説明

浄水装置

【課題】本発明は浄水装置に関し、濾過膜ユニットによる浄化と生物活性炭本来の吸着能、および生物活性炭内によるバクテリヤによる生物分解効能と、また、ハニカム構造体による生物接触酸化機能とを効率的に、かつ高度に発揮させて水の浄化作用に優れ、生物活性炭の浸漬槽に対する充填、抜き取りにおける簡易性が良好でメンテナンスを優れる。
【解決手段】原水W1が導入される浸漬槽1と、原水Wに浸漬される濾過膜ユニット2と、浸漬槽の下底部1a近くに設けられた曝気管3と、を備え、浸漬槽内で粒状乃至は粉状の生物活性炭4を原水W1とともに曝気させ、濾過膜ユニットの外周に外形が筒形のハニカム構造体5を設け、生物活性炭4が詰め込まれたメッシュよりなる袋6をハニカム構造体の上下方向に連通されたセル7,7・・・内に着脱可能に挿入し、取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浄水装置に関し、濾過膜ユニットによる浄化と生物活性炭本来の吸着能、および生物活性炭内によるバクテリヤによる生物分解効能と、また、ハニカム構造体による生物接触酸化機能とを効率的に、かつ高度に発揮させて水の浄化作用に優れ、生物活性炭の浸漬槽に対する充填、抜き取りにおける簡易性が良好でメンテナンスを優れたものにするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原水が導入される浸漬槽内に前記原水に浸漬される濾過膜ユニットが設けられ、該濾過膜ユニットの下方において前記浸漬槽の前記下底部近くに設けられた曝気管により曝気を行うことにより、前記浸漬槽内で粒状乃至は粉状の生物活性炭を原水とともに曝気回流させて水を浄化させるという浄水装置が知られている。この浄水装置による浄水では、クリプトスポジウムのような耐塩素性病原生物も除去でき、また、トリハロメタン前駆物質、色度、アンモニア性窒素、陰イオン界面活性剤、臭気物質等の除去も可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−323683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の上記従来の浄水装置では、浸漬槽内に生ずる曝気回流の停滞部に堆積された生物活性炭は、吸着性能や有機物低減性能を発揮するという役割を果たしてはいない。このように、浸漬槽内での曝気回流の停滞部における生物活性炭による吸着性能や有機物低減性能の役割低減を回避するためには、例えば浸漬槽の周囲に、活性炭の沈降防止用の撹拌用散気管を設置することが必要になり、しかも、前記撹拌用散気管に空気を供給するための空気源を必要としていた。
【0004】
また、特許文献1に記載の上記従来の浄水装置では、浸漬槽内の原水に浸漬される濾過膜ユニットを定期的に洗浄するのには、例えば薬液として有効塩素濃度が10〜12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて浸漬槽内を薬液洗浄しなければならないので、生物活性炭の有機物低減性能が低下するという問題があった。そして、この生物活性炭の有機物低減性能の低下を防止するためには、生物活性炭を浸漬槽とは個別の槽内に移送して貯留し、浸漬槽内を前記薬液により薬液洗浄した後に、再び生物活性炭を浸漬槽内に移送し、元に戻すという多大な作業と、時間を必要としていた。
【0005】
しかも、浸漬槽内の曝気回流の停滞部に堆積された生物活性炭を全量移送するためには、限度があり、薬害を受けた生物活性炭の性能回復期間、有機物低減性能に影響を及ぼすことにもなる。
【0006】
本発明は上記従来の欠点を解決するためになされたものであり、濾過膜ユニットによる浄化と生物活性炭本来の吸着能、および生物活性炭内によるバクテリヤによる生物分解効能と、また、ハニカム構造体による生物接触酸化機能とを効率的に、かつ高度に発揮させて水の浄化作用を優れたものにし、生物活性炭の浸漬槽に対する充填、抜き取りにおける簡易性が良好であり、メンテナンス性が優れた浄水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされ、請求項1に記載の発明は、
原水が導入される浸漬槽と、該浸漬槽内に設けられて前記原水に浸漬される濾過膜ユニットと、前記濾過膜ユニットの下方において前記浸漬槽の下底部近くに設けられた曝気管と、を備え、前記浸漬槽内で粒状乃至は粉状の生物活性炭を原水とともに曝気させて水を浄化させる浄水装置において、
前記浸漬槽の略中央に前記濾過膜ユニットが設置され、前記濾過膜ユニットの外周には外形が筒形のハニカム構造体が設けられ、前記生物活性炭が詰め込まれたメッシュよりなる袋が前記ハニカム構造体の上下方向に連通されたセル内に着脱可能に挿入され、取付けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記袋が、正面縦長に形成され、前記袋は縦長さの略中間に位置する折り曲げ部にて2つ折り可能に設けられ、該折り曲げ部は前記浸漬槽の上縁部間に架設された吊杆に係止部が係脱可能に設けられたハンガーを介して前記袋が2つ折り状態に吊り下げられ、2つ折りされた前記袋の二股部の一方は相互に隣接された前記セルの1つに内挿され、2つ折りされた前記袋の二股部の他方は相互に隣接された前記セルの他の1つに内挿されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2の何れかにおいて、前記浸漬槽内には、前記濾過膜ユニットに付着される汚れを除去可能に、合成樹脂製のペレットが投入されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、原水が導入される浸漬槽と、該浸漬槽内に設けられて前記原水に浸漬される濾過膜ユニットと、前記濾過膜ユニットの下方において前記浸漬槽の下底部近くに設けられた曝気管と、を備え、前記浸漬槽内で粒状乃至は粉状の生物活性炭を原水とともに曝気させて水を浄化させる浄水装置において、前記浸漬槽の略中央に前記濾過膜ユニットが設置され、前記濾過膜ユニットの外周には外形が筒形のハニカム構造体が設けられ、前記生物活性炭が詰め込まれたメッシュよりなる袋が前記ハニカム構造体の上下方向に連通されたセル内に着脱可能に挿入され、取付けられているので、曝気管からの曝気により浸漬槽内の下底部に生じた曝気回流は濾過膜ユニットの膜エレメント間の間隙を上昇した後、下降流に転ずる。そして、この下降流は、濾過膜ユニットの外周に設けられた外形が筒形のハニカム構造体の上下方向に連通されたセル内を通過する。このハニカム構造体に設けられたセル内には、粒状または粉状の生物活性炭が詰め込まれたメッシュよりなる袋が着脱可能に挿入し、取付けられているので、溶存酸素を含んだ回流が生物活性炭と接触し、生物活性炭本来の吸着能と、また生物活性炭への吸着による有機物低減能とが発揮される。そして、ハニカム構造体のハニカム状のセルが縦環流を促し、酸素供給も活発化されるので、バクテリヤのような好気性微生物は活性化され、有機物を分解するという生物分解効能が発揮されるので、補助的には生物接触酸化機能がを効率的に促進され、水の浄化は高高度に行われる。このため、特許文献1に記載の従来の水浄化装置のように、浸漬槽内での曝気回流の停滞部における生物活性炭による吸着性能や有機物低減性能の役割低減を回避するのに、例えば浸漬槽の周囲に、活性炭の沈降防止用の撹拌用散気管を設置したり、前記撹拌用散気管に空気を供給するための空気源を必要としなくても済む。また、生物活性炭は、メッシュよりなる袋を前記ハニカム構造体の上下方向に連通されたセル内に着脱可能に挿入し、取付けられているので、特許文献1に記載の上記従来の浄水装置のように、浸漬槽内の原水に浸漬される濾過膜ユニットを定期的に洗浄するのに、例えば薬液として有効塩素濃度が10〜12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて浸漬槽内を薬液洗浄する場合に、生物活性炭の有機物低減性能が低下するという問題を生じたり、しかも、この生物活性炭の有機物低減性能の低下を防止するのに、生物活性炭を浸漬槽とは個別の槽内に移送して貯留し、浸漬槽内を前記薬液により薬液洗浄した後に、再び生物活性炭を浸漬槽内に移送し、元に戻すという多大な作業と、時間を必要とするのとは異なり、生物活性炭の浸漬槽に対する充填、抜き取りが簡単に行え、メンテナンス性が優れる。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、前記袋が、正面縦長に形成され、前記袋は縦長さの略中間に位置する折り曲げ部にて2つ折り可能に設けられ、該折り曲げ部は前記浸漬槽の上縁部間に架設された吊杆に係止部が係脱可能に設けられたハンガーを介して前記袋が2つ折り状態に吊り下げられ、2つ折りされた前記袋の二股部の一方は相互に隣接された前記セルの1つに内挿され、2つ折りされた前記袋の二股部の他方は相互に隣接された前記セルの他の1つに内挿されるので、濾過膜ユニットの外周に設ける外形が筒形のハニカム構造体の上下方向に連通されたセル内に生物活性炭が詰め込まれたメッシュよりなる袋を簡単かつ確実に着脱可能に挿入し、取付けることができる。このため、特許文献1に記載の従来の水浄化装置のように、浸漬槽内での曝気回流の停滞部における生物活性炭による吸着性能や有機物低減性能の役割低減を回避するのに、例えば浸漬槽の周囲に、活性炭の沈降防止用の撹拌用散気管を設置したり、前記撹拌用散気管に空気を供給するための空気源を必要としなくても済む。また、生物活性炭は、メッシュよりなる袋を前記ハニカム構造体の上下方向に連通されたセル内に着脱可能に挿入し、取付けられているので、特許文献1に記載の上記従来の浄水装置のように、浸漬槽内の原水に浸漬される濾過膜ユニットを定期的に洗浄するのに、例えば薬液として有効塩素濃度が10〜12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて浸漬槽内を薬液洗浄する場合に、生物活性炭の有機物低減性能が低下するという問題を生じたり、しかも、この生物活性炭の有機物低減性能の低下を防止するのに、生物活性炭を浸漬槽とは個別の槽内に移送して貯留し、浸漬槽内を前記薬液により薬液洗浄した後に、再び生物活性炭を浸漬槽内に移送し、元に戻すという多大な作業と、時間を必要とするのとは異なり、メンテナンス性は優れる。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、前記浸漬槽内には、前記濾過膜ユニットに付着される汚れを除去可能に、合成樹脂製のペレットが投入されているので、浸漬槽内の下底部に設けた曝気管からの曝気により生ずる曝気回流に伴って合成樹脂製のペレットが流されるため、このペレットにより濾過膜ユニットに付着される汚れは除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に従って本発明の実施の最良の形態により、本発明の詳細を説明する。
【0014】
図1は本発明の浄水装置の実施形態を示す断面図、図2は同じく本実施形態の浄水装置を構成するハニカム構造体のセル内に、生物活性炭を詰め込んだ袋を2つ折りしてその二股部を挿入し、吊り下げた状態の説明的な拡大断面図、図3は同じく拡大平面図である。
【0015】
本発明の実施形態は、原水W1が導入される浸漬槽1と、該浸漬槽1内に設けられて前記原水W1に浸漬される濾過膜ユニット2と、前記濾過膜ユニット2の下方において前記浸漬槽1の下底部1a近くに設けられた曝気管3と、を備え、前記浸漬槽1内で粒状乃至は粉状の生物活性炭4を原水W1とともに曝気させて水を浄化させる浄水装置における点は、例えば特許文献1に記載の従来の浄水装置と同様の構成、作用である。
【0016】
しかしながら、本実施形態1の浄水装置では、前記浸漬槽1の略中央に前記濾過膜ユニット2が設置され、前記濾過膜ユニット1の外周には外形が筒形のハニカム構造体4が設けられ、前記生物活性炭4が詰め込まれたメッシュよりなる袋6が前記ハニカム構造体5の上下方向に連通されたセル7,7・・・内に着脱可能に挿入され、取付けられている。
【0017】
前記浸漬槽1は、本実施形態では、図1に示すように、その下部が、約60度の角度の断面逆台形に形成される。そして、浸漬槽1は、その下部が、約60度の角度の断面逆台形に形成されたことにより、曝気回流が均等な対流に促され、後記ペレット10が浸漬槽1の片隅に偏って沈降、停滞を起こさないようにしている。
【0018】
前記原水W1としては、例えば河川水、湖沼水、池水、地下水等が挙げられる。
【0019】
濾過膜ユニット2に用いられる膜エレメントとしては、例えば精密濾過膜(MF平膜)が使用される。この精密濾過膜は、孔径が最大でも0.2ミクロンを有し、原水W1中の懸質や大きさが5ミクロン程度のクリプトスポリジュム(病原性原生物)のような細菌を除去するようになっている。
【0020】
前記生物活性炭4は、本実施形態では粒状の生物活性炭が用いられ、内面に無数の細かい孔が形成され、1g当たりに約1,000m2の内部表面積を有することにより、トリハロメタン前駆物質をはじめとする有機物やアンモニア性窒素を除去、低減する。
【0021】
前記袋6が、本実施形態では、正面縦長に形成され、前記袋6は縦長さL1の略中間に位置する折り曲げ部6aにて2つ折り可能に設けられ、該折り曲げ部6aは前記浸漬槽1の上縁部1b間に架設された吊杆8に係止部9aが係脱可能に設けられた固着手段としてのハンガー9を介して前記袋6が2つ折り状態に吊り下げられ、2つ折りされた前記袋6の二股部6a,6bの一方は相互に隣接された前記セル7の1つに内挿され、2つ折りされた前記袋6の二股部6a,6bの他方は相互に隣接された前記セル7の他の1つに内挿される。この袋6の縦長さL1、前記袋6の二股部6a,6bの直径φは前記セル7の長さL′1、内径φ′に応じて増減変更は、自由に行える。また、袋6を形成するメッシュの大きさは、袋6内に詰め込む粒状の生物活性炭4の粒度の大きさに応じて適当の大きさのものが選定される。セル7,7・・・が隣接する方向は、図3において縦横の方向を意味し、図3において袋6は横方向に隣接されるセル7,7・・・内に二股部6a,6bの一方が内挿され、2つ折りされた前記袋6の二股部6a,6bの他方は相互に横方向に隣接された他のセル7の1つに内挿された状態が示されているが、図示するものに限らず、縦方向に隣接されるセル7,7・・・内に袋6の二股部6a,6bの一方が内挿され、2つ折りされた前記袋6の二股部6a,6bの他方は相互に縦方向に隣接された他のセル7の1つに内挿されてもよい。
【0022】
前記浸漬槽1内には、前記濾過膜ユニット2に付着される汚れを除去可能に、合成樹脂製のペレット10が投入されている。この合成樹脂製のペレット10としては、本実施形態では、例えば、比重1.05、粒度3mmのポリスチレンペレットが使用されるが、このペレット10は浸漬槽1における原水W1の収容量の約1%を投入量としている。このように、合成樹脂製のペレット10を浸漬槽1内に投入するのは、浸漬槽1内の下底部1aに設けた曝気管3からの曝気により生ずる曝気回流に伴って合成樹脂製のペレット10が浸漬槽1内を流されることにより、このペレット10が濾過膜ユニット2に接触されることにより濾過膜ユニット2に付着されている汚れを除去するためである。
【0023】
図において、P1は原水W1を浸漬槽1内に導入するための原水ポンプである。P2は浄化処理された処理水W2を浸漬槽1外に排出するための処理水ポンプである。P3は前記曝気管3に空気を移送するための曝気ブロアである。
【0024】
本発明の浄水装置の実施形態は以上の構成からなり、河川水、湖沼水、池水、地下水等の原水W1が導入される浸漬槽1と、該浸漬槽1内に平面略中央に設けられて前記原水W1に浸漬される濾過膜ユニット2と、前記濾過膜ユニット2の下方において前記浸漬槽1の下底部1a近くに設けられた曝気管3と、を備え、前記浸漬槽1内で粒状の生物活性炭4を原水W1とともに曝気させて水を浄化させる点は、例えば特許文献1に記載の従来の浄水装置と同様の構成、作用である。
【0025】
この際、本実施形態では、濾過膜ユニット2に用いられる膜エレメントとしては、孔径が最大でも0.2ミクロンを有する例えば精密濾過膜(MF平膜)が使用されているので、原水W1中の懸質や大きさが5ミクロン程度のクリプトスポリジュム(病原性原生物)のような細菌は除去される。
【0026】
しかしながら、本実施形態の浄水装置では、浸漬槽1の中心に配置された前記濾過膜ユニット2の外周に外形が筒形のハニカム構造体5が設けられ、前記生物活性炭4が詰め込まれたメッシュよりなる袋6が前記ハニカム構造体5の上下方向に連通されたセル7,7・・・内に、挿入され、固着手段としてのハンガー9を用いて着脱可能に吊杆8に取付けられているので、曝気管3からの曝気により浸漬槽1内の下底部1aに生じた曝気回流は濾過膜ユニット2の膜エレメント間の間隙を上昇流W3となって上昇した後、下降流W4に転ずる。
【0027】
次いで、この下降流W4は、濾過膜ユニット2の外周に設けられた外形が筒形のハニカム構造体5の上下方向に連通されたセル7内を早い流速にて勢い良く降下し、通過して行く。このハニカム構造体5に設けられたセル7内には、本実施形態では粒状、例えば1g中に1,000m2の内部表面積を有する生物活性炭4が詰め込まれたメッシュよりなる袋6が着脱可能に挿入されて取付けられているので、溶存酸素を含んだ回流が生物活性炭4と接触するため、生物活性炭4本来の吸着能と、また生物活性炭4への吸着による有機物低減能とが発揮される。
【0028】
そして、本実施形態では粒状の生物活性炭4は、内面に無数の細かい孔が形成され、1g当たりに約1,000m2の内部表面積を有するので、トリハロメタン前駆物質をはじめとする有機物やアンモニア性窒素はこの細かい孔内に吸着され、除去、低減される。
【0029】
この際、ハニカム構造体5のハニカム状のセル7が縦環流を促し、縦環流における酸素供給が活発化されるので、バクテリヤのような好気性微生物は活性化され、有機物を分解するという生物分解効能が発揮され、しかも、補助的には生物接触酸化機能が効率的に促進されるので、水の浄化は高高度に行われる。
【0030】
このため、特許文献1に記載の従来の水浄化装置では、浸漬槽内での曝気回流の停滞部における生物活性炭による吸着性能や有機物低減性能の役割低減を回避するのに、例えば浸漬槽の周囲に、生物活性炭の沈降防止用の撹拌用散気管を設置したり、前記撹拌用散気管に空気を供給するための空気源等の設備を必要とするのとは異なり、本実施形態ではこれらの設備を使用しなくても済み、構造が簡単になり、製作、および組み立ては安価になる。また、ハニカム構造体5自体、構造堅牢な仕上がりに形成される。
【0031】
また、生物活性炭4は、メッシュよりなる袋6を前記ハニカム構造体5の上下方向に連通されたセル7内に着脱可能に挿入し、取付けられている。
【0032】
すなわち、図には示さないが正面縦長に形成されている袋6は、縦長さL1の略中間に位置する折り曲げ部6aにて図1、および図2に示すように、2つ折りされ、この折り曲げ部6aは前記浸漬槽1の上縁部1b間に架設されている吊杆8に係止部9aが係脱可能に設けられたハンガー9を介して前記袋6が2つ折り状態に吊り下げられる。そして、2つ折りされた前記袋6の二股部6a,6bの一方は相互に縦横に隣接されるハニカム構造体5のセル7の1つに内挿され、2つ折りされた前記袋6の二股部6a,6bの他方は相互に縦横に隣接された前記セル7の他の1つに内挿されているので、浸漬槽1内の原水W1に浸漬される濾過膜ユニット2を、例えば薬液として有効塩素濃度が10〜12%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて定期的に洗浄する場合に、粒状活性炭4が詰め込まれている2つ折りされた前記袋6をハンガー9毎ハニカム構造体5のセル7,7内から濾過膜ユニット2の洗浄が済むまでの間、浸漬槽1の外部へ引き揚げておけば、特許文献1に記載の上記従来の浄水装置のように、生物活性炭の有機物低減性能が低下するという問題を生じたり、または、この生物活性炭の有機物低減性能の低下を防止するのに、生物活性炭を浸漬槽とは個別の槽(図には示さない)内に移送して貯留し、浸漬槽内を前記薬液により洗浄した後に、再び浸漬槽内に戻すという大がかりで多大な作業と、時間を必要とするのとは異なり、本実施形態では、2つ折りされた前記袋6の二股部6a,6bの一方を相互に縦横に隣接されるハニカム構造体5のセル7の1つに内挿し、かつ2つ折りした前記袋6の二股部6a,6bの他方を相互に縦横に隣接した前記セル7の他の1つに内挿させるという簡単な取り扱いにより、生物活性炭4を浸漬槽1内に移送し、元に戻すことで多大な労力を必要とすることなく、短時間にて生物活性炭4の浸漬槽1に対する充填、抜き取りが簡単に行え、メンテナンス性が優れる。また、生物活性炭4は袋6に詰め込まれたまま浸漬槽1の外部に取り出されて薬害の影響を受けないので、生物活性炭4の性能回復と、有機物低減性能とは損なわれない。
【0033】
前記浸漬槽1は、本実施形態では、図1に示すように、その下部が、約60度の角度の急角度の断面逆台形に形成されたことにより、浸漬槽1内の下底部1aに設けた曝気管3からの曝気により生ずる曝気回流が浸漬槽1内において周囲からの制圧を受けながら浸漬槽1内の中心付近を均等に流れるので、この曝気回流に伴って合成樹脂製のペレット10は、浸漬槽1の片隅に偏って沈降し、停滞を起こすことなく、下底部1aの内斜面に案内されて速やかに流れるため、このペレット10が濾過膜ユニット2に付着される汚れに接触することにより汚れを効率的にかつ確実に除去することができる。
【0034】
上記実施形態では、粒状または粉状の生物活性炭4が詰め込まれた袋6を2つ折りしてその略中間の折曲げ部6cをハンガー9を用いて吊杆8に吊り下げ、袋6の二股部6a,6bをハニカム構造体5のセル7,7内に挿入するようにして着脱自在に取り付けているが、ハニカム構造体5のセル7,7内に挿入する袋6は必ずしも2つ折りされずに、セル7,7内に挿入しても良い。また、袋6内に詰め込まれる生物活性炭4としては、粒状のものが使用しているが、これは例示であって限定されるものではなく、粉状の生物活性炭4を使用した場合には、粒状の生物活性炭4よりも内部に形成される無数の細かい孔よりなる内部表面積が増大されるので、生物活性炭4本来の吸着能、および生物活性炭4内によるバクテリヤによる生物分解効能の何れもが増大することも本発明の範囲である。さらに、図3ではハニカム構造体5のセル7は、平面六角形のセル7が代表的に説明されているが、このセル7の平面形状は六角形に限らず、平面八角形、平面五角形、平面三角形の多角形のほか、平面円形であっても本発明の適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、濾過膜ユニットによる浄化と生物活性炭本来の吸着能、および生物活性炭内によるバクテリヤによる生物分解効能と、また、ハニカム構造体による生物接触酸化機能とを効率的に、かつ高度に発揮させて水の浄化作用を優れたものにし、生物活性炭の浸漬槽に対する充填、抜き取りにおける簡易性が良好であり、メンテナンス性が優れる用途・機能に適する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の浄水装置の実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は同じく本実施形態の浄水装置を構成するハニカム構造体のセル内に、生物活性炭を詰め込んだ袋を2つ折りしてその二股部を挿入し、吊り下げた状態の説明的な拡大断面図である。
【図3】図3は同じく拡大平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 浸漬槽
2 濾過膜ユニット
3 曝気管
4 生物活性炭
5 ハニカム構造体
6 袋
7 セル
8 吊杆
9 ハンガー
10 ペレット
W1 原水
W2 処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が導入される浸漬槽と、該浸漬槽内に設けられて前記原水に浸漬される濾過膜ユニットと、前記濾過膜ユニットの下方において前記浸漬槽の下底部近くに設けられた曝気管と、を備え、前記浸漬槽内で粒状乃至は粉状の生物活性炭を原水とともに曝気させて水を浄化させる浄水装置において、
前記浸漬槽の略中央に前記濾過膜ユニットが設置され、前記濾過膜ユニットの外周には外形が筒形のハニカム構造体が設けられ、前記生物活性炭が詰め込まれたメッシュよりなる袋が前記ハニカム構造体の上下方向に連通されたセル内に着脱可能に挿入され、取付けられていることを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
前記袋が、正面縦長に形成され、前記袋は縦長さの略中間に位置する折り曲げ部にて2つ折り可能に設けられ、該折り曲げ部は前記浸漬槽の上縁部間に架設された吊杆に係止部が係脱可能に設けられたハンガーを介して前記袋が2つ折り状態に吊り下げられ、2つ折りされた前記袋の二股部の一方は相互に隣接された前記セルの1つに内挿され、2つ折りされた前記袋の二股部の他方は相互に隣接された前記セルの他の1つに内挿されることを特徴とする請求項1に記載の浄水装置。
【請求項3】
前記浸漬槽内には、前記濾過膜ユニットに付着される汚れを除去可能に、合成樹脂製のペレットが投入されたことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の浄水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−5553(P2010−5553A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168701(P2008−168701)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000205144)大晃機械工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】