンダ本体内に進入することを防止できる。
【0012】
また、スクレーパを、ピストンロッドの変位方向に開口した断面U字状に形成するとよい。さらに、弾性部材を、断面円形状のリング状に形成するとよい。
【0013】
さらにまた、スクレーパを、自己潤滑性を有した樹脂製材料から形成することにより、ピストンロッドの外周面に摺接させた場合における摺動抵抗を低減させることができ、例えば、前記外周面における潤滑が不十分な場合でも前記ピストンロッドを円滑に変位させることができる。
【0014】
またさらに、ピストンロッドの外周面に、被膜層を設けるとよい。これにより、被覆層によってピストンの外周面とスクレーパとの間における接触抵抗がより一層低減され、前記ピストンロッドをより一層円滑に変位させることができると共に、該ピストンロッドの防錆性及び耐久性を向上させることができる。
【0015】
また、ロッドカバーには、ピストンロッドの外周面に臨み、該外周面を潤滑する潤滑剤の保持される保持空間を備えるとよい。これにより、保持空間において潤滑剤を長期間にわたって安定的に保持することができると共に、前記潤滑剤によってピストンロッドの外周面に付着した塵埃等を内部に取り込んで除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0017】
すなわち、流体圧シリンダを構成するロッドカバーにおいて、樹脂製材料からなり、前記ロッドカバーによって変位自在に保持されたピストンロッドの外周面に摺接するスクレーパを設けると共に、前記スクレーパの内部に、弾性を有した弾性部材を設けることにより、スクレーパをピストンロッドの外周面に摺接させる際、弾性部材の弾性によって前記スクレーパを前記外周面側へと好適に押圧することができるため、該スクレーパを確実且つ安定的に摺接させることが可能となる。その結果、スクレーパによる塵埃除去機能が、長期間にわたって安定的に得られ、前記ピストンロッドの外周面に付着した塵埃を確実に除去し、シリンダ本体内に進入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る塵埃除去構造が適用された流体圧シリンダの全体断面図である。
【図2】図1におけるロッドカバーの近傍を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0020】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る塵埃除去構造が適用された流体圧シリンダを示す。
【0021】
この流体圧シリンダ10は、図1に示されるように、有底筒状のシリンダチューブ(シリンダ本体)12と、前記シリンダチューブ12の一端部に装着されるロッドカバー14と、前記シリンダチューブ12の内部に変位自在に設けられるピストン16と、前記ピストン16に連結され前記ロッドカバー14に変位自在に支持されるピストンロッド18と、前記ピストンロッド18に付着した塵埃等を除去可能な塵埃除去機構20とを含む。
【0022】
シリンダチューブ12は、その中央部に軸線方向(矢印A、B方向)に沿った延在したシリンダ孔22を有し、前記シリンダ孔22は、前記シリンダチューブ12の一端部側(矢印A方向)で開口している。一方、シリンダチューブ12の他端部には、壁部24が一体的に形成され前記シリンダ孔22を閉塞している。
【0023】
また、シリンダチューブ12の外側面には、圧力流体の供給・排出される第1ポート26及び第2ポート28が形成される。第1ポート26は、シリンダチューブ12の一端部近傍に設けられ、一方、第2ポート28は、前記シリンダチューブ12の他端部近傍に設けられ、それぞれ図示しない配管及び切換装置を介して圧力流体源に接続されている。そして、第1及び第2ポート26、28は、シリンダ孔22側に向かって延在する連通路30を通じて前記シリンダ孔22と連通している。
【0024】
ロッドカバー14は、小径部32と、該小径部32に隣接した大径部34とを有し、前記小径部32が、シリンダチューブ12における壁部24側(矢印B方向)となるように配置される。そして、小径部32と大径部34との間に形成された段付部が、前記シリンダ孔22の一端部に形成された段差に係合されることにより、シリンダ孔22に対して位置決めされる。また、ロッドカバー14は、シリンダ孔22の内周面に形成された環状溝に係止リング40を装着することにより、該係止リング40が前記大径部34の端面34aに当接し、前記ロッドカバー14がシリンダ孔22の開口部側(矢印A方向)へと移動することが阻止された状態で固定される。
【0025】
また、ロッドカバー14の中央部には、図1及び図2に示されるように、軸線方向(矢印A、B方向)に沿って貫通したロッド孔42が形成され、前記ロッド孔42にはピストンロッド18が挿通される。すなわち、ロッド孔42は、小径部32及び大径部34を貫通するように形成されている。一方、小径部32の外周面には、環状溝を介してOリング44が装着され、シリンダ孔22の内周面に当接している。
【0026】
一方、ロッド孔42の内周面には、小径部32の内周側となる位置に形成されたパッキン溝46を介してロッドパッキン48が装着される。このロッドパッキン48は、例えば、ゴム等の弾性材料から断面V字状且つ環状に形成され、開口した部位がピストン16側(矢印B方向)となるように配置されている。
【0027】
また、ロッド孔42の内周面には、塵埃除去機構20が設けられ、大径部34の端面34a側(矢印A方向)に向かって開口した環状の装着溝50が形成される。装着溝50は、大径部34の端面34a側(矢印A方向)に形成される第1溝部52と、ロッドパッキン48側(矢印B方向)に形成される第2溝部54と、前記第1溝部52と前記端面との間に形成される挿入口56とからなる。
【0028】
第1溝部52は、断面略矩形状で、ロッドパッキン48の装着されるパッキン溝46より大径に形成され、その内部には断面U字状で環状に形成されたスクレーパ58が装着される。スクレーパ58は、例えば、自己潤滑性を有した樹脂製材料から形成され、第1溝部52の外周面に当接する外筒部60と、該外筒部60に対して直角に折曲して半径内方向に延在する接続部62と、前記接続部62に対して折曲し、半径内方向に向かって所定角度傾斜した内筒部64とから構成される。換言すれば、内筒部64は、接続部62に接続された部位を基点として徐々に外筒部60から離間するように傾斜している。
【0029】
また、スクレーパ58は、接続部62に対して内筒部64及び外筒部60が略同一方向に突出するように形成され、前記内筒部64は、接続部62との接続部位を基点として、外筒部60に接近・離間する方向(図2中、矢印C方向)、すなわち、半径方向に弾発力を有している。
【0030】
そして、スクレーパ58は、大径部34の端面34a側(矢印A方向)に向かって開口するように装着されると共に、内筒部64の先端が、スクレーパ58の弾発作用下にロッド孔42に挿通されたピストンロッド18の外周面18aに対して押圧され摺接している。この際、内筒部64の先端は、ピストンロッド18の外周面18aに対して所定圧力で斜めに押し付けられている。
【0031】
一方、スクレーパ58の内部には、例えば、ゴム等の弾性材料から断面円形状に形成されたリング体66が設けられる。詳細には、リング体66は、その外周面が外筒部60、内筒部64及び接続部62に対してそれぞれ当接するように装着される。
【0032】
このリング体66の断面直径Dは、スクレーパ58における外筒部60と内筒部64との離間距離Lより大きくなるように設定される(図2中、D>L)。詳細には、リング体66の外周面が、スクレーパ58における接続部62に当接した状態で、外筒部60と内筒部64を互いに離間する方向に押圧可能な断面直径Dで形成され、前記外筒部60と内筒部64との間で若干だけ押し潰された状態で装着されている。
【0033】
第2溝部54は、第1溝部52の側面に対してロッドパッキン48側(矢印B方向)へと延在し、且つ、前記第1溝部52及びパッキン溝46の内周径より小径で形成される。そして、第2溝部54、スクレーパ58の内筒部64とピストンロッド18の外周面18aとの間に設けられた空間(保持空間)68に、例えば、グリス等の粘性を有した潤滑剤70が充填される。すなわち、第2溝部54は、ピストンロッド18とロッドカバー14との間の潤滑を営む潤滑剤70の充填される充填空間として機能する。
【0034】
これにより、ピストンロッド18の外周面18aが、ロッド孔42において潤滑剤70で覆われ、空間68を通過することによって前記外周面18aに対して前記潤滑剤70が塗布されることとなる。
【0035】
挿入口56は、第1溝部52の内周径より若干だけ小径で形成されると共に、該第1溝部52から大径部34の端面34a側(矢印A方向)に向かって徐々に内周径が拡径するように形成される。すなわち、挿入口56の内周径は、第1溝部52側(矢印B方向)が最も小さくなるように設定されている。このように、挿入口56を、第1溝部52の内周径より小さく形成することにより、該第1溝部52に装着されたスクレーパ58が該挿入口56を通じて外部に脱抜することが防止される。また、挿入口56を、第1溝部52側(矢印B方向)に向かって徐々に縮径するテーパ状とすることにより、スクレーパ58及びリング体66を第1溝部52に対して挿入する際に容易となる。
【0036】
すなわち、上述したスクレーパ58、リング体66及び潤滑剤70が、ピストンロッド18の外周面18aに付着した塵埃等を除去可能な塵埃除去機構20として機能する。
【0037】
ピストン16は、断面円形状に形成され、その外周面には環状溝を介してピストンパッキン72及び磁性体74がそれぞれ装着される。そして、ピストンパッキン72がシリンダ孔22の内周面に摺接することにより、該シリンダ孔22とピストン16との間を通じた圧力流体の漏出が防止され、一方、シリンダチューブ12の外側面に設けられた位置検出センサ(図示せず)によって前記磁性体74の位置を検出することにより、シリンダチューブ12内におけるピストン16の変位位置、変位量が確認される。
【0038】
一方、ピストン16の略中央部には、軸線方向(矢印A、B方向)に沿って貫通した孔部76にピストンロッド18の一端部が挿通されて加締められている。ピストンロッド18は、ピストン16の端部から突出することがないように連結されている。
【0039】
ピストンロッド18は、略一定の直径で形成され、ピストン16に連結される一端部が縮径して形成される。このピストンロッド18の外周面18aには、例えば、フッ素樹脂等でコーティングされた被覆層が設けられる。そして、ピストンロッド18は、ロッド孔42に挿通された際、その外周面18aにロッドパッキン48が摺接している。
【0040】
本発明の実施の形態に係る塵埃除去構造が適用された流体圧シリンダ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、図1に示されるピストン16がシリンダチューブ12の壁部24側(矢印B方向)に変位した状態を初期位置として説明する。
【0041】
先ず、この初期位置において圧力流体供給源(図示せず)から圧力流体を第2ポート28へと導入することにより、連通路30を通じてシリンダ孔22へと前記圧力流体が供給され、ピストン16と壁部24との間に供給された圧力流体によって該ピストン16がロッドカバー14側(矢印A方向)に向かって押圧され変位する。なお、この場合、第1ポート26は大気開放状態にある。これにより、ピストンロッド18が、ピストン16と共に壁部24から離間する方向(矢印A方向)へと変位し、ロッドカバー14に対して徐々に外部へと突出していき、ピストン16の端面がロッドカバー14における小径部32の端面に当接することにより変位終端位置となる。
【0042】
この際、第2溝部54及びスクレーパ58の内周側に充填された潤滑剤70によってピストンロッド18の外周面18aが潤滑されるため、該ピストンロッド18の摺動抵抗が低減されて円滑に変位させることができる。詳細には、ピストンロッド18の外周面18aとスクレーパ58の内筒部64との接触抵抗が低減される。
【0043】
次に、ピストン16を上述した変位終端位置から再び初期位置へと復帰させる場合には、第2ポート28に供給されていた圧力流体を、図示しない切換装置を介して第1ポート26へと供給することにより、連通路30を通じてシリンダ孔22へと供給された圧力流体によってピストン16がロッドカバー14から離間する方向(矢印B方向)に向かって徐々に押圧される。この場合、第2ポート28は大気開放状態にある。
【0044】
そして、ピストン16の変位と共にピストンロッド18が徐々にロッドカバー14の内部に収容されるように変位する。この際、ピストンロッド18の外周面18aには、スクレーパ58の内筒部64が摺接しているため、ピストン16が壁部24側(矢印B方向)に向かって変位し続けている間、該内筒部64の先端によって前記ピストンロッド18の外周面18aに付着した塵埃等が継続的に除去され、該塵埃等の除去された状態で前記ロッドカバー14の小径部32を経てシリンダ孔22内へと徐々に収容されていく。
【0045】
この内筒部64は、スクレーパ58の弾性力に加えて、該スクレーパ58の内部に設けられたリング体66の弾発力によってピストンロッド18の外周面18aを所定圧力で押圧している。
【0046】
また、スクレーパ58によって完全に除去されず、ピストンロッド18の外周面18aに残存した塵埃等は、該スクレーパ58に隣接した空間68を通過する際に、該空間68に充填された潤滑剤70に接触することによって粘性を有した該潤滑剤70の内部に取り込まれ除去されることとなる。その結果、スクレーパ58及び潤滑剤70によって塵埃等が除去されたピストンロッド18が、シリンダ孔22の内部に徐々に収容される。
【0047】
そして、ピストン16がシリンダチューブ12において壁部24に当接することにより、圧力流体の供給が停止して初期位置となる。
【0048】
以上のように、本実施の形態では、ロッドカバー14の装着溝50に設けられるスクレーパ58を、自己潤滑性を有した樹脂製材料から形成することにより、ピストンロッド18の外周面18aに摺接させた場合における摺動抵抗を低減させることができ、例えば、前記外周面18aにおける潤滑剤70の塗布量が少ない場合でもピストン16及びピストンロッド18を円滑に変位させることができる。
【0049】
また、スクレーパ58の内部に、弾性を有したリング体66を装着し、該リング体66の弾性力が、該スクレーパ58の内筒部64がピストンロッド18の外周面18a側に向かって付勢するように設けることにより、前記内筒部64の弾性力に加え、前記リング体66の弾性力を付与することができるため、該内筒部64を前記ピストンロッド18の外周面18aに対して安定した押圧力で押圧することが可能となる。その結果、スクレーパ58による塵埃除去機能が、長期間にわたって安定的に得られる。
【0050】
換言すれば、スクレーパ58の弾性力が低下した場合でも、リング体66の弾性力によって該スクレーパ58の内筒部64がピストンロッド18の外周面18a側へと押圧されるため、前記ピストンロッド18に対して安定的に摺接させることが可能となる。
【0051】
さらに、ロッドカバー14の内周面に、潤滑剤70の充填される空間68を設けることにより、前記空間68において前記潤滑剤70を長期間にわたって安定的に保持することができると共に、粘性を有した潤滑剤70を用いることによってピストンロッド18の外周面18aに付着した塵埃等を内部に取り込んで除去することが可能となる。
【0052】
さらにまた、ピストンロッド18の外周面18aに、例えば、フッ素樹脂等でコーティングされた被覆層を設けることにより、前記被覆層によって前記外周面18aとスクレーパ58との接触抵抗がさらに低減され、前記ピストンロッド18をより一層円滑に変位させることができると共に、該ピストンロッド18の防錆性及び耐久性を向上させることができる。
【0053】
なお、本発明に係る流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0054】
10…流体圧シリンダ 12…シリンダチューブ
14…ロッドカバー 16…ピストン
18…ピストンロッド 20…塵埃除去機構
22…シリンダ孔 32…小径部
34…大径部 42…ロッド孔
50…装着溝 52…第1溝部
54…第2溝部 56…挿入口
58…スクレーパ 60…外筒部
64…内筒部 66…リング体
68…空間 70…潤滑剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力流体が内部に導入されるシリンダ本体と、該シリンダ本体の内部に変位自在に設けられたピストンと、該ピストンに連結され前記シリンダ本体の外部へ突出するように変位するピストンロッドと、前記シリンダ本体に設けられ、前記ピストンロッドを変位自在に保持するロッドカバーとを備えた流体圧シリンダにおいて、前記ピストンロッドに付着した塵埃を除去する塵埃除去構造であって、
前記ロッドカバーには、樹脂製材料から弾性変形自在に形成され、前記ピストンロッドの外周面に摺接するスクレーパと、
前記スクレーパの内部に設けられ、該スクレーパを前記外周面側に向かって押圧する弾性を有した弾性部材と、
を備えることを特徴とする流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造。
【請求項2】
請求項1記載の塵埃除去構造において、
前記スクレーパは、前記ピストンロッドの変位方向に開口した断面U字状に形成されることを特徴とする流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塵埃除去構造において、
前記弾性部材は、断面円形状のリング状に形成されることを特徴とする流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塵埃除去構造において、
前記スクレーパは、自己潤滑性を有した樹脂製材料から形成されることを特徴とする流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塵埃除去構造において、
前記ピストンロッドの外周面には、被膜層が設けられることを特徴とする流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の塵埃除去構造において、
前記ロッドカバーには、前記ピストンロッドの外周面に臨み、該外周面を潤滑する潤滑剤が保持される保持空間を備えることを特徴とする流体圧シリンダに用いられる塵埃除去構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−226567(P2011−226567A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97208(P2010−97208)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】