説明

液体カートリッジおよび液体ポンプ

【課題】液体を流動させるための新規な機構を備え、内部の液体のかくはん、または液体の流動が可能な液体カートリッジを提供すること。
【解決手段】本発明にかかる液体カートリッジ1000は、液体110を貯留する容器部100と、液体110に浸漬され、液体110を流動させる板状の振動体200と、振動体200を厚み方向に振動させる駆動部300と、を有し、振動体200の面内方向の端部の少なくとも一部は、端に向かって連続的に薄くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯蔵する液体カートリッジおよび液体ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を貯蔵する容器として、各種の液体カートリッジがある。これらの容器のうち、サイズの小さいものとしては、たとえば、万年筆のインクカートリッジや、インクジェット型プリンタに装備されるインクカートリッジがある。液体カートリッジは、液体が漏出しないように貯蔵することができる。このことによって、液体カートリッジは、液体の運搬、供給など、取り扱いが容易にできるようになっているのが普通である。
【0003】
液体カートリッジが貯蔵する液体は、単純な液体に限らず、各種の分散体も対象となり多様である。それらのうちの代表的なものとしては、インクを挙げることができる。こういった液体は、貯蔵期間が長くなると、成分が沈降、分離してしまうことがあった。この問題に対しては、たとえば、各種の分散剤を液体に混合するなどの方法が検討されている。また、液体を再分散させる方法としては、液体カートリッジを振とうする方法や、液体カートリッジ内の液体をかくはんする方法が考えられる。このような方法のうち、液体カートリッジ内の液体をかくはんする方法は、液体カートリッジを振とうする方法よりも、これに要する空間スペースを小さくできるため大変有望である。さらに、液体をカートリッジから送出する場合、液体の量を適宜調整したり、遠方まで送出するためにポンピングする必要がある場合がある。
【0004】
一方、液体を流動させる装置としては、船舶のスクリューや、各種のポンプがある。また、魚類のヒレ等も液体を流動させる装置とみることができる。この種の機構は、液体を効率的に流動させることができるように、形状や動作が選ばれているといえる。魚類のヒレの構造や原理は、これを応用して、ポンプ等に利用されることがある。たとえば、特開平5−272497号公報には、フィン(ヒレ)を回転軸の周りに所定の角度範囲内に往復回転駆動させて液体を流動させるポンプが開示されている。同公報のポンプは、小型で少ない構成要素により構成されるとの記載がある。そして、容器内の液体を流動させるために、同公報のようなポンプの機構を組み合わせることが考えられる。
【特許文献1】特開平5−272497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液体カートリッジ内の液体を流動させたり外部に送出させるためには、上記のようなポンプを組み合わせただけでは未だ機構や動作が大がかりとなって小型化には向かない。また、回転軸を有する機構により駆動されるポンプの場合、回転軸を受けるベアリングや、流体を封止するシーリング等が必要となる。このようなシーリングもまた小型化する際の障害となる。また、スクリュー機構においては、液体の流速を高めるために回転速度を高めると、効率が非常に悪くなるという欠点もあった。
【0006】
本発明にかかる目的の一つは、液体を流動させるための新規な機構を備え、内部の液体のかくはん、または液体の流動が可能な液体カートリッジを提供することである。
【0007】
本発明にかかる目的の一つは、管内の液体を流動させることのできる小型な液体ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる液体カートリッジは、
液体を貯留する容器部と、
前記液体に浸漬され、前記液体を流動させる板状の振動体と、
前記振動体を厚み方向に振動させる駆動部と、
を有し、
前記振動体の面内方向の端部の少なくとも一部は、端に向かって連続的に薄くなっている。
【0009】
このような液体カートリッジは、内部の液体のかくはん、または液体の流動が可能である。
【0010】
本発明の液体カートリッジにおいて、
さらに、前記容器部に連通する流路部を有することができ、
前記流路部は、内部に前記液体を流通させることができる。
【0011】
本発明の液体カートリッジにおいて、
前記駆動部は、前記振動体を屈曲させて振動させることができる。
【0012】
本発明の液体カートリッジにおいて、
前記駆動部は、前記振動体全体の位置を移動させて振動させることができる。
【0013】
本発明の液体カートリッジにおいて、
少なくとも前記振動体の薄くなっている領域が、前記液体に浸漬され、
前記液体は、前記振動体の厚み方向に垂直な方向、かつ、前記振動体が薄くなってゆく方向に速度成分を有して流動されることができる。
【0014】
本発明の液体カートリッジにおいて、
前記駆動部は、圧電素子を有することができる。
【0015】
本発明の液体カートリッジにおいて、
前記振動体が振動する周波数は、前記振動体の共振周波数、または前記振動体と前記駆動部とを含む全体の共振周波数であることができる。
【0016】
本発明にかかる液体ポンプは、
内部を液体が通過する管部と、
前記液体に浸漬され、前記液体を前記管部内で流動させる板状の振動体と、
前記振動体を厚み方向に振動させる駆動部と、
を有し、
前記振動体の面内方向の端部の少なくとも一部は、端に向かって連続的に薄くなっている。
【0017】
このような液体ポンプは、小型化が可能で、管内の液体を流動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。
【0019】
1.第1実施形態
1.1.液体カートリッジ
本実施形態にかかる液体カートリッジ1000について図面を参照しながら説明する。図1は、液体カートリッジ1000を模式的に示す断面図である。図2および図3は、いずれも液体カートリッジ1000の振動体200および駆動部300を模式的に示す斜視図である。図4は、液体カートリッジ1000の振動体200および駆動部300を模式的に示す平面図である。図5は、液体カートリッジ1000の振動体200および駆動部300を模式的に示す断面図である。図4のA−A線に沿った断面が図5に相当する。図6は、駆動部300の基材310が駆動したときの基材310の変形および振動体200の動作を模式的に示す断面図である。図7および図8は、振動体200の一例を示す斜視図である。
【0020】
本実施形態の液体カートリッジ1000は、容器部100と、振動体200と、駆動部300とを有する。容器部100は、液体110を貯留することができる。容器部100は、駆動部300を取り付けることができる。容器部100の形状は、内部に液体110を貯留できる形状であれば、図示の例のような断面が矩形である形状に限定されない。容器部100は、液体110を注入する注入口や、液体110を排出する排出口を有していてもよい。容器部100は、液体110を貯留し、液体110の保管、運搬等を可能にする。容器部100の材質は、限定されない。容器部100は、他の部材や液体110に劣化を起こさせないことなどを配慮して、樹脂、金属などとすることができる。
【0021】
液体110は、容器部100に貯留される。液体110は、容器部100の内部の他に、容器部100に連通する流路等があるときは、その部分に存在してもよい。液体110は、流動する物質であればよい。液体110は、たとえば、インク、エマルション、有機溶剤、有機溶液、有機無機混合液、水溶液などとすることができる。液体110は、液相と固相、および液相と液相が分離するような分散体であってもよい。
【0022】
振動体200は、容器部100に貯留された液体110に浸漬される。振動体200は、液体110を流動させることができる(この機構については後述する。)。本例では、振動体200は容器部100の下部に設けられているが、液体110に浸漬しうる位置であれば、容器部100のどの部分に設けられてもよい。
【0023】
駆動部300は、図4および図5に示すように、基材310の上に圧電体層320a,320bを有し、さらにその上に電極330a,330bを有する。図示のように駆動部300には、基材310の上に2つの圧電素子340a,340bが形成されている。
【0024】
基材310は、駆動部300の基体であり、駆動部300の機械的な出力を外部に取り出すための部材である。基材310の形状は、図示の例では円盤状であり、容器部100と接続することができるように周辺部が圧電体層320a,320bよりも外側に突出している。本例においては、基材310は、容器部100の内壁の一部を兼ねている。基材310は、圧電体層320a,320bにより変形されることができる。圧電体層320a,320bは別体で図示したが、一体に形成すれば尚好ましい。基材310は、変形することにより接続された振動体200などの他の部材を移動させることができる。本実施形態の基材310は、図6に示すように、面外の屈曲変形が可能である。本実施形態では、基材310の中央部に、接続治具312が設けられ、接続治具312を介して振動体200が設けられている。したがって、基材310が変形することにより、振動体200が位置を移動することができる。基材310の材質は、任意であるが、図示の例では、導電性を有する材質を用いている。そのため、基材310は、圧電体層320a,320bに電界を印加するための対となる電極の一方の電極となっている。また、図示の例では、基材310は、その上の圧電体層320a,320bのための共通電極として構成されている。基材310が導電性を有さない材質からなる場合は、圧電体層320a,320bに電界を印加するために、基材310の上に導電層等を設ければよい。
【0025】
圧電体層320a,320bは、基材310の上に設けられる。圧電体層320a,320bは、それぞれ電界が印加されることにより基材310の面内方向に伸縮する。圧電体層320a,320bの伸縮に伴って、基材310が図6に示したように変形する。この変形により振動体200は、厚み方向に振動することができる。圧電体層320a,320bの伸縮は、印加する電圧の極性や、圧電体層320a,320bを分極させる方向により任意に設計することができる。図4および図5の例では、圧電体層320a,320bの分極方向および電極330a,330bに印加される電界の方向が、圧電素子340a,340bが並ぶ方向(A−A線に沿う方向)に伸縮できるように構成されている。圧電体層320a,320bは、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O)などの圧電材料から形成されることができる。
【0026】
電極330a,330bは、圧電体層320a,320bを挟んで基材310に対向して設けられる。電極330a,330bは、圧電体層320a,320bに電界を印加するための対となる電極のうちの一方の電極である。電極330a,330bは、基材310を伸縮するための電力を供給する。電極330a,330bは、導電性の材料で形成される。
【0027】
振動体200は、図1ないし図5に示すように、駆動部300の基材310に接続治具312を介して設けられている。振動体200は、駆動部300の変形によって振動体200が移動する方向が振動体200の厚み方向となるように設けられている。振動体200は、厚み方向の位置を連続して移動することができる。このような連続した動作が振動であって、振動の方向は、振動体200の厚み方向に成分を有する方向(図中両方向の矢印で示す振動方向Bに沿う方向)である。振動体200は、駆動部300が動作したときに、厚み方向に動作の成分を有する向きに設けられていればよい。振動体200と基材310との接合は、駆動部300の動作が振動体200に伝達できる限り、接続治具312等の他の部材を介さなくてもよい。
【0028】
次に振動体200の形状について述べる。振動体200は、板状の形状を有する。図7に示すように、振動体200は、面内方向の端部220の少なくとも一部(端部240)が、端E1に向かって連続的に薄くなっている。振動体200は、少なくとも端E1に向かって連続的に薄くなっている部分(端部240)が液体110に浸漬されていればよい。振動体200は、厚み方向Xに垂直な面(図7において点影で示した面)に対して角度φで傾斜した斜面T1および角度ψで傾斜した斜面T2を有している。
【0029】
本実施形態において、板状物体の厚み方向とは、板状物体を内包し、かつ体積が最小となる直方体の最短の辺に沿う方向を指す。ただし、直方体の最短の辺に沿う方向に垂直な面に対して傾斜した斜面を有さない場合については、厚み方向は、前記直方体の2番目に短い辺に沿う方向とする。たとえば、振動体200の形状が、図8に示したような形状である場合には、厚み方向は、原則としては、図8の第2方向となるが、第2方向に垂直な面(図8において点影で示した面)に対して、傾斜した斜面を有さない。そのため、このような場合は、例外として、振動体20の厚み方向は、図8の第1方向とする。
【0030】
次に、振動体200の動作について詳述する。図9(a)、図9(b)および図9(c)は、振動体200の作用を模式的に示した断面図である。図9は、振動体200の斜面T1および斜面T2が、液体に浸漬された状態で、運動する様子を示している。図9(a)および図9(b)は、振動体200が、実線の矢印の示す方向に運動したときの様子である。図9(c)は、振動体200が、実線の両方向の矢印の方向に往復振動した様子を示す。図9(a)〜図9(c)の破線の矢印は、液体の流動の様子を模式的に示している。
【0031】
図9(a)に示すように、振動体200が矢印の方向に移動したとき、斜面T2側に存在する液体は、斜面T2に押され、斜面T2に沿うような流れを生じる(左側の破線の矢印参照)。一方、このとき、斜面T1側に存在する液体には、斜面T1に引っ張られ、斜面T1に沿った流れを生じる。しかし、斜面T1側の液体は、斜面T1に引っ張られるため、斜面の移動速度が大きいと流れの乱れが大きく、該液体の流れの速度は、斜面T2側の液体の流れの速度よりも小さい(右側の破線の矢印参照)。したがって、振動体200の周囲に生じる液体の流れとしては、斜面T2側および斜面T1側に存在する液体の流れの和となり、振動体200が薄くなる方向に液体の流れを生じる。同様に、図9(b)に示すように、図9(a)と反対の方向に振動体200が移動する場合、振動体200の周囲の液体には、振動体200が薄くなる方向に流れが生じる。
【0032】
図9(c)では、振動体200が、実線の両方向の矢印の方向に往復振動する。そのため、振動体200の周囲に生じる液体の流れは、図9(a)および図9(b)で示した、合計4本の破線の矢印で表した液体の流れの和となる。したがって、振動体200が厚み方向に振動した場合、振動体200の周囲の液体は、振動体200が薄くなってゆく方向(図中矢印dの方向)に流れを生じることになる。
【0033】
振動体200が厚み方向に振動され、図9(c)に示したような液体の流れを生じることのできる振動体200の形状は、次のようなものである。(1)振動体200は、面内方向の端部22の少なくとも一部が、端に向かって薄くなっている。(2)振動体200は、振動方向に垂直な面に対して傾斜している斜面を少なくとも1つ有する。そして、該斜面は、平面に限らず曲面であってもよい。
【0034】
振動体200および駆動部300を合わせた全体、または、振動体200は、それぞれ共振周波数を有する。上述した振動は、該共振周波数の近傍であると、エネルギーの損失が小さくなり、液体110の流れをより効率よく生じさせることができる。また、振動体200を振動させる周波数は、自由に設定することができる。この振動の周波数は、振動体200や液体カートリッジ100の形状、大きさ、および、液体の性状を考慮して最適化されることができる。たとえば、振動体200を振動させる場合の振動の周波数は、20kHzないし1MHzとすることができる。振動体200は、液体の種類によって、振動の周波数や振幅、斜面の大きさや角度などを適宜調整することにより、液体の流動の特性を変えることができる。
【0035】
以上のように、振動体200が駆動部300によって振動され、液体110が流動する様子は、図1の破線矢印で示した。振動体200の端部220が薄くなってゆく方向(図1においては振動体200の右方向)に液体の流れが生じている。これにより、容器部100の内部の液体110のかくはん、または流動が可能となる。このように、液体カートリッジ1000は、スクリュー等回転軸を有する機構を有さないため、かくはん、流動のために占有する空間が非常に小さい機構で、容器部100に貯留された液体110をかくはん、流動させることができる。
【0036】
1.2.液体カートリッジの製造方法
本実施形態の液体カートリッジ1000は、たとえば、以下のように製造することができる。液体カートリッジ1000は、容器部100、駆動部300および振動体200をそれぞれ製造し、これらを接合することによって製造することができる。
【0037】
駆動部300の製造方法としては、基材310に圧電体層320a,320bを形成する工程、圧電体層320a,320bの上に電極330a,330bを形成する工程を有することができる。基材310に圧電体層320a,320bを形成する工程は、たとえば、ゾルゲル法、CVD(Chemical Vapor Deposition)によることができる。電極330a,330bを形成する工程は、スパッタ法、蒸着法等にて行うことができる。また、圧電体層320a,320bの分極処理は、基材310および電極330a,330bに電界を印加することにより行うことができる。
【0038】
振動体200は、たとえば、金属板を加工することにより製造することができる。上記のように製造した駆動部300と、振動体200との接合は、例えば、溶接、接着、ねじ等治具による固定などにより行うことができる。
【0039】
容器部100は、たとえば、ポリエチレン等の樹脂を射出成形して製造することができる。そして容器部100に上記の駆動部300および振動体200を組み立て、液体カートリッジ1000を製造することができる。
【0040】
1.3.変形例
本実施形態の液体カートリッジは、以下に述べるように様々な変形実施が可能である。
【0041】
図10は、変形例にかかる液体カートリッジ2000を模式的に示す断面図である。図11は、液体カートリッジ2000の振動体200および駆動部300を模式的に示す断面図である。図12は、液体カートリッジ2000の振動体200および駆動部300を模式的に示す平面図である。図12のA−A線断面が図11に相当する。
【0042】
液体カートリッジ2000は、駆動部300の構成および動作が液体カートリッジ1000と異なる以外は、液体カートリッジ1000と同様である。液体カートリッジ2000の駆動部300は、図11および図12に示すように、基材310が長手方向に伸縮振動することができ、振動体200が厚み方向に振動するものである。本変形例の駆動部300は、図11および図12に示すように、板状の基材310と、圧電素子340c,340dから構成される。基材310は、圧電素子340c,340dの共通する電極となっている。基材310は、一体的に形成された固定部316を有し、該固定部316を用いて固定部材350によって容器部100に固定されている。図11に示すように、板状の基材310の上および下にそれぞれ1つずつ圧電素子340c,340dが設けられている。各圧電素子は、液体カートリッジ1000と同様に構成されている。基材310に設けられた各圧電素子は、基材310が長手方向(図12においてはA−A線の方向)に伸縮するように駆動される。基材310が長手方向に伸縮すると、振動体200は、厚み方向に位置を移動し、振動することができる(振動体200の移動方向は、図中矢印Bで示した。)。なお、本変形例では、振動部200、接続治具312、および基材310の一部が液体110に浸漬される。そして、基材310が容器部100の壁を図10に示すようなシーリング102によって貫通している。シーリング102は、液体110を漏出させず、かつ基材310の動作を妨げない機能を有している。シーリング102は、たとえば、ゴム等の樹脂材料で構成される。シーリング102は、回転軸等をシーリングするものと異なり、非常に単純な構造を有する。このように駆動部300を変形した液体カートリッジ2000によっても、上述と同様に振動体200が厚み方向に振動され、図中破線の矢印で示したように、容器部100内の液体110をかくはん、または流動させることができる。
【0043】
図13は、他の変形例にかかる液体カートリッジ3000を模式的に示す断面図である。図14は、液体カートリッジ3000の振動体200および駆動部300を模式的に示す断面図である。図15は、液体カートリッジ3000の振動体200および駆動部300を模式的に示す平面図である。図15のA−A線断面が図14に相当する。
【0044】
液体カートリッジ3000は、振動部200の動作が上述の液体カートリッジ2000と異なる点、容器部100に流路部400が設けられている点以外は、液体カートリッジ2000と同様である。液体カートリッジ3000の振動体200は、図14に示すように、基材310の長手方向と、振動体200が薄くなってゆく方向が一致している。本変形例の駆動部300は、液体カートリッジ2000の場合と同様に、基材310の長手方向に伸縮振動する。図14に示すように、本変形例の振動体200は、重心G1が、基材310の振動のライン314から外れるように設けられている。振動体200には、駆動部300によって駆動された際に回転のモーメントが生じるため、振動体200は、厚み方向に動作の成分を有して振動することができる。したがって、駆動部300によって、振動体200が振動させられると、振動体200は、厚み方向に振動することができる(振動方向は、図13、図14中に矢印Bで示した。)。振動体200は、本変形例においても、液体110に浸漬されており、図13の破線矢印aに示すように、液体110を流動させることができる。
【0045】
液体カートリッジ3000は、図13に示すように、流路部400を有することができる。流路部400は、容器部100と一体的に形成することができる。流路部400は、容器部100に貯留されている液体110を外部へ取り出したり、流路部400を通じて液体110を容器部100の内部に導入したりすることができる。本変形例の液体カートリッジ3000では、流路部400は、管状となっており、その内部に液体110を有している。本変形例の液体カートリッジ3000は、流路部400内の液体110に、振動体200が浸漬されている。振動部200が流路部400内で振動すると、破線矢印aの方向に液体110の流れを生じさせるとともに、破線矢印bのような液体110の流れを生じさせることができる。このような流路部400を備えることで、たとえば粘性の大きい液体110を容器部100から取り出すことをより容易に行わせることができる。
【0046】
2.第2実施形態
2.1.液体ポンプ
本実施形態にかかる液体ポンプ4000について、図面を参照しながら説明する。図16は、液体ポンプ4000およびその使用例を模式的に示す断面図である。
【0047】
液体ポンプ4000は、内部を液体110が通過する管部500と、振動体200と、駆動部300と、を有する。振動体200および駆動部300は、上述した液体カートリッジと実質的に同様であるため、詳細な説明を省略する。液体ポンプ4000は、振動体200が厚み方向に振動することで液体110に流れを生じさせることができることを利用したポンプである。
【0048】
管部500は、筒状であり、液体110が内部を通過できる形状を有する。管部500の壁材502は、たとえば、金属、樹脂等で構成される。振動体200は、管部500の内部に設けられる。振動体200は、振動体200が薄くなってゆく方向が、管部500の長手方向(管部500内部を液体110が流動できる方向)に一致するように配置される。壁材502の一部には、開口部504が設けられる。開口部502を通じて、振動体200を配置および振動させるための部材(基材310)が貫通している。開口部502には、第1実施形態で述べたと同様のシーリング506が設けられている。駆動部300の基材310は、振動体200を第1実施形態で述べたと同様に、厚み方向に振動させることができる。液体110に浸漬された振動体200が管部500内で振動することにより、液体110は、管部500の内部で流動することができる。駆動部300は、固定部材350によって、壁材502に固定されている。以上のように液体ポンプ4000が構成される。液体ポンプ4000の製造は、第1実施形態で述べた液体カートリッジの製造方法と同様に、管部500、駆動部300および振動体200をそれぞれ製造し、これらを接合することによって製造することができる。
【0049】
以上のように、液体ポンプ4000は、振動体200を厚み方向に振動させる機構により液体110を流動させることができるため、非常に簡易で小型に構成することができる。また、液体ポンプ4000は、管部500内部の液体110を流動させることができることから、液体110を流動させるポンプとして利用できる他に、次に述べるような使用が可能である。
【0050】
図16に示すように、液体ポンプ4000に管等を用いて、熱交換器600を結合することができる。これにより液体110は、液体ポンプ4000によって、循環することができる。このようにすれば、たとえば、循環型の熱交換機構として使用することができる。この場合、熱交換器600は、複数設けられてもよい。
【0051】
図16に示す構成は、占有する空間スペースを非常に小さくすることもできる。したがって、このような液体ポンプ4000は、たとえば、電子機器における放熱機構として利用できる。この場合、液体110としては、熱媒体機能を有する物質を選ぶことができ、熱交換器600としては、各種のチラーを選択することができる。そして、たとえば、電子計算機のCPU等のチップの冷却、プロジェクターのランプ等の熱源の冷却に好適に使用することができる。
【0052】
以上のように、本発明の実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態にかかる液体カートリッジ1000を模式的に示す断面図。
【図2】実施形態の駆動部300および振動体200を模式的に示す斜視図。
【図3】実施形態の駆動部300および振動体200を模式的に示す斜視図。
【図4】実施形態にかかる駆動部300および振動体200を模式的に示す平面図。
【図5】実施形態にかかる駆動部300および振動体200を模式的に示す平面図。
【図6】実施形態の基材310および振動体200の動作を模式的に示す概略図。
【図7】実施形態にかかる振動体200を模式的に示す斜視図。
【図8】実施形態にかかる振動体200を模式的に示す斜視図。
【図9】実施形態にかかる振動体200の作用を模式的に示す概略図。
【図10】変形例にかかる液体カートリッジ2000を模式的に示す断面図。
【図11】変形例の駆動部300および振動体200を模式的に示す断面図。
【図12】変形例の駆動部300および振動体200を模式的に示す平面図。
【図13】変形例にかかる液体カートリッジ3000を模式的に示す断面図。
【図14】変形例の駆動部300および振動体200を模式的に示す断面図。
【図15】変形例の駆動部300および振動体200を模式的に示す平面図。
【図16】実施形態にかかる液体ポンプ4000を模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0054】
100 容器部、102 シーリング、110 液体、200 振動体、220,240 端部、300 駆動部、310 基材、312 接続治具、314 ライン、316 固定部、320a〜320f 圧電体層、330a〜330f 電極、340a〜340f 圧電素子、350 固定治具、400 流路部、500 管部、502 壁材、504 開口部、506 シーリング、600 熱交換器、1000〜3000 液体カートリッジ、4000 液体ポンプ、T1,T2 斜面、E1 端、B 振動方向、X 厚み方向、G1 重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する容器部と、
前記液体に浸漬され、前記液体を流動させる板状の振動体と、
前記振動体を厚み方向に振動させる駆動部と、
を有し、
前記振動体の面内方向の端部の少なくとも一部は、端に向かって連続的に薄くなっている、液体カートリッジ。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、前記容器部に連通する流路部を有し、
前記流路部は、内部に前記液体を流通させる、液体カートリッジ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記駆動部は、前記振動体を屈曲させて振動させる、液体カートリッジ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、
前記駆動部は、前記振動体全体の位置を移動させて振動させる、液体カートリッジ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
少なくとも前記振動体の薄くなっている領域が、前記液体に浸漬され、
前記液体は、前記振動体の厚み方向に垂直な方向、かつ、前記振動体が薄くなってゆく方向に速度成分を有して流動される、液体カートリッジ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかにおいて、
前記駆動部は、圧電素子を有する、液体カートリッジ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、
前記振動体が振動する周波数は、前記振動体の共振周波数、または前記振動体と前記駆動部とを含む全体の共振周波数である、液体カートリッジ。
【請求項8】
内部を液体が通過する管部と、
前記液体に浸漬され、前記液体を前記管部内で流動させる板状の振動体と、
前記振動体を厚み方向に振動させる駆動部と、
を有し、
前記振動体の面内方向の端部の少なくとも一部は、端に向かって連続的に薄くなっている、液体ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−103023(P2009−103023A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274729(P2007−274729)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】