説明

液体吐出装置、及び、液体吐出方法

【課題】液体受け部上に液体が堆積することを抑止すること。
【解決手段】列方向にノズルが並んだノズル列を有するヘッド31と、該ヘッドを前記列方向における第一位置に位置させて、前記ノズル列に属する各ノズルから液体を吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作を前記ヘッドに実行させ、前記フラッシング動作を行なうことにより吐出された液体を受ける液体受け部36と、を有する液体吐出装置であって、コントローラーは、ヘッドの前記第一位置から前記第二位置への移動に連動させて、液体受け部を前記列方向へ移動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び、液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンター等の液体吐出装置は既によく知られている。
【0003】
かかる液体吐出装置の中には、列方向にノズルが並んだノズル列を有するヘッドと、ヘ
ッドがフラッシング動作を行なうことにより吐出された液体を受ける液体受け部と、を有
するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−150722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記液体吐出装置において、ヘッドを列方向における第一位置に位置させて
、ノズル列に属する各ノズルから液体を吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作
をヘッドに実行させ、その後、ヘッドを列方向へ移動させることによりノズル列の長さよ
りも短い長さ分第一位置よりも列方向にずれた第二位置にヘッドを位置させて、フラッシ
ング動作をヘッドに実行させる処理が行なわれる場合がある。そして、かかる処理が行な
われた際に、吐出された液体を受ける液体受け部上に液体が堆積してしまう場合があった

本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体受
け部上に液体が堆積することを抑止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
主たる本発明は、列方向にノズルが並んだノズル列を有するヘッドと、
該ヘッドを前記列方向における第一位置に位置させて、前記ノズル列に属する各ノズル
から液体を吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作を前記ヘッドに実行させ、
その後、前記ヘッドを前記列方向へ移動させることにより前記ノズル列の長さよりも短
い長さ分前記第一位置よりも前記列方向にずれた第二位置に前記ヘッドを位置させて、前
記フラッシング動作を前記ヘッドに実行させるコントローラーと、
前記ヘッドが前記フラッシング動作を行なうことにより吐出された液体を受ける液体受
け部と、を有する液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記ヘッドの前記第一位置から前記第二位置への移動に連動さ
せて、前記液体受け部を前記列方向へ移動させることを特徴とする液体吐出装置である。

本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンター1の構成を示す概略図である。
【図2】プリンター1の構成を示すブロック図である。
【図3】フラッシングユニット35の側面模式図である。
【図4】インク受け部材36の正面模式図である。
【図5】8パスで印刷するケースにおいて各パスで形成されるラスタラインを示した模式図である。
【図6】ヘッド31の移動を説明するための説明模式図である。
【図7】本実施の形態に係る第一フラッシング動作乃至第三フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部材36に向けてインクが吐出される様子を示した模式図である。
【図8】ヘッド31を列方向へ移動させるための機構例を説明するための説明模式図である。
【図9】インク受け部材36を列方向へ移動させるための機構例を説明するための説明模式図である。
【図10】インク受け部材36の移動をヘッド31の移動に連動させる機構例を説明するための説明模式図である。
【図11】比較例に係る第一フラッシング動作乃至第三フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部材36に向けてインクが吐出される様子を示した模式図である。
【図12】本実施の形態に係るプリンター1を比較例に係るプリンター1と比較したときの本実施の形態に係るプリンター1の有効性を説明するための説明模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0009】
列方向にノズルが並んだノズル列を有するヘッドと、
該ヘッドを前記列方向における第一位置に位置させて、前記ノズル列に属する各ノズル
から液体を吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作を前記ヘッドに実行させ、
その後、前記ヘッドを前記列方向へ移動させることにより前記ノズル列の長さよりも短
い長さ分前記第一位置よりも前記列方向にずれた第二位置に前記ヘッドを位置させて、前
記フラッシング動作を前記ヘッドに実行させるコントローラーと、
前記ヘッドが前記フラッシング動作を行なうことにより吐出された液体を受ける液体受
け部と、を有する液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記ヘッドの前記第一位置から前記第二位置への移動に連動さ
せて、前記液体受け部を前記列方向へ移動させることを特徴とする液体吐出装置。
かかる液体吐出装置によれば、液体受け部上に液体が堆積することを抑止することが可
能となる。
【0010】
次に、列方向にノズルが並んだノズル列を有するヘッドと、
前記ノズル列に属する各ノズルから液体を吐出してフラッシングを行なうフラッシング
動作を前記ヘッドが行なうことにより吐出された液体を受ける液体受け部と、を有する液
体吐出装置を準備することと、
該ヘッドを前記列方向における第一位置に位置させて、前記フラッシング動作を前記ヘ
ッドに実行させ、その後、前記ヘッドを前記列方向へ移動させることにより前記ノズル列
の長さよりも短い長さ分前記第一位置よりも前記列方向にずれた第二位置に前記ヘッドを
位置させて、前記フラッシング動作を前記ヘッドに実行させ、
前記ヘッドの前記第一位置から前記第二位置への移動に連動させて、前記液体受け部を
前記列方向へ移動させることと、
を有することを特徴とする液体吐出方法。
かかる液体吐出装置によれば、液体受け部上に液体が堆積することを抑止することが可
能となる。
【0011】
===プリンター1の構成例について===
液体吐出装置の一例としてのプリンター1の構成例について、図1及び図2を用いて説
明する。図1は、プリンター1の概略断面図である。図2は、プリンター1のブロック図
である。
なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で
示した方向を基準として示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1におい
て紙面に直交する方向を示すものとする。
また、本実施の形態においては、プリンター1が画像を記録する媒体としてロール紙2
(連続紙)を用いて説明する。
【0012】
本実施の形態に係るプリンター1は、図1及び図2に示すように、搬送ユニット20と
、及び、該搬送ユニット20がロール紙2を搬送する搬送経路に沿って、給送ユニット1
0と、プラテン29と、巻き取りユニット90と、を有し、さらに、ヘッドユニット30
と、キャリッジユニット40と、クリーニングユニットと、フラッシングユニット35と
、ヒーターユニット70と、送風ユニット80と、これらのユニット等を制御しプリンタ
ー1としての動作を司るコントローラー60と、検出器群50と、を有している。
【0013】
給送ユニット10は、ロール紙2を搬送ユニット20に給送するものである。この給送
ユニット10は、ロール紙2が巻かれ回転可能に支持される巻軸18と、巻軸18から繰
り出されたロール紙2を巻き掛けて搬送ユニット20に導くための中継ローラー19と、
を有している。
【0014】
搬送ユニット20は、給送ユニット10により送られたロール紙2を、予め設定された
搬送経路に沿って搬送するものである。この搬送ユニット20は、図1に示すように、中
継ローラー19に対して水平右方に位置する中継ローラー21と、中継ローラー21から
見て右斜め下方に位置する中継ローラー22と、中継ローラー22から見て右斜め上方(
ロール紙2が搬送される方向において、プラテン29から見て上流側)に位置する第一搬
送ローラー23と、第一搬送ローラー23から見て右方(ロール紙2が搬送される方向に
おいて、プラテン29から見て下流側)に位置する第二搬送ローラー24と、第二搬送ロ
ーラー24から見て鉛直下方に位置する反転ローラー25と、反転ローラー25から見て
右方に位置する中継ローラー26と、中継ローラー26から見て上方に位置する送り出し
ローラー27と、を有している。
【0015】
中継ローラー21は、中継ローラー19から送られたロール紙2を、左方から巻き掛け
て下方に向かって弛ませるローラーである。
中継ローラー22は、中継ローラー21から送られたロール紙2を、左方から巻き掛け
て右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
【0016】
第一搬送ローラー23は、不図示のモーターにより駆動される第一駆動ローラー23a
と、該第一駆動ローラー23aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第
一従動ローラー23bとを有している。この第一搬送ローラー23は、下方に弛ませたロ
ール紙2を上方に引き上げ、プラテン29に対向する印刷領域Rへ搬送するローラーであ
る。第一搬送ローラー23は、印刷領域R上のロール紙2の部位に対して画像記録がなさ
れている期間、一時的に搬送を停止させるようになっている(すなわち、後述するように
、ヘッド31が、左右方向及び前後方向へ移動しつつ、停止しているロール紙2の当該部
位にインクを吐出することにより、当該部位に1ページ分の画像記録が成されることとな
る)。なお、コントローラー60の駆動制御により、第一駆動ローラー23aの回転駆動
に伴って第一従動ローラー23bが回転することによって、プラテン29上に位置させる
ロール紙2の搬送量(ロール紙の部位の長さ)が調整される。
【0017】
搬送ユニット20は、上述したとおり、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー2
3との間に巻き掛けたロール紙2の部位を下方に弛ませて搬送する機構を有している。こ
のロール紙2の弛みは、コントローラー60により、不図示の弛み検出用センサーからの
検出信号に基づき監視される。具体的には、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー
23との間において弛ませたロール紙2の部位を、弛み検出用センサーが検出した場合に
は、該部位に適切な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20は
ロール紙2を弛ませた状態で搬送することが可能となる。一方、弛み検出用センサーが弛
ませたロール紙2の部位検出しない場合は、該部位に過剰な大きさの張力が与えられてい
ることになるため、搬送ユニット20によるロール紙2の搬送が一時的に停止され、張力
が適切な大きさに調整される。
【0018】
第二搬送ローラー24は、不図示のモーターにより駆動される第二駆動ローラー24a
と、該第二駆動ローラー24aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第
二従動ローラー24bとを有している。この第二搬送ローラー24は、ヘッドユニット3
0により画像が記録された後のロール紙2の部位を、プラテン29の支持面に沿って水平
右方向に搬送した後に鉛直下方に搬送するローラーである。これにより、ロール紙2の搬
送方向が転換されることになる。なお、コントローラー60の駆動制御により、第二駆動
ローラー24aの回転駆動に伴って第二従動ローラー24bが回転することによって、プ
ラテン29上に位置するロール紙2の部位に対して付与される所定の張力が調整される。
【0019】
反転ローラー25は、第二搬送ローラー24から送られたロール紙2を、左側上方から
巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
中継ローラー26は、反転ローラー25から送られたロール紙2を、左側下方から巻き
掛けて上方に向かって搬送するローラーである。
送り出しローラー27は、中継ローラー26から送られたロール紙2を、左側下方から
巻き掛けて巻き取りユニット90に送り出すようになっている。
【0020】
このように、ロール紙2が各ローラーを順次経由して移動することにより、ロール紙2
を搬送するための搬送経路が形成されることになる。なお、ロール紙2は、搬送ユニット
20により、印刷領域Rと対応した領域単位で間欠的にその搬送経路に沿って搬送される
(すなわち、印刷領域R上のロール紙2の部位に1ページ分の画像記録が成される毎に、
間欠的な当該搬送が行なわれる)。
【0021】
ヘッドユニット30は、搬送ユニット20により搬送経路上の印刷領域Rに(プラテン
29上に)送り込まれたロール紙2の部位に、液体の一例としてのインクを吐出するため
のものである。このヘッドユニット30は、ヘッド31とバルブユニット34とを有して
いる。
【0022】
ヘッド31は、その下面に、列方向にノズルが並んだノズル列を有している。本実施の
形態においては、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)等の色
ごとにそれぞれ複数のノズル♯1〜♯Nからなるノズル列を有している。各ノズル列の各
ノズル♯1〜♯Nは、ロール紙2の搬送方向に交差する交差方向(つまり、当該交差方向
が前述した列方向である)に直線状に配列されている。各ノズル列は、当該搬送方向に沿
って相互に間隔をあけて平行に配置されている。
【0023】
各ノズル♯1〜♯Nには、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(不図
示)が設けられている。ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧
を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これ
によって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当す
るインクが、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯Nから吐出される。
【0024】
また、ヘッド31は、後述するように、前記搬送方向(すなわち、前記左右方向)と前
記列方向(すなわち、前記前後方向)に往復移動することができるようになっている。
【0025】
バルブユニット34は、インクを一時貯留するためのものであり、不図示のインク供給
チューブを介してヘッド31に接続されている。このため、ヘッド31は、バルブユニッ
ト34から供給されたインクをノズルからプラテン29上に搬送されて停止された状態の
ロール紙2の部位に向けて吐出することにより、画像記録を行なうことができる。
【0026】
キャリッジユニット40は、ヘッド31を移動させるためのものである。このキャリッ
ジユニット40は、搬送方向(左右方向)に延びるキャリッジガイドレール41と(図1
に二点鎖線で示す)、キャリッジガイドレール41に沿って搬送方向(左右方向)へ往復
移動可能に支持されたキャリッジ42と、不図示のモーターとを有する。
【0027】
キャリッジ42は、不図示のモーターの駆動により、ヘッド31と一体となって搬送方
向(左右方向)へ移動するよう構成されている。また、キャリッジ42には、列方向(前
後方向)に延びる不図示のヘッドガイドレールが設けられており、ヘッド31は、前記モ
ーターの駆動により、当該ヘッドガイドレールに沿って列方向(前後方向)へ移動するよ
う構成されている(ヘッド31の列方向(前後方向)への移動については、後に説明を加
える)。
【0028】
クリーニングユニット(不図示)は、ヘッド31をクリーニングするためのものである
。このクリーニングユニットは、ホームポジション(以下、HPと呼ぶ。図1参照)に設
けられており、キャップと、吸引ポンプ等とを有している。ヘッド31(キャリッジ42
)が搬送方向(左右方向)に移動してHPに位置すると、ヘッド31の下面(ノズル面)
に不図示のキャップが密着するようになっている。このようにキャップが密着した状態で
吸引ポンプが作動すると、ヘッド31内のインクが、増粘したインクや紙粉と共に吸引さ
れる。このようにして、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することによってヘッ
ドのクリーニングが完了する。
【0029】
また、搬送方向(左右方向)におけるHPとプラテン29との間には、フラッシングユ
ニット35が設けられており、ヘッド31(キャリッジ42)が搬送方向(左右方向)に
移動してフラッシングユニット35に対向する位置(以下、フラッシング位置と呼ぶ)に
位置すると、ヘッド31は前記ノズル列に属する各ノズルからインクを吐出してフラッシ
ングを行なうフラッシング動作を実行する。なお、フラッシングユニット35及びフラッ
シング動作については、後に詳述する。
【0030】
プラテン29は、搬送経路上の印刷領域Rに位置するロール紙2の部位を支持するとと
もに、該部位を加熱するものである。このプラテン29は、図1に示すように、搬送経路
上の印刷領域Rに対応させて設けられ、かつ、第一搬送ローラー23と第二搬送ローラー
24との間の搬送経路に沿った領域に配置されている。そして、プラテン29は、ヒータ
ーユニット70が発生させた熱の供給を受けることにより、ロール紙2の該部位を加熱す
ることができる。
【0031】
ヒーターユニット70は、ロール紙2を加熱するためのものであり、不図示のヒーター
を有している。このヒーターは、ニクロム線を有しており、当該ニクロム線をプラテン2
9内部に、プラテン29の支持面から一定距離となるように配置させて構成されている。
このため、ヒーターは、通電されることによってニクロム線自体が発熱し、プラテン29
の支持面上に位置するロール紙2の部位に熱を伝導させることができる。このヒーターは
、プラテン29の全域にニクロム線を内蔵させて構成されているため、プラテン29上の
ロール紙2の部位に対して熱を均一に伝導することができる。本実施の形態において、プ
ラテン上のロール紙2の部位の温度が45℃となるように、該ロール紙2の部位を均一に
加熱する。これにより、該ロール紙2の部位に着弾されたインクを乾燥させることができ
る。
【0032】
送風ユニット80は、プラテン29上のロール紙2に風を送るためのものである。この
送風ユニット80は、ファン81とファン81を回転させるモーター(不図示)とを備え
ている。ファン81は、回転することにより、プラテン29上のロール紙2に風を送り、
ロール紙2に着弾されたインクを乾燥させるためのものである。このファン81は、図1
に示すように、本体部に設けられた開閉可能なカバー(不図示)に複数設けられている。
そして、この各々のファン81は、カバーが閉じた際に、プラテン29の上方に位置して
、当該プラテン29の支持面(当該プラテン29上のロール紙2)と対向するようになっ
ている。
【0033】
巻き取りユニット90は、搬送ユニット20により送られたロール紙2(画像記録済み
のロール紙)を巻き取るためのものである。この巻き取りユニット90は、送り出しロー
ラー27から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め下方へ搬送するため
の中継ローラー91と、回転可能に支持され中継ローラー91から送られたロール紙2を
巻き取る巻き取り駆動軸92と、を有している。
【0034】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行なうための制御ユニットである。この
コントローラー60は、図2に示すように、インターフェース部61と、CPU62と、
メモリー63と、ユニット制御回路64と、を有している。インターフェース部61は、
外部装置であるホストコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行
なうためのものである。CPU62は、プリンター1全体の制御を行なうための演算処理
装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確
保するためのものである。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従
ったユニット制御回路64により各ユニットを制御する。
【0035】
検出器群50は、プリンター1内の状況を監視するものであり、例えば、搬送ローラー
に取り付けられて媒体の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送さ
れる媒体の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ42(又はヘッド31)の搬送
方向(左右方向)の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。
【0036】
<<<フラッシングユニット35の構成例について>>>
次に、フラッシングユニット35の構成例について、図3及び図4を用いて説明する。
図3は、フラッシングユニット35の側面模式図である。図4は、インク受け部材36の
正面模式図である。なお、図4は、図3のインク受け部材36をX方向からみたときの図
である。
【0037】
フラッシングとは、ノズル付近のインクの増粘によりノズルが目詰まりしたり、ノズル
内に気泡が混入したりして、適正な量のインクが吐出されなくなってしまうことを防止す
べく、ノズルを回復させるためのメンテナンスである。具体的には、記録する画像とは関
係の無い駆動信号を駆動素子(ピエゾ素子)に印加し、強制的にインクを吐出させる動作
である。
【0038】
フラッシングユニット35は、ヘッド31が当該フラッシング動作を行なうことにより
吐出されたインクを受けて貯留するためのものである。このフラッシングユニット35は
、前述したとおり、搬送方向(左右方向)におけるHPとプラテン29との間(つまり、
ロール紙2が搬送される方向において、プラテン29から見て上流側)に設けられている
。フラッシングユニット35は、液体受け部の一例としてのインク受け部材36とフラッ
シングボックス37とを有している。
【0039】
インク受け部材36は、ヘッド31がフラッシング動作を行なうことにより吐出された
インクを受けるためのものである。仮にインク受け部材が存在せず、フラッシングボック
スでインクを直接受けるとすると、ヘッド、フラッシングボックス間の距離が大きいこと
に起因して、多くのインクミストが発生してしまう。インク受け部材36は、ヘッド31
に近い位置で吐出されるインクをフラッシングボックス37よりも先に一次的に受けるこ
とにより、かかるインクミストの発生を抑制する役割を果たしている。
【0040】
このインク受け部材36は、断面(複数の断面のうち、当該断面の法線方向が前記列方
向に沿う断面)が円形である円柱状部材(図3参照)である。また、本実施の形態に係る
インク受け部材36は、ヘッド31の列方向への移動に連動して、当該列方向へ移動する
ようになっている。より具体的には、ヘッド31が所定距離列方向へ移動すると、インク
受け部材36も当該所定距離と同じ距離だけ列方向(同じ方向)へ移動する。すなわち、
コントローラー60は、インク受け部材36の移動距離がヘッド31の移動距離と同じに
なるように、インク受け部材36を移動させる。なお、ヘッド31と連動したインク受け
部材36の移動タイミングや、インク受け部材36の移動をヘッド31の移動に連動させ
る方法については後述する。
【0041】
なお、当該インク受け部材36は、列方向へ移動するものの、円柱状であるが回動や回
転は行わない。
【0042】
フラッシングボックス37は、インク受け部材36が受けたインクを貯留するためのも
のである。すなわち、インク受け部材36が一次的に受けたインクは鉛直方向下方へと垂
れ流れるが、フラッシングボックス37は、かかる垂れ流れたインクを二次的に受け、そ
の後、該インクを貯留する。このフラッシングボックス37は、直方体形状の箱状の部材
であり、インク受け部材36の下方に位置してインク受け部材36から落下したインクを
収容する。
【0043】
===プリンター1の動作例について===
上述した通り、本実施の形態に係るプリンター1には、列方向(前後方向)にノズルが
並んだノズル列を有するヘッド31が設けられている。そして、コントローラー60が、
当該ヘッド31を搬送方向(左右方向)に移動させながら、ノズルからインクを吐出させ
、搬送方向(左右方向)に沿ったラスタラインを形成することにより、印刷領域R上のロ
ール紙2の部位に1ページ分の画像記録を行なう。
【0044】
ここで、本実施の形態に係るコントローラー60は、複数パス(6パス、8パス、16
パス等)の印刷を実行する。すなわち、列方向における画像の解像度を高くするために、
パス毎に列方向におけるヘッド31の位置を少しずつ変えて印刷を行なう。また、画像形
成方法としては、例えば、公知のインターレース(マイクロウィーブ)印刷が実行される

【0045】
これについて、図5を用いてより具体的に説明する。図5は、8パスで印刷するケース
において各パスで形成されるラスタラインを示した模式図である。
【0046】
図5の左側にはヘッド31のノズル列(ノズル)が表されており、当該ヘッド31(ノ
ズル列)が搬送方向に移動しながらノズルからインクが吐出されることにより、ラスタラ
インが形成される。図に表されているヘッド31(ノズル列)の列方向における位置は、
1パス目のときの位置であり、かかる位置を維持したままヘッド31(ノズル列)が搬送
方向に移動すると、1パス目の印刷が実行され、図に表された3つのラスタライン(右端
にパス1と書かれているラスタラインL1)が形成される。
【0047】
そして、次に、ヘッド31(ノズル列)が列方向に移動して、移動後の位置を維持した
ままヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動すると、2パス目の印刷が実行され、図に
表された2つのラスタライン(右端にパス2と書かれているラスタラインL2)が形成さ
れる。なお、インターレース(マイクロウィーブ)印刷が採用されているため、前記ラス
タラインL1に隣接するラスタラインL2は、ラスタラインL1を形成するインクが吐出
されたノズルとは異なるノズルから吐出されたインクにより形成されることとなる。その
ため、ヘッド31(ノズル列)の列方向への移動距離は、ノズル間距離(例えば、1/1
80インチ)の1/8分(1/180×1/8=1/1440インチ)ではなく、これよ
り大きな距離(以下では、この距離を距離dとする)となる。
【0048】
以下、同様の動作が行なわれることにより、3〜8パス目の印刷が実行されて、図に表
された残りのラスタライン(右端にパス3〜8と書かれているラスタラインL3〜L8)
が形成される。このように、8パスでラスタラインが形成されることにより、列方向にお
ける画像の解像度を8倍(=1440÷180)の解像度とすることが可能となる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、所謂双方向印刷が行なわれる。すなわち、1パス、3
パス、5パス、7パス目の印刷が行なわれるときのヘッド31(ノズル列)の移動方向と
2パス、4パス、6パス、8パス目の印刷が行なわれるときのヘッド31(ノズル列)の
移動方向は互いに逆方向となる(後に、詳述する)。
【0050】
以下では、プリンター1の動作例としてプリンター1の画像記録動作(換言すれば、イ
ンク吐出動作)を説明するが、上述した8パスで印刷する図5のケースを例に挙げて説明
する(以下の説明で、図5も随時参照する)。また、説明を分かり易くするために、ノズ
ル列の数は(複数個ではなく)1つであることとして、説明を行なう。また、本実施の形
態においては、後述するように、画像記録動作の合間にフラッシング動作が行なわれる。
そして、当該フラッシング動作について詳細に説明する。
【0051】
<<<プリンター1の画像記録動作例及びフラッシング動作例について>>>
ここでは、プリンター1の画像記録動作例及び当該画像記録動作の合間に実行されるフ
ラッシング動作例について、図5乃至図7を用いて説明する。図6は、ヘッド31の移動
を説明するための説明模式図である。図7は、本実施の形態に係る第一フラッシング動作
乃至第三フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部材36に向け
てインクが吐出される様子を示した模式図である。
【0052】
画像記録動作及びフラッシング動作を説明する前に、先ず、図6(の見方)について説
明する。
図6には、印刷処理(すなわち、画像記録やフラッシングに係る一連の処理)が行なわ
れている間に、ヘッド31がどのように移動するかが示されている。ヘッド31は、便宜
上、丸印で表され(図には、大きな丸と小さな丸があるが、双方の区別に意味は無い)、
ヘッド31の移動が矢印で表されている。ここで、図中左右方向に向いた矢印は、搬送方
向におけるヘッド31の移動を表し、上下方向に向いた矢印は、列方向におけるヘッド3
1の移動を表している。また、各矢印には、S1〜S21の符号が付けられているが、こ
れは、以降の印刷処理の説明で用いられるステップ番号である。
【0053】
また、パス1乃至パス8が付されているステップ番号があるが、これらのステップ番号
はインクが吐出されることにより画像記録動作が実行されるステップを表している。
【0054】
また、フラッシング位置に位置する丸印の中に、白丸印と黒丸印が存在するが、黒丸印
はフラッシング動作が行なわれることを意味している(逆に、白丸印はフラッシングが行
なわれないことを意味している)。黒丸印には、S6、S11、S16の符号が付けられ
ているが、これは、以降の印刷処理の説明で用いられるステップ番号である。
【0055】
以下、図5乃至図7を参照しつつ、印刷処理について説明する。なお、当該印刷処理は
、主としてコントローラー60により実現される。特に、本実施の形態においては、メモ
リー63に格納されたプログラムをCPU62が処理することにより実現される。そして
、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行なうためのコードから構成されてい
る。
【0056】
前述した間欠的なロール紙2の搬送が行なわれてロール紙2が停止すると、印刷領域R
上のロール紙2の部位に1ページ分の画像記録を行なうための印刷処理が開始される。
【0057】
先ず、コントローラー60は、ヘッド31をHP位置から往方向(搬送方向上流側から
下流側へ向かう方向)へ移動させる(ステップS1)。
やがて、ヘッド31が前述したフラッシング位置を通過すると(このときに、フラッシ
ング動作は実行されない)、コントローラー60は、ヘッド31の往方向への移動を継続
しつつ、ヘッド31にインクを吐出させて、1パス目の印刷を実行する(ステップS2)
。そして、このことにより、図5に示されたラスタラインL1(パス1のラスタライン)
が形成される。
【0058】
ヘッド31が第一折り返し位置へ至ると、コントローラー60は、ヘッド31を列方向
へ移動させる(ステップS3)。本実施の形態においては、前記距離dだけヘッド31を
移動させる。なお、上述したとおり、本実施の形態においては、ヘッド31が所定距離列
方向へ移動すると、インク受け部材36も当該所定距離と同じ距離だけ列方向(同じ方向
)へ移動する。すなわち、コントローラー60は、インク受け部材36も列方向へ距離d
だけ移動させることとなる。
【0059】
その後、コントローラー60は、ヘッド31を復方向(搬送方向下流側から上流側へ向
かう方向)へ移動させながら、ヘッド31にインクを吐出させて、2パス目の印刷を実行
する(ステップS4)。そして、このことにより、図5に示されたラスタラインL2(パ
ス2のラスタライン)が形成される。
【0060】
ヘッド31がフラッシング位置(この位置は、第二折り返し位置でもある)へ至ると、
コントローラー60は、ヘッド31を列方向へ移動させる(ステップS5)。本実施の形
態においては、前記距離dだけヘッド31を移動させる。また、インク受け部材36も列
方向へ距離dだけ移動する。
【0061】
そして、移動が完了すると、コントローラー60は、ノズル列に属する各ノズルからイ
ンクを吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作(第一フラッシング動作とする)
をヘッド31に実行させる(ステップS6)。
【0062】
図7の上図は、第一フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部
材36に向けてインクが吐出される様子を模式的に表した図である。図に示されるように
、本実施の形態においては、インク受け部材36に対してヘッド31が前後方向(列方向
)において前側や後側にずれることなく、インク受け部材36に対して正対した状態でヘ
ッド31がインクを吐出することとなる(ヘッド31の列方向における当該位置を第一フ
ラッシング動作実行位置という)。
【0063】
次に、コントローラー60は、ステップS2乃至ステップS6の処理と同じ処理をさら
に二度行なう(ステップS7乃至ステップS11、ステップS12乃至ステップS16)
。一度目の処理において、3パス目の印刷(ステップS7)により図5に示されたラスタ
ラインL3(パス3のラスタライン)が、4パス目の印刷(ステップS9)により図5に
示されたラスタラインL4(パス4のラスタライン)が、それぞれ形成される。また、フ
ラッシング動作(第二フラッシング動作、ステップS11)も実行される。
【0064】
図7の中央図は、第二フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け
部材36に向けてインクが吐出される様子を模式的に表した図である。第一フラッシング
動作が実行されてから第二フラッシング動作が実行されるまでの間に、ヘッド31は列方
向において距離2d分移動しているので(ステップS8において距離d、ステップS10
において距離d、それぞれ移動している)、ヘッド31は、第一フラッシング動作が実行
されるときよりも距離2d分前側へずれた位置で、インクを吐出する(ヘッド31の列方
向における当該位置を第二フラッシング動作実行位置という)。一方、第一フラッシング
動作が実行されてから第二フラッシング動作が実行されるまでの間に、インク受け部材3
6も列方向において距離2d分移動している。そのため、インク受け部材36も第一フラ
ッシング動作が実行されるときよりも距離2d分前側へずれた位置で、インクを受けるこ
ととなる。したがって、インク受け部材36に対するヘッド31の列方向における相対位
置は、第一フラッシング動作時と変わることはなく、第二フラッシング動作においても、
インク受け部材36に対して正対した状態でヘッド31がインクを吐出することとなる。
【0065】
また、二度目の処理により、5パス目の印刷(ステップS12)により図5に示された
ラスタラインL5(パス5のラスタライン)が、6パス目の印刷(ステップS14)によ
り図5に示されたラスタラインL6(パス6のラスタライン)が、それぞれ形成される。
また、フラッシング動作(第三フラッシング動作、ステップS16)も実行される。
【0066】
図7の下図は、第三フラッシング動作が実行されるときにヘッド31からインク受け部
材36に向けてインクが吐出される様子を模式的に表した図である。第二フラッシング動
作が実行されてから第三フラッシング動作が実行されるまでの間に、ヘッド31は列方向
において距離2d分移動しているので(ステップS13において距離d、ステップS15
において距離d、それぞれ移動している)、ヘッド31は、第二フラッシング動作が実行
されるときよりも距離2d分前側へずれた位置で(第一フラッシング動作が実行されると
きよりも距離4d分前側へずれた位置で)、インクを吐出する(ヘッド31の列方向にお
ける当該位置を第三フラッシング動作実行位置という)。一方、第二フラッシング動作が
実行されてから第三フラッシング動作が実行されるまでの間に、インク受け部材36も列
方向において距離2d分移動している。そのため、インク受け部材36も第二フラッシン
グ動作が実行されるときよりも距離2d分前側へずれた位置で(第一フラッシング動作が
実行されるときよりも距離4d分前側へずれた位置で)、インクを受けることとなる。し
たがって、インク受け部材36に対するヘッド31の列方向における相対位置は、第一フ
ラッシング動作時や第二フラッシング時と変わることはなく、第三フラッシング動作にお
いても、インク受け部材36に対して正対した状態でヘッド31がインクを吐出すること
となる。
【0067】
次に、コントローラー60は、最後の2つのパスの印刷を実行する。すなわち、コント
ローラー60は、ヘッド31を往方向へ移動させながら、ヘッド31にインクを吐出させ
て、7パス目の印刷を実行する(ステップS17)。そして、このことにより、図5に示
されたラスタラインL7(パス7のラスタライン)が形成される。ヘッド31が第一折り
返し位置へ至ると、コントローラー60は、ヘッド31を列方向へ移動させる(ステップ
S18)。本実施の形態においては、前記距離dだけヘッド31を移動させる。また、イ
ンク受け部材36も列方向へ距離dだけ移動する。その後、コントローラー60は、ヘッ
ド31を復方向へ移動させながら、ヘッド31にインクを吐出させて、8パス目の印刷を
実行する(ステップS19)。そして、このことにより、図5に示されたラスタラインL
8(パス8のラスタライン)が形成される。
【0068】
ヘッド31がフラッシング位置へ至ると(このときに、フラッシング動作は実行されな
い)、コントローラー60は、ヘッド31の列方向における位置を元に戻す(ステップS
20)。すなわち、ステップS3、S5、S8、S10、S13、S15、S18でヘッ
ド31が移動した方向とは逆方向に、距離7dだけヘッド31を移動させる。また、かか
る際には、インク受け部材36も元の位置に戻る。すなわち、インク受け部材36も当該
逆方向に距離7dだけ移動する。
【0069】
そして、コントローラー60は、ヘッド31をフラッシング位置からHP位置へ移動さ
せることにより(ステップS21)、1ページ分の画像記録を行なうための印刷処理を終
了させる。
【0070】
===インク受け部材36の移動をヘッド31の移動に連動させる方法について===
前述したとおり、本実施の形態に係るインク受け部材36は、ヘッド31の列方向への
移動に連動して、当該列方向へ移動する。ここでは、インク受け部材36の移動をヘッド
31の移動に連動させる方法について一例を挙げて図8乃至図10を用いて説明する。図
8は、ヘッド31を列方向へ移動させるための機構例を説明するための説明模式図である
。図9は、インク受け部材36を列方向へ移動させるための機構例を説明するための説明
模式図である。図10は、インク受け部材36をヘッド31に連動させる機構例を説明す
るための説明模式図である。なお、図8及び図9は、ヘッド31やインク受け部材36等
を上側から見た図である。図10は、ヘッド31やインク受け部材36等を右側から見た
図である。
【0071】
図8に示すように、ヘッド31の右側には、列方向に沿うように送りねじであるヘッド
用ボールねじ120が配置されている。そして、ヘッド31には、ボールねじ係合部材1
22が固定されており、したがって、ヘッド用ボールねじ120は、ボールねじ係合部材
122を介して、ヘッド31に取り付けられている。そして、ヘッド用ボールねじ120
が回転すると、ヘッド31が列方向に移動するようになっている。なお、図示していない
が、ヘッドガイドレールが備えられており、当該ヘッドガイドレールがヘッド用ボールね
じ120によるヘッド31の列方向における移動を案内するようになっている。
【0072】
また、図9に示すように、インク受け部材36の右側にも、列方向に沿うように送りね
じであるインク受け部材用ボールねじ130が配置されている。そして、インク受け部材
36には、ボールねじ係合部材132が固定されており、したがって、インク受け部材用
ボールねじ130は、ボールねじ係合部材132を介して、インク受け部材36に取り付
けられている。そして、インク受け部材用ボールねじ130が回転すると、インク受け部
材36が列方向に移動するようになっている。なお、図示していないが、インク受け部材
用のガイド部材がインク受け部材36の列方向における移動を案内するようになっている

【0073】
また、図10に示すように、ヘッド用ボールねじ120の端部とインク受け部材用ボー
ルねじ130の端部には、それぞれヘッド用ギア124とインク受け部材用ギア134と
が連結されている。そして、ヘッド用ギア124及びインク受け部材用ギア134は、双
方ともギア輪列を介して駆動軸140の端部に連結された駆動ギア144と繋がっている

【0074】
ここで、不図示のモーターにより駆動軸140が回転すると、駆動力が駆動ギア144
、ギア輪列、ヘッド用ギア124を介してヘッド用ボールねじ120に伝達され、当該ヘ
ッド用ボールねじ120が回転する。同時に、駆動力が駆動ギア144、ギア輪列、イン
ク受け部材用ギア134を介してインク受け部材用ボールねじ130に伝達され、当該イ
ンク受け部材用ボールねじ130も回転する。このようにして、インク受け部材36とヘ
ッド31の連動が実現される。
【0075】
また、駆動軸140が回転した際に、ヘッド用ボールねじ120及びインク受け部材用
ボールねじ130が同じ角速度で回転するように、ギア輪列の寸法等が決められている。
また、ヘッド用ボールねじ120及びインク受け部材用ボールねじ130を同種のものと
している。そのため、ヘッド31が所定距離列方向へ移動すると、インク受け部材36も
当該所定距離と同じ距離だけ列方向(同じ方向)へ移動することが実現される。
【0076】
なお、図6で示したとおり、ヘッド31は、フラッシング位置に位置するときだけでな
く、第一折り返し位置に位置するときにも列方向へ移動する。そのため、ヘッド31がど
ちらの位置に位置していても、ヘッド用ギア124がギア輪列を介して駆動ギア144と
繋がる必要がある。そして、このことは、ヘッド用ギア124が噛み合う(ギア輪列中の
)ギアを、ヘッド31がフラッシング位置に位置するときと第一折り返し位置に位置する
ときとで異ならせること(すなわち、ヘッド31がフラッシング位置に位置した際にヘッ
ド用ギア124がギア輪列の中の一のギアと噛み合い、ヘッド31が第一折り返し位置に
位置した際にヘッド用ギア124がギア輪列中の他のギアに噛み合うように構成すること
)により、実現することができる。
なお、当然のことながら、ギア輪列中の一部をベルトとしてもよい。
【0077】
===本実施の形態に係るプリンター1の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係るプリンター1は、列方向にノズルが並んだノズル
列を有するヘッド31と、ヘッド31がフラッシング動作を行なうことにより吐出された
インクを受けるインク受け部材36と、コントローラー60と、を有している。そして、
コントローラー60は、ヘッド31を列方向における第一位置(例えば、前記第一フラッ
シング動作実行位置)に位置させて、ノズル列に属する各ノズルからインク吐出してフラ
ッシングを行なうフラッシング動作(例えば、第一フラッシング動作)をヘッド31に実
行させ、その後、ヘッド31を列方向へ移動させることによりノズル列の長さ(つまり、
ノズル♯1からノズル♯Nまでの距離D、図7の上図参照)よりも短い長さ(例えば、前
記距離4d)分第一位置よりも列方向にずれた第二位置(例えば、第三フラッシング動作
実行位置)にヘッド31を位置させて、フラッシング動作(例えば、第三フラッシング動
作)をヘッド31に実行させる。さらに、コントローラー60は、ヘッド31の前記第一
位置から前記第二位置への移動に連動させて、インク受け部材36を列方向へ移動させる

【0078】
そして、このことにより、インク受け部材36上にインクが堆積することを抑止するこ
とが可能となる。
【0079】
上記につき、本実施の形態に係るプリンター1と比較例に係るプリンター1とを比較し
ながら、図11及び図12を用いて説明する。図11は、図7に対応する図であり、比較
例に係る第一フラッシング動作乃至第三フラッシング動作が実行されるときにヘッド31
からインク受け部材36に向けてインクが吐出される様子を示した模式図である。図12
は、本実施の形態に係るプリンター1を比較例に係るプリンター1と比較したときの本実
施の形態に係るプリンター1の有効性を説明するための説明模式図である。図12の上図
が比較例に係るプリンター1を、図12の下図が本実施の形態に係るプリンター1を、そ
れぞれ表しており、いずれの図においても、第一乃至第三フラッシング動作終了時におけ
る(または、1ページ分の画像記録終了時における)インク受け部材36表面のインクの
様子が表されている。
【0080】
図7と図11とを比較することにより理解されるように、比較例に係るプリンター1の
本実施の形態に係るプリンター1との相違は、本実施の形態に係るプリンター1において
は、ヘッド31の移動に連動してインク受け部材36が列方向に移動するのに対し、比較
例に係るプリンターにおいては、インク受け部材36が(列方向に)移動しないことであ
る。
【0081】
そして、インク受け部材36が移動しない比較例のケースにおいて、コントローラー6
0が、上述したように、第一位置でフラッシング動作を行ない、その後、ノズル列の長さ
よりも短い長さ分第一位置よりも列方向にずれた第二位置でフラッシング動作を行なった
場合には、フラッシング動作によるインク吐出が複数回行なわれるインク受け部材36上
の領域(以下、便宜上、複数回領域と呼ぶ)とフラッシング動作によるインク吐出が1回
のみ行なわれるインク受け部材36上の領域(以下、便宜上、一回領域と呼ぶ)とがイン
ク受け部材36上に現れる。つまり、図12の上図において、符号A1で示した領域が複
数回領域(具体的には、この領域は、インク吐出が二回行なわれる領域と三回行なわれる
領域とを含んでいる)となり、符号A2で示した領域が一回領域となる(図11も合わせ
て参照)。
【0082】
そして、比較例においては、かかる事項に起因して、以下の問題点が生じ得る。すなわ
ち、複数回領域A1には複数回のインク吐出により多くのインクが着弾するため、当該イ
ンクが鉛直方向下方へ円滑に垂れ流れるが(図12の上図のI1参照)、その一方で、一
回領域A2においては、インク吐出が一回のみであることに起因して着弾するインクの量
が少なくなるため、当該インクが垂れ流れないでインク受け部材36上に留まる(堆積す
る)虞がある(図12の上図のI2参照。特に、インクの再溶解性又は再分散性が低い場
合には、当該インクがインク受け部材36上に堆積する可能性が高くなる)。そして、留
まったインクは暫くすると乾燥して固まってしまう。
【0083】
そして、1ページ分の画像記録が繰り返されると(つまり、何ページも連続して画像記
録が行なわれると)堆積したインクが積み重なっていき、当該積み重ねられたインクとヘ
ッド31とが物理的に干渉してしまう不都合が生じ得る。
【0084】
これに対し、本実施の形態に係るプリンター1では、コントローラー60が、ヘッド3
1の前記第一位置(例えば、前記第一フラッシング動作実行位置)から前記第二位置(例
えば、前記第三フラッシング動作実行位置)への移動に連動させて、インク受け部材36
を列方向へ移動させる。そのため、ヘッド31が当該第一位置に位置する際のインク受け
部材36に対するヘッド31の列方向における相対位置(図7の上図参照)と、ヘッド3
1が当該第二位置に位置する際の当該相対位置(図7の下図参照)と、を同じとすること
ができ、コントローラー60が、当該第一位置でフラッシング動作を行ない、その後、当
該第二位置でフラッシング動作を行なった場合には、前述した一回領域A2は現れず、前
述した複数回領域A1(本実施の形態においては、インク吐出が三回行なわれる領域とな
る)のみがインク受け部材36上に現れることとなる。
【0085】
したがって、インクが鉛直方向下方へ円滑に垂れ流れることとなり(図12の下図のI
3参照)、インク受け部材36上にインクが堆積することが適切に抑止される。そのため
、インクとヘッド31との物理的干渉という不都合が回避されることとなる。
【0086】
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、液体吐出方法
等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのも
のであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱す
ることなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うま
でもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0087】
上記実施の形態においては、液体吐出装置(液体噴射装置)をインクジェット式プリン
ターに具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を
採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装
置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をい
い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液
体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であ
るときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の
無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質
の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子
が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上
記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な
水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物
を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL
(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製
造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射す
る液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精
密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロ
ディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤
滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)
などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、
基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装
置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用するこ
とができる。
【符号の説明】
【0088】
1 プリンター、2 ロール紙、10 給送ユニット、18 巻軸、19 中継ローラー
、20 搬送ユニット、21 中継ローラー、22 中継ローラー、23 第一搬送ロー
ラー、23a 第一駆動ローラー、23b 第一従動ローラー、24 第二搬送ローラー
、24a 第二駆動ローラー、24b 第二従動ローラー、25 反転ローラー、26
中継ローラー、27 送り出しローラー、29 プラテン、30 ヘッドユニット、31
ヘッド、34 バルブユニット、35 フラッシングユニット、36 インク受け部材
、37 フラッシングボックス、40 キャリッジユニット、41 ガイドレール、42
キャリッジ、50 検出器群、60 コントローラー、61 インターフェース部、6
2 CPU、63 メモリー、64 ユニット制御回路、70 ヒーターユニット、80
送風ユニット、81 ファン、90 巻き取りユニット、91 中継ローラー、92
巻き取り駆動軸、110 ホストコンピューター、120 ヘッド用ボールねじ、122
ボールねじ係合部材、124 ヘッド用ギア、130 インク受け部材用ボールねじ、
132 ボールねじ係合部材、134 インク受け部材用ギア、140 駆動軸、144
駆動ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列方向にノズルが並んだノズル列を有するヘッドと、
該ヘッドを前記列方向における第一位置に位置させて、前記ノズル列に属する各ノズル
から液体を吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作を前記ヘッドに実行させ、
その後、前記ヘッドを前記列方向へ移動させることにより前記ノズル列の長さよりも短
い長さ分前記第一位置よりも前記列方向にずれた第二位置に前記ヘッドを位置させて、前
記フラッシング動作を前記ヘッドに実行させるコントローラーと、
前記ヘッドが前記フラッシング動作を行なうことにより吐出された液体を受ける液体受
け部と、を有する液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記ヘッドの前記第一位置から前記第二位置への移動に連動さ
せて、前記液体受け部を前記列方向へ移動させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
列方向にノズルが並んだノズル列を有するヘッドと、
前記ノズル列に属する各ノズルから液体を吐出してフラッシングを行なうフラッシング
動作を前記ヘッドが行なうことにより吐出された液体を受ける液体受け部と、を有する液
体吐出装置を準備することと、
該ヘッドを前記列方向における第一位置に位置させて、前記フラッシング動作を前記ヘ
ッドに実行させ、その後、前記ヘッドを前記列方向へ移動させることにより前記ノズル列
の長さよりも短い長さ分前記第一位置よりも前記列方向にずれた第二位置に前記ヘッドを
位置させて、前記フラッシング動作を前記ヘッドに実行させ、
前記ヘッドの前記第一位置から前記第二位置への移動に連動させて、前記液体受け部を
前記列方向へ移動させることと、
を有することを特徴とする液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−106458(P2012−106458A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258649(P2010−258649)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】