説明

消毒剤組成物、方法およびシステム

PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を含む消毒剤組成物が開示される。上記消毒剤組成物が、強化された即効性カテーテルロック/フラッシュ溶液としての活性も示した。それらはヒトおよび医療使用用に安全であり、感染を予防するため、または既存もしくは確立された感染の増殖を減少させる、および/またはそれらの感染を除去するための予防調製物として用いることができる。本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤は、ヒトへの投与に安全であり、生体適合性および非腐食性である。本開示の消毒剤溶液は、少なくとも各種カテーテルのためのロック溶液およびロックフラッシュ溶液としての用途がある。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
感染は、ヘルスケアなどの衛生条件が重要である多くの分野において重要な問題である。問題がある感染は、細菌、真菌、アメーバ、原生動物および/またはウイルスの生物体から起こりうる。感染を予防すること、およびそれが確立された場合に感染を低減または除去することは難題である。感染環境には、物体の表面、流体および流体導管、ならびに/またはヒトまたは動物を含めることができる。
【0002】
表面を消毒するためにアルコール溶液およびイソプロピルアルコールワイプが通常用いられ、それらは抗細菌活性を有することがわかっている。最も有効な抗菌阻害効果は、70%イソプロパノール溶液で見られる。この濃度のアルコール溶液は非常に高価であり、速やかに蒸発し、そのことはそれらの有効性を実質的に低下させ、それらの費用を増大させる。さらに、イソプロパノール溶液はヒト皮膚を含めた表面用および様々な医療用途に用いることができるが、この濃度のアルコール溶液は、局所投与以外の医療目的のためにヒトに投与することができない。
【0003】
ヘルスケア分野では、様々な種類および原因の感染が普通に発生し、しばしばより長い入院につながり、より高い病院費用をもたらす。さらに悪いことに、毎年90,000人以上の患者死亡が、院内感染、すなわち病院または別のヘルスケア環境で得る感染に起因している。院内感染の監視は、病院慣行の不可欠な部分になっている。Centers for Disease Control and Prevention(CDC)によって20年よりも前に行われた研究が、院内感染の発生を減少させることにおけるこれらの監視活動の有効性を記録した。しかし、院内感染の問題に払われた注意にもかかわらず、感染率は激減せず、院内感染はかなりの危険およびかなりの健康懸念のままである。
【0004】
医学および獣医学の分野で問題がある1つの感染源は、カテーテルに、特に留置カテーテルに見出される。カテーテルは救命救急診療患者の管理で必須になっているが、カテーテルの内部はしばしば主要な感染源である。カテーテルは流体、血液製品、薬剤、栄養素の送達、血液透析、血液濾過、腹膜透析、血液試料の回収、患者状態の監視などのために用いられる。経皮カテーテルは、カテーテルの皮膚貫通を通してしばしば感染する。すべての院内血流感染の70パーセント(70%)が、中心静脈カテーテルを有する患者で発生することがわかっている。非特許文献1。
【0005】
詳細には、一部の手順の間、比較的長い期間、例えば30日にわたって、カテーテルは患者の中に植え込まれ、また植え込まれたままでなければならない。静脈内(IV)療法カテーテルおよび尿カテーテルは、一般的にかなりの期間植え込まれたままである。挿入領域への外傷および患者への疼痛の結果、そのようなカテーテルを頻繁に取り出して植え込むことはできない。カテーテル媒介性の細菌は、尿路感染の主要な源であると示唆されている。妊娠中に末梢穿刺中心カテーテルを投与される患者も、感染性合併症のかなりの危険があることが見出された。非特許文献2。さらに、中心静脈カテーテル感染はカテーテル関連の敗血症を起こすので、家庭での非経口栄養の間に最も頻繁に起こる合併症として挙げられている。非特許文献3。感染の危険のため、カテーテル法は、その処置が不可欠な場合に限定されるかもしれない。このことは、患者の健康を深刻に損なう。
【0006】
カテーテルを用いた導入医療処置を行った後ほとんどの場合、カテーテルを生理食塩水で洗い流し、次に、生理食塩水またはヘパリン溶液などの液体で満たし、カテーテル内での血液の凝固を防止し、カテーテル内に患者の血液が逆流するのを阻止し、気体がカテーテルに入るのを防止する。カテーテルを洗い流すために用いられる液体は「ロックフラッシュ」と呼ばれ、洗い流しの後または不使用期間中にカテーテルを満たすために用いられる液体は、「ロック」溶液と呼ばれる。
【0007】
伝統的に、カテーテルは通常の生理食塩水またはヘパリン溶液でロックされている。ヘパリンおよび生理食塩水は、組合せで用いられることがある。通常の生理食塩水は短期末梢静脈内カテーテルをロックするために一般に用いられるが、生理食塩水は抗凝血活性も抗菌活性も有しない。ヘパリン溶液は、血管カテーテルをロックするために一般に用いられる。ヘパリンは抗凝血活性を有するが、それは抗菌物質として機能をせず、感染を予防も改善もしない。ロック溶液中のヘパリンが、ヘパリン注入を投与される患者のサブセットで起こる重大な出血合併症であるヘパリン誘発血小板減少に寄与する可能性が強く示唆されてもいる。
【0008】
タウロリジン、クエン酸およびクエン酸ナトリウムを含むカテーテルロッキング溶液が、提案されている。最近の刊行物(Kidney International、2002年9月)は、皮下カテーテルポートのためのロック溶液として、70%アルコール溶液の使用を記載する。ロック溶液としてのアルコールの使用は、それが抗凝血物質でないので、また、この溶液が血流に入ることに関連する危険があると思われるので疑問がもたれる。70%アルコール溶液が何らかのビオフィルム根絶活性を有することを示す、発明者が承知している証拠もない。
【0009】
Center for Infectious Disease(CID)発の最新の傾向および推奨は、既存のカテーテル感染を、特異的または広範囲抗生物質で全身的に治療することである。感染を予防するための、ロック溶液中での抗生物質の使用は推奨されない。既存のカテーテル感染を治療するための抗生物質の使用には、(1)抗生物質耐性株が発生する危険;(2)有毒濃度での抗生物質の使用を必要とするであろう固着微生物または深層ビオフィルム細菌を抗生物質が死殺できないこと;および(3)長期抗生物質療法の高い費用を含めた特定の危険がある。消毒剤または抗生物質でコーティングされたカテーテルは利用可能である。これらのコーティングされたカテーテルは、比較的短い期間の限られた保護を提供できるだけである。
【0010】
一般に、浮動性の生物体は、抗生物質に対して脆弱である可能性がある。しかし、細菌および真菌類は表面に付着し、細胞外重合物質(EPS)、多糖被覆またはグリコカリックスとしばしば呼ばれる粘性防御物質を生成することによって、抗生物質に抵抗性になることがある。微生物が増殖するに従い、50個を超える遺伝子上方もしくは下方制御が起こり、より抗生物質耐性である微生物ビオフィルムの形成をもたらすことがある。1つの記事は、医師が遭遇する細菌感染の2/3をビオフィルムに帰している。非特許文献4。
【0011】
ビオフィルム形成は、浮遊(浮動)条件下での増殖と比較して(最高100〜1000倍の)抗生物質耐性の増加をしばしば含む、生物体の細胞生理の多数の変化を生成する、細菌生活環内の遺伝的に制御された過程である。生物体が増殖するに従い、過密状態および栄養の減少の問題は、新しい場所および資源を求めるための生物体の脱皮を誘発する。新しく脱皮した生物体は、それらの元の浮動相に速やかに戻り、再び抗生物質に脆弱である。しかし、浮動性の生物体は患者の血流に入り、血流感染を引き起こすことができ、それらは、発熱などの臨床徴候、およびより重大な感染関連症状を起こす。ビオフィルムの固着ラフトは脱落し、心臓弁などの組織表面に付着することがあり、ビオフィルムの増殖および心内膜炎などの重大な問題を引き起こす。
【0012】
さらに問題を複雑にすることに、従来の感受性検査は、ビオフィルム状態の生物体ではなく浮動生物体の抗生物質感受性だけを測定する。その結果、抗生物質の投与量は、カテーテルに存在しているであろうビオフィルム相生物体に所望の効果を有するのが稀である量で、カテーテルなどを通して患者に投与される。ビオフィルム生物体は、より浮遊性の生物体を脱皮させ続けることができ、または休眠し、その後明らかな再発感染として増殖することができる。
【0013】
抗生物質の使用によってビオフィルム生物体を根絶するために、検査室は、生物体の特異遺伝子ビオフィルム相を死滅させるために必要とされる抗生物質の濃度を決定しなければならない。最小ビオフィルム根絶濃度を提供するために、高度に特殊化された機器を必要とする。さらに、現在の診断プロトコルは時間がかかり、結果は多くの日数、例えば5日を経なければ得られない。この期間は、明らかに感染の機敏な治療を可能にしない。この遅れおよび感染の極めて当然な恐れは、広域抗生物質の濫用ならびに連続した不必要なカテーテル除去および交換処置をもたらす可能性がある。広域抗生物質の濫用は、効果的に治療することができない抗生物質耐性菌株の発生をもたらす可能性がある。不必要なカテーテル除去および交換は痛みを伴い、高コストであり、外傷およびカテーテル挿入部位の組織への損傷をもたらすこともある。
【0014】
ビオフィルムの抗生物質耐性は、抗生物質耐性株が発生する危険などの抗生物質の使用に伴う合併症と合わさって、抗生物質療法を非魅力的な選択肢にした。その結果、抗生物質の使用は症状のある感染に限られ、汚染を予防するために予防用抗生物質を適用することは一般的にない。ビオフィルムはほとんどの抗生物質に対する選択的表現型耐性バリアとして作用することができるので、カテーテル関連の感染を根絶するために、しばしばカテーテルを取り外さなければならない。カテーテルの除去および交換は時間がかかり、患者にストレスを及ぼし、医療処置を複雑にする。したがって、体からカテーテルを取り外す必要のない、生物体、特にカテーテル内に生息するものを死滅させるための便利で有効な方法を提供する試みがある。
【0015】
細菌および真菌の感染に加えて、アメーバ感染は非常に重大となり、痛みを伴うだけでなく、潜在的に生命に脅威となることもある。例えばアカントアメーバのいくつかの種は、ヒトに感染することがわかっている。アカントアメーバは、世界中の土壌および埃ならびに淡水源だけでなく、汽水および海水にも見出される。それらは、暖房装置、換気装置および空気調節装置ユニット、加湿機、透析ユニットおよびコンタクトレンズ用具でしばしば見出される。アカントアメーバ感染は、微生物および真菌の感染に加えて、歯ブラシ、義歯および他の歯科用器具を含む他の医療および歯科用具などに関連して普通に見られる。しばしば、アカントアメーバ感染は、ヒトの体と接触するコンタクトレンズおよび他の医療用具の不適切な保存、取扱いおよび消毒の結果生じ、そこでは、それらは切傷、創傷、鼻孔、目などから皮膚に入りうる。
【0016】
カテーテル中の感染を予防および破壊するための、改善された方法および物質の必要性がある。そのような消毒剤溶液は、広範囲の抗菌特性を有するべきである。詳細には、ビオフィルムを構成する生物体を根絶するために、溶液はビオフィルムを透過できるものであるべきである。これらの方法および溶液は、予防措置としてだけでなく、既存の感染の治療において用いるのに十分安全であるべきである。
【0017】
ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)(PHMB)は、広域スペクトルの即効性消毒剤である。それは、化粧剥離剤、保湿トナー、洗顔剤、ウェットワイプの防腐剤として用いられ、抗細菌特性および脱臭特性を提供する。それは、20%濃度の溶液状のポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸(通常、ポリヘキサナイドとして知られる)として入手可能である。それは、Avecia/Arch Chemicalsを通してCosmocil CQという名前で売られている。
【0018】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、全身解毒治療のために、および血液試料中の抗凝血物質としてしばらく用いられている。したがって、医学的治療および適用のためのその使用は確立されている。それらの他の化合物の抗菌特性を高めるための、他の化合物と組み合わせたEDTA二ナトリウムおよびEDTAカルシウム二ナトリウムの使用が研究され、実践されている。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の多くの単体塩が有効な抗菌剤であり、特定の塩が他よりも有効であることが発見されている。詳細には、EDTAの特定の塩が、常用される二ナトリウム塩のそれらに優る抗菌(抗真菌および抗細菌)特性を示すことが発見されている。詳細には、EDTA二カリウムおよびEDTAアンモニウムはEDTA二ナトリウムよりも優れ、EDTA四ナトリウム(TEDTA)は二ナトリウム、アンモニウムおよび二カリウムよりも好まれることが見出されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Daouicherら340巻、1〜8頁、NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE(1999年)
【非特許文献2】「Complications Associated With Peripherally Inserted Central Catheter Use During Pregnancy」AM. J. OBSTET. GYCOL.188巻(5号):1223〜5頁、2003年5月
【非特許文献3】CLINICAL NUTRITION、21巻(1号):33〜38頁、2002年
【非特許文献4】SCIENCE NEWS、1〜5巻、2001年7月14日
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
以下の論述において、用語「微生物」または「微生物の」は、ヒトに感染することができる、真菌および細菌生物体を含み、かつウイルス生物体も含む可能性がある、顕微鏡的生物体または物体に言及するために用いられる。したがって本明細書で、用語「抗菌性」は、真菌および/または細菌生物体、ならびに潜在的にウイルス生物体も死滅させるか、他の様式でそれらの増殖を阻害する物質または剤に言及するために用いられる。
【0021】
用語「消毒剤」は、限定された系からの感染性微生物の低減、抑制または除去に言及するために用いられる。本明細書で用語「消毒剤」は、単独で、または担体、溶媒などの他の材料と組み合わせて用いられる、1または複数の抗菌性物質に言及するために用いられる。
【0022】
用語「殺菌活性」は、それらの増殖を単に低減または阻害する代わりに、細菌の全集団を少なくとも実質的に死滅させる活性に言及するために用いられる。用語「殺真菌活性」は、それらの増殖を単に低減または阻害する代わりに、酵母の全集団を少なくとも本質的に死滅させる活性に言及するために用いられる。導管、例えばカテーテルの汚染は、重大および相当な健康リスクをもたらし、殺菌消毒はかなりの優先事項である。
【0023】
本明細書で用語「感染系」は、1または複数の感染性微生物が存在するか、おそらく存在する、限定されたまたは孤立した系または環境に言及するために用いられる。感染系の例には、バスルーム設備もしくは手術室などの物理的空間、食品もしくは手術道具などの物理的物体、ヒトの体などの生物系、または少なくとも一部がヒト体内に配置されているカテーテルなどの物理的物体および生物系の組合せが含まれる。産業およびヘルスケア場面における、流体の送達のためのチューブおよび他の導管も、感染系を定義することができる。
【0024】
水または生理食塩水などの溶媒中のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩から実質的になる溶液は、抗菌活性および/または抗真菌活性を有する他の活性物質を実質的に含有しない。
【0025】
本開示は、処方された濃度および/またはpHのPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる消毒剤溶液を含む。予想外にも、本発明者らは、特定のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤が、強化された消毒剤活性を提供することを発見した。PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤は、強化された即効性のカテーテルロック/フラッシュ溶液として作用する。本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤は、病原性ビオフィルム生物体を死滅させることにおいて非常に有効でもあり、既存のビオフィルムを減少させ、既存のビオフィルムを除去するだけでなく、ビオフィルム形成を予防することにおいても有効であると予想される。PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤は、広域抗菌剤、ならびに多くの株の病原性酵母に対する殺真菌剤として機能する。PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤は、抗原生動物活性を示し、抗アメーバ活性も示すと予想される。
【0026】
本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤は、ヒトへの投与に安全であり、生体適合性および非腐食性である。本開示の消毒剤溶液は、少なくとも各種カテーテルのためのロック溶液およびロックフラッシュ溶液としての用途がある。本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤の効力は、カテーテルロック/フラッシュ溶液として従来用いられる多くの消毒剤組成物より優れている。開示されるPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤は抗生物質耐性に寄与せず、そのことはさらに別の重要な利点を提供する。
【0027】
本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩製剤は、改善された抗凝血特性を有し、したがって特にカテーテルロック−フラッシュ溶液および他の関連用途として有益である。
【0028】
一実施形態では、本開示の消毒剤組成物は、以下の特性のいくつかを有する:抗凝血特性;浮遊形の広範囲の細菌に対する阻害および/または殺菌活性;ある範囲の真菌病原体に対する阻害および/または殺真菌活性;固着形の広範囲の細菌に対する阻害および/または殺菌活性;原生動物感染に対する阻害活性;アカントアメーバ感染に対する阻害活性;少なくとも適度の量では、患者と接触して安全で、生体適合性である;少なくとも適度の量では、患者の血流中で安全で、生体適合性である。
【0029】
感染しているか感染が疑われる物体または表面、例えばカテーテルを、本開示の消毒剤組成物と接触させることを含む、微生物集団および/または真菌病原体の成長および増殖を阻害する方法が提供される。感染しているか感染が疑われる物体または表面、例えばカテーテルを、本開示の消毒剤組成物と接触させることを含む、原生動物集団の成長および増殖を阻害する方法も提供される。
【0030】
物体または表面、例えばカテーテルを、本開示の消毒剤組成物と接触させることを含む、アメーバ集団の成長および増殖を阻害する方法、ならびにアメーバ感染、特にアカントアメーバ感染を予防する方法が提供される。微生物集団を実質的に根絶する方法も提供され、それらの方法は、感染しているか感染が疑われる物体または表面、例えばカテーテルを、本開示の消毒剤組成物と接触させることを含む。アカントアメーバ集団を実質的に根絶する方法が提供され、それらの方法は、感染しているか感染が疑われる物体または表面、例えばカテーテルを、本開示の消毒剤組成物と接触させることを含む。様々な方法で用いられる消毒剤組成物によって、様々な集団の形成および増殖を阻害し、および/または様々な集団を実質的に根絶するために、様々な組成物および接触時間が必要とされうる。様々な組成物に適する接触時間は、通常の実験で決定することができる。
【0031】
重要なことに、ほとんどの実施形態では、本開示の消毒剤組成物および方法は、従来の抗生物質を使用せず、したがって抗生物質耐性生物体の発生に寄与しない。
【0032】
一実施形態では、生理的pHより高いPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩からなるか、本質的にそれらからなるか、またはそれらを含む消毒剤組成物が、本開示の消毒剤組成物として提供される。そのような消毒剤組成物は、流体、血液製品、薬剤、栄養の送達、流体または血液の取出し、透析、患者状態のモニタリングなどのために用いられる血管カテーテルを含む、様々な型の留置アクセスカテーテルのためのロック溶液およびロックフラッシュ溶液としての用途がある。本開示の消毒剤溶液は、尿カテーテル、経鼻チューブ、咽喉チューブなどのためのロック溶液およびロックフラッシュ溶液として用いることもできる。下記の一般的な溶液パラメータが、これらの目的のために適する。一実施形態では、生理的pHより高いPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩からなるか、本質的にそれらからなるか、またはそれらを含む消毒剤組成物が、留置血管内アクセス装置の開存性を維持するために提供される。消毒カテーテルおよび経鼻チューブ、咽喉チューブなどの他の医療チューブのための方法も提供され、それらの方法は、カテーテルまたは他の医療チューブを本開示の消毒剤組成物と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、P.aeruginosaによるPHMB MIC試験の実験結果を示す図である。データは、PHMBのMIC値が<5PPMであることを示唆する。
【図2】図2は、S.aureusによるPHMB MIC試験の実験結果を示す図である。データは、PHMBのMIC値が<1.25PPMであることを示唆する。
【図3】図3は、C.AlbicansによるPHMB MIC試験の実験結果を示す図である。データは、PHMBのMIC値が<1.25PPMであることを示唆する。
【図4】図4は、C.AlbicansによるPHMB MBC試験の実験結果を示す図である。データは、PHMBのMBC値が<1.25PPMであることを示唆する。
【図5】図5は、P.aeruginosaによるEDTA(Na) MIC試験の実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)のMIC値が<0.25重量%であることを示唆する。
【図6】図6は、S.aureusによるEDTA(Na) MIC試験の実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)のMIC値が<0.03125重量%であることを示唆する。
【図7】図7は、C.AlbicansによるEDTA(Na) MIC試験の実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)のMIC値が<0.03125重量%であることを示唆する。
【図8】図8は、C.AlbicansによるEDTA(Na) MBC試験の実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)のMBC値が<0.0625重量%であることを示唆する。
【図9】図9は、S.aureusによる交差力価測定法の実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)+PHMB組合せについてFIC指数=0.8であることを示唆する。
【図10】図10は、P.aeruginosaによる交差力価測定法の実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)+PHMB組合せについてFIC指数=0.5であることを示唆する。
【図11】図11は、C.albicansによる交差力価測定法の実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)+PHMB組合せについてFIC指数=0.6であることを示唆する。
【図12】図12は、S.aureusのレートキル(Rate Kill)アッセイの実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)+PHMB組合せによる、S.Aureusに対する相乗作用を明らかに示唆する。
【図13】図13は、P.aeruginosaのレートキルアッセイの実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)+PHMB組合せによる、P.aeruginosaに対する相乗作用を明らかに示唆する。
【図14】図14は、C.albicansのレートキルアッセイの実験結果を示す図である。データは、EDTA(Na)+PHMB組合せによる、C.albicansに対する相乗作用を示唆しない。しかし、データはその組合せがC.albicansに対して非常に有効であり、PHMBが優位な成分であることを示唆する。
【図15】図15は、pH7におけるS.aureusによるPHMBのMICおよびMBC試験の実験結果を示す図である。データは、pH7におけるPHMBのMIC値が<5PPMであることを示唆する。データは、pH7におけるPHMBのMBC値が<5PPMであることを示唆する。
【図16】図16は、pH7におけるP.aeruginosaによるPHMBのMICおよびMBC試験の実験結果を示す図である。データは、pH7におけるPHMBのMIC値が<5PPMであることを示唆する。データは、pH7におけるPHMBのMBC値が<5PPMであることを示唆する。
【図17】図17は、pH7におけるC.albicansによるPHMBのMICおよびMBC試験の実験結果を示す図である。データは、pH7におけるPHMBのMIC値が<10PPMであることを示唆する。データは、pH7におけるPHMBのMBC値が<10PPMであることを示唆する。
【図18】図18は、pH7におけるS.aureusによるEDTAのMICおよびMBC試験の実験結果を示す図である。データは、pH7におけるEDTAのMIC値が<0.03重量%であることを示唆する。データは、pH7におけるEDTAのMBC値が<0.13重量%であることを示唆する。
【図19】図19は、pH7におけるP.aeruginosaによるEDTAのMICおよびMBC試験の実験結果を示す図である。データは、pH7におけるEDTAのMIC値が<0.25重量%であることを示唆する。データは、pH7におけるEDTAのMBC値が<4.00重量%であることを示唆する。
【図20】図20は、pH7におけるC.albicansによるEDTAのMIC試験の実験結果を示す図である。データは、pH7におけるEDTAのMIC値が>4.0重量%であることを示唆する。pH7におけるEDTAのMBC値は、決定することができなかった。
【図21】図21は、pH7におけるS.aureusによる交差力価測定法の実験結果を示す図である。データは、pH7におけるPHMB−EDTA組合せについてFIC指数=0.6であることを示唆する。
【図22】図22は、pH7におけるP.aeruginosaによる交差力価測定法の実験結果を示す図である。データは、pH7におけるPHMB−EDTA組合せについてFIC指数=0.5であることを示唆する。
【図23】図23は、pH7におけるC.albicansによる交差力価測定法の実験結果を示す図である。データは、pH7においてPHMB−EDTA組合せについてC.albicansに対して相乗効果がないことを示唆する。
【図24】図24は、プロトロンビン時間(PT)アッセイの実験結果(生データ)を示す図である。
【図25】図25は、プロトロンビン時間(PT)アッセイの実験結果(処理データ)を示す図である。
【図26】図26は、プロトロンビン時間(PT)アッセイからの、EDTA(Na)の国際標準比(INR)のグラフである。
【図27】図27は、プロトロンビン時間(PT)アッセイからの、PHMBの国際標準比(INR)のグラフである。
【図28】図28は、プロトロンビン時間(PT)アッセイからの、EDTA(Na)およびPHMBの組合せ製剤の国際標準比(INR)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の消毒剤組成物は、生理的pHより高いpHのPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の濃度を含みうる。PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩は、溶媒としての水との組成物で用いることができる。
【0035】
PHMBの一部の特性は、以下の通りである。
【0036】
物理特性
色−無色〜わずかに淡黄色
溶解性−水、エタノール、グリセリンおよびプロピレングリコールに混和性
25℃での比重−1.04
pH−5.0〜5.5
有効期間−2年を超える保存安定性
安定性−広いpH範囲(4〜10)の活性剤で有効および安定
>140℃まで熱安定
UV安定
無臭、非起泡性
化学的に安定で不揮発性
化学特性
無揮発性有機化合物
広範囲の化粧原材料に適合する
カチオン性、両性および非イオン性界面活性剤に適合する
強アニオン性の系に不適合
抗菌特性
固有なビグアナイド化学的性質
新規非特異的作用様式
生物耐性の発生の証拠は知られていない
ホルムアルデヒドを含まず、ホルムアルデヒド供与体でない
広域の活性、やっかいなグラム(陰性)生物、例えばPseudomonasに対する高い活性
広範囲に研究された哺乳動物毒性
経皮および経口の経路による低い急性毒性
使用濃度における低い皮膚および目刺激性
長時間曝露の後の遅い毒性
2世代にわたる研究において非催奇形性であり、生殖影響を示さない
様々な研究において非遺伝毒性
ヒトにおいて発癌性ではないと思われる。
【0037】
PHMBを含む組成物は、医療使用およびヒトへの投与に関連して詳細に確立された安全性プロフィールを有する。1617mg/kgの急性経口LD50(さらなる情報については下の表を参照)。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

PHMBは、医療およびヒト健康用途で用いられる多くの溶液中にも他の成分と組み合わされて存在し、ヒトでの使用に安全であることがインビトロおよびインビボの両方で確立されている。PHMBは手頃な費用で容易に入手でき、溶液中で長時間安定である。
【0040】
EDTAの溶解性の塩が、本開示の組成物で用いられる。二ナトリウム、三ナトリウムおよび四ナトリウム塩を含めた、EDTAのナトリウム塩は一般に入手可能で、広く用いられるが、アンモニウム、二アンモニウム、カリウム、二カリウム、第二銅二ナトリウム、マグネシウム二ナトリウム、第二鉄ナトリウムおよびそれらの組合せを含めた、他のEDTA塩も、それらが所望の抗細菌および/または殺真菌および/または抗原生動物および/または抗アメーバ特性を有し、所望の溶媒に十分に溶解性であるという条件で用いることができる。様々な組合せのEDTA塩を用いることができ、それらは、特定の適用のために好ましいことがある。
【0041】
英国薬局方(BP)は、EDTA二ナトリウムの5%溶液が4.0〜5.5のpHを有することを規定する。BPは、EDTA三ナトリウムの溶液についても、7.0〜8.0のpH範囲を規定する。生理的pHで、EDTAのナトリウム塩は、EDTA二ナトリウムおよびEDTA三ナトリウムの組合せとして存在し、EDTAの三ナトリウム塩が優位である。米国では、注射のために調製される薬用のEDTA「二ナトリウム」は、水酸化ナトリウムで6.5〜7.5のpHに一般に滴定されている。このpHでは、実際にEDTA溶液は主にEDTA三ナトリウムを含み、二ナトリウム塩の割合はより小さい。医療またはヘルスケア用途で用いられるEDTAのナトリウム塩を含む他の組成物は、実質的に生理的であるpHに一般に調節される。
【0042】
EDTAを含む組成物は、医療使用およびヒトへの投与に関連して詳細に確立された安全性プロフィールを有する。ヒトの高カルシウム血症の治療のために、最高3000mgのEDTA二ナトリウムの用量が毎日3時間注入される。この用量は良好な耐容性を示す。EDTA塩は、医療およびヒト健康用途で用いられる多くの溶液中にも他の成分と組み合わされて存在し、ヒトでの使用に安全であることがインビトロおよびインビボの両方で確立されている。EDTA塩は手頃な費用で容易に入手でき、溶液中で経時的に安定である。
【0043】
PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の組合せは、抗凝血効果を有する。抗凝血効果は、図28でさらに詳述される。
【0044】
開示される組成物の実施形態は、少なくとも0.1PPMのPHMBおよび最高400PPMのPHMBを含みうる。多くの適用にとって、少なくとも5PPMのPHMBおよび200PPM未満のPHMBを含む実施形態が好ましく、約10〜50PPMのPHMBを含む組成物が特に好ましい。
【0045】
開示される組成物の実施形態は、溶液容量あたりの重量(w/v)で少なくとも0.0125%の(1つまたは複数の)EDTA塩、および最高12.0%(w/v)の(1つまたは複数の)EDTA塩を含みうる。多くの適用にとって、少なくとも0.25%(w/v)の(1つまたは複数の)EDTA塩および8%(w/v)未満の(1つまたは複数の)EDTA塩を含む実施形態が好ましく、約0.5〜4(w/v)の(1つまたは複数の)EDTA塩を含む組成物が特に好ましい。
【0046】
開示される組成物の実施形態は、0〜25%(v/v)のエタノールおよび水を含みうる。開示される組成物の他の実施形態は、0〜20%(v/v)のエタノールおよび水、0〜15%(v/v)のエタノールおよび水、または0〜10%(v/v)のエタノールおよび水を含みうる。
【0047】
様々な適用のための所望のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の濃度は、治療されている感染のタイプおよび、ある程度は、消毒剤組成物のために用いる溶媒に依存しうる。例えば、エタノールを含む水性溶媒を用いる場合、所望の活性レベルを提供するために必要とされるPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の濃度は、溶媒として水を有する組成物で用いられるPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の濃度と比較して低くてもよい。阻害、殺菌、殺真菌、ビオフィルム根絶および他の目的のための本開示の消毒剤組成物中のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の「有効」濃度は、通常の実験によって決定することができる。
【0048】
特定の実施形態では、本開示の消毒剤組成物は、生理的であるよりも高いpH、好ましくは>もしくは≧8.0のpH、または>もしくは≧8.5のpH、または>もしくは≧9のpH、または>もしくは≧9.5のpH、または>もしくは≧10.0のpH、または>もしくは≧10.5のpHの溶液中のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。医療またはヘルスケア用途で用いられるPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を含む組成物は、実質的に生理的であるpHに調節してもよい。一実施形態では、本開示の消毒剤組成物は、8.5〜12.5の範囲のpH、別の実施形態では9.5〜11.5のpH、さらに別の実施形態では10.5〜11.5のpHの溶液中のPHMBおよびEDTAナトリウム塩(またはナトリウム塩の組合せ)を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。本明細書で用いる場合、用語「EDTA塩」は単一の塩、例えば二ナトリウムまたは三ナトリウムまたは四ナトリウム塩、または別のEDTA塩の形を指すことがあり、またはそのような塩の組合せを指すこともある。(1つまたは複数の)EDTA塩の組成は、組成物を製剤化するために用いられるEDTA塩および組成物のpHの両方によって決まる。(1つまたは複数の)EDTAナトリウム塩を含み、所望のpH範囲(上で特定された)の本開示の消毒剤組成物については、EDTAナトリウム塩は、主に三ナトリウムおよび四ナトリウム塩の形で存在する。
【0049】
PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる消毒剤組成物は、異なる「有効」pH範囲を有する。阻害、殺菌、殺真菌、ビオフィルム根絶および他の目的のための本開示の消毒剤組成物中の所望の(1つまたは複数の)EDTA塩の「有効」pH範囲は、通常の実験によって決定することができる。
【0050】
一部の実施形態では、上に述べたように、本開示の消毒剤組成物はPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩からなり、消毒剤溶液は溶媒、一般に水または生理食塩水などの水性溶媒に溶解させたPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩からなる。他の実施形態では、上に述べたように、本開示の消毒剤組成物は、一般に水または生理食塩水などの水性溶媒中の、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩から本質的になる。
【0051】
一部の実施形態では、本開示の消毒剤組成物は、特定されたpH範囲の特定された濃度を有するPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を含み、上記のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩に加えて、活性成分を含む物質を含みうる。他の抗菌性または殺生物性の成分を、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を含む本開示の消毒剤組成物に組み込むことができるが、従来の抗生物質および殺生物剤の使用は、抗生物質および殺生物剤耐性生物の発生という潜在的な、悲惨な帰結の結果、一般に推奨されない。一部の実施形態では、特定されたpH範囲の、特定された(1つまたは複数の)濃度を有するPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を含む本開示の消毒剤組成物は、実質的な抗菌および/または抗真菌活性を有する他の活性物質を実質的に含有しない。
【0052】
好ましくは、それらがPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の活性および/または安定性に有害な影響を及ぼさないという条件で、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を含む本開示の消毒剤組成物に他の活性および不活性成分を組み込むこともできる。タンパク分解剤を、一部の適用のために消毒剤組成物に組み込むことができる。局所投与のために製剤化される消毒剤組成物は、例えば様々なクリーム、緩和剤、スキンケア組成物、例えばアロエベラなどを有する。液剤で提供される本開示の消毒剤組成物は、好ましくは、それらは、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の活性および/または安定性を妨害しないという条件で、他の活性成分および不活性成分を含みうる。
【0053】
本開示の組成物は、溶液または乾燥形態で用いることができる。溶液では、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩は、水もしくは生理食塩水などの水溶液、またはPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩が溶解性である別の生体適合性の溶液を含みうる溶媒に好ましくは溶解される。アルコール溶液を含め、他の溶媒を用いることもできる。一実施形態では、本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の組成物は、水およびエタノールの混合液で製剤化されてもよい。そのような溶液は非常に有効であることが予想され、それらは、濃縮されたPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の保存溶液を水で作製し、次にエタノールの所望の濃度を導入することによって調製することができる。約0.5%を超えるものから約10%(v/v)未満のエタノール濃度が、有効な消毒剤組成物を提供することが予想される。一部の実施形態では、(1つまたは複数の)EDTA塩は可溶化することができ、保存および使用の間、溶液状態に保たれるという条件で、生体適合性の非水性溶媒を使用することもできる。
【0054】
本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液は、好ましくは滅菌および非発熱性の形で提供され、任意の便利な様式で梱包することができる。一部の実施形態では、本開示の消毒用のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩組成物は、充填済み注射器などの医療器具または別の医療器具に関連付けて、またはその一部として提供することができる。組成物は、滅菌された無菌条件下で調製することができ、または、それらは調製および/または梱包後に、様々な適する滅菌技術のいずれかを用いて滅菌することができる。PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液の単回用バイアル、注射器または容器を提供してもよい。多回使用バイアル、注射器または容器を提供することもできる。本開示のシステムには、本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液を含有するそのようなバイアル、注射器または容器が含まれる。使用が企図されるカテーテルには、末梢穿刺カテーテル、中心静脈カテーテル、腹腔カテーテル、血液透析カテーテルおよび泌尿器カテーテルが含まれる。
【0055】
本開示の組成物は、実質的に「乾燥した」形態、例えばチューブ、または導管、または医療器具、例えばカテーテルもしくは導管、または容器などの表面の実質的に乾燥したコーティングで提供することもできる。本開示の消毒剤組成物の乾燥形態は、吸水性で潤滑性を提供するPVPなどの親水性ポリマー、溶解性を高める界面活性剤、および/または熱だけでなくpH安定性を提供するバルキングおよび緩衝剤を含みうる。本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩組成物のそのような実質的に乾燥した形態は、溶媒の添加によって再構成されて溶液を形成することができる粉末または凍結乾燥形態で提供することができる。代わりに、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩組成物の実質的に乾燥した形態は、コーティングとして提供することができるか、またはゲルまたは別のタイプの担体に組み込むことができるか、またはカプセル封入することができるか、さもなければ梱包してコーティングとして表面に、または容器で提供することができる。本開示のPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩組成物のそのような実質的に乾燥した形態は、溶液の存在下で、実質的に乾燥した組成物が上記の組成および特性を有するPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液を形成するように製剤化される。特定の実施形態では、溶液への長時間曝露後にPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の有効時間放出が達成されるように、異なるカプセル化または保存技術を使用することができる。この実施形態では、実質的に乾燥したPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液は、長期間にわたって、および/または溶液への複数回の曝露後に、消毒剤活性を提供することができる。
【0056】
本開示の消毒剤組成物の製剤および生産は、一般に直接的である。一実施形態では、本開示の所望の消毒剤組成物は、精製水などの水性溶媒にPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を所望の濃度に溶解し、溶液のpHを所望のpHに調節することによって製剤化される。代替の実施形態では、本開示の所望の消毒剤組成物は、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩を、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩が溶解可能で、濃縮され、可溶化された溶液を提供する溶媒に溶解することによって製剤化され、次に追加の溶媒または成分を加えるか、または可溶化された組成物を局所製剤などの溶液以外の形に製剤化することができる。次に、濾過および/または限外濾過などの従来の手段、ならびに他の手段を用いて、消毒剤溶液を滅菌することができる。PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液の好ましいモル浸透圧濃度範囲は、240〜500mOsm/Kg、より好ましくは300〜420mOsm/Kgである。溶液は、好ましくはUSP物質を用いて製剤化される。
【0057】
PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液は、感染系を限定するカテーテルの処理に用いることができる。PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液は、注入の前およびその間に液体ロックを用いて処方濃度の溶液でカテーテルを処理することによって、および/またはカテーテル器具の表面コーティングによって微生物定着を阻害することができる。さらなる適用は、好ましい濃度およびpHのPHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液を含有する液体ロックの使用による、定着または感染したカテーテルの処理である。
【0058】
一般的に、カテーテルの処理のために用いる場合、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液は担体としての水に溶解されるが、他の担体を用いてもよい。血栓溶解剤、ナトリウム、アルコールまたは試薬などの物質を、塩基性の水/PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩溶液に加えることもできる。
【0059】
最小阻止濃度(MIC)実験
増殖を阻害するために必要とされる組成物の最小濃度は、最小阻止濃度(MIC)として知られる。MICおよびMBC(最小殺菌濃度)を判定するために、National Committee on Clinical Laboratory Standards(NCCLS)の微量希釈方法に従った。この方法によると、各製剤は、6log濃度(または達成できる最も高い濃度)の生物体に曝露させなければならない。現在のプロトコルでは、100μLのMHBを、90μLの製剤および10μLのlog8濃度の生物体(または達成できる最も高い濃度)と混合した。最終溶液で要求される濃度を得るために、製剤濃度を調節した。混合液を、37℃で16〜24時間インキュベートした。16〜24時間後に、吸光度の値を600nmで読み取った。適当なブランクを引くことによって、得られたデータを補正した。最後に、>0.1の吸光度を有するウェルには+の印を付け、<0.1のものには−の印を付けた。+記号は増殖を示し、−記号は無増殖を示す。陽性増殖対照は>0.5の補正吸光度値を有しなければならず、陰性対照は<0.1の補正吸光度値を有しなければならない。陽性増殖対照の補正吸光度が0.5より低い場合、「陽性増殖対照の20%未満の吸光度は−増殖と印を付け、陽性増殖対照の20%以上の吸光度は+増殖と印を付ける」代わりの規則が利用される。
【0060】
Staphylococcus aureus(生物体#25923)、Pseudomonas aeruginosa(生物体#27853)およびCandida albicans(生物体#10231)は、ATCCから得た。PHMBを用いた(Avecia、ロット#1L15−038)。EDTA、四ナトリウム塩水和物を用いた(Alfa Aesar、カタログ#A17385、ロット#J9570A)。200PPMのPHMB水溶液を調製した。8重量%のEDTA(Na)水溶液を調製した。次に、要求された濃度を得るために、必要に応じてこれらの溶液を希釈した。Staphylococcus aureusおよびP.aeruginosaの増殖を阻害するEDTA(Na)およびPHMBの最小濃度を見出した。行った実験により、EDTA(Na)はS.aureusについて<0.03%(w/v)のMICを有し、PHMBはS.aureusについて<1.25PPMのMICを有し、EDTA(Na)はP.aeruginosaについて<0.25%(w/v)のMICを有し、PHMBはP.aeruginosaについて<5PPMのMICを有し、EDTA(Na)はC.albicansについて<0.03125%(w/v)のMICを有し、PHMBはC.albicansについて<1.25PPMのMICを有し、EDTA(Na)はC.albicansについて<0.0625%(w/v)のMBCを有し、PHMBはC.albicansについて<1.25PPMのMBCを有する。MICおよびMBCの結果については、図1〜8を参照。
【0061】
相乗作用実験
EDTA(Na)およびPHMBの両方を含む組成物の消毒剤活性の予想外の相乗作用を示すために、2セットの実験を行った。
【0062】
行った最初の実験は、組合せが≦1のFIC指数値を有する範囲に入るかどうかを評価する、交差力価測定法を用いるスクリーニング実験であった。用いた方法は、NCCLS微量希釈方法であった。
【0063】
行った第二の実験は、「殺傷率」アッセイであった。殺傷率アッセイは、組合せが相乗的かどうかを評価することができる。このアッセイでは、製剤は先ず所望の時間生物体に曝露させられる(現行の製剤読取値は、0、1、2、3および24時間時に取られる)。次に、生物体および製剤混合物の試料を連続希釈して、対数回復を調査するためにプレーティングする。生物体を増殖させ、24時間後に増殖/対数回復を評価する。個々の成分について得られた対数回復値を、組合せと比較した。試験した任意の時点で、組合せで用いた最も活性な化合物と比較して2log以上の減少を有するあらゆる組合せを相乗的とした(抗生物質の相乗的相互作用を調査する方法の比較、International journal of antimicrobial agents、15巻(2000年)125〜129頁)。
【0064】
上記の第一および第二の実験により、実験は、EDTA(Na)の抗菌活性に対するPHMBの効果を調査するために行われた。PHMBを用いた(Avecia、ロット#1L15−038)。EDTA、四ナトリウム塩水和物を用いた(Alfa Aesar、カタログ#A17385、ロット#J9570A)。
【0065】
交差力価測定法実験−S.aureus
交差力価測定方法は、EDTA(Na)とPHMBとの間の相互作用を評価するために用いた。交差力価測定方法は頻用される技術であり、例えば、各剤(EDTA(Na)およびPHMB)をMICよりも低い複数の希釈率で試験した。この実験の間に、EDTA(Na)およびPHMBを組合せで試験し、それらの組合せが1以下のFIC指数を有するかどうか評価した。
以下の濃度を試験した:
【0066】
【表3】

分画阻止濃度(FIC)は、組み合わせた化合物のMICを化合物単独のMICで割ったものと定義される。FIC指数が0.5以下である場合、その組合せは相乗的と解釈され;1未満であるが0.5を超える場合は部分的に相乗的;1の場合は付加的;1を超えるが4未満の場合は中立;4以上はアンタゴニストと解釈される。FIC指数を計算するために、化合物AおよびBについて以下の計算を実施する:
FIC−A=(組合せのAのMIC)/(A単独のMIC)
FIC−B=(組合せのBのMIC)/(B単独のMIC)
FIC−組合せ=FIC−A+FIC−B
MIC−PHMB(EDTA(Na)と組み合わせたPHMBのMIC)、EDTA(Na)と組み合わせたときの、MHBでS.aureusの増殖を阻害したPHMBの最小濃度が見出された。MIC−EDTA(Na)(PHMBと組み合わせたEDTA(Na)のMIC)を判定するために、PHMBと組み合わせたときの、MHBでS.aureusの増殖を阻害したEDTA(Na)の最小濃度を見出した。結果については図2、6および9を参照。
【0067】
したがって、FIC−PHMBは0.4である。FIC−EDTA(Na)は0.4である。したがって、FIC−組合せは0.4+0.4であり、それは0.80に等しい。結果については図9を参照。したがって、PHMBおよびEDTA(Na)の組合せは、予想外にも部分相乗的結果を有する。すなわち、PHMBおよびEDTA(Na)の組合せの実施形態は、単独で作用する各剤の効果の合計より予想外に大きい結果を提供する。
【0068】
交差力価測定実験−P.aeruginosa
交差力価測定方法は、EDTA(Na)とPHMBとの間の相互作用を評価するために用いた。交差力価測定方法は頻用される技術であり、例えば、各剤(EDTA(Na)およびPHMB)をMICよりも低い複数の希釈率で試験した。この実験の間に、EDTA(Na)およびPHMBを組合せで試験し、それらの組合せが1以下のFIC指数を有するかどうか評価した。以下の濃度を試験した:
【0069】
【表4】

FIC−PHMBは0.25である。FIC−EDTA(Na)は0.25である。したがって、FIC−組合せは0.25+0.25であり、それは0.5に等しい。結果については図10を参照。したがって、PHMBおよびEDTA(Na)の組合せは、予想外にも完全な相乗的結果を有する。すなわち、PHMBおよびEDTA(Na)の組合せの実施形態は、単独で作用する各剤の効果の合計より予想外に大きい結果を提供する。
【0070】
交差力価測定実験−C.albicans
交差力価測定方法は、EDTA(Na)とPHMBとの間の相互作用を評価するために用いた。交差力価測定方法は頻用される技術であり、例えば、各剤(EDTA(Na)およびPHMB)をMICよりも低い複数の希釈率で試験した。この実験の間に、EDTA(Na)およびPHMBを組合せで試験し、それらの組合せが1以下のFIC指数を有するかどうか評価した。以下の濃度を試験した:
【0071】
【表5】

FIC−PHMBは0.3である。FIC−EDTA(Na)は0.3である。したがって、FIC−組合せは0.3+0.3であり、それは0.6に等しい。結果については図11を参照。したがって、PHMBおよびEDTA(Na)の組合せは、予想外にもC.albicansについて部分相乗的結果を有する。すなわち、PHMBおよびEDTA(Na)の組合せの実施形態は、単独で作用する各剤の効果の合計より予想外に大きい結果を提供する。
【0072】
レートキルアッセイ−S.aureus
上記のように、EDTA(Na)はS.aureusについて0.03%(w/v)未満のMICを有し、PHMBはS.aureusについて1.25PPM未満のMICを有する。したがって、以下の溶液を調製した:
【0073】
【表6】

次に各溶液をS.aureusと組み合わせ、S.aureusの対数回復を、初期、0時間、1時間、2時間、3時間および24時間後に測定した。0.5のMIC濃度および0.25のMIC濃度についての対数回復の差を、図12に示す。データは、EDTA(Na)およびPHMBの溶液が相乗的であることを示す。すなわち、EDTA(Na)およびPHMBの組合せの実施形態は、単独で作用する各剤の効果の合計より予想外に大きい結果を提供する。
【0074】
レートキルアッセイ−P.aeruginosa
上記のように、EDTA(Na)はP.aeruginosaについて0.25%(w/v)未満のMICを有し、PHMBはP.aeruginosaについて5PPM未満のMICを有する。したがって、以下の溶液を調製した:
【0075】
【表7】

次に各溶液をP.aeruginosaと組み合わせ、P.aeruginosaの対数回復を、初期、0時間、1時間、2時間、3時間および24時間後に測定した。0.5のMIC濃度および0.25のMIC濃度についての対数回復の差を、図13に示す。データは、EDTA(Na)およびPHMBの溶液が相乗的であることを示す。すなわち、EDTA(Na)およびPHMBの組合せの実施形態は、単独で作用する各剤の効果の合計より予想外に大きい結果を提供する。
【0076】
レートキルアッセイ−C.albicans
上記のように、EDTA(Na)はC.albicansについて0.3125%(w/v)未満のMICを有し、PHMBはC.albicansについて1.25PPM未満のMICを有する。したがって、以下の溶液を調製した:
【0077】
【表8】

次に各溶液をC.albicansと組み合わせ、C.albicansの対数回復を、初期、0時間、1時間、2時間、3時間および24時間後に測定した。溶液の対数回復の差を、図14に示す。データは、EDTA(Na)およびPHMBの溶液が相乗的でないことを示す。しかし、データはその組合せがC.albicansに対して非常に有効であり、PHMBが優位な成分であることを示唆する。
【0078】
相乗効果(P.aeruginosaのレートキルアッセイおよび交差力価測定法による)、部分相乗効果(S.aureusおよびC.albicansの交差力価測定法による)および相乗効果(S.aureusのレートキルアッセイによる)は、PHMBおよび(1つまたは複数の)EDTA塩の組合せの実施形態を使うことの、有意で、実際的な利点を提供する。したがって、本発明の実施形態は、広域抗生物質の濫用、ならびに連続した不要なカテーテル除去および交換処置を阻止するはずである。
【0079】
pH実験
PHMBおよびEDTA製剤に及ぼすpHの影響を測るために、さらなる実験を行った。MIC(最小阻止濃度)およびMBC(最小殺菌濃度)を決定するために、National Committee on Clinical Laboratory Standards(NCCLS)微量希釈方法に従った。この方法によると、各製剤は、生物体の6log濃度、または達成できる最も高い濃度に曝露させなければならない。現在のプロトコルでは、100μLのMHBを、90μLの製剤および10μLのlog8の生物体または達成できる最も高い濃度と混合した。最終溶液で要求される濃度を得るために、製剤濃度を調節した。混合液を、37℃で16〜24時間インキュベートした。16〜24時間後に、吸光度の値を600nmで読み取った。適当なブランクを引くことによって、得られたデータを補正した。最後に、>0.1の吸光度を有するウェルには+の印を付け、<0.1のものには−の印を付けた。+記号は増殖を示し、−記号は無増殖を示す。陽性増殖対照は>0.5の補正吸光度値を有しなければならず、陰性対照は<0.1の補正吸光度値を有しなければならない。陽性増殖対照の補正吸光度が0.5より低い場合、「陽性増殖対照の20%未満の吸光度は−増殖と印を付け、陽性増殖対照の20%以上の吸光度は+増殖と印を付ける」代わりの規則が利用される。pHは、NaOHまたはHClを用いて明示された値に調節した。
【0080】
Staphylococcus aureus(生物体#25923)、Pseudomonas aeruginosa(生物体#27853)およびCandida albicans(生物体#10231)は、ATCCから入手した。PHMBを用いた(Avecia、ロット#1L15−038)。EDTA、四ナトリウム塩水和物を用いた(Alfa Aesar、カタログ#A17385、ロット#J9570A)。pH7の20PPMのPHMB水溶液を調製した。pH7の8重量%のEDTA水溶液を調製した。次に、要求された濃度を得るために、必要に応じてこれらの溶液を連続希釈した。S.aureus、P.aeruginosaおよびC.albicansのそれぞれについて、pH7のPHMBおよびEDTAのMICおよびMBC濃度が得られた。結果については図15〜20を参照。
【0081】
上に基づき、さらに行った実験は、pH7の組合せが≦1のFIC指数値を有する範囲に入るかどうかを評価する、交差力価測定法を用いるスクリーニング実験であった。用いた方法は、NCCLS微量希釈方法であった。この実験の結果を、図21〜23に示す。この結果に基づいて、pH7のPHMBおよびEDTAのFIC指数は、S.aureusについては0.6、P.aeruginosaについては0.5、C.albicansについては1を超えた。
【0082】
抗凝血性実験
PHMB、EDTAおよびPHMBとEDTAとの組合せの抗凝血能力をプロトロンビン時間(PT)アッセイによって評価するために、実験を行った。PTを手動で記録する代わりに、PTを取得する凝血アナライザーを用いてPTアッセイ(TM−4339−063)を行った。
【0083】
EDTA四ナトリウム(TEDTA)を用いた(Alfa Aesar、カタログ#A17385、ロット#J9570A)。PHMBを用いた(Arch Biocides、カタログ#84312、ロット#IL15−038)。TriniCHECK 1(正常対照)を用いた(Trinity Biotech)。TriniCHECK 2(異常対照)を用いた(Trinity Biotech)。KC4 Amelung Coagulizerを用いた(Trinity Biotech)。
【0084】
図24は、PTアッセイの結果(生データ)を示す。濃度の列で明示される濃度は、試薬の最終濃度である。TriniCHECK 1は、正常な血液試料が凝固するのに要する時間の範囲のPT時間を提供する、正常な対照である。TriniCHECK 2は、正常な血液試料が凝固するのに要する時間の範囲を超えるPT時間を提供する、異常な対照である。INR(国際標準比)は、血液凝固(血塊形成)検査の結果を報告するための、World Health Organization(WHO)およびInternational Committee on Thrombosis and Hemostasisによって確立されたシステムである。INRは、以下のように計算される:
INR=(PT試験試料/PT正常対照ISI
ISI(国際感受性指数)は、個々のトロンボプラスチンの感受性を表す。本明細書で利用されるISIの値は、1.89であった。
【0085】
図25は、PTアッセイの結果(処理データ)を示す。TriniCHECK 1(正常対照)の3倍よりも大きいすべてのPTは、32秒で置換した。これを行ったのは以下の理由のためである:用いた器具は、45秒より大きいPTで再現性のある読取値を提供しない;ISIが1.89である場合、正常対照の3倍を超えるPTは、6を超えるINRをもたらす。5.5を超えるいかなるINR値も非常に高い抗凝血能力を示し、より高いいかなる値も臨床上ほとんどまたは全く重要でない;データのより良好な評価のため。
【0086】
図26は、プロトロンビン時間(PT)アッセイからの、TEDTAの国際標準比(INR)のグラフを示す。図26から、(試験範囲内で)4重量%のTEDTAの濃度で、INRは7.25より大きいことが明白である。
【0087】
図27は、プロトロンビン時間(PT)アッセイからの、PHMBの国際標準比(INR)のグラフを示す。図24、25および27から、(試験範囲内で)PHMBの濃度の増加は、INRの有意な増加をもたらさないことが明白である。
【0088】
図28は、プロトロンビン時間(PT)アッセイからの、TEDTAおよびPHMBの組合せ製剤の国際標準比(INR)のグラフを示す。図28から、図26および27の結果と比較して、(試験範囲内で)PHMBの添加はTEDTAの抗凝血活性を有意に促進することも、強化することもないが、TEDTAの抗凝血活性に負の影響も及ぼさないことも明白である。したがって、50、75または100ppmのPHMBと混合したTEDTA(4重量%)は、非常に良好な抗凝血活性を提供する。
【0089】
以上のことから、上記に論じたもの以外の形で本開示を実施できることが明白であるはずであり、本開示の範囲は、上記の詳細な論述ではなく、添付の特許請求の範囲によって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中にPHMBおよびEDTA塩を含む消毒剤組成物であって、
前記PHMBが、少なくとも0.1PPMかつ400PPM未満の濃度であり、前記EDTA塩が、少なくとも0.0125%(w/v)かつ12.0%(w/v)未満の濃度であり、前記消毒剤組成物が7を超えるpHを有する、消毒剤組成物。
【請求項2】
前記溶液が0〜10%(v/v)エタノールおよび水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記溶液が生理食塩水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記PHMBが、少なくとも5PPMかつ200PPM未満の濃度であり、前記EDTA塩が、少なくとも0.25%(w/v)かつ8%(w/v)未満の濃度の四ナトリウム塩であり、前記消毒剤組成物が9.0を超えるpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
溶液による再構成時に請求項1に記載の消毒剤組成物を形成する、乾燥製剤または部分水和製剤中にPHMBおよびEDTA塩を含む消毒剤組成物。
【請求項6】
前記消毒剤組成物が、無菌の、非発熱性形態で梱包され、前記溶液が水であり、前記消毒剤組成物が240〜500mOsM/kgのモル浸透圧濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、無菌の、非発熱性形態で梱包されるロックフラッシュ組成物であり、前記ロックフラッシュ組成物が、留置アクセスカテーテル、尿カテーテル、経鼻チューブおよび咽喉チューブで使用するのに生体適合性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記PHMBが、少なくとも5PPMかつ200PPM未満の濃度であり、前記EDTA塩が、少なくとも0.25%(w/v)かつ8%(w/v)未満の濃度の四ナトリウム塩であり、前記消毒剤組成物が9.0を超えるpHを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
溶液中にPHMBおよびEDTA塩を含む消毒剤溶液とカテーテルを接触させることによって前記カテーテルを消毒する方法であって、
PHMBが、少なくとも0.1PPMかつ400PPM未満の濃度であり、前記EDTA塩が、少なくとも0.0125%(w/v)かつ12.0%(w/v)未満の濃度であり、前記消毒剤組成物が7を超えるpHを有する方法。
【請求項10】
前記溶媒が水である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記PHMBが、少なくとも5PPMかつ200PPM未満の濃度であり、前記EDTA塩が、少なくとも0.25%(w/v)かつ8%(w/v)未満の濃度の四ナトリウム塩であり、前記消毒剤組成物が>9.0のpHを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記カテーテルを前記消毒剤溶液と接触させることが、前記カテーテルを前記消毒剤溶液でロッキング、フラッシングまたはコーティングすることによって達成される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記カテーテルが、末梢穿刺カテーテル、中心静脈カテーテル、腹腔カテーテル、血液透析カテーテルおよび泌尿器カテーテルからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
消毒剤溶液を前記カテーテルの内腔に導入することと;
選択された時間にわたって前記消毒剤溶液を前記内腔内に保持することと;
前記内腔から前記消毒剤溶液を取り出すことと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
溶液中にPHMBおよびEDTA塩を含む抗凝血組成物であって、前記PHMBが、少なくとも0.1PPMかつ400PPM未満の濃度であり、前記EDTA塩が、少なくとも0.0125%(w/v)かつ12.0%(w/v)未満の濃度であり、前記消毒剤組成物が7を超えるpHを有する、抗凝血組成物。
【請求項16】
前記PHMBが、少なくとも5PPMかつ200PPM未満の濃度であり、前記EDTA塩が、少なくとも0.25%(w/v)かつ8%(w/v)未満の濃度の四ナトリウム塩である、請求項15に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2011−509927(P2011−509927A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541440(P2010−541440)
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/014126
【国際公開番号】WO2009/085318
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】