説明

液体収納容器およびインクジェット記録方法

【課題】廃液を液体収納容器内の廃液吸収体に確実に回収し、液漏れによる信頼性の低下を防止する。
【解決手段】インクジェット記録ヘッド6に供給するインクを貯蔵する第1の貯蔵部11と、インクジェット記録ヘッド6から回収された廃インクを貯蔵する第2の貯蔵部12と、情報を記録可能な情報記録部13とを有する。また、第2の貯蔵部12には、廃インクを吸収する廃インク吸収体16が設けられる。そして、情報記録部13には、初期値である零を含む廃インク吸収体16による総廃インク吸収量と、総廃インク吸収量に対応しその値が変化する連続的な廃インク吸収最短時間間隔Xと、前回の廃インク回収時刻とが含まれる情報が記録される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を収納する液体収納容器と、インク滴を吐出して被記録材に記録を行うインクジュット記録方法に関し、特にインクジェット記録装置に対して着脱自在に装着される液体収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば紙、布、プラスチックシート、OHP用シート等の被記録材に対して記録を行う記録装置は、種々の記録装置、例えばワイヤードット方式、感熱方式、熱転写方式、インクジェット記録方式による記録ヘッドを搭載可能な形態として提案されている。
【0003】
これらの方式のなかで、低騒音なノンインパクト記録方式として、記録素子上に配置した吐出口(ノズル)からインクを吐出して被記録材上に記録を行うインックジェット記録方式のインクジェット記録装置は、高密度、かつ高速な記録動作が可能である。
【0004】
インクジェット記録装置は、この記録装置が適用されるシステム固有の機能、使用形態に対応した構成を採る。一般に、インクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドを搭載するキャリッジと、記録ヘッドにインクを供給する液体収納容器であるインクタンクと、記録紙を搬送する搬送機構と、これらを制御する制御部とを備えている。
【0005】
そして、複数の吐出口からインク滴を吐出させる記録ヘッドを記録紙の搬送方向(副走査方法)と直交する方向(主走査方向)にシリアルスキャンさせ、一方で非記録時に記録紙を記録幅に等しい量で間欠搬送(ピッチ送り)するものである。インクを吐出させる多数のノズルが副走査方向に平行な直線状に配置された記録ヘッドを用いることにより、記録ヘッドが記録紙上を1回走査することでノズル数に対応した幅の記録がなされる。
【0006】
また、インクジェット記録装置は、ランニングコストが安く、記録装置の小型化も可能であり、更に複数色のインクを用いてカラー画像記録に対応することも容易である。
【0007】
上述の理由から、インクジェット記録装置は、情報システムの出力手段、例えば複写機、ファクシミリ、電子タイプライタ、ワードプロセッサ、ワークステーション等の出力端末としてのプリンタとして利用されている。あるいは、インクジェット記録装置は、パーソナルコンピュータ、光ディスク装置、ビデオ装置等に具備されるハンディまたはポータブルプリンタとして利用されている。
【0008】
一方、記録ヘッドの吐出口からインクを吐出させるためのエネルギー発生素子としては、ピエゾ素子などの電気機械変換体を用いたもの、あるいは発熱抵抗体を有する電気熱変換素子によって液体を加熱するもの等がある。
【0009】
その中でも熱エネルギーを利用してインク滴を吐出させる方式のインクジェット記録方式の記録ヘッドは、吐出口を高密度で配列することができるため、高解像度の記録を行うことが可能である。その中でも電気熱変換素子をエネルギー発生素子として用いた記録ヘッドは、小型化も容易であり、かつ最近の半導体分野における技術の進歩と信頼性の向上が著しいIC技術やマイクロ加工技術に長所を十二分に利用することができる。また、電気熱変換素子を用いた記録ヘッドは、高密度実装化が容易であり、製造コストも安価なことから、有利である。
【0010】
インクタンクは、通常、記録ヘッドにインクを供給するインクが収納される収納袋と、インクジェット記録装置側と連結するジョイント部と、これらを内蔵する筐体とを備えて構成されている。また、インクジェット記録装置では、記録ヘッドの短期間放置後の初期吐出不良を防止するための予備吐出と、記録ヘッド内の長期間の放置後の気泡混入による不吐出を防止するために長期間の放置後の記録ヘッドからの定期的なインク吸引動作が行われている。
【0011】
これらの予備吐出と、記録ヘッドからの定期的なインク吸引とによって発生する廃インクは、インクジェット記録装置内に排出される。また、従来のインクタンクでは、インクジェット記録装置全体の小型化を図るために、予備吐出や定期的なインク吸引によって発生する廃インクを回収して貯蔵する廃インク吸収体を備え、この廃インク吸収体が筐体内に組み込まれる構成も採られている。
【0012】
すなわち、本来はインクジェット記録装置内に排出されていた廃インクを吸収する廃インク吸収体が、インクタンク内に配置される構成によって、インクジェット記録装置の小型化が可能となる。さらに、インクタンクは、記録ヘッドに供給するインクが消費された時点で新たなインクタンクに交換される。すなわち、インクタンクが交換されることで、インクタンク内の廃インク吸収体も新品に交換されることになるので、インクタンク内に廃インク吸収体を組み込む構成に伴ってインクタンクが過剰に大きくなることは抑えられている。
【0013】
インクタンクに廃インク吸収体を組み込む構成で記録装置の小型化を図る構成としては、インクタンク内に廃インク吸収体を組み込み、更に廃インクを複数のインクタンクに振り分ける手段が記録装置側に設けられた構成が開示されている(特許文献1参照)。この構成では、複数のインクタンクに廃インクを記録装置側で振り分けることで、記録装置全体の小型化を達成することが可能にされている。
【特許文献1】特開2003−127433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この種のインクジェット記録装置では、インクタンク内に廃インクを回収した際に、廃インクをインクタンク内の廃インク吸収体に確実に吸収させる必要がある。廃インク吸収体に吸収されて保持されていない浮遊インクが存在した場合には、インクタンクからのインク漏れが発生するおそれがある。このようなインク漏れを防止するために、従来のインクタンクでは、廃インクをインクタンク内に導入するための廃インク用ジョイント部をゴムシール等で密閉構造に構成する必要があり、インクタンクの製造コストが増加する一因となっていた。
【0015】
そこで、本発明は、比較的に簡素かつ製造コストが低い構成で、廃液を液体収納容器内の廃液吸収体に確実に回収し、液漏れによる信頼性の低下を防止することができる液体収納容器およびインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成するため、本発明に係る液体収納容器は、液体吐出ヘッドに供給する液体を貯蔵する第1の貯蔵部と、液体吐出ヘッドから回収された廃液を貯蔵する第2の貯蔵部と、情報を記録可能な情報記録部とを有している。また、第2の貯蔵部には、廃液を吸収する廃液吸収体が設けられている。そして、情報記録部には、初期値である零を含む廃液吸収体による総廃液吸収量と、総廃液吸収量に対応しその値が変化する連続的な廃液吸収の最短時間間隔と、前回の廃液回収時刻とが含まれる情報が記録される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液体収納容器内に廃液を排出した際に、廃液が液体収納容器内の廃液吸収体に確実に回収されないことで発生する浮遊液の存在に起因した、液体収納容器からの液漏れを防止することができる。
【0018】
また、本発明によれば、比較的に簡素かつ製造コストが低い方法で、廃液を液体収納容器内の廃液吸収体に確実に回収し、液漏れによる信頼性の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態のインクタンクは、いわゆるメインインクタンクであって、記録ヘッドと一体的に移動されるサブインクタンクにインクを供給し、このサブインクタンクを介して記録ヘッドにインクを供給するインクタンクである。
【0021】
図1は、実施形態のインクタンクを示す斜視図である。図1に示すように、実施形態のインクタンク5は、インクジェット記録ヘッドに供給するインクを貯蔵する第1の貯蔵部11と、インクジェット記録ヘッドから回収された廃インクを貯蔵する第2の貯蔵部12とを備えている。また、このインクタンク5は、インクジェット記録ヘッドから回収される廃インクに関連する情報を記録可能な情報記録部13と備えている。
【0022】
第1の貯蔵部11は、記録ヘッドに供給する複数色のインクをそれぞれ独立して収容する貯蔵室を有している。また、第1の貯蔵部11には、インクジェット記録装置側のインク供給系と連結され、複数色のインクを記録ヘッドに供給するための複数のインク供給用ジョイント部18がそれぞれ設けられている。本実施形態のインクタンク5では、一例として、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各4色のインク供給用ジョイント部18がそれぞれ設けられている。
【0023】
また、インクタンク5が装着されるインクジェット記録装置では、インクジェット記録ヘッドの短期間の放置後に、初期吐出不良を防止するための予備吐出が行われている。また、このインクジェット記録装置では、インクジェット記録ヘッドを長期間放置した後、インクジェット記録ヘッド内に気泡が混入することによる不吐出を防止するために、長期間の放置後のインクジェット記録ヘッドからの定期的なインク吸引動作が行われる。
【0024】
このため、第2の貯蔵部12には、記録ヘッドからの予備吐出および定期的なインク吸引によって発生する廃インクを回収して貯蔵する廃インク吸収体16が設けられている。また、第2の貯蔵部12には、インクジェット記録ヘッドから回収された廃インクが導入されるインク回収用ジョイント部19が設けられている。
【0025】
そして、インクタンク5の情報記録部13には、情報を記録可能な情報記録媒体17が設けられている。この情報記録媒体17には、廃インク吸収体16に吸収された廃インクの総量である総廃インク吸収量が記録されており、この総廃インク吸収量としては、インクタンクが新品であるときには初期値である“零”が記録されている。また、情報記録媒体17には、現在に近い過去1回、つまり前回の廃インク回収時刻(回収時期)が記録されており、インクタンク5が新品であるときには廃インク回収時刻が記録されていない。さらに、情報記録媒体17には、インクタンク5内に廃インクを連続的に排出した際に、廃インクが廃インク吸収体16に充分に吸収可能であり、第2の貯蔵部12内に浮遊インクが存在しない最短時間間隔である廃インク吸収最短時間間隔Xが記録されている。なお、この廃インク吸収最短時間間隔Xは、上述の総廃インク吸収量に対応して変化する値であり、総廃インク吸収量の増加に伴って廃インク吸収最短時間間隔Xも除々に増加する。
【0026】
すなわち、情報記録媒体17には、初期値である零を含む廃インク吸収体16による総廃インク吸収量と、総廃インク吸収量に対応しその値が変化する連続的な廃インク吸収最短時間間隔Xと、前回の廃インク回収時刻とが少なくとも含まれる情報が記録される。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に、廃インク吸収最短時間間隔Xの一例を示す。廃インク吸収最短時間間隔Xは、インクの種類に応じて異なり、カラーインク等の界面活性剤を含む浸透系インク(以下、第1のインクと称する。)ではその値が比較的小さく、ブラック顔料インク等の非浸透系インク(以下、第2のインクと称する。)ではその値が比較的大きくなる。表1では、これらのインクを代表して、第1のインク3Aおよび第2のインク3Bを示している。
【0029】
また、廃インク吸収体16による総廃インク吸収量が増えるのに従い、廃インク吸収体16のインク吸収能力が徐々に低下してくるので、単位時間当たりの廃インク吸収量が次第に低下する。表1には、廃インク吸収体16に廃インクを充分に吸収可能とされる、浮遊インクが存在しない最短時間間隔である廃インク吸収最短時間間隔Xが、総廃インク吸収量に対応して変化する一例を示している。なお、この廃インク吸収最短時間間隔Xの値は、上述のようにインクの種類によって決定されるのに加えて、インクタンクの構造、廃インク吸収体16の材質や形状によっても決定される値である。
【0030】
図3はインクジェット記録装置側のインク供給系を示す斜視図である。図3に示すように、上述した各実施形態のインクタンク(メインタンク)5を用いるインク供給系は、被記録材上にインク滴を吐出して画像や文字等を形成するインクジェット記録ヘッド6を備えている。また、このインク供給系は、インクタンク5から供給されたインクをインクジェット記録ヘッド6に供給して適正な負圧を維持する機能を持つサブインクタンク7と、インクタンク5が着脱自在に装着されるタンク装着部(不図示)とを備えている。
【0031】
サブインクタンク7は、一例としてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、各4色のインク室に内部が分割されている。インクジェット記録ヘッド6とサブインクタンク7は一体的に構成されており、被記録材に対して走査し、インクジェット記録ヘッド6が複数色のインク滴を吐出することで、被記録材上に画像が形成される。
【0032】
本実施形態のインクタンク5とサブインクタンク7は、インク供給チューブ21を介して連結されており、このインク供給チューブ21を介してインクタンク5からサブインクタンク7へインクが供給される。なお、このインク供給チューブ21の代わりに、サブインクタンク7とインクタンク5とが着脱可能に接続されるジョイント機構(不図示)を備える構成にされても良く、本発明を適用することが可能である。
【0033】
インクジェット記録ヘッド6は、比較的短期間の放置後であっても初期吐出不良になるので、短期間であっても放置された場合には、被記録材への記録開始前に、初期吐出不良を防止するための予備吐出が行われている。また、インクジェット記録ヘッド6内には、長期間の放置後に気泡が混入する場合があり、この場合には、インクジェット記録ヘッド6から気泡を吸引する動作を行い、同時にインクが吸引される。通常、このインク吸引動作は、インクジェット記録ヘッド6の長期間の放置後に定期的に行われる。
【0034】
図3に示すように、インクジェット記録ヘッド6の吐出口側に当接される吸引キャップ23は、廃インク排出チューブ22を介して、吸引ポンプ24およびインクタンク5にそれぞれ連結されている。上述の初期吐出不良を防止するための予備吐出は、インクジェット記録ヘッド6が吸引キャップ23に対向する位置に移動され固定された後に、インクジェット記録ヘッド6が吸引キャップ23内に複数のインク滴を吐出することで行われる。その後、吸引ポンプ24を動作させることで、予備吐出によって吸引キャップ23内に吐出された廃インクは、廃インク排出チューブ22を経由してインクタンク5内に流動され、インクタンク5内の廃インク吸収体16に吸収されて貯蔵される。
【0035】
また、上述のインクジェット記録ヘッド6を長期間放置した後に気泡を除去するインク吸引動作では、インクジェット記録ヘッド6が吸引キャップ23に対向する位置に移動されて固定される。続いて、吸引キャップ23がインクジェット記録ヘッド6の吐出口側に密着された後に、吸引ポンプ24が動作することで、インク吸引動作が行われる。吸引動作によって発生した廃インクは、廃インク排出チューブ22を経由してインクタンク5内に流動され、インクタンク5内の廃インク吸収体16に吸収されて貯蔵される。
【0036】
図4は、本実施形態における廃インクの排出動作を示すフローチャートである。図4中のステップ101に示すようにインクタンク5がインクジェット記録装置内のタンク装着部に装着される。インクタンク5が装着されたとき、ステップ102に示すようにインクタンク5に設けられた情報記録部13の情報記録媒体17に記録されている情報から、総廃インク吸収量がインクジェット記録装置側の制御部(不図示)に読み取られる。なお、この総廃インク吸収量は、インクタンク5が新品であるときには初期値である「零」であり、この値がインクジェット記録装置側の制御部に読み取られる。
【0037】
また、廃インク吸収体16に廃インクを連続的に排出したときに、上述の総廃インク吸収量に対応した廃インク吸収最短時間間隔Xが、インクタンク5の情報記録媒体17からインクジェット記録装置側の制御部に読み取られる。この廃インク吸収最短時間間隔Xは、廃インクを廃インク吸収体16に充分に吸収可能であり、インクタンク5の第2の貯蔵部12内に浮遊インクが存在しない最短時間間隔である。また、前回の廃インク回収時刻が、情報記録媒体17からインクジェット記録装置側の制御部に読み取られるが、インクタンク5が新品であるときには読み取りは行なわれない。
【0038】
次に、吸引ポンプ24の動作が必要になった場合には、ステップ103に示すように、吸引ポンプ24の動作命令がインクジェット記録装置内で発生したとき、まず、ステップ104に示すように前回の廃インク回収時刻から現在までの経過時間Yが算出される。続いて、ステップ105に示すように、この前回の廃インク回収時刻からの経過時間Yと、上述の廃インク吸収最短時間間隔Xとの値を比較する。
【0039】
Y≧Xである場合には、前回の廃インクがインクタンク5内に排出されて廃インク吸収体16に吸収された時刻から充分に時間が経過している。このため、廃インクが廃インク吸収体16に吸収されてインクタンク5内に浮遊インクが存在せず、新たに廃インクが排出された場合でも、廃インクが廃インク吸収体16に吸収可能と判断し、ステップ106に移行して、吸引ポンプ24が動作する。これにより、廃インクがインクタンク5の第2の貯蔵部12内に排出されて廃インク吸収体16に吸収されることになる。
【0040】
Y<Xである場合には、ステップ107に示すように、一定期間休止し、Y≧Xを満たすまで待機した後、Y≧Xを満たすことで、吸引ポンプ24が動作する。この休止動作によって、前回、インクタンク5内に廃インクが排出されて廃インク吸収体16に吸収されてから充分に時間が経過することになる。このため、インクタンク5は、第2の貯蔵部12内の浮遊インクの存在が解消する。したがって、第2の貯蔵部12に新たに廃インクが排出された場合にも、廃インクが廃インク吸収体16に良好に吸収可能となり、廃インクが溢れることによるインク漏れを防止することが可能となる。最後に、吸引ポンプ24の動作が終了した後には、ステップ108に示すように、インクタンク5の情報記録媒体17に、総廃インク吸収量と、廃インク回収時刻とをそれぞれ記録することで、一連の廃インクの排出動作が完了する。
【0041】
上述したように、実施形態のインクタンク5によれば、情報記録部13を備えることによって、第2の貯蔵部12内の廃インク吸収体16に吸収されない浮遊インクが存在するときに第2の貯蔵部12内に廃インクが排出されることを防ぐことができる。したがって、このインクタンク5によれば、第2の貯蔵部12内に廃インクを排出した際にインクタンク5からのインク漏れを防止することができる。
【0042】
また、このインクタンク5によれば、インク回収用ジョイント部が特殊な密閉構造を採る必要がないので、比較的に簡素かつ製造コストが低い構成で、廃インクを廃インク吸収体16に確実に回収し、インク漏れによる信頼性の低下を防止することができる。
【0043】
(他の実施形態)
廃インク回収動作が一定期間休止されていることを発光して示すための発光部を備える他の実施形態のインクタンクについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、上述した実施形態のインクタンク5と構成がほぼ同一であるため、同一部材には同一符号を付して説明する。
【0044】
図5は、他の実施形態のインクタンクを示す斜視図である。図5に示すように、本実施形態のインクタンク15の第1の貯蔵部11には、図1に示した構成と同様に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各4色のジョイント部18がそれぞれ設けられている。
【0045】
また、インクタンク15の第2の貯蔵部12には、図1に示した構成と同様に、廃インクを回収して貯蔵する廃インク吸収体16が設けられている。また、インクタンク15は、ユーザーが視認可能な可視光を発する発光部26と、情報を記録可能な情報記録媒体17を有する情報記録部13とを備えている。本実施形態における発光部26は、発光状態を制御する制御回路を内部に含んでいる。
【0046】
図5に示すように、上述した実施形態と同様に、情報記録媒体17には、総廃インク吸収量が記録されており、この総廃インク吸収量は、インクタンク15が新品であるときには初期値である“零”が記録されている。また、情報記録媒体17には、現在に近い過去1回である前回の廃インク回収時刻が記録されており、インクタンク15が新品であるときには、廃インク回収時刻が記録されていない。さらに、廃インク吸収体16に廃インクを連続的に排出した際に、廃インクが廃インク吸収体16に充分に吸収可能であり、浮遊インクが存在しない最短時間間隔であり、総廃インク吸収量に対応しその値が変化する廃インク吸収最短時間間隔Xが記録されている。
【0047】
図6は、他の実施形態のインクタンクにおける廃インクの排出動作を示すフローチャートである。図6中のステップ101に示すように、インクタンク15がインクジェット記録装置側のタンク装着部に装着される。インクタンク15が装着されたとき、上述の場合と同様にステップ102に示すように、インクタンク15に設けられた情報記録部13の情報記録媒体17から、総廃インク吸収量がインクジェット記録装置側の制御部に読み取られる。なお、この総廃インク吸収量は、インクタンク15が新品であるときには初期値である“零”であり、この値がインクジェット記録装置側の制御部に読み取られる。
【0048】
また、廃インク吸収体16に廃インクを連続的に排出したときに、上述の総廃インク吸収量に対応した廃インク吸収最短時間間隔Xが、インクタンク15の情報記録媒体17からインクジェット記録装置側の制御部に読み取られる。この廃インク吸収最短時間間隔Xは、廃インクを廃インク吸収体16に充分に吸収可能であり、インクタンク15の第2の貯蔵部12内に浮遊インクが存在しない最短時間間隔である。また、前回の廃インク回収時刻が、情報記録媒体17からインクジェット記録装置側の制御部に読み取られるが、インクタンク15が新品であるときには読み取りは行なわれない。
【0049】
次に、吸引ポンプ24の動作が必要になった場合には、上述の場合と同様にステップ103に示すように、吸引ポンプ24の動作命令がインクジェット記録装置内で発生した際に、まず、前回の廃インク回収時刻から現在までの経過時間Yが算出される。続いて、ステップ105に示すように、この前回の廃インク回収時刻からの経過時間Yと、上述の廃インク吸収最短時間間隔Xとの値を比較する。
【0050】
Y≧Xである場合には、前回の廃インクがインクタンク15内に排出されて廃インク吸収体16に吸収された時刻から充分に時間が経過している。このため、廃インクが廃インク吸収体16に吸収されてインクタンク15内に浮遊インクが存在せず、新たに廃インクが排出された場合にも、廃インクが廃インク吸収体16に吸収可能であると判断し、ステップ106に移行して、吸引ポンプ24が動作する。これにより、廃インクがインクタンク15の第2の貯蔵部12内の廃インク吸収体16に排出されることになる。
【0051】
Y<Xである場合には、ステップ109に示すように、一定期間休止し、Y≧Xを満たすまで待機した後に、吸引ポンプ24が動作する。また、一定期間休止中であることをユーザーに認識させるために、インクタンク15内の発光部26が発光し、発光部26の発光状態がユーザーによって視認されることで、休止中であることがユーザーに知らせられる。上述の場合と同様に、この休止期間によって、前回、インクタンク15内に廃インクが排出されて廃インク吸収体16に吸収されてから充分に時間が経過することになる。このため、インクタンク15は、第2の貯蔵部12内の浮遊インクの存在が解消する。したがって、第2の貯蔵部12に新たに廃インクが排出された場合にも、廃インクが廃インク吸収体16に良好に吸収可能となり、廃インクが溢れることによるインク漏れを防止することが可能となる。最後に、吸引ポンプ24の動作が終了した後には、ステップ108に示すように、インクタンク15の情報記録媒体17に総廃インク吸収量と廃インク回収時刻とを記録することで、一連の廃インクの排出動作が完了する。
【0052】
本実施形態のインクタンク15によれば、発光部26を備えることによって、ユーザーが目視によって、インク吸引動作が一定期間休止されている状態であることを容易に確認することができる。なお、実施形態のインクタンクは、必要に応じて、発光部26の他に、警告音を発する警報部(不図示)を備える構成にされてもよく、インク吸引動作が一定期間休止されていることを、ユーザーが警告音によって確認可能に構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態のインクタンクを示す斜視図である。
【図2】前記インクタンクを示す側面図である。
【図3】本実施形態のインクタンクが適用されるインクジェット記録装置側のインク供給系を示す斜視図である。
【図4】廃インクの排出動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】他の実施形態のインクタンクを示す斜視図である。
【図6】他の実施形態における廃インクの排出動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
5 インクタンク
6 インクジェット記録ヘッド
7 サブインクタンク
11 第1の貯蔵部
12 第2の貯蔵部
13 情報記録部
16 廃インク吸収体
17 情報記録媒体
18 インク供給用ジョイント部
19 インク回収用ジョイント部
21 インク供給チューブ
22 廃インク排出チューブ
23 吸引キャップ
24 吸引ポンプ
26 発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドに供給する液体を貯蔵する第1の貯蔵部と、前記液体吐出ヘッドから回収された廃液を貯蔵する第2の貯蔵部と、情報を記録可能な情報記録部とを有し、前記第2の貯蔵部には、前記廃液を吸収する廃液吸収体が設けられた液体収納容器において、
前記情報記録部には、初期値である零を含む前記廃液吸収体による総廃液吸収量と、前記総廃液吸収量に対応してその値が変化する連続的な廃液吸収の最短時間間隔と、前回の廃液回収時刻とが含まれる情報が記録されることを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記情報記録部には、前記第2の貯蔵部への廃液回収動作後に、廃液回収時刻と、積算された前記総廃液吸収量とが記録されると共に、廃液回収動作が、前記情報記録部に記録されている前記最短時間間隔以上の時間間隔で行なわれる請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
所定間隔以内で廃液回収動作が要求されたときに廃液回収動作が一定時間禁止されている状態であることを発光して示すための発光部と、前記発光部の発光状態を制御する制御部とを有する請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
被記録材にインク滴を吐出して画像を形成し、画像の形成に寄与しない廃インクをインクタンク内に設けられたインク吸収体に回収するインクジェット記録方法において、
前記インク吸収体に前記廃インクを吸収させる間隔が一定時間以上になるように制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項5】
初期値である零を含む前記インク吸収体による総廃インク吸収量と、前記総廃インク吸収量に対応してその値が変化する連続的な廃インク吸収最短時間間隔と、前回の廃インク回収時刻とに基づいて、前記インク吸収体に前記廃インクを吸収させる間隔が一定時間以上になるように制御する請求項4に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−62555(P2008−62555A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244148(P2006−244148)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】