説明

液体供給装置

【課題】例えばディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液を供給する際に好適で、少量の水溶液を人力によって簡便に供給でき、しかも簡単な構成で容易かつ安価に製作できる、液体供給装置を提供すること。
【解決手段】貯液タンク1の外周面に設けた給液口7の上方に、供給液体28を移動かつ配置可能な液体供給装置48であること。
走行車輪54を設けた基枠49に支持枠51を取り付けること。
前記支持枠51に、前記供給液体28を収納した容器46を収容可能な載置棚52を回動可能に取り付けること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液を供給する際に好適で、少量の水溶液を人力によって簡便に供給でき、しかも簡単な構成で容易かつ安価に製作できるようにした、液体供給装置に関する。
【0002】
ディーゼルエンジンの排出ガスに含まれるNOxの低減手段として、ディーゼル車両に排出ガス浄化装置を構成するNOx還元触媒を装備し、該NOx還元触媒に所定の還元剤を添加し、該還元剤を排出ガス中のNOxと還元反応させ、NOxの排出濃度を低減するようにしたものがある。
【0003】
このうち、前記還元剤に毒性のない尿素を採択したものとして、ディーゼル車両に排出ガス浄化装置であるNOx還元触媒と、還元剤溶液を作製する自動調合装置とを搭載し、該調合装置は、尿素粉末タンクと水タンク、およびこれらの所定量を収容して撹拌する撹拌タンクと、作製した尿素水を収容し、その所定量を排気ガス浄化装置へ供給する還元剤溶液タンクとを備えている。
【0004】
前記水タンクから所定量の水を撹拌タンクへ供給し、また尿素粉末タンクから所定量の尿素粉末を撹拌タンクへ供給し、これらを撹拌して所定濃度に作製後、この尿素水を還元剤溶液タンクに貯留し、該尿素水を適時ポンプで圧送して排気ガス浄化装置へ噴射し、マフラ−から排出される排出ガス中のNOxを還元し浄化するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、前記自動調合装置は、撹拌タンクと水タンクと尿素粉末タンクとを有するため、大形重量化し、車両の構造が複雑になるとともに、それらの設置スペースを要し、また搭載した尿素粉末が水分を吸収して固まってしまい、その添加量の制御が困難になる一方、長距離運転時には還元剤無添加運転の心配があり、これを防止するためには、補給用の尿素粉末や水の用意と、その煩雑な補給作業を要する等の問題があった。
【0006】
そこで、上記問題を解決するものとして、還元剤溶液タンクに液面センサと濃度センサを設け、所定以下の液面または濃度を検出時に警報作動信号を出力可能な制御装置を設け、警報信号を下に尿素水を適時作製し補給を促すようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかし、この従来のものは、液面センサや濃度センサおよび警報装置と、それらの作動を制御する制御装置とを要し、構成が複雑化し高価になるとともに、警報時に所要の尿素水を速やかに作製することは事実上難しく、またそのために所要量の尿素粉末と水の搭載、およびその設置スペ−スを要して、車両が大形重量化する上に、搭載した尿素粉末が水分を吸収して固まってしまい、安定した排気ガス浄化作用を確保し難い等の問題があった
【0008】
このため、出願人は、ディーゼルエンジンの排出ガス浄化に好適で、ディ−ゼル車両の構造や設置上の問題を生ずることなく、尿素水等の還元剤水溶液を所定濃度に安価かつ速やかに作製でき、これを簡便にディ−ゼル車両へ供給できるとともに、小形軽量で簡便に使用でき、これを安価に製作できるようにした、排出ガス浄化用還元剤の水溶液作製装置を開発し、これを既に提案している。
【0009】
すなわち、この既に開発した排出ガス浄化用還元剤の水溶液作製装置は、顆粒状若しくは粉末状の排出ガス浄化用還元剤を水に溶解し、所定濃度の還元剤水溶液を作製し、かつ該水溶液を収容する水溶液作製タンクと、前記水溶液作製タンクに前記還元剤を水に溶解し、かつこれらを撹拌可能な撹拌装置とを備えたもので、前記水溶液作製タンクを前記水溶液の充填供給対象車両と別設し、該タンクを移動可能または定位置に設置可能にするとともに、前記撹拌装置を介し前記水溶液を外部に供給可能にしている。
【0010】
しかし、前記水溶液作製装置は、前記還元剤水溶液を簡便に作製でき、小形軽量で少量使用者に好適であるが、大量使用者には還元剤水溶液を頻繁に作製する面倒があり、使用量の多少に即応可能な装置の改善が望まれていた。
【0011】
【特許文献1】特開2002−370016号公報
【特許文献2】特開2002−371831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような問題を解決し、例えばディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液を供給する際に好適で、少量の水溶液を人力によって簡便に供給でき、しかも簡単な構成で容易かつ安価に製作できるようにした、液体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、貯液タンクの外周面に設けた給液口の上方に、供給液体を移動かつ配置可能な液体供給装置において、走行車輪を設けた基枠に支持枠を取り付け、該支持枠に前記供給液体を収納した容器を収容可能な載置棚を回動可能に取り付け、前記供給液体を収納した容器を所定位置へ簡便に搬送できるとともに、載置棚を回動し容器を傾動させることによって、内部の供給液体を人力によって貯液タンクへ容易に供給し得るようにしている。
【0014】
請求項2の発明は、前記容器に給液ホースを着脱可能に取り付け、該ホースの先端部を前記給液口に挿入可能にするとともに、前記載置棚に給液ホースを挿入可能なホース入れを設け、容器内の供給液体を貯液タンクへ確実かつ容易に供給し得るとともに、給液ホースをホース入れに挿入可能にして、給液ホースの安定化を図り、またホース入れを有底にすることによって、給液ホースからの後だれを防止し得るようにしている。
請求項3の発明は、前記基枠の一端に走行車輪を取り付け、この他端を地面に着地可能に設けて、移動または静止可能にし、簡単な構成で液体供給装置の移動と静止を実現し得るようにしている。
【0015】
請求項4の発明は、前記支持枠を伸縮可能に設け、前記載置棚の高さ位置を調整可能にし、各種サイズの貯液タンクに対する液体供給に応じられるようにしている。
請求項5の発明は、前記載置棚の高さを、給液口に着脱可能に装着したタンクキャップの高さ以上に調整可能にし、載置棚を給液口の上方に移動かつ配置可能にして、容器に収容した供給液体を貯液タンクへ簡便に供給し得るようにしている。
【0016】
請求項6の発明は、前記載置棚に、前記容器の周面に掛け渡し可能なベルトを取り付け、前記容器の滑落を防止し、これを安全に搬送できるようにしている。
したがって、例えば前記ベルトをY字形状に形成すれば、容器の滑り止め作用が向上し、容器の滑落防止を強化できる。
請求項7の発明は、前記容器内の供給液体を、給液ホ−スを介して被供給側の収納タンクへ供給可能にし、前記容器から貯液タンクへ供給液体の移し替えを要することなく、供給液体を簡便かつ速やかに供給し得るようにしている。
【0017】
請求項8の発明は、前記給液ホ−スの先端部を、タンクキャップに一端を連結した継手管の他端の外側部に挿入可能にし、タンクキャップを取り外すことなく、継手管の他端の外側部に給液ホ−スを挿入して、容器に収容した供給液体を貯液タンクへ簡便に供給し得るようにしている。
請求項9の発明は、前記供給液体は、ディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液で、該水溶液を人力によって貯液タンクへ容易に供給し得るようにしている。
請求項10の発明は、前記水溶液は尿素水で、安全で多用されている尿素水の供給に好適にしている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明は、走行車輪を設けた基枠に支持枠を取り付け、該支持枠に前記供給液体を収納した容器を収容可能な載置棚を回動可能に取り付けたから、前記供給液体を収納した容器を所定位置へ簡便に搬送できるとともに、載置棚を回動し容器を傾動させることによって、内部の供給液体を人力によって貯液タンクへ容易に供給し得る効果がある。
【0019】
請求項2の発明は、前記容器に給液ホースを着脱可能に取り付け、該ホースの先端部を前記給液口に挿入可能にするとともに、前記載置棚に給液ホ−スを挿入可能なホース入れを設けたから、容器内の供給液体を貯液タンクへ確実かつ容易に供給し得るとともに、給液ホースをホース入れに挿入可能にして、給液ホースの安定化を図り、またホース入れを有底にすることによって、給液ホースからの後だれを防止することができる。
請求項3の発明は、前記基枠の一端に走行車輪を取り付け、この他端を地面に着地可能に設けて、移動または静止可能にしたから、簡単な構成で液体供給装置の移動と静止を実現することができる。
【0020】
請求項4の発明は、前記支持枠を伸縮可能に設け、前記載置棚の高さ位置を調整可能にしたから、各種サイズの貯液タンクに対する液体供給に応じられる効果がある。
請求項5の発明は、前記載置棚の高さを、給液口に着脱可能に装着したタンクキャップの高さ以上に調整可能にしたから、載置棚を給液口の上方に移動かつ配置可能にし、容器に収容した供給液体を貯液タンクへ簡便に供給することができる。
【0021】
請求項6の発明は、前記載置棚に、前記容器の周面に掛け渡し可能なベルトを取り付けたから、前記容器の滑落を防止し、これを安全に搬送することができる。
したがって、例えば前記ベルトをY字形状に形成すれば、容器の滑り止め作用が向上し、容器の滑落防止を強化することができる。
請求項7の発明は、前記容器内の供給液体を、給液ホースを介して被供給側の収納タンクへ供給可能にしたから、前記容器から貯液タンクへ供給液体の移し替えを要することなく、供給液体を簡便かつ速やかに供給することができる。
【0022】
請求項8の発明は、前記給液ホースの先端部を、タンクキャップに一端を連結した継手管の他端の外側部に挿入可能にしたから、タンクキャップを取り外すことなく、継手管の他端の外側部に給液ホースを挿入して、容器に収容した供給液体を貯液タンクへ簡便に供給することができる。
請求項9の発明は、前記供給液体は、ディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液であるから、該水溶液を人力によって貯液タンクへ容易に供給することができる。
請求項10の発明は、前記水溶液は尿素水であるから、安全で多用されている尿素水の供給に好適な効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を利用するディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液である尿素水の貯液タンクについて説明すると、図1乃至図8において1は合成樹脂製の透明または半透明の貯液タンクで、約1000リットルの尿素水を収容可能な略直方体形状に形成され、その周面に剛性強化用の多数の凹部ないし凹状リブ2が成形されている。
【0024】
前記貯液タンク1は、例えばフォークリフト搬送用の架台3上に載置され、常時は給油基地やトラックステーション、工場等の適所に安定に設置されている。
図中、4は前記タンク1の周囲に取り付けた防護ネットで、防護枠5を縦横に組み付けて構成され、該防護枠5の下端部を架台3に固定している。6は前記架台3の周面に開口した各一対のフォーク挿入孔である。
【0025】
前記貯液タンク1の上部中央に給液口7が設けられ、該給液口7の開口縁のネジ部8にタンクキャップ9がねじ込まれている。タンクキャップ9の中央にネジ孔10が形成され、該ネジ孔10にエルボ状の管継手11の基端部がねじ込まれ、その一端がタンクキャップ9内部に突出している。
【0026】
図中、12は管継手11の後述する取付管周面に装着したストッパリングで、該リング12をネジ孔10の内側突縁13に係合可能に配置し、管継手11の抜け止めと支持の安定化を図っている。14はネジ孔10管継手11の外側突縁、15は管継手11の先端部に固定した取付管で、その凹状の環状ガイド15aに前記外側突縁14が係合して配置され、管継手11とタンクキャップ9の支持の安定化を図っている。
【0027】
前記管継手11の他端部周面にネジ部16が形成され、該ネジ部16にレバーカップリング17のネジ孔18がねじ込まれて連結されている。前記レバーカップリング17に接続管19が突設され、該管19に大量の尿素水を供給可能なタンク車(図示略)等の給液管20の一端を接続可能にしている。
【0028】
図中、21は前記接続管19に嵌合可能な防塵カップリングで、一方の管端部が閉塞され、管継手11の不使用時、つまり尿素水の非供給時に接続管19に連結され、管継手11に対する異物の混入を防止可能にしている。
22は防塵カップリング21の周面に回動可能に連結した牽引用レバーで、該レバー22の先端に把持部23が設けられている。24はレバーカップリング17と防塵カップリング21とを接続したチェーンである。
【0029】
前記管継手11の基端部側に空気逃がし管25が設けられ、該管25は略U字形状の空気捕集部26と、該捕集部26の一方の管端部に連結した略逆U字形状の排気部27とからなり、前記空気捕集部26の過半部を貯液タンク1内に収容した、供給液体である尿素水28中に没入し、その他方の管端部を前記給液口7内の尿素水28の液面上に突出させて配置している。
【0030】
前記排気部27の一端は管継手11の外側に突出して配置され、その管端部を大気中に開口していて、その管端部に網付きのキャップ29が装着され、異物混入を防止している
図中、30は排気部27の適所に設けた逆止弁で、外部から空気の逆流を防止可能にしている。
【0031】
前記貯液タンク1上の管継手11より離間位置に給液ポンプ31が設けられ、その汲み上げ管32を尿素水28中に没入し、貯液タンク1の外部に給液導管33の一端が接続され、この他端に給液ガンノズル34が取り付けられている。
【0032】
また、前記貯液タンク1上の管継手11より離間位置にフィッティング35が取り付けられ、その螺軸36に複数のナット37がねじ込まれている。そして、前記ナット37,37の間に、略コ字形断面の合成樹脂製のフロートストッパ38の上端部が挟持され、その下端部に合成樹脂製の中空円筒形のフロート39を係合可能に配置している。
【0033】
前記フロートストッパ38の下端部は、貯液タンク1の高さの略3/4に設置され、尿素水28が貯液タンク1の容積の略3/4供給されたところで、後述のフロートゲージによる液面表示を開始可能にしている。
【0034】
前記フロート39に合成樹脂製の棒状のフロートゲージ40が突設され、該ゲージ40が、フィッティング35を貫通して直立する透明な合成樹脂製のゲージ管41に摺動可能に嵌合している。
前記ゲ−ジ管41に目盛り(図示略)が設けられ、その上端部にキャップ42が取り付けられていて、フロートゲージ40の上端部がゲージ管41の上部に移動する図8の状況において、尿素水28を約1000リットル収容した満タン状態を表示可能にしている。
この他、図中43は貯液タンク1の下部に設けたドレン管で、ドレンコック44を介して開閉可能にされ、45は給液ポンプ31の給電コードである。
【0035】
このように構成した貯液タンク1は、大容量の直方体形状に形成されて架台3上に載置され、かつその周囲を防護ネット4で防護して、外力による破損を防止するとともに、例えばフォークリフトによって適宜搬送可能に構成され、常時は給油基地やトラックステーション、工場等の適所に設置される。
【0036】
前記貯液タンク1の上部中央にタンクキャップ9が施栓され、該キャップ9に管継手11が取り付けられ、該継手11にレバーカップリング17が連結され、該カップリング17に防塵カップリング21が連結され、該カップリング21の閉塞端部によって外部からの異物混入を防止している。
【0037】
一方、管継手11の基部側に空気逃がし管25が設けられ、その空気捕集部26が貯液タンク1内に設けられ、排気部27の一部が外部に突出し、その端部が大気に開口していて、その管端部に網付きキャップ29が装着され、異物混入を防止している。
【0038】
また、前記貯液タンク1上部のタンクキャップ9と離間位置に給液ポンプ31が設置され、該ポンプ31に給液導管33を介して、給液ガンノズル34が取り付けられている。
前記貯液タンク1上部のタンクキャップ9と離間位置にゲージ管41が突設され、該管41内をフロートゲージ40が摺動可能に挿入され、該ゲージ40の下端にフロート39が接続されている。前記フロート39は、尿素水28の供給前または所定の液面レベル以下のときは、フロートストッパ38の下端に係合し、静止している。
【0039】
次に、前記貯液タンク1にタンク車(図示略)等から大量に尿素水28を供給する場合は、タンク車を貯液タンク1付近に停車し、前記防塵カップリング21を取り外して、レバーカップリング17の接続管19を表出させる。
そして、タンク車の給液管20の一端を接続管19に接続し、給液管20の管端部をタンク車側のカップリング(図示略)で連結して、タンク車の圧送ポンプを駆動し、既製の尿素水28を給液管20へ送り出す。
このように前記貯液タンク1は、既製の尿素水28を用いているから、従来のようにタンクで尿素水を作製する面倒がなく、均質の尿素水28を迅速にディ−ゼル車両へ供給し得る。
【0040】
尿素水28は給液管20に導かれて、レバーカップリング17から管継手11へ移動し、貯液タンク1内に流下する。その際、貯液タンク1内の液面レベルは、貯液タンク1が透明または半透明部材で構成されているため、外部から容易に視認できる。
貯液タンク1内に尿素水28が所定量供給されると、その液面が図7のようにフロートストッパ38の下端部に到達し、フロート39が浮上して液面変化と同動し、フロートゲージ40がゲージ管41内を上動する。
【0041】
そして、フロートゲージ40の上端部が図8のようにゲージ管41の上端部へ移動したところで、尿素水28が略満タン状態になったことを視認し、圧送ポンプの駆動を停止して尿素水28の供給を停止する。
【0042】
その際、貯液タンク1内における尿素水28の液面上昇によって、貯液タンク1内の空気が上方へ押し上げられ、該空気が前記タンク1内の上部に開口した空気捕集部26の一方へ押し込まれ、これが他方へ移動して排気部27へ導かれ、外部に突出した排気部27の一方から大気中へ押し出される。
したがって、貯液タンク1内の残留空気が除去され、尿素水28が円滑に貯液タンク1内へ供給され、この後給液ポンプ31を駆動して尿素水28を車両へ供給する際、給液ポンプ31の空気圧縮事故を未然に防止する。
【0043】
こうして、貯液タンク1に尿素水28を満タン状態に供給したところで、タンク車側のカップリングを取り外し、給液管20を取り外し後、防塵カップリング21をレバーカップリング17に連結する。
【0044】
次に、貯液タンク1に供給した尿素水28をディーゼル車両に供給する場合は、給液ポンプ31を駆動し、尿素水28を汲み上げ管32で汲み上げ、これを給液導管33から給液ガンノズル34へ導く。これと前後して、給液ガンノズル34を被供給側であるディーゼル車両に搭載した尿素水収納タンク(図示略)の充填口に挿入し、そのノズルトリガを操作して開弁し、尿素水28を前記尿素水収納タンクへ供給する。
この場合、貯液タンク1内は排気部27を介して大気と連通しているから、尿素水28が円滑に給液ガンノズル34へ導かれ、尿素水収納タンク(図示略)へ移動する。
【0045】
こうして尿素水28がディーゼル車両へ供給されると、貯液タンク1内の尿素水28の液面が下がり、これにフロート39が同動してフロートゲージ40が下動し、その上端部がゲージ管41内を下動する。
したがって、作業者は、尿素水28の供給開始当初のフロートゲージ40の上端部位置から、現状の下降位置を視認することで、ディーゼル車両に対する現状の供給容量を知り得る。
この場合、給液ガンノズル34の代わりに、流量計を備えた給液ガンノズルを用いれば、ディ−ゼル車両に対する供給容量を正確に知り得る。
【0046】
図9乃至図14は本発明を適用した液体供給装置の実施形態を示し、前述の構成と対応する部分に同一の符号を用いている。
このうち、図9乃至図11は本発明の第1の実施形態を示し、この実施形態は、タンク車によって尿素水28を貯液タンク1へ供給する代わりに、比較的少量の尿素水28を人手によって貯液タンク1へ供給する場合に適用している。
【0047】
このため、所要量の市販の箱形容器(パッキングボックス)46を購入し、該容器46は一端にネジ孔若しくは通孔等の取付孔(図示略)を有し、該取付孔に容器46に付属する所要長の給油ホース47を取り付け可能にし、該容器46に所要量の尿素水28を収納している。
前記第1の実施形態では、前記容器46を内外二重構造に構成し、外部を段ボール紙製とし、内部を合成樹脂製として再利用可能にし、その内部に約20〜30リットルの尿素水28を収容可能にしていて、該容器46を液体供給装置である台車48によって、搬送可能にしている。
【0048】
前記台車48は、略逆U字形状の左右一対の基枠49と、該基枠49に立設した支柱50と、該支柱50に摺動可能に嵌合した略逆U字形状の支持枠51と、該支持枠51,51の間に回動可能に取り付けた載置棚52とを備えている。
前記基枠49は補強枠53で連結され、該基枠49の一端に走行車輪54が回転自在に取り付けられ、他端を地面55に着地可能にしていて、この両端によって基枠49を立位かつ静止可能にしている。
【0049】
前記支柱50は補強枠56で連結され、該支柱50の上端部に支持枠51の下端部が摺動可能に嵌合していて、支持枠51を伸縮かつ高さ調整可能にしており、その所望の伸縮変位ないし高さを、ロックノブ57で固定可能にしている。
前記載置棚52は、支軸58を介して支持枠51に回動可能に支持され、該載置棚52は略U字形断面に形成されていて、その一端に給油ホ−ス47を挿入可能な鞘状のホース入れ59を設けている。
【0050】
図中、60は載置棚52の他端部に設けた略U字形状の把手、61は載置棚52の前後両端部に一端を取り付けたベルトで、前記容器46の周面に掛け渡し、これを止め具64で保持可能にしている。
62は前記支軸58と同軸上に設けたロックハンドル、63は載置棚52の外側面に突設したストッパで、前記支持枠51に係合可能にしていて、その係合位置で載置棚52を水平に支持可能にしている。
【0051】
このような第1の実施形態において、前記台車48は貯液タンク1若しくは尿素水入り容器46の保管場所の周辺に置かれ、該台車48を容器46の保管場所へ移動する。
この移動に際しては、支持枠51の先端部を把持し、走行車輪54を中心に手前下方へ回動し、基枠49の他端を地面55から引き離して、支持枠51を押し動かし、走行車輪54を地面55上に走行させて行なう。そして、台車48を前記保管場所へ移動したところで、基枠49の他端を地面55に着地させ、支持枠51を直立させて静止する。
【0052】
次にロックノブ57を操作し、支持枠51の長さないし高さを伸縮調整し、載置棚52の高さを貯液タンク1のタンクキャップ9の高さ以上に調整し、その調整位置をロックノブ57で固定する。この後、尿素水入り容器46を載置棚52に積み込み、該容器46の外面にベルト61を掛け渡し、これを止め具64で緊張して容器46を保持する。
【0053】
こうして、容器46を載置棚52に積み込んだところで、台車48を前述の要領で貯液タンク1の周辺に移動し、支持枠51を直立させて静止する。
そして、容器46に付属する給液ホース47を取り出し、該ホース47の基端部を容器46の取付孔(図示略)に接続する。この状況は図9および10のようである。
【0054】
一方、前記台車48の到着後、貯液タンク1のタンクキャップ9を取り外し、該キャップ9と空気逃がし管25、およびレバーカップリング19と防塵カップリング21とを一緒に取り外し、給液口7の上方を開放する。
そこで、給液ホース47を保持し、その先端部を給液口7に挿入後、ロックハンドル62を操作し、把手60を保持しながら載置棚52を支軸58を中心に下向きに回動し、容器46を同動させて傾ける。この状況は図11のようである。
【0055】
このようにすると、容器46内の尿素水28が給液ホ−ス47に導かれて貯液タンク1に流入する。その際、載置棚52は回動自在に置かれるため、把手60を保持しながらその回動角度を漸増し、容器46の傾き角度を漸増することによって、容器46内の尿素水28の全量を貯液タンク1に供給し得る。
【0056】
こうして容器46内の尿素水28を貯液タンク1に供給後、支持枠51を傾動し、前述の要領で台車58を貯液タンク1から移動する。そして、止め具64を掛け外しベルト61を取り外して、空状態の容器46を載置棚52から取り出し、これを適所に保管して、尿素水28の再充填および容器46の再利用に備える。
この後、貯液タンク1内の尿素水28を被供給側のディーゼル車両に供給する場合は、前述と同様な要領で行なわれる。
【0057】
この場合、尿素水28を全量使用せず、容器46内に尿素水28が残留する場合は、給液ホース47の先端部をホース入れ59に挿入し、台車58を適宜位置へ移動して直立状態で静止し、かつ載置棚52を水平に支持して、該棚52に容器46を載置させて置く。
このようにすることで、容器46内の残留尿素水28を適時迅速に貯液タンク1に供給し得る。
【0058】
なお、上述の実施形態はタンクキャップ9を取り外し、給液口7に給液ホース47を挿入して尿素水28を供給しているが、タンクキャップ9を取り外さず、レバーカップリング19の先端部に給液ホース47を挿入して尿素水28を供給することも可能である。
【0059】
図12乃至図14は本発明の第2の実施形態を示し、この実施形態は前述の実施形態におけるホース入れ59を有底に形成し、これを載置棚52の前端または後端部の片側に配置して、給液ホース47をコンパクトかつ体裁良くホース入れ59に挿入し、かつ給液後の後だれを防止するようにしている。
【0060】
また、ベルト61を略Y字形状に形成して容器46の周面に掛け渡し、容器46に対する接触面積を増加することで、第1の実施形態のようにベルト61を容器46の周面に直線状に掛け渡す場合に比べ、容器46の保持力を強化し、その滑落防止を向上するようにしている。
【0061】
このように、これらの実施形態は、所要量の尿素水28を収容した容器46と、該容器46を搬送する台車48を用いることによって、尿素水28の作製を要することなく、簡易かつ安価な設備によって、所要量の尿素水28を貯液タンク1に簡便かつ手軽に供給することができる。
したがって、例えばタンク車等による尿素水の速やかな供給が困難な場合の応急処置として、或いは比較的少容量の貯液タンク1を自家用に設置し、該タンク1に簡便かつ手軽に尿素水28を供給する場合に好適である。
【0062】
なお、前述の実施形態では、容器46内の供給液体を一旦貯液タンク1に移し替えて、貯液タンク1から被供給側の収納タンクへ供給しているが、少量の供給液体を供給する場合は、給液ホース47を車両側の収納タンクの供給口に挿入し、容器46内の供給液体を直接収納タンクへ供給することも可能であり、そのようにすることで前記移し替えの手間を省き、供給液体を簡便かつ速やかに供給し得ることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
このように本発明の液体供給装置は、少量の水溶液を人力によって簡便に供給でき、しかも簡単な構成で容易かつ安価に製作できるようにしたから、例えばディ−ゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液を供給する際に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明を利用するディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液である、尿素水の貯液タンクを示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の左側面図である。
【図4】図1の貯液タンクに適用した給液ポンプの設置状況の要部を拡大して示す正面図である。
【図5】図4の左側面図である。
【0065】
【図6】図1の貯液タンクに適用したタンクキャップと、空気逃がし管およびレバーカップリング並びに防塵カップリングの取り付け状況を拡大して示す断面図である。
【図7】図1の貯液タンクに適用した液面表示機構を拡大して示す断面図で、フロートとフロートゲージおよびフロートストッパとゲージ管の設置状況と、尿素水の満タン状況を示している。
【図8】図1の貯液タンクに適用した液面表示機構を拡大して示す断面図で、フロートとフロートゲージおよびフロートストッパとゲージ管の設置状況と、尿素水の所定量消費状況を示している。
【0066】
【図9】本発明を適用した液体供給装置の実施形態を示す正面で、ディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液である尿素水の所定量を収納した容器を、貯液タンクへ供給する一例を示し、前記容器を載置棚に積み込んだ状況を示している。
【図10】図9の右側面図である。
【図11】載置棚を回動し容器を傾動して、容器内部の尿素水を貯液タンクへ供給している状況の要部を示す側面図である。
【0067】
【図12】本発明の第2の実施形態を示す正面で、ディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液である尿素水の所定量を収納した容器を、貯液タンクへ供給する一例を示し、前記容器を載置棚に積み込んだ状況を示している。
【図13】図12の平面図である。
【図14】図12の第2の実施形態において、載置棚に収容した容器の周面にY字形状のベルトを掛け渡して保持している状況の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 貯液タンク
7 給液口
9 タンクキャップ
11 管継手
25 空気逃がし管
26 空気捕集部
27 排気部
28 供給液体(尿素水)
【0069】
46 容器
47 給液ホース
48 液体供給装置(台車)
49 基枠
51 支持枠
52 載置棚
54 走行車輪
55 地面
59 ホース入れ
61 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯液タンクの外周面に設けた給液口の上方に、供給液体を移動かつ配置可能な液体供給装置において、走行車輪を設けた基枠に支持枠を取り付け、該支持枠に前記供給液体を収納した容器を収容可能な載置棚を回動可能に取り付けたことを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記容器に給液ホースを着脱可能に取り付け、該ホースの先端部を前記給液口に挿入可能にするとともに、前記載置棚に給液ホースを挿入可能なホース入れを設けた請求項1記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記基枠の一端に走行車輪を取り付け、この他端を地面に着地可能に設けて、移動または静止可能にした請求項1記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記支持枠を伸縮可能に設け、前記載置棚の高さ位置を調整可能にした請求項1記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記載置棚の高さを、給液口に着脱可能に装着したタンクキャップの高さ以上に調整可能にした請求項4記載の液体供給装置。
【請求項6】
前記載置棚に、前記容器の周面に掛け渡し可能なベルトを取り付けた請求項1記載の液体供給装置。
【請求項7】
前記容器内の供給液体を、前記給液ホースを介して被供給側の収納タンクへ供給可能にした請求項2記載の液体供給装置。
【請求項8】
前記給液ホ−スの先端部を、タンクキャップに一端を連結した継手管の他端の外側部に挿入可能にした請求項2または請求項5記載の液体供給装置。
【請求項9】
前記供給液体は、ディーゼルエンジンの排出ガス浄化用還元剤の水溶液である請求項1記載の液体供給装置。
【請求項10】
前記水溶液は、尿素水である請求項9記載の液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−285235(P2008−285235A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202805(P2008−202805)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【分割の表示】特願2004−350622(P2004−350622)の分割
【原出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000226600)株式会社アルティア (48)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】