説明

流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法

【課題】容易に耐火物層の成形を行うことができる、流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法を提供すること。
【解決手段】鏡板300の各所定部位に基端側縦管520を、そのソケット522の傾斜先端面を成形すべき耐火物層400の表面位置に位置合わせした状態で、該鏡板300にそれぞれ固着し、前記傾斜先端面上に不定形耐火物用型枠116を載置し、鏡板300と前記型枠116との間に不定形耐火物を流し込み、耐火物層400の成形を行い、前記型枠116を取り外した後、各基端側縦管520に吹出し管付き先端側縦管510をそれぞれ着脱可能に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ,下水汚泥などの廃棄物を焼却する流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来の流動床式焼却炉の要部を示す断面図である。従来の流動床式焼却炉は、図8に示すように、炉本体1内に、不燃物抜出し管入口5aの方へと下り傾斜状に延びる耐火物層8を貫通して多数の散気ノズル9を配置した流動化空気噴出床6を設け、流動化空気噴出床6下に設けられた風箱2に供給された流動化空気を各散気ノズル9から炉内に噴出させるように構成されている。
【0003】
散気ノズル9は、不燃物抜出し管入口5aを中心とする同心円周上に適切なピッチで配置されている。各散気ノズル9から流動化空気を炉内に噴出させることにより、耐火物層8の傾斜方向に旋回する旋回流12を形成させて、流動層4に投入された廃棄物を流動媒体及び空気と攪拌させつつ燃焼させるとともに、珪砂等の流動媒体及び不燃物を流動化空気噴出床6に沿って流下させ、不燃物を流動媒体とともに不燃物抜出し管5から炉外に排出させるようになっている。
【0004】
図9は図8における流動化空気噴出床の要部を示す断面図、図10は図9のE矢視平面図、図11は図9のF矢視正面図である。従来の散気ノズル9は、図9〜図11に示すように、流動化空気入口11aを有する縦管11の先端に、両側に吹出し口10aを有する吹出し管10が固着されており、一体型構造になっている。この散気ノズル9は、吹出し口10aが不燃物抜出し管入口5aの方へ向けられ、燃焼室3(流動層4)と風箱2とを連通する状態で耐火物層8内に埋め込まれている。
【0005】
各散気ノズル9は、その縦管11を上下方向において略垂直にし、吹出し管10を略水平にして設けられている。吹出し管10が略水平姿勢となされている理由は、燃焼室3の流動層4に溜められている流動媒体が吹出し管10を通り、縦管11を通り抜けて風箱2内に落ち込むことを防ぐためである。
【0006】
また、散気ノズル9を耐火物層8内に埋め込む理由は、次の通りである。すなわち、流動床式焼却炉は、廃棄物の中に混入した金属屑、陶磁器屑などの不燃物を炉外に排出させなければならないので、耐火物層8の形状をロート状にし、周辺部(外周部)に比べて最も低い中心部に不燃物抜出し管5を設け、この不燃物抜出し管5から不燃物を流動媒体とともに排出させるように構成されており、散気ノズル9を耐火物層8内に埋め込むことにより、斜面上を不燃物が不燃物抜出し管5へと移動する際、途中で引っ掛かったり、不燃物を停滞させたりしないためである。
【0007】
耐火物層8の成形には、散気ノズル9の縦管11を鏡板7に固定した後、吹出し管10の上方に型枠を掛け、次いで不定形耐火物を型枠内に流し込み耐火物層8の成形を行うという工法が採られている。この場合、吹出し管10の吹出し口10aからの流動化空気が燃焼室3に噴出するようにするため、吹出し口10aから耐火物層8表面に至る溝状空気通路8aを設ける必要がある。そこで、耐火物層8の成形に際し、吹出し口10aの箇所に溝状空気通路形成用型を設置しておき、不定形耐火物が固化した後、この溝状空気通路形成用型を取り外すことにより、耐火物層8に溝状空気通路8aを設けるようにしている。したがって、吹出し口10aは、耐火物層8表面より下側に位置している。
【0008】
【特許文献1】特開平3−122411号公報(第7図〜第9図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の流動床式焼却炉では、各散気ノズル9がその吹出し管10の吹出し口10aを耐火物層8表面より下側に位置させて設けられているので、耐火物層8の成形に際し、各散気ノズル9毎に溝状空気通路形成用型を設置する必要があり、これら多数の型の製作、設置工程が必要で、耐火物層8の成形に多大の手間がかっていた。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、鏡板と耐火物層と複数の散気ノズルとにより構成される流動化空気噴出床を備え、流動化気体を各散気ノズルから炉内に噴出させることによって、耐火物層上に流動媒体の流動層を形成させる流動床式焼却炉において、流動化空気噴出床を製作するにあたり、従来に比べて容易に耐火物層の成形を行うことができる、流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本願発明は次のような構成としている。
【0012】
請求項1の発明は、鏡板と、この鏡板上に設けられ、不燃物抜き出し管入口に向かって下り傾斜状に延びる耐火物層と、前記鏡板及び前記耐火物層を貫通して配設された複数の散気ノズルとにより構成される流動化空気噴出床を備え、この流動化気体噴出床下に設けられた風箱に供給された流動化気体を前記各散気ノズルから炉内に噴出させることによって、前記耐火物層上に流動媒体の流動層を形成させる流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法において、前記各散気ノズルが、基端に前記風箱に臨む流動化気体入口を有して上下方向に延びる基端側縦管本体の先端部に、前記耐火物層の下り傾斜面に合わせた傾斜を持つ傾斜先端面を有するソケットが固着されてなる基端側縦管と、流動化気体の吹出し口を持つ吹出し管を有し、前記基端側縦管に着脱可能に固定される吹出し管付き先端側縦管とにより構成されており、前記鏡板の各所定部位に前記基端側縦管を、その前記ソケットの前記傾斜先端面を成形すべき耐火物層の表面位置に位置合わせした状態で、該鏡板にそれぞれ固着する工程と、前記各基端側縦管の前記ソケットの前記傾斜先端面上に該傾斜先端面によって支持される不定形耐火物用型枠を載置する工程と、前記鏡板と前記不定形耐火物用型枠との間に流動性のある不定形耐火物を流し込み、固化させることにより、耐火物層の成形を行う工程と、前記不定形耐火物用型枠を取り外す工程と、前記各基端側縦管に前記吹出し管付き先端側縦管をそれぞれ着脱可能に固定する工程とを含むことを特徴とする流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載の流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法において、前記吹出し管付き先端側縦管の前記吹出し管が、前記耐火物層の表面より上方に位置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法は、各散気ノズルが、基端側縦管に吹出し管付き先端側縦管を着脱可能に固定する2分割構造となされており、流動化空気噴出床の製作に際し、鏡板における貫通孔が設けられた各所定部位に基端側縦管を、そのソケットの傾斜先端面を成形すべき耐火物層の表面位置に位置合わせした状態で、該鏡板にそれぞれ固着し、次いで、各基端側縦管のソケットの傾斜先端面上に該傾斜先端面によって支持される不定形耐火物用型枠を載置し、その後、鏡板と不定形耐火物用型枠との間に流動性のある不定形耐火物を流し込み、固化させることにより、耐火物層の成形を行うようにしている。したがって、各基端側縦管のソケットの傾斜先端面上に不定形耐火物用型枠を載置することで不定形耐火物用型枠の設置を容易に行うことができて、従来に比べて容易に耐火物層の成形を行うことができる。
【0015】
また、本発明の流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法は、耐火物層の成形を行った後、吹出し管付き先端側縦管の吹出し管が耐火物層の表面より上方に位置するように、各基端側縦管に吹出し管付き先端側縦管をそれぞれ着脱可能に固定するようにしている。したがって、吹出し管付き先端側縦管の吹出し管を耐火物層の表面より上方に位置させるようにしているので、従来とは違って、耐火物層の成形に際し、各散気ノズルごとに溝状空気通路形成用型を設置しなくてすみ、これら多数の型の製作、設置工程を不要とし、手間と費用の低減を図ることができる。
【0016】
また、本発明の流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法によって得られる流動化空気噴出床は、各散気ノズルが、吹出し管を有する吹出し管付き先端側縦管と、耐火物層に埋め込まれて固定された基端側縦管とを備えるとともに、基端側縦管に吹出し管付き先端側縦管を着脱可能に固定する2分割構造とされている。これにより、吹出し管付き先端側縦管の方に異物が侵入した場合でも、この吹出し管付き先端側縦管を基端側縦管より取り外すことにより、容易に清掃、異物除去を行うことができる。また、耐火物層に埋め込まれた基端側縦管に異物が侵入した場合でも、上下方向に延びる基端側縦管はその流動化空気通路が略直線状をなしているので、容易に清掃、異物除去を行うことができる。
【0017】
さらに、本発明の流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法によって得られる流動化空気噴出床において、各散気ノズルの吹出し管が、耐火物層の表面より上方に位置され、かつ、耐火物層の傾斜方向に略沿って下り傾斜姿勢に保持されるとともに、吹出し口を不燃物抜出し管入口の方へ向くように設けられているものでは、焼却炉の運転を停止したときに、不燃物抜出し管入口に向かって耐火物層上を流れ下る溶融した低融点金属類が、吹出し管内に侵入することがないので、廃棄物に含まれ溶融したスズ,鉛,亜鉛,アルミニウム,マグネシウムなどの低融点金属類の侵入による散気ノズルのノズル詰まりが発生することがなくて、多大の労力と費用がかかるノズル詰まりの除去作業をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の方法によって製作される流動化空気噴出床が備えられた流動床式焼却炉の全体構成を示す断面図、図2は図1のA−A線断面図である。
【0019】
この流動床式焼却炉は、図1に示すように、炉本体101内の下部に、不燃物抜出し管入口114aの方へと下り傾斜状に延びる耐火物層400を貫通して複数の散気ノズル500を配置した流動化空気噴出床200を設け、流動化空気噴出床200下に設けられた風箱102に供給された流動化空気を各散気ノズル500から炉内に噴出させることによって、耐火物層400上の燃焼室103にて珪砂等の粒状の流動媒体による流動層104を形成させるように構成されている。102aは風箱102の流動化空気供給口、109は給塵装置、110は廃棄物投入口(ごみ投入口)である。
【0020】
流動化空気噴出床200は、鋼製の鏡板300と、この鏡板300上に設けられた耐火物層400と、耐火物層400を貫通して設けられた複数の散気ノズル500とにより構成されている。この例の流動床式焼却炉では、炉本体101の炉底中心部に不燃物抜出し管入口114aを有する不燃物抜出し管114が設けられており、耐火物層400の形状は全体としてロート状(すり鉢状)をなしている。不燃物抜出し管114は、不燃物を流動媒体とともに排出するものである。
【0021】
散気ノズル500は、不燃物抜出し管入口114aを中心とする複数の同心円周上に適切なピッチで配置されている(図2参照)。これらの散気ノズル500から流動化空気を炉内に噴出させ、流動層104に投入された廃棄物を流動媒体及び空気と攪拌させつつガス化・燃焼させるようになっている。
【0022】
図3は図1における流動化空気噴出床の要部を示す断面図、図4は図3のB矢視平面図である。
【0023】
散気ノズル500は、図3及び図4に示すように、吹出し管511を有し、吹出し管511が溶接によって固着された吹出し管付き先端側縦管510と、流動化空気入口521aを有し、下り傾斜する耐火物層400に埋め込まれて固定された基端側縦管520とを備えるとともに、ねじ部512a,522aによって構成される取付け・取外し手段により、吹出し管付き先端側縦管510を基端側縦管520に取付け・取外し可能とした2分割型構造となされている。
【0024】
基端側縦管520は、上下方向略垂直に延びるステンレス鋼製の基端側縦管本体521の先端外周部に、円筒状をなし、先端が耐火物層400の下り傾斜に略合わせて傾斜先端面となされたステンレス鋼製のソケット522を溶接によって固着するとともに、ソケット522の傾斜先端面上に円環状をなすステンレス鋼製の薄肉の流動媒体シール523を溶接によって固着してなるものである。ソケット522の内周面には、吹出し管付き先端側縦管510を取り付けるための雌ねじ部522aが設けられている。また、ソケット522の内側基端部には、吹出し管付き先端側縦管510との密着性を高めるために膨張黒鉛等のノンアスベスト製のパッキン524が取り付けられる。
【0025】
吹出し管付き先端側縦管510は、両側に流動化空気の吹出し口511aを有し、U字状をなすステンレス鋼製の吹出し管511を、上下方向略垂直に延びるステンレス鋼製の先端側縦管512に溶接によって固着してなるものである。先端側縦管512の基端部外周面には、基端側縦管520のソケット522に設けられた雌ねじ部522aに螺合する雄ねじ部512aが設けられている。吹出し管付き先端側縦管510が基端側縦管520に取り付けられた際には、吹出し管511は、耐火物層400表面より隙間を有して上方に位置し、かつ、耐火物層400の傾斜方向に略沿って下り傾斜姿勢をなすとともに、両方の吹出し口511aが不燃物抜出し管入口114aの方へ向けられるようになっている。ここでは、吹出し管511を先端側縦管512に溶接固定したが、吹出し口511aの向きを可変とするために、先端側縦管512に吹出し管511を回動自在に接続してもよい。
【0026】
次に、このような複数の散気ノズル500を備えた流動化空気噴出床200の製作について説明する。まず、耐火物層400を成形していない状態において、ソケット522を固着してなる基端側縦管本体521を、そのソケット522の傾斜先端面が成形すべき耐火物層400の表面位置に一致するように位置決めして、鏡板300の所定孔部に溶接によって固着する。流動化空気噴出床200は、炉の大きさにより、通常数十本〜数百本の散気ノズル500を備えているので、ソケット522を固着してなる基端側縦管本体521は、これらの数だけものが鏡板300に取り付けられることになる。ソケット522を固着してなる基端側縦管本体521を鏡板300に溶接によって固着した後、適度の強度とはがし易さとを持つガムテープなどにより、ソケット522の先端口を塞ぐ。
【0027】
次に、各ソケット522の傾斜先端面上に不定形耐火物用型枠116を設置し、しかる後、水と混練した流動性のある不定形耐火物を鏡板300と不定形耐火物用型枠116との間に流し込み、固化させることにより、不燃物抜出し管入口114aへ向けて下り傾斜状に延びるロート状をなす耐火物層400の成形を行う。この場合、各ソケット522の傾斜先端面の位置を成形すべき耐火物層400の傾斜をなす表面に位置合わせてあるので、各ソケット522の傾斜先端面上に不定形耐火物用型枠116を載置することで容易に不定形耐火物用型枠116の設置を行うことができ、ひいては従来に比べて容易に耐火物層400の成形を行うことができる。
【0028】
不定形耐火物が固化してから不定形耐火物用型枠116を取り外し、次いで、ソケット522の先端口を塞ぐガムテープなどを剥がした後、ソケット522の内側基端部に円環状をなすパッキン524を取り付ける。このパッキン524の取付け後、ソケット522の傾斜先端面上に円環状をなす流動媒体シール523を溶接によって固着する。このようにして各基端側縦管520が得られる。
【0029】
そして、最後に、基端側縦管520のソケット522内に上方より吹出し管付き先端側縦管510を差し入れ、吹出し管付き先端側縦管510をまわしてねじ部512a,522aを螺合する。これにより、吹出し管511を耐火物層400表面より上方に位置させ、かつ、耐火物層400の下り傾斜に沿って下り傾斜姿勢にさせるとともに、吹出し口511aを不燃物抜出し管入口114aの方へ向けた状態で、基端側縦管520に吹出し管付き先端側縦管510をねじ部512a,522aにて取り付けて固定することができる。焼却炉運転中には、流動化空気は、風箱102から基端側縦管本体521、先端側縦管512及び吹出し管511を経て両側の吹出し口511aから炉内に噴出されることになる。なお、流動媒体シール523は、ソケット522内に流動媒体が入ることを防ぐためのものである。
【0030】
このように構成される流動床式焼却炉においては、廃棄物を燃焼室103の流動層104内で450〜750℃、フリーボード部105にて約800℃以上の温度で燃焼させる。この場合、廃棄物に含まれるスズ,鉛,亜鉛などは500℃以下の融点であり、また、アルミニウム,マグネシウムなどは670℃以下の融点であるので、これらの低融点金属類は、流動層104内で溶融し、飛灰とともに排ガス出口107から炉外へ排出されるか、又は、流動媒体中に混入する。なお、図1中、106は助燃バーナであり、108は二次空気入口である。
【0031】
焼却炉の運転中、流動媒体は、炉本体101内、不燃物抜出し管114、不燃物抜出し装置111、振動篩い112及び流動媒体循環装置113という経路を循環している。よって、不燃物と、流動媒体中に混入している溶融した低融点金属類とは、流動媒体とともに不燃物抜出し管114、不燃物抜出し装置111を経て振動篩い112に運ばれて、この振動篩い112により大きさの大小別にふるい分けされるとともに、自然冷却される。この冷却され固化した低融点金属類のうちの振動篩い112のふるい目より大きいものと、不燃物のうちのふるい目より大きいものとは、炉外へ排出される。一方、冷却され固化した低融点金属類のうちの振動篩い112のふるい目より小さいものと、不燃物のうちのふるい目より小さいものとは、流動媒体循環装置113を経て再び炉本体101内に戻されるようになっている。焼却炉運転中は、各散気ノズル500の吹出し管511から流動化空気が吹き出されている。
【0032】
そして、焼却炉の運転を停止すると、流動媒体の流動と流動媒体循環装置113による循環が止まるので、流動媒体中に混入していた溶融した低融点金属類は、流動媒体間の隙間を通って耐火物層400上に溜まる。次いで、この溶融した低融点金属類が、耐火物層400上をその下り傾斜面に沿って不燃物抜出し管入口114aに向かって流れ下る。
【0033】
ここで、前述したように、各散気ノズル500の吹出し管511が、耐火物層400表面より上方に位置され、かつ、耐火物層400の傾斜方向に略沿って下り傾斜姿勢に保持されるとともに、流動化空気の吹出し口511aを不燃物抜出し管入口114aの方へ向けて設けられている。なお、吹出し管511の傾斜角度は、流動化空気噴出床200(耐火物層400)の傾斜角度と必ずしも同一である必要はない。
【0034】
これにより、この流動床式焼却炉によれば、焼却炉の運転を停止したときに、不燃物抜出し管入口114aに向かって耐火物層400上を流れ下る溶融した低融点金属類が、重力に抗して吹出し管511内に侵入することがないので、溶融した低融点金属類の侵入による散気ノズル500のノズル詰まりが発生することがなくて、多大の労力と費用がかかるノズル詰まりの除去作業をなくすことができる。また、吹出し管511を耐火物層400表面より上方に位置されるようにしたものであるから、従来とは違って、耐火物層400の成形に際し、各散気ノズル500毎に溝状空気通路形成用型を設置しなくてすみ、これらの型の製作、設置工程を不要とすることができる。
【0035】
また、この流動床式焼却炉では、各散気ノズル500が基端側縦管520に吹出し管付き先端側縦管510を取付け・取外し可能とした2分割型構造とされている。
【0036】
これにより、この流動床式焼却炉によれば、前述した散気ノズル500のノズル詰まりをなくしうることに加え、吹出し管付き先端側縦管510の方に異物が侵入した場合でも、この吹出し管付き先端側縦管510を基端側縦管520より取り外すことにより、容易に清掃、異物除去を行うことができる。また、耐火物層400に埋め込まれた基端側縦管520に異物が侵入した場合でも、該基端側縦管520はその流動化空気通路が略直線状をなしているので、容易に清掃、異物除去を行うことができる。また、吹出し管付き先端側縦管510は、取付け・取外し可能なことから適宜容易に交換可能である。
【0037】
さらに、耐火物層400の成形に際し、各基端側縦管520のソケット522の傾斜先端面の位置を成形すべき耐火物層400の傾斜をなす表面に合わせてあるので、各ソケット522の傾斜先端面上に不定形耐火物用型枠116を載置することで容易に不定形耐火物用型枠116の設置を行うことができ、ひいては従来に比べて容易に耐火物層400の成形を行うことができる。
【0038】
図5は本発明の方法によって製作される流動化空気噴出床の他の例の要部を示す断面図、図6は図5のC矢視平面図、図7は図5のD−D線断面図である。ここで、前記図3に示す流動化空気噴出床との相違点は、流動化空気噴出床の散気ノズルの構成にあり、それ以外の構成については前記図3に示す流動化空気噴出床と同一であるので、この相違点についてのみ説明する。なお、前記図3に示す流動化空気噴出床と同一構成の部分には該流動化空気噴出床と同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
散気ノズル700は、図5〜図7に示すように、吹出し管711を有しており、この吹出し管711が溶接によって固着された吹出し管付き先端側縦管710と、下り傾斜する耐火物層400に埋め込まれて固定された基端側縦管720とを備えている。散気ノズル700は、さらに、ロッド731、ナット735及び圧縮コイルバネ732などにより構成される取付け・取外し手段を備え、この取付け・取外し手段により、吹出し管付き先端側縦管710を基端側縦管720に取付け・取外し可能とした2分割型構造に構成されている。
【0040】
基端側縦管720は、上下方向略垂直に延びるステンレス鋼製の基端側縦管本体721の先端外周部に、円筒状をなし、先端が耐火物層400の下り傾斜に合わせて傾斜先端面となされたステンレス鋼製のソケット722を溶接によって固着するとともに、ソケット722の傾斜先端面上に円環状をなすステンレス鋼製の薄肉の流動媒体シール723を溶接によって固着してなるものである。ソケット722の内側基端部には、吹出し管付き先端側縦管710との密着性を高めるために膨張黒鉛等のノンアスベスト製のパッキン724が取り付けられる。また、基端側縦管本体721の基端外周部には、流動化空気入口721aが設けられている。
【0041】
吹出し管付き先端側縦管710は、両側に流動化空気の吹出し口711aを有し、U字状をなすステンレス鋼製の吹出し管711を、上下方向略垂直に延びるステンレス鋼製の先端側縦管712に溶接によって固着してなるものである。
【0042】
このような複数の散気ノズル700を備えた流動化空気噴出床200の製作については、前記図3に示す流動化空気噴出床の場合と基本的に同様であるので省略し、耐火物層400に埋め込まれて固定された基端側縦管720に、吹出し管付き先端側縦管710を取り付ける手順について、以下説明する。
【0043】
まず、基端側縦管720のソケット722内に上方より吹出し管付き先端側縦管710を差し入れることにより、この吹出し管付き先端側縦管710に固定されているロッド731を基端側縦管本体721内を通し、ロッド731の先端部を基端側縦管本体721より風箱102内に突出させる。次いで、風箱102内に突出しているロッド731の先端部の外側に、円環状をなす鋼製のバネ用固定側座板733、鋼製の圧縮コイルバネ732、及び円環状をなす鋼製のバネ用可動側座板734をこの順に嵌める。
【0044】
そして、ロッド731の先端部に設けられているねじ部731aにナット735を装着し、このナット735を前進させることによる圧縮コイルバネ732のバネ作用によって、吹出し管付き先端側縦管710を基端側縦管720に引き付けて固定する。この結果、吹出し管711は、この例では、流動媒体シール723の厚み分だけの隙間距離を有して耐火物層400の表面に極めて近接して位置し、かつ、耐火物層400の傾斜方向に略沿って下り傾斜姿勢に保持されるとともに、吹出し口711aが不燃物抜出し管入口114aの方へ向けられる。なお、先端側縦管712の長さを変えることにより、吹出し管711を耐火物層400(流動化空気噴出床200)の表面のより上方に位置させることもできる。
【0045】
焼却炉運転中には、流動化空気は、図5に示す矢印の向きに、風箱102から基端側縦管本体721、先端側縦管712及び吹出し管711を経て両側の吹出し口711aから炉内に噴出される。この場合、圧縮コイルバネ732のバネ作用により、ロッド731が熱による温度変動によって伸縮しても、常に吹出し管付き先端側縦管710を基端側縦管720側に引っ張って固定しているため、振動や回転による緩みの発生が防止できる。また、ロッド731のねじ部731aは、耐火物層400表面側(炉内側)に比べて温度が低い風箱102内に位置されているので、高温による変形などの損傷を生じることがない。
【0046】
これにより、この流動化空気噴出床200を備えた流動床式焼却炉によれば、前記図3に示す流動化空気噴出床の場合と同様に、焼却炉の運転を停止したときに、溶融した低融点金属類の侵入による散気ノズル700のノズル詰まりが発生することがなく、多大の労力と費用がかかるノズル詰まりの除去作業をなくすことができる。また、吹出し管711を耐火物層400表面より上方に位置されるようにしたものであるから、従来とは違って、耐火物層400の成形に際し、各散気ノズル700毎に溝状空気通路形成用型を設置しなくてすみ、これらの型の製作、設置工程を不要とすることができる。
【0047】
また、この流動床式焼却炉では、ロッド731、圧縮コイルバネ732、ナット735及びバネ用座板733,734によって構成される取付け・取外し手段により、基端側縦管720に吹出し管付き先端側縦管710を取付け・取外し可能とした2分割型構造とされている。これにより、吹出し管付き先端側縦管710の方に異物が侵入した場合でも、ロッド731が固着されている吹出し管付き先端側縦管710を耐火物層400に埋め込まれた基端側縦管720より取り外すことにより、容易に清掃、異物除去を行うことができる。また、耐火物層400に埋め込まれた基端側縦管720に異物が侵入した場合でも、該基端側縦管720はその流動化空気通路が略直線状をなしているので、容易に清掃、異物除去を行うことができる。
【0048】
さらに、この散気ノズル700では、吹出し管付き先端側縦管710の取付け・取外しに際し、前記吹出し管付き先端側縦管510とは違って、吹出し管付き先端側縦管710全体を回転させる必要がない。したがって、隣接する散気ノズル700同士の間隔距離を前記散気ノズル500に比べて小さくすることができ、耐火物層400においてより密に散気ノズル700を配設することができる。また、吹出し管711を薄肉の流動媒体シール723を介して耐火物層400の表面に極めて近接させて、耐火物層400の表面よりの吹出し管711の高さ位置を極めて低くすることができる。これにより、ごみに混入している不燃物を吹出し管711(吹出し管付き先端側縦管710)に引っ掛かり難くすることができ、不燃物は流動媒体とともに不燃物抜出し管入口114aに向けて排出され易い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の方法によって製作される流動化空気噴出床が備えられた流動床式焼却炉の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1における流動化空気噴出床の要部を示す断面図である。
【図4】図3のB矢視平面図である。
【図5】本発明の方法によって製作される流動化空気噴出床の他の例の要部を示す断面図である。
【図6】図5のC矢視平面図である。
【図7】図5のD−D線断面図である。
【図8】従来の流動床式焼却炉の要部を示す断面図である。
【図9】図8における流動化空気噴出床の要部を示す断面図である。
【図10】図9のE矢視平面図である。
【図11】図9のF矢視正面図である。
【符号の説明】
【0050】
101…炉本体 102…風箱 102a…流動化空気供給口 103…燃焼室 104…流動層 105…フリーボード部 106…助燃バーナ 107…排ガス出口 108…二次空気入口 109…給塵装置 110…廃棄物投入口 111…不燃物抜出し装置 112…振動篩い 113…流動媒体循環装置 114…不燃物抜出し管 114a…不燃物抜出し管入口 116…不定形耐火物用型枠 200…流動化空気噴出床 300…鏡板 400…耐火物層 500…散気ノズル 510…吹出し管付き先端側縦管 511…吹出し管 511a…吹出し口 512…先端側縦管 512a…雄ねじ部 520…基端側縦管 521…基端側縦管本体 521a…流動化空気入口 522…ソケット 522a…雌ねじ部 523…流動媒体シール 524…パッキン 700…散気ノズル 710…吹出し管付き先端側縦管 711…吹出し管 711a…吹出し口 712…先端側縦管 720…基端側縦管 721…基端側縦管本体 721a…流動化空気入口 722…ソケット 723…流動媒体シール 724…パッキン 731…ロッド 731a…ねじ部 731b…ブラケット 732…圧縮コイルバネ 733…バネ用固定側座板 734…バネ用可動側座板 735…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡板と、この鏡板上に設けられ、不燃物抜き出し管入口に向かって下り傾斜状に延びる耐火物層と、前記鏡板及び前記耐火物層を貫通して配設された複数の散気ノズルとにより構成される流動化空気噴出床を備え、この流動化気体噴出床下に設けられた風箱に供給された流動化気体を前記各散気ノズルから炉内に噴出させることによって、前記耐火物層上に流動媒体の流動層を形成させる流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法において、
前記各散気ノズルが、基端に前記風箱に臨む流動化気体入口を有して上下方向に延びる基端側縦管本体の先端部に、前記耐火物層の下り傾斜面に合わせた傾斜を持つ傾斜先端面を有するソケットが固着されてなる基端側縦管と、流動化気体の吹出し口を持つ吹出し管を有し、前記基端側縦管に着脱可能に固定される吹出し管付き先端側縦管とにより構成されており、
前記鏡板の各所定部位に前記基端側縦管を、その前記ソケットの前記傾斜先端面を成形すべき耐火物層の表面位置に位置合わせした状態で、該鏡板にそれぞれ固着する工程と、前記各基端側縦管の前記ソケットの前記傾斜先端面上に該傾斜先端面によって支持される不定形耐火物用型枠を載置する工程と、前記鏡板と前記不定形耐火物用型枠との間に流動性のある不定形耐火物を流し込み、固化させることにより、耐火物層の成形を行う工程と、前記不定形耐火物用型枠を取り外す工程と、前記各基端側縦管に前記吹出し管付き先端側縦管をそれぞれ着脱可能に固定する工程とを含むことを特徴とする流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法。
【請求項2】
前記吹出し管付き先端側縦管の前記吹出し管が、前記耐火物層の表面より上方に位置されていることを特徴とする請求項1記載の流動床式焼却炉における流動化空気噴出床の製作方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−327742(P2007−327742A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204248(P2007−204248)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【分割の表示】特願2003−56045(P2003−56045)の分割
【原出願日】平成15年3月3日(2003.3.3)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】