説明

消臭用組成物

【課題】消臭用組成物、特に酢酸臭に対して優れた消臭効果を発揮する消臭用組成物を提供する。
【解決手段】消臭用組成物の有効成分として、ミルラ樹脂をエタノール及びグリセリンを含有するか、またはエタノール、グリセリン及び水を含有する抽出溶媒で抽出して得られたミルラ抽出液を用いる。好ましくは、抽出溶媒中のグリセリン濃度及びエタノール濃度をそれぞれ0.1〜15重量%及び10〜85重量%に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭用組成物、特に酢酸臭に対して優れた消臭効果を発揮する消臭用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルラ(没薬)はカンラン科の植物であり、その樹木の幹から採れる油性の樹脂(ミルラ樹脂)は、従来より香料として用いられる他、防腐剤としての効果を有することが知られている。
【0003】
かかるミルラ樹脂は、安全性が高く厚生労働省から食品添加物として承認されており、強壮薬あるいは歯磨きなどの成分として利用されている。また、ミルラ樹脂から水蒸気蒸留法により抽出した精油は、皮膚疾患の治療やアロマテラピーに使用できることも知られている。
【0004】
また、ミルラ樹脂そのもの並びにそのエタノールまたは含水エタノールによる抽出物には、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド及び酢酸等の臭いに対して広く消臭作用があることが知られている(例えば、特許文献1〜6)。またこれを服用するか、またはペットに摂取させることにより、体臭や糞尿臭を低減することが知られている(例えば、特許文献3〜7)。
【0005】
しかし、ミルラ樹脂の消臭効果は、アンモニア臭等のアルカリ系の臭いに対しては優れているものの、酢酸臭等の酸性の臭いに対しては劣る傾向がある(例えば、特許文献1の参考例1、特許文献2、3及び6の実施例1、並びに特許文献5の実施例1等参照)。この点について消臭市場では、アンモニア臭を消臭する商品は多く出回っているが、酢酸臭を消臭する商品は少ないため、酢酸臭の消臭効果に優れた消臭剤の開発が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−160216号公報
【特許文献2】特開2005−296576号公報
【特許文献3】特開2005−296597号公報
【特許文献4】特開2006−136686号公報
【特許文献5】特開2006−136687号公報
【特許文献6】特開2007−319649号公報
【特許文献7】特開2005−170919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ミルラ樹脂を原料とする、酢酸臭の消臭効果に優れた消臭用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究していたところ、ミルラ樹脂の抽出溶媒として、従来の抽出溶媒であるエタノールまたは含水エタノールに加えてグリセリンを含む溶媒を用いることにより、酢酸臭に対する消臭効果に優れた消臭用組成物が得られることを見出した。また、当該消臭用組成物は、従来のエタノールまたは含水エタノールで抽出して得られる組成物と同様に生体に対する安全性が高く、ペットに摂取させることにより体臭(ペット臭)や糞尿臭をも低減することができることを確認した。
【0009】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を包含するものである。
【0010】
(I)消臭用組成物
(I-1)ミルラ樹脂をエタノール及びグリセリンを含有するか、またはエタノール、グリセリン及び水を含有する抽出溶媒で抽出して得られたミルラ抽出液を有効成分とすることを特徴とする消臭用組成物。
(I-2)抽出溶媒中のグリセリン濃度が0.1〜15重量%であることを特徴とする(I-1)に記載する消臭用組成物。
(I-3)抽出溶媒中のエタノール濃度が10〜85重量%であることを特徴とする(I-1)または(I-2)に記載する消臭用組成物。
(I-4)消臭用組成物中のミルラ樹脂由来成分の濃度が0.001重量%以上であることを特徴とする(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する消臭用組成物。
(I-5)酢酸臭に対する消臭剤である(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する消臭用組成物。
(I-6)タバコ臭、室内臭、車内臭、生ゴミ臭、魚臭、排水溝臭、汗臭、靴臭、足臭、体臭、ペット臭、または糞尿臭に対する消臭剤である、(I-1)乃至(I-5)のいずれかに記載する消臭用組成物。
【0011】
(II)消臭用組成物の調製方法
(II-1)ミルラ樹脂をエタノール及びグリセリンを含有するか、またはエタノール、グリセリン及び水を含有する抽出溶媒で抽出してミルラ抽出液を調製する工程、及び当該ミルラ抽出液を消臭用組成物として調製する工程を有する、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する消臭用組成物の調製方法。
(II-2)抽出溶媒中のグリセリン濃度が0.1〜15重量%であることを特徴とする(II-1)に記載する調製方法。
(II-3)抽出溶媒中のエタノール濃度が10〜85重量%であることを特徴とする(II-1)または(II-2)に記載する調製方法。
(II-4)消臭用組成物中のミルラ樹脂由来成分の濃度が0.001重量%以上であることを特徴とする(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載する調製方法。
【0012】
(III)ミルラ抽出液を有効成分とする消臭用組成物について酢酸臭に対する消臭作用を増強する方法
(III-1)ミルラ抽出液を有効成分とする消臭用組成物について酢酸臭に対する消臭作用を増強する方法であって、当該ミルラ抽出液として、ミルラ樹脂をエタノール及びグリセリンを含有する抽出溶媒か、またはエタノール、グリセリン及び水を含有する抽出溶媒で抽出して得られた抽出液を用いることを特徴とする方法。
(III-2)抽出溶媒中のグリセリン濃度が0.1〜15重量%であることを特徴とする(III-1)に記載する方法。
(III-3)抽出溶媒中のエタノール濃度が10〜85重量%であることを特徴とする(III-1)または(III-2)に記載する方法。
【発明の効果】
【0013】
従来からミルラ樹脂にはアンモニア、硫化水素、酢酸、アセトアルデヒト、及びホルムアルデヒドなどの臭気成分に対して消臭作用があること、特にアンモニア臭及び硫化水素臭に対する消臭作用に優れていることが知られている。本発明の消臭用組成物は、原料として用いる上記ミルラ樹脂の消臭作用に基づいて、アンモニア、硫化水素、酢酸、アセトアルデヒト、及びホルムアルデヒドなどの多様な臭気成分に対して消臭効果を有するものの、特に酢酸臭に対して優れた消臭効果を有することを特徴とする。
【0014】
酢酸臭は、タバコ臭、生ゴミ臭、魚臭、排水溝臭、汗臭、靴臭、足臭、体臭、ペット臭、及び糞尿臭等の各種の臭気に含まれている臭い成分である。従って、本発明の消臭用組成物によれば、酢酸臭を含む上記臭気の消臭、並びに上記臭気を含む室内、車内、トイレ、台所、風呂場、靴箱、クローゼット、靴、衣類、足を含む身体、ペットなどの臭気の消臭に有効に使用することができる。
【0015】
特に本発明の消臭用組成物は、ペットや人体などの生体に対しても安全に使用でき、環境汚染の問題がない。また本発明の消臭用組成物は、防腐剤としての作用も有するミルラ抽出物を含有しているため、合成保存料などを用いることなく安定した品質で保存することができ、また長期使用することができる。
【0016】
さらに本発明の消臭用組成物は、食品添加物であるミルラ樹脂を原料として、これを人体に安全なエタノールとグリセリン(またはエタノールとグリセリンと水)を用いて抽出して調製したものであるため、経口服用・摂取可能な組成物である。このため本発明の消臭用組成物は、食品または飲料(ペット用餌料を含む)に添加して服用(摂取)させることができ、その結果、体臭(ペット臭を含む)や糞尿臭(ペットの糞尿臭を含む)を軽減することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(I)消臭用組成物及びその調製方法
本発明の消臭用組成物は、ミルラ樹脂からエタノール及びグリセリンを含むか、またはエタノール、グリセリン及び水を含む抽出溶媒を用いて抽出して得られたミルラ抽出液を有効成分とすることを特徴とする。
【0018】
ミルラ樹脂は、前述するようにミルラ樹木(Commiphora myrrha)の幹から採れる油性ゴム質の樹脂であり、商業的に入手することができる。抽出にはミルラ樹脂の乾燥物を好適に用いることができる。より好ましくは乾燥粉砕物、特に好ましくは乾燥粉末である。
【0019】
ミルラ樹脂の抽出には、上記するようにエタノール及びグリセリンを含む抽出溶媒が用いられる。ここで抽出溶媒はエタノールとグリセリンに加えて水を含むものであってもよい。
【0020】
抽出溶媒中のグリセリン濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは3〜5重量%である。抽出溶媒中のエタノール濃度は、特に制限されないが、好ましくは10〜85重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。
【0021】
より具体的には、ミルラ抽出液は、例えばミルラ樹脂の乾燥粉砕物を、エタノールとグリセリンを含有するか、またはエタノールとグリセリンと水を含有する抽出溶媒に浸漬し、必要に応じて撹拌しながら抽出して調製される。かかる抽出は、エタノールの引火性を考慮して通常50℃以下、好ましくは−5〜30℃、より好ましくは−5〜25℃、より好ましくは室温の温度条件で行うことが好ましい。次いで、得られたミルラ抽出物から、デカンテーション、ろ過、遠心分離など公知の固液分離法により不溶物(抽出残渣)を除去し、ミルラ抽出液を採取する。
【0022】
斯くして得られるミルラ抽出液中に含まれるミルラ樹脂抽出成分の質量は、「抽出に使用したミルラ樹脂の乾燥質量」から「抽出後に得られた抽出残渣の乾燥質量」を差し引くことで算出することができる。
【0023】
斯くして算出されるミルラ抽出液中のミルラ樹脂抽出成分の濃度は、最終調製物である消臭用組成物中に含まれるミルラ樹脂抽出成分の濃度が所望の範囲(0.001重量%以上)になるように適宜調整すれば足りるので、特に制限されるものではない。
【0024】
消臭用組成物中に含まれるミルラ樹脂由来成分の濃度は、使用する目的に応じて、例えば水を用いて適宜調整することができる。
【0025】
この場合、ミルラ抽出液の中に、水に加えて、緑茶エキス、木酢液または精油などの植物抽出液、ミルラ樹脂由来の成分以外の消臭成分、保湿剤、または着色料などの各種の添加成分を配合することもできる。これらの添加成分は、水、エタノール及びグリセリンの混合液に対して相溶性を有し、本発明の消臭用組成物の消臭効果を阻害しないものであることを限度に特に制限されるものではない。例えば、保湿剤としては、化粧品成分として使用しうる保湿剤が好ましく用いられ、たとえば、多価アルコール類、糖類、アミノ酸類などを挙げることができる。
【0026】
本発明の消臭用組成物は、保湿剤としても作用するグリセリンを含有するため、消臭効果をより持続させることができる。特に、本発明の消臭用組成物(液状消臭剤)を人体やペットの皮膚に対して用いる場合には、グリセリンまたはそれ以外の保湿剤を含むことにより、液体消臭剤が体温により短時間で揮発するのを防ぎ、消臭効果を長時間持続させることができるとともに、使用感がよく、皮膚表面の過度な乾燥を防ぐという二次的な効果も付与することができる。
【0027】
本発明の消臭用組成物は、消臭効果を有する割合でミルラ樹脂由来成分を含有していればよい。かかるミルラ樹脂由来成分の濃度は、用途や使用方法などにより適宜選択することができるが、使用時における消臭用組成物中にミルラ樹脂由来成分が0.001重量%以上となる割合で含まれていることが好ましい。好ましくは0.001〜5重量%程度、より好ましくは0.02〜2重量%程度、さらに好ましくは0.02〜1重量%程度である。なお、本発明では、高濃度の消臭用組成物を製品とし、使用時に水で希釈して用いてもよい。この場合には、希釈時に適切な濃度となるよう、液状消臭剤中の各成分濃度を調整することができる。
【0028】
本発明の消臭用組成物の使用時におけるミルラ樹脂由来成分の割合は、上記範囲で各種製品の目的や用途に応じて適宜調整することができる。
【0029】
例えば、(1)室内、車内、トイレ、台所、靴箱、またはクローゼット等の空間に噴霧して使用するタイプの液体消臭剤について、その中のミルラ樹脂由来成分の濃度としては通常0.06〜0.15重量%、(2)カーテン、寝具、絨毯、または衣類などに振り掛けて(噴霧して)使用するタイプの液体消臭剤について、その中のミルラ樹脂由来成分の濃度としては通常0.06〜0.2重量%、(3)生ゴミや排水溝(配水管)に振り掛けて(噴霧して)使用するタイプの消臭剤について、その中のミルラ樹脂由来成分の濃度としては通常0.02〜0.4重量%、(4)身体やペットに噴霧または塗布して体臭やペット臭を防止するタイプの消臭剤について、その中のミルラ樹脂由来成分の濃度としては通常0.06〜0.15重量%、(5)服用またはペットに摂取させて糞便の臭いを抑制するタイプの経口用消臭剤について、その中のミルラ樹脂由来成分の濃度としては通常0.001重量%以上である。
【0030】
本発明の消臭用組成物は、アンモニア臭の消臭に加えて、酢酸臭の消臭に優れているため、これらの臭い成分を含む悪臭の消臭に有効に使用することができる、例えば、室内、車内、トイレ、靴箱及びクローゼット等における臭い;台所における生ゴミや魚などの臭い;風呂場などの排水溝(管)から出る臭い;寝具、絨毯、衣類及び靴等に付着した臭い;体臭やペット臭などの生体臭を消臭するために好適に使用できる。
【0031】
このような本発明の消臭用組成物は、好ましくは液状消臭剤として調製され、塗布、浸漬、スプレーなどのような形態で用いることができる。この場合、特に噴霧器やスプレー容器に充填してスプレー剤の形態にすると手軽に使用できるため好ましい。また室内等への適用に際しては、加湿器や加熱蒸散器などを用いて、噴霧して使用することもできる。また生ゴミや排水溝への適用に際しては、液体消臭剤のほか、粉末または顆粒状の形態に調製することもできる。
【0032】
また本発明の消臭用組成物は、たとえば、犬や猫などのペットの身体に噴霧または振り掛けることにより、ミルラ樹脂の持つ即効性のある消臭作用によって、ペットの放つ嫌な臭いを有効に消すことができる。また、アルコール成分の作用によって、殺菌消毒をあわせて行うこともできる。また、ペットのみならず人体などに対しても安全に使用することができるため、ヒトの身体に噴霧または塗布することで、体臭や足臭を抑えることができる。このような本発明の消臭用組成物は、好ましくは上記するように液状消臭剤として調製され、塗布、スプレーなどのような形態で用いられるが、粉末状にして塗布または噴霧したり、フォーム状にして塗布することも可能である。
【0033】
また本発明の消臭用組成物は、犬や猫などのペットの食餌や飲み水に添加剤として配合し、摂取させることにより、ミルラ樹脂の持つ消臭効果によってペットの糞尿から発せられる嫌な臭いを有効に抑制することができる。また同様に、食品添加剤として、飲食物(飲用水を含む)に配合し服用することにより、ミルラ樹脂の持つ消臭効果によってヒト糞尿から発せられる嫌な臭いをも有効に抑制することができる。
【0034】
(II)ミルラ抽出液を有効成分とする消臭用組成物について酢酸臭に対する消臭作用を増強する方法
ミルラ抽出液は、原料として用いるミルラ樹脂に基づいて各種の悪臭に対して広く消臭作用を有するものの、アンモニア臭に対する消臭作用に比較すると酢酸臭に対する消臭作用は低い。本発明は、かかる点を解決するための方法であって、ミルラ抽出液を有効成分とする消臭用組成物について酢酸臭に対する消臭作用を増強する方法に関する、
本発明の方法は、消臭用組成物の有効成分として用いるミルラ抽出液として、ミルラ樹脂をエタノール及びグリセリンを含有する抽出溶媒か、またはエタノール、グリセリン及び水を含有する抽出溶媒で抽出して得られた抽出液を用いることによって実施することができる。
【0035】
ここで、抽出溶媒中のグリセリン濃度は、通常0.1〜15重量%の範囲、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは3〜5重量%である。抽出溶媒中のエタノール濃度は、特に制限されないが、好ましくは10〜85重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。
【0036】
斯くして得られるミルラ抽出液は、抽出溶媒としてエタノールまたは含水エタノールを用いて抽出して得られたミルラ抽出液のアンモニア臭に対する優れた消臭作用は維持しながらも、当該抽出液の酢酸臭に対する消臭作用が増強されている。
【実施例】
【0037】
以下、参考実験例、実験例及び実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
参考実験例1
ミルラ樹脂(生活の木社製)を乳鉢で粉砕して得た乾燥粉末状のミルラ樹脂1gを、容量5リットルのテドラーバッグに入れ、脱気しておいた。このバッグ内に、各種濃度(表1に経過時間0時間の値として記載)のガス(臭気成分となる代表的なガス:アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド)をそれぞれ3リットル注入し、ガス検知器(ガステック社製)により1〜12時間経過後のガス濃度を検知し、ミルラ樹脂による消臭効果をそれぞれ確認した。結果を表1に併せて示す。
【0038】
【表1】

【0039】
この結果から、ミルラ樹脂そのものに、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドに対する消臭作用があることがわかる。さらにミルラ樹脂は、特にアンモニア及び硫化水素に対する消臭効果に優れているものの、メチルメルカプタン、酢酸、アセトアルデヒド、及びホルムアルデヒドに対する消臭効果は劣っていることがわかる。ちなみにこれらの臭いのうち、酢酸臭は、タバコ臭、汗臭、靴臭、足臭、加齢臭、体臭、ペット臭、糞尿臭(ペット糞尿臭を含む)、生ゴミ臭、魚臭、配管臭等の多くの悪臭に含まれる臭い成分である。
【0040】
実験例1
ミルラ樹脂(生活の木社製)を乳鉢で粉砕し乾燥粉末状のミルラ樹脂を得た。得られた粉末状のミルラ樹脂の任意量を、下記の各抽出溶媒に浸漬し、室温で3〜12時間放置した。
【0041】
<抽出溶媒>
(1)コントロール溶媒:含水エタノール(エタノール濃度:約50重量%)
純エタノール(エタノール濃度99.5%)と水を50:50の割合で混合して調製。
(2)本発明溶媒:45〜49.5重量%純エタノール(エタノール濃度99.5%)、0.5〜5重量%グリセリン及び水50重量%。
【0042】
静置抽出後、得られた抽出物をろ過して不溶物(抽出残渣)を除去し、ミルラ抽出液(コントロール抽出液、本発明抽出液)を調製した。なお、斯くして得られた各ミルラ抽出液中に含まれるミルラ樹脂由来成分の量(g)は、抽出に使用したミルラ樹脂(乾燥粉末状)の質量(g)から上記抽出残渣(乾燥物)の質量(g)を差し引くことによって算出した。
【0043】
斯くして調製したミルラ抽出液を消臭液(コントロール消臭液、本発明消臭液)として用いて、臭気成分としてアンモニアと酢酸に対する消臭作用(脱臭率)を測定した。具体的には容量1000mlの三角フラスコに適宜量の臭気成分を入れ、ガステッキ社製ガス検知管を用いて、ブランクとして気相中の臭気成分濃度(X)を測定した。その後、上記消臭液を5ml三角フラスコに入れ、一定時間(1〜24時間)経過後、同様にして臭気成分濃度(Y)を測定した。そして、ブランク時の臭気成分濃度(X)と消臭液を入れた後の臭気成分濃度(Y)から消臭作用(U:脱臭率)を次の式から算出した。
【0044】
【数1】

【0045】
コントロール消臭液(含水エタノール)によるアンモニア臭及び酢酸臭に対する脱臭率を表2に、また本発明消臭液(抽出溶媒:グリセリン0.5、1.5、2.5及び5重量%含有含水エタノール)によるアンモニア臭及び酢酸臭に対する脱臭率を表3〜6にそれぞれ示す。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
上記結果からわかるように、抽出溶媒として含水エタノールを用いて調製したミルラ抽出液は、ミルラ樹脂と同様に、アンモニア臭に対しては優れた消臭効果を発揮するものの、酢酸臭に対する消臭効果にはやや劣っていた。これに対して、抽出溶媒として含水エタノールに加えてグリセリンを配合したものを用いて調製したミルラ抽出液は、酢酸臭に対しても優れた消臭効果を発揮することが判明した。また酢酸臭に対する消臭効果は、抽出溶媒中のグリセリン濃度を上げることによって向上することが判明した。しかし、アンモニア臭に対する消臭効果とのバランスを考慮して、抽出溶媒中のグリセリン濃度を調整することが好ましく、かかる濃度として0.1〜15重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%程度、より好ましくは0.2〜5重量%程度、特に好ましくは0.5〜3重量%程度を例示することができる。
【0052】
実験例2
実験例1で調製した本発明消臭液(抽出溶媒:グリセリン3重量%、エタノール47重量%、水50重量%)を、水に滴下して犬用飲み水(水200mLに消臭液1.5ml添加:ミルラ樹脂由来成分濃度0.001重量%)及び猫用飲み水(水90mLに消臭液0.6ml添加:ミルラ樹脂来成分濃度0.001重量%)を調製した。
【0053】
斯くして調製した犬用飲み水を中型成犬(雄)に、また猫用飲み水を生後6ヶ月の猫(雄)に、それぞれ5日間朝晩継続して飲ませた。そして当該飲み水の飲用前後における糞中の硫化水素濃度と尿中のアンモニア濃度を測定した。
【0054】
犬と猫の結果をそれぞれ表7及び8に示す。
【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
上記の結果から、本発明の消臭用組成物によれば、これをペットに摂取させることで、糞尿中の主な臭い成分である硫化水素臭及びアンモニア臭を顕著に低減することができることが確認できた。この結果は、本発明の消臭用組成物をヒトが服用することで、ヒトの糞尿の臭いを低減することができることを示している。
【0058】
実施例
表9〜12に記載する抽出溶媒を用いて調製したミルラ抽出液を用いて、下記の処方に従って各種の消臭剤を調製した。
<処方>
ミルラ抽出液(ミルラ樹脂由来成分2.74重量%) 3.7重量%
水 96.3重量%
合計 100.0重量%。
【0059】
【表9】

【0060】
【表10】

【0061】
【表11】

【0062】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルラ樹脂をエタノール及びグリセリン、またはエタノール、グリセリン及び水を含有する抽出溶媒で抽出して得られたミルラ抽出液を有効成分とする消臭用組成物。
【請求項2】
抽出溶媒中のグリセリン濃度が0.1〜15重量%であることを特徴とする請求項1に記載する消臭用組成物。
【請求項3】
抽出溶媒中のエタノール濃度が10〜85重量%であることを特徴とする請求項1に記載する消臭用組成物。
【請求項4】
消臭用組成物中のミルラ樹脂由来成分の濃度が0.001重量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載する消臭用組成物。
【請求項5】
酢酸臭に対する消臭剤である請求項1乃至4のいずれかに記載する消臭用組成物。
【請求項6】
タバコ臭、室内臭、車内臭、生ゴミ臭、魚臭、排水溝臭、汗臭、靴臭、足臭、体臭、ペット臭、または糞尿臭に対する消臭剤である、請求項1乃至5のいずれかに記載する消臭用組成物。

【公開番号】特開2011−218063(P2011−218063A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92742(P2010−92742)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(504454691)株式会社あすなろ本舗 (3)
【Fターム(参考)】