説明

流量制御ユニット

【課題】枚葉洗浄に用いる流体の流量を一定に安定して供給、返還できるコンパクトで安価な流量制御ユニットを提供すること。
【解決手段】流量制御ユニット1は、入力ポートAから出力ポートDへの供給流体の流れを連通又は遮断する供給用バルブ31と、供給用バルブ31を遮断したときに供給流体の全部又は一部を返還流体としてリターンポートEに返還する返還用バルブとを備え、入力ポートAと供給用バルブ31とを連通する供給流路に供給流体の流量を調整する供給流量調整バルブ32を配設して、返還用バルブに連通する返還流路を、供給流量調整バルブ32から供給用バルブ31までの間で供給流路から分岐した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として半導体製造装置の薬液等による洗浄プロセスにおいて使用される流量制御ユニットに関するものであり、特に枚葉洗浄機に使用したときに、流量を安定して供給できる流量制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製造装置の洗浄プロセスには、バッチ洗浄と枚葉洗浄とがある。バッチ洗浄は、複数枚のウエハを一度に薬液などに浸漬して洗浄する方法であり、処理能力が高く大量生産に向く。しかし、近年、半導体ウエハの大型化やチップの微細化、配線の多層化等に伴い、また、大量の廃液処理に対する環境問題から、枚葉洗浄が増加傾向にある。枚葉洗浄は、薬液をノズルから塗布してウエハを一枚一枚洗浄する方法であり、その利点は、洗浄能力が高く廃液処理の問題も少ないことにある。
しかし、枚葉洗浄は、短時間処理が基本であり、硫酸等の薬液を使用した洗浄では、化学反応を促進するために、薬液の温度を高温にして洗浄ノズルに供給する。
【0003】
従来の枚葉洗浄装置100に用いる薬液の供給回路の一例101の概略構成を、図17に示す。その供給回路101は、図17の一点鎖線で囲まれた枠内に示すように構成されている。まず、タンクに貯蔵した薬液をポンプで吸引し、配管を介して入力ポートAに供給する。供給された薬液を、供給流量調整バルブ121で所定の流量に調整した上で、供給用バルブ131で連通又は遮断して出力ポートDに出力する。そして、出力ポートDから配管を介して洗浄ノズルに間欠的に供給する。供給用バルブ131が遮断したときは、入力ポートAに連通している返還用バルブ141が連通して、薬液をリターンポートEに返還し、リターンポートEから配管を介してタンクに戻している。
そのため、供給用バルブ131が遮断したときは、ポンプから送られた薬液は、供給流量調整バルブ121を通過せず、すべてリターンポートEを経由してタンクに戻っていく。そうすると、供給用バルブ131が遮断している間、供給流量調整バルブ121には薬液が通過しないので、薬液が高温の場合、供給流量調整バルブ121の弁体や弁座(ボディを含む。以下同じ)の温度が、薬液が通過していたときの温度に比べて低下する。
この供給流量調整バルブ121の弁体や弁座は、耐薬品性に優れた樹脂、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製であり、温度による膨張収縮が生じる。
【0004】
図18は、一般的に使われている供給流量調整バルブ121の弁体121Aと弁座121Bを模式的に拡大した断面図である。図18に示すように、供給流量調整バルブ121の弁体121Aは、弁座121Bに比べて、体積が少ないので、蓄熱量が少ない。したがって、高温の薬液が遮断されると、蓄熱量の少ない弁体121Aの温度は、蓄熱量の多い弁座121Bの温度よりも低下しやすくなる。弁体121Aの温度が、弁座121Bの温度より低下すると、弁体121Aは弁座121Bに比べて、より大きく収縮する。
その結果、弁体121Aと弁座121Bとの隙間、すなわち、弁開度が、収縮量の差分ΔD(ΔD=D2−D1)だけ大きくなる。ここで、図18中のD1は薬液供給中の弁開度を示し、D2は薬液遮断からしばらく経過し弁体121A及び弁座121Bの温度が低下したときの弁開度を示す。薬液を遮断している間に、弁開度がD1からD2に大きくなると、次に供給用バルブ131が連通して薬液が流れるとき単位時間に流れる流量が増加する。そのため、供給用バルブ131が連通又は遮断を一定の時間間隔で繰り返す場合、供給流量調整バルブ121の弁開度が変化して、薬液の流量が変動することになる。
このように、従来の薬液の供給回路101の構成では、洗浄ノズルに間欠的に供給する薬液の流量が一定に安定しないという問題があった。
【0005】
図19は、従来の薬液の供給回路101における流量の変動を測定した結果を示したものである。縦軸は、供給用バルブ131を流れる薬液の時間当たりの流量(mL/min)を示し、横軸は時間(sec)を示す。
所定時間、高温(約80℃)の薬液を流して、流量が略一定に安定した状態(この時の流量を「基準流量」と呼ぶ。以下同じ)で、供給流量調整バルブ121の弁開度をその基準流量に合わせて設定し、その弁開度の状態で、供給用バルブ131を遮断する。供給用バルブ131を遮断した後、しばらく放置してから、再度、供給用バルブ131を連通し、同じ温度の薬液を供給する。その後、一定の時間間隔(約120秒)で間欠的に薬液を流した時の時間当たりの流量を計測し、グラフ化した。
このグラフによると、薬液を間欠的に流した時の初回の立上り流量が、基準流量に比べて、特に大きく増加し、弁開度が弁体121A及び弁座121Bの収縮量の差の影響を受けて変化している様子が窺える。また、2回目以降においても、それぞれの立ち上がり時に流量が増加しているのは、薬液の流れを遮断している間(約120秒間)に弁体121A及び弁座121Bの収縮量に差が生じて、弁開度が増加したからであると推測できる。
【0006】
ここで、ボディの流体流路の近傍に温度調整用の流体が流れる温度調整回路を有する温度調整回路付き薬液弁122が、特許文献1に開示されている。
図20は、この温度調整回路付き薬液弁122の全体構成を示す断面図である。
図20に示すように、この温度調整回路付き薬液弁122には、薬液が流れる入力ポート123A、流体通路123B及び出力ポート123Cからなる薬液供給回路123を有する弁本体124がある。弁本体124の下部には、温調ブロック125が付設され、温調水が流れる温度調整回路126が形成されている。温度調整回路126は、温調水入力ポート126A、温調水出力ポート126C、及び、両者を連通している温調水通路126Bからなり、薬液供給回路123の近傍に位置している。この温度調整回路126の内部に温調水を流すことにより、薬液を温める効果があり、温められた薬液を介して間接的に弁体122A及び弁座122Bが温められる効果も有する。
【0007】
これに対して、加熱流体を流す通路を弁体及び弁座内部に設けることによって、弁体と弁座を直接温める遮断バルブが、特許文献2に開示されている。
半導体製造装置等の容器内に導入されたプロセスガスを、圧縮し排気する機械的真空ポンプの二次側に遮断バルブを設けた場合、ポンプ内で圧縮され昇温したガスが、ポンプの二次側に設けられたバルブ表面で急激に冷却され反応生成物となってバルブのシート面まで付着し、シール性を損なう問題を解決するため、遮断バルブの内表面、特にバルブの弁体および弁座部を、ポンプ内にて昇温したガス体温度と同等温度まで加熱できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−201065号公報
【特許文献2】特開平4−60291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の構成では、温調水を温調水入力ポート126Aから温調水通路126Bを通って温調水出力ポート126Cに流すことによって、薬液を温めることはできるが、弁体122Aと弁座122Bとを直接温める構成ではないので、薬液を遮断したときに精度よく弁体122Aと弁座122Bとの温度を一定に保持する構成としては、必ずしも十分ではない。
また、温度調整回路126を薬液供給回路123とは別に設けるため、薬液弁全体のサイズが大きくなり、特に複数の薬液弁を集中して配置する際には、配置場所の問題が生じるとともに、コストも高くなるので、課題が残る。
さらに、特許文献2の構造のように、弁体や弁座の内部に加熱流体を流す通路を形成するためには、深い孔加工ができる特殊な切削工具を要したり、弁座内部に通路を設けることができるように弁本体を通路を挟んで分割等する必要が生じ、弁製作上の問題がある。また、加熱流体供給器及び加熱流体供給回路が、流体供給回路以外に必要となるので、特許文献1のときと同じくスペース上、コスト上の問題がある。
一方、半導体製造装置の洗浄プロセスを効率的に行うため、複数台の枚葉洗浄機に用いる薬液を、一箇所のタンクから供給するケースが多い。その場合は、タンクに貯蔵した薬液の量に限りがあるので、一台の枚葉洗浄機に用いる薬液を効率的に循環する必要がある。
【0010】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、枚葉洗浄に用いる流体の流量を一定に安定して供給、返還できるコンパクトで安価な流量制御ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る流量制御ユニットは、次のような構成を有している。
(1)複数のバルブが取り付けられ、内部に流路が形成されたユニット本体と、入力ポートから出力ポートへの供給流体の流れを連通又は遮断する供給用バルブと、前記供給用バルブを遮断したときに前記供給流体の全部又は一部を返還流体としてリターンポートに返還する返還用バルブとを備え、前記入力ポートと前記供給用バルブとを連通する供給流路に前記供給流体の流量を調整する供給流量調整バルブを配設する流量制御ユニットにおいて、前記返還用バルブに連通する返還流路を、前記供給流量調整バルブから前記供給用バルブまでの間で前記供給流路から分岐したことを特徴とする。
【0012】
(2)(1)に記載された流量制御ユニットにおいて、前記返還用バルブは、前記返還流体の流量を調整する返還流量調整バルブであること、前記供給用バルブを遮断したときに前記供給流体の一部を第2の返還流体としてリターンポートに返還する第2の返還用バルブを備え、前記第2の返還用バルブに連通する第2の返還流路を、前記入力ポートから前記供給流量調整バルブまでの間で前記供給流路から分岐したことを特徴とする。
(3)(2)に記載された流量制御ユニットにおいて、前記第2の返還用バルブは、前記第2の返還流体の流れを連通又は遮断する第2の返還流体遮断バルブと前記第2の返還流体の流量を調整する第2の返還流量調整バルブとを直列に配設したものであって、前記第2の返還流体遮断バルブは、前記供給用バルブが前記供給流体の流れを連通又は遮断するときに、前記第2の返還流体の流れを遮断又は連通することを特徴とする。
【0013】
(4)(1)に記載された流量制御ユニットにおいて、前記返還用バルブは、前記返還流体の流れを連通又は遮断する返還流体遮断バルブを備え、前記返還流体遮断バルブは、前記供給用バルブが前記供給流体の流れを連通又は遮断するときに、前記返還流体の流れを遮断又は連通することを特徴とする。
(5)(4)に記載された流量制御ユニットにおいて、前記返還流体の流量を調整する返還流量調整バルブを、前記返還流体遮断バルブと直列に配設したことを特徴とする。
【0014】
(6)(1)乃至(5)のいずれか一つに記載された流量制御ユニットにおいて、前記供給流量調整バルブは、ダイアフラム式弁であって、ダイアフラム弁体と該ダイアフラム弁体が当接、離間する弁座とを同一の材質にしたことを特徴とする。
(7)(1)乃至(6)のいずれか一つに記載された流量制御ユニットにおいて、前記供給用バルブに流れる前記供給流体の流量を計測する流量計を接続する接続ポートを前記供給流路に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような特徴を有する本発明の流量制御ユニットは、以下のような作用効果を奏する。
(1)に記載された発明は、複数のバルブが取り付けられ、内部に流路が形成されたユニット本体と、入力ポートから出力ポートへの供給流体の流れを連通又は遮断する供給用バルブと、供給用バルブを遮断したときに供給流体の全部又は一部を返還流体としてリターンポートに返還する返還用バルブとを備え、入力ポートと供給用バルブとを連通する供給流路に供給流体の流量を調整する供給流量調整バルブを配設する流量制御ユニットにおいて、返還用バルブに連通する返還流路を、供給流量調整バルブから供給用バルブまでの間で供給流路から分岐したことにより、以下に説明する作用効果を奏する。
【0016】
(1)の発明は、返還用バルブに連通する返還流路を、供給流量調整バルブから供給用バルブまでの間で供給流路から分岐したので、供給用バルブが入力ポートから出力ポートへの供給流体の流れを連通しているときのみならず、遮断しているときにおいても、供給流体は供給流量調整バルブを通過している。そのため、供給流量調整バルブには、常に供給流体が流れていることによって、供給流体が直接触れる供給流量調整バルブの弁体と弁座とに供給流体の熱が、常に伝達されている。この供給流体の熱伝達が、常時、供給流量調整バルブの弁体と弁座とに行われることにより、供給流量調整バルブの弁体と弁座の温度は、供給流体の温度と略同一に維持される。これによって、供給流体の温度が変動しない限り、供給流量調整バルブの弁体と弁座とは、略同一の隙間、すなわち、略同一の弁開度を維持する。供給流量調整バルブの弁開度は、供給用バルブが連通と遮断とを繰り返しても、略同一に維持されるのであるから、供給用バルブが連通したときに供給用バルブを流れる供給流体の流量は、いつも略一定に維持される。その結果、供給用バルブから出力される枚葉洗浄に用いる供給流体の流量を、略一定に安定して供給できる。特に、枚葉洗浄に用いる流体の温度が高温であっても、供給流量調整バルブの弁開度が、略同一に維持されるので、枚葉洗浄に用いる流体の流量変動が少ない。したがって、本流量制御ユニットを用いて製造される製品の品質向上、及び歩留まり向上に寄与できる。
【0017】
また、(1)の発明は、供給流体の熱伝達が、供給流量調整バルブの弁体と弁座とに直接的に行われるので、特許文献1に開示されているような、ボディの流体流路の近傍に温度調整用の流体が流れ、熱伝達が間接的に行われる構成に比べて、より確実で安定した流量制御が可能となる。
さらに、(1)の発明は、供給流体の熱を利用して、供給流量調整バルブの弁体と弁座の温度を維持する構成であるので、特許文献1や特許文献2に開示されているような、新たな加熱源及び加熱回路を不要とし、スペース的にもコンパクトに収めることができ、安価な流量制御ユニットを提供できる。また、流量制御ユニットを複数使用した場合でも、省スペース化に寄与できる。
【0018】
(2)に記載された発明は、(1)に記載された流量制御ユニットにおいて、返還用バルブは、返還流体の流量を調整する返還流量調整バルブであること、供給用バルブを遮断したときに供給流体の一部を第2の返還流体としてリターンポートに返還する第2の返還用バルブを備え、第2の返還用バルブに連通する第2の返還流路を、入力ポートから供給流量調整バルブまでの間で供給流路から分岐したことにより、供給流体の一部を供給流量調整バルブを通過する前に、第2の返還流体として第2の返還用バルブからリターンポートに返還できるので、返還用バルブを流れる返還流体の流量を、供給流量調整バルブの弁体と弁座との温度を維持できる程度の少流量に調整することができる。この返還流体の流量を少なく調整することによって、入力ポートから入力される供給流体の最大流量を少なく抑えることができる。これによって、例えば、一箇所のタンクから複数台の枚葉洗浄機に流体を供給する場合であっても、一台の枚葉洗浄機に用いる供給流体を少ない流量で効率的に循環できる。その結果、供給流体の流量を一定に維持しつつ、供給流体をより効率的に供給、返還できる。
【0019】
(3)に記載された発明は、(2)に記載された流量制御ユニットにおいて、第2の返還用バルブは、第2の返還流体の流れを連通又は遮断する第2の返還流体遮断バルブと第2の返還流体の流量を調整する第2の返還流量調整バルブとを直列に配設したものであって、第2の返還流体遮断バルブは、供給用バルブが供給流体の流れを連通又は遮断するときに、第2の返還流体の流れを遮断又は連通することにより、供給用バルブが供給流体の流れを連通したときに供給用バルブを流れる供給流体の流量と、供給用バルブが供給流体の流れを遮断したときに第2の返還流体の流量とを略同一にできる。これは、第2の返還流量調整バルブの弁開度を、供給用バルブを流れる供給流体の流量と一致するように調整することによって可能となる。そのため、供給用バルブが供給流体の流れを連通又は遮断しても、入力ポートから入力される供給流体の流量を、常に略一定に維持することができる。入力ポートから入力される供給流体の流量を常に略一定に維持することにより、入力ポートと連通している供給流量調整バルブの一次側における流体圧力の変動が少なくなる。流体圧力の変動が少なければ、供給流量調整バルブの弁開度に与える影響が少なくなり、弁開度を略一定に維持できる。これによって、供給流量調整バルブから送られ供給用バルブを流れる供給流体の流量は、より一定に保持される。その結果、枚葉洗浄に用いる流体の流量を略一定にし、より安定して供給、返還できる。
また、第2の返還流量調整バルブの弁開度を調整することによって、必要に応じて第2の返還流体の流量を減少させることができる。すなわち、供給用バルブが遮断したときの第2の返還流体の流量を、供給用バルブが連通したときの供給用バルブを流れる供給流体の流量より減少させることにより、入力ポートから入力される供給流体の流量の総和を減少させることができる。そのため、一箇所のタンクから複数台の枚葉洗浄機に用いる流体を供給する場合であっても、一台の枚葉洗浄機に用いる供給流体の流量の総和を減少させることにより、タンク容量自体を低減できる。その結果、枚葉洗浄に用いる流体の流量を一定にしつつ、枚葉洗浄をより安価に実現できる。
【0020】
(4)に記載された発明は、(1)に記載された流量制御ユニットにおいて、返還用バルブは、返還流体の流れを連通又は遮断する返還流体遮断バルブを備え、返還流体遮断バルブは、供給用バルブが供給流体の流れを連通又は遮断するときに、返還流体の流れを遮断又は連通することにより、供給用バルブと返還用バルブとが、同時に連通することがない。すなわち、供給用バルブが供給流体の流れを連通したときには、返還流体遮断バルブが返還流体の流れを遮断するので、入力ポートから入力される供給流体の流量を、常に略一定に維持することができる。そのため、供給用バルブが供給流体の流れを連通又は遮断しても、入力ポートと連通している供給流量調整バルブの一次側における流体圧力の変動のみならず、供給用バルブと返還用バルブとの両方に連通している供給流量調整バルブの二次側における流体圧力の変動も少ない。供給流量調整バルブの一次側、及び二次側における流体圧力の変動が少ないので、供給流量調整バルブの弁開度に与える影響がいっそう少なく、弁開度をいっそう安定に維持できる。これによって、供給用バルブに流れる供給流体の流量は、よりいっそう一定に保持される。その結果、枚葉洗浄に用いる流体の流量をよりいっそう一定にし、よりいっそう安定して供給、返還できる。
また、(4)の発明は、第2の返還用バルブ及び第2の返還流路を不要とするので、(2)又は(3)の発明に比べて、よりコンパクトになり、より安価に提供できる。
【0021】
(5)に記載された発明は、(4)に記載された流量制御ユニットにおいて、返還流体の流量を調整する返還流量調整バルブを、返還流体遮断バルブと直列に配設したことにより、返還流量調整バルブの弁開度を調整することによって、必要に応じて返還流体の流量を減少させることができる。すなわち、供給用バルブが供給流体の流れを遮断したときの、返還流体の流量を減少できるので、入力ポートから入力される供給流体の流量の総和
を減少させることができる。そのため、一箇所のタンクから複数台の枚葉洗浄機に用いる流体を供給する場合であっても、一台の枚葉洗浄機に用いる供給流体の流量を減少させることにより、タンク容量自体を低減できる。その結果、枚葉洗浄に用いる流体の流量を一定にしつつ、枚葉洗浄をより安価に実現できる。
【0022】
(6)に記載された発明は、(1)乃至(5)のいずれか一つに記載された流量制御ユニットにおいて、供給流量調整バルブは、ダイアフラム式弁であって、ダイアフラム弁体と該ダイアフラム弁体が当接、離間する弁座とを同一の材質にしたことにより、ダイアフラム弁体と該ダイアフラム弁体が当接、離間する弁座との線膨張係数が等しくなり、供給流体の温度に追随して、弁体と弁座とが等しい膨張収縮を行うことができる。そのため、仮に供給流体の温度が変動しても、供給流量調整バルブの弁開度を略一定に維持しやすくできる。その結果、枚葉洗浄に用いる流体の流量を一定にし、より安定して供給、返還できる。
【0023】
(7)に記載された発明は、(1)乃至(6)のいずれか一つに記載された流量制御ユニットにおいて、供給用バルブに流れる供給流体の流量を計測する流量計を接続する接続ポートを供給流路に設けたことにより、供給流量調整バルブの弁開度を調整するときに流量計を接続することができ、簡単に流量の確認ができる。流量の確認時以外は、接続ポートを連通管にて連通することによって、常時、流量計を接続しておかなくてもよい。そのため、出力ポートからの流量精度を簡易に保証できるとともに、バルブユニットとして、スペース的にもよりコンパクトになり、より安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1の全体回路図である。
【図2】(a)本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1の斜視図である。(b)本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1の上面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1のH矢視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1のI矢視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1のJ矢視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1のK矢視図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1のF−F断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1のG−G断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1における流量変動を測定した結果を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る流量制御ユニット2の全体回路図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る流量制御ユニット2の上面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る流量制御ユニット2のN矢視図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る流量制御ユニット2のO矢視図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る流量制御ユニット2のL−L断面図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る流量制御ユニット2のM−M断面図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る流量制御ユニット2における流量変動を測定した結果を示すグラフである。
【図17】従来の枚葉洗浄装置に用いる薬液の供給回路の一例の概略構成である。
【図18】従来の一般的に使われている供給流量調整バルブの弁体と弁座を模式的に拡大した断面図である。
【図19】従来の枚葉洗浄装置に用いる薬液の供給回路における流量の変動を測定した結果を示したものである。
【図20】特許文献1に開示されている温度調整回路付き薬液弁の全体構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る流量制御ユニットの実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態の流量制御ユニット1は、従来技術と同様、半導体製造装置の洗浄プロセスに用いられる。特に枚葉洗浄機に組み付けられ、洗浄液の流量を制御する。洗浄液には、硫酸、過酸化水素水などを含む薬液や超純水等が用いられる。薬液は、洗浄処理の促進のため、80℃程度の高温にして供給する場合がある。
【0026】
<流量制御ユニット1の回路構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る流量制御ユニット1の全体回路図である。図1に示すように、流量制御ユニット1の回路は、入力ポートA、接続ポートB、C、出力ポートD、リターンポートEの各端子と、供給用バルブ31、供給流量調整バルブ32、返還流量調整バルブ33、第2の返還流体遮断バルブ34、第2の返還流量調整バルブ35の各バルブと、供給流路11、13、17、18、19、返還流路14、15、16、第2の返還流路12の各流路とから構成されている。
入力ポートAは、タンクに貯蔵した洗浄液がポンプから入力される端子である。出力ポートDは、洗浄液をノズルに出力する端子である。リターンポートEは、洗浄液の一部を返還流体としてタンクへ返還する端子である。接続ポートB、Cは、供給用バルブ31に供給する洗浄液の流量を計測する流量計36を接続する端子である。接続ポートB、Cに流量計36を接続しないときは、連通管37を接続する。
【0027】
供給用バルブ31は、出力ポートDからノズルに供給する洗浄液の流れを連通又は遮断する遮断バルブである。供給流量調整バルブ32は、供給用バルブ31に供給する洗浄液の流量を調整する流量調整バルブである。返還流量調整バルブ33は、供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の一部を返還流体としてリターンポートEに返還する流量を調整する流量調整バルブである。返還流量調整バルブ33は、供給用バルブ31が遮断したときに供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の流量を調整するバルブでもある。したがって、返還流量調整バルブ33の弁開度を調整することによって、供給用バルブ31が遮断したときに供給流量調整バルブ32の弁体と弁座の温度を維持できる程度に洗浄液の流量を少なくすることができる。第2の返還流体遮断バルブ34は、供給用バルブ31が洗浄液の流れを連通又は遮断したときに、洗浄液の一部を第2の返還流体としてリターンポートEに返還する流れを遮断又は連通する遮断バルブである。第2の返還流量調整バルブ35は、第2の返還流体の流量を調整する流量調整バルブである。
供給流路11、13、17、18、19は、洗浄液を入力ポートから出力ポートへ供給する流路である。供給流路の途中には、供給流量調整バルブ32、接続ポートB、C、供給用バルブ31が配設されている。返還流路14、15、16は、供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の一部を返還流体としてリターンポートEに返還する流路であり、供給流量調整バルブ32から供給用バルブ31までの間で供給流路17から分岐している。接続ポートB、Cは、供給流路17のうち返還流路14が分岐した後の下流側と供給用バルブ31に連通する供給流路18の上流側との間に配設されている。第2の返還流路12は、洗浄液の一部を第2の返還流体としてリターンポートEに返還する流路であり、入力ポートAから供給流量調整バルブ32までの間で供給流路11、13から分岐している。
【0028】
<流量制御ユニット1の具体的構造>
図2乃至図8を参照しながら、流量制御ユニット1の具体的構造について説明する。
図2(a)は、流量制御ユニット1の斜視図である。図2(b)は、流量制御ユニット1の上面図である。図3は、図2(a)における流量制御ユニット1のH矢視図である。図4は、図2(a)における流量制御ユニット1のI矢視図である。図5は、図2(a)における流量制御ユニット1のJ矢視図である。図6は、図2(a)における流量制御ユニット1のK矢視図である。図7は、図2(b)における流量制御ユニット1のF−F断面図である。図8は、図2(b)における流量制御ユニット1のG−G断面図である。
図2(a)に示すように、ユニット本体3は、外形が略直方体で形成され、端部に複数のバルブとポートが取り付けられ、内部に流路が形成されたマニホールドブロックである。各バルブ31、32、33、34、35は、上方又は下方からユニット本体3にねじ止めされている。ユニット本体3の材質は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)である。
図2(a)に示すように、ユニット本体3の上端には、供給用バルブ31、供給流量調整バルブ32、返還流量調整バルブ33及び第2の返還流量調整バルブ35が載置されている。図2(a)、及び図2(b)に示すように、供給流量調整バルブ32、返還流量調整バルブ33、及び第2の返還流量調整バルブ35は、調整つまみ32G、33G、35Gの操作性を考慮して上端中央付近に集合している。
図6に示すように、ユニット本体3の下端には、第2の返還流体遮断バルブ34が載置されている。
また、図6に示すように、ユニット本体3の下端には、接続ポートB、Cが突設されている。図5に示すように、ユニット本体3の前端には、入力ポートA、出力ポートD、及びリターンポートEが突設されている。入力ポートA、出力ポートD、及びリターンポートEは、外部配管を行う際の施工性を良くするため、ユニット本体3の前端に集中している。各ポートA、B、C、D、Eには、ユニット本体3から突出するポート部A1、B1、C1、D1、E1に通孔が形成され、各通孔には、配管に係合するスリーブA2、B2、C2、D2、E2が挿入されている。また、各ポート部A1、B1、C1、D1、E1には、配管を固定するユニオンナットA3、B3、C3、D3、E3が螺合されている。
なお、ユニット本体3の後端には、ユニット本体3を装置に取り付ける取付板5がねじ止めされている。取付板5の材質は、PP(ポリプロピレン)である。
【0029】
図3、及び図4に示すように、供給用バルブ31、及び第2の返還流体遮断バルブ34は、ダイアフラム式遮断バルブである。ダイアフラム弁体31A、34Aが往復動作する弁室31B、34Bは、ユニット本体3を穿設した筒状空間に設けられ、その底面に弁体が当接、離間する弁座31C、34Cをユニット本体3と一体に形成している。弁座31C、34Cの中央には、弁孔31D、34Dが穿設されている。
供給用バルブ31、及び第2の返還流体遮断バルブ34のダイアフラム弁体31A、34Aの往復動作は、操作ポート31E、34E及び呼吸ポート31F、34Fからエアを供給、排出することによって行う。供給用バルブ31は、図4に示すように、ノーマルクローズタイプであり、操作ポート31Eからエアを供給したときにのみ弁開する。一方、第2の返還流体遮断バルブ34は、図3に示すように、ノーマルオープンタイプであり、操作ポート34Eからエアを供給したときにのみ弁閉する。ダイアフラム弁体31A、34Aの材質は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)であって、弁座31C、34Cの材質と同一である。
図4に示すように、供給用バルブ31の弁孔31Dは、供給流路18を介して接続ポートCの通孔と連通している。供給用バルブ31の弁室31Bには、出力ポートDと連通する供給流路19が穿設されている。
図3に示すように、第2の返還流体遮断バルブ34の弁孔34Dは、第2の返還流路12を介して第2の返還流量調整バルブ35の弁孔35Dと連通している。第2の返還流体遮断バルブ34の弁室34Bには、入力ポートAの通孔と連通する供給流路11、及び供給流量調整バルブ32の弁孔32Dと連通する供給流路13が穿設されている。
供給用バルブ31、及び第2の返還流体遮断バルブ34の操作ポート31E、34Eと呼吸ポート31F、34Fは、配管施工性のため、いずれも前端方向を向いている。
【0030】
図3、及び図4に示すように、供給流量調整バルブ32、返還流量調整バルブ33、及び第2の返還流量調整バルブ35は、いずれも手動調整タイプのダイアフラム式流量調整バルブである。それぞれダイアフラム弁体32A、33A、35Aが往復動作する弁室32B、33B、35Bは、ユニット本体3を穿設した略V字状空間に設けられ、その底面に弁体32A、33A、35Aが当接、離間する弁座32C、33C、35Cをユニット本体3と一体に形成している。弁座32C、33C、35Cは、微妙な流量調整が可能なようにテーパー状に形成され、弁座32C、33C、35Cの中央には、細径の弁孔32D、33D、35Dが穿設されている。また、弁体32A、33A、35Aの材質は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)であって、弁座32C、33C、35Cの材質と同一である。
各バルブ32、33、35のカバー体32E、33E、35Eの高さ方向中間部には、図示しない装置の操作盤に固定するロックナット32F、33F、35Fを有し、上端部には、弁開度を調整する調整つまみ32G、33G、35Gが設けられている。
図7に示すように、供給流量調整バルブ32の弁室32Bには、供給流路17が穿設されている。供給流路17は、返還流量調整バルブ33の弁孔33Dと接続ポートBとを連通する返還流路14の途中に連結されている。図3に示すように、第2の返還流量調整バルブ35の弁室35Bには、リターンポートEの通孔に連通する返還流路16が穿設されている。図4、及び図8に示すように、第2の返還流量調整バルブ35の弁室35Bと返還流量調整バルブ33の弁室33Bとを連通する返還流路15が、それぞれの弁室35B、33Bに穿設されている。
【0031】
<流量制御ユニット1の動作説明>
図1〜図4に基づいて、流量制御ユニット1の動作を説明する。
まず、供給流量調整バルブ32、返還流量調整バルブ33、及び第2の返還流量調整バルブ35の弁開度を調整する調整つまみ32G、33G、35Gを回すことによって、それぞれ所定の流量に設定する。例えば、供給流量調整バルブ32の流量は650mL/minに、返還流量調整バルブ33の流量は50mL/minに、第2の返還流量調整バルブ35の流量は600mL/minに設定する。なお、接続ポートB、Cには、流量計36を接続する。
次に、供給用バルブ31が連通又は遮断するときに、第2の返還流体遮断バルブ34が遮断又は連通するように、各操作ポート31E、34E及び呼吸ポート31F、34Fのエアを供給又は排出する。エアの供給、排出は、図示しない電磁弁を切り替えることによって行う。
【0032】
供給用バルブ31が連通したとき、入力ポートAから供給される洗浄液は、供給流路11、13を通過して、供給流量調整バルブ32にて所定の流量(650mL/min)に調整される。供給流量調整バルブ32を通過した洗浄液の一部は、返還流体として供給流路17から分岐された返還流路14、15、16、及びその途中に配設された返還流量調整バルブ33を経由してリターンポートEに返還される。返還される返還流体の流量は、返還流量調整バルブ33にて所定の流量(50mL/min)に調整される。その結果、供給流路17、18、19、接続ポートB、C、流量計36、及び供給用バルブ31を経由して出力ポートDに出力される洗浄液の流量は、供給流量調整バルブ32を通過した洗浄液の流量から返還流体の流量を差し引いた値(600mL/min)となる。
供給用バルブ31は、一定時間連通した後、一定時間遮断する。例えば、120秒間連通した後、120秒間遮断し、これを繰り返す。
供給用バルブ31が遮断したとき、第2の返還流体遮断バルブ34が連通する。そのため、入力ポートAから供給される洗浄液の一部は、第2の返還流体として第2の返還流路12と、その途中に配設された第2の返還流体遮断バルブ34及び第2の返還流量調整バルブ35とを経由してリターンポートEに返還される。返還される第2の返還流体の流量は、第2の返還流量調整バルブ35にて所定の流量(600mL/min)に調整される。
一方、供給流量調整バルブ32を通過した洗浄液は、供給用バルブ31が連通しているときと同様に、返還流体として供給流路17から分岐された返還流路14、15、16、及びその途中に配設された返還流量調整バルブ33を経由してリターンポートEに返還される。返還される返還流体の流量は、返還流量調整バルブ33にて所定の流量(50mL/min)に調整される。
【0033】
よって、供給用バルブ31が連通しているときも遮断しているときも、供給流量調整バルブ32には、常に洗浄液が流れていることになる。この場合、供給用バルブ31が連通しているときに供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の流量は、650mL/minであり、供給用バルブ31が遮断しているときに供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の流量は、50mL/minである。この供給用バルブ31が遮断しているときに供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の流量は、供給流量調整バルブ32のダイアフラム弁体32Aと弁座32Cとの温度を保持し、弁開度を略一定に維持できる程度に少なくすることができる。
また、供給用バルブ31が連通しているときも遮断しているときも、洗浄液が入力ポートAから常に一定の流量(650mL/min)で供給されていることになる。入力ポートAから供給される洗浄液の流量が一定であるため、入力ポートAと供給流路11、13を介して連通している供給流量調整バルブ32の一次側の流体圧力は、略一定となり、圧力変動が少ない。
ただし、必要に応じて、第2の返還流量調整バルブ35の弁開度を調整することによって、第2の返還流体の流量を減少できる。第2の返還流体の流量が減少すれば、一定時間内に入力ポートAから供給される洗浄液の流量の総和も減少する。
【0034】
<流量制御ユニット1の流量測定の結果>
図9は、本発明に係る流量制御ユニット1における流量変動を測定した結果を示すグラフである。縦軸は、供給用バルブ31を流れる洗浄液の時間当たりの体積流量(mL/min)を示し、横軸は時間(sec)を示す。
まず、供給用バルブ31を弁開状態にして、約80℃の洗浄液を400秒間連続して流すことにより、流量計36にて基準流量を測定する。基準流量の最大値は616mL/min、最小値は596mL/min、平均値は605.8mL/min、流量変動幅は20mL/minであった。なお、返還流体の流量は、返還流量調整バルブ33にて50mL/minに調整されている。
次に、この基準流量における供給流量調整バルブ32の弁開度の状態で、しばらく放置してから、同じ温度(約80℃)の洗浄液を120秒間隔(一定間隔)で間欠的に流した時の時間当たりの流量を流量計36にて連続的に計測し、その値をグラフ化した。
【0035】
本発明に係る流量制御ユニット1における1回目の流量の最大値は630mL/min、最小値は602mL/min、平均値は612.7mL/min、流量変動幅は28mL/minであった。流量変動幅(28mL/min)の基準流量の平均値(605.8mL/min)に対する変化率は、4.6%であった。
これに対して、図19に示した従来の供給回路101における1回目の流量の最大値は673mL/min、最小値は589mL/min、平均値は611mL/min、流量変動幅は84mL/minであった。流量変動幅(84mL/min)の基準流量の平均値(603.3mL/min)に対する変化率は、14.0%であった。
また、本発明に係る流量制御ユニット1における5回目の流量の最大値は620mL/min、最小値は601mL/min、平均値は609mL/min、流量変動幅は19mL/minであった。流量変動幅(19mL/min)の基準流量の平均値(605.8mL/min)に対する変化率は、3.1%であった。
これに対して、図19に示した従来の供給回路101における5回目の流量の最大値は653mL/min、最小値は578mL/min、平均値は592mL/min、流量変動幅は75mL/minであった。流量変動幅(75mL/min)の基準流量の平均値(603.3mL/min)に対する変化率は、12.4%であった。
また、図19に示した従来の供給回路101において、1回目に見られた立上り流量の大幅な増加や、2回目以降の立ち上がり時に見られた流量増加も、本発明に係る流量制御ユニット1では見られない。
このように、本発明に係る流量制御ユニット1における流量変動は、1回目のみならず2回目以降(5回目)についても、従来の供給回路101に比べて大幅に減少できている。
【0036】
<流量制御ユニット1の作用効果>
流量制御ユニット1は、返還流路14、15、16を、供給流量調整バルブ32から供給用バルブ31までの間で供給流路17から分岐したので、供給用バルブ31が入力ポートAから出力ポートDへの洗浄液の流れを連通しているときのみならず、遮断しているときにおいても、洗浄液は供給流量調整バルブ32を通過している。そのため、供給流量調整バルブ32には、常に洗浄液が流れていることによって、洗浄液が直接触れる供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cとに洗浄液の熱が、常に伝達されている。この洗浄液の熱伝達が、常時、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cとに行われることにより、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cの温度は、洗浄液の温度と略同一に維持される。これによって、洗浄液の温度が変動しない限り、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cとは、略同一の隙間、すなわち、略同一の弁開度を維持する。供給流量調整バルブ32の弁開度は、供給用バルブ31が連通と遮断とを繰り返しても、略同一に維持されるのであるから、供給用バルブ31が連通したとき供給用バルブ31を流れる洗浄液の流量は、いつも略一定に維持される。その結果、供給用バルブ31から出力される枚葉洗浄に用いる洗浄液の流量を、略一定に安定して供給できる。特に、枚葉洗浄に用いる洗浄液の温度が高温であっても、供給流量調整バルブ32の弁開度が、略同一に維持されるので、枚葉洗浄に用いる洗浄液の流量変動が少ない。したがって、本流量制御ユニット1を用いて製造される製品の品質向上、及び歩留まり向上に寄与できる。
【0037】
また、流量制御ユニット1は、洗浄液の熱伝達が、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cとに直接的に行われるので、特許文献1に開示されているような、ボディの流体流路の近傍に温度調整用の流体が流れ、熱伝達が間接的に行われる構成に比べて、より確実で安定した流量制御が可能となる。
さらに、流量制御ユニット1は、洗浄液の熱を利用して、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cの温度を維持する構成であるので、特許文献1や特許文献2に開示されているような、新たな加熱源及び加熱回路を不要とし、スペース的にもコンパクトに収めることができ、安価な流量制御ユニット1を提供できる。また、流量制御ユニット1を複数使用した場合でも、省スペース化に寄与できる。
【0038】
流量制御ユニット1は、返還流体の流量を調整する返還流量調整バルブ33と、供給用バルブ31を遮断したときに洗浄液の一部を第2の返還流体としてリターンポートEに返還する第2の返還流路12を、入力ポートAから供給流量調整バルブ32までの間で供給流路11、13から分岐したことにより、洗浄液の一部を供給流量調整バルブ32を通過する前に、第2の返還流体としてリターンポートEに返還できるので、返還流量調整バルブ33を流れる返還流体の流量を、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cとの温度を維持できる程度の少流量に調整することができる。この返還流体の流量を少なく調整することによって、入力ポートAから入力される洗浄液の最大流量を少なく抑えることができる。これによって、例えば、一箇所のタンクから複数台の枚葉洗浄機に洗浄液を供給する場合であっても、一台の枚葉洗浄機に用いる洗浄液を少ない流量で効率的に循環できる。その結果、洗浄液の流量を一定に維持しつつ、洗浄液をより効率的に供給、返還できる。
【0039】
流量制御ユニット1は、第2の返還流体の流れを連通又は遮断する第2の返還流体遮断バルブ34と第2の返還流体の流量を調整する第2の返還流量調整バルブ35とを直列に配設したものであって、第2の返還流体遮断バルブ34は、供給用バルブ31が洗浄液の流れを連通又は遮断するときに、第2の返還流体の流れを遮断又は連通することにより、供給用バルブ31が洗浄液の流れを連通したときに供給用バルブ31を流れる洗浄液の流量と、供給用バルブ31が洗浄液の流れを遮断したときに第2の返還流体の流量とを略同一にできる。これは、第2の返還流量調整バルブ35の弁開度を、供給用バルブ31を流れる洗浄液の流量と一致するように調整することによって可能となる。そのため、供給用バルブ31が洗浄液の流れを連通又は遮断しても、入力ポートAから入力される洗浄液の流量を、常に略一定に維持することができる。入力ポートAから入力される洗浄液の流量を常に略一定に維持することにより、入力ポートAと連通している供給流量調整バルブ32の一次側における流体圧力の変動が少なくなる。流体圧力の変動が少なくなれば、供給流量調整バルブ32の弁開度に与える影響が少なくなり、弁開度を略一定に維持できる。これによって、供給流量調整バルブ32から送られ供給用バルブ31を流れる洗浄液の流量は、より一定に保持される。その結果、枚葉洗浄に用いる流体の流量を略一定にし、より安定して供給、返還できる。
【0040】
また、第2の返還流量調整バルブ35の弁開度を調整することによって、必要に応じて第2の返還流体の流量を減少させることができる。すなわち、供給用バルブ31が遮断したときの第2の返還流体の流量を、供給用バルブ31が連通したときの供給用バルブ31を流れる洗浄液の流量より減少させることができるので、入力ポートAから入力される洗浄液の流量の総和を減少させることができる。そのため、一箇所のタンクから複数台の枚葉洗浄機に用いる洗浄液を供給する場合であっても、一台の枚葉洗浄機に用いる洗浄液の流量の総和を減少させることにより、タンク容量自体を低減できる。その結果、枚葉洗浄に用いる洗浄液の流量を一定にしつつ、枚葉洗浄をより安価に実現できる。
【0041】
また、供給流量調整バルブ32は、ダイアフラム式弁であって、ダイアフラム弁体32Aと該ダイアフラム弁体32Aが当接、離間する弁座32Cとを同一の材質にしたことにより、ダイアフラム弁体32Aと該ダイアフラム弁体32Aが当接、離間する弁座32Cとの線膨張係数が等しくなり、洗浄液の温度に追随して、弁体32Aと弁座32Cとが等しい膨張収縮を行うことができる。そのため、仮に洗浄液の温度が変動しても、供給流量調整バルブ32の弁開度を略一定に維持しやすくできる。その結果、枚葉洗浄に用いる流体の流量を一定にし、より安定して供給、返還できる。
【0042】
また、流量制御ユニット1は、供給用バルブ31に流れる洗浄液の流量を計測する流量計36を接続する接続ポートB、Cを供給流路17、18に設けたことにより、供給流量調整バルブ32の弁開度を調整するときに流量計36を接続することができ、簡単に流量の確認ができる。流量の確認時以外は、接続ポートB、Cを連通管37にて連通することによって、常時、流量計36を接続しておかなくてもよい。そのため、出力ポートDからの流量精度を簡易に保証できるとともに、バルブユニットとして、スペース的にもよりコンパクトになり、より安価に提供できる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る流量制御ユニットの第2実施形態について図10乃至図16を参照して説明する。
第2実施形態は、返還流体の流れを連通又は遮断する返還流体遮断バルブ38を返還流量調整バルブ33と直列に配設し、返還流体遮断バルブ38は、供給用バルブ31が洗浄液の流れを連通又は遮断するときに返還流体の流れを遮断又は連通することとした点、及び第2の返還流体遮断バルブ34、第2の返還流量調整バルブ35、第2の返還流路12を設けない点が、第1実施形態と相違し、その他の点は、第1実施形態と共通している。ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、第1実施形態と共通している箇所には、図面に第1実施形態と同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0044】
<流量制御ユニット2の回路構成>
図10は、本発明の第2実施形態に係る流量制御ユニット2の全体回路図である。図10に示すように、流量制御ユニット2の回路は、入力ポートA、接続ポートB、C、出力ポートD、リターンポートEの各端子と、供給用バルブ31、供給流量調整バルブ32、返還流量調整バルブ33、返還流体遮断バルブ38の各バルブと、供給流路20、24、25、26、返還流路21、22、23の各流路とから構成されている。
【0045】
返還流路21、22、23には、返還流量調整バルブ33と返還流体遮断バルブ38とが直列に配設されている。返還流体遮断バルブ38は、供給用バルブ31が洗浄液の流れを連通又は遮断したときに、洗浄液の全部を返還流体としてリターンポートEに返還する流れを遮断又は連通する遮断バルブである。
供給流路20、24、25、26は、洗浄液を入力ポートAから出力ポートDへ供給する流路である。供給流路の途中には、供給流量調整バルブ32、接続ポートB、C、供給用バルブ31が配設されている。返還流路21、22、23は、供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の全部を返還流体としてリターンポートEに返還する流路であり、供給流量調整バルブ32から供給用バルブ31までの間で供給流路24から分岐している。
【0046】
<流量制御ユニット2の具体的構造>
図11乃至図15を参照しながら、流量制御ユニット2の具体的構造について説明する。
図11は、流量制御ユニット2の上面図である。図12は、図11における流量制御ユニット2のN矢視図である。図13は、図11における流量制御ユニット2のO矢視図である。図14は、図11における流量制御ユニット2のL−L断面図である。図15は、図11における流量制御ユニット2のM−M断面図である。
図11に示すように、外形が略直方体をしたユニット本体4の上端には、供給用バルブ31、供給流量調整バルブ32、返還流量調整バルブ33及び返還流体遮断バルブ38が載置されている。供給流量調整バルブ32、及び返還流量調整バルブ33は、調整つまみ32G、33Gの操作性を考慮して上面中央付近に集合している。
各バルブ31、32、33、38は、上方からユニット本体4にねじ止めされている。ユニット本体4の材質は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)である。
また、図12に示すように、ユニット本体4の下端には、接続ポートB、Cが突設されている。図11乃至図13に示すように、ユニット本体4の前端には、入力ポートA、出力ポートD、及びリターンポートEが突設されている。
【0047】
図13、及び図14に示すように、返還流体遮断バルブ38は、ダイアフラム式遮断バルブである。ダイアフラム弁体38Aが往復動作する弁室38Bは、ユニット本体4を穿設した筒状空間に設けられ、その底面に弁体が当接、離間する弁座38Cをユニット本体4と一体に形成している。弁座38Cの中央には、弁孔38Dが穿設されている。
返還流体遮断バルブ38のダイアフラム弁体38Aの往復動作は、操作ポート38E及び呼吸ポート38Fからエアを供給、排出することによって行う。返還流体遮断バルブ38は、図13に示すように、ノーマルオープンタイプであり、操作ポート38Eからエアを供給したときにのみ弁閉する。ダイアフラム弁体38Aの材質は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)であって、弁座38Cの材質と同一である。
図13に示すように、供給用バルブ31の弁孔31Dは、供給流路26を介して出力ポートDの通孔と連通している。図15に示すように、供給用バルブ31の弁室31Bには、接続ポートCと連通する供給流路25が穿設されている。
図13に示すように、返還流体遮断バルブ38の弁孔38Dは、返還流路23を介してリターンポートEの通孔と連通している。図14に示すように、返還流体遮断バルブ38の弁室38Bと返還流量調整バルブ33の弁室33Bとには、返還流路22が穿設されている。
図13に示すように、供給用バルブ31、及び返還流体遮断バルブ38の操作ポート31E、38Eと呼吸ポート31F、38Fは、配管施工性のため、いずれも前端方向を向いている。
図12に示すように、供給流量調整バルブ32の弁孔32Dは、供給流路20を介して入力ポートAに連通している。供給流量調整バルブ32の弁室32Bには、返還流路21が穿設されている。返還流路21は、返還流量調整バルブ33の弁孔33Dと接続ポートBとを連通する供給流路24の途中に連結されている。
【0048】
<流量制御ユニット2の動作説明>
図10〜図12に基づいて、流量制御ユニット2の動作を説明する。
まず、供給流量調整バルブ32、及び返還流量調整バルブ33の弁開度を調整する調整つまみ32G、33Gを回すことによって、それぞれ所定の流量に設定する。例えば、供給流量調整バルブ32の流量は600mL/minに、返還流量調整バルブ38の流量は600mL/minに設定する。なお、接続ポートB、Cには、流量計36を接続する。
次に、供給用バルブ31が連通又は遮断するときに、返還流体遮断バルブ38が遮断又は連通するように、各操作ポート31E、38E及び呼吸ポート31F、38Fのエアを供給又は排出する。エアの供給、排出は、図示しない電磁弁を切り替えることによって行う。
【0049】
供給用バルブ31が連通したとき、入力ポートAから供給される洗浄液は、供給流路20を通過して、供給流量調整バルブ32にて所定の流量(600mL/min)に調整される。供給用バルブ31が連通したときに返還流体遮断バルブ38が遮断されているので、供給流量調整バルブ32を通過した洗浄液は、全て、供給流路24、25、26、接続ポートB、C、流量計36、及び供給用バルブ31を経由して出力ポートDに出力される。出力ポートDに出力される洗浄液の流量は、供給流量調整バルブ32を通過した洗浄液の流量(600mL/min)となる。
供給用バルブ31は、一定時間連通した後、一定時間遮断する。例えば、120秒間連通した後、120秒間遮断し、これを繰り返す。
供給用バルブ31が遮断したとき、返還流体遮断バルブ38が連通する。そのため、入力ポートAから供給され、供給流量調整バルブ32を通過した洗浄液は、全て、返還流体として返還流路21、22、23と、その途中に配設された返還流体遮断バルブ38及び返還流量調整バルブ33とを経由してリターンポートEに返還される。返還流体の流量は、供給流量調整バルブ32、及び返還流量調整バルブ33にて所定の流量(600mL/min)に調整される。
【0050】
よって、供給用バルブ31が連通しているときも遮断しているときも、供給流量調整バルブ32には、常に洗浄液が流れていることになる。この場合、供給用バルブ31が連通しているときに供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の流量は、600mL/minであり、供給用バルブ31が遮断しているときに供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の流量は、600mL/minである。このように、供給流量調整バルブ32には、常に同じ流量の洗浄液が流れているので、供給流量調整バルブ32のダイアフラム弁体32Aと弁座32Cとの温度を保持し、弁開度を略一定に維持できる。
また、供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の流量が常に一定であるため、供給流量調整バルブ32の一次側、及び二次側の流体圧力は、略一定となり、圧力変動が少ない。
ただし、必要に応じて、返還流量調整バルブ33の弁開度を調整することによって、返還流体の流量を減少できる。返還流体の流量が減少すれば、一定時間内に入力ポートAから供給される洗浄液の流量の総和も減少する。
【0051】
<流量制御ユニット2の流量測定の結果>
図16は、本発明に係る流量制御ユニット2における流量変動を測定した結果を示すグラフである。縦軸は、供給用バルブ31を流れる洗浄液の時間当たりの体積流量(mL/min)を示し、横軸は時間(sec)を示す。
まず、供給用バルブ31を弁開状態にして、約80℃の洗浄液を400秒間連続して流すことにより、流量計36にて基準流量を測定する。基準流量の最大値は610mL/min、最小値は595mL/min、平均値は602.0mL/min、流量変動幅は15mL/minであった。
次に、この基準流量における供給流量調整バルブ32の弁開度の状態で、しばらく放置してから、同じ温度(約80℃)の洗浄液を120秒間隔(一定間隔)で間欠的に流した時の時間当たりの流量を流量計36にて連続的に計測し、その値をグラフ化した。
【0052】
本発明に係る流量制御ユニット2における1回目の流量の最大値は609mL/min、最小値は591mL/min、平均値は596.7mL/min、流量変動幅は18mL/minであった。流量変動幅(18mL/min)の基準流量の平均値(602.0mL/min)に対する変化率は、3.0%であった。
これに対して、図19に示した従来の供給回路101における1回目の流量の最大値は673mL/min、最小値は589mL/min、平均値は611mL/min、流量変動幅は84mL/minであった。流量変動幅(84mL/min)の基準流量の平均値(603.3mL/min)に対する変化率は、13.9%であった。
また、本発明に係る流量制御ユニット2における5回目の流量の最大値は614mL/min、最小値は597mL/min、平均値は604mL/min、流量変動幅は17mL/minであった。流量変動幅(17mL/min)の基準流量の平均値(602.0mL/min)に対する変化率は、2.8%であった。
これに対して、図19に示した従来の供給回路101における5回目の流量の最大値は653mL/min、最小値は578mL/min、平均値は592mL/min、流量変動幅は75mL/minであった。流量変動幅(75mL/min)の基準流量の平均値(603.3mL/min)に対する変化率は、12.4%であった。
また、図19に示した従来の供給回路101において、1回目に見られた立上り流量の大幅な増加や、2回目以降の立ち上がり時に見られた流量増加も、本発明に係る流量制御ユニット2では見られない。
このように、本発明に係る流量制御ユニット2における流量変動は、1回目のみならず2回目以降(5回目)についても、従来の供給回路101に比べて大幅に減少できている。
また、流量制御ユニット2における流量変動は、1回目のみならず2回目以降(5回目)についても、流量制御ユニット1に比べても若干ではあるが減少できている。これは、供給流量調整バルブ32を流れる洗浄液の流量が常に一定であるため、供給流量調整バルブ32のダイアフラム弁体32Aと弁座32Cとの温度をより一定に保持し、弁開度をよりいっそう一定に維持できるからであり、また、供給流量調整バルブの一次側、及び二次側の流体圧力が、略一定となり、圧力変動が少ないので、弁開度に与える影響度が少ないからである。
【0053】
<流量制御ユニット2の作用効果>
流量制御ユニット2は、返還流路21、22、23を、供給流量調整バルブ32から供給用バルブ31までの間で供給流路24から分岐したので、供給用バルブ31が入力ポートAから出力ポートDへの洗浄液の流れを連通しているときのみならず、遮断しているときにおいても、洗浄液は供給流量調整バルブ32を通過している。そのため、供給流量調整バルブ32には、常に洗浄液が流れていることによって、洗浄液が直接触れる供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cとに洗浄液の熱が、常に伝達されている。この洗浄液の熱伝達が、常時、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cとに行われることにより、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cの温度は、洗浄液の温度と略同一に維持される。これによって、洗浄液の温度が変動しない限り、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cとは、略同一の隙間、すなわち、略同一の弁開度を維持する。供給流量調整バルブ32の弁開度は、供給用バルブ31が連通と遮断とを繰り返しても、略同一に維持されるのであるから、供給用バルブ31を流れる洗浄液の流量は、いつも略一定に維持される。その結果、供給用バルブから出力される枚葉洗浄に用いる洗浄液の流量を、略一定に安定して供給できる。特に、枚葉洗浄に用いる洗浄液の温度が高温であっても、供給流量調整バルブ32の弁開度が、略同一に維持されるので、枚葉洗浄に用いる洗浄液の流量変動が少ない。したがって、本流量制御ユニット2を用いて製造される製品の品質向上、及び歩留まり向上に寄与できる。
【0054】
また、流量制御ユニット2は、洗浄液の熱伝達が、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cとに直接的に行われるので、特許文献1に開示されているような、ボディの流体流路の近傍に温度調整用の流体が流れ、熱伝達が間接的に行われる構成に比べて、より確実で安定した流量制御が可能となる。
さらに、流量制御ユニット2は、洗浄液の熱を利用して、供給流量調整バルブ32の弁体32Aと弁座32Cの温度を維持する構成であるので、特許文献1や特許文献2に開示されているような、新たな加熱源及び加熱回路を不要とし、スペース的にもコンパクトに収めることができ、安価に提供できる。また、ユニットを複数使用した場合でも、省スペース化に寄与できる。
【0055】
また、流量制御ユニット2は、返還流体の流れを連通又は遮断する返還流体遮断バルブ38を備え、返還流体遮断バルブ38は、供給用バルブ31が洗浄液の流れを連通又は遮断するときに、返還流体の流れを遮断又は連通することにより、供給用バルブ31と返還流体遮断バルブ38とが、同時に連通することがない。すなわち、供給用バルブ31が洗浄液の流れを連通したときには、返還流体遮断バルブ38が返還流体の流れを遮断するので、入力ポートAから入力される洗浄液の流量を、常に略一定に維持することができる。そのため、供給用バルブ31が洗浄液の流れを連通又は遮断しても、入力ポートAと連通している供給流量調整バルブ38の一次側における流体圧力の変動のみならず、供給用バルブ31と返還流体遮断バルブ38との両方に連通している供給流量調整バルブ32の二次側における流体圧力の変動も少ない。供給流量調整バルブ32の一次側、及び二次側における流体圧力の変動が少ないので、供給流量調整バルブ32の弁開度に与える影響がいっそう少なく、弁開度をいっそう安定に維持できる。これによって、供給用バルブ31に流れる洗浄液の流量は、よりいっそう一定に保持される。その結果、枚葉洗浄に用いる流体の流量をよりいっそう一定にし、よりいっそう安定して供給、返還できる。
また、流量制御ユニット2は、第2の返還用バルブ及び第2の返還流路を不要とするので、流量制御ユニット1に比べて、よりコンパクトになり、より安価に提供できる。
【0056】
流量制御ユニット2は、返還流体の流量を調整する返還流量調整バルブ33を、返還流体遮断バルブ38と直列に配設したことにより、返還流量調整バルブ33の弁開度を調整することによって、必要に応じて返還流体の流量を減少させることができる。すなわち、供給用バルブ31が洗浄液の流れを遮断したときの、返還流体の流量を減少できるので、入力ポートAから入力される洗浄液の流量の総和を減少させることができる。そのため、一箇所のタンクから複数台の枚葉洗浄機に用いる流体を供給する場合であっても、一台の枚葉洗浄機に用いる洗浄液の流量を減少させることにより、タンク容量自体を低減できる。その結果、枚葉洗浄に用いる流体の流量を一定にしつつ、枚葉洗浄をより安価に実現できる。
【0057】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、様々な応用が可能である。
(1)例えば、上記実施形態では、流量制御ユニット1、2を半導体製造装置に使用したが、用途はこれに限定されないことは言うまでもない。
(2)例えば、上記実施形態では、供給用バルブ31はノーマルクローズタイプのエアオペレイト式遮断弁であるが、ノーマルオープンタイプのエアオペレイト式遮断弁としてもよい。
(3)例えば、リターン側の流量調整バルブと遮断バルブの位置を入れ替えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1、2・・・流量制御ユニット
3、4・・・ユニット本体
11、13、17、18、19・・・流量制御ユニット1の供給流路
14、15、16・・・流量制御ユニット1の返還流路
12・・・流量制御ユニット1の第2の返還流路
20、24、25、26・・・流量制御ユニット2の供給流路
21、22、23・・・流量制御ユニット2の返還流路
31・・・供給用バルブ
32・・・供給流量調整バルブ
33・・・返還流量調整バルブ
34・・・第2の返還流体遮断バルブ
35・・・第2の返還流量調整バルブ
36・・・流量計
37・・・連通管
38・・・返還流体遮断バルブ
A・・・入力ポート
B,C・・・接続ポート
D・・・出力ポート
E・・・リターンポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ポートから出力ポートへの供給流体の流れを連通又は遮断する供給用バルブと、前記供給用バルブを遮断したときに前記供給流体の全部又は一部を返還流体としてリターンポートに返還する返還用バルブとを備え、前記入力ポートと前記供給用バルブとを連通する供給流路に前記供給流体の流量を調整する供給流量調整バルブを配設する流量制御ユニットにおいて、
前記返還用バルブに連通する返還流路を、前記供給流量調整バルブから前記供給用バルブまでの間で前記供給流路から分岐したことを特徴とする流量制御ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載された流量制御ユニットにおいて、
前記返還用バルブは、前記返還流体の流量を調整する返還流量調整バルブであること、
前記供給用バルブを遮断したときに前記供給流体の一部を第2の返還流体としてリターンポートに返還する第2の返還用バルブを備え、前記第2の返還用バルブに連通する第2の返還流路を、前記入力ポートから前記供給流量調整バルブまでの間で前記供給流路から分岐したことを特徴とする流量制御ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載された流量制御ユニットにおいて、
前記第2の返還用バルブは、前記第2の返還流体の流れを連通又は遮断する第2の返還流体遮断バルブと前記第2の返還流体の流量を調整する第2の返還流量調整バルブとを直列に配設したものであって、
前記第2の返還流体遮断バルブは、前記供給用バルブが前記供給流体の流れを連通又は遮断するときに、前記第2の返還流体の流れを遮断又は連通することを特徴とする流量制御ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載された流量制御ユニットにおいて、
前記返還用バルブは、前記返還流体の流れを連通又は遮断する返還流体遮断バルブを備え、
前記返還流体遮断バルブは、前記供給用バルブが前記供給流体の流れを連通又は遮断するときに、前記返還流体の流れを遮断又は連通することを特徴とする流量制御ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載された流量制御ユニットにおいて、
前記返還流体の流量を調整する返還流量調整バルブを、前記返還流体遮断バルブと直列に配設したことを特徴とする流量制御ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載された流量制御ユニットにおいて、
前記供給流量調整バルブは、ダイアフラム式弁であって、ダイアフラム弁体と該ダイアフラム弁体が当接、離間する弁座とを同一の材質にしたことを特徴とする流量制御ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載された流量制御ユニットにおいて、
前記供給用バルブに流れる前記供給流体の流量を計測する流量計を接続する接続ポートを前記供給流路に設けたことを特徴とする流量制御ユニット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−172760(P2012−172760A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35071(P2011−35071)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】