説明

流動層装置

【課題】複雑な装置構造や可動部を必要とせず、粉粒体粒子物性値の高精度な測定が行え、且つ収率の低下を抑制できる流動層装置を提供する。
【解決手段】処理容器の側壁に設けられた透光窓と、該透光窓の内面に臨み、且つ前記処理容器内で浮遊流動する粉粒体粒子の一部を堆積させる、所定の容積を有する粒子捕捉部とを設け、前記透光窓の外面側から光センサを用いて前記粒子捕捉部に堆積した静止状態の粉粒体粒子の物性値を測定することで、高精度な測定を可能とし、且つ収率の低下を抑制した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒、コーティング、乾燥を行う流動層装置に係り、詳しくは処理容器内で流動する粉粒体粒子の物性値測定に関する。
【背景技術】
【0002】
流動層装置は、一般に、処理容器の底部から導入した流動化気体によって、処理容器内で粉粒体粒子を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、乾燥等を行うものであり、食品工業、薬品工業等の分野で広く使用されている。流動層装置には、流動層処理容器の底部に回転体を配設した転動流動層装置や流動層処理容器の内部にドラフトチューブを設置したワースター式流動層装置に代表される複合型流動層装置も含まれる。
【0003】
流動層装置を用いて粉粒体粒子の造粒、コーティング、乾燥等の処理を行うにあたり、被処理物の処理条件の制御、処理終点の決定等を目的として、処理プロセスの途中で被処理物(粉粒体粒子)をサンプリングし、粉粒体粒子の粒度、水分量、成分含量等の各種物性値を測定する場合がある。
【0004】
処理プロセスの途中で被処理物のサンプリング、物性値の測定を行う技術として、下記の特許文献に示すような技術が開示されている。
【0005】
特許文献1には、処理容器内で浮遊流動する粉粒体がレーザ光を横切るように通過することで、散乱したレーザ光をレンズによってセンサ上に集光し、集光したレーザ光を基に該粉粒体の物性値を測定する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、処理容器を貫通する粉粒体取出管内に、ガス噴射ノズルから高圧ガスを噴射することで、流動層内を浮遊流動する粉粒体を処理容器の外部に設けられた粒子測定装置に送り込み、該粒子測定装置に設けられた粘着フィルムに付着させ、該粘着フィルムに付着した粉粒体の物性値を測定する技術が開示されている。
【0007】
特許文献3には、流動層装置の処理容器内で浮遊流動する粉粒体をプローブに設けられた粒子捕捉部に収容し、該プローブを処理容器の外部へと移動させた後、近赤外線センサを用いて該粉粒体の物性値を測定する技術が開示されている。
【0008】
また、非特許文献1には、流動層装置の処理容器内で浮遊流動する造粒末の水分を、処理容器の側壁に設けたNIR測定用窓を介して近赤外線センサにより測定する技術が開示されている。同文献では、測定前にNIR測定用窓の表面にパージエアーを噴射させて、窓付近に付着した造粒末を処理容器内部のものと入れ替え、同時に、NIRセンサーヘッドで造粒末のNIRスペクトルを取得して測定を行っている。これにより、連続的に入れ替わる造粒末サンプルを測定して、流動層内全体の水分値変化を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3595949号公報
【特許文献2】特許第3827731号公報
【特許文献3】特開2006−136763公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「第27回製剤と粒子設計シンポジウム(2010)」要旨集(粉体工学会発行) 第144〜145頁 「生産スケールの流動層造粒工程におけるバッチ全体を反映したリアルタイム水分測定」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、粉粒体の物性値の測定は、粉粒体をサンプリングすることなく、処理容器内で流動中の粉粒体を対象に行われるため、静止状態の粉粒体の物性値を測定する場合に比べて測定の精度が低く、測定値のばらつきが大きいという問題点があった。
【0012】
また、特許文献2に開示された技術では、流動層からサンプリングし、粘着フィルムに付着させた粉粒体を再び流動層へと戻すことができないため(製品として扱われず廃棄される)、製品の収率低下を招くことに加えて、粘着フィルムを間欠送りにするための機構が必要となることから、装置の製造コストが嵩むという問題があった。
【0013】
また、特許文献3に開示された技術では、測定装置に可動部分があるために、装置の構造が複雑になると共に、装置の洗浄作業が煩雑になるという問題がある。
【0014】
また、非特許文献1に開示された技術では、NIR測定用窓で連続的に入れ替わる造粒末サンプルを測定の対象としており、測定対象物である造粒末の状態を一定に保つことができない。そのため、反射光/散乱光の強度を常に所望の強度以上に保てないというデメリットがある。
【0015】
本発明の解決すべき課題は、複雑な装置構造や可動部を必要とせず、処理容器内の粉粒体粒子の物性値を精度良く測定でき、且つ製品の収率低下を抑制できる流動層装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、処理容器内に流動化気体を導入し、該処理容器内で粉粒体粒子を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、及び乾燥の少なくとも一の処理を行う流動層装置において、前記粉粒体粒子の物性値を測定する粒子測定部を備え、前記粒子測定部は、前記処理容器の側壁に設けられた透光窓と、該透光窓の内面に臨み、且つ前記処理容器内で浮遊流動する粉粒体粒子の一部を堆積させて捕捉する粒子捕捉部と、該粒子捕捉部に堆積した粉粒体粒子の物性値を前記透光窓の外面側から測定する光センサを備えている流動層装置を提供する。
【0017】
このような構成によれば、極めて簡易な構造でもって、静止した状態で堆積した粉粒体粒子の物性値測定が行えるため、高精度な測定が可能となる。また、粒子測定部は可動部を必要とせず、装置構造も簡易であるため、装置の製造コストを低減することができる。さらに、粒子測定部は可動部分を有していないため、処理終了後の処理容器内の洗浄が容易であり、コンタミネーションの問題が発生しにくい。しかも、測定を終了した粉粒体粒子を再度流動層へと戻すことが可能なため、製品の収率の低下を抑制することができる。
【0018】
上記の構成において、前記透光窓は枠状部材を介して前記処理容器の側壁に取り付けられ、前記粒子捕捉部は、前記透光窓の内面と前記枠状部材の内周面とで構成される凹状部であることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、枠状部材の厚さによって、粒子捕捉部に堆積する粉粒体粒子(粉粒体層)の堆積厚さを、所望の値に調整することが可能となるため、さらに粉粒体粒子物性値の測定精度を高めることができる。
【0020】
上記の構成において、前記処理容器の下部は、下方に向かって漸次縮径する縮径部を有し、該縮径部の側壁に前記粒子測定部が設けられていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、処理容器内で浮遊流動する粉粒体粒子を、より容易に粒子捕捉部に堆積させることが可能である。また、一度堆積した粉粒体粒子が粒子捕捉部より脱落する可能性を低減できるため、堆積する粉粒体粒子の堆積厚さが、より一定に保持されやすくなり、さらなる粉粒体粒子物性値の測定精度の向上が望める。
【0022】
上記の構成において、前記光センサは、可視光センサ、赤外センサ、UVセンサ等であっても良いが、近赤外線センサであることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、粉粒体粒子の粒子径等の形態的性質を表す物性値のみならず、成分含量、水分率等の組成的性質や核粒子に対するコーティング成分の被膜量といった溶出性能等の化学的性質を表す物性値も測定することが可能となる。ここで、物性値には、粉粒体粒子の粒子径、粒子形状、粒度分布、成分含量(成分濃度)、被膜量、水分率等が含まれ、以降の記載においても同様である。
【0024】
上記の構成において、前記粒子捕捉部には、該粒子捕捉部への気体の噴出及びその停止が可能な気体噴出手段が設けられていることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、粒子捕捉部への気体噴出手段による気体の噴出を停止させた状態で、粉粒体粒子を粒子捕捉部に堆積させることができるため、粉粒体粒子の捕捉を容易なものとすることが可能となる。また、粒子捕捉部に捕捉され、物性値の測定を終えた粉粒体粒子に、気体噴出手段より気体の噴出を行うことで、捕捉された粉粒体粒子を円滑に流動層へと復帰させることが可能となる。
【0026】
また、本発明は、前記の課題を解決するため、処理容器内に流動化気体を導入し、該処理容器内で粉粒体粒子を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、及び乾燥の少なくとも一の処理を行う粉粒体粒子の処理方法において、前記処理容器の側壁に設けられた透光窓と、該透光窓の内面に臨み、且つ前記処理容器内で浮遊流動する粉粒体粒子の一部を堆積させて捕捉する粒子捕捉部と、該粒子捕捉部に堆積した粉粒体粒子の物性値を前記透光窓の外面側から測定する光センサと、該粒子捕捉部への気体の噴出及びその停止が可能な気体噴出手段とを備えた粒子測定装置を用い、前記粉粒体粒子を前記粒子捕捉部に堆積させ、前記光センサにより該粉粒体粒子の物性値を測定した後、前記気体噴出手段により、前記粒子捕捉部に堆積した前記粉粒体粒子を前記流動層へと復帰させる工程を有する粉粒体粒子の処理方法を提供する。
【0027】
このような方法によっても、前記の装置に係る説明でこれに対応する動作について既に述べた事項と同様の作用効果を享受することが可能である。
【0028】
また、本発明は、処理容器内に流動化気体を導入し、処理容器内で粉粒体粒子を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、及び乾燥の少なくとも一の処理を行う流動層装置の前記処理容器の側壁に取り付けられる透光窓構造体であって、透光窓と、透光窓の外周に装着され、透光窓を処理容器の側壁に取り付けるための枠状部材と、透光窓の内面と枠状部材の内周面とで構成される凹状部とを備え、枠状部材の内面が外周から内周に向かって下り勾配で傾斜した傾斜面で形成されている構成を提供する。本発明の透光窓構造体は、凹状部に向かって気体を噴出させるための気体噴出部を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る流動層装置によれば、簡易な構造でもって、静止した状態で堆積した粉粒体粒子の物性値測定が行えるため、高精度な測定が可能となる。また、粒子測定部は可動部を必要とせず、装置構造も簡易であるため、装置の製造コストを低減することができる。さらに、粒子測定部は可動部分を有していないため、処理終了後の処理容器内の洗浄が容易であり、コンタミネーションの問題が発生しにくい。しかも、測定を終了した粉粒体粒子を再度流動層へと戻すことが可能なため、製品の収率低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係る流動層装置の一構成例を示す図である。
【図2】図1に示した一構成例の流動層装置における処理容器の縮径部3の拡大図である。
【図3】粒子捕捉部Cを処理容器2の内側方向から見た図{図3(a)}、処理容器2の外側方向から見た図{図3(b)}である。
【図4】図3(a)(b)のA−A‘断面図{図4(a)}、図3(a)(b)のB−B’断面図である{図4(b)}。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る流動層装置の一構成例を添付の図面に基づいて説明する。
【0032】
まず、図1に基づいて実施形態に係る流動層装置1の構成を説明する。流動層装置1の下端部には、処理容器2内に熱風等の流動化気体Fを導入するための給気チャンバー5が設けられており、処理容器2内には、流動化気体Fによって形成される流動層に向けてスプレー液を噴射し、且つ上下動可能なスプレーノズル6が設けられている。また、処理容器2の下部には、断面積が漸次縮径する縮径部3が設けられ、該縮径部3の側壁には粉粒体粒子Mの物性値を測定する粒子測定部4が設けられている。
【0033】
次に、流動層装置1を用いて造粒を行う場合を例に挙げて詳細を説明する。なお、ここでは造粒を行う場合を例に挙げるが、本発明に係る流動層装置はコーティング、乾燥等の造粒以外の処理にも使用することができる。
【0034】
まず、給気チャンバー5より、図示しない気体分散板を介して、流動化気体Fが処理容器2内に導入される。ここで、気体分散板としては、パンチングメタル等の多孔板や金網が使用可能である。
【0035】
導入された流動化気体Fによって、処理容器2内には粉粒体粒子Mの流動層が形成される。そして、処理容器2内で浮遊流動する粉粒体粒子Mに対して、スプレーノズル6から結合材液等のスプレー液が噴射される。粉粒体粒子Mは、スプレー液の噴射によって、湿潤を受けると共に付着凝集し、乾燥される。この付着凝縮を流動層内で繰り返すことで粉粒体粒子Mは、所定の粒子径を有する粒子へと成長していく。
【0036】
流動層内で粒径成長する粉粒体粒子Mに対して、例えば処理条件の制御や処理終点の決定等を目的として、粉粒体粒子Mの物性値の測定を粒子測定部4にて行う。尚、粒子測定部4による粉粒体粒子Mの物性値の測定は、処理容器2内での粉粒体粒子Mの浮遊流動状態を維持しながら行う。
【0037】
つぎに、粉粒体粒子Mの物性値測定を行う粒子測定部4の構成について図2及び図3に基づいて説明する。
【0038】
図2に示すように、処理容器2の縮径部3に設けられた粒子測定部4は、処理容器2内で浮遊流動する粉粒体粒子Mの一部を堆積させて捕捉する粒子捕捉部Cと、粒子捕捉部Cに捕捉された粉粒体粒子Mの物性値を測定する光センサ20とで構成される。粒子捕捉部Cと光センサ20は、クランプ21により処理容器2の縮径部3に固定される。粒子捕捉部Cは、以下で説明する構成を有し、クランプ21により押さえ込まれた状態で縮径部3の開口部に装着される。
【0039】
図3及び図4は粒子捕捉部Cを示している。図3(a)は粒子捕捉部Cを処理容器2の内側方向から見た図{図4(a)のX方向矢視図}、図3(b)は粒子捕捉部Cを処理容器2の外側方向から見た図{図4(a)のY方向矢視図}である。また、図4(a)は図3(a)(b)のA−A‘断面図、図4(b)は図3(a)(b)のB−B’断面図である。尚、図4は、粒子捕捉部Cを図2の紙面裏側方向から見た状態を示している(図2とは向きが反対になっている)。
【0040】
粒子捕捉部Cは、透明なガラスや樹脂等の透明材料で形成された透光窓10と、透光窓10の外周に装着された枠状部材11とを主要な要素として構成される。図4(a)に示すように、枠状部材11は内周側に突出した鍔部11aを有し、透光窓10は、枠状部材11の内周と鍔部11aの一面(外側の面)とに当接した状態で枠状部材11に取り付けられる。そして、鍔部11aとの間で透光窓10を挟持するように、固定部材32がOリング33、34を介して枠状部材11に取り付けられ、ボルト31で固定される。また、枠状部材11の鍔部11aを含む内面は、外周から内周に向かって下り勾配で傾斜した傾斜面11bに形成されている。このような構成の粒子捕捉部Cにおいて、透光窓10の内面と枠状部材11の内周面(鍔部11aの内周面)とによって所定容積の凹状部C1が形成され、処理容器2内で浮遊流動する粉粒体粒子Mが縮径部3の内壁面又はその近傍に沿って下降する際に凹状部C1に入り、さらに粒子捕捉部Cにおいて所定の厚さで堆積するようになっている。ここで、粒子捕捉部Cの形状は、処理容器2内で浮遊流動する粉粒体粒子Mを誘導して、物性値測定に必要な量(厚さ)の粉粒体粒子Mを捕捉しやすく、また、後述するパージエアーPによって粒子捕捉部Cに捕捉された粉粒体粒子Mを流動層へと復帰させやすく、かつ、処理容器2の内面に凹凸が可及的に生じないような形状にすることが好ましい。そのために、粒子捕捉部Cの仕様を、例えば下記のように設定することができる。
【0041】
凹状部C1の深さh1(凹状部C1に堆積する粉粒体粒子Mの厚さに対応)は、例えば0.5mm〜10mmであり、傾斜面11bの最外径部から測った透光窓10の内面の深さh2は、例えば0.5〜50mm、好ましくは3〜50mmである。粒子捕捉部Cを縮径部3に装着した状態で、透光窓10の内面は水平面S(図2も参照)と角度θをなし、この角度θは、例えば縮径部3の内壁面が水平面Sとなす角度(この角度は、一般的な流動層装置における処理容器の縮径部の内壁面と同じ又は同程度の角度である)と同じである。角度θは、例えば45°〜80°、好ましくは60°〜80°である。また、傾斜面11bが透光窓10の内面となす角度βは、好ましくは5〜50°である。ここで傾斜面11bが水平面Sとなす角度αは、上方側と下方側とで異なり、上方側の角度α2が下方側の角度α1よりも大きくなる。傾斜面11bが水平面Sとなす角度αのうち、α1(α1=θ―β)としては、粉粒体粒子Mを粒子補足部Cに停止させやすく、パージエアーによって粉粒体粒子Mを粒子補足部Cから流動層に復帰させやすい角度であればよく、好ましくは20°〜70°である。角度α1の一つの態様として、本発明を使用する際にα1は粉粒体粒子Mの特性、例えば安息角を参考に決めることができる。また角度α2はθよりも大きく、θ+90°よりも小さければよいが、傾斜面11bの傾斜角βが円周上の各部位で等しくなる角度であることが装置製造の簡便さの面で好ましい。さらに、α2は粉粒体粒子Mが粒子補足部Cに入りやすい角度であればよく、好ましくは70〜120°である。
【0042】
凹状部C1の深さh1を上記の値に設定することにより、物性値測定に必要な量(厚さ)の粉粒体粒子Mを捕捉することができる。また、水平面Sに対する透光窓10の内面の角度θを上記の値に設定し、水平面Sに対する傾斜面11bの角度α(α1、α2)を上記の値に設定することにより、処理容器2内で浮遊流動する粉粒体粒子Mを凹状部C1に円滑に誘導し、また、凹状部C1に堆積した粉粒体粒子Mを後述するパージエアーPによって流動層に円滑に戻すことができる。特に、水平面Sに対する傾斜面11bの角度αは、上方側の角度α2が下方側の角度α1よりも大きいので、処理容器2内で浮遊流動する粉粒体粒子Mをより円滑に凹状部C1に誘導することができる。また、このような粒子捕捉部Cは、処理容器2の内面に凹凸が可及的に生じないような形状であり、粉粒体粒子Mの過剰な堆積がなく、また、洗浄作業も容易である。
【0043】
なお、粉体の安息角の測定が必要な場合、一般的に用いられる方法であればいずれを使用しても構わないが、例えば、ホソカワミクロン株式会社製のパウダテスタPT−Sモデルの標準の測定方法を使用することができる。すなわち、ロート、スペースリング、フルイ、フルイオサエ、オサエバーの順に振動台に部品を取り付け、その下部に安息角測定用テーブルを設置する。前記機材の設置後、フルイ上に粉体原料を投入する。投入後、装置の振動版を徐々に振動させ、振動板の振幅が2mm未満の範囲内でフルイ/ロートを経由して安息角測定用テーブル上に粉体を供給する。安息角測定用テーブル周囲から粉がこぼれ始めると振幅をやや小さくして粉の流出速度を低下させる。テーブル上の安息角の状態が一定に達したら、振動を停止させ、装置内蔵の画像解析システムにより安息角を計測する。以上の操作を3回繰り返し、その平均値を粉体の安息角として用いる。上記の通り測定のための機器構成はPT-Sの標準設定でよいが、原料粉体の粒子径によって機器構成を変更する場合がある。粉体供給に使用するフルイのメッシュサイズは通常は710μm以上のフルイを用いる。原料粉体の粒子径が大きく、710μmのフルイを通過させたとき、フルイ上に20重量%以上残留する粉体の場合は、原料粉体をスコップで直接ロートに流し込む。
【0044】
図3(b)及び図4(b)に示すように、透光窓10と枠状部材11の当接部の一部には、物性値の測定を終えた粉粒体粒子Mを、気体の噴出、例えばパージエアーPの噴出によって粒子捕捉部Cから流動層へと戻すための気体噴出部Dが設けられている。気体噴出部Dは、パージエアーPを供給するエアー供給口12と、エアー供給口12と連通するエアーチャンバ13とを備えている。エアー供給口12から供給されたパージエアーPはエアーチャンバ13を通って、凹状部C1の中心方向に向かって噴出する。図3(b)に示すように、この実施形態では、気体噴出部Dを粒子捕捉部Cの下部の2箇所に設けているが、気体噴出部は、本明細書に記載の機能を奏する範囲内で、その構造、形状、配置数及び配置態様等を適宜変更して構成することができる。
【0045】
処理容器2内で浮遊流動する粉粒体粒子Mは粒子捕捉部Cによって捕捉され、凹状部C1に所定厚さで堆積する。そして、凹状部C1に所定厚さで堆積した粉粒体粒子Mは、光センサ20によって水分率や成分含量(成分濃度)等の各種物性値が測定される。光センサ20の投光部と受光部は、投光部から投光される測定光の反射光(透光窓10の内面で反射する反射光)が受光部に受光されないような位置関係になっている。例えば、投光部の光軸と受光部の光軸は、3〜30°の範囲の所定角度だけ相互にずらされている。
【0046】
次に、図4に基づいて、粒子測定部4による粉粒体粒子Mの物性値の測定方法について説明する。
【0047】
図4(a)に示すように、粒子捕捉部Cに堆積して捕捉された粉粒体粒子Mは、枠状部材11の厚さによって、所定の堆積厚さをもった状態で粒子捕捉部C(凹状部C1)に捕捉される。これにより、光センサ20による物性値の測定精度が向上し、データのばらつきを低減することが可能となる。ここで、枠状部材11の厚さは、異なる厚さを有する枠状部材への付け替え等によって可変であることが好ましい。
【0048】
粒子捕捉部C(凹状部C1)に捕捉された粉粒体粒子Mは、縮径部3の外部に備えられた光センサ20によってデータが測定され、測定されたデータは光ファイバ等の伝送手段を介して図示されていない演算処理装置に伝送され、演算処理装置にて粉粒体粒子Mより反射した反射光のスペクトル解析等が行われる。そして、該スペクトル解析等に基づいて粉粒体粒子Mの物性値が求められる。
【0049】
ここで、光センサ20は近赤外線センサであることが好ましい。近赤外線センサを用いることで、粉粒体粒子Mの粒子径等の形態的性質を表す物性値のみならず、成分含量、水分率等の組成的性質や核粒子に対するコーティング成分の被膜量といった溶出性能等の化学的性質を表す物性値も測定することが可能となる。
【0050】
物性値の測定を終えた粉粒体粒子Mは、図4(b)に示すように、透光窓10と枠状部材11との間の気体噴出部Dから噴出するパージエアーPによって粒子捕捉部C(凹状部C1)から吹き飛ばされて、流動層へと戻される。気体噴出部のパージエアーPは図示しないエアー供給源によって、エアー供給口12より供給される。このように、粒子捕捉部Cに補足した粉粒体粒子Mを測定後に再び流動層へと戻すことによって、製品の収率の低下を抑制することができる。
【0051】
なお、気体噴出部Dは、測定後の粉粒体粒子Mを粒子捕捉部Cから流動層に戻すときに加え、非測定時(粉粒体粒子の捕捉と物性値の測定を行わないとき)にも、パージエアーPを噴出させるように構成するのが好ましい。このようにすれば、非測定時に粉粒体粒子Mが粒子捕捉部Cに堆積することがないため、製品の収率の低下を抑制することができる。換言すれば、気体噴出部Dは、粒子捕捉部Cによって捕捉された粉粒体粒子Mの物性値を測定するとき、物性値の測定に際して所定量(厚さ)の粉粒体粒子Mを粒子捕捉部Cに堆積させるときに、パージエアーPの噴出を停止させるように構成するのが好ましい(粉粒体粒子Mの物性等によっては、粉粒体粒子Mを粒子捕捉部Cに堆積させるときに、パージエアーPの噴出を停止させない場合もある)。なお、図3において粒子捕捉部Cは円形形状であるが、この限りではなく適宜形状の変更を行っても良い。
【0052】
本発明は、図1に示す通常の流動層装置のほか、転動流動層装置やワースター式流動層装置に代表される複合型流動層装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 流動層装置
2 処理容器
3 縮径部
4 粒子測定部
5 給気チャンバー
6 スプレーノズル
10 透光窓
11 枠状部材
12 エアー供給口
20 光センサ
31 ボルト
32 固定部材
33 Oリング
34 Oリング
C 粒子捕捉部
C1 凹状部
D 気体噴出部
P パージエアー
M 粉粒体粒子
F 流動化気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に流動化気体を導入し、該処理容器内で粉粒体粒子を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、及び乾燥の少なくとも一の処理を行う流動層装置において、
前記粉粒体粒子の物性値を測定する粒子測定部を備え、
前記粒子測定部は、前記処理容器の側壁に設けられた透光窓と、該透光窓の内面に臨み、且つ前記処理容器内で浮遊流動する粉粒体粒子の一部を堆積させて捕捉する粒子捕捉部と、該粒子捕捉部に堆積した粉粒体粒子の物性値を前記透光窓の外面側から測定する光センサとを備えていることを特徴とする流動層装置。
【請求項2】
前記透光窓は枠状部材を介して前記処理容器の側壁に取り付けられており、前記粒子捕捉部は、前記透光窓の内面と前記枠状部材の内周面とで構成される凹状部であることを特徴とする請求項1に記載の流動装置。
【請求項3】
前記処理容器の下部は、下方に向かって漸次縮径する縮径部を有し、該縮径部の側壁に前記粒子測定部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流動層装置。
【請求項4】
前記光センサは、近赤外線センサであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流動層装置。
【請求項5】
前記粒子捕捉部には、該粒子捕捉部への気体の噴出及びその停止が可能な気体噴出手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流動層装置。
【請求項6】
処理容器内に流動化気体を導入し、該処理容器内で粉粒体粒子を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、及び乾燥の少なくとも一の処理を行う粉粒体粒子の処理方法において、
前記処理容器の側壁に設けられた透光窓と、該透光窓の内面に臨み、且つ前記処理容器内で浮遊流動する粉粒体粒子の一部を堆積させて捕捉する粒子捕捉部と、該粒子捕捉部に堆積した粉粒体粒子の物性値を前記透光窓の外面側から測定する光センサと、該粒子捕捉部への気体の噴出及びその停止が可能な気体噴出手段とを備えた粒子測定装置を用い、
前記粉粒体粒子を前記粒子捕捉部に堆積させ、前記光センサにより該粉粒体粒子の物性値を測定した後、前記気体噴出手段により、前記粒子捕捉部に堆積した前記粉粒体粒子を前記流動層へと復帰させる工程を有することを特徴とする粉粒体粒子の処理方法。
【請求項7】
処理容器内に流動化気体を導入し、該処理容器内で粉粒体粒子を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、及び乾燥の少なくとも一の処理を行う流動層装置の前記処理容器の側壁に取り付けられる透光窓構造体であって、
透光窓と、該透光窓の外周に装着され、該透光窓を前記処理容器の側壁に取り付けるための枠状部材と、前記透光窓の内面と前記枠状部材の内周面とで構成される凹状部とを備え、前記枠状部材の内面が外周から内周に向かって下り勾配で傾斜した傾斜面で形成されていることを特徴とする透光窓構造体。
【請求項8】
前記凹状部に向かって気体を噴出させるための気体噴出部を備えていることを特徴とする請求項7に記載の透光窓構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71104(P2013−71104A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214468(P2011−214468)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】