説明

流路形成部材への弁体取付け構造およびこの構造を備えた継手

【課題】構造の複雑化や大型化を抑制し、かつ弁体の所定の動作と位置決めを簡易な操作で行なうことが可能な流路形成部材への弁体取付け構造を提供する。
【解決手段】弁体2の外面に設けられた係止用凸部24と、第1および第2の支持片部31a,31bを有するとともに隙間32および通路33a,33bを形成している取付け具3と、を備えており、係止用凸部24が第2の支持片部31bの前方に位置する状態において、隙間32に進入して取付け具3の通路33a,33bからオフセットされるように弁体2が回転されたときには、係止用凸部24と第2の支持片部31bとの当接により弁体2の後退が規制される。係止用凸部24が第2の支持片部31bの後方に位置する状態において、通路33a,33bからオフセットされるように弁体2が回転されたときには、係止用凸部24と第2の支持片部31bとの当接により弁体2の前進が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の流路を連通状態と遮断状態とに選択的に切り換える用途に用いられる流路形成部材への弁体取付け構造、およびこの構造を備えた継手に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、温水を加熱する熱源機と、この熱源機によって加熱された温水を利用する暖房端末との配管接続構造においては、その配管内に形成されている一連の流路は、通常時は、連通した状態にある。ただし、暖房端末やその配管系の検査やメンテナンスなどを行なう際には、一時的に前記流路を遮断し、熱源機から暖房端末に向けて温水が供給されないようにしておくことが望まれる。
【0003】
そこで、従来においては、たとえば特許文献1〜6に記載されているように、熱源機と暖房端末との配管接続に使用される継手に弁体を組み付けた弁体付き継手が提案されている。前記文献1〜6に記載された弁体付き継手は、いずれも、互いに交差して繋がった第1および第2の流路を形成しているハウジングに、弁体差込孔を形成し、この弁体差込孔に弁体を差し込んだ構成を有している。前記弁体は、前後動可能であり、この弁体を前記第1および第2の流路の交差部分に向けて前進させると、それら第1および第2の流路が遮断される。また、前記弁体を後退させると、前記第1および第2の流路が互いに連通する状態となる。
【0004】
前記した構造においては、弁体を前進させて第1および第2の流路を遮断している場合に、この弁体が流体圧やその他の力によって不当に後退しないようにする必要がある。同様に、弁体を後退させて第1および第2の流路を連通させている場合には、この弁体が不当に前進しないようにする必要もある。このため、前記従来技術においては、弁体を前後動させ、かつこの弁体を所望の位置で固定させるための手段として、たとえばカム機構、バネ機構、あるいはネジ機構を用いている。
【0005】
しかしながら、弁体の動作位置決め手段として、前記したようにカム機構、バネ機構、あるいはネジ機構を用いたのでは、それらの構造が複雑となり、製造コストが高価となる不具合を招く。また、カム機構やバネ機構を採用した場合には、それらの部分のサイズが大きくなり、継手全体が大型化する問題点もある。他方、ネジ機構を採用した場合には、比較的小さなサイズに製作し得るものの、弁体を前後動させる場合には、所定の操作部を多数回にわたって回転させる必要が生じ、その操作は面倒である。
【0006】
【特許文献1】特開2000−304288号公報
【特許文献2】特開2004−3583号公報
【特許文献3】特開2004−116601号公報
【特許文献4】特開2002−4349号公報
【特許文献5】特開2001−12758号公報
【特許文献6】特開2001−12759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、構造の複雑化や大型化を抑制して製造コストの低減を図ることができるとともに、弁体の所定の動作と位置決めとを簡易な操作で適切に行なうことが可能な流路形成部材への弁体取付け構造、およびこの構造を備えた継手を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される流路形成部材への弁体取付け構造は、互いに繋がった第1および第2の流路、および弁体差込孔を形成している流路形成部材と、前記弁体差込孔に差し込まれ、かつ前記第1および第2の流路どうしを遮断する前進位置と、前記第1および第2の流路どうしを連通させる後退位置とに移動可能な弁体と、を備えている、流路形成部材への弁体取付け構造であって、前記弁体の外面に設けられた少なくとも1つの係止用凸部と、前記流路形成部材のうち、前記弁体差込孔の周壁部の外面に取り付けられる第1の支持片部、およびこの第1の支持片部に繋がり、かつ前記第1の支持片部よりも前記弁体移動方向の後方に配置されて前記第1の支持片部との間に隙間を形成する第2の支持片部を有する取付け具と、を備えており、前記取付け具は、前記弁体が前後動するときに、前記係止用凸部との干渉を回避して前記係止用凸部を前記第2の支持片部の前方および後方のそれぞれの位置に移動可能とする通路を形成しており、前記係止用凸部が前記第2の支持片部の前方に位置する状態において、この係止用凸部を前記隙間に進入させて前記通路からオフセットさせるように前記弁体が回転されたときには、前記係止用凸部と前記第2の支持片部との当接により前記弁体の後退が規制されるとともに、前記係止用凸部が前記第2の支持片部の後方に位置する状態において、この係止用凸部を前記通路からオフセットさせるように前記弁体が回転されたときには、前記係止用凸部と前記第2の支持片部との当接により前記弁体の前進が規制されるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、次に述べるような効果が得られる。
【0011】
第1に、弁体が前進した際の位置決め、および弁体が後退した際の位置決めは、流路形成部材に取り付けられた取付け具の第2の支持片部に対して、その前方または後方から弁体の係止用凸部を当接させることにより、適切に行なわせることが可能である。前記取付け具は、弁体の係止用凸部に当接させるための第2の支持片部に加え、この第2の支持片部に繋がり、かつこの取付け具を流路形成部材の所定箇所に取り付けるための第1の支持片部を備えた構成の簡易なものでよい。このため、従来のカム機構やバネ機構を採用したものと比較して、全体の構造を簡素とし、製造コストを廉価にすることが可能である。また、全体の小型化を図ることもできる。本発明でいう取付け具として利用できるものとして、クィックファスナなどと称されて市販され、かつ各種の配管部材の固定用途に用いられている固定具がある。したがって、この固定具を本発明の取付け具として利用すれば、全体の製造コストをより廉価にすることが可能である。なお、前記した市販の固定具は、複数の部材を互いに連結固定させる用途に用いられていたものであり、前後動可能な動作部材の前進時および後退時のそれぞれの位置決めに用いられていたものではない。
【0012】
第2に、弁体を前後動させてその前進位置または後退位置に位置決めする場合には、弁体を回転させることにより、弁体の係止用凸部を第2の支持片部の通路からオフセットさせればよい。また、前記した位置決め状態を解除する場合には、弁体を回転させることによって、係止用凸部を第2の支持片部の通路に一致させればよい。このため、弁体の回転操作としては、従来のネジ機構を採用したものとは異なり、弁体あるいはその他の箇所を多数回にわたって回転操作する必要はなく、その回転角度は、たとえば90度程度の僅かな角度でよい。したがって、弁開閉操作も容易である。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記取付け具は、断面コ字状の基部を備えているとともに、前記第1および第2の支持片部として、前記基部を介してそれぞれの全体が一部切欠きリング状に繋がった一対ずつの第1および第2の支持片部を備えており、前記一対の第1の支持片部は、弾性復元力を伴ってそれらの間の寸法が拡縮変形自在であることにより、前記流路形成部材の前記周壁部に対してその外面を挟み付けるようにして装着可能であり、前記一対の第2の支持片部の先端部どうしおよび基端部どうしは、それらの間に前記通路を形成するように離間している。
【0014】
このような構成によれば、流路形成部材に対する取付け具の装着が容易であり、製造コストを一層廉価にすることができる。また、取付け具自体についても、より簡素な構成、およびコンパクトなものにすることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記弁体は、この弁体が前記後退位置に配置されたときに、前記第2の支持片部の前方に位置してこの第2の支持片部に当接することによって前記弁体の後退を阻止するストッパ用係合部をさらに備えている。
【0016】
このような構成によれば、弁体を所定の後退位置に後退させたときに、この弁体がさらにそれ以上後退しないようにすることができる。このような後退阻止手段も、取付け具の第2の支持片部を有効に利用して実現されており、その構成は合理的である。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記流路形成部材の前記周壁部には、前記取付け具が前記周壁部周りに回転することを阻止するように、前記取付け具と係合する回転止め用の係合部が設けられている。
【0018】
このような構成によれば、たとえば弁体を回転させるような際に、取付け具がそれに伴って不用意に回転しないようにすることができる。取付け具の回転を阻止すると、弁体の係止用凸部を通過させるための通路の位置が不用意に位置ずれしないこととなり、係止用凸部をその通路に一致させたり、あるいは通路からオフセットさせる動作をより的確に行なうことが可能となる。
【0019】
本発明の第2の側面により提供される継手は、本発明の第1の側面により提供される流路形成部材への弁体取付け構造を有しており、かつ前記流路形成部材は、前記第1および第2の流路のそれぞれに対して所望の配管部材を接続可能とする複数の配管接続部が形成されたハウジングとして構成されていることを特徴としている。
【0020】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される流路形成部材への弁体取付け構造について述べたのと同様な効果が得られる。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1〜図6は、本発明が適用された流路形成部材への弁体取付け構造を有する継手の一実施形態を示している。図3によく表われているように、本実施形態の継手Aは、ハウジング1、弁体2、および取付け具3を備えている。
【0024】
ハウジング1は、本発明でいう流路形成部材の一例に相当し、互いに交差して繋がった第1および第2の流路12a,12bを内部に形成している。第1の流路12aは、略鉛直方向に延びており、第2の流路12bは、第1の流路12aの下部に繋がって略水平方向に延びている。ハウジング1は、たとえば合成樹脂製であり、第1の流路12aを形成している本体部10に対し、第2の流路12bを形成している略管状の補助部11が略T字状に繋がるようにして一体形成された構成である。ただし、本実施形態とは異なり、本体部10および補助部11のそれぞれを別体に形成し、これらを連結した構成とすることもできる。
【0025】
本体部10の上部は、第1の流路12aに対して所望の配管部材を接続するための配管接続部13aとして形成されている。補助部11には、第2の流路12bに対して所望の配管部材を接続するためのノズル状に突出した複数の配管接続部13bが設けられている(図1も参照)。ハウジング1の下部には、弁体2を差し込むための弁体差込孔14が形成されている。この弁体差込孔14は、第1の流路12aの下部に対して一連に繋がった形態であり、その下部は開口している。
【0026】
弁体2は、たとえば底部が開口した空洞部20を内部に形成しているロッド状であり、合成樹脂製である。この弁体2は、弁体差込孔14に対してその下端開口部からスライド可能に差し込まれている。図3に示すように、この弁体2は、その上部先端部が第1および第2の流路12a,12bの交差部分よりも上方の小径部19に嵌入する位置まで前進(上昇)可能であり、このことによって第1および第2の流路12a,12bが遮断される。また、図5に示すように、弁体2は、その先端部が小径部19よりも下方に位置するように後退(下降)可能であり、このことによって第1および第2の流路12a,12bは連通する。弁体2は、前記した前後動作に加えて、その中心軸周りに回転させることも可能である。弁体2の下部には、回転操作用の2つの突起21a,21bが設けられている。本実施形態においては、それらの長さを相違させている。このようにすると、2つの突起21a,21bのそれぞれを区別し易くなり、弁体2を回転させた際の回転角度などが判り易くなる。むろん、それらの突起21a,21bの長さを略同一に揃えてもよい。また、そのような操作用の突起の数も2つに限らない。弁体2には、空洞部20と第2の流路12bとを連通させるための一対の孔部22が形成されているが、これらの孔部22は、後述するように圧縮エアなどを利用して配管経路の気密検査を行なうのに利用される。また、弁体2の下部には、空洞部20の下部開口を閉塞するための栓体23が取り外し可能に取り付けられている。
【0027】
取付け具3は、図2によく表われているように、全体の概略形状が一部切欠きリングに形成されたクリップである。この取付け具3は、たとえば所定形状に打ち抜かれた薄手の金属板をプレス加工して形成されたものであり、平面視コ字状の基部30と、この基部30に基端部が繋がった一対の突出片31とを有している。これら一対の突出片31の先端部どうしは離間しており、一対の突出片31は、弾性復元力を伴って図2の矢印N1に示す方向に拡縮変形自在である。一対の突出片31には、隙間(スリット)32が形成されている。各突出片31は、その隙間32を介して上下に離間した第1および第2の支持片部31a,31bに区分されている。第1および第2の支持片部31a,31bは、ともに外方に膨らんだ円弧状部分を有しているが、第2の支持片部31bの方が第1の支持片部31aよりも円弧状部分どうしの間隔が小さくされている。本実施形態の取付け具3としては、クィックファスナなどと称されて配管機器用の固定具として市販されているものをそのまま利用することが可能である。ただし、本実施形態においては、この取付け具3を、弁体2用の単なる固定具として使用するのではなく、後述するように、この取付け具3をハウジング1に取り付けたままの状態において、弁体2の前後動作を許容しつつ、必要に応じてこの弁体2をその前進位置および後退位置に位置決めするための部材として役立たせており、この点に大きな特徴がある。
【0028】
図3(b)および図4(a)によく表われているように、取付け具3は、一対の第1の支持片部31aがハウジング1の本体部10の下部外周面をその両側方から弾発力をもって挟み付けることにより、ハウジング1に取り付けられている。本体部10の下端外周縁には、隙間32に係入するフランジ10aが形成されており、このフランジ10aが第1の支持片部31aの下方に位置していることにより、取付け具3の下方への位置ずれが防止されている。また、本体部10の下部外周面には、凸状の係合部15が設けられており、この係合部15は、取付け具3の基部30の凹部30aに進入して、この基部30と係合している。このことにより、たとえば弁体2を回転させた際に取付け具3に強い回転力が作用した場合であっても、この取付け具3は回転しないようになっている。
【0029】
一対の第2の支持片部31bは、図3(b)によく表われているように、弁体差込孔14の下方に位置している。一方、弁体2の外周には、一対の係止用凸部24、およびその上方に位置するストッパ用係合部25が形成されている。ストッパ用係合部25は、弁体2の外径を部分的に大きくされた段状部として形成されており、後述するように、弁体2が一定以上後退しないようにするための部分である。一対の係止用凸部24は、一対の第2の支持片部31bに係合することにより、後述するように、弁体2の前後動作(昇降動作)を規制するための部分である。取付け具3は、係止用凸部24との干渉を回避して、この係止用凸部24を第2の支持片部31bの上方および下方のそれぞれの位置に移動可能とする手段として、図4(b)および図5によく表われているように、係止用凸部通過用の一対の通路33a,33bを形成している。これら一対の通路33a,33bは、具体的には、一対の第2の支持片部31bの先端部どうしの隙間、および基端部どうしの隙間である。
【0030】
図7は、前記した継手Aを用いた温水暖房システムの一例を示している。同図に示す温水暖房システムSは、熱源機5、1または複数の暖房端末6、および貯水タンク7を備えており、これらが2つの継手Aを利用して配管接続されている。熱源機5は、燃焼器50、およびこの燃焼器50によって加熱される熱交換器51を備えており、貯水タンク7からポンプPによって送られてくる湯水(不凍液も含む)を熱交換器51により加熱可能である。熱源機5の出湯管52、および貯水タンク7用の戻り管70のそれぞれには、継手Aが配管接続部13aを利用して接続されており、複数の配管接続部13bには、暖房端末6に一端が繋がった温水供給用の複数の配管60a、または熱消費された温水戻し用の複数の配管60bが接続されている。このように、本実施形態の継手Aは、たとえば暖房端末6への温水供給を行なうためのヘッダとして利用可能である。
【0031】
次に、前記した継手Aの作用について説明する。
【0032】
まず、図3(a),(b)に示すように、第1および第2の流路12a,12bを遮断する場合には、弁体2を前進(上昇)させる。この場合、図3(b)および図4(b)によく表われているように、弁体2の係止用凸部24を第2の支持片部31bの上方に配置させて、これらを係合させる。このように設定すれば、係止用凸部24の下面部が第2の支持片部31bによってバックアップされることとなり、係止用凸部24、ひいては弁体2の後退(下降)が阻止され、第1および第2の流路12a,12bの遮断状態が適切に維持される。前記したような設定は、一対の係止用凸部24を、図4(b)の仮想線に示すように、第2の支持片部31bの通路33a,33bの直上に配置させた状態において、それら係止用凸部24が通路33a,33bからオフセットされるように、弁体2をたとえば矢印N2で示す方向に約90度程度回転させて行なう。その回転操作の際に、各係止用凸部24を第1および第2の支持片部31a,31bどうしの隙間32に進入させれば、各係止用凸部24と取付け具3との不当な干渉が回避され、前記回転操作を適切に行なうことが可能である。
【0033】
なお、図3(a)に示したように、第1および第2の流路12a,12bが遮断した状態においては、第1の流路12aから第2の流路12bへの温水供給が阻止されるために、第2の流路12bの下流側に位置する機器のメンテナンスなどを好適に行なうことができる。また、たとえば栓体23を弁体2から取り外して、空洞部20の下部開口から圧縮エアを供給することにより、第2の流路12bおよびこれに繋がった配管経路の気密検査を行なうこともできる。
【0034】
次いで、図5(a),(b)に示すように、第1および第2の流路12a,12bを連通させて、第1の流路12aから第2の流路12bに温水を流す場合には、弁体2を後退(下降)させる。このような後退動作は、一対の係止用凸部24が図4の実線で示す位置に存在している状態において、弁体2を約90度回転させて、それらを同図の仮想線で示すように一対の通路33a,33bの直上に配置させてから、これらの通路33a,33bを下向きに通過させることにより行なわせることができる。各係止用凸部24を第2の支持片部31bよりも低い高さまで下降させた後には、弁体2をたとえば90度ほど再回転させる。このことにより、係止用凸部24が通路33a,33bからオフセットされ、図5(b)および図6によく表われているように、各係止用凸部24が第2の支持片部31bの直下に位置する。すると、弁体2が上昇しようとしたときには、それらは当接し、弁体2の上昇が阻止される。図5(b)においては、係止用凸部24と第2の支持片部31bとの間の距離が比較的大きく示されているが、この距離については小さくすることが可能であり、この距離を小さくするほど弁体2の上昇防止効果が高められる。弁体2を後退させたときには、ストッパ用係合部25が第2の支持片部31bの上部に当接する。この作用により、弁体2がさらに下降することも防止される。
【0035】
前記したように、本実施形態の継手Aは、弁体2の前進時および後退時に弁体2を位置決めするための部品として、構成の簡易な取付け具3を用いている。また、弁体2には、この取付け具3との係脱を行なわせるための係止用凸部24やその他の凸部などを形成しているに過ぎない。したがって、全体の構造は簡素であり、その製造コストを廉価にし得るとともに、全体の大型化をも適切に抑制することができる。とくに、取付け具3としては、既述したように、市販されている既存の固定具をそのまま利用することができるために、全体のコストを廉価にするのにより好適である。また、ハウジング1に取付け具3を装着する作業は、特殊な工具などを要することなく、簡単に行なうことが可能であり、継手Aの組み立て作業も容易となる。
【0036】
さらに、弁体2を前進させてその位置決めを図ったり、あるいは弁体2を後退させてその位置決めを図るには、弁体2を前後動させる操作に伴って、この弁体2を90度ほど回転させる操作を行なうだけでよい。したがって、弁開閉用の操作も容易である。たとえばネジ機構を採用したものとは異なり、弁開閉の都度、弁体またはその他の部分を多数回にわたって回転させるような煩雑さは無い。
【0037】
図8および図9は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0038】
図8に示す構成においては、弁体2の一対の孔部22に高低差が設けられている。このような構成によれば、たとえば冬季において、空洞部20に残留している水がこの弁体2の下部から上方に向けて徐々に凍結していく際に、未凍結の水を上側に位置する一方の孔部22から弁体2の外部に逃がすことが可能である。したがって、空洞部20内の凍結に起因して弁体2が損傷を受ける虞を小さくする効果が期待できる。
【0039】
図9に示す構成においては、1つのハウジング1Aに、2組の第1および第2の流路12a,12bが形成されており、この構成は、前記実施形態のハウジング1を2つ組み合わせて一体化した構成に相当している。このような構成によれば、継手の部品点数の減少を図ることができる。また、継手に接続される複数の配管部材を1箇所に集合させる効果も得られる。図7に示した構成においては、2つの継手Aが用いられているが、図9に示した構成によれば、1つの継手で賄うことができる。
【0040】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明に係る流路形成部材への弁体取付け構造、およびこの構造を備えた継手の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0041】
たとえば、弁体は、内部に下部開口状の空洞部が形成されて、流路の気密検査などを可能とするものでなくてもよい。要は、互いに繋がった第1および第2の流路を、前後動作によって遮断および連通させ得る構成であればよい。弁体の前後動作とは、弁体が鉛直方向に昇降する動作に限らず、水平方向や斜め方向に往復動作する場合も含む。第1および第2の流路は、必ずしも互いに交差している必要はなく、たとえば略一直線状に繋がったかたちに形成されていてもよい。製造コストをより低減する観点からすると、取付け具としては、前述したように市販されている固定具を用いることが好ましいが、やはりこれに限定されない。市販されている固定具とは異なる構成にすることが可能である。弁体の係止用凸部は、前記実施形態と同様に、少なくとも2つ設けることが好ましいものの、やはりこれに限定されず、1つのみであってもよい。
【0042】
本発明に係る継手は、熱源機と暖房端末との接続用に限らず、それ以外の用途に用いられる継手として構成することもできる。また、本発明に係る流路形成部材への弁体取付け構造は、継手以外の部材または部分に適用することが可能である。たとえば、管体などを用いて適当な流路を形成し、かつこの流路の途中部分に弁体を取り付けてその遮断および連通を行なわせたいような場合に、本発明の構造を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明が適用された流路形成部材への弁体取付け構造を有する継手の一例を示す一部省略正面図である。
【図2】図1に示された継手の要部分解図である。
【図3】(a)は、図1に示された継手の断面図であり、(b)は、(a)のIII−III断面図である。
【図4】(a)は、図3(a)のIVa−IVa断面図であり、(b)は、図3(b)のIVb−IVb断面図である。
【図5】(a)は、図1に示された継手の動作状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のV−V断面図である。
【図6】図5(b)のVI−VI断面図である。
【図7】図1に示された継手を用いて構成された温水暖房システムの一例を示す概略説明図である。
【図8】本発明の他の例を示す要部断面図である。
【図9】本発明の他の例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
A 継手
1 ハウジング
2 弁体
3 取付け具
12a 第1の流路
12b 第2の流路
13a,13b 配管接続部
14 弁体差込孔
15 係合部
24 係止用凸部
25 ストッパ用係合部
30 基部(取付け具の)
30a 凹部
31a 第1の支持片部
31b 第2の支持片部
32 隙間
33a,33b 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに繋がった第1および第2の流路、および弁体差込孔を形成している流路形成部材と、
前記弁体差込孔に差し込まれ、かつ前記第1および第2の流路どうしを遮断する前進位置と、前記第1および第2の流路どうしを連通させる後退位置とに移動可能な弁体と、
を備えている、流路形成部材への弁体取付け構造であって、
前記弁体の外面に設けられた少なくとも1つの係止用凸部と、
前記流路形成部材のうち、前記弁体差込孔の周壁部の外面に取り付けられる第1の支持片部、およびこの第1の支持片部に繋がり、かつ前記第1の支持片部よりも前記弁体移動方向の後方に配置されて前記第1の支持片部との間に隙間を形成する第2の支持片部を有する取付け具と、を備えており、
前記取付け具は、前記弁体が前後動するときに、前記係止用凸部との干渉を回避して前記係止用凸部を前記第2の支持片部の前方および後方のそれぞれの位置に移動可能とする通路を形成しており、
前記係止用凸部が前記第2の支持片部の前方に位置する状態において、この係止用凸部を前記隙間に進入させて前記通路からオフセットさせるように前記弁体が回転されたときには、前記係止用凸部と前記第2の支持片部との当接により前記弁体の後退が規制されるとともに、
前記係止用凸部が前記第2の支持片部の後方に位置する状態において、この係止用凸部を前記通路からオフセットさせるように前記弁体が回転されたときには、前記係止用凸部と前記第2の支持片部との当接により前記弁体の前進が規制されるように構成されていることを特徴とする、流路形成部材への弁体取付け構造。
【請求項2】
前記取付け具は、断面コ字状の基部を備えているとともに、
前記第1および第2の支持片部として、前記基部を介してそれぞれの全体が一部切欠きリング状に繋がった一対ずつの第1および第2の支持片部を備えており、
前記一対の第1の支持片部は、弾性復元力を伴ってそれらの間の寸法が拡縮変形自在であることにより、前記流路形成部材の前記周壁部に対してその外面を挟み付けるようにして装着可能であり、
前記一対の第2の支持片部の先端部どうしおよび基端部どうしは、それらの間に前記通路を形成するように離間している、請求項1に記載の流路形成部材への弁体取付け構造。
【請求項3】
前記弁体は、この弁体が前記後退位置に配置されたときに、前記第2の支持片部の前方に位置してこの第2の支持片部に当接することによって前記弁体の後退を阻止するストッパ用係合部をさらに備えている、請求項1または2に記載の流路形成部材への弁体取付け構造。
【請求項4】
前記流路形成部材の前記周壁部には、前記取付け具が前記周壁部周りに回転することを阻止するように、前記取付け具と係合する回転止め用の係合部が設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載の流路形成部材への弁体取付け構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の流路形成部材への弁体取付け構造を有しており、かつ前記流路形成部材は、前記第1および第2の流路のそれぞれに対して所望の配管部材を接続可能とする複数の配管接続部が形成されたハウジングとして構成されていることを特徴とする、継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−106870(P2008−106870A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291330(P2006−291330)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】