説明

液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法

【課題】より高品質の印刷物を得ることができるようにした、液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法を提供する。
【解決手段】帯電した粒子状のトナーが液体のキャリア中に分散されている液体トナーを感光体上に転写することで現像したトナー画像を被印刷物Sに転写し、被印刷物Sに転写された液体トナーの内のトナーを被印刷物Sに定着させる液体トナー定着装置であって、
被印刷物Sに転写された液体トナーの内のトナーを被印刷物に定着させるトナー定着手段8と、トナー定着手段8よりも被印刷物Sの搬送方向上流側に配設され、被印刷物Sに転写された液体トナーの内のキャリアを蒸発させて除去するキャリア除去手段5〜7とを有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のキャリアに分散したトナーを用いて印刷を行う液体現像電子印刷機及びこれに用いる液体トナー定着装置並びにトナー定着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、帯電した熱可塑性樹脂及び色素(顔料等)によって構成されトナーが液体現像剤(キャリア)内に分散された液体トナーを用いて感光体に形成された静電潜像を現像し、液体トナーを被印刷物の表面に転写し、転写された液体トナー中のトナーを被印刷物に定着させることにより印刷を行う印刷機(以下、液体現像電子印刷機という)が実用化されている。
【0003】
液体現像電子印刷機は、液体トナーを用いない乾式の電子写真装置と比較して、粒子径が大幅に小さいトナーであってもトナーの飛散などの不具合が生じることなく良好に用いることができるという利点がある。粒子径が小さいトナーを用いて印刷を行うことにより、色調品質が向上することができるのに加え、被印刷物(例えば印刷用紙)の質感を反映させることができる等、印刷品質が大幅に向上するという利点がある。
【0004】
このような液体現像電子印刷機は、一般に、一対の定着ローラにより被印刷物に転写された液体トナーを加熱及び加圧することで、被印刷物上の液体トナー中のキャリアを蒸発させるとともにトナーを溶融させて被印刷物の表面に定着(固定)させるトナー定着部を有している(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の技術のように一対の定着ローラにより液体トナーを加熱及び加圧するように構成すれば、被印刷物上において加熱により液体トナー中のトナーを溶融させた上で溶融したトナーを被印刷物に押し付けることができるので、トナーを定着させると同時に被印刷物表面のトナーの定着面が均されて良好な印刷面を得ることができる。
【特許文献1】特開2007−171529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液体現像電子印刷機において良好にトナー画像を形成するためには、当然ながら、液体トナー中のトナーがキャリアに溶解しない性質であることが必要である。
ところが、液体現像電子印刷機においてトナーを被印刷物に定着させる際には、トナーがキャリアに溶解しない性質であることが、トナー定着部においてトナーの被印刷物に対する定着性を低下させる一因となっていることを本発明者らは見出した。
【0006】
即ち、トナー定着部において加熱により溶融したトナーとキャリアとの相溶性が非常に悪いため、被印刷物上のキャリアと溶融したトナーとが分離してしまい、トナーが被印刷物に浸透及び定着することが阻害されるのである。
また、トナー定着部では図8に示すように一対の定着ローラ101,102により形成されるニップ部Nにおいて被印刷物100を加熱及び加圧するため、ニップ部Nにおいて被印刷物が略密閉状態となり、加熱によるキャリアの蒸発が十分に促進されないことも被印刷物に対するトナーの定着性の低下の要因となっている。
【0007】
このように、トナーの定着性が低下すると、印刷された絵柄を形成するトナーが被印刷物から剥離し易くなる等、印刷品質が低下してしまう。
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、被印刷物に対するトナーの定着性を向上させ、より高品質の印刷物を得ることができるようにした、液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の液体トナー定着装置(請求項1)は、帯電した粒子状のトナーが液体のキャリア中に分散されている液体トナーを感光体上に転写することで現像したトナー画像を被印刷物に転写し、上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させる液体トナー定着装置であって、上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させるトナー定着手段と、上記トナー定着手段よりも上記被印刷物の搬送方向上流側に配設され、上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記キャリアを蒸発させて除去するキャリア除去手段とを有していることを特徴としている。
【0009】
また、上記トナー定着手段は、上記液体トナーが転写された上記被印刷物を加熱及び加圧することにより上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させるように構成されていることが好ましい(請求項2)。
これにより、トナーを加熱及び加圧することでトナーを溶融させた上で溶融したトナーを被印刷物に押し付けることができるのでトナーの凹凸が均され、被印刷物に対して効果的にトナーを定着させることができるとともに良好な印刷面を得ることができる。
【0010】
また、上記キャリア除去手段は、上記液体トナーが転写された上記被印刷物を昇温させる被印刷物昇温装置を有していることが好ましい(請求項3)。
被印刷物を昇温させることにより液体キャリアの蒸発を促進させて効果的に除去することができる。また、トナー定着手段に搬入される前に被印刷物を予加熱することができ、トナー定着手段における加熱量を低減することができる。
【0011】
また、上記被印刷物昇温装置は、上記液体トナーが転写された上記被印刷物に閃光を照射して上記被印刷物を昇温させる閃光照射装置を有していることが好ましい(請求項4)。
被印刷物を昇温させることにより液体キャリアを蒸発させて効果的に除去することができる。また、閃光により被印刷物を瞬時に昇温させることができる上、閃光により昇温させることで熱源の過照射による被印刷物の過度の昇温を防止することができる。
【0012】
また、上記被印刷物昇温装置は、上記閃光照射装置よりも、上記シート搬送方向上流側に配設され、上記液体トナーが転写された上記被印刷物を予め昇温させる被印刷物予加熱手段を有していることが好ましい(請求項5)。
一般に、閃光照射装置は消費する被印刷物の昇温にかかるエネルギ効率が比較的良好でなく、ランニングコストの増大の要因となるが、閃光照射装置によって被印刷物を昇温させる前に、よりエネルギ効率のよい被印刷物予加熱手段によって被印刷物を予加熱しておくことで、閃光照射装置の出力電力を低減することができ、装置全体としてのランニングコストを低下させることができる。
【0013】
また、上記キャリア除去手段は、上記トナー定着手段と上記被印刷物昇温装置との間に配設され上記被印刷物上のキャリアの蒸発を促進させるための送風機を有していることが好ましい(請求項6)。
昇温された被印刷物に空気流を作用させることにより被印刷物中の水蒸気及びキャリアの蒸発をさらに促進させることができる。
【0014】
なお、送風機により生じさせる空気流の流向は特に限定するものではないが、被印刷物の印刷面付近の空気圧が周囲に対して負圧となるように送風機を配設することが好ましい。例えば、被印刷物付近の空気を吸引する方向に送風機を配設してもよく、あるいは、被印刷物に対して側方から層状の空気流を送風するようにしてもよい。
被印刷物の印刷面付近の空気圧が周囲に対して負圧とすることにより、被印刷物からのキャリアの蒸発をより促進することができる。
【0015】
また、上記被印刷物を載置する載置部に開口を有する開口付搬送ベルトを有し、上記被印刷物は上記開口付搬送ベルト上に載置された状態で上記キャリア除去手段を搬送されるように構成されていることが好ましい(請求項7)。
この開口付搬送ベルトは、複数の開口部を有する載置ベルトが被印刷物の幅方向に間欠的に連続するように構成された、いわゆるサクションベルトであることが好ましい。
【0016】
これによれば、単なる無端ベルト上を搬送される場合と比較して、被印刷物と空気との接触面積が増大するので、被印刷物中の水蒸気及び液体キャリアの蒸発をさらに促進させることができる。
また、上記被印刷物の端部を把持した状態で搬送するチェーングリッパを有し、上記被印刷物は上記チェーングリッパに把持された状態で上記キャリア除去手段を搬送されるように構成されていることが好ましい(請求項8)。
【0017】
これにより、被印刷物と空気との接触面積がさらに増大するので、被印刷物中の水蒸気及び液体キャリアの蒸発をさらに効果的に促進させることができる。さらに、トナー定着面の反対側の面(裏面)が被印刷物の搬送手段であるチェーングリッパと非接触であるので、両面印刷時においても裏面画像が温度上昇により軟化しても擦れ等の画像みだれを生じる恐れがない。
【0018】
また、上記キャリア除去手段は、上記被印刷物昇温装置に対して上記被印刷物の搬送経路を挟んで対向して配設され上記被印刷物側からの空気を吸引する吸引手段を有していることが好ましい(請求項9)。
被印刷物の搬送経路を挟んだ反対側から空気を吸引することにより、被印刷物中の水分及び液体キャリア及びその蒸気を裏面側に吸い寄せ、トナーの定着をさらに促進させることができる。
【0019】
また、本発明の液体現像電子印刷機(請求項10)は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体トナー定着装置と、帯電した上記液体トナーを静電潜像の形成された感光体上に転写することで現像を行う現像ユニットと、上記感光体と上記被印刷物との間に配置され、上記感光体上の上記液体トナーを上記被印刷物に転写する中間転写体と、を有していることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の液体トナー定着方法(請求項11)は、帯電した粒子状のトナーが液体のキャリア中に分散されている液体トナーを感光体上に転写することで現像したトナー画像を被印刷物に転写し、上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させる液体トナー定着方法であって、上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させるトナー定着ステップと、上記トナー定着ステップに先立って実行され上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記キャリアを蒸発させて除去するキャリア除去ステップとを有していることを特徴としている。
【0021】
また、上記トナー定着ステップでは、上記トナーが転写された上記被印刷物を加熱及び加圧することにより上記トナーを上記被印刷物に定着させることが好ましい(請求項12)。
また、上記キャリア除去ステップは、上記液体トナーが転写された上記被印刷物を昇温させる被印刷物昇温ステップを有していることが好ましい(請求項13)。
【0022】
また、上記被印刷物昇温ステップは上記液体トナーが転写された上記被印刷物に閃光を照射して上記被印刷物の温度を昇温させる閃光照射ステップを有していることが好ましい(請求項14)。
また、上記被印刷物昇温ステップは、上記閃光照射ステップに先立って、上記液体トナーが転写された上記被印刷物を予め昇温させる被印刷物予加熱ステップを有していることが好ましい(請求項15)。
【0023】
また、上記キャリア除去ステップは、上記被印刷物昇温ステップが実行されてから上記トナー定着ステップが実行される迄の間に上記被印刷物上に対して送風する送風ステップを有していることが好ましい(請求項16)。
また、上記キャリア除去ステップにおいて、上記被印刷物は、載置部に開口を有する開口付搬送ベルト上に載置された状態で搬送されていることが好ましい(請求項17)。
【0024】
また、上記キャリア除去ステップにおいて、上記被印刷物は、上記被印刷物の端部を把持するチェーングリッパに把持された状態で搬送されていることが好ましい(請求項18)。
また、上記キャリア除去ステップは、上記被印刷物昇温ステップと同時に実行され、上記被印刷物の搬送経路を挟んで反対側から空気を吸引する吸引ステップを有していることが好ましい(請求項19)。
【発明の効果】
【0025】
本発明の液体トナー定着装置及び液体トナー定着方法並びに液体現像電子印刷機によれば、トナーの定着の阻害要因となる液体キャリアを事前に蒸発させて除去することにより、トナー定着手段における被印刷物に対するトナーの定着性が向上され、より高品質の印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。図1〜図4はいずれも本発明の第1実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機を説明するためのものであって、図1はその要部構成を模式的に示す図、図2は液体現像電子印刷機の概略構成を示す模式的な側面図、図3は現像ユニットの構成を模式的に示す図、図4は液体現像電子印刷機の動作手順を示すフローチャートである。
【0027】
(全体構成)
図2に示すように、液体現像電子印刷機50は、給紙部51,印刷部52,排紙部53から構成されている。給紙部51は、被印刷物として枚葉紙である印刷シートSを1枚ずつ給紙トレイ51Aからシート搬送経路10の一部をなす印刷部52へと給紙するように構成されている。そして、印刷部52は給紙された印刷シートSに対して印刷を行うように構成され、排紙部53は印刷部52により印刷された印刷シートSを排紙トレイ53Aに排紙するように構成されている。なお、液体現像電子印刷機50の下部はキャスタ50Aが取り付けられており、液体現像電子印刷機50の移動を容易にするように構成されている。
【0028】
なお、図2に示すシート搬送経路10は、印刷シートSが搬送される経路(搬送ルート)を示しており、本実施形態では、給紙トレイ52Aからニップ部N1を通過後、ニップ部N2を通過し排紙トレイ53Aへ至るように構成されている。
また、液体現像電子印刷機50には、コンピュータ及び表示装置並びに入力端末を備えた制御装置60と信号線で接続されており、液体現像電子印刷機50の各部を制御信号により制御しうるように構成されている。なお、制御装置60を液体現像電子印刷機50に内蔵するように構成してもよい。
【0029】
(トナー転写部の概略構成)
本実施形態にかかる液体現像電子印刷機50はプロセスカラー印刷を行うことが可能に構成されており、印刷部52には、K(墨),C(藍),M(紅),Y(黄)のプロセスカラー各色に対応する4つの現像ユニット1A〜1Dがそなえられている。
印刷部52は、各現像ユニット1A〜1D,中間転写体2,ブレードユニット3,バックアップローラ4,被印刷物予加熱装置としてのオーブン(被印刷物予加熱手段,被印刷物昇温装置)5,キャリア除去装置としての閃光照射装置(キャリア除去手段,被印刷物昇温装置)6,ファン(送風機)7,一対の加熱ローラ(トナー定着手段)8及び搬送ベルト9を有して構成されている。
【0030】
各現像ユニット1A〜1Dは、中間転写体2の周囲に配設され、それぞれ制御装置60から送信された画像データに基づいて、感光体上に静電潜像の形成し、静電潜像に対応する位置に液体トナー20(図3も参照)を感光体11から中間転写体2に転写するように構成されている。なお、各現像ユニット1A〜1Dの詳細な構成については後述する。
なお、液体トナー20は、電荷が負荷された熱可塑性素材と色素素材(顔料あるいは染料)とにより形成されるトナー粒子が液体状のキャリア中に分散配合されたものであり、ここでは、パラフィン系の溶液に、平均粒径1μm程度のトナー粒子が重量比で20〜40パーセント程度含有されたものが用いられている。
【0031】
中間転写体2とバックアップローラ4とは互いに当接しており、当接部分にニップ部(転写位置)N1が形成されている。
中間転写体2の外周面は、例えば、ウレタン系導電性ゴムや導電性樹脂等で構成されており、中間転写体2には、例えば、−200〜−300V程度の中間転写バイアスが印加されている。
【0032】
このニップ部N1において中間転写体2から印刷シートSに液体トナー20による画像が転写されるようになっている。
また、中間転写体2の周囲には、中間転写体2の回転方向でニップ部N1よりも下流側の位置にブレードユニット3が配設されており、印刷シートSに転写した後に中間転写体2の周面に残存した液体トナー20をブレードで掻き取って除去しうるように構成されている。
【0033】
一方、バックアップローラ4は、中間転写体2へ対して所定の圧力、例えば、1〜13kg/cm程度で圧力を加えるように配設されており、中間転写体2とバックアップローラ4との間を搬送される印刷シートSを中間転写体2に押付ける機能を有している。また、バックアップローラ4には、例えば、−800V程度の転写バイアスが印加されており、中間転写体2から印刷シートSへの液体トナー20の転写を促進するようになっている。
【0034】
(トナー定着部周辺の構成)
以下、本発明の最も特徴的な部分であるトナーの印刷シートSへの定着にかかる装置構成について説明する。
中間転写体2とバックアップローラ4とのニップ部N1の下流側には、図1に示すように、オーブン5,閃光照射装置6,ファン7及び一対の加熱ローラ8がシート搬送経路10に沿って順に配設されている。
【0035】
また、搬送ベルト9は、印刷シートSを載置した状態で搬送する無端ベルト(エンドレスベルト)により構成されており、ここでは、オーブン5及び閃光照射装置6の下部に2個配設されている。
オーブン5は、ここでは、ハロゲンランプを熱源とするハロゲンヒータによって構成されており、印刷シートSが閃光照射装置6を通過するのに先立って印刷シートSを摂氏130度〜150度程度の雰囲気にさらし、昇温させるように構成されている。これは、オーブン5により、あまり高温で加熱すると万一装置が停止した場合、オーブン5近傍に入っていた紙等の被印刷物が存在した場合余熱で発火する虞があるためである。
【0036】
なお、被印刷物予加熱手段としてはハロゲンヒータに限らず、赤外光あるいは熱風を照射するように構成してもよい。
閃光照射装置6は、キセノンフラッシュランプによって構成されており、図1に示すように、印刷シートSが閃光照射装置6の下部を搬送されるタイミングに合わせて印刷シートSの表面に瞬間的に閃光を照射させるようになっている。また、閃光照射装置6は瞬間的に印刷シートSを摂氏140度〜200度程度にまで昇温させるように閃光の出力が設定されている。
【0037】
ファン7は、印刷シートSのトナーが転写されている面から離れる向き(図1中、矢印Qが示す方向)に空気流を発生させるように配設されており、図示しないモータにより駆動するようになっている。これにより、シート搬送経路10周辺のファン7側の空気圧が周囲に対して負圧となるようになっている。
なお、閃光照射装置6の閃光照射タイミング及び出力並びにファン7の駆動は制御装置60によって制御されるようになっている。
【0038】
また、ファン7は、シート搬送経路10の側方から側方から層状の空気流を形成するように配置して印刷シートSの上面側に負圧を形成するように構成してもよい。
加熱ローラ8は、一対のローラ8A,8Bによって構成されている。ローラ8Aは、表面に導電性フッ素コートが施された金属製のローラで、図示しない加熱源によって表面温度が、例えば、摂氏170度程度に設定されている。一方、ローラ8Bは、導電性を有するウレタンゴムで形成されている。
【0039】
なお、各ローラ8A,8B間には、印刷シートS上に転写されたキャリア中のトナーがローラ8A側に移動するような電場が形成されている。ここでは、ローラ8Aが接地されるとともにローラ8Bにトナーと同一極性の電荷が印加されている。
また、一対のローラ8A,8Bは互いに当接しており、印刷シートSが通過する際にローラ8A,8Bにより互いに印刷シートSを加圧しうるニップ部N2が形成されている。
【0040】
(現像ユニットの構成)
ここで、各現像ユニット1A〜1Dに詳細な構成について説明する。なお、各現像ユニット1A〜1Dはトナーの色と中間転写体2に対する配置位置を除いては同様に構成されているため、1つの現像ユニット(特に指定しない場合には以下、現像ユニット1と記載する)の構成についてのみ説明し、各現像ユニット1A〜1D毎の説明は省略する。
【0041】
現像ユニット1は、感光ドラム(感光体)11,クリーニングユニット12,除電器13,感光体帯電装置14,露光装置15及び現像装置16を有して構成されている。
感光ドラム11の周面には、アモルファスシリコン(a−Si)や感光性ポリマー等の感光剤を含んで形成された感光層11Aが形成されている。
感光ドラム11は、ニップ部N3において中間転写体2と当接しており、感光ドラム上の液体トナー20を中間転写体2側に転写しうるように構成されている。
【0042】
一方、感光ドラム11の周囲には、ニップ部N3を起点として感光ドラム11の回転方向に沿って、クリーニングユニット12,除電器13,感光体帯電装置14,露光装置15及び現像装置19がそれぞれ順に感光層11Aに対向して配設されている。
クリーニングユニット12は、クリーニングローラ12A,ブレード12B,12C,トナー排出口12を有して構成されており、感光体11の周面に残存している液体トナー20を除去して図示しないトナー回収路に排出するように構成されている。
【0043】
より具体的に説明すると、クリーニングローラ12Aは、感光ドラム11に接して従動方向に回転するように配設されており、感光ドラム11の周面に残存する液体トナー20を回収するようになっている。
また、ブレード12Bは、弾性材料で形成された矩形状の板体であり、一方の長辺部が感光ドラム11の周面に接触するように配設されており、クリーニングローラ12Aで除去できなかった感光ドラム11周面の液体トナー20を掻き取って感光ドラム11から液体トナー20を完全に除去するようになっている。
【0044】
ブレード12Cは、ブレード12Bと同様に弾性材料で形成された矩形状の板体であり、一方の長辺部がクリーニングローラ12Aの周面に接触するように配設されている。そして、クリーニングローラ12Aの周面に付着した液体トナー20を掻き取って除去するようになっている。
そして、感光ドラム11から除去された液体トナー20は、トナー排出口12から排出されるようになっている。
【0045】
除電器13は、感光ドラム11の感光層11Aに残留する電荷を消去する機能を有している。
感光体帯電装置14は、コロトロン型あるいはスコロトン型等の非接触型放電方式の帯電器が感光ドラム11に沿って複数(ここでは3つ)配設されて構成されており、感光ドラム11の感光層11Aを一様に、例えば、500V程度に帯電させる機能を有している。
【0046】
露光装置15は、感光ドラム11の軸方向に沿って発光体(ここではLED)を棒状に配列された発光装置(つまりLEDアレイ)により構成されており、制御装置60から送られてくる画像データに基づいて、各LEDを発光させるようになっている。
つまり、感光体帯電装置14によって一様に帯電されている感光層11Aの表面に露光装置15からの光が照射されることにより、光の照射部分では感光層11Aの帯電が解除され、感光層11Aに画像データに基づいた静電潜像を形成しうるようになっている。
【0047】
なお、発光装置としては、LEDアレイの替わりに、画像データに基づいて半導体レーザー等を走査して静電潜像を形成するように構成してもよい。
現像装置16は、アニロックスローラ21,均しローラ22,現像ローラ23,トナー帯電器24,クリーニングローラ25,ブレード26,27,トナー供給口28及び液体トナー貯留部29を有して構成されており、感光ドラム11の静電潜像が形成された部分に液体トナー20を転写するようになっている。
【0048】
トナー貯留部29には、液体トナー20が貯留されており、アニロックスローラ21の一部が液体トナー20に浸されるようにトナー供給口28から液体トナー20が適宜供給されるようになっている。
アニロックスローラ21は、金属製のローラでありその周面には表面には液体トナー20を所望の膜厚で供給するのに適した凹部(セル)が全面に亘って形成されている。アニロックスローラ25は、感光ドラム11と同方向(図3中の矢印の方向)に回転駆動されるようになっている。
【0049】
また、ブレード27は板状の高密度ポリエチレンで形成されており、その先端がアニロックスローラ21の周面に接してアニロックスローラ21の周面に付着した液体トナー20を掻き落としてアニロックスローラ21の周面上の液体トナー20の膜厚を所望の膜厚にするように設定されている。
均しローラ22はウレタンゴムで形成されている。そして、均しローラ22はアニロックスローラ21と現像ローラ23との間に配設されており、アニロックスローラ21及び現像ローラ23のそれぞれと接している。
【0050】
また、均しローラ22は、アニロックスローラ21との接点において互いの周面が同じ方向に進む向き(図3中の矢印の方向)に回転するように構成されている。
現像ローラ23は導電性ゴムで形成されており、感光ドラム11と接してニップ部N4を形成するように配設されている。また、現像ローラ23は、ニップ部N4において感光ドラム11の周面と現像ローラ23の周面とが同じ方向に進む向き(図3中の矢印の方向)に回転するように構成されている。換言すると、現像ローラ23は均しローラ22との接点において互いの周面が反対方向に進む向きに回転するように構成されている。
【0051】
また、現像ローラ23の周面の速度は感光ドラム11の周面の回転速度と同じ速度で回転するように構成されている。
このように、導電性を有する現像ローラ23と感光ドラム11とがニップ部N4で接することにより、現像ローラ23の周面から感光ドラム11の静電潜像が形成された部分へと帯電したトナー粒子を含む液体トナー20が転写され、現像が行われるようになっている。
【0052】
そして、現像された感光ドラム11の周面上の液体トナー20はニップ部N3において中間転写体2に転写され、中間転写体2の周面にトナー画像を形成するように構成されている。
なお、各現像ユニット1A〜1Dによってそれぞれ形成されるトナー画像は中間転写体2の周面の同位置に重なる位置であり、且つ、印刷シートSがニップ部N1を通過するタイミングに同期して、トナー画像が中間転写体2から印刷シートSの適切な位置に転写される位置に形成されるようになっている。
【0053】
トナー帯電器24は、現像ローラ23の周面に近接しており、ニップ部N4よりも現像ローラ23の回転方向上流側、且つ、現像ローラ23と均しローラ22との接面よりもローラ23の回転方向下流側に位置するように配設されている。
トナー帯電器24は、コロトロン型あるいはスコロトン型等の非接触型放電方式の帯電器であり、現像ローラ24上の液体トナーを荷電する機能を有している。
【0054】
クリーニングローラ25は、ニップ部N4よりも現像ローラ23の回転方向下流側において、現像ローラ23と接しており、感光体3へ転写されずに現像ローラ23の周面に残存した液体トナー20を除去するようになっている。
そしてブレード26は、クリーニングローラ25の周面に付着した液体トナー20を掻き落とすようになっている。
【0055】
(作用効果)
本発明の第1実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機はこのように構成されているので、図4に示すように、まず、ステップS100では、制御装置60からの信号に基づいて印刷が開始され、印刷シートSが1枚だけ給紙トレイ51Aから印刷部52へと給紙される。
【0056】
そして、ステップS110では、印刷部53では、各現像ユニット1A〜1Dにより、中間転写体2の周面にK(墨),C(藍),M(紅),Y(黄)のプロセスカラーに対応する各液体トナー20が重合したトナー画像が形成される。
続いて、ステップS120では、ステップS100において給紙トレイ51Aから給紙された印刷シートSが中間転写体2とバックアップローラ4とにより形成されたニップ部N1を通過し、中間転写体2の周面から印刷シートSへと各色の液体トナー20(トナー画像)同時に転写される。
【0057】
そして、ステップS130では、液体トナー20が転写された面が上面となるように印刷シートSが搬送ベルト9に載置された状態で搬送され、オーブン5により表面温度が摂氏50度〜110度程度にまで加熱される(被印刷物予加熱ステップ)。
そして、ステップS140では、搬送ベルト9に載置された印刷シートSに対して、閃光照射装置6により、閃光が照射され、印刷シートSの表面の画像部分(即ち、トナー部分)がさらに昇温される(閃光照射ステップ)。このとき、閃光による昇温による印刷シートSの表面温度は印刷シートS表面の画線率により異なり、ベタ部分(画線率100%)では摂氏160度以上である。非画像部は閃光によってはそれほど昇温されず、温度は低いが、トナーを定着させる必要がないないため、問題とならない。
【0058】
なお、ステップS130及びステップS140が被印刷物昇温ステップに相当する。ステップS130及びS140により昇温された印刷シートS上の液体トナー20からは、熱により液体トナー20中のキャリアの蒸発量が大幅に増大される。
さらに、ステップS150では、ファン7により形成された負圧によりステップS130及びS140において昇温された印刷シートS上の液体トナー20からのキャリアの蒸発がさらに促進され、印刷シートS上に転写された液体トナー20中のキャリアが除去される。即ち、ここでは、ステップS130〜S150がキャリア除去ステップに相当する。
【0059】
ステップS150において印刷シートSがファン7の下部を通過し、加熱ローラ8のニップ部N2に差し掛かるとステップS160として、各ローラ8A,8B間に形成された電場によって、印刷シートS上の液体トナー20の内のトナーが加熱されたローラ8A側に引き寄せられる。そして、ニップ部N2において各ローラ8A,8Bにより加圧されるとともにローラ8Aによって加熱される。これにより、トナーが溶融した上で印刷シートSに押し付けられて印刷シートS上に定着(固定)される(トナー定着ステップ)。
【0060】
トナーが固定された印刷シートSはステップS170として排紙部53を搬送される間に冷却されて排紙トレイ53Aに排出される。
そして、ステップS180では、制御装置60において印刷終了条件が成立しているか否かが判定され、印刷終了条件が成立していない場合にはステップS100に戻り次の印刷シートSの印刷が行われる。また、ステップS180において、印刷終了条件が成立していればそのまま印刷が終了される。
【0061】
なお、印刷終了条件は、その都度、制御装置60の入力端末等により設定される。
このように、本発明の第1実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法によれば、一対の加熱ローラ8により印刷シートSが加圧及び加熱されるのに先立って液体トナー20中のトナーの印刷シートSに対する定着の阻害要因となるキャリアが蒸発することにより除去されるので、印刷シートSに対するトナーの定着性が向上され、より高品質の印刷物を得ることができる。
【0062】
また、加熱ローラ8(ローラ8A)によってトナーを加熱し溶融させた上で溶融したトナーを被印刷物に押し付けることができるのでトナーの凹凸が均され、被印刷物に対して効果的にトナーを定着させることができる。このため、本発明の液体現像電子印刷機は、小ロット(数千枚程度)且つ他種類の印刷を高品質に行う場合に好適に適用できる。
また、閃光の照射(フラッシュ加熱)を行うことにシート搬送ライン10条において印刷シートSを瞬時に昇温させることができる。さらに、一定出力の閃光の照射により印刷シートSが昇温されるので、印刷シートSの搬送速度が多少変動した場合でも一定の熱量で印刷シートSを瞬時に昇温させることができる。
【0063】
ただし、Xeランプ(キセノンランプ)を光源として構成される閃光照射装置6は、一般的に、印刷シートSの昇温にかかるエネルギ効率が良好とはいえない。しかし、閃光照射装置6によって印刷シートSの昇温を実行する前に、閃光照射装置6と比較してエネルギ効率のよいオーブン5によって印刷シートSを予め加熱しておくことで、閃光照射装置6の出力を抑制しても十分に液体トナー20中のキャリアを蒸発させることができ、全体としてのエネルギ効率を向上させることができる。
【0064】
また、オーブン5及び閃光照射装置6の下流側においてファン7が印刷シートSから離れる方向に空気を送風するので、オーブン5及び閃光照射装置6により、昇温された印刷シートSの液体トナー20が転写された面(被印刷面)付近が周囲に対して負圧となり、印刷シートS中の水蒸気及びキャリアの蒸発をさらに促進させることができる。
また、一対の加熱ローラ8によってトナーを加熱し溶融させた上で溶融したトナーを印刷シートSの被印刷面に押し付けることができるので、印刷シートS上に定着されたトナーの凹凸が均され、印刷シートSに対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0065】
また、中間転写体2とバックアップローラ4とで形成されるニップ部N1から一対の加熱ローラ8により形成されるニップ部N2までのシート搬送経路10において、印刷シートSを昇温させることにより液体状のキャリアの蒸発を促進させて効果的に除去することができる。また、一対の加熱ローラ8のニップ部N2を通過する前に印刷シートSが予め加熱されているので一対の加熱ローラ8において印刷シートSに加える熱量を低減することができる。
【0066】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、一部の構成を除いて上述の第1実施形態と同様に構成されており、第1実施形態と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する。
図5に示すように、本実施形態では、搬送ベルト(開口付搬送ベルト)31の構成及びその周辺にかかる構成が第1実施形態と異なっている。また、本実施形態では、第1実施形態おけるオーブン5及びファン7については省略して構成している。
【0067】
搬送ベルト31は、図6に示すように、複数の開口部31Bを有する載置ベルト(載置部)31が印刷シートSの幅方向に所定の間隔31Cを有して(即ち、間欠的に)並列するように構成され、2つのベルト駆動ローラ31D,31Dにより駆動される無端ベルトとして構成されている。
そして、図5に示すように、駆動ローラ31D,31Dによりシート搬送方向に駆動される載置ベルト31A(上段側の載置ベルト)とシート搬送方向逆向きに駆動される載置ベルト(下段側の載置ベルト)との間には、載置ベルト31Aを挟んで閃光照射装置6と対向する位置に吸引ファン(吸引手段)32が配設されている。
【0068】
吸引ファン32は、図5中矢印Rによって示される方向(印刷シートSから離れる方向)に空気流を発生させるように構成されている。
そして、吸引ファン32の送風方向には下段側の載置ベルト31Aを挟んでフィルタ33が配設されている。
フィルタ33は、印刷シートSから蒸発したキャリア(特にキャリア)を吸着するようになっている。
【0069】
なお、本実施形態では、第1実施形態におけるオーブン5を省略して構成しているため、閃光照射装置6の出力は第1実施形態のものよりも高出力に設定されている。
また、吸引ファン32の替わりにサクションボックスを配設し、サクションボックスにより吸引したものをフィルタ33に導入するように構成してもよい。
【0070】
本発明の第2実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機は上述のように構成されているので、載置ベルト31Aの開口31B及び間隔31Cを通じて印刷シートSの搬送ベルト31側の面(以下、便宜上、裏面と呼ぶ)と外気との接触面積が増大するので、閃光照射装置6により昇温された印刷シートSの被印刷面からのみならず、裏面からのキャリア及び水蒸気の蒸発を促進させることになり、印刷シートSからのキャリアの蒸発をさらに効果的に促進させることができる。
【0071】
さらに、印刷シートSからの水蒸気及びキャリアは吸引ファン32により生じる空気流に沿って、フィルタ33に導かれフィルタ33により吸着されるので、有機溶媒であるキャリアが飛散することを抑制することができる。
【0072】
[第2実施形態の変形例]
続いて、本発明の第2実施形態の変形例について説明する。なお本変形例は、上述の第2実施形態とほぼ同様に構成されており、第2実施形態と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する。
【0073】
本変形例では、搬送ベルト31の替わりに印刷シートSの両側端部を共に把持した状態で搬送するチェーングリッパ35を用いて構成している点のみが第2実施形態のものと異なっている。
図7に示すように、チェーングリッパ35は、図示しない2個の歯車により無端状に構成された2本のチェーン35A,35Aが2本平行に並列して配設されている。
【0074】
各チェーン35Aには、複数のグリッパ35Bが等間隔に取り付けられている。グリッパ35B間の間隔は、印刷シートSのシート搬送方向長さよりも短く設定されている。
グリッパ35Bは、印刷シートSの側端部を把持するように構成されており、図示しない掴み離し機構により、所定の搬送位置で印刷シートSを把持し、別の所定の位置で印刷シートSの把持を解除するようになっている。
【0075】
本発明の第2実施形態の変形例にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機は上述のように構成されているので、第2実施形態のものよりもさらに印刷シートSの裏面と外気との接触面積が増大するので、印刷シートS中の水蒸気及び液体キャリアの蒸発をさらに促進させることができる。
また、吸引ファン32あるいはサクションボックスによる吸引によっての蒸発促進効果もより増大するという利点もある。
【0076】
さらに、印刷シートSの両面に印刷が可能な液体現像電子印刷機に適用した場合には、閃光照射装置6による閃光により、既にトナー定着されている既印刷面(裏面)のトナーが再び溶融することが生じた場合であっても、裏面のトナーが搬送ベルトに付着する等の不都合を回避することもできる。
【0077】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、第1実施形態における被印刷物予加熱手段(オーブン5),送風機(ファン7)等については適宜省略して構成してもよい。また、各実施形態及び変形例は、可能である限り適宜組み合わせて構成してもよい。例えば、第1実施形態の構成に第2実施形態及びその変形例にかかる搬送ベルトを設けるようにしてもよい。また、第1実施形態における送風機の送風方向にフィルタを配設して構成してもよい。
【0078】
さらに、上述の実施形態では、トナー定着手段としていずれも加熱ローラにより被印刷物を加熱及び加圧するように構成されているが、トナー定着手段としてはこれに限らず、被印刷物を単に加圧することによって被印刷物にトナーを定着させる加圧定着方式を適用してもよい。この場合でもトナーを定着させる前にトナー定着の阻害要因であるキャリアを除去することをトナーの定着性を向上させることができる。
【0079】
また、上述の実施形態では、被印刷物の一例として枚葉紙である印刷シートについて説明したが、被印刷物としては枚葉紙に限らず液体現像電子印刷機により印刷することが可能なものであるならば何にでも適用できる。例えば、枚葉紙の替わりに帯状の連続紙を被印刷物として連続的に印刷を行ってもよい。
なお、本発明にかかる液体現像電子印刷機は、印刷色数を限定するものではなく単色のみの印刷を行う印刷機として構成してもよいし、印刷シートの両面に印刷を行う両面印刷機に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法を説明するためのものであって、その要部構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法を説明するためのものであって、全体の概略構成を示す模式的な側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法を説明するためのものであって、現像ユニットの構成を模式的に示す側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法を説明するためのものであって、印刷手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法を説明するためのものであって、その要部構成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法を説明するためのものであって、開口付搬送ベルトを模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態の変形例にかかる液体トナー定着装置及び液体現像電子印刷機並びに液体トナー定着方法を説明するためのものであって、チェーングリッパを模式的に示す斜視図である。
【図8】液体現像電子印刷機にかかる従来技術を説明するためのものであってトナーを定着させるための定着ローラを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1,1A〜1D 現像ユニット
2 中間転写体
3 ブレードユニット
4 バックアップローラ
5 オーブン(被印刷物予加熱手段,被印刷物昇温装置)
6 閃光照射装置(被印刷物予加熱手段,被印刷物昇温装置)
7 ファン(送風機)
8 一対の加熱ローラ(トナー定着手段)
8A,8B ローラ
9 搬送ベルト
10 シート搬送経路
11 感光ドラム(感光体)
11A 感光層
12 クリーニングユニット
12B,12C ブレード
13 除電器
14 感光体帯電装置
15 露光装置
16 現像装置
20 液体トナー
21 アニロックスローラ
22 均しローラ
23 現像ローラ
24 トナー帯電器
25 クリーニングローラ
26,27 ブレード
28 トナー供給口
29 トナー貯留部
31A 載置ベルト
31B 開口
31C 間隔
31D ベルト駆動ローラ
32 吸引ファン
33フィルタ
35 チェーングリッパ
35A チェーン
35B グリッパ
50 液体現像電子印刷機
51 給紙部
51A 給紙トレイ
52 印刷部
53 排紙部
53A 排紙トレイ
60 制御装置
S 印刷シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した粒子状のトナーが液体のキャリア中に分散されている液体トナーを感光体上に転写することで現像したトナー画像を被印刷物に転写し、上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させる液体トナー定着装置であって、
上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させるトナー定着手段と、
上記トナー定着手段よりも上記被印刷物の搬送方向上流側に配設され、上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記キャリアを蒸発させて除去するキャリア除去手段とを有している
ことを特徴とする、液体トナー定着装置。
【請求項2】
上記トナー定着手段は、
上記液体トナーが転写された上記被印刷物を加熱及び加圧することにより上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させるように構成されている
ことを特徴とする、請求項1記載の液体トナー定着装置。
【請求項3】
上記キャリア除去手段は、
上記液体トナーが転写された上記被印刷物を昇温させる被印刷物昇温装置を有している
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の液体トナー定着装置。
【請求項4】
上記被印刷物昇温装置は、
上記液体トナーが転写された上記被印刷物に閃光を照射して上記被印刷物を昇温させる閃光照射装置を有している
ことを特徴とする、請求項3記載の液体トナー定着装置。
【請求項5】
上記被印刷物昇温装置は、
上記閃光照射装置よりも、上記シート搬送方向上流側に配設され、上記液体トナーが転写された上記被印刷物を予め昇温させる被印刷物予加熱手段を有している
ことを特徴とする、請求項4記載の液体トナー定着装置。
【請求項6】
上記キャリア除去手段は、
上記トナー定着手段と上記被印刷物昇温装置との間に配設され上記被印刷物上のキャリアの蒸発を促進させるための送風機を有している
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体トナー定着装置。
【請求項7】
上記被印刷物を載置する載置部に開口を有する開口付搬送ベルトを有し、
上記被印刷物は上記開口付搬送ベルト上に載置された状態で上記キャリア除去手段を搬送されるように構成されている
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体トナー定着装置。
【請求項8】
上記被印刷物の端部を把持した状態で搬送するチェーングリッパを有し、
上記被印刷物は上記チェーングリッパに把持された状態で上記キャリア除去手段を搬送されるように構成されている
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体トナー定着装置。
【請求項9】
上記キャリア除去手段は、
上記被印刷物昇温装置に対して上記被印刷物の搬送経路を挟んで対向して配設され上記被印刷物側からの空気を吸引する吸引手段を有している
ことを特徴とする、請求項7又は8記載の液体トナー定着装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体トナー定着装置と、
帯電した上記液体トナーを静電潜像の形成された感光体上に転写することで現像を行う現像ユニットと、
上記感光体と上記被印刷物との間に配置され、上記感光体上の上記液体トナーを上記被印刷物に転写する中間転写体と、を有している
ことを特徴とする、液体現像電子印刷機。
【請求項11】
帯電した粒子状のトナーが液体のキャリア中に分散されている液体トナーを感光体上に転写することで現像したトナー画像を被印刷物に転写し、上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させる液体トナー定着方法であって、
上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記トナーを上記被印刷物に定着させるトナー定着ステップと、
上記トナー定着ステップに先立って実行され上記被印刷物に転写された上記液体トナーの内の上記キャリアを蒸発させて除去するキャリア除去ステップとを有している
ことを特徴とする、液体トナー定着方法。
【請求項12】
上記トナー定着ステップでは、
上記トナーが転写された上記被印刷物を加熱及び加圧することにより上記トナーを上記被印刷物に定着させる
ことを特徴とする、請求項11記載の液体トナー定着方法。
【請求項13】
上記キャリア除去ステップは、
上記液体トナーが転写された上記被印刷物を昇温させる被印刷物昇温ステップを有している
ことを特徴とする、請求項11又は12記載の液体トナー定着方法。
【請求項14】
上記被印刷物昇温ステップは、
上記液体トナーが転写された上記被印刷物に閃光を照射して上記被印刷物の温度を昇温させる閃光照射ステップを有している
ことを特徴とする、請求項13記載の液体トナー定着方法。
【請求項15】
上記被印刷物昇温ステップは、
上記閃光照射ステップに先立って、上記液体トナーが転写された上記被印刷物を予め昇温させる被印刷物予加熱ステップを有している
ことを特徴とする、請求項14記載の液体トナー定着方法。
【請求項16】
上記キャリア除去ステップは、
上記被印刷物昇温ステップが実行されてから上記トナー定着ステップが実行される迄の間に上記被印刷物上に対して送風する送風ステップを有している
ことを特徴とする、請求項11〜15のいずれか1項に記載の液体トナー定着方法。
【請求項17】
上記キャリア除去ステップにおいて、
上記被印刷物は、載置部に開口を有する開口付搬送ベルト上に載置された状態で搬送されている
ことを特徴とする、請求項11〜16のいずれか1項に記載の液体トナー定着方法。
【請求項18】
上記キャリア除去ステップにおいて、
上記被印刷物は、上記被印刷物の端部を把持するチェーングリッパに把持された状態で搬送されている
ことを特徴とする、請求項11〜16のいずれか1項に記載の液体トナー定着方法。
【請求項19】
上記キャリア除去ステップは、
上記被印刷物昇温ステップと同時に実行され、上記被印刷物の搬送経路を挟んで反対側から空気を吸引する吸引ステップを有している
ことを特徴とする、請求項17又は18記載の液体トナー定着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−163065(P2009−163065A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1639(P2008−1639)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】