説明

消化ガスの脱硫方法及び装置

【課題】本発明は、消化ガス中に含有する硫化水素の量が多くなった場合にも制約なく適宜、硫化水素を希釈し、効率的な脱硫が可能であり、さらに爆発防止のための硫化水素及び酸素の濃度測定や酸素の供給量制御が不要であるばかりか、硫化水素の除去処理部をコンパクトにできる消化ガスの脱硫方法及び装置を提供すること目的とする。
【解決手段】消化ガスから二酸化炭素及び硫化水素を分離し、メタンを精製する吸収塔4と、この吸収塔4から抜き出された二酸化炭素及び硫化水素が溶解した高圧水を減圧し、かつ、二酸化炭素及び硫化水素を分離させる分離手段としての減圧タンク11と放散塔12と、この分離させた二酸化炭素及び硫化水素と酸素含有ガスとしての空気14を受入れ、硫化水素を分解する微生物が付着した充填材層15を有した生物脱硫塔16と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物をメタン発酵させることにより発生した消化ガスに含まれる硫化水素を除去する消化ガスの脱硫方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的水分の多い有機性廃棄物の処理には、現在、メタン発酵処理が多用されている。このメタン発酵処理され、発生したガスは通常「消化ガス」と呼ばれ、この消化ガス中の成分は、メタンが約60容量%及び二酸化炭素が約40容量%である。さらに、不純物として、通常100〜3000ppmの硫化水素も含まれている。この消化ガスは、燃料ガスとして利用される。例えば、発電用のガスエンジン、ガスタービン、燃料電池等、温水や蒸気を製造するボイラー等の燃料である。しかし、上記消化ガスのように硫化水素が混入していると燃焼によって硫黄酸化物が生成するので、いずれの用途でも、エンジン等の機械部分を腐食させたり、あるいは排ガス中の硫黄酸化物濃度が高くなるという問題が起こる。したがって、硫化水素を低減させてから利用する必要がある。この硫化水素を低減させる技術として、特許文献1に記載されたようなものが知られている。
【0003】
この特許文献1に開示された硫化水素を低減させる技術は、以下のようなものである。
1)微生物が付着する充填材が充填された反応塔を有した脱硫装置の反応塔に導入する前の消化ガスに空気供給手段から空気を供給する。
2)空気が供給された消化ガスと水を反応塔に導入し、消化ガス中の硫化水素を除去する(脱硫)。
3)脱硫後に反応塔から排出される消化ガス中の硫化水素及び酸素の濃度を測定し、これらの測定結果に基づいて空気供給手段から供給する空気中の酸素の濃度を制御する。
【特許文献1】特開2003−305328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された硫化水素を低減させる技術には、以下のような問題点が存在する。
【0005】
1)メタンを含有する消化ガスに空気が直接加えられる(すなわち、メタンに酸素が直接加えられることとなる)。したがって、消化ガス中のメタンに対して、酸素が所定濃度以上混入すると爆発する恐れがある。そこで、硫化水素及び酸素の濃度を測定し、酸素の供給量を制御しなければならない。
2)また、上述したように酸素が所定濃度以上混入すると爆発する恐れがあるため、反応塔へ導入される硫化水素の量が脱硫効率を低下させるほど多量になっても、それを希釈するために多量の酸素を適宜加えることができない。これは、消化ガス中に含有する硫化水素の量が多くなった場合には、大きな課題となる。
3)また、約60容量%もあるメタンを含有したままの消化ガスを反応塔に供給するため、どうしても反応塔を大きなものにせざるを得ないという問題点がある。
4)さらに、脱硫された消化ガスには、多量(約40容量%)の二酸化炭素、その他の不純物も残留したままであるので、燃料としての熱量不足や使用機器が限られるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、食品廃棄物、下水汚泥などの有機性物質をメタン発酵して発生した消化ガス中の硫化水素を除去するに際し、爆発防止のための硫化水素及び酸素の濃度測定や酸素の供給量のシビアな制御を不要とし、硫化水素の除去処理部をコンパクトにできるとともに、良質のメタンガスを得ることが可能な消化ガスの脱硫方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、
有機性廃棄物をメタン発酵させることにより発生した消化ガスを圧縮機で圧縮し昇圧させ、前記昇圧させた消化ガスを吸収塔へ供給して、前記吸収塔内で前記昇圧させた消化ガスと水とを高圧状態で接触させることにより、前記昇圧させた消化ガスに含まれる二酸化炭素及び硫化水素を高圧水に溶解させて前記昇圧させた消化ガスから前記二酸化炭素及び硫化水素を分離し、メタンを精製する工程と、
前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水を減圧して、前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水から前記二酸化炭素及び硫化水素を分離させる工程と、
前記分離させた二酸化炭素及び硫化水素と酸素含有ガスを硫化水素を分解する微生物が付着した充填材層を有する生物脱硫塔へ供給し、前記微生物の働きを利用して前記混合ガス中の硫化水素を分解する工程と、
を備えたことを特徴とする消化ガスの脱硫方法である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水を前記生物脱硫塔へ供給し、前記高圧水中から発泡する前記二酸化炭素及び硫化水素の気泡で前記生物脱硫塔内の充填材層を洗浄する工程を有したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記圧縮機から発生する熱を使用して前記生物脱硫塔を温める工程を有したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、
前記生物脱硫塔へ供給する前記混合ガス中の硫化水素の濃度を所定値に保つために、前記消化ガス中の硫化水素の濃度を測定し、前記測定した硫化水素の濃度に応じて、前記酸素含有ガス供給手段から供給する前記酸素含有ガスの量を制御する工程を有したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、
有機性廃棄物をメタン発酵させることにより発生した消化ガスを圧縮し昇圧させる圧縮機と、前記圧縮機で昇圧させた消化ガスと水とを受入れ、高圧状態で接触させることにより、前記昇圧させた消化ガスに含まれる二酸化炭素及び硫化水素を高圧水に溶解させて前記昇圧させた消化ガスから前記二酸化炭素及び硫化水素を分離し、メタンを精製するための吸収塔と、前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水を減圧して、前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水から前記二酸化炭素及び硫化水素を分離させる分離手段と、前記分離させた二酸化炭素及び硫化水素と酸素含有ガスを受入れ、前記硫化水素を分解する微生物が付着した充填材層を有した生物脱硫塔と、を備えたことを特徴とする消化ガスの脱硫装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、
前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水中の前記二酸化炭素及び硫化水素の気泡で前記生物脱硫塔内の充填材層を洗浄するために、前記高圧水を前記生物脱硫塔へ供給する高圧水供給手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の発明において、
前記圧縮機から発生する熱を回収する回収手段と、前記回収手段で回収した熱を用いて前記生物脱硫塔を温めるための保温手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7のいずれかに記載の発明において、
前記生物脱硫塔へ供給する前記混合ガス中の硫化水素の濃度を所定値に保つために、前記消化ガス中の硫化水素の濃度を測定する硫化水素濃度計と、前記硫化水素濃度計で測定した硫化水素の濃度に応じて、前記酸素含有ガス供給手段から供給する前記酸素含有ガスの量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係る消化ガスの脱硫方法によれば、
有機性廃棄物をメタン発酵させることにより発生した消化ガスを圧縮機で圧縮し昇圧させ、前記昇圧させた消化ガスを吸収塔へ供給して、前記吸収塔内で前記昇圧させた消化ガスと水とを高圧状態で接触させることにより、前記昇圧させた消化ガスに含まれる二酸化炭素及び硫化水素を高圧水に溶解させて前記昇圧させた消化ガスから前記二酸化炭素及び硫化水素を分離し、メタンを精製する工程と、
前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水を減圧して、前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水から前記二酸化炭素及び硫化水素を分離させる工程と、
前記分離させた二酸化炭素及び硫化水素と酸素含有ガスを硫化水素を分解する微生物が付着した充填材層を有する生物脱硫塔へ供給し、前記微生物の働きを利用して前記混合ガス中の硫化水素を分解する工程と、
を備えているため、以下のような作用効果を奏する。
1)空気等の酸素含有ガスが混合される前のガスに、予めほとんどメタンを含有させないようにできるため、爆発防止のための硫化水素及び酸素の濃度測定や酸素の供給量制御が不要となるばかりか、前記ガス中に含有する硫化水素の量が多くなった場合にも制約なく適宜、硫化水素を希釈することが可能である。したがって、簡素化した設備でありながら、ガスの効率的な脱硫が行える。
2)生物脱硫塔へ供給されるガス中には、上記1)で説明した通り、メタンがほとんど含有しないため、硫化水素の除去処理部としての生物脱硫塔をコンパクトにした消化ガスの脱硫方法を実現できる。
3)本発明に係る消化ガスの脱硫方法によれば、脱硫が可能であるばかりか、効率的なメタンの精製も合わせて実現できる。
【0016】
また、本発明に係る消化ガスの脱硫装置によれば、
有機性廃棄物をメタン発酵させることにより発生した消化ガスを圧縮し昇圧させる圧縮機と、前記圧縮機で昇圧させた消化ガスと水とを受入れ、高圧状態で接触させることにより、前記昇圧させた消化ガスに含まれる二酸化炭素及び硫化水素を高圧水に溶解させて前記昇圧させた消化ガスから前記二酸化炭素及び硫化水素を分離し、メタンを精製するための吸収塔と、前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水を減圧して、前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水から前記二酸化炭素及び硫化水素を分離させる分離手段と、前記分離させた二酸化炭素及び硫化水素と酸素含有ガスを受入れ、前記硫化水素を分解する微生物が付着した充填材層を有した生物脱硫塔と、を備えているため、以下のような作用効果を奏する。
1)空気等の酸素含有ガスが混合される前のガスに、予めほとんどメタンを含有させないようにできるため、爆発防止のための硫化水素及び酸素の濃度測定計や酸素の供給量を制御する制御手段が不要となるばかりか、前記ガス中に含有する硫化水素の量が多くなった場合にも制約なく適宜、硫化水素を希釈することが可能である。したがって、ガスの効率的な脱硫が行えるにもかかわらず、設備を簡素化できる。
2)生物脱硫塔へ供給されるガス中には、上記1)で説明した通り、メタンがほとんど含有しないため、硫化水素の除去処理部としての生物脱硫塔をコンパクトにした消化ガスの脱硫装置を実現できる。
3)本発明に係る消化ガスの脱硫装置によれば、脱硫が可能であるばかりか、効率的なメタンの精製も合わせて可能な消化ガスの脱硫装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態の消化ガスの脱硫装置の全体構成を模式的に説明する説明図である。
【0018】
まず、本発明に係る消化ガスの脱硫装置の構成について説明する。
【0019】
図1において、1はミストセパレータ、2はミストセパレータ1を通過した消化ガス中の硫化水素の濃度を測定するための硫化水素濃度計、3a、3bはガス圧縮機、4は吸収塔(スクラバー)、5は除湿器、6は給水槽、7は水補給用ポンプ、8は水循環用ポンプ、9は熱交換器、10はチラー、11は減圧タンク(フラッシングタンク)、12は放散塔(ストリッピングタワー)、13は酸素含有ガス供給手段としてのブロア、14は空気、15は微生物としてチオバチルス属細菌を主とした好気性硫黄酸化細菌が付着した充填材層、16は充填材層15を内包した生物脱硫塔である。
【0020】
次に、本発明に係る消化ガスの脱硫装置の運転動作について、図1を参照しながら説明する。
【0021】
有機性汚泥、有機性廃水等の有機性廃棄物をメタン発酵させることにより発生した消化ガスは、ミストセパレータ1によって消化ガス中のミスト(水分)、ダストが除去される。このミストセパレータ1を通過後の消化ガス中の成分は、メタン(CH)が約60容量%、二酸化炭素(CO)が約40容量%、硫化水素(HS)が100〜3000ppm、その他の不純物が極微量である。この消化ガスを直列接続されたガス圧縮機3a、3bによって圧縮し、大気圧より高い所定の圧力まで昇圧される。ガス圧縮機3a、3bによって昇圧された消化ガスは、吸収塔4の下部に導入される。一方、吸収塔4には、その上部から水が水循環用ポンプ8によって昇圧された状態で供給されるようになっている。
【0022】
このように、ガス圧縮機3a、3bにより消化ガスを昇圧して吸収塔4内へその下部より送り込むとともに、水循環用ポンプ8により水を昇圧して吸収塔4内へその上部より送り込むことにより、吸収塔4内を0.55〜2.0MPaGの範囲を満たす高圧状態に保持し、吸収塔4内において消化ガスと水とを前記圧力範囲を満たす高圧状態で接触させるようにしている。なお、吸収塔4内には、消化ガスと水とを十分に接触させるためにラシヒリング等の充填物が充填されている。
【0023】
吸収塔4内において消化ガスと水とを0.55〜2.0MPaGの範囲を満たす高圧状態で接触させることにより、消化ガス中に気体状態で含まれていた二酸化炭素及び硫化水素は、高圧の水に溶解して吸収される一方、メタンは、高圧の水にほとんど溶解することなく、吸収塔4の頂部から取り出される。この吸収塔4の頂部から取り出された高濃度のメタンを有する精製ガスは、除湿器5に送られ、燃料として使用(利用)するときの圧力においても結露することがないように、水分が十分に吸着除去される。また、消化ガスから二酸化炭素及び硫化水素等を分離し、メタンを精製するに際し、消化ガスと水とを0.55〜2.0MPaGの範囲を満たす高圧状態で接触させるのがよい。この範囲より低圧力雰囲気では、二酸化炭素及び硫化水素等が十分に分離除去されず、また、この範囲より高圧力雰囲気にしても二酸化炭素及び硫化水素の除去率がそれほど向上せず、運転コストや、高圧化仕様による装置コストの増加などの点から好ましくない。なお、除去率、運転コスト及び装置コストの点から、消化ガスと水とを0.7MPaG以上1.0MPaG未満の範囲を満たす高圧状態で接触させることがより好ましい。
【0024】
尚、上記のように消化ガスと水とを0.55MPaG以上の高圧状態で接触させることにより、消化ガスにシロキサン化合物が含まれる場合、シロキサン化合物は凝縮しガスと分離されるので、吸収塔4の頂部から取り出される高濃度のメタンを有する精製ガス中に残留するシロキサン化合物も僅かである。よって、高カロリーで高純度なメタンガスが得られるので、ガスエンジン発電設備や、天然ガス自動車などにも使用可能となる。
【0025】
次に、消化ガスから分離した二酸化炭素及び硫化水素が溶解した高圧水は、吸収塔4の底部から抜き出されて、弁V1を介して減圧タンク11に導入される。この減圧タンク11内の圧力は、吸収塔4内に比べて減圧されている。例えば、吸収塔4内の圧力が0.9MPaGのとき、減圧タンク11内の圧力は0.3MPaGである。そして、メタン回収率を高める目的で、吸収塔4の底部からの高圧水にわずかに溶解しているメタンは、ガスとして分離されて減圧タンク11の頂部から弁V12を介して、ガス圧縮機3a、3bの中間段に戻されてガス圧縮機3aからの消化ガスに合流されるようになっている。このメタンが分離回収された後の二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水は、減圧タンク11の底部から弁V3を介して放散塔12の上部に導入される。
【0026】
この放散塔12においては、減圧タンク11から抜き出された水が上部から導入され大気圧程度まで減圧される一方、下部からはブロア13によって放散用ガス(例えば空気14)が上記二酸化炭素と略同一の容積量となるように供給される。大気圧程度まで減圧されることおよびこの空気14により、減圧タンク11から抜き出された水に溶解していた二酸化炭素及び硫化水素を水から分離させ、さらに放散塔12内でこの分離させた二酸化炭素及び硫化水素と空気14を混合し、この混合した二酸化炭素、硫化水素及び空気14からなる混合ガスが生物脱硫塔16の上部に導入される。また、上記放散用ガスとしては、空気が簡便であるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、酸素を含有したさまざまなガス(以下、「酸素含有ガス」と称す)を用いることも可能である。このように空気をはじめとする酸素含有ガスを上記ブロア13等の酸素含有ガス供給手段を用いて供給すればよい。
【0027】
また、二酸化炭素及び硫化水素が追い出された水は、放散塔12の底部から抜き出され、水循環用ポンプ8にて昇圧され、熱交換器9にてチラー10からのブラインとの間で熱交換して所定の温度(例えば、7℃)まで冷却された後、吸収塔4の上部に供給される。なお、放散塔12内には、空気14と水とを十分に接触させるためにラシヒリング等の充填物が充填されている。
【0028】
また、生物脱硫塔16の上部から導入される水として、給水槽6に貯留された水や弁V4から排出される排水を利用することができる。また、生物脱硫塔16の上部から導入される水として、温水を利用する場合は、以下のような仕組みを設けることで後述する生物脱硫塔16内の硫黄酸化細菌の働きが活発になるため、より好ましい。例えば、圧縮機3a、3bから発生する熱により温水(例えば、30〜50℃)を製造し、その温水を生物脱硫塔16の上部から導入する。具体的には、圧縮機3a、3bの冷却に利用した水を生物脱硫塔16の上部から導入する。また、圧縮機3a、3bから発生する熱を回収し、回収した熱を利用して生物脱硫塔16を温めるのが好ましい。すなわち、圧縮機3a、3bから発生する熱を水で冷却するための冷却手段(図示せず)を圧縮機3a、3bに近接させて設けておく。そして、この冷却手段で冷却処理した後の温水(例えば、50℃〜60℃)を回収した回収手段(図示せず)から生物脱硫塔16に近接させて設けた保温手段(図示せず)に供給し、この温水で生物脱硫塔16内の硫黄酸化細菌の働きが最も活発となるように約37℃に温める。
【0029】
次に、生物脱硫塔16内で二酸化炭素、硫化水素及び空気14等からなる混合ガス中の硫化水素を分解する(脱硫する)過程を説明する。生物脱硫塔16の上部から導入された上記混合ガスと水をチオバチルス属細菌を主とした好気性硫黄酸化細菌が付着した充填材層15を通過させることにより、この好気性硫黄酸化細菌の働きを利用して、硫化水素(HS)を酸化分解し硫黄(S)に変化させる。さらに、この硫黄(S)が酸化されSO2−に変化する。このような過程を経て、最終的に消化ガス中から硫化水素が分解除去される(脱硫が完了する)。
【0030】
上記生物脱硫塔16内では、硫化水素の濃度が一定の時に安定的に脱硫が行われ、効率が良くなるため、本実施形態のように、以下のような仕組みを設けるのが、より好ましい。すなわち、ミストセパレータ1を通過した箇所に消化ガス中の硫化水素の濃度を測定するための硫化水素濃度計2を設け、生物脱硫塔16内に導入される混合ガス中の硫化水素の濃度をほぼ一定に保つように、測定した硫化水素の濃度に応じて、ブロア13から供給する空気14の量を制御手段(図示せず)により制御する。
【0031】
また、上述の脱硫過程では、硫化水素(HS)が酸化分解され、変化した硫黄(S)が充填材層15に付着する傾向がある。そこで、本実施形態のように、以下のような仕組みを設けるのが、より好ましい。すなわち、吸収塔4から抜き出された二酸化炭素及び硫化水素が溶解した高圧水中の二酸化炭素及び硫化水素の発泡による気泡で生物脱硫塔16内の充填材層15に付着した硫黄(S)を洗浄するために、この高圧水を生物脱硫塔16へ供給する高圧水供給手段(図示せず)を設けておけばよい。このようにすれば、高圧水から発泡により発生する気泡含有水で付着物が洗浄され、剥げ落ちた硫黄(S)などからなる付着物がSO2−を含む水とともに弁V8を介して排水される。また、硫化水素(HS)が分解除去された混合ガスは弁V7を介して排ガスされる。上記高圧水による充填材層15の洗浄は、具体的には、充填材層15に水で満たしてから高圧水を充填材層15の下から供給して気泡で洗浄するか、あるいは、高圧水を充填材層15の下から供給して充填材層15に水で満たしつつ気泡で洗浄するかのいずれかの方法が好ましい。
【0032】
また、吸収塔4に供給される循環水の品質を維持するために、定期的に弁V4を開にすることが望ましい。これによって循環水を一部抜き出し、抜き出された水は、排水される。この抜き出しによって循環水量が所定量以下になった場合は、水補給用ポンプ7により、弁V5を開にして不足分の水を給水槽6から補給する。このとき用いられる水としては、水道水、井水、または、下水等の排水を処理して得られる処理水を利用することも可能であり、本実施形態では、下水処理場の最終沈殿池の下流に設けられている処理水の砂ろ過設備からの砂ろ過水を利用するようにしている。
【0033】
また、本実施形態においては、生物脱硫塔16の上部から導入される水として、給水槽6に貯留された水の例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、弁V4から排出される排水を生物脱硫塔16の上部から導入してもよい。また、圧縮機3a、3bの冷却に利用した水(例えば、30〜50℃)を生物脱硫塔16の上部から導入してもよい。
【0034】
また、本実施形態においては、減圧タンク11から抜き出された二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水から二酸化炭素及び硫化水素を分離させ、この分離させた二酸化炭素及び硫化水素に酸素含有ガス供給手段から供給した酸素含有ガスを混合するために、上述のような放散塔12とブロア13とを用いた例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、減圧タンク11から抜き出された二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水中の二酸化炭素及び硫化水素を吸入孔を有した気化塔(気液分離手段:図示せず)の吸入孔を通して大気圧開放することで、気化塔内へ二酸化炭素及び硫化水素を気化させ、この気化された二酸化炭素及び硫化水素と酸素含有ガス供給手段から供給された酸素含有ガスを気化塔内で混合させるような構成でも構わない。また、二酸化炭素及び硫化水素が生物脱硫塔16に供給される前に酸素含有ガスを供給するのではなく、生物脱硫塔16に直接酸素含有ガスを供給するような構成でも構わない。
【0035】
また、本実施形態においては、メタンの回収率を高めるために減圧タンク11を設けたが、例えば、減圧タンク11を設けずに、吸収塔4から二酸化炭素及び硫化水素が溶解した高圧水を抜き出して、大気圧開放等することにより気化塔(気液分離手段)にて二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水から二酸化炭素及び硫化水素を分離しても、本発明の技術的範囲である。すなわち、少なくとも吸収塔4から抜き出された二酸化炭素及び硫化水素が溶解した高圧水を減圧して、吸収塔4から抜き出された二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水から二酸化炭素及び硫化水素を分離させる機能を有した分離手段でありさえすればよい。
【0036】
また、本実施形態においては、充填材層15に付着される硫黄酸化細菌として、チオバチルス属細菌を用いた例について説明したが必ずしもこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態の消化ガスの脱硫装置の全体構成を模式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ミストセパレータ
2 硫化水素濃度計
3a、3b ガス圧縮機
4 吸収塔
5 除湿器
6 給水槽
7 水補給用ポンプ
8 水循環用ポンプ
9 熱交換器
10 チラー
11 減圧タンク
12 放散塔
13 ブロア
14 空気
15 充填材層
16 生物脱硫塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物をメタン発酵させることにより発生した消化ガスを圧縮機で圧縮し昇圧させ、前記昇圧させた消化ガスを吸収塔へ供給して、前記吸収塔内で前記昇圧させた消化ガスと水とを高圧状態で接触させることにより、前記昇圧させた消化ガスに含まれる二酸化炭素及び硫化水素を高圧水に溶解させて前記昇圧させた消化ガスから前記二酸化炭素及び硫化水素を分離し、メタンを精製する工程と、
前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水を減圧して、前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水から前記二酸化炭素及び硫化水素を分離させる工程と、
前記分離させた二酸化炭素及び硫化水素と酸素含有ガスを硫化水素を分解する微生物が付着した充填材層を有する生物脱硫塔へ供給し、前記微生物の働きを利用して前記混合ガス中の硫化水素を分解する工程と、
を備えたことを特徴とする消化ガスの脱硫方法。
【請求項2】
前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水を前記生物脱硫塔へ供給し、前記高圧水中から発泡する前記二酸化炭素及び硫化水素の気泡で前記生物脱硫塔内の充填材層を洗浄する工程を有したことを特徴とする請求項1に記載の消化ガスの脱硫方法。
【請求項3】
前記圧縮機から発生する熱を使用して前記生物脱硫塔を温める工程を有したことを特徴とする請求項1または2に記載の消化ガスの脱硫方法。
【請求項4】
前記生物脱硫塔へ供給する前記混合ガス中の硫化水素の濃度を所定値に保つために、前記消化ガス中の硫化水素の濃度を測定し、前記測定した硫化水素の濃度に応じて、前記酸素含有ガス供給手段から供給する前記酸素含有ガスの量を制御する工程を有したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消化ガスの脱硫方法。
【請求項5】
有機性廃棄物をメタン発酵させることにより発生した消化ガスを圧縮し昇圧させる圧縮機と、前記圧縮機で昇圧させた消化ガスと水とを受入れ、高圧状態で接触させることにより、前記昇圧させた消化ガスに含まれる二酸化炭素及び硫化水素を高圧水に溶解させて前記昇圧させた消化ガスから前記二酸化炭素及び硫化水素を分離し、メタンを精製するための吸収塔と、前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水を減圧して、前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した水から前記二酸化炭素及び硫化水素を分離させる分離手段と、前記分離させた二酸化炭素及び硫化水素と酸素含有ガスを受入れ、前記硫化水素を分解する微生物が付着した充填材層を有した生物脱硫塔と、を備えたことを特徴とする消化ガスの脱硫装置。
【請求項6】
前記吸収塔から抜き出された前記二酸化炭素及び硫化水素が溶解した前記高圧水中の前記二酸化炭素及び硫化水素の気泡で前記生物脱硫塔内の充填材層を洗浄するために、前記高圧水を前記生物脱硫塔へ供給する高圧水供給手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載の消化ガスの脱硫装置。
【請求項7】
前記圧縮機から発生する熱を回収する回収手段と、前記回収手段で回収した熱を用いて前記生物脱硫塔を温めるための保温手段と、を備えたことを特徴とする請求項5または6に記載の消化ガスの脱硫装置。
【請求項8】
前記生物脱硫塔へ供給する前記混合ガス中の硫化水素の濃度を所定値に保つために、前記消化ガス中の硫化水素の濃度を測定する硫化水素濃度計と、前記硫化水素濃度計で測定した硫化水素の濃度に応じて、前記酸素含有ガス供給手段から供給する前記酸素含有ガスの量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の消化ガスの脱硫装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−22965(P2010−22965A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188704(P2008−188704)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【特許番号】特許第4344773号(P4344773)
【特許公報発行日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】