説明

流量制御弁

【課題】内部での異物を含んだ流体の滞留を防止するようにして、異物の排出性に優れた流量制御弁を提供すること。
【解決手段】流量制御弁16は、バルブボディ31が、バルブニードル33の軸線方向の一端面との間に、リターンスプリング35を収容するスプリング収容室53を有し、バルブニードル33が、入口側ポート51から導入され出口側ポート32から導出される間の流体が通過する内部流路52と、内部流路52とスプリング収容室53とを軸線方向に貫通する貫通孔71を有し、貫通孔71の端部に、貫通孔71内の流体の通過を一方向に制御する逆止弁81を設けるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御弁に関し、特に、バルブニードルをバルブボディに対して相対的に移動させることにより流体の流量を制御する流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばディーゼルエンジン用燃料噴射システムとして知られるコモンレール式燃料噴射システムでは、コモンレール内に高圧燃料を蓄え、このコモンレール内に蓄えられた高圧燃料をインジェクタを介して内燃機関の各気筒の燃焼室内に噴射供給するように構成されている。
【0003】
コモンレールには燃料の噴射圧力に相当する高圧燃料を常時蓄える必要があるために、低圧ポンプにて燃料を高圧ポンプに供給し、高圧ポンプにて燃料を加圧し高圧化して高圧燃料をコモンレールに供給するように構成されている。
【0004】
ここで、低圧ポンプから高圧ポンプに至る燃料経路の流路開口面積を流量制御弁にて調整することにより、高圧ポンプに供給される燃料の量、ひいては高圧ポンプから吐出される燃料の量を調整するようになっている。
【0005】
その流量制御弁は、ソレノイドコイルの起磁力を制御してバルブボディに対するバルブニードルの相対的な位置を制御することにより、低圧ポンプから高圧ポンプに至る燃料経路の流路開口面積を調整するようになっている。
【0006】
このような流量制御弁としては、バルブニードルの外周面に異物排出通路としての複数個の軸方向溝を設けることにより、出口側ポート側および貫通孔側の燃料圧力とスプリング収容室側の燃料圧力との間の圧力差を利用して、軸方向溝を介して異物を燃料とともに流量制御弁の外部に排出し、異物を要因とする不具合を防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−56964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の流量制御弁にあっては、バルブニードルの内部の貫通孔により出口側ポート側とスプリング収容室側とが常に連通しているため、出口側ポート側および貫通孔側の燃料圧力とスプリング収容室側の燃料圧力との間の圧力差は燃料が主として貫通孔を流れることで解消されてしまい、この圧力差で軸方向溝の内部での燃料の強制的な流れを発生させることは期待できないという問題がある。
【0009】
また、仮に、軸方向溝の内部での燃料の流れを生じさせることができたとしても、スプリング収容室から排出された異物が、バルブニードルの往復運動の際の呼吸作用によって、再びスプリング収容室に引き戻されてしまう恐れがある。
【0010】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、内部での異物を含んだ流体の滞留を防止するようにして、異物の排出性に優れた流量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る流量制御弁は、上記目的を達成するため、(1)軸線方向に延在するシリンダ孔が形成されたシリンダ部と、前記シリンダ部に流体を導入する入口側ポートと、前記シリンダ部から流体を導出する出口側ポートとを有する筒状のバルブボディと、前記シリンダ孔内に摺動自在に支持されて、前記シリンダ部の軸線方向に移動して前記入口側ポートと前記出口側ポートとの連通量を制御するバルブニードルと、前記バルブニードルを閉弁方向または開弁方向に付勢するリターンスプリングと、を備えた流量制御弁であって、前記バルブボディは、前記バルブニードルの軸線方向の一端面との間に、前記リターンスプリングを収容するスプリング収容室を有し、前記バルブニードルは、前記入口側ポートから導入され前記出口側ポートから導出される間の流体が通過する内部流路と、前記内部流路と前記スプリング収容室とを軸線方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔の端部に、前記貫通孔内の前記流体の通過を一方向に制御する制御弁を設けたものから構成されている。
【0012】
このため、強制的に、バルブボディとバルブニードルとの間の異物を含んだ流体がスプリング収容室に移動し、さらに、貫通孔を通過して内部流路に移動するという一方向の流体の流れが発生する。
【0013】
これにより、バルブボディとバルブニードルの間に異物を含んだ流体が滞留することがなくなるため、流体の循環性が向上して異物が排出されるので、バルブボディとバルブニードルの間に異物が付着したり滞留することによるバルブニードルの摺動不良が防止される。
【0014】
したがって、内部での異物を含んだ流体の滞留を防止するようにして、異物の排出性に優れた流量制御弁を提供することができる。
【0015】
上記(1)に記載の流量制御弁において、(2)前記制御弁は、前記バルブニードルが前記シリンダ孔内を摺動するときに、前記貫通孔内の前記流体の通過を一方向に制御するものから構成されている。
【0016】
このため、バルブニードルの開弁動作と閉弁動作のサイクルが繰り返される毎に、バルブボディとバルブニードルの間の異物を含んだ流体がスプリング収容室に移動し、さらに、貫通孔を通過して内部流路に移動するという一方向の流体の流れが発生する。
【0017】
これにより、バルブボディとバルブニードルの間に異物を含んだ流体が滞留することがなくなるため、流体の循環性が向上して異物が排出されるので、バルブボディとバルブニードルの間に異物が付着したり滞留することによるバルブニードルの摺動不良が防止される。
【0018】
上記(1)または(2)に記載の流量制御弁において、(3)前記制御弁は、前記貫通孔の端部を開放する位置と閉塞する位置との間で前記シリンダ孔内部を移動可能な球体と、前記球体を一端部により前記貫通孔の端部を閉塞する位置に向けて付勢する球体付勢手段と、前記シリンダ孔の内壁に設けられ前記球体付勢手段の他端部の位置を固定する固定部材とからなる。
【0019】
このため、制御弁は、球体と、球体付勢手段と、固定部材とからなるボールプランジャの構成となるため、制御弁の構成を簡易で信頼性に優れたものとすることができる。
【0020】
上記(3)に記載の流量制御弁において、(4)前記固定部材は、前記流体が通過する通過孔を中央部に有する円環状に形成されたものから構成されている。
【0021】
このため、固定部材の中央部の通過孔を介して流体が通過することができるので、固定部材により流体の流れが妨げられることを防止することができる。
【0022】
上記(3)に記載の流量制御弁において、(5)前記固定部材は、前記流体が通過する複数の通過孔を全面に有する円盤状に形成されたものから構成されている。
【0023】
このため、固定部材の全面に複数形成された通過孔を介して流体が通過することができるので、固定部材により流体の流れが妨げられることを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、内部での異物を含んだ流体の滞留を防止するようにして、異物の排出性に優れた流量制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る流量制御弁の第1の実施の形態を示す図であり、流量制御弁を備えたコモンレール式燃料噴射システムの構成図である。
【図2】本発明に係る流量制御弁の第1の実施の形態を示す図であり、閉弁時の流量制御弁の断面図である。
【図3】本発明に係る流量制御弁の第1の実施の形態を示す図であり、開弁動作時の流量制御弁の断面図である。
【図4】本発明に係る流量制御弁の第1の実施の形態を示す図であり、閉弁動作時の流量制御弁の断面図である。
【図5】本発明に係る流量制御弁の第1の実施の形態を示す図であり、ストローク回数に応じた燃料交換量を示す図である。
【図6】本発明に係る流量制御弁の第2の実施の形態を示す図であり、停止時の流量制御弁の断面図である。
【図7】本発明に係る流量制御弁の第2の実施の形態を示す図であり、起動時の流量制御弁の断面図である。
【図8】本発明に係る流量制御弁の第2の実施の形態を示す図であり、運転時の流量制御弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る内燃機関の排気ガス還流装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1〜図5は、本発明に係る流量制御弁の第1の実施の形態を示す図である。
【0027】
まず、構成を説明する。
【0028】
図1において、本発明の第1の実施の形態に係る流量制御弁を適用したコモンレール式燃料噴射システムの構成を説明する。
【0029】
本実施の形態のコモンレール式燃料噴射システム1は、自動車等の車両に搭載されるものであり、主として、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関(多気筒ディーゼルエンジン:以下エンジンと言う)用の燃料噴射システムとして知られる蓄圧式燃料噴射装置である。
【0030】
このコモンレール式燃料噴射システム1は、コモンレール11内に蓄圧された高圧燃料を、エンジンの各気筒毎に対応して搭載された複数個(本例では4個)の電磁式燃料噴射弁であるインジェクタ13を介してエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給するように構成されている。
【0031】
また、このコモンレール式燃料噴射システム1は、燃料の噴射圧力Pcに相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール11と、エンジンの各気筒の燃焼室内に燃料を所定のタイミングで噴射供給するインジェクタ13と、電磁式の流量制御弁16を経て加圧室内に吸入される燃料を加圧する吸入燃料調量方式の燃料供給ポンプ(以下サプライポンプと呼ぶ)15と、複数個のインジェクタ13の電磁弁14およびサプライポンプ15の流量制御弁16を電子制御するエンジン制御ユニット(以下ECUと呼ぶ)20とを備えている。
【0032】
図1では、4気筒エンジンの1つの気筒に対応するインジェクタ13のみを示し、他の気筒については図示を省略している。ここで、エンジンの出力軸(例えばクランク軸:以下クランクシャフトと言う)は、サプライポンプ15のドライブシャフトまたはカムシャフトをベルト駆動している。
【0033】
コモンレール11は、燃料供給配管22を介して高圧燃料を吐出するサプライポンプ15の吐出口と接続されている。また、コモンレール11から燃料タンク17へ燃料を戻すためのリリーフ配管24には、燃料タンク17に連通する燃料排出路の開口度合を調整することが可能な常閉型の減圧弁12が設置されている。
【0034】
この減圧弁12は、減圧弁駆動回路を介してECU20から印加される減圧弁駆動電流によって電子制御されることにより、例えば減速時またはエンジン停止時に速やかにコモンレール11内の燃料圧力(コモンレール圧力)を高圧から低圧へ減圧させる降圧性能に優れる電磁弁である。
【0035】
減圧弁12は、コモンレール11から燃料タンク17へ燃料を還流させるための燃料還流路の開度を調整するバルブ(弁体:図示せず)と、このバルブを開弁方向に駆動するソレノイドコイル(電磁コイル:図示せず)と、バルブを閉弁方向に付勢するスプリング等のバルブ付勢手段(図示せず)とを有している。
【0036】
そして、減圧弁12は、減圧弁駆動回路を介してソレノイドコイルに印加される減圧弁駆動電流の大きさに比例して、コモンレール11内からリリーフ配管24を経て燃料タンク17に還流される燃料の還流量(減圧弁流量)を調整して、コモンレール11内の燃料圧力(コモンレール圧力)を変更する。
【0037】
なお、減圧弁12の代わりに、リリーフ配管24に、コモンレール11内の燃料圧力が限界設定圧力を超えた際に開弁してコモンレール11内の燃料圧力を限界設定圧力以下に抑えるプレッシャリミッタを取り付けるようにしても良い。
【0038】
エンジンの各気筒毎に対応して搭載された複数個のインジェクタ13は、コモンレール11より分岐する複数の分岐管23の下流端に接続されて、エンジンの各気筒の燃焼室内への燃料噴射を行う燃料噴射ノズル、この燃料噴射ノズル内に収容されたノズルニードル(図示せず)を開弁方向に駆動する電磁弁14、およびノズルニードルを閉弁方向に付勢するスプリング等のニードル付勢手段(図示せず)等から構成された電磁式燃料噴射弁である。
【0039】
そして、各気筒のインジェクタ13からエンジンの各気筒の燃焼室内への燃料噴射は、ノズルニードルと連動するコマンドピストンの動作制御を行う背圧制御室内の燃料圧力を増減制御する電磁弁14のソレノイドコイル(図示せず)への通電および通電停止(ON/OFF)により電子制御される。
【0040】
つまり、インジェクタ13の電磁弁14のソレノイドコイルが通電されてノズルニードルがノズルボデーの先端部に形成された複数個の噴射孔を開弁している間、コモンレール11内に蓄圧された高圧燃料がエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給される。これにより、エンジンが運転される。
【0041】
また、インジェクタ13には、余剰燃料や背圧制御室から排出された燃料を燃料系の低圧側に溢流させるためのリークポートが設けられており、インジェクタ13からのリーク燃料は、リターン配管25を介して燃料タンク17に戻される。
【0042】
サプライポンプ15は、吸入した低圧燃料を加圧する圧送系統を備え、つまりポンプエレメントを備え、流量制御弁16で、圧送系統の燃料吐出量を、各加圧室内に吸入される吸入燃料量を調整することで制御するタイプの高圧供給ポンプである。
【0043】
このサプライポンプ15は、エンジンのクランクシャフトの回転に伴ってポンプ駆動軸(ドライブシャフトまたはカムシャフト)が回転することで、燃料タンク17から低圧燃料を汲み上げる周知のフィードポンプ(低圧供給ポンプ:図示せず)と、ポンプ駆動軸により回転駆動されるカム(図示せず)とを有している。
【0044】
また、サプライポンプ15は、このカムに駆動されて上死点と下死点との間を往復運動するプランジャ(図示せず)と、これらのプランジャがポンプハウジングに固定されたシリンダヘッド(図示せず)内を往復摺動することにより吸入された燃料を加圧して高圧化する加圧室(プランジャ室:図示せず)とを有している。
【0045】
また、サプライポンプ15は、各加圧室内の燃料圧力が所定値以上に上昇すると閉弁する吸入弁(図示せず)と、各加圧室内の燃料圧力が所定値以上に上昇すると開弁する吐出弁(図示せず)とを有している。なお、サプライポンプ15は、本発明の高圧ポンプおよび低圧ポンプに相当する。
【0046】
そして、サプライポンプ15は、各プランジャがシリンダヘッド(ポンプシリンダ)内を往復摺動することで、燃料タンク17から燃料供給配管21を経て加圧室内に吸入された低圧燃料を加圧して高圧化する。なお、燃料供給配管21の途中には、燃料フィルタ18が設置されている。
【0047】
また、吸入弁は、各加圧室よりも燃料の流れ方向の上流側、つまりフィードポンプから1個の流量制御弁16を経て加圧室に至る燃料吸入経路の途中に設置された逆止弁よりなる。また、吐出弁は、各加圧室よりも燃料の流れ方向の下流側、つまり加圧室から吐出口に至る燃料吐出経路の途中に設置された逆止弁よりなる。
【0048】
また、サプライポンプ15には、内部の燃料温度が高温にならないように、リークポートが設けられており、サプライポンプ15からのリーク燃料は、燃料還流配管26を経て燃料タンク17に戻される。
【0049】
ここで、サプライポンプ15内に形成される、フィードポンプから吸入弁を経て加圧室に至る燃料吸入経路(図示せず)の途中には、加圧室内に吸入される吸入燃料量を調整する流量制御弁16が取り付けられている。
【0050】
この流量制御弁16は、図2に示すように、ポンプハウジングに固定されたスリーブ状のバルブボディ31と、このバルブボディ31の半径方向に開口した出口側ポート32の流路開口面積を調整する弁体(以下バルブニードルと言う)33と、このバルブニードル33を開弁方向に駆動するリニアソレノイドアクチュエータ34と、バルブニードル33を閉弁方向に付勢するリターンスプリング35とによって構成されている。
【0051】
そして、流量制御弁16は、図示しないポンプ駆動回路を介してECU20から印加されるポンプ駆動電流iによって電子制御されることにより、サプライポンプ15の加圧室内に吸入される燃料吸入量を調整するノーマリクローズタイプ(常閉型)の電磁式流量制御弁である。
【0052】
すなわち、流量制御弁16は、ポンプ駆動回路を介してリニアソレノイドアクチュエータ34に印加されるポンプ駆動電流iの大きさに比例して、バルブニードル33をストローク方向に移動させて、燃料吸入経路の途中に設けられたバルブボディ31の出口側ポート32の流路開口面積を調整する。これにより、フィードポンプから燃料吸入経路、吸入弁を経て加圧室内に吸入される燃料吸入量が調整される。
【0053】
したがって、サプライポンプ15の加圧室からコモンレール11内に吐出される燃料吐出量が、エンジンの運転条件(例えばエンジン回転速度、アクセル操作量、指令噴射量等)に対応した最適値に調整され、インジェクタ13からエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給する燃料の噴射圧力Pcに相当するコモンレール11内の燃料圧力、いわゆるコモンレール圧力が変更される。
【0054】
ここで、リニアソレノイドアクチュエータ34は、バルブボディ31の図示右端部に一体的に設けられた袋筒状のステータ部(ステータコア)36と、バルブニードル33の図示右端部に一体的に設けられたアーマチャ部(アーマチャ、ムービングコア)37と、ステータ部36の円筒状部の外周に保持された樹脂製のコイルボビン38とを含んで構成されている。
【0055】
また、リニアソレノイドアクチュエータ34は、コイルボビン38の外周に巻回されたソレノイドコイル39と、このソレノイドコイル39の端末リード線(図示せず)に電気的に接続されたターミナル40と、ソレノイドコイル39の外周側を覆う円筒状のハウジング41とを含んで構成されている。
【0056】
なお、バルブボディ31のステータ部36は、ソレノイドコイル39の通電時に、磁化されて電磁石となり、バルブニードル33のアーマチャ部37を吸引するための吸引部42を有している。この吸引部42は、バルブニードル33を摺動可能に収容する略円筒状の収容部43に対して薄肉部44および円筒部45を介して接続されている。
【0057】
そして、ソレノイドコイル39は、通電を受けることにより起磁力を発生してバルブボディ31のステータ部36およびバルブニードル33のアーマチャ部37を磁化することで、アーマチャ部37をストローク方向(軸線方向の図示右側)に吸引するとともに、コイルボビン38に、絶縁被膜を施した導線を複数回巻装したコイルである。このソレノイドコイル39は、コイルボビン38の一対の鍔状部間に巻装されたコイル部と、このコイル部より取り出された一対の端末リード線(端末線)とを有している。
【0058】
また、ハウジング41は、電気絶縁性に優れる樹脂材料によって一体的に形成され、ソレノイドコイル39の外周側を覆う円筒状部、およびターミナル40を保持する筒状のコネクタ部46を備えている。
【0059】
そして、ハウジング41の外周には、バルブボディ31の外周側に形成された略円環状のフランジ部にかしめ等の手段を用いて固定された円筒状のブラケット47が設けられている。
【0060】
このブラケット47の外周側に形成された略円環状のフランジ部(鍔状部)は、サプライポンプ15のポンプハウジングの外壁面にスクリュー等の締結具(図示せず)を用いて締め付け固定されている。そのフランジ部には、締結具を挿通する挿通孔48が形成されている。
【0061】
ここで、流量制御弁16のバルブボディ31は、収容部43によりバルブニードル33を摺動可能に収容するシリンダ機能と、ステータ部36により磁路形成を行うステータ機能とを有している。
【0062】
そして、バルブボディ31をステータとして機能させるために、その材質をフェライト系のステンレス鋼(SUS13)等の軟質磁性材料としている。この軟質磁性材料は、磁気特性を悪化させることから焼き入れ等の熱処理を施すことができない。
【0063】
しかし、バルブボディ31に本来の機能であるシリンダ機能を持たせるには、耐摩耗性の向上および表面硬さの向上が要求されることから、バルブボディ31のスプール孔49の孔壁面にニッケル燐メッキ等の硬化層を施している。
【0064】
なお、バルブボディ31のスプール孔49の孔壁面は、バルブニードル33を軸線方向(ストローク方向)に案内(誘導)する円筒状のガイド部を構成している。
【0065】
また、バルブボディ31の図示左端部は、サプライポンプ15のポンプハウジングの外壁面に設けられた嵌合凹部(図示せず)内に圧入嵌合されており、ポンプハウジングの嵌合凹部の内壁面とバルブボディ31の図示左端部の外周面との間には、燃料の漏れを防止するためのOリング等のシール材50が装着されている。
【0066】
そして、バルブボディ31の図示左端部には、フィードポンプから燃料が送り込まれる燃料溜まり部(図示せず)に連通する入口側ポート51が形成されている。
【0067】
なお、上述した出口側ポート32は、吸入弁を介して加圧室に連通する燃料吸入経路の後半部を構成する連通路に向けて開口している。そして、出口側ポート32の入口側は、出口側に比べて流路径が小さくなっている。
【0068】
また、バルブボディ31は、バルブニードル33が摺動するスプール孔(摺動孔)49を有している。このスプール孔49の図示右側部には、バルブニードル33の内部に形成される内部流路(第2内部流路)52および貫通孔71を介して、入口側ポート51に連通するスプリング収容室53が形成されている。
【0069】
ここで、流量制御弁16のバルブニードル33は、内部の軸線方向に内部流路52を有する円筒状のスプール型バルブであって、その外周面にバルブボディ31のスプール孔49の孔壁面に摺接する摺動部54を備えている。
【0070】
このバルブニードル33は、摺動部54がバルブボディ31の出口側ポート32の流路開口面積を変更することで、吸入弁を介して加圧室に吸入される燃料流量(燃料吸入量)を調整している。
【0071】
そして、バルブニードル33は、バルブボディ31のスプール孔49内を摺動して出口側ポート32の流路開口面積を変更する弁体本来のバルブ機能の他に、アーマチャ部37によって磁路形成を行うアーマチャ機能を有している。
【0072】
そして、バルブニードル33をアーマチャとして機能させるために、その材質を純鉄または低炭素鋼等の軟質磁性材料としている。この軟質磁性材料は、磁気特性を悪化させることから焼き入れ等の熱処理を施すことができない。
【0073】
しかし、バルブニードル33として機能させるには、耐摩耗性の向上および表面硬さの向上が要求される。そこで、バルブニードル33の摺動部54の外周面にニッケル燐メッキ等の硬化層を施している。
【0074】
そして、バルブニードル33は、バルブボディ31の図示左端部の内周に圧入固定された円環状のストッパ60によって初期位置が規定されている。そして、バルブニードル33は、スプリング収容室53内に収容されたリターンスプリング35により常に付勢されている。このため、バルブニードル33は、先端がストッパ60に当接する位置で、バルブニードル33の閉弁側の移動範囲が規定されている。
【0075】
また、バルブニードル33の図示右端部には、バルブボディ31のステータ部36に所定のエアギャップを介して対向するように設けられた円筒状のアーマチャ部37が一体的に形成されている。
【0076】
そして、バルブニードル33の内部には、内部流路52とスプリング収容室53とを連通するように貫通孔71が設けられている。この貫通孔71は、内部流路52よりも内径が小さくなっており、バルブニードル33が軸線方向に移動する際にスプリング収容室53内の燃料が貫通孔71を通過することでバルブニードル33の移動がし易くなっている。
【0077】
そして、バルブニードル33の摺動部54の外周面には、円環状の調量溝(環状流路)55と、円環状の調芯溝56と、複数個(2個または3個)の円環状油溝57とが形成されている。調量溝55は、バルブニードル33の外径を摺動部54よりも小さくすることで設けられている。
【0078】
図2に示すように、調芯溝56は、バルブニードル33の外径を摺動部54よりも小さくすることで設けられている。この調芯溝56は、調量溝55よりも浅く、且つ調量溝55よりも軸線方向に長く摺動部54の周方向に設けられている。そして、調芯溝56は、調芯溝56よりも流路径の小さい連通孔59を介して内部流路52に連通している。また、連通孔59は、調芯溝56に向けて2個開口している。
【0079】
そして、複数個の円環状油溝57は、バルブニードル33の図示左端部(先端部)または図示右端部(後端部)とバルブボディ31のスプール孔49との間から燃料が浸入して、バルブボディ31のスプール孔49の孔壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間に油膜を形成する周溝部である。
【0080】
ここで、本実施例のバルブニードル33の摺動部54には、調量溝55と調芯溝56とを液密的に略遮断するシール部が設けられるとともに、バルブボディ31のスプール孔49内を摺動するのに必要な所定のクリアランスが設けられている。
【0081】
図1に示すECU20には、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路、インジェクタ駆動回路(EDU)、ポンプ駆動回路、減圧弁駆動回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。
【0082】
そして、各種センサからのセンサ信号は、A/D変換器でA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。そして、ECU20は、図1に示すように、燃料圧力センサ65からの電圧信号や、その他の各種センサからのセンサ信号が、A/D変換器でA/D変換された後に、ECU20に内蔵されたマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0083】
また、ECU20は、エンジンをクランキングさせた後にエンジンキーをIG位置に戻して、図示しないイグニッションスイッチがオン(IG・ON)すると、メモリ内に格納された制御プログラムまたは制御ロジックに基づいて、例えばインジェクタ13の電磁弁14およびサプライポンプ15の流量制御弁16を電子制御するように構成されている。
【0084】
ここで、マイクロコンピュータには、エンジンのクランクシャフトの回転角度を検出するためのクランク角度センサ61と、アクセル開度(ACCP)を検出するためのアクセル開度センサ62と、エンジン冷却水温(THW)を検出するための冷却水温センサ63と、サプライポンプ15内に吸入されるポンプ吸入側の燃料温度(THF)を検出するための燃料温度センサ64等が接続されている。
【0085】
また、図2に示すように、バルブニードル33の内部の、内部流路52と貫通孔71との間には、逆止弁81が設けられている。
【0086】
逆止弁81は、ボール82と、このボール82をその一端により貫通孔71側に付勢するばね83と、ばね83の他端の位置を固定するストッパ84とから構成されており、ボールプランジャの構成を有している。
【0087】
ボール82は、貫通孔71の内径より大きく、且つ、内部流路52の内径より小さい寸法に設定されており、貫通孔71の内部流路52側の端部に位置しているときは、この貫通孔71の内部流路52側の端部を閉塞するようになっている。
【0088】
ばね83は、内部流路52の内部に配置されており、その一端によりボール82を貫通孔71の端部に向って付勢し、その他端はストッパ84により固定されている。
【0089】
ストッパ84は、内部流路52の内部、すなわちバルブニードル33の内壁に固定されており、ストッパ84により燃料の流れが妨げられないよう燃料が通過することができる通過孔84aを中央部に有する円環状に形成されている。なお、ストッパ84は、燃料の流れを妨げないよう多数の通過孔84aが全面に形成された円盤状に形成されていてもよい。
【0090】
図3に示すように、流量制御弁16の開弁動作時、すなわちバルブニードル33がバルブボディ31内で開弁方向(図の右方向)に移動するときには、逆止弁81は、スプリング収容室53と内部流路52との圧力差により開弁し、貫通孔71を通過してスプリング収容室53から内部流路52に燃料が移動することを許容するようになっている。
【0091】
すなわち、バルブニードル33が開弁方向に移動するときには、スプリング収容室53の圧力が内部流路52の圧力より大きくなってこの圧力差が逆止弁81のばね83の付勢力より大きくなるため、ボール82が貫通孔71を閉塞する位置から開放する位置に移動し、貫通孔71を通過してスプリング収容室53から内部流路52に燃料が移動することができる。
【0092】
一方、図4に示すように、流量制御弁16の閉弁動作時、すなわちバルブニードル33がバルブボディ31内で閉弁方向(図の左方向)に移動するときには、逆止弁81は、ばね83の付勢力により閉弁し、貫通孔71を通過してスプリング収容室53から内部流路52に燃料が移動することを規制するようになっている。
【0093】
次に、作用を説明する。
【0094】
図3に示すように、流量制御弁16の開弁動作時は、スプリング収容室53の内部の燃料の圧力が上昇して逆止弁81が開弁するため、燃料が貫通孔71を通過してスプリング収容室53から内部流路52に移動する。
【0095】
このとき、スプリング収容室53の内部にあった異物は、燃料とともに貫通孔71を通過して内部流路52に移動する。なお、異物とは、流量制御弁16の外部から混入したものだけでなく、流量制御弁16の内部で発生した摩耗粉等も含む。
【0096】
図4に示すように、流量制御弁16の閉弁動作時は、スプリング収容室53の内部の燃料の圧力が低下してばね83の付勢力により逆止弁81が閉弁するため、燃料がバルブボディ31とバルブニードル33の間、具体的にはバルブボディ31の壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間を通過して、内部流路52からスプリング収容室53に移動する。
【0097】
これにより、本実施の形態の流量制御弁16においては、バルブニードル33の開弁動作と閉弁動作のサイクルが繰り返される毎に、強制的に、バルブボディ31の壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間の異物を含んだ燃料がスプリング収容室53に移動し、さらに、貫通孔71を通過して内部流路52に移動するという一方向の燃料の流れが発生し、図5に示すように、逆止弁81を設けなかったときより多くの燃料の交換が行われる。
【0098】
このため、バルブボディ31の壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間に異物を含んだ燃料が滞留することがなくなるため、燃料の循環性が向上して異物が排出されるので、バルブボディ31とバルブニードル33の間に異物が付着したり滞留することによるバルブニードル33の摺動不良が防止される。
【0099】
このように本実施の形態では、軸線方向に延在する収容孔43aが形成された収容部43と、この収容部43に流体を導入する入口側ポート51と、収容部43から流体を導出する出口側ポート32とを有する筒状のバルブボディ31と、収容孔43a内に摺動自在に支持されて、収容部43の軸線方向に移動して入口側ポート51と出口側ポート32との連通量を制御するバルブニードル33と、バルブニードル33を閉弁方向または開弁方向に付勢するリターンスプリング35と、を備え、バルブボディ31は、バルブニードル33の軸線方向の一端面との間に、リターンスプリング35を収容するスプリング収容室53を有し、バルブニードル33は、入口側ポート51から導入され出口側ポート32から導出される間の流体が通過する内部流路52と、内部流路52とスプリング収容室53とを軸線方向に貫通する貫通孔71を有し、貫通孔71の端部に、貫通孔71内の流体の通過を一方向に制御する逆止弁81を設けるように構成した。
【0100】
このため、強制的に、バルブボディ31の壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間の異物を含んだ燃料がスプリング収容室53に移動し、さらに、貫通孔71を通過して内部流路52に移動するという一方向の燃料の流れが発生する。
【0101】
これにより、バルブボディ31の壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間に異物を含んだ燃料が滞留することがなくなるため、燃料の循環性が向上して異物が排出されるので、バルブボディ31とバルブニードル33の間に異物が付着したり滞留することによるバルブニードル33の摺動不良が防止される。
【0102】
したがって、内部での異物を含んだ燃料の滞留を防止するようにして、異物の排出性に優れた流量制御弁16を提供することができる。
【0103】
また本実施の形態では、逆止弁81は、バルブニードル33が収容孔43a内を摺動するときに、貫通孔71内の流体の通過を一方向に制御するように構成した。
【0104】
このため、バルブニードル33の開弁動作と閉弁動作のサイクルが繰り返される毎に、バルブボディ31の壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間の異物を含んだ燃料がスプリング収容室53に移動し、さらに、貫通孔71を通過して内部流路52に移動するという一方向の燃料の流れが発生する。
【0105】
これにより、バルブボディ31の壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間に異物を含んだ燃料が滞留することがなくなるため、燃料の循環性が向上して異物が排出されるので、バルブボディ31とバルブニードル33の間に異物が付着したり滞留することによるバルブニードル33の摺動不良が防止される。
【0106】
また本実施の形態では、逆止弁81は、貫通孔71の端部を開放する位置と閉塞する位置との間で収容孔43aの内部を移動可能なボール82と、このボール82を一端部により貫通孔71の端部を閉塞する位置に向けて付勢するばね83と、収容孔43aの内壁に設けられたばね83の他端部の位置を固定するストッパ84とからなるように構成した。
【0107】
このため、逆止弁81は、ボール82と、ばね83と、ストッパ84とからなるボールプランジャの構成となるため、逆止弁81の構成を簡易で信頼性に優れたものとすることができる。
【0108】
また本実施の形態では、ストッパ84は、流体が通過する通過孔84aを中央部に有する円環状に形成されるように構成した。
【0109】
このため、ストッパ84の中央部の通過孔84aを介して燃料が通過することができるので、ストッパ84により燃料の流れが妨げられることを防止することができる。
【0110】
また本実施の形態では、ストッパ84は、流体が通過する複数の通過孔84aを全面に有する円盤状に形成されるように構成した。
【0111】
このため、ストッパ84の全面に複数形成された通過孔84aを介して燃料が通過することができるので、ストッパ84により燃料の流れが妨げられることを防止することができる。
(第2の実施の形態)
図6〜図8は、本発明に係る流量制御弁の第2の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。
【0112】
図6において、流量制御弁16のバルブニードル33の内部の、内部流路52と貫通孔71との間には、調整弁91が設けられている。
【0113】
調整弁91は、ボール92と、このボール92をその一端により貫通孔71側に付勢するばね93と、ストッパ94とから構成されており、ボールプランジャの構成を有している。
【0114】
ボール92は、貫通孔71の内径より大きく、且つ、内部流路52の内径より小さい寸法に設定されており、貫通孔71の内部流路52側の端部に位置しているときは、この貫通孔71の内部流路52側の端部を閉塞するようになっている。
【0115】
ばね93は、内部流路52の内部に配置されており、その一端によりボール92を貫通孔71の端部に向って付勢し、その他端はストッパ94により固定されている。ばね93の自由長は、流量制御弁16の運転時、すなわちバルブニードル33が図6に示す停止位置にないときは常に調整弁91が開弁されるような長さに設定されている。
【0116】
ストッパ94は、バルブボディ31の図示左端部の内周に圧入固定された円環状の部材であり、バルブニードル33の初期位置および閉弁側の移動範囲を規定するとともに、ばね93の他端を固定している。すなわち、本実施の形態におけるストッパ94は、第1の実施の形態におけるストッパ60の機能を兼ねるものである。
【0117】
なお、ストッパ94は、円環状に形成されているため、ストッパ94により燃料の流れが妨げられることはないが、ストッパ94は、燃料の流れを妨げないよう多数の孔が形成された円盤状に形成されていてもよい。
【0118】
図7に示すように、調整弁91は、流量制御弁16の起動時、すなわちバルブニードル33がバルブボディ31内で開弁方向(図の右方向)に移動するときには、スプリング収容室53と内部流路52との圧力差により開弁し、貫通孔71を通過してスプリング収容室53から内部流路52に燃料が移動することを許容するようになっている。
【0119】
すなわち、流量制御弁16の起動時には、スプリング収容室53の圧力が内部流路52の圧力より大きくなってこの圧力差が調整弁91のばね83の付勢力より大きくなるため、ボール82が貫通孔71を閉塞する位置から開放する位置に移動し、貫通孔71を通過してスプリング収容室53から内部流路52に燃料が移動することができる。
【0120】
一方、図8に示すように、調整弁91は、流量制御弁16の運転時には、ばね93の長さが流量制御弁16の運転時に常に調整弁91が開弁される長さに設定されているため、スプリング収容室53と内部流路52との圧力差に関わらず開弁する。
【0121】
また、図6に示すように、調整弁91は、流量制御弁16の停止時、すなわち閉弁時には、スプリング収容室53の燃料が減圧されるため閉弁する。
【0122】
次に、作用を説明する。
【0123】
図7に示すように、流量制御弁16の起動時には、スプリング収容室53の内部の燃料の圧力が上昇して調整弁91が開弁するため、燃料が貫通孔71を通過してスプリング収容室53から内部流路52に移動する。このとき、スプリング収容室53の内部にあった異物は、燃料とともに貫通孔71を通過して内部流路52に移動する。
【0124】
図8に示すように、流量制御弁16の運転時には、調整弁91が常に開弁されるため、燃料の流れに影響を与えることがない。
【0125】
そして、流量制御弁16が図6に示す停止時の状態に遷移する際には、スプリング収容室53の燃料が減圧されて調整弁91が閉弁するため、バルブボディ31とバルブニードル33の間の燃料、具体的にはバルブボディ31の壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間の燃料は、スプリング収容室53に移動する。
【0126】
これにより、本実施の形態の流量制御弁16においては、起動、運転、停止のサイクルが繰り返される際に、停止時には、バルブボディ31の壁面とバルブニードル33の摺動部54の外周面との間に異物を含んだ燃料が滞留することがなくなるため、燃料の循環性が向上して異物を排出することができ、運転時には、バルブニードル33の制御性が阻害されるのを防止することができる。
【0127】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0128】
例えば、上記の実施の形態では、ソレノイドコイル39への通電停止時に全閉、つまり出口側ポート32の流路開口面積が最小となるノーマリクローズタイプ(常閉型)の流量制御弁16を例示したが、ソレノイドコイル39への通電停止時に全開、つまり出口側ポート32の流路開口面積が最大となるノーマリオープンタイプ(常開型)の流量制御弁16を用いてもよい。
【0129】
また、上記の実施の形態では、燃料の送油量を調整するために流量制御弁16を例示したが、本発明の流量制御弁16は、潤滑油や作動油等のオイル、水等の液体、あるいは空気、排気ガス等の気体の流量を調整する用途にも用いることができる。
【0130】
以上のように、本発明に係る流量制御弁は、内部での異物を含んだ流体の滞留を防止するようにして、異物の排出性に優れたものとすることができるという効果を有し、バルブニードルをバルブボディに対して相対的に移動させることにより流体の流量を制御する流量制御弁として有用である。
【符号の説明】
【0131】
1 コモンレール式燃料噴射システム
16 流量制御弁
31 バルブボディ
32 出口側ポート
33 バルブニードル
35 リターンスプリング
43 収容部(シリンダ部)
43a 収容孔(シリンダ孔)
51 入口側ポート
52 内部流路
53 スプリング収容室
71 貫通孔
81 逆止弁(制御弁)
82 ボール(球体)
83 ばね(球体付勢手段)
84 ストッパ(固定部材)
84a 通過孔
91 調整弁
92 ボール
93 ばね
94 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延在するシリンダ孔が形成されたシリンダ部と、前記シリンダ部に流体を導入する入口側ポートと、前記シリンダ部から流体を導出する出口側ポートとを有する筒状のバルブボディと、
前記シリンダ孔内に摺動自在に支持されて、前記シリンダ部の軸線方向に移動して前記入口側ポートと前記出口側ポートとの連通量を制御するバルブニードルと、
前記バルブニードルを閉弁方向または開弁方向に付勢するリターンスプリングと、を備えた流量制御弁であって、
前記バルブボディは、前記バルブニードルの軸線方向の一端面との間に、前記リターンスプリングを収容するスプリング収容室を有し、
前記バルブニードルは、前記入口側ポートから導入され前記出口側ポートから導出される間の流体が通過する内部流路と、前記内部流路と前記スプリング収容室とを軸線方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔の端部に、前記貫通孔内の前記流体の通過を一方向に制御する制御弁を設けたことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
前記制御弁は、前記バルブニードルが前記シリンダ孔内を摺動するときに、前記貫通孔内の前記流体の通過を一方向に制御することを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記制御弁は、前記貫通孔の端部を開放する位置と閉塞する位置との間で前記シリンダ孔内部を移動可能な球体と、前記球体を一端部により前記貫通孔の端部を閉塞する位置に向けて付勢する球体付勢手段と、前記シリンダ孔の内壁に設けられ前記球体付勢手段の他端部の位置を固定する固定部材とからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記固定部材は、前記流体が通過する通過孔を中央部に有する円環状に形成されたことを特徴とする請求項3に記載の流量制御弁。
【請求項5】
前記固定部材は、前記流体が通過する複数の通過孔を全面に有する円盤状に形成されたことを特徴とする請求項3に記載の流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50183(P2013−50183A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188885(P2011−188885)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】