説明

液体供給装置、液体吐出装置、及び液体吐出装置の制御方法

【課題】液体吐出ヘッドへのインク(液体)の供給や液体吐出ヘッドからの排出(循環)が簡単にでき、かつ小型の装置を実現できるようにする。
【解決手段】供給されたインクをノズルから吐出可能なラインヘッド20と、ラインヘッド20によって吐出されるインクを貯留したインクカートリッジ30と、インクカートリッジ30に貯留されているインクを移送するための移送ポンプ50と、移送ポンプ50によって移送されたインクをラインヘッド20に設けられた供給口20aに供給するように配管された供給管87と、ラインヘッド20内のインクを供給口20aの反対側に設けられた排出口20bから排出するように配管された排出管88と、インクカートリッジ30から移送ポンプ50に向かう流路と排出管88から移送ポンプ50に向かう流路とを切換え可能な3方弁60とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の消費対象(インクを吐出する液体吐出ヘッド)に液体を供給するための液体供給装置、液体吐出装置、及び液体吐出装置の制御方法に係るものである。そして、詳しくは、消費対象への液体の供給や消費対象からの液体の排出(循環)を簡単にできるようにした技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体を吐出(消費)する液体吐出装置の一例として、液体吐出ヘッドにインク(液体)を供給し、液体吐出ヘッドのノズルから記録用紙に向けてインクを吐出することにより、画像を形成するようにしたインクジェットプリンタが知られている。そして、このようなインクジェットプリンタにおいては、インクの吐出の安定性を確保するために、インクが貯留されているインクカートリッジ(液体タンク)から液体吐出ヘッドに対してインクが安定的に供給されることが求められる。
【0003】
ここで、近年のインクジェットプリンタでは、高速化を達成するためにノズルを増やす傾向にある。特に、ラインヘッド方式のインクジェットプリンタは、印画可能な最大サイズの記録用紙の用紙幅に合わせて多数のノズルを配置しているので、用紙幅方向に移動させて印画を行うシリアルヘッド方式に比べ、ノズルの数が非常に多くなっている。そのため、単位時間当たりのインクの消費量が多くなるので、印画の途中でインクを切らさないようにすることが重要となる。なお、シリアルヘッド方式のインクジェットプリンタであっても、大判印刷等をする場合には、インクの消費量が多くなる。
【0004】
そこで、インクを液体吐出ヘッドに供給する前で一時的にサブタンク(補助タンク)に貯留し、サブタンク内のインクを消費しつつ、同時にサブタンクにインクを補充するようにした技術が知られている。具体的には、サブタンクのインク保持容積を十分確保し、大容量のインクカートリッジから移送ポンプによってサブタンクにインクを補充している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−132762号公報
【0005】
また、ラインヘッド方式のインクジェットプリンタでは、液体吐出ヘッドの大型化にともなう発熱やインク流路の全体的な容積が大きいこともあり、流路内のインク中に空気等の気泡が混入しやすくなっている。そして、気泡が液体吐出ヘッド内に蓄積されると、流路が閉塞されてノズルへのインクの流れが阻害され、印画時にインクの供給不足を引き起こす。さらにまた、インク中に気泡があると、気体の圧縮性によって気泡が吐出圧力を逃がすダンパのように作用し、インクの吐出力を弱めたり、インクの吐出方向に乱れを発生させる。さらに、インクジェットプリンタの設置環境、インクの吐出に伴う温度変化、大気圧の変動等によってインク中の気泡が膨張すると、ノズルからインクが勝手に漏れ出すこともある。なお、シリアルヘッド方式のインクジェットプリンタであっても、長時間動作等を行った場合には、発熱による気泡が発生しやすくなる。
【0006】
そこで、インク中の気泡の存在に起因するこのような不具合を解消するために、インクに含まれる気泡を除去できるようにした種々の技術が知られている。具体的には、移送ポンプによって液体吐出ヘッドとサブタンクとの間をインクが循環するようにし、インク中の気泡をサブタンクに移動させて除去している(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開2005−246640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した特許文献1の技術は、液体吐出ヘッドとサブタンクとの間でインクを循環させるものではない。そのため、サブタンクを設けていても、液体吐出ヘッド内のインク中の気泡を除去できない。一方、上記した特許文献2の技術は、液体吐出ヘッドとサブタンクとの間だけでなく、インクカートリッジを含む流路でインクを循環させているので、インクの流路が長くなっている。特に、カラー対応のインクジェットプリンタであれば、インクの各色(最低3色、多い場合には6色や8色)ごとにインクの流路が必要となる。そのため、インクジェットプリンタが大型化、複雑化してしまう。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、液体吐出ヘッドへのインク(液体)の供給や液体吐出ヘッドからの排出(循環)が簡単にでき、かつ小型の装置を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の解決手段によって上述の課題を解決する。
本発明の請求項1に記載の発明は、液体の消費対象に供給する液体を貯留した液体タンクと、前記液体タンクに貯留されている液体を移送するための移送ポンプと、前記移送ポンプによって移送された液体を前記消費対象に供給するように配管された供給管と、前記消費対象によって消費されなかった液体を前記消費対象から排出するように配管された排出管と、前記液体タンク及び前記排出管と前記移送ポンプとの間に配置され、前記液体タンクから前記移送ポンプに向かう流路と前記排出管から前記移送ポンプに向かう流路とを切換え可能な3方弁とを有する液体供給装置である。
【0010】
(作用)
上記の請求項1に記載の発明は、液体タンク及び排出管と移送ポンプとの間に3方弁が配置されている。そして、3方弁は、液体タンクから移送ポンプに向かう流路と排出管から移送ポンプに向かう流路とを切り換えることができる。そのため、液体をその消費対象に供給する液体供給装置において、3方弁を液体タンク側に開いて移送ポンプを駆動すれば、液体タンクから供給管を通して液体を消費対象に供給できる。一方、3方弁を排出管側に開いて移送ポンプを駆動すれば、消費対象から排出管を通して液体を排出できる。これにより、排出された液体を再び消費対象に供給できるようになる。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、供給された液体をノズルから吐出可能な液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドによって吐出される液体を貯留した液体タンクと、前記液体タンクに貯留されている液体を移送するための移送ポンプと、前記移送ポンプによって移送された液体を前記液体吐出ヘッドに設けられた供給口に供給するように配管された供給管と、前記液体吐出ヘッド内の液体を前記供給口の反対側に設けられた排出口から排出するように配管された排出管と、前記液体タンク及び前記排出管と前記移送ポンプとの間に配置され、前記液体タンクから前記移送ポンプに向かう流路と前記排出管から前記移送ポンプに向かう流路とを切換え可能な3方弁とを有する液体吐出装置である。
【0012】
(作用)
上記の請求項2に記載の発明は、液体タンク及び排出管と移送ポンプとの間に3方弁が配置されている。そして、3方弁は、液体タンクから移送ポンプに向かう流路と排出管から移送ポンプに向かう流路とを切り換えることができる。そのため、液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出する液体吐出装置において、3方弁を液体タンク側に開いて移送ポンプを駆動すれば、液体タンクから供給管を通して液体を液体吐出ヘッドに供給できる。一方、3方弁を排出管側に開いて移送ポンプを駆動すれば、液体吐出ヘッドから排出管を通して液体を排出できる。その結果、液体吐出ヘッド内の液体中に気泡が含まれていたとしても、その気泡を液体吐出ヘッド外に排出することができる。なお、排出された液体を循環させて気泡を除去するには、例えば、気泡を含む液体を液体吐出ヘッドに供給する前で一時的に補助タンクに貯留するようにすればよい。
【0013】
さらにまた、本発明の請求項8に記載の発明は、供給された液体をノズルから吐出可能な液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドによって吐出される液体を貯留した液体タンクと、前記液体タンクに貯留されている液体を移送するための移送ポンプと、前記移送ポンプによって移送された液体を前記液体吐出ヘッドに設けられた供給口に供給するように配管された供給管と、前記液体吐出ヘッド内の液体を前記供給口の反対側に設けられた排出口から排出するように配管された排出管と、前記液体タンク及び前記排出管と前記移送ポンプとの間に配置され、前記液体タンクから前記移送ポンプに向かう流路と前記排出管から前記移送ポンプに向かう流路とを切換え可能な3方弁と、前記移送ポンプの駆動及び前記3方弁の作動を制御するための制御装置と、前記移送ポンプによって移送された液体を前記液体吐出ヘッドに供給する前で一時的に貯留する補助タンクとを有し、前記制御装置により、前記3方弁を前記排出管から前記移送ポンプに向かう流路に切り換えた状態で前記移送ポンプを駆動し、前記液体吐出ヘッド内の液体を前記排出管、前記補助タンク、及び前記供給管を通して循環させる液体吐出装置の制御方法である。
【0014】
(作用)
上記の請求項8に記載の発明は、液体タンク及び排出管と移送ポンプとの間に3方弁が配置されており、液体タンクから移送ポンプに向かう流路と排出管から移送ポンプに向かう流路とを切り換えることができる。そして、3方弁を排出管から移送ポンプに向かう流路に切り換えた状態で移送ポンプを駆動すれば、液体吐出ヘッド内の液体を排出管、補助タンク、及び供給管を通して循環させることができる。そのため、液体吐出ヘッド内の液体中に気泡が含まれていたとしても、その気泡を液体吐出ヘッド外に排出することができる。しかも、気泡を含む液体は、液体吐出ヘッドに供給する前に一時的に補助タンクに貯留される。その結果、液体中の気泡を効果的に除去できるようになる。
【発明の効果】
【0015】
上記した請求項1の発明である液体供給装置によれば、3方弁を液体タンク側に開いて移送ポンプを駆動すれば、液体タンクから供給管を通して液体を消費対象に供給できる。一方、3方弁を排出管側に開いて移送ポンプを駆動すれば、消費対象から排出管を通して液体を排出できるので、排出された液体を再び消費対象に供給できるようになる。したがって、液体をその消費対象に供給する液体供給装置において、3方弁だけで液体の供給及び排出(循環)が簡単にでき、装置を小型化できる。
【0016】
上記した請求項2の発明である液体吐出装置によれば、3方弁を液体タンク側に開いて移送ポンプを駆動すれば、液体タンクから供給管を通して液体を液体吐出ヘッドに供給できる。一方、3方弁を排出管側に開いて移送ポンプを駆動すれば、液体吐出ヘッドから排出管を通して液体を排出でき、液体吐出ヘッド内の液体中に気泡が含まれていたとしても、その気泡を液体吐出ヘッド外に排出することができる。したがって、液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出する液体吐出装置において、3方弁だけで液体の供給及び排出(循環)が簡単にでき、装置を小型化できる。また、例えば、気泡を含む液体を液体吐出ヘッドに供給する前で一時的に補助タンクに貯留すれば、液体中から気泡を除去できる。
【0017】
上記した請求項8の発明である液体吐出装置の制御方法によれば、3方弁を排出管から移送ポンプに向かう流路に切り換えた状態で移送ポンプを駆動すれば、液体吐出ヘッド内の液体を排出管、補助タンク、及び供給管を通して循環させることができる。そのため、液体吐出ヘッド内の液体中に気泡が含まれていたとしても、その気泡を液体吐出ヘッド外に排出することができる。したがって、3方弁だけで液体の供給及び排出(循環)が簡単にでき、装置を小型化できる。また、気泡を含む液体は、再び液体吐出ヘッドに供給される前に一時的に補助タンクに貯留されるので、液体中から気泡が除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態では、本発明の液体供給装置及び液体吐出装置として、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の4色のインク(液体)をラインヘッド20(本発明における消費対象及び液体吐出ヘッドに相当するもの)に供給して吐出するカラー対応のインクジェットプリンタ10を例に挙げて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタ10の概略を示す側面図である。
図1に示すように、インクジェットプリンタ10は、サイズの異なる3種類の記録用紙100をそれぞれ別々に収容可能な給紙トレイ11a,11b,11cと、印画するサイズに応じて給紙トレイ11a,11b,11cのいずれかから選択的に記録用紙100を給紙する給紙ユニット12と、給紙された記録用紙100に対して印画を行なうラインヘッド20と、非印画時にラインヘッド20のインク吐出面を覆って保護するヘッドキャップ22と、印画された記録用紙100を排紙する排紙ユニット13と、排紙された記録用紙100を収容する排紙トレイ14とを備えている。なお、ヘッドキャップ22は、開閉装置(図示せず)によってラインヘッド20のインク吐出面を密閉可能なものである。
【0020】
ここで、ラインヘッド20は、ラインヘッド20と対向するように給紙された記録用紙100に対してインクを吐出し、印画を行うものである。そして、記録用紙100の幅方向にヘッドを移動させることなく、給紙される最大サイズの記録用紙100の幅までの印画が可能となっている。そのため、記録用紙100の幅方向にヘッドを移動させて印画を行うシリアルヘッドと比較すると、振動や騒音が低減されるだけでなく、印画速度を格段に速くできるという利点がある。
【0021】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20とは別体のインクカートリッジ30(本発明における液体タンクに相当するもの)をインクジェットプリンタ10に装着した「ヘッド別体型」のものである。そして、インクカートリッジ30には、ラインヘッド20に供給する4色のインク(Y,M,C,K)が色別に貯留されており、インクジェットプリンタ10に対して着脱自在に装着されている。そのため、インクカートリッジ30内のインクが全て消費された場合には、迅速に新品と交換できるようになっている。
【0022】
さらにまた、ラインヘッド20とインクカートリッジ30との間(ラインヘッド20にインクを供給する前)には、サブタンク40(本発明における補助タンクに相当するもの)が配置されている。このサブタンク40は、ラインヘッド20よりも低い位置でインクを一時的に貯留するものであり、ラインヘッド20内のインクに、水頭差に基づく一定の負圧を与えるように作用する。そのため、ラインヘッド20からのインクの漏出しを防止できるだけでなく、インクを安定的に吐出可能な状態を常時保持できる。
【0023】
さらに、インクカートリッジ30とサブタンク40との間には、インクカートリッジ30に貯留されているインクを移送するための移送ポンプ50が配置されている。そして、制御装置(図示せず)によって移送ポンプ50の駆動を制御すれば、インクカートリッジ30内のインク(Y,M,C,K)がサブタンク40を介してラインヘッド20に供給される。
【0024】
このようなインクジェットプリンタ10によって印画を行うには、給紙ユニット12により、給紙トレイ11a,11b,11cのいずれかから印画するサイズに応じた記録用紙100を選択的に給紙する。また、ヘッドキャップ22をラインヘッド20から引き離し、ラインヘッド20のインク吐出面を露出させる。そして、記録用紙100を移動させながら、ラインヘッド20から各色のインクを記録用紙100に向けて吐出し、カラー印画を行う。なお、印画が行われた記録用紙100は、排紙ユニット13によって排紙された後、排紙トレイ14上にストックされる。
【0025】
図2は、本実施形態のインクジェットプリンタ10の印画部を示す斜視図である。
図2に示すように、インクジェットプリンタ10は、吐出するインクの種類(Y,M,C,Kの各色)に応じて、複数(4つ)のラインヘッド20、インクカートリッジ30、サブタンク40、及び移送ポンプ50を有している。また、各サブタンク40から各インクカートリッジ30に各インクを戻すように配管された複数(4つ)の戻り管86と、各移送ポンプ50によって移送された各インクを各ラインヘッド20に供給するように配管された複数(4つ)の供給管87と、各ラインヘッド20によって消費されなかった各インクを各ラインヘッド20から排出するように配管された複数(4つ)の排出管88とを有している。さらにまた、各インクカートリッジ30から各移送ポンプ50に向かう流路と各排出管88から各移送ポンプ50に向かう流路とを切換え可能な複数(4つ)の3方弁60と、各インクの移送経路を変更可能な複数(4つ)の逆止弁アレイ70とを有している。
【0026】
ここで、各ラインヘッド20は、記録用紙100の幅に対応した長さのものであり、各ラインヘッド20ごとに、Y,M,C,Kの4色のインクを吐出する。そして、各ラインヘッド20には、Y,M,C,Kの4色のインクをそれぞれ別々に貯留したインクカートリッジ30から各色のインクが供給される。具体的には、各インクカートリッジ30は、4つ(インクの各色ごと)の移送管81が接続された着脱台座15に着脱自在に装着されている。そして、各移送管81は、各3方弁60の一方の入口側にそれぞれ接続されている。
【0027】
また、各3方弁60の出口側には、それぞれ移送管82が接続されているので、各インクカートリッジ30の各インクは、各逆止弁アレイ70、各移送ポンプ50、及び各移送管85を介して各サブタンク40に移送される。さらにまた、各サブタンク40に移送され、一時的に貯留された各インクは、各供給管87を介して各ラインヘッド20に供給される。なお、各サブタンク40内に貯留された各インクが一定量以上になったときは、着脱台座15に接続された各戻り管86によって各インクカートリッジ30に戻される。
【0028】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、吐出するインクの色(Y,M,C,K)に応じて、インクカートリッジ30、移送管81、3方弁60、移送管82、逆止弁アレイ70、移送ポンプ50、移送管85、サブタンク40、供給管87、ラインヘッド20、戻り管86等が設けられている。そして、移送ポンプ50により、インクカートリッジ30内のインクがサブタンク40を介してラインヘッド20に供給され、記録用紙100に向けて吐出される。
【0029】
また、ラインヘッド20から吐出されなかったインクは、移送ポンプ50により、排出管88を介してサブタンク40に戻される。具体的には、排出管88は、3方弁60の他方の入口側に接続されているので、3方弁60により、ラインヘッド20にインクを供給するときは、インクカートリッジ30から移送ポンプ50に向かう流路とし、ラインヘッド20からインクを排出するときは、排出管88から移送ポンプ50に向かう流路に切り換える。そのため、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、インクカートリッジ30からラインヘッド20にインクを供給できるだけでなく、ラインヘッド20からインクを排出し、サブタンク40を介してインクを循環させることにより、インク中に含まれる気泡を除去できる。
【0030】
図3は、本実施形態のインクジェットプリンタ10における印画部の1色分の配管系を示す概念図である。
図3に示すように、インクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20、インクカートリッジ30、サブタンク40、移送ポンプ50、3方弁60、及び逆止弁アレイ70を有している。そして、これらは、4色のインク(Y,M,C,K)ごとにそれぞれ設けられている。ただし、各移送ポンプ50は、共通の1つの駆動モータ51(本発明における駆動源に相当するもの)によって同時に駆動される。具体的には、各移送ポンプ50は、チューブポンプであり、1つの駆動モータ51によって各移送ポンプ50の弾性チューブを連続的に弾性変形させてインクを移送できる。また、各3方弁60は、共通の1つの作動源(図示せず)によって切換えできる。そのため、小型で安価なインクジェットプリンタ10を実現できる。
【0031】
また、インクカートリッジ30と3方弁60との間は、着脱台座15を介して移送管81で接続されている。さらにまた、3方弁60と逆止弁アレイ70との間は、移送管82によって接続され、逆止弁アレイ70と移送ポンプ50との間は、移送管83及び移送管84によって接続されている。さらに、逆止弁アレイ70とサブタンク40との間は、フィルタ91を有する移送管85によって接続されている。そのため、駆動モータ51によって移送ポンプ50を駆動すれば、インクカートリッジ30内のインクをサブタンク40に移送できる。
【0032】
サブタンク40は、戻り管86及び着脱台座15を介してインクカートリッジ30と接続されるとともに、フィルタ92を有する供給管87によってラインヘッド20の供給口20aと接続されている。そのため、移送ポンプ50により、サブタンク40内のインクをインクカートリッジ30に戻すことも、ラインヘッド20にインクを供給してノズル21から吐出することもできる。なお、サブタンク40は、その内部を大気に開放するための大気開放弁41を有している。そして、大気開放弁41を通って漏れたインクは、排インク溜め42に溜められる。
【0033】
また、ラインヘッド20の供給口20aと反対側には、排出口20bが設けられ、排出口20bと3方弁60とが排出管88で接続されている。そのため、3方弁60をラインヘッド20側に切り換え、ラインヘッド20内のインク中に含まれる気泡を排出口20bからインクと一緒に排出し、サブタンク40との間で循環させることにより、インク中から気泡を除去できる。
【0034】
さらにまた、ラインヘッド20に対向するように配置されたヘッドキャップ22は、フィルタ93を有する排出管89によって逆止弁アレイ70に接続されている。そのため、ラインヘッド20のノズル21からヘッドキャップ22に向けて気泡を含むインクを吸引すれば、ノズル21の近傍の気泡をインクと一緒に排出し、その気泡をサブタンク40で除去できる。
【0035】
図4は、ラインヘッド20を部分的に示す断面図及び斜視図である。
図4に示すように、ラインヘッド20は、半導体基板23にバリア層24を積層し、このバリア層24に、ノズル21を形成したノズルシート25を貼り合わせて構成したものである。そして、半導体基板23に複数の発熱抵抗体26が一定間隔で一方向に析出形成されており、発熱抵抗体26を囲む半導体基板23とバリア層24とノズルシート25とによってインク液室27が形成されている。
【0036】
また、半導体基板23の上側には、共通流路部材28が配置されており、この共通流路部材28によって形成された共通のインク流路29が全てのインク液室27と連通している。そのため、サブタンク40(図3参照)内のインクは、インク流路29を通って全てのインク液室27に供給されることとなる。そして、発熱抵抗体26に短時間(例えば、1〜3μsecの間)、パルス電流を流すと、発熱抵抗体26が急速に加熱される。その結果、発熱抵抗体26と接する部分にインクの気泡が発生し、その気泡の膨張によって所定の体積のインクが押しのけられる(インクが沸騰する)。これにより、押しのけられたインクと同等の体積のインクがノズル21からインク滴となって吐出される。
【0037】
このように、ラインヘッド20は、熱によって気泡を発生させてインクを吐出するものであるため、インク中に気泡(図4(B)参照)が混入しやすい。また、インクの初期供給時には、ラインヘッド20のインク流路29等に存在する空気により、インクと空気とが混ざり合い、インク中に気泡が混入するようになる。そして、インク液室27のインク中に気泡があると、気体の圧縮性によってインクの吐出力が弱まり、インクの吐出方向に乱れが発生する。また、インクの吐出(発熱抵抗体26の加熱)にともなう温度変化等によってインク中の気泡が膨張すると、インク液室27内のインクがノズル21から勝手に漏れ出してしまうことがある。
【0038】
そこで、図3に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20内のインクを排出管88を通して循環させることにより、ラインヘッド20内のインク中に含まれる比較的大きな気泡を除去する。また、ノズル21からヘッドキャップ22に向かうようにインクを吸引することにより、ノズル21の近傍にある比較的小さな気泡をインクと一緒に排出し、排出管89を通して循環させて気泡を除去する。そして、排出管88、3方弁60、及び移送管82を通したインクの循環と、排出管89を通した循環とは、逆止弁アレイ70によって切り換えられるようになっている。
【0039】
図5は、本実施形態のインクジェットプリンタ10(図3参照)における逆止弁アレイ70を示す断面図であり、ラインヘッド20(図3参照)内のインクを循環させる状態を示している。
また、図6は、本実施形態のインクジェットプリンタ10における逆止弁アレイ70を示す断面図であり、ヘッドキャップ22(図3参照)に吸引されたインクを循環させる状態を示している。
【0040】
図5及び図6に示すように、逆止弁アレイ70は、インクの入口となり、移送管82が接続された第1入口71と、インクのもう1つの入口となり、排出管89が接続された第2入口72とを備えている。また、インクの出口となり、サブタンク40(図3参照)につながる移送管85が接続された第1出口73を備えている。さらにまた、移送ポンプ50(図3参照)につながる移送管83が接続されたポンプ接続口74と、移送ポンプ50につながる移送管84が接続されたポンプ接続口75とを備えている。
【0041】
このような逆止弁アレイ70は、4つの逆止弁76a,76b,76c,76dによって構成されている。そして、各逆止弁76a,76b,76c,76dは、一方向にインクを通し、逆方向の流れは、抵抗によって止められるようになっている。そのため、図5及び図6では、逆止弁76a及び逆止弁76bは、上から下に向かう方向にだけインクを通し、逆止弁76c及び逆止弁76dは、下から上に向かう方向にだけインクを通すようになる。
【0042】
ここで、図3に示す駆動モータ51をCW方向(時計回り)に回転させると、移送ポンプ50内の弾性チューブがCW方向に連続的に弾性変形する。そのため、移送管83内のインクは、図5に示す上向きの矢印のように移送され、移送管84内のインクは、図5に示す下向きの矢印のように移送される。なお、本実施形態では、移送ポンプ50によるCW方向のインクの移送を正方向とする。
【0043】
したがって、ポンプ接続口74からインクが吸い出され、逆止弁76bと逆止弁76cとの向きにより、移送管82、第1入口71、及び逆止弁76bを通ってポンプ接続口74に向かう移送経路が形成される。また、ポンプ接続口75にインクが押し込まれ、逆止弁76aと逆止弁76dとの向きにより、ポンプ接続口75、逆止弁76d、及び第1出口73を通って移送管85に向かう移送経路が形成される。
【0044】
一方、図3に示す駆動モータ51をCCW方向(反時計回り)に回転させると、移送ポンプ50内の弾性チューブがCCW方向に連続的に弾性変形する。そのため、移送管83内のインクは、図6に示す下向きの矢印のように移送され、移送管84内のインクは、図6に示す上向きの矢印のように移送される。なお、本実施形態では、移送ポンプ50によるCCW方向のインクの移送を逆正方向とする。
【0045】
したがって、ポンプ接続口75からインクが吸い出され、逆止弁76aと逆止弁76dとの向きにより、排出管89、第2入口72、及び逆止弁76aを通ってポンプ接続口75に向かう移送経路が形成される。また、ポンプ接続口74にインクが押し込まれ、逆止弁76bと逆止弁76cとの向きにより、ポンプ接続口74、逆止弁76c、及び第1出口73を通って移送管85に向かう移送経路が形成される。
【0046】
このように、逆止弁アレイ70は、1つの移送ポンプ50によってインクをCW方向に移送するかCCW方向に移送するかを切り換えるだけで、別の入口(第1入口71又は第2入口72)から同じ出口(第1出口73)に向かう移送経路を形成できる。具体的には、逆止弁アレイ70は、移送ポンプ50によってインクが正方向に移送されるときは、ラインヘッド20(図3参照)につながる移送管82からインクが第1入口71に入り、第1出口73から出て、サブタンク40(図3参照)につながる移送管85に向けてインクが移送されるようにインクの移送経路を変更する。これにより、ラインヘッド20内のインクをサブタンク40を介して循環させることができる。
【0047】
逆に、逆止弁アレイ70は、移送ポンプ50によってインクが逆方向に移送されるときは、ヘッドキャップ22(図3参照)につながる排出管89からインクが第2入口72に入り、第1出口73から出て、サブタンク40(図3参照)につながる移送管85に向けてインクが移送されるようにインクの移送経路を変更する。これにより、ヘッドキャップ22に吸引されたインクをサブタンク40を介して循環させることができる。
【0048】
また、移送管82は、3方弁60(図3参照)の切換えにより、インクカートリッジ30(図3参照)にもつながる。そのため、移送ポンプ50によってインクを正方向に移送すれば、インクカートリッジ30に貯留されているインクを第1入口71に入れ、第1出口73から出して、移送管85に向けてインクが移送されるようにインクの移送経路を変更できる。これにより、インクカートリッジ30内のインクをサブタンク40(図3参照)に充填することができる。なお、サブタンク40へのインク充填は、インクジェットプリンタ10(図3参照)の使用開始時や、サブタンク40にインクを補充する際に行われる。
【0049】
図7は、本実施形態のインクジェットプリンタ10(図3参照)におけるサブタンク40へのインク充填の流れを示すフローチャートである。
また、図8は、本実施形態のインクジェットプリンタ10における印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、サブタンク40へのインク充填途中の状態を示すものである。
さらにまた、図9は、本実施形態のインクジェットプリンタ10における印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、サブタンク40へのインク充填終了時の状態を示すものである。
【0050】
図7に示すステップS1により、サブタンク40へのインク充填の開始になると、次のステップS2において、3方弁60のインクカートリッジ30側が「開」になっているか否かが検知される。そして、「開」になっていなければ、ステップS3に分岐し、インクカートリッジ30側を「開」に切り換える。なお、図8及び図9に示す3方弁60は、インクカートリッジ30側が「開」になっている状態を示している。
【0051】
また、3方弁60のインクカートリッジ30側が「開」になっていれば、ステップS4に移行し、サブタンク40の大気開放弁41が「開」になっているか否かが検知される。そして、「開」になっていなければ、ステップS5に分岐し、大気開放弁41を「開」に切り換える。なお、図8及び図9に示す大気開放弁41は、「開」になっている状態を示している。
【0052】
このように、3方弁60のインクカートリッジ30側を「開」とし、かつ大気開放弁41を「開」とした後、ステップS6において、CW方向(時計回り)に移送ポンプ50を回転駆動する。なお、図8及び図9に示す移送ポンプ50は、制御装置(図示せず)によって制御される駆動モータ51により、CW方向(時計回り)に回転駆動されている状態を示している。
【0053】
移送ポンプ50がCW方向(時計回り)に回転駆動されると、図8に示す移送ポンプ50内の矢印のように、インクが正方向(CW方向)に移送される。これにより、着脱台座15に装着されたインクカートリッジ30に貯留されているインクは、図8に示す矢印のように、移送管81、3方弁60、移送管82、逆止弁アレイ70、移送管83、移送ポンプ50、移送管84、逆止弁アレイ70、移送管85、及びフィルタ91を通ってサブタンク40に移送され、貯留される。なお、移送されたインク中に異物等が混入していた場合には、フィルタ91により、サブタンク40に貯留される前に除去される。
【0054】
移送されたインクがサブタンク40に貯留されるようになると、サブタンク40内のインクの液面高さは、徐々に上昇する。一方、インクカートリッジ30では、インクの移送にともなって内圧が減少する。そのため、サブタンク40内の空気が戻り管86を介してインクカートリッジ30に吸引される。そして、大気開放弁41が開放されているので、インクカートリッジ30の内圧は、サブタンク40と同じ内圧(大気圧)に保たれる。
【0055】
また、サブタンク40内のインクの液面高さが戻り管86の入口まで到達すると、図9に示すように、戻り管86がインクによって栓をされた状態となる。これにより、インクカートリッジ30は、戻り管86から空気を吸引できなくなるが、今度は、サブタンク40内のインクを吸引するようになる。そして、この状態で移送ポンプ50によるインクの正方向の移送を継続しても、図9に示す矢印のように、インクカートリッジ30からサブタンク40に移送されたインクと同量のインクが戻り管86によってサブタンク40からインクカートリッジ30に戻される。そのため、サブタンク40内のインクは、満杯の状態(図9に示す液面高さの状態)で一定に保たれる。なお、「開」状態の大気開放弁41を通って漏れ出したインクは、排インク溜め42に溜められる。
【0056】
ここで、移送ポンプ50(駆動モータ51)の駆動時間t1は、空の状態のサブタンク40にインクカートリッジ30のインクを充填し、戻り管86によってサブタンク40からインクカートリッジ30にインクが戻るようになるまでに十分な時間となっている。そして、図7に示すステップS7により、駆動時間≧t1であるか否かが検知され、駆動時間≧t1になれば、次のステップS8に移行して移送ポンプ50の回転駆動を停止する。これにより、サブタンク40内のインクを確実に満杯の状態(図9に示す液面高さの状態)とすることができ、ステップS9のインク充填の終了となる。
【0057】
このようにしてサブタンク40にインクを充填すると、図9に示すインク充填終了時の状態となるが、インクジェットプリンタ10の使用開始時は、ラインヘッド20内にインクが全く供給されていない。そのため、今度はサブタンク40に貯留されているインクをラインヘッド20に供給する。
【0058】
図10は、本実施形態のインクジェットプリンタ10(図3参照)におけるラインヘッド20へのインク供給の流れを示すフローチャートである。
また、図11は、本実施形態のインクジェットプリンタ10における印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ラインヘッド20へのインク供給途中の状態を示すものである。
さらにまた、図12は、本実施形態のインクジェットプリンタ10における印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ラインヘッド20へのインク供給終了時の状態を示すものである。
【0059】
図10に示すステップS11により、ラインヘッド20へのインク供給の開始になると、次のステップS12において、3方弁60のラインヘッド20側が「開」になっているか否かが検知される。そして、「開」になっていなければ、ステップS13に分岐し、ラインヘッド20側を「開」に切り換える。なお、図11及び図12に示す3方弁60は、ラインヘッド20側が「開」になっている状態を示している。
【0060】
また、3方弁60のラインヘッド20側が「開」になっていれば、ステップS14に移行し、サブタンク40(図11及び図12参照)の大気開放弁41が「閉」になっているか否かが検知される。そして、「閉」になっていなければ、ステップS15に分岐し、大気開放弁41を「閉」に切り換える。なお、図11及び図12に示す大気開放弁41は、「閉」になっている状態を示している。
【0061】
このように、3方弁60のラインヘッド20側を「開」とし、かつ大気開放弁41を「閉」とした後、ステップS16において、CW方向(時計回り)に移送ポンプ50を回転駆動する。なお、図11及び図12に示す移送ポンプ50は、制御装置(図示せず)によって制御される駆動モータ51により、CW方向(時計回り)に回転駆動されている状態を示している。
【0062】
移送ポンプ50がCW方向(時計回り)に回転駆動されると、図11に示す移送ポンプ50内の矢印のように、空気が正方向(CW方向)に移送される。これにより、ラインヘッド20内の空気がノズル21から空気を巻き込みながら移送され、図11に示す矢印のように、排出管88、3方弁60、移送管82、逆止弁アレイ70、移送管83、移送ポンプ50、移送管84、逆止弁アレイ70、移送管85、及びフィルタ91を通ってサブタンク40に移送される。そして、移送された空気によってサブタンク40内が加圧されるため、サブタンク40の下方に接続された供給管87にインクが押し出される。
【0063】
供給管87に押し出されたインクは、フィルタ92を通って供給口20aからラインヘッド20に供給される。これにより、ラインヘッド20内がインクで満たされるようになり、ノズル21がインクで塞がれる。そして、この状態で移送ポンプ50によるインクの移送を継続しても、ノズル21から空気が巻き込まれることはなく、ラインヘッド20内の圧力が一定のままの状態でインクが供給され続ける。その結果、ラインヘッド20内の空気がインクによって押し出され、押し出された空気は、サブタンク40内でインクと分離(気液分離)される。なお、移送されたインク中に異物等が混入していた場合には、フィルタ92により、ラインヘッド20に供給される前に除去される。
【0064】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、サブタンク40内の容積をVs、ラインヘッド20内、移送ポンプ50内、供給管87内、排出管88内、及び排出管88と同様にインクの排出経路を構成する3方弁60内、移送管82内、逆止弁アレイ70内、移送管83内、移送管84内、移送管85内の合計の容積をVhとしたとき、Vs≧Vhとなっている。そのため、サブタンク40内に一度インクを貯留しておけば、サブタンク40内のインクだけで短時間で移送経路中の空気をインクに置き換えることができる。そして、サブタンク40から供給管87に押し出されたインクが再びサブタンク40に戻ると、図12に示す矢印のように、ラインヘッド20内のインクがサブタンク40を介して循環するようになる。その結果、サブタンク40内のインクは、所定の状態(図12に示す液面高さの状態)で一定に保たれる。しかも、インクの供給過程でインク中に混入した気泡は全てサブタンク40で除去される。
【0065】
ここで、移送ポンプ50(駆動モータ51)の駆動時間t2は、空の状態のラインヘッド20にサブタンク40のインクを供給し、ラインヘッド20とサブタンク40との間でインクが循環するようになるまでに十分な時間となっている。そして、図10に示すステップS17により、駆動時間≧t2であるか否かが検知され、駆動時間≧t2になれば、次のステップS18に移行して移送ポンプ50の回転駆動を停止する。これにより、ラインヘッド20にインクを供給するとともに空気を排除(インク中の気泡を除去)することができ、ステップS19のインク供給の終了となる。
【0066】
このようにしてラインヘッド20にインクを供給した後、サブタンク40にインクを補充する。具体的には、図7に示すステップS1と同様に、サブタンク40へのインク充填(補充)を開始し、ステップS2及びステップS3により、3方弁60のインクカートリッジ30側を「開」とする。次に、ステップS4及びステップS5により、大気開放弁41を「開」とする。そして、ステップS6において、CW方向(時計回り)に移送ポンプ50を回転駆動し、サブタンク40内のインクを満杯の状態とする。これにより、ラインヘッド20のノズル21からインクを吐出できるようになる。また、ノズル21からインクを吐出すると、サブタンク40内のインクが消費される。そのため、サブタンク40に対し、継続的にインクを補充する。
【0067】
したがって、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、3方弁60の切換え(ラインヘッド20側を「開」とするか、インクカートリッジ30側を「開」とするか)によって、1つの移送ポンプ50だけでインク供給及びインク充填(補充)を行なうことができる。そのため、小型化及び低コスト化を図ることができる。また、インクの移送経路が簡略化され、配管を削減できることから、信頼性を向上させることができる。
【0068】
図13は、本実施形態のインクジェットプリンタ10における印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ラインヘッド20へのインク補充途中の状態を示すものである。
図13に示すように、インクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20のノズル21から記録用紙100に向けてインク滴を吐出し、印画を行なう。そのため、吐出されたインク滴と同量のインクがサブタンク40からラインヘッド20に供給される。また、サブタンク40に対しては、インクカートリッジ30からインクが補充される。
【0069】
ここで、サブタンク40は、空気を分離(インク中の気泡を除去)するだけでなく、ラインヘッド20内のインクに一定の負圧を与えるように作用する。具体的には、ラインヘッド20のノズル21よりも下方に設置され、その位置でインクを一時的に貯留する。そのため、大気開放弁41が「開」になっていれば、ラインヘッド20内の圧力は、サブタンク40内のインクの液面高さに応じた水頭差によって生ずる所定の負圧(水頭差圧)に保たれる。これにより、ノズル21から勝手にインクが漏れ出さないようにするとともにインクが安定して吐出されるようにしている。
【0070】
したがって、サブタンク40に対するインクの補充は、ノズル21から連続してインクを吐出できるだけでなく、大気圧に対するラインヘッド20内のインクの圧力を、ノズル21からのインクの漏れを防止しつつ安定的にインクを吐出可能な範囲内の負圧に維持できるようにする。なお、インクの補充は、印画(インクの吐出)の停止中であっても、印画中であっても行なうことができる。
【0071】
図14は、本実施形態のインクジェットプリンタ10(図13参照)におけるラインヘッド20内の負圧(水頭差圧h)の変化を模式的に示すグラフである。
図14に示すグラフにおいて、圧力範囲Δhは、ノズル21(図13参照)からのインクの漏れを防止しつつ安定的にインクを吐出可能な最小許容負圧と最大許容負圧との間の範囲を意味する。そのため、大気圧に対するラインヘッド20内のインクの圧力は、Δhの範囲内の負圧に維持する必要がある。また、T=移送ポンプ50駆動間隔、t及びt’=移送ポンプ50駆動時間である。
【0072】
ここで、最初にサブタンク40(図13参照)内のインクは、満杯の状態(図14(A)に示す水頭差圧hが(a)の状態)にあるとする。そして、この状態は、最小許容負圧より少し負圧が大きいΔhの範囲内にある。そのため、サブタンク40内にインクが満杯(水頭差圧hが(a))であれば、ノズル21(図13参照)から勝手にインクが漏れ出さず、かつ安定してインクを吐出させることができる。
【0073】
その後、図13に示すように、インクジェットプリンタ10が印画を始めると、ラインヘッド20のノズル21からインク滴が吐出される。これにより、吐出されたインク滴と同量のインクがサブタンク40からラインヘッド20に供給され、サブタンク40内のインクの液面高さが下降する。そのため、ラインヘッド20とサブタンク40との水頭差が大きくなり、図14(A)に示すように、水頭差圧hが(a)の状態から(b)の状態に変化する。そして、このまま印画を続行すると、水頭差が一層大きくなって水頭差圧hが(b’)の状態となり、最大許容負圧を越えてΔhの範囲外となってしまう。
【0074】
そこで、移送ポンプ50を定期的に駆動し、サブタンク40(図13参照)にインクを補充する。具体的には、あらかじめインクの最大消費量(例えば、最大吐出量で印画した場合のインクの消費量)を想定しておき、最大消費量でもΔhを越えないように設定された駆動間隔Tごとに移送ポンプ50を駆動する。これにより、サブタンク40内のインクの液面高さが上昇して水頭差が小さくなり、水頭差圧hをΔhの範囲内に維持できる。
【0075】
また、移送ポンプ50を駆動する駆動時間tは、移送ポンプ50の単位時間当たりのインクの移送量をV、ラインヘッド20内のインクの負圧をΔhの範囲内に維持できるサブタンク40(図13参照)内のインクの変化量をQとしたとき、t≧(Q/V)となるように、制御装置(図示せず)によって移送ポンプ50を駆動制御する。なお、印画(インクの吐出)の停止時に移送ポンプ50を駆動する場合は、t≧(Q/V)でよいが、印画中に移送ポンプ50を駆動する場合は、印画によって消費されたインクも補充する必要があるため、t≧(2Q/V)とする。
【0076】
このように、移送ポンプ50によって時間t≧(Q/V)(又は、t≧(2Q/V))だけインクを補充すると、図9に示すように、サブタンク40内のインクが一定量(満杯)以上になる。そして、戻り管86によってサブタンク40からインクカートリッジ30にインクが戻されるようになる。そのため、水頭差圧hは、図14(A)に示す(b)の状態から(c)の状態(サブタンク40内のインクが満杯で、水頭差圧hが(a)と同じ状態)となる。これにより、最小許容負圧より負圧が小さくなることはなく、水頭差圧hがΔhの範囲内に維持される。
【0077】
さらに続けてインクジェットプリンタ10(図13参照)の印画(ラインヘッド20からのインク滴の吐出)を行うと、サブタンク40(図13参照)内のインクの液面高さが再び下降し、ラインヘッド20との水頭差が大きくなる。しかし、移送ポンプ50は、駆動間隔Tで駆動されるので、水頭差圧hが(c)の状態から(d)の状態になれば、駆動時間tだけ移送ポンプ50が駆動される。そのため、水頭差圧hは、Δhの範囲内の(e)の状態に戻される。同様に、インク滴の吐出によって水頭差圧hが(e)の状態から(f)の状態になれば、インクの補充によって水頭差圧hが(f)の状態から(g)の状態に戻される。
【0078】
したがって、ラインヘッド20からインク滴が吐出され、サブタンク40(図13参照)内のインクが消費されても、図14(A)に示すように、移送ポンプ50を駆動間隔Tで駆動時間tだけくり返して駆動することにより、サブタンク40にインクを適正に補充できる。その結果、インヘッド20内のインクの圧力は、大気圧に対して適正な範囲の負圧(Δhの範囲内の水頭差圧h)に維持される。
【0079】
また、移送ポンプ50は、駆動間隔Tで定期的に駆動するのではなく、Δhの範囲内の最大許容負圧まで変化したところで移送ポンプ50を駆動するようにしてもよい。図14(B)は、このように移送ポンプ50を駆動制御する場合のグラフであり、水頭差圧hの変化は、別途、圧力センサ等を用いて検知する。具体的には、サブタンク40(図13参照)内のインクが満杯の状態(水頭差圧hが(h)の状態)から大きく減り、ラインヘッド20内の負圧が最大許容負圧に達した状態(水頭差圧hが(i)の状態)になったことを検知した場合に、移送ポンプ50を駆動する。これにより、サブタンク40内のインクの液面高さが上昇して水頭差が小さくなり、水頭差圧hをΔhの範囲内に維持できる。
【0080】
ここで、移送ポンプ50の駆動時間t’は、図9に示すように、サブタンク40内のインクが一定量(満杯)以上になり、戻り管86によってサブタンク40からインクカートリッジ30にインクが戻されるようになるまでの時間に設定されている。そのため、水頭差圧hは、図14(B)に示す(i)の状態から(j)の状態(サブタンク40内のインクが満杯で、水頭差圧hが(h)と同じ状態)となる。これにより、最小許容負圧より負圧が小さくなることはなく、水頭差圧hがΔhの範囲内に維持される。同様に、インク滴の吐出によって水頭差圧hが(j)の状態から(k)の状態になれば、インクの補充によって水頭差圧hが(k)の状態から(l)の状態に戻される。
【0081】
したがって、ラインヘッド20からインク滴が吐出され、サブタンク40(図13参照)内のインクが消費されても、図14(B)に示すように、最大許容負圧になったことが検知されたら移送ポンプ50を駆動時間t’だけ駆動することにより、サブタンク40にインクを適正に補充できる。その結果、インヘッド20内のインクの圧力は、大気圧に対して適正な範囲の負圧(Δhの範囲内の水頭差圧h)に維持される。なお、移送ポンプ50の駆動は、印画(インクの吐出)の停止時であっても印画を続行しながらでもよい。また、移送ポンプ50を常に駆動するようにしてもよい。
【0082】
ところで、本実施形態のインクジェットプリンタ10(図2参照)は、4色のインクを使用してカラー印画を行なうものである。そのため、ラインヘッド20やサブタンク40(図2参照)等は、インクの各色ごとに4つ配置されている。しかし、印画を行うと、色ごとのインクの消費量が必ずしも同じではないため、各サブタンク40内のインクの液面高さがばらばらになってしまう。これにより、各ラインヘッド20内の負圧が一定ではなくなる。
【0083】
図15は、本実施形態のインクジェットプリンタ10(図2参照)における4つのサブタンク40内のインクの液面高さを示す断面図である。
図15(A)に示すように、インクジェットプリンタ10によって印画(インクの吐出)を行なうと、4色のインク(Y,M,C,K)の消費量の違いにより、サブタンク40(Y)、サブタンク40(M)、サブタンク40(C)、及びサブタンク40(K)ごとにインクの液面高さが変わってくる。そして、このまま印画を続行すると、一番多くインクが消費されているサブタンク40(K)では、図14(A)に示す(b’)の状態のように、水頭差圧hが最大許容負圧を越えてΔhの範囲外となってしまう。
【0084】
そこで、図13に示すように、移送ポンプ50を駆動してインクカートリッジ30からサブタンク40にインクを補充する。具体的には、制御装置(図示せず)によって1つの駆動モータ51を制御し、4つの移送ポンプ50を同時に駆動する(例えば、図14(A)に示すように、駆動間隔Tで駆動時間tだけ駆動する)。そのため、図15(A)に示すように、インクの液面高さが異なる4つのサブタンク40(Y,M,C,K)に対し、同時にインクが補充される。
【0085】
この場合、一番インクが少なくなっているサブタンク40(K)に対しも、一番インクが多く残っているサブタンク40(C)に対しも、同じ時間だけインクが補充される。しかし、図9に示すように、サブタンク40内のインクが一定量(満杯)以上になると、戻り管86によってサブタンク40からインクカートリッジ30にインクが戻されるので、図14(A)に示すサブタンク40(K)が満杯になるまでインクを補充しても、サブタンク40(C)からインクが溢れることはない。その結果、図15(B)に示すように、4つのサブタンク40(Y,M,C,K)内のインクの液面高さがそれぞれ同じになる。
【0086】
このように、最大許容負圧(図14参照)を越える前に、4つのサブタンク40(Y,M,C,K)の中でもっとも時間がかかるサブタンク40(K)に合わせてインクを補充すれば、全てのサブタンク40(Y,M,C,K)が満杯になる。そのため、各サブタンク40(Y,M,C,K)に対し、独立してインクを補充する必要がない。そして、4つのラインヘッド20(図2参照)に対し、1つの手順で、各ラインヘッド20内のインクの圧力を大気圧に対して適正な範囲の負圧(図14に示すΔhの範囲内の水頭差圧h)に維持できる。しかも、各サブタンク40(Y,M,C,K)にインクを補充する4つの移送ポンプ50(図2参照)を1つの駆動モータ51(図2参照)で駆動できるので、小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0087】
また、インクジェットプリンタ10(図13参照)によって印画(インクの吐出)を行なうと、各サブタンク40(Y,M,C,K)内のインクが消費されるだけでなく、インク中に気泡が含まれるようになる。その結果、各サブタンク40(Y,M,C,K)にインクを補充し、図14に示すΔhの範囲内の水頭差圧hを維持しても、インクの吐出安定性が悪くなる。そのため、インクを循環させることにより、各サブタンク40(Y,M,C,K)でインク中の気泡を除去する。
【0088】
図16は、本実施形態のインクジェットプリンタ10(図3参照)におけるラインヘッド20内のインク中の気泡除去の流れを示すフローチャートである。
また、図17は、本実施形態のインクジェットプリンタ10における印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ラインヘッド20内のインク中の気泡を除去する状態を示すものである。
【0089】
ラインヘッド20内のインク中の気泡を除去するには、図17に示すように、ラインヘッド20とサブタンク40との間でインクを循環させる。具体的には、図16に示すステップS21により、ラインヘッド20のインク循環の開始になると、次のステップS22において、3方弁60のラインヘッド20側が「開」になっているか否かが検知される。そして、「開」になっていなければ、ステップS23に分岐し、ラインヘッド20側を「開」に切り換える。なお、図17に示す3方弁60は、ラインヘッド20側が「開」になっている状態を示している。
【0090】
また、3方弁60のラインヘッド20側が「開」になっていれば、ステップS24に移行し、サブタンク40(図17参照)の大気開放弁41が「開」になっているか否かが検知される。そして、「開」になっていなければ、ステップS25に分岐し、大気開放弁41を「開」に切り換える。なお、図17に示す大気開放弁41は、「開」になっている状態を示している。
【0091】
このように、3方弁60のラインヘッド20側を「開」とし、かつ大気開放弁41を「開」とした後、ステップS26において、CW方向(時計回り)に移送ポンプ50を回転駆動する。なお、図17に示す移送ポンプ50は、制御装置(図示せず)によって制御される駆動モータ51により、CW方向(時計回り)に回転駆動されている状態を示している。
【0092】
移送ポンプ50がCW方向(時計回り)に回転駆動されると、図17に示す移送ポンプ50内の矢印のように、インクが正方向(CW方向)に移送される。これにより、ラインヘッド20内のインク中の気泡がインクと一緒に移送され、図17に示す矢印のように、排出管88、3方弁60、移送管82、逆止弁アレイ70、移送管83、移送ポンプ50、移送管84、逆止弁アレイ70、移送管85、及びフィルタ91を通ってサブタンク40に移送される。そして、サブタンク40に移送されたインク中の気泡は、浮力によってインクから抜け、インクと気液分離される。その結果、インク中から気泡が除去され、サブタンク40内では、気泡を含まないインクだけが貯留されることとなる。
【0093】
また、インクの移送により、ラインヘッド20内は、負圧が大きくなる。その結果、ラインヘッド20から減少した分のインクは、サブタンク40から供給管87及びフィルタ92を通ってラインヘッド20に供給される。そして、供給されたインク中には、気泡が含まれていない。そのため、ラインヘッド20内のインクをサブタンク40に移送し、サブタンク40内のインクをラインヘッド20に供給する(ラインヘッド20とサブタンク40との間でインクを循環させる)ことにより、ラインヘッド20内やインクの移送経路中の気泡がサブタンク40で除去される。また、ラインヘッド20内は、サブタンク40内のインクの液面高さとの水頭差に応じた負圧に保たれる。
【0094】
ここで、移送ポンプ50(駆動モータ51)の駆動時間t3は、インクが循環する(最初にラインヘッド20内にあったインクがサブタンク40を通って再びラインヘッド20に戻ってくる)ようになるまでに十分な時間となっている。そして、図16に示すステップS27により、駆動時間≧t3であるか否かが検知され、駆動時間≧t3になれば、次のステップS28に移行して移送ポンプ50の回転駆動を停止する。これにより、ラインヘッド20内のインク中の気泡を除去することができ、ステップS29のインク循環の終了となる。
【0095】
図18は、本実施形態のインクジェットプリンタ10(図3参照)におけるノズル21(図3参照)近傍のインク中の気泡除去の流れを示すフローチャートである。
また、図19は、本実施形態のインクジェットプリンタ10における印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ノズル21近傍のインク中の気泡を除去する状態を示すものである。
【0096】
ノズル21近傍のインク中の気泡を除去するには、図19に示すように、ノズル21からヘッドキャップ22に向けてインクを吸引し、ヘッドキャップ22とサブタンク40との間でインクを循環させる。具体的には、図18に示すステップS31により、ラインヘッド20のインク吸引の開始になると、次のステップS32において、ヘッドキャップ22が「閉」になっているか否かが検知される。そして、「閉」になっていなければ、ステップS33に分岐し、ヘッドキャップ22の開閉装置(図示せず)によってヘッドキャップ22を「閉」に切り換え、ラインヘッド20のノズル21側をヘッドキャップ22で密閉する。なお、図19に示すヘッドキャップ22は、「閉」になっている状態を示している。
【0097】
また、ヘッドキャップ22が「閉」になっていれば、ステップS34に移行し、3方弁60のラインヘッド20側が「開」になっているか否かが検知される。そして、「開」になっていなければ、ステップS35に分岐し、ラインヘッド20側を「開」に切り換える。なお、図19に示す3方弁60は、ラインヘッド20側が「開」になっている状態を示している。
【0098】
さらにまた、3方弁60のラインヘッド20側が「開」になっていれば、ステップS36に移行し、サブタンク40(図19参照)の大気開放弁41が「開」になっているか否かが検知される。そして、「開」になっていなければ、ステップS37に分岐し、大気開放弁41を「開」に切り換える。なお、図19に示す大気開放弁41は、「開」になっている状態を示している。
【0099】
このように、ヘッドキャップ22を「閉」とし、3方弁60のラインヘッド20側を「開」とし、かつ大気開放弁41を「開」とした後、ステップS38において、CCW方向(反時計回り)に移送ポンプ50を回転駆動する。なお、図19に示す移送ポンプ50は、制御装置(図示せず)によって制御される駆動モータ51により、CCW方向(反時計回り)に回転駆動されている状態を示している。
【0100】
移送ポンプ50がCCW方向(反時計回り)に回転駆動されると、図19に示す移送ポンプ50内の矢印のように、インクが逆方向(CCW方向)に移送される。そのため、逆止弁アレイ70により、ヘッドキャップ22につながる排出管89からインクが入り、移送管84から出て移送ポンプ50に向かう移送経路が形成される。また、移送管83からインクが入り、移送管85から出てサブタンク40に向かう移送経路が形成される。なお、移送されたインク中に異物等が混入していた場合には、フィルタ93により、逆止弁アレイ70に入る前に除去される。
【0101】
したがって、インクを逆方向(CCW方向)に移送すると、ヘッドキャップ22内の圧力が低下し、ラインヘッド20内のインクがノズル21から吸引される。これにより、ノズル21近傍の気泡がインクと一緒にヘッドキャップ22に溜められる。そして、ヘッドキャップ22内の気泡を含むインクは、図19に示す矢印のように、排出管89、フィルタ93、逆止弁アレイ70、移送管84、移送ポンプ50、移送管83、逆止弁アレイ70、移送管85、及びフィルタ91を通ってサブタンク40に移送される。これにより、インク中の気泡が浮力によってインクから抜けるようになり、インクと気液分離されるので、インク中から気泡が除去される。その結果、サブタンク40内では、気泡を含まないインクだけが貯留されることとなる。
【0102】
また、ノズル21からのインクの吸引により、ラインヘッド20内は、負圧が大きくなる。その結果、ラインヘッド20から減少した分のインクは、サブタンク40から供給管87及びフィルタ92を通ってラインヘッド20に供給される。そして、供給されたインク中には、気泡が混入していない。また、ラインヘッド20内は、サブタンク40内のインクの液面高さとの水頭差に応じた負圧に保たれる。
【0103】
ここで、移送ポンプ50(駆動モータ51)の駆動時間t4は、インクが循環する(最初にラインヘッド20内にあったインクがノズル21からヘッドキャップ22に向けて吸引され、サブタンク40を通って再びラインヘッド20に戻ってくる)ようになるまでに十分な時間となっている。そして、図18に示すステップS39により、駆動時間≧t4であるか否かが検知され、駆動時間≧t4になれば、次のステップS40に移行して移送ポンプ50の回転駆動を停止する。これにより、ノズル21近傍のインク中の気泡を除去することができ、ステップS41のインク吸引の終了となる。
【0104】
また、ステップS34及びステップS35により、3方弁60のラインヘッド20側が「開」になっている。そのため、ステップS38のように、移送ポンプ50をCCW方向(反時計回り)に回転駆動すれば、ノズル21近傍のインク中の比較的小さな気泡を除去できる。一方、図16に示すステップS26のように、移送ポンプ50をCW方向(時計回り)に回転駆動すれば、ラインヘッド20内のインク中の比較的大きな気泡を除去できる。したがって、移送ポンプ50の駆動方向を逆転するだけで、インク中の全ての気泡を除去できる。さらにまた、ラインヘッド20内のインクだけでなく、ヘッドキャップ22に吸引されたインクも循環させ、ラインヘッド20に戻すことができるので、無駄なインクの消費を減らすことができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、例えば、以下のような種々の変形が可能である。
(1)本実施形態では、液体供給装置及び液体吐出装置として、印画幅分のラインヘッド20を備えるインクジェットプリンタ10を例に挙げた。しかし、このようなインクジェットプリンタ10に限らず、シリアルヘッド方式のインクジェットプリンタでもよい。また、各種の液体を吐出する他の液体吐出装置(例えば、染め物に対して染料を吐出する液体吐出装置等)にも広く適用できる。
【0106】
(2)本実施形態では、移送ポンプ50として、弾性チューブを連続的に弾性変形させてインクを移送するチューブポンプを例に挙げた。しかし、チューブポンプに限らず、他の形式のポンプ(例えば、ピストンポンプ等)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施形態のインクジェットプリンタの概略を示す側面図である。
【図2】本実施形態のインクジェットプリンタの印画部を示す斜視図である。
【図3】本実施形態のインクジェットプリンタにおける印画部の1色分の配管系を示す概念図である。
【図4】ラインヘッドを部分的に示す断面図及び斜視図である。
【図5】本実施形態のインクジェットプリンタにおける逆止弁アレイを示す断面図であり、ラインヘッド内のインクを循環させる状態を示している。
【図6】本実施形態のインクジェットプリンタにおける逆止弁アレイを示す断面図であり、ヘッドキャップに吸引されたインクを循環させる状態を示している。
【図7】本実施形態のインクジェットプリンタにおけるサブタンクへのインク充填の流れを示すフローチャートである。
【図8】本実施形態のインクジェットプリンタにおける印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、サブタンクへのインク充填途中の状態を示すものである。
【図9】本実施形態のインクジェットプリンタにおける印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、サブタンクへのインク充填終了時の状態を示すものである。
【図10】本実施形態のインクジェットプリンタにおけるラインヘッドへのインク供給の流れを示すフローチャートである。
【図11】本実施形態のインクジェットプリンタにおける印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ラインヘッドへのインク供給途中の状態を示すものである。
【図12】本実施形態のインクジェットプリンタにおける印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ラインヘッドへのインク供給終了時の状態を示すものである。
【図13】本実施形態のインクジェットプリンタにおける印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ラインヘッドへのインク補充途中の状態を示すものである。
【図14】本実施形態のインクジェットプリンタにおけるラインヘッド内の負圧(水頭差圧h)の変化を模式的に示すグラフである。
【図15】本実施形態のインクジェットプリンタにおける4つのサブタンク内のインクの液面高さを示す断面図である。
【図16】本実施形態のインクジェットプリンタにおけるラインヘッド内のインク中の気泡除去の流れを示すフローチャートである。
【図17】本実施形態のインクジェットプリンタにおける印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ラインヘッド内のインク中の気泡を除去する状態を示すものである。
【図18】本実施形態のインクジェットプリンタにおけるノズル近傍のインク中の気泡除去の流れを示すフローチャートである。
【図19】本実施形態のインクジェットプリンタにおける印画部の1色分の配管系を示す概念図であり、ノズル近傍のインク中の気泡を除去する状態を示すものである。
【符号の説明】
【0108】
10 インクジェットプリンタ
15 着脱台座
20 ラインヘッド(消費対象及び液体吐出ヘッド)
20a 供給口
20b 排出口
21 ノズル
22 ヘッドキャップ
30 インクカートリッジ(液体タンク)
40 サブタンク(補助タンク)
41 大気開放弁
50 移送ポンプ
51 駆動モータ(駆動源)
60 3方弁
70 逆止弁アレイ
71 第1入口
72 第2入口
73 第1出口
86 戻り管
87 供給管
88 排出管
93 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の消費対象に供給する液体を貯留した液体タンクと、
前記液体タンクに貯留されている液体を移送するための移送ポンプと、
前記移送ポンプによって移送された液体を前記消費対象に供給するように配管された供給管と、
前記消費対象によって消費されなかった液体を前記消費対象から排出するように配管された排出管と、
前記液体タンク及び前記排出管と前記移送ポンプとの間に配置され、前記液体タンクから前記移送ポンプに向かう流路と前記排出管から前記移送ポンプに向かう流路とを切換え可能な3方弁と
を有する液体供給装置。
【請求項2】
供給された液体をノズルから吐出可能な液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドによって吐出される液体を貯留した液体タンクと、
前記液体タンクに貯留されている液体を移送するための移送ポンプと、
前記移送ポンプによって移送された液体を前記液体吐出ヘッドに設けられた供給口に供給するように配管された供給管と、
前記液体吐出ヘッド内の液体を前記供給口の反対側に設けられた排出口から排出するように配管された排出管と、
前記液体タンク及び前記排出管と前記移送ポンプとの間に配置され、前記液体タンクから前記移送ポンプに向かう流路と前記排出管から前記移送ポンプに向かう流路とを切換え可能な3方弁と
を有する液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置において、
前記ノズルから吐出する液体の種類に応じてそれぞれ設けられた複数の前記液体吐出ヘッド、複数の前記液体タンク、複数の前記移送ポンプ、複数の前記供給管、複数の前記排出管、及び複数の前記3方弁を有する
液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置において、
複数設けられた各前記移送ポンプを同時に駆動できる1つの駆動源を有する
液体吐出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の液体吐出装置において、
複数設けられた各前記3方弁を同時に作動できる1つの作動源を有する
液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記移送ポンプによって移送された液体を前記液体吐出ヘッドに供給する前で一時的に貯留する補助タンクを有する
液体吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体吐出装置において、
前記補助タンク内の気体を大気に開放するための大気開放弁を有する
液体吐出装置。
【請求項8】
供給された液体をノズルから吐出可能な液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドによって吐出される液体を貯留した液体タンクと、
前記液体タンクに貯留されている液体を移送するための移送ポンプと、
前記移送ポンプによって移送された液体を前記液体吐出ヘッドに設けられた供給口に供給するように配管された供給管と、
前記液体吐出ヘッド内の液体を前記供給口の反対側に設けられた排出口から排出するように配管された排出管と、
前記液体タンク及び前記排出管と前記移送ポンプとの間に配置され、前記液体タンクから前記移送ポンプに向かう流路と前記排出管から前記移送ポンプに向かう流路とを切換え可能な3方弁と、
前記移送ポンプの駆動及び前記3方弁の作動を制御するための制御装置と、
前記移送ポンプによって移送された液体を前記液体吐出ヘッドに供給する前で一時的に貯留する補助タンクと
を有し、
前記制御装置により、前記3方弁を前記排出管から前記移送ポンプに向かう流路に切り換えた状態で前記移送ポンプを駆動し、前記液体吐出ヘッド内の液体を前記排出管、前記補助タンク、及び前記供給管を通して循環させる
液体吐出装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−30206(P2010−30206A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196304(P2008−196304)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】