説明

流体圧シリンダ及びシリンダボディ

【課題】軸方向に大型化することなく、簡単な構成で、ピストンがストロークエンド近くまで移動したときのピストンの移動速度を減速させること。
【解決手段】シリンダボディ12における両ピストン27,28のストローク途中の位置には、隣り合う二つのシリンダ室25,26同士を連通させるヘッド側連通通路41及びロッド側連通通路42が形成されている。さらに、第1〜第4給排孔12a,12b,12c,12dには、両ピストン27,28の移動に伴い第1〜第4圧力作用室25a,25b,26a,26bから排出される空気の流量が異なるように独立して絞る第1〜第4絞り弁51b,52b,53b,54bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダ及びシリンダボディに関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧シリンダは、流体圧の供給に基づいて、例えばピストンが直線的に移動され、そのピストンの移動に伴い、ワーク搬送用のテーブルが直線的に移動される。このような流体圧シリンダでは、テーブルの移動ストロークの終端において、テーブルの急激な停止によるワークの損傷等を防止するために、テーブルの移動速度を緩やかに低下させる緩衝機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のリニアアクチュエータにおいて、基台(シリンダボディ)の内部には、軸線方向(軸方向)に延びる二つのシリンダ孔が平行に形成されるとともに、各シリンダ孔内にピストンが収容されている。一方のピストンの外周面にはパッキンが二つ取り付けられるとともに、他方のピストンの外周面にはパッキンが一つ取り付けられている。また、各シリンダ孔のヘッド側の端部はヘッドカバーにより閉塞されるとともに、ロッド側の端部はロッドカバーが取り付けられることにより閉塞されている。さらに、各ピストンにはピストンロッドが連結されるとともに、各ピストンロッドはロッドカバーを介して基台に出没可能に支持されている。各シリンダ孔内は、ピストンによりヘッド側圧力室とロッド側圧力室とに区画されている。各ヘッド側圧力室同士、及びロッド側圧力室同士は基台に穿設された各連通孔により連通している。
【0004】
基台には、一方のヘッド側圧力室及び一方のロッド側圧力室に圧縮空気を別々に供給するためのポートが一つずつ設けられている。さらに、各ポートに隣接する位置であって、各ポートよりもヘッドカバー側又はロッドカバー側に寄った位置それぞれには、エアクッション機構(緩衝機構)が設けられている。各エアクッション機構は、一方のヘッド側圧力室及び一方のロッド側圧力室にそれぞれ開口する排気口と、一方のヘッド側圧力室及び一方のロッド側圧力室から排出される排気の流量を制限する絞り手段とにより構成されている。
【0005】
そして、例えば、ロッド側のポートから一方のロッド側圧力室に圧縮空気が供給されると、各ピストンはヘッド側に向けて移動する。このとき、一方のヘッド側圧力室内の圧縮空気は、ヘッド側のポートと排気口とを通じて排出されるが、一方のピストンがストローク端に近づいて、二つのパッキンのうちの移動方向前方側のパッキンがヘッド側のポートを乗り越えると、ポートと一方のヘッド側圧力室とが遮断され、ヘッド側圧力室内の圧縮空気は、排気口のみから制限的に排出される。このため、ヘッド側圧力室内の圧力が上昇し、この圧力の上昇がピストン背圧となって各ピストンを減速させながら、ストローク終端に到達させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3462461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のリニアアクチュエータでは、各ピストンを減速させながら停止させるために必要なクッションストロークを確保するために、基台にエアクッション機構を構成する排気口を、各ポートよりもヘッドカバー側又はロッドカバー側に寄った位置に形成する必要がある。すなわち、基台において、各ポートよりもヘッドカバー側又はロッドカバー側にエアクッション機構を設けるスペースを確保しなければならず、基台が軸方向に大型化してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題に着目してなされたものであり、その目的は、軸方向に大型化することなく、簡単な構成で、ピストンがストロークエンド近くまで移動したときのピストンの移動速度を減速させることができる流体圧シリンダ及びシリンダボディを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シリンダボディに複数の貫通孔が形成され、各貫通孔の一端はヘッドカバーが取り付けられることにより閉塞されるとともに、各貫通孔の他端にロッドカバーが取り付けられることでシリンダ室が区画形成され、前記シリンダ室にピストンが収容されるとともに、前記ピストンにより前記シリンダ室内に圧力作用室が区画され、各圧力作用室に対して流体を給排する給排孔が前記シリンダボディにおける前記ヘッドカバー及び前記ロッドカバー近傍に形成され、各ピストンの外面に前記圧力作用室の間をシールするシール部材が設けられる流体圧シリンダであって、前記シリンダボディにおける前記ピストンのストローク途中の位置に形成されるとともに隣り合うシリンダ室同士を連通させる連通通路と、前記ピストンの移動に伴い各圧力作用室から各給排孔を介して排出される流体の流量がそれぞれ異なるように独立して絞る絞り部と、を備えることを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記シリンダボディには前記シリンダ室が二つ形成されるとともに、前記連通通路が前記ヘッドカバー側及び前記ロッドカバー側に一つずつ形成され、前記ヘッドカバー側の連通通路は、前記ピストンに一体のピストンロッドが前記シリンダボディに没入する方向へのクッションストローク長が所望のクッションストローク長になる位置に形成されるとともに、前記ロッドカバー側の連通通路は前記ピストンロッドが前記シリンダボディから突出する方向へのクッションストローク長が所望のクッションストローク長になる位置に形成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記絞り部を迂回する迂回通路が設けられるとともに、前記迂回通路にオン・オフ弁が設けられていることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、複数の貫通孔が形成され、各貫通孔の一端はヘッドカバーが取り付けられることにより閉塞されるとともに、各貫通孔の他端にロッドカバーが取り付けられることでピストンが収容されるシリンダ室が区画形成され、前記ピストンにより前記シリンダ室内に圧力作用室が区画されるとともに、各圧力作用室に対して流体を給排する給排孔が前記ヘッドカバー及び前記ロッドカバー近傍に形成されたシリンダボディであって、前記ピストンのストローク途中の位置に、隣り合うシリンダ室同士を連通させる連通通路が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、軸方向に大型化することなく、簡単な構成で、ピストンがストロークエンド近くまで移動したときのピストンの移動速度を減速させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態におけるエアシリンダを示す断面図。
【図2】第2シール部材がヘッド側連通通路と重合する位置まで両ピストンが移動した状態を示す断面図。
【図3】第2シール部材がヘッド側連通通路を通過した状態を示す断面図。
【図4】別の実施形態におけるエアシリンダの一部分を示す断面図。
【図5】別の実施形態におけるエアシリンダの一部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をエアシリンダに具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
図1に示すように、エアシリンダ11の外郭を形成するシリンダボディ12内には、二つの貫通孔13,14がシリンダボディ12の軸方向に沿って互いに平行に延びるように形成されている。各貫通孔13,14の一端(図1の右端)はヘッドカバー15,16が固設されることにより閉塞されるとともに、他端(図1の左端)の内側にはロッドカバー17,18が固設されている。各ロッドカバー17,18は、C形止め輪19,20により、シリンダボディ12の軸方向に沿ったシリンダボディ12内からシリンダボディ12外へ向けた移動が規制されている。各ロッドカバー17,18の内周面にはゴム製のロッドパッキン21,22が装着されるとともに、各ロッドカバー17,18の外周面にはゴム製のOリング23,24が装着されている。
【0016】
シリンダボディ12におけるヘッドカバー15,16近傍には、互いに対向するように給排孔としての第1給排孔12a及び第2給排孔12bが形成されている。第1給排孔12aは一方の貫通孔13に連通するとともに、第2給排孔12bは他方の貫通孔14に連通している。また、シリンダボディ12におけるロッドカバー17,18近傍には、互いに対向するように給排孔としての第3給排孔12c及び第4給排孔12dが形成されている。第3給排孔12cは一方の貫通孔13に連通するとともに、第4給排孔12dは他方の貫通孔14に連通している。
【0017】
各貫通孔13,14内において、各ヘッドカバー15,16と各ロッドカバー17,18とにより区画された空間によってシリンダ室25,26が区画形成されている。各シリンダ室25,26には、流体としての空気によりシリンダボディ12の軸方向に沿って移動可能な円環状をなすピストン27,28が収容されている。そして、一方のシリンダ室25は、ピストン27によりヘッドカバー15側の圧力作用室としての第1圧力作用室25aと、ロッドカバー17側の圧力作用室としての第2圧力作用室25bとに区画されている。また、他方のシリンダ室26は、ピストン28によりヘッドカバー16側の圧力作用室としての第3圧力作用室26aと、ロッドカバー18側の圧力作用室としての第4圧力作用室26bとに区画されている。
【0018】
また、各ピストン27,28の内側にはピストンロッド29,30の一端に形成された突起部29a,30aが嵌着されるとともに、各ピストン27,28とピストンロッド29,30とが一体移動可能になっている。各ピストン27,28の外周面には、ゴム製のシール部材としての第1シール部材32,33、第2シール部材34,35及びピストン位置検出用のマグネット36,37が突起部29a,30aの基端側から先端側に向けてこの順序で装着されている。第1シール部材32,33及び第2シール部材34,35は、第1圧力作用室25aと第2圧力作用室25bとの間、及び第3圧力作用室26aと第4圧力作用室26bとの間をシールしている。
【0019】
各ピストンロッド29,30は、各ロッドカバー17,18の内側を通過してシリンダボディ12に出没可能になっている。各ピストンロッド29,30の他端は、図示しないボルトによってエンドプレート31に固定され、二つのピストンロッド29,30がエンドプレート31によって連結されている。
【0020】
両ピストンロッド29,30がシリンダボディ12に没入して両ピストン27,28がヘッドカバー15,16の端面に当接した状態において、第2シール部材34,35は第1及び第2給排孔12a,12bよりもロッドカバー17,18側に位置している。すなわち、第1及び第2給排孔12a,12bが位置するシリンダボディ12におけるヘッドカバー15,16近傍とは、両ピストンロッド29,30がシリンダボディ12に没入して両ピストン27,28がヘッドカバー15,16の端面に当接した状態において、ヘッドカバー15,16の端面と第2シール部材34,35との間の範囲のことをいう。
【0021】
また、両ピストンロッド29,30がシリンダボディ12から突出して両ピストン27,28がロッドカバー17,18の端面に当接した状態において、第1シール部材32,33は第3及び第4給排孔12c,12dよりもヘッドカバー15,16側に位置している。すなわち、第3及び第4給排孔12c,12dが位置するシリンダボディ12におけるロッドカバー17,18近傍とは、両ピストンロッド29,30がシリンダボディ12から突出して両ピストン27,28がロッドカバー17,18の端面に当接した状態において、ロッドカバー17,18の端面と第1シール部材32,33との間の範囲のことをいう。
【0022】
シリンダボディ12における両ピストン27,28のストローク途中の位置であって、ヘッドカバー15,16側には連通通路としてのヘッド側連通通路41が形成されるとともに、ロッドカバー17,18側には連通通路としてのロッド側連通通路42が形成されている。ヘッド側連通通路41及びロッド側連通通路42は、シリンダボディ12の軸方向に対して直交する方向へ直線状に延びるように形成されるとともに、二つのシリンダ室25,26を連通させている。
【0023】
第1〜第4給排孔12a,12b,12c,12dには第1〜第4スピードコントローラ51,52,53,54が設けられている。第1〜第4スピードコントローラ51,52,53,54はシリンダボディ12に対して外付けされている。以下、第1スピードコントローラ51の構成について説明する。
【0024】
第1スピードコントローラ51は、第1給排孔12aに接続される第1絞り流路51aを有するとともに、この第1絞り流路51aは、空気の供給源(図示せず)に接続されている。また、第1スピードコントローラ51は、第1絞り流路51aを流れる空気の流量を絞る絞り部としての第1絞り弁51bを有している。また、第1スピードコントローラ51は、第1絞り流路51aから分岐して第1絞り弁51bを迂回する第1分岐流路51cを有するとともに、第1分岐流路51cには第1逆止弁51dが設けられている。この第1逆止弁51dは、供給源から第1分岐流路51cを介して第1給排孔12aへの空気の流れを許容するとともに、第1給排孔12aから第1分岐流路51cを介した外部への空気の流れを阻止するようになっている。
【0025】
なお、第2〜第4スピードコントローラ52,53,54を構成する第2〜第4絞り流路52a,53a,54a、第2〜第4絞り弁52b,53b,54b、第2〜第4分岐流路52c,53c,54c、及び第2〜第4逆止弁52d,53d,54dは、第1スピードコントローラ51を構成する各々と構成が同じであるため、その説明を省略する。
【0026】
本実施形態では、第1及び第2絞り弁51b,52bにより第1及び第2絞り流路51a,52aの絞り量が調節され、第1絞り流路51aを流れる空気の流量が、第2絞り流路52aを流れる空気の流量よりも多くなるようになっている。また、第3及び第4絞り弁53b,54bにより第3及び第4絞り流路53a,54aの絞り量が調節され、第3絞り流路53aを流れる空気の流量が、第4絞り流路54aを流れる空気の流量よりも多くなるようになっている。なお、各絞り弁51b,52b,53b,54bにより、各絞り流路51a,52a,53a,54aの絞り量を調節することで、両ピストン27,28の移動速度が調節されるようになっている。
【0027】
次に、上記構成のエアシリンダ11の作用について説明する。
ピストンロッド29,30がシリンダボディ12から突出されている状態において、まず、供給源から第3スピードコントローラ53の第3分岐流路53c及び第3絞り流路53aを介して第3給排孔12cから第2圧力作用室25bに空気が供給される。また、供給源から第4スピードコントローラ54の第4分岐流路54c及び第4絞り流路54aを介して第4給排孔12dから第4圧力作用室26bに空気が供給される。すると、第2圧力作用室25b及び第4圧力作用室26bに供給された空気により両ピストン27,28が押圧されてヘッドカバー15,16に向けて移動するとともに、ピストンロッド29,30がシリンダボディ12に没入する方向へ移動する。
【0028】
そして、両ピストン27,28がロッド側連通通路42を通過すると、第1圧力作用室25a及び第3圧力作用室26aはヘッド側連通通路41により連通した状態になる。このとき、第1圧力作用室25a及び第3圧力作用室26a内の空気は、第1給排孔12aから第1絞り流路51aに排出されるとともに第1絞り弁51bを介して外部へ排出される流れと、第2給排孔12bから第2絞り流路52aに排出されるとともに第2絞り弁52bを介して外部へ排出される流れとが同時に発生している。このため、第1圧力作用室25a内の圧力及び第3圧力作用室26a内の圧力は同じになっているとともに、これら第1圧力作用室25a内の圧力及び第3圧力作用室26a内の圧力は、第1絞り弁51bによる第1絞り流路51aの絞り量により決められている。
【0029】
そして、図2に示すように、各ピストン27,28の第2シール部材34,35がヘッド側連通通路41と重合する位置まで各ピストン27,28が移動する。すると、第2シール部材34,35による第1圧力作用室25aと第2圧力作用室25bとの間、及び第3圧力作用室26aと第4圧力作用室26bとの間のシール性が無くなる。しかし、第1シール部材32,33により第1圧力作用室25aと第2圧力作用室25bとの間、及び第3圧力作用室26aと第4圧力作用室26bとの間のシール性が確保されている。
【0030】
そして、図3に示すように、各ピストン27,28の第2シール部材34,35がヘッド側連通通路41を通過すると、第2シール部材34により第1圧力作用室25aとヘッド側連通通路41との間がシールされるとともに、第2シール部材35により第3圧力作用室26aとヘッド側連通通路41との間がシールされる。これにより、ヘッド側連通通路41を介した第1圧力作用室25aと第3圧力作用室26aとの連通が遮断される。
【0031】
このとき、第2絞り流路52aは第1絞り流路51aよりも絞られている。よって、第3圧力作用室26a内の圧力が、ヘッド側連通通路41を介した第1圧力作用室25aと第3圧力作用室26aとの連通が遮断される前の圧力よりも高くなる。すなわち、第3圧力作用室26a内の圧力が、第1圧力作用室25a内の圧力よりも高くなる。この第3圧力作用室26a内の圧力変化によって、両ピストン27,28におけるヘッドカバー15,16側への移動速度が減速される。
【0032】
そして、第1圧力作用室25a内の空気は、第1給排孔12aから第1絞り流路51aに排出されるとともに第1絞り弁51bを介して外部へ排出され、第3圧力作用室26a内の空気は、第2給排孔12bから第2絞り流路52aに排出されるとともに第2絞り弁52bを介して外部へ排出される。すると、各ピストン27,28がさらにヘッドカバー15,16側へ移動して、第1圧力作用室25a内の圧力が徐々に高くなっていくとともに、第3圧力作用室26a内の圧力も徐々に高くなっていく。これにより、各ピストン27,28におけるヘッドカバー15,16側への移動速度が徐々に減速されていく。そして、各ピストン27,28におけるヘッドカバー15,16側の端面がヘッドカバー15,16の端面に当接するまで各ピストン27,28が移動すると、各ピストン27,28におけるヘッドカバー15,16側への移動が停止される。
【0033】
本実施形態では、各ピストン27,28の第2シール部材34,35がヘッド側連通通路41を通過したときの各ピストン27,28におけるヘッドカバー15,16側の端面からヘッドカバー15,16の端面までの距離が、両ピストン27,28の移動速度を減速させるために必要な所望のクッションストローク長になっている。このクッションストローク長は、ヘッド側連通通路41が形成される位置により決められている。
【0034】
なお、上記説明では、第3給排孔12c及び第4給排孔12dから空気を供給して、両ピストン27,28を没入方向へ移動させる場合について説明したが、第1給排孔12a及び第2給排孔12bから空気を供給して、両ピストン27,28を突出方向へ移動させる場合についての説明も、上記説明と概ね共通しているため、その説明を省略する。また、両ピストン27,28を突出方向へ移動させる場合では、各ピストン27,28の第1シール部材32,33がロッド側連通通路42を通過したときの各ピストン27,28におけるロッドカバー17,18側の端面からロッドカバー17,18の端面までの距離が、両ピストン27,28の移動速度を減速させるために必要な所望のクッションストローク長になっている。このクッションストローク長は、ロッド側連通通路42が形成される位置により決められている。
【0035】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)シリンダボディ12における両ピストン27,28のストローク途中の位置には隣り合うシリンダ室25,26同士を連通させるヘッド側連通通路41及びロッド側連通通路42が形成されている。さらに、第1〜第4給排孔12a,12b,12c,12dには、排出される空気の流量が異なるように独立して絞る第1〜第4絞り弁51b,52b,53b,54bが設けられている。そして、両ピストン27,28の移動に伴う第1シール部材32,33のヘッド側連通通路41の通過、又は第2シール部材34,35のロッド側連通通路42の通過により、第1圧力作用室25aと第3圧力作用室26aとの連通、又は第2圧力作用室25bと第4圧力作用室26bとの連通が遮断される。このとき、各絞り弁51b,52b,53b,54bの絞り量に差を持たせているため、第1圧力作用室25aと第3圧力作用室26aとの間、又は第2圧力作用室25bと第4圧力作用室26bとの間に圧力差が生じ、この圧力差により両ピストン27,28の移動速度が減速される。よって、背景技術のように、シリンダボディ12がその軸方向に大型化することなく、シリンダボディ12にヘッド側連通通路41及びロッド側連通通路42を形成するとともに、各給排孔12a,12b,12c,12dに絞り弁51b,52b,53b,54bを設けることで、両ピストン27,28がストロークエンド近くまで移動したときの両ピストン27,28の移動速度を減速させることができる。
【0036】
(2)シリンダボディ12には二つのシリンダ室25,26が形成され、ヘッドカバー15,16側にヘッド側連通通路41が形成されるとともに、ロッドカバー17,18側にロッド側連通通路42が形成されている。そして、ヘッド側連通通路41は、ピストンロッド29,30がシリンダボディ12に没入する方向へのクッションストローク長が所望のクッションストローク長になる位置に形成されている。さらに、ロッド側連通通路42はピストンロッド29,30がシリンダボディ12から突出する方向へのクッションストローク長が所望のクッションストローク長になる位置に形成されている。例えば、連通通路を各ピストン27,28のストローク長の中間位置に一つだけ形成した場合、クッションストローク長が所望のクッションストローク長よりも長くなってしまい、両ピストン27,28の移動時間が長くなってしまう場合がある。しかし、本実施形態では、ピストンロッド29,30の没入方向及び突出方向それぞれのクッションストローク長が所望のクッションストローク長になるように、ヘッド側連通通路41及びロッド側連通通路42が形成されているため、両ピストン27,28の移動時間にロスが無く、効率良く両ピストン27,28を移動させることができる。
【0037】
(3)シリンダボディ12における両ピストン27,28のストローク途中の位置に各シリンダ室25,26同士を連通させるヘッド側連通通路41及びロッド側連通通路42が形成されている。そして、この構成のシリンダボディ12において、第1〜第4給排孔12a,12b,12c,12dに第1〜第4絞り弁51b,52b,53b,54bを設けることで、各ピストン27,28がストロークエンド近くまで移動したときの両ピストン27,28の移動速度を減速させることができる。
【0038】
(4)第1〜第4スピードコントローラ51,52,53,54には、第1〜第4絞り弁51b,52b,53b,54bを迂回する第1〜第4分岐流路51c,52c,53c,54cが設けられるとともに、第1〜第4分岐流路51c,52c,53c,54cの途中に第1〜第4逆止弁51d,52d,53d,54dが設けられている。よって、供給源から第1〜第4圧力作用室25a,25b,26a,26bに空気を供給する際には、第1〜第4逆止弁51d,52d,53d,54dが第1〜第4給排孔12a,12b,12c,12dへの空気の流れを許容するため、第1〜第4絞り弁51b,52b,53b,54bにより空気の流れが絞られることがなく、スムーズに第1〜第4圧力作用室25a,25b,26a,26bに空気を供給することができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図4に示す実施形態では、第2絞り流路52aから分岐されるとともに第2絞り弁52b及び第2分岐流路52cを迂回する迂回通路61が設けられるとともに、迂回通路61にはオン・オフ弁62が設けられている。オン・オフ弁62は外部からの制御信号によりオン・オフに切換可能になっている。具体的には、オン・オフ弁62がオンになると、迂回通路61での空気の流れが許容されるとともに、オン・オフ弁62がオフになると、迂回通路61での空気の流れが遮断されるようになっている。これによれば、各ピストン27,28を短時間で移動させたいときに、オン・オフ弁62をオンにすることで、第2給排孔12bから排出された空気が迂回通路61に向けて流れ込むため、第2絞り弁52bにより空気の流れが絞られることがない。よって、各ピストン27,28がストロークエンド近くまで移動しても、各ピストン27,28の移動速度が減速されることがなく、各ピストン27,28を早く移動させることができる。なお、迂回通路61は、第1、第3及び第4絞り弁51b,53b,54b、と第1、第3及び第4分岐流路51c,53c,54cを迂回するようにそれぞれ設けてもよい。
【0040】
○ 図5に示す実施形態では、第1及び第2絞り流路51a,52aにおける第1及び第2絞り弁51b,52bよりも第1及び第2給排孔12a,12b側に、第1及び第2逆止弁51d,52dを流れた空気の流量を絞る供給用絞り部としての供給用絞り弁71が設けられている。また、供給用絞り弁71を迂回するように排出用通路72が設けられるとともに、排出用通路72には、供給源から供給された空気の流れを阻止するとともに、第1及び第2給排孔12a,12bから外部に向けて流れようとする空気の流れを許容する逆止弁73が設けられている。そして、供給源から第1圧力作用室25a及び第3圧力作用室26aに空気を供給する際には、供給用絞り弁71を介して第1圧力作用室25a及び第3圧力作用室26aに空気が供給される。これによれば、各ピストン27,28の動き始めを緩やかにすることができ、供給用絞り弁71の絞り量を適宜調整することで、各ピストン27,28の動き始めの速度を制御することができる。
【0041】
○ 実施形態において、二つのシリンダ室25,26を連通させる連通通路を両ピストン27,28のストローク長の中間位置に一つだけ形成してもよい。
○ 実施形態において、各ピストン27,28の外周面にシール部材が一つだけ設けられていてもよい。
【0042】
○ 実施形態において、各ピストン27,28は四角環状に形成されていてもよく、各ピストン27,28の形状は特に限定されるものではない。そして、各ピストン27,28の外面にシール部材が設けられる。
【0043】
○ 実施形態において、シリンダボディ12にシリンダ室を3つ以上形成してもよい。そして、隣り合うシリンダ室同士を連通させる連通通路を形成してもよい。
○ 実施形態において、スピードコントローラ51,52,53,54は、シリンダボディ12に対して外付けされていたが、これに限らず、シリンダボディ12に内蔵されていてもよい。
【0044】
○ 実施形態において、二つのピストン27,28をヘッドカバー15,16に向けて移動させる際に、第3給排孔12c及び第4給排孔12dのいずれか一方から空気を供給するようにしてもよい。
【0045】
○ 本発明を、空気以外の流体を用いて二つのピストン27,28を移動させてピストンロッド29,30を出没可能にするものに適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0046】
(イ)前記絞り部を迂回する分岐流路が設けられるとともに、前記分岐流路の途中に逆止弁が設けられ、前記逆止弁は供給源から前記分岐流路を介した前記給排孔への流体の流れを許容することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流体圧シリンダ。
【0047】
(ロ)前記給排孔と前記絞り部との間に前記逆止弁によって許容された流体の流量を絞る供給用絞り部をさらに備えたことを特徴とする前記技術的思想(イ)に記載の流体圧シリンダ。
【符号の説明】
【0048】
11…流体圧シリンダとしてのエアシリンダ、12…シリンダボディ、12a〜12d…給排孔としての第1〜第4給排孔、13,14…貫通孔、15,16…ヘッドカバー、17,18…ロッドカバー、25,26…シリンダ室、25a…圧力作用室としての第1圧力作用室、25b…圧力作用室としての第2圧力作用室、26a…圧力作用室としての第3圧力作用室、26b…圧力作用室としての第4圧力作用室、27,28…ピストン、29,30…ピストンロッド、32,33…シール部材としての第1シール部材、34,35…シール部材としての第2シール部材、41,42…連通通路、51b〜54b…絞り部としての第1〜第4絞り弁、51c〜54c…分岐通路としての第1〜第4分岐通路、51d〜54d…逆止弁、61…迂回通路、62…オン・オフ弁、71…供給用絞り部としての供給用絞り弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボディに複数の貫通孔が形成され、各貫通孔の一端はヘッドカバーが取り付けられることにより閉塞されるとともに、各貫通孔の他端にロッドカバーが取り付けられることでシリンダ室が区画形成され、前記シリンダ室にピストンが収容されるとともに、前記ピストンにより前記シリンダ室内に圧力作用室が区画され、各圧力作用室に対して流体を給排する給排孔が前記シリンダボディにおける前記ヘッドカバー及び前記ロッドカバー近傍に形成され、各ピストンの外面に前記圧力作用室の間をシールするシール部材が設けられる流体圧シリンダであって、
前記シリンダボディにおける前記ピストンのストローク途中の位置に形成されるとともに隣り合うシリンダ室同士を連通させる連通通路と、
前記ピストンの移動に伴い各圧力作用室から各給排孔を介して排出される流体の流量がそれぞれ異なるように独立して絞る絞り部と、を備えることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記シリンダボディには前記シリンダ室が二つ形成されるとともに、前記連通通路が前記ヘッドカバー側及び前記ロッドカバー側に一つずつ形成され、前記ヘッドカバー側の連通通路は、前記ピストンに一体のピストンロッドが前記シリンダボディに没入する方向へのクッションストローク長が所望のクッションストローク長になる位置に形成されるとともに、前記ロッドカバー側の連通通路は前記ピストンロッドが前記シリンダボディから突出する方向へのクッションストローク長が所望のクッションストローク長になる位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記絞り部を迂回する迂回通路が設けられるとともに、前記迂回通路にオン・オフ弁が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体圧シリンダ。
【請求項4】
複数の貫通孔が形成され、各貫通孔の一端はヘッドカバーが取り付けられることにより閉塞されるとともに、各貫通孔の他端にロッドカバーが取り付けられることでピストンが収容されるシリンダ室が区画形成され、前記ピストンにより前記シリンダ室内に圧力作用室が区画されるとともに、各圧力作用室に対して流体を給排する給排孔が前記ヘッドカバー及び前記ロッドカバー近傍に形成されたシリンダボディであって、
前記ピストンのストローク途中の位置に、隣り合うシリンダ室同士を連通させる連通通路が形成されていることを特徴とするシリンダボディ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−149704(P2012−149704A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8889(P2011−8889)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】