説明

液体吐出装置及び液体吐出ヘッドのメンテナンス方法

【課題】ノズル内部への気泡混入を回避するとともに、ノズル形成面やノズル内部の異物を確実に除去する液体吐出装置及び液体吐出ヘッドのメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】ブレード66をノズル形成面51Aに摺動させて、該ノズル形成面51Aに付着したインク液滴や紙粉を除去するワイピング処理において、ブレード66とノズル形成面51Aとの接触部分及びその近傍に脱気液体供給ノズル100から脱気液体112を供給する。脱気液体112の液たまりによってノズル51(メニスカス)が覆われるので、ブレード66による払拭時のノズル51内への気泡の巻き込みが防止される。また、メニスカスと脱気液体112とを接触させることで、メニスカス近傍の溶存気体を脱気液体に溶解させることができ、メニスカス近傍の脱気度を上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出ヘッドのメンテナンス方法に係り、特にノズルからインクを吐出させてメディア上に画像を形成するインクジェット記録装置の吐出ヘッドメンテナンス技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体とヘッドとを相対移動させて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置において、ヘッドのノズル形成面(吐出面)やノズル(吐出孔)内部にインクや紙粉などの異物が付着すると所定の吐出性能を維持することができなくなり記録画像の品質低下を招いてしまう。このような問題を解決するために、ノズル形成面やノズル内部の異物を除去するメンテナンスが実行される。
【0003】
特許文献1に記載された発明では、記録ヘッドの吐出面に洗浄液を噴出し、その後ブレードにより該吐出面を拭き、更に、吐出孔からインクを吐出する除去操作を行うことで、吐出孔でのインクの目詰まりを回避するインクジェットプリンタが開示されている。
【特許文献1】特開2005−144737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノズル形成面をブレードで払拭して該ノズル形成面の異物を除去するメンテナンス方法では、ブレードによりノズル面を払拭する際にノズル内部に気泡を巻き込んでしまう。ノズル内部に気泡を巻き込むと画像形成時のインク吐出において吐出圧力が気泡に吸収されてしまい、不吐出、吐出方向のズレ、吐出液適量の減少といった吐出異常が発生する。このような気泡混入による吐出異常を回避する方法として、ブレードによる払拭後にパージ(予備吐出)を行う方法があるが、ノズル内部の気泡を除去するためには多量のインクを吐出させなければならず、インクの消費量が増加してしまう。
【0005】
特許文献1に記載された発明では、洗浄液を吐出面に噴出する際にメニスカスに洗浄液が直接浸入してしまい、気泡を巻き込む可能性が高くなる。また、洗浄液を記録ヘッドの吐出面に吹きかけてからブレードにより該吐出面を拭くので、洗浄液が吹きかけられてから払拭までの期間にメニスカス近傍の脱気度が下がってしまう。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ノズル内部への気泡混入を回避するとともに、ノズル形成面やノズル内部の異物を確実に除去する液体吐出装置及び液体吐出ヘッドのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る液体吐出装置は、第1の液体を吐出するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドのノズル形成面にワイピング処理を施すワイピング処理手段と、前記液体吐出ヘッドと前記ワイピング処理手段とを相対的に移動させる移動手段と、を備え、前記ワイピング処理手段は、前記液体吐出ヘッドのノズル形成面を払拭する払拭部材と、ワイピング処理時に、前記払拭部材の進行方向側の前記払拭部材と前記液体吐出ヘッドのノズル形成面との接触部分近傍に所定の脱気処理が施された第2の液体を供給する第2の液体供給手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、液体吐出ヘッドのノズル形成面に第2の液体を供給しながら払拭部材によるワイピングを行うので、ノズル内部に気泡が巻き込まれることを抑制し、仮にノズル内部に気泡が巻き込まれた場合にも所定の脱気処理が施された第2の液体によってその気泡を溶解させることが可能である。
【0009】
第2の液体の供給量は、少なくとも1ノズルを覆うことができる量であり、主走査方向のノズル配置順にインクを吐出させるようにインク吐出を制御する吐出制御手段を備え、記録ヘッドの主走査方向への走査と同期して走査方向の下流側のノズルから順にインクを吐出させる態様がある。
【0010】
液体吐出ヘッドには、第1の液体を吐出するノズルと、該ノズルとから吐出させる第1の液体を収容する圧力室と、該圧力室内の液体を加圧する加圧手段と、を備える態様がある。また、複数のノズル(圧力室)を備える態様では、各圧力室にインクを分配供給するインク供給路(共通液室)を備える態様がある。
【0011】
液体吐出ヘッドには、被吐出媒体(第1の液体の被受容媒体)の少なくとも1辺の長さにわたって複数のノズルが並べられたノズルを有するフルライン型ヘッドがある。このようなフルライン型ヘッドにワイピング処理を施す場合、液体吐出ヘッドの短手方向と略平行方向に液体吐出ヘッドとワイピング処理手段(払拭部材)とを相対移動させてもよいし、液体吐出ヘッドの長手方向と略平行方向に液体吐出ヘッドとワイピング処理手段(払拭部材)とを相対移動させてもよい。
【0012】
第2の液体供給手段は、第2の液体を流出(噴出)させる微細孔(ノズル)を含んで構成される。この微細孔は1つでも複数でもよい。
【0013】
第2の液体の溶存気体量は第1の液体の溶存気体量未満となる。また、第2の液体は少なくとも第1の液体の成分の一部を含むことが好ましい。第2の液体を第1の液体と同一組成とする態様がより好ましい。第1の液体と第2の液体とを同一組成とする態様では、第1の液体を収容する収容部材(供給タンク)と、第2の液体を収容する収容部材とを共通化する態様も可能である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記液体吐出ヘッドのノズル形成面に供給された前記第2の液体を回収する回収手段と、前記回収手段によって回収された前記第2の液体に脱気処理を施す脱気手段と、前記脱気手段によって脱気処理された前記第2の液体を前記第2の液体供給手段に送る送液手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ワイピング処理時に使用した第2の液体を回収して、その使用済みの第2の液体に脱気処理を施すことで、使用済みの第2の液体の再利用が可能になり、第2の液体の消費量低減化に寄与する。
【0016】
使用済みの第2の液体に含まれる異物を除去する異物除去手段を備える態様が好ましい。異物除去手段にはフィルタなどがある。
【0017】
第2の液体を送液する送液手段には、チューブや管などの流路部材と、ポンプなどの加圧装置と、を含む構成がある。流路部材は所定の遮気性を有する(例えば、金属管)部材を用いる態様が好ましい。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記ノズルと連通し、前記ノズルから吐出される前記第1の液体を収容する圧力室と、前記圧力室内の前記第1の液体を加圧する加圧手段と、前記加圧手段に駆動信号を与える駆動信号付与手段と、ワイピング処理時において、前記ノズルから前記第1の液体を吐出させないように前記圧力室内の前記第1の液体を加圧する駆動信号を前記加圧手段に付与するように前記駆動信号付与手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、ノズル(メニスカス)近傍に存在する異物を除去可能であるとともに、第2の液体をノズルの内部に浸入させて第1の液体の溶存気体を第2の液体に溶解させ、第1の液体の溶存気体量を下げることが可能になる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記払拭部材は、前記液体吐出ヘッドのノズル形成面に第2の液体を供給する構造を有することを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、第2の液体の脱気度を損なわず(溶存気体量を上げることなく)、ワイピング処理領域に第2の液体の液たまりを形成可能であり、ワイピング処理時の脱気能力(第1の液体の溶存気体を第2の液体に溶け込ませる能力)を向上させる。
【0022】
払拭部材に第2の液体を供給する構造を備える態様には、払拭部材の液体吐出ヘッドのノズル形成面と接触する面に微細孔(ノズル)を備える態様がある。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記払拭部材は、前記液体吐出ヘッドのノズル形成面に供給される前記第2の液体の量を規制する規制部材を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、液体吐出ヘッドのノズル形成面に均一な第2の液体の液たまりを形成することができ、液たまりが不均一になることによる拭き残し(拭きムラ)が防止される。
【0025】
払拭部材の幅方向(ワイピング処理時の移動方向と略直交方向)の両端部に第2の液体を吸収する吸収部材を備える態様や、2枚の払拭部材の間に液たまりを形成する態様がある。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記ワイピング処理手段の位置を検出する位置検出手段と、吐出異常ノズルを検出する吐出異常ノズル検出手段と、前記吐出異常ノズル検出手段によって検出された吐出異常ノズルに対して前記ワイピング処理手段によるワイピング処理を施すように前記ワイピング処理手段及び前記移動手段を制御するを制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、吐出異常ノズル及びその近傍の領域に対して選択的にワイピング処理が施されるので、吐出異常ノズルに対する回復処理時間が短縮化され、第2の液体の消費量低減化に寄与する。また、吐出効率の向上が見込まれるとともに装置全体の省電力化に寄与する。
【0028】
液体吐出ヘッドのノズル形成面の一部に対してワイピング処理を施す態様では、払拭部材にはその幅が液体吐出ヘッドのノズル面の幅よりも小さいものが適用される。
【0029】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記液体吐出ヘッドは、前記液体吐出ヘッドから第1の液体の吐出を受ける被吐出媒体の幅に対応したライン型ヘッドであり、前記払拭部材は、ワイピング処理時において前記液体吐出ヘッドの短手方向と角度α(0度<α<90度)をなす斜め方向に配置され、前記移動手段は、前記ワイピング処理手段を前記液体吐出ヘッドの短手方向へ移動させるか、或いは前記ワイピング処理手段を前記液体吐出ヘッドの長手方向に移動させるかを切換可能に構成され、前記制御手段は、前記移動手段による前記ワイピング処理手段の移動方向を選択的に切り換えることを特徴とする。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、ライン型ヘッドに対してワイピング処理を実行する際に、ワイピング処理手段(払拭部材)を液体吐出ヘッドの短手方向に移動させると、ワイピング処理時間の短縮化が可能になる。また、ワイピング処理手段を液体吐出ヘッドの長手方向に移動させると、一度のワイピング動作でより多くの領域にワイピング処理を施すことが可能になる。
【0031】
特に、請求項6に記載の発明と請求項7に記載の発明を組み合わせると、吐出異常ノズルが存在する領域に大きさに応じてワイピング処理の方向を選択的に切り換えることができるので、ワイピング処理の処理効率の向上が見込まれる。
【0032】
また、前記目的を達成するための方法発明を提供する。即ち、請求項8に記載の発明は、第1の液体を吐出するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、前記液体吐出ヘッドのノズル形成面を払拭する払拭部材を有するワイピング処理手段によるワイピング処理時において、前記払拭部材と前記液体吐出ヘッドのノズル形成面との接触部分近傍に所定の脱気処理が施された第2の液体を供給しながら、前記ワイピング処理手段と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、液体吐出ヘッドのノズル形成面に第2の液体を供給しながら払拭部材によるワイピングを行うので、ノズル内部に気泡が巻き込まれることを抑制し、仮にノズル内部に気泡が巻き込まれた場合にも所定の脱気処理が施された第2の液体によってその気泡を溶解させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0035】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10は、インク(第1の液体)の色ごとに設けられた複数のヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、ヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル形成面(図1には不図示、図4に符号51Aで図示)に付着したインクや紙粉などを除去するワイピング処理部13(ワイピング処理手段)と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16(被吐出媒体)を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル形成面に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
【0036】
図1では図示しないが、図1の印字部12は、印字位置と退避位置とを移動可能(印字状態と退避状態とを切換可能)に構成されている。印字位置とは、各ヘッド12K,12C,12M,12Yから各色インクを吐出して記録紙16上に画像形成のためのインク吐出を行う位置であり、印字部12が印字位置にある状態では、各ヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル形成面と記録紙16とのクリアランスは数mm程度となる。図1に示す状態は印字12が印字位置に位置する状態であり、この状態が印字状態である。
【0037】
退避位置とは、上述した印字位置から印字部12を退避させた位置であり、パージやワイピングなどのメンテナンス処理実行時や、非印字時(印字停止時、待機時等)には印字部12を退避位置に移動させる。
【0038】
例えば、ワイピング処理を実行する場合には、印字部12を退避位置に移動させて、ワイピング処理部13が各ヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル形成面近傍の所定位置に移動されてワイピング処理が実行される。また、パージ(予備吐出)を実行する場合には、印字部12を退避位置に移動させて、後述するキャップ64を各ヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル形成面に当接させ、各ヘッド12K,12C,12M,12Yのパージが実行される。このように印字部12を退避位置に移動させてメンテナンス処理を実行する状態がメンテナンス状態である。
【0039】
非印字状態が所定期間以上継続される場合には、印字部12を退避位置に移動させて、キャップが各ヘッド12K,12C,12M,12Yのノズル形成面に当接されてノズル内のインクの乾燥(固化)が防止される。このように、印字部12を退避位置に移動させてキャップによって各ヘッド12K,12C,12M,12Yのノズルを保護する状態が休止状態である。
【0040】
上述した退避位置の一例を挙げると、印字位置に対して記録紙16の反対方向(記録紙16の鉛直上側方向)に退避位置を設定する態様や、記録紙16の画像形成面(記録面)と平行な水平方向に退避位置を設定する態様がある。
【0041】
即ち、印字部12は不図示の印字部移動機構によって印字位置と退避位置とを移動可能に構成される。なお、印字部12を固定位置として、印字部12に対してワイピング処理部13や吸着ベルト搬送部22、後述するキャップ(図5の符号64)を移動させる態様も可能である。印字部12を固定位置とする場合、印字部12の直下に吸着ベルト搬送部22が位置する状態(図1の状態)が印字状態であり、印字部12の直下にワイピング処理部13やキャップなどのメンテナンス部材が位置する状態が退避状態である。退避状態にはワイピング実行やパージ実行、吸引実行などのメンテナンス状態とノズル形成面にキャップを密着させてノズル内のインクを保護する休止状態が含まれる。
【0042】
図1では、印字状態におけるワイピング処理部13を印字部12の紙送り方向(記録紙搬送方向)上流側に模式的に図示したが、ワイピング処理部13は印字部12の紙送り方向下流側に配置してもよい。また、ワイピング処理部13を印字部12に対して紙送り方向と直交する方向に配置してもよい。
【0043】
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0044】
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0045】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0046】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
【0047】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル形成面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0048】
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル形成面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
【0049】
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図7中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。なお、ベルト33の詳細は後述する。
【0050】
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0051】
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0052】
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0053】
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照、図2では図1に図示したワイピング処理部13、加熱ファン40など印字部12周辺の図示は省略)。詳細な構造例は後述するが、各ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってノズル(インク吐出口)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
【0054】
上述した紙搬送方向(副走査方向)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0055】
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(即ち、1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0056】
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
【0057】
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0058】
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った記録画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
【0059】
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0060】
印字検出部24は、各色のヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターン(または、実技画像)を読み取り、各ヘッドの吐出異常検出を行う。吐出異常判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。また、印字検出部24には、打滴されたドットに光を照射させる光源(不図示)を備えている。
【0061】
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0062】
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0063】
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0064】
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷した実技画像)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
【0065】
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダ別に画像を集積するソーターが設けられる。なお、符号26Bはテスト印字排出部である。
【0066】
〔印字ヘッドの説明〕
次に、ヘッド50の構造について説明する。インク色ごとに設けられている各ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
【0067】
図3(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図、図3(c) はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a) 〜(c) 及び図4に示したように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
【0068】
即ち、本実施形態におけるヘッド50は、図3(a),(b) に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が印字媒体送り方向と略直交する方向に印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
【0069】
また、図3(c) に示すように、短尺の2次元に配列されたヘッド50’を千鳥状に配列してつなぎ合わせて、印字媒体の全幅に対応する長さとしてもよいし、短尺ヘッド50’を直線状につなぎ合わせてもよい。
【0070】
図4(a)は,インク室ユニット53の立体的構成を示す断面図(図3(a) 中のIV−IV線に沿う断面図)であり、図4(b)は、図4(a)に示すインク室ユニット53の構造の他の態様を示す断面図である。
【0071】
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
【0072】
圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えた圧電アクチュエータ(圧電素子)58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電アクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0073】
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図3(a)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
【0074】
即ち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
【0075】
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0076】
特に、図3(a)〜(c)に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。
【0077】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0078】
即ち、用紙の幅方向に1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインを印字するようなノズル駆動を主走査といい、前記主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査という。
【0079】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表される圧電アクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されている。本発明の実施に際して、圧電アクチュエータ58にはピエゾ素子以外の他のアクチュエータを適用できる。
【0080】
図4(b)には、圧力室52のインク吐出方向と反対側の背面に共通液室55を配置した背面流路構造を示す。図4(b)に示す背面流路構造では、加圧板56に形成された供給口54を介して圧力室52と共通液室55が連通されるので、図4(a)に示す構造に比べてインク供給側の流路抵抗が小さくなりリフィル効率を大きく向上させることが可能になる。図4(b)に示す背面流路構造は、通常のインクよりも粘度の高い高粘度インクを用いる場合にも高い吐出周波数を維持することができる。
【0081】
図4に示す背面流路構造では、圧電アクチュエータ58と共通流路55内のインクが接触しないように圧電アクチュエータ58には保護部材(カバー)が設けられる。また、加圧板56は圧電アクチュエータ58の共通電極と兼用されるので、加圧板56のインクと接触する部分には絶縁処理が施される。
【0082】
〔インク供給系の説明〕
図5はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。図5に図示するヘッド50は、図5における左右方向が短手方向になり、紙面垂直方向が長手方向になる。
【0083】
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0084】
図5に示すように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0085】
なお、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンク(図5中不図示、図8の符号122で図示)を設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパ効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0086】
サブタンクにより内圧を制御する態様には、大気開放されたサブタンクとヘッド51内の圧力室52とのインク水位の差により圧力室52内の内圧を制御する態様や、密閉されたサブタンクに接続されたポンプによりサブタンク及びインク室の内圧を制御する態様などがあり、何れの態様を適用してもよい。
【0087】
〔ヘッドのメンテナンスの説明(第1実施形態)〕
インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64が設けられ、ノズル形成面51Aのクリーニングを行うための手段としてワイピング処理部13が設けられている。
【0088】
キャップ64含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方の位置に移動される。
【0089】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル形成面51Aをキャップ64で覆う。
【0090】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
【0091】
このような状態になる前に(圧電アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲で)圧電アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き)が行われる。
【0092】
また、ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、圧電アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0093】
ワイピング処理部13は、ヘッド50のノズル形成面(インク吐出面)51Aに当接させながら、ヘッド50の短手方向の一方向(図5に矢印線で図示する図5における右側から左側に向かう方向)に移動してノズル形成面51Aの汚れを除去するブレード66(払拭部材)と、ブレード66を上下方向に移動させてノズル形成面51Aに接触させる/接触させない(非接触)を切り換えるブレード上下機構(不図示)と、ブレード66がノズル形成面51Aに接触する部分及びその近傍に脱気液体(第2の液体)を供給する(図6参照)脱気液体供給ノズル100と、を有して構成される。
【0094】
ブレード66は、硬質ゴムなどが好適に用いられる。即ち、ブレード66は所定の強度(剛性)及び所定の弾力性を有し、その表面はインク液滴や脱気液体をはじく所定の撥水性能を有している。ブレード66はノズル形成面51Aに付着したインク(固まってノズル形成面に固着したインク)や紙粉、その他の異物を払拭除去可能な部材で構成される。
【0095】
脱気液体供給ノズル100はブレード66の近傍(ワイピング実行時のブレード66の移動方向の進行方向側)に配置され、ブレード66とともにヘッド50に対して相対移動可能に構成されている。また、脱気液体供給ノズル100は脱気液体流路102、ポンプ104を介して脱気液体供給タンク106と連通し、ポンプ104を動作させることで脱気液体供給タンク106に収容されている脱気液体が脱気液体供給ノズル100に送られる。即ち、脱気液体を供給する手段は、脱気液体供給ノズル100と、脱気液体流路102と、ポンプ104と、脱気液体供給タンク106と、から構成される。
【0096】
図5には、脱気液体供給ノズル100を1つだけ図示したが、脱気液体供給ノズル100を複数備える態様も可能である。脱気液体供給ノズル100を複数備える態様では、ブレード66の幅方向(ブレード66の移動方向と略直交方向)に脱気液体供給ノズル100を並べる態様が好ましい。脱気液体供給ノズル100をブレード66の幅方向に複数備える態様によれば、ブレード66の幅が広い場合にもブレード66の幅の全域にわたって脱気液体を略均一に供給することができる。
【0097】
ワイピング処理部13は、ワイピング処理部移動機構110によってヘッド50のノズル形成面51Aの全面にわたって移動可能に構成される。即ち、ワイピング処理部13は、ノズル形成面51Aの面内においてヘッド50の短手方向と長手方向にそれぞれ独立に移動可能に構成されている(図17参照)。
【0098】
本例では、ヘッド50にフルライン型ヘッドを適用する態様を示したが、記録紙16の幅よりも短い長さを持つ短尺ヘッドを記録紙16の幅方向(主走査方向)に走査させながら記録紙16の幅方向の印字を行い、記録紙16を紙送り方向(主走査方向と略直交する副走査方向)に移動させて幅方向の印字を繰り返すシリアル方式を適用してもよい。上述したシリアル方式では、ワイピング処理部13をヘッド50の長手方向(記録紙16の幅方向)に移動させる機構を省略可能である。
【0099】
ワイピング処理実行時には、脱気液体供給ノズル100からブレード66の進行方向側(図5におけるブレード66の左側)に脱気液体を供給しながらブレード66をノズル形成面51Aに当接させてワイピング処理部13をヘッド50の短手方向の一方向(図5の矢印線で示す図5右から左の方向)に移動させる。1回のワイピングが終了すると、ブレード66とノズル形成面51Aとを非接触としてワイピング処理部13をワイピング処理実行時の反対方向(図5における左側から右側方向)に移動させる。
【0100】
ヘッド50の長手方向の長さと略同一またはそれ以上の長さを有するブレード66を用いる態様(ブレード66の長さ≧ヘッド50の長手方向の長さ)では、ブレード66とヘッド50とを1回相対的に移動させることでヘッド50のノズル形成面51Aの全域にわたってワイピング処理を施すことが可能である。また、ヘッド50の長手方向の長さ未満の長さを有する短尺のブレード66を用いる態様(ブレード66の長さ<ヘッド50の長手方向の長さ)では、ヘッド50の短手方向にブレード66を移動させるワイピングをヘッド50の長手方向にブレード移動させて複数回実行することでヘッド50のノズル形成面の全域にわたってワイピング処理を施すことができる。
【0101】
ブレード66がワイピング開始位置側(図5におけるヘッド50の右側)の端部からワイピング終了位置側(図5におけるヘッド50の左側)端部に移動して1回のワイピング処理が終了すると、脱気液体供給ノズル100からヘッド50のノズル形成面51Aに溜まった脱気液体を脱気液体供給タンク106へ回収するようにポンプ104が脱気液体供給時と逆方向に駆動される。
【0102】
即ち、ヘッド50のノズル形成面51Aの面内におけるワイピング処理部13(ブレード66)の位置を検出する検出器(例えば、位置センサ、エンコーダ等)を含む位置検出部(図7の符号130)を備え、ワイピング処理部13の位置に応じて脱気液体の供給制御やブレード66の上下制御、ポンプ104の制御が適宜実行される。
【0103】
また、ヘッド50のノズル形成面51Aの一部に対して選択的にワイピング処理を施すことも可能である。例えば、ヘッド50のノズル形成面51Aの汚れ具合を光学反射センサ等の汚れ検出センサ(不図示)によって判断し、該ノズル形成面51Aの一部のみが汚れている場合には、当該領域にワイピング処理部を移動させて当該領域(及び当該領域の近傍)に対してワイピング処理が実行される。
【0104】
図6には、ブレード66を用いたワイピング処理を実行中の状態を示す。図6に示すように、脱気液体供給ノズル100から脱気液体112を供給しながら(拭きかけながら)ワイピング処理を行うことで、ノズル51の内部に気泡を巻き込むことが抑制されるとともに、ノズル51に気泡が巻き込まれた場合にも脱気液体へ該気泡を溶解させて該気泡を消滅させることができる。また、脱気液体112をメニスカスと接触させることでメニスカス近傍の溶存気体を脱気液体112に溶解させてメニスカス近傍の脱気度を上げる(溶存気体量を下げる)ことが可能になる。
【0105】
脱気液体は、その溶存酸素量が0〜2(mg/l)の液体であり、画像形成に用いられるインクの成分が用いられる。脱気液体の具体例を挙げると、インク、純水、インクから色材を除去した透明インクなどがある。脱気液体は画像形成に用いるインクと近い組成を有することが好ましく、上述したインク或いは透明インクが好適に用いられる。
【0106】
〔制御系の説明〕
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84、ポンプドライバ85等を備えている。
【0107】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0108】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0109】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバー(駆動回路)である。なお、図7のモータドライバ76及びモータ88にはそれぞれ複数のモータドライバ及びモータが含まれている。即ち、システムコントローラ72は複数のモータドライバを介して複数のモータを制御する。
【0110】
複数のモータの一例を挙げると、図1のローラ31、32を回動させるモータ、図6に示したワイピング処理部移動機構のモータ、ブレード66を上下方向に移動させるブレード上下機構のモータなどがある。
【0111】
また、ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバーである。図7に示すヒータ89には、図1の後乾燥部42に用いられるヒータ、ヘッド50の温度調節ヒータなどのヒータが含まれる。
【0112】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0113】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0114】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色のヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0115】
ポンプドライバ85は、システムコントローラ72から送られる制御信号に基づいて、図5に示す吸引ポンプ67や、ポンプ104を制御する制御ブロックである。ポンプドライバ85は、吸引ポンプ67、104等のオンオフ、回転数、駆動方向などの制御を行う。
【0116】
プログラム格納部90には、インクジェット記録装置10の制御プログラムが格納され、システムコントローラ72はプログラム格納部90に格納されている種々の制御プログラムを適宜読み出し、制御プログラムを実行する。
【0117】
位置検出部130は、ワイピング処理部13のヘッド50の対する相対位置を検出し、ワイピング処理部13の位置情報をシステムコントローラ72へ送出する。システムコントローラ72では、ワイピング処理部13の位置情報に基づいてモータドライバ76を介してワイピング処理部移動機構110のモータや、ブレード66の上下機構のモータを制御するとともに、ポンプドライバ85を介してポンプ104を制御する。
【0118】
ワイピング処理部13の位置を検出する方法には、位置検出センサ(例えば、リニアエンコーダやリニアスケール)など、直接的にワイピング処理部13の位置を検出する方法を用いてもよいし、ワイピング処理部移動機構110のモータに取り付けられたエンコーダの出力パルス信号によってモータの回動量を検出し、このモータの回動量をワイピング処理部13の移動量に換算してワイピング処理部13の位置を間接的に求める方法を用いてもよい。
【0119】
ここで上述したワイピング制御をまとめると、ワイピング処理実行時にはヘッド50(印字部12)を退避位置に移動させるとともにワイピング処理部13及びワイピング処理部移動機構110を所定のデフォルト位置に移動させる。この状態でヘッド50とワイピング処理部13(ブレード66)との相対位置が調整される。ヘッド50とワイピング処理部13との相対位置が調整されると、ブレード66をヘッド50のノズル形成面51Aに当接させ、ブレード66とノズル形成面51Aとの当接位置近傍に脱気液体供給ノズル100から脱気液体を供給しながらワイピング処理部13をヘッド50の短手方向の一方向に移動させる。
【0120】
ワイピング処理部13(ブレード66)がヘッド50の短手方向のワイピング開始側の端部からワイピング終了側の端部に移動すると、ポンプ104の駆動方向を逆方向に切り換え、脱気液体供給ノズル100を介してヘッド50のノズル形成面51Aに溜まった脱気液体を回収する。脱気液体の回収が終了すると、ブレード66を下方向に移動させてブレード66をノズル形成面51Aから離し、ワイピング処理部13をワイピング実行時とは逆方向に(即ち、ワイピング終了側端部からワイピング開始側端部へ)移動させ、更に、ワイピング処理部13をデフォルト位置へ移動させる。
【0121】
図8には、図5に示すインク及び脱気液体供給系の他の態様を示す。図8中、図5と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0122】
図8に示す態様では、脱気液体に画像形成用のインクが用いられ、図5に示すインク供給タンク60と脱気液体供給タンク106が兼用される。また、インク供給タンク60とヘッド50との間にポンプ120及びサブタンク122が設けられている。脱気液体にインクを用いる態様では、図8に示すように、脱気液体供給タンク106を省略可能である。
【0123】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10は、ワイピング処理部13によってヘッド50のノズル形成面51Aにワイピング処理を施す際に、ブレード66がノズル形成面51Aと接触する部分及びその近傍に脱気液体供給ノズル100から脱気液体が供給されるので、ワイピング処理実行時にノズル51の内部に気泡が巻き込まれることを抑制し、ノズル51に気泡が巻き込まれた際にも該気泡を脱気液体に溶解させて該気泡を消滅させることが可能になる。
【0124】
なお、1つのヘッド50に対して1つのワイピング処理部13を備えてもよいし、複数のヘッドに対してワイピング処理部13を共通化し、複数のヘッドに対して1つまたはヘッドの数よりも少ない数のワイピング処理部13を備えてもよい。本例に示すインクジェット記録装置10では、4つのヘッド12K,12C,12M,12Yに対して1〜4のワイピング処理部13を備える態様が可能である。
【0125】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は第2実施形態のワイピング処理を説明する図であり、図10は第2実施形態の供給系の構成を示す概略図である。第2実施形態に係るインクジェット記録装置10は、ワイピング処理時に供給される脱気液体(使用済みの脱気液体)を回収するとともに、回収された使用済み脱気液体に脱気装置を用いて脱気処理が施され、使用済みの脱気液体を再利用するように構成されている。
【0126】
図9に示すように、インクジェット記録装置10はノズル形成面51Aに供給された脱気液体を回収する回収部材140と、該回収部材140に集められた使用済みの脱気液体を脱気液体供給タンク106(図9には不図示)に戻すための循環路142と、を備え、回収部材140に集められた使用済みの脱気液体は循環路142を介して脱気液体供給タンクに戻されるように構成されている。
【0127】
図10に示すように、脱気液体供給タンク106から脱気液体供給ノズル100への脱気液体が通る流路には、脱気液体に混入している異物等を除去するフィルタ150と、フィルタ150を通過した脱気液体に脱気処理を施す脱気装置152と、脱気装置152によって脱気処理された脱気液体を脱気液体供給ノズル100におくるポンプ154と、を備えている。
【0128】
脱気装置152(或いは、脱気装置152の入路側)には、溶存酸素計(不図示)が設けられ、該溶存酸素計によって計測された脱気液体の溶存酸素量が所定の値以上の場合には脱気装置を動作させて脱気液体に脱気処理が施され、該溶存酸素量が所定の値未満の場合には、脱気液体には脱気処理が施されないように脱気装置152が制御される。なお、脱気装置152から脱気液体供給ノズル100までの流路は所定の遮気性を有する部材が用いられる。
【0129】
また、脱気液体供給タンク106内の脱気液体量を検出する脱気液体量検出部(不図示)を備え、脱気液体供給タンク106内の脱気液体量が所定量以下となると、ポンプ160を動作させて、補充タンク162に収容されている脱気液体が脱気液体供給タンク106に補充される。
【0130】
脱気液体供給タンク106内の脱気液体量の検出には、脱気液体供給タンクの内部の水位を検出する水位センサを用いることが、検出速度が速く、脱気液体供給タンク106内の脱気液体量の検出に係る構成を安価にすることができ好ましい。しかしながら、水位センサが取り付けられない場合や脱気液体供給タンク106が小容積で水位変動が大きい場合には、脱気液体供給タンク106の重量を計測し、重量を脱気液体量に換算してもよい。
【0131】
使用済みの脱気液体を回収し脱気処理を施した後に再利用する態様によれば、脱気液体の消費量低減化に寄与するとともに、脱気液体供給ノズル100から供給される脱気液体の溶存気体量を所定値以下に保つことができる。
【0132】
図11には、ヘッド50の供給されるインクの脱気装置と、脱気液体供給ノズル100に送られる脱気液体の脱気装置を兼用する態様を示す。即ち、脱気装置152は、インク供給タンク60からサブタンク122を介してヘッド50に供給されるインクに脱気処理を施すとともに、脱気液体供給タンク106から脱気液体供給ノズル100へ送られる脱気液体に脱気処理を施すように構成されている。なお、図11に示すサブタンク122は密閉型のサブタンクが適用される。
【0133】
図11に示す態様によれば、ヘッド50の供給されるインクの脱気装置と脱気液体供給ノズル100に送られる脱気液体の脱気装置を兼用することで装置内の省スペース化(装置の小型化)が実現され、装置のコストダウンにも寄与する。
【0134】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図12は第3実施形態のワイピング処理を説明する図である。本実施形態では、ワイピング処理実行時にメニスカス面に微振動(図12中、破線の両側矢印線で図示)が付与される。
【0135】
即ち、ブレード66(ワイピング処理部13)の位置を検出し、脱気液体112がメニスカス(ノズル)に接触している状態のノズル(脱気液体が存在する領域内のノズル)に対して、該ノズル51に対応する圧電アクチュエータ58を動作させて、該ノズル51に形成されるメニスカスに微振動が付与される。
【0136】
メニスカスに微振動を付与する場合には、吐出用の駆動信号よりも電圧(振幅)の小さな駆動信号(メニスカス微振動用の駆動信号)を用いて圧電アクチュエータ58を動作させると、圧電アクチュエータ58は圧力室52内のインクに対してノズル51からインクが吐出しない程度の圧力(該圧力の方向を破線の両側矢印線で図示)が付与される。また、吐出用の駆動信号よりも周波数が高い(数倍〜数十倍程度の)駆動信号を付与してもよい。
【0137】
このように、ワイピング実行時においてメニスカスに微振動を付与する態様によれば、脱気液体とノズル51内部のインクを攪拌し、ノズル近傍の異物やインクの固形物を除去するとともに、脱気液体をノズル51の内部まで浸入させることで、インクの溶存気体を脱気液体に溶け込ませる効率の向上が見込まれる。
【0138】
なお、メニスカス微振動の振幅を大きくするとインクと脱気液体との攪拌効果が大きくなるので、メニスカス微振動の振幅はノズル51からインクが吐出しない範囲で最大の振幅となることが好ましい。
【0139】
また、メニスカスに微振動を付与する態様では、ノズル51内のインク微振動用の圧力を付与された際に、該インクが脱気液体を突き抜けないように脱気液体のたまり量(供給量)が決められる。また、メニスカスが空気に触れている状態で振動を与えるとノズル51内部に気泡を巻き込む可能性が高くなるので、メニスカスに微振動を与えるノズル51を全体にわたって脱気液体が覆うように脱気液体の液たまりの直径はノズル51の直径を超えるように供給される脱気液体の量が決められる。
【0140】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態では、吐出異常が発生しているノズルを検出する手段を備え、吐出異常が発生しているノズルに対して選択的にワイピング処理が実行される。本発明のワイピング処理では、ワイピング処理実行後の吸引が不要になるので、部分的な回復処理が可能である。
【0141】
吐出異常が発生しているノズルを検出する方法には、テスト画像を印刷して該テスト画像を図1に示す印字検出部24を用いて読み取り、その読取結果から吐出異常ノズルを特定してもよいし、圧電アクチュエータ58の圧力異常から吐出異常ノズルを特定してもよい。
【0142】
図13は、第4実施形態に係るワイピング処理の制御の流れを示すフローチャートである。ワイピング処理が開始されると(ステップS10)、テスト印字が実行され(ステップS12)、図1に示す印字検出部24によって該テスト画像が読み取られる(ステップS14)。
【0143】
印字検出部24の読取結果から画像異常の有無を判断し(ステップS16)、画像異常ありと判断されると(YES判定)、テスト画像の異常発生位置から吐出異常ノズルが特定される(ステップS18)。ステップS16における画像異常の判断は、ドット形成の有無、ドットの位置、ドットのサイズから判断される。
【0144】
ステップS18において吐出異常ノズルが特定されると、ブレード66(ワイピング処理部13)を吐出異常発生ノズルの位置に移動させて(ステップS20)、当該吐出異常ノズルに対してワイピング処理が実行される(ステップS22)。
【0145】
ステップS22におけるワイピング処理が終了すると、脱気液体が回収され(ステップS24)、ブレード66をデフォルト位置に移動させ(ステップS26)、ワイピング処理は終了される(ステップS28)。ステップS16において画像異常(吐出異常ノズル)が発見されない場合には(NO判定)、ステップS28に進み、ワイピング処理は終了される。
【0146】
吐出異常ノズルが複数発見された場合には、吐出異常ノズルそれぞれに対して上述したワイピング処理が実行され、すべての吐出異常ノズルに対してワイピング処理が施されるようにワイピング処理部13が制御される。なお、ワイピング処理部13は、一度のワイピング処理で複数のノズルに対応する領域に対してワイピング処理を施すことが可能であり、複数の吐出異常ノズルが一度のワイピング処理で対応可能な領域内に存在する場合には、複数の吐出異常ノズルに対して一度のワイピング処理が施される。
【0147】
このように吐出異常ノズルを特定し、吐出異常ノズルに対してワイピング処理を実行する態様によれば、回復動作の時間短縮に寄与するとともに、脱気液体の消費量低減に寄与する。また、回復動作時間の短縮により非ワイピングノズル内のインクの増粘が抑制される。
【0148】
図13のステップS14では、テスト画像の読み取りに代わり圧力室52の圧力検出を行い、ステップS16において圧力異常の有無を判定し、ステップS18において吐出異常ノズルを特定してもよい。圧力室52の圧力異常に基づいて吐出異常ノズルを特定する場合、ステップS12ではテスト画像を印字する必要はなく、実技画像形成時に各圧力室52の圧力異常を検出してもよい。
【0149】
〔ブレードの変形例1〕
次に、ワイピング処理部13が有するブレードの変形例について詳説する。図14(a)に示すブレード166は、ノズル形成面51A(図14(a)には不図示)との接触面(以下、接触面という。)166Aに脱気液体供給ノズル200が形成されている。また、図14(a)に示すブレード166は、接触面166Aとノズル形成面51Aとの接触面積が大きくなるように斜めにカットされた形状を有している。
【0150】
図14(a)に示すように、ブレード166の接触面166Aに脱気液体供給ノズル200を備える態様によれば、脱気液体供給ノズル200から脱気液体を噴出させずに、接触面166Aとノズル形成面51Aとの接触部分の近傍に脱気液体の液たまり(図6の符号112)が形成され、メニスカス近傍の脱気状態を維持することができる。
【0151】
また、ブレード166’と脱気液体供給ノズル200とを一体に構成することで、狭い領域でもブレード166’及び脱気液体供給ノズル200を設置することが可能になるとともに、ワイピング方向にブレード166’を複数個設置することができる。
【0152】
図14(a)には、複数の脱気液体供給ノズル200をワイピング方向(図14(a)に矢印線で図示)と略直交する方向に沿って一列に並べた態様を示したが、脱気液体供給ノズル200を2次元状に並べてもよいし、複数の脱気液体供給ノズル200を不規則に並べてもよい。複数の脱気液体供給ノズル200を2次元状もしくは不規則に並べることにより、ノズル形成面51Aに凹凸形状があった場合でも凸部を避けて脱気液体供給ノズル200を配置することによりブレード166の幅方向に脱気液体を均一に供給することができる。
【0153】
また、ノズル形成面51Aに形成されるインクを吐出するノズル51の配列が不均一であったとしても、このノズル51が密に配置されている範囲に対して脱気液体供給ノズル200をより多く配置することで、適切なワイピング処理を実施することができる。
【0154】
図14(b),(c)は、脱気液体供給ノズル200と連通する脱気液体流路202の構成例を示す図(図14(a)のXIVb−XIVb線に沿う断面図)である。図14(b)に示すように、脱気液体流路202をブレード166の内部に形成すると、ブレード166が弾性体などの変形し易くワイピング時に脱気液体流路200が押し潰されてしまう材質であっても、ブレード166内の脱気液体流路200がわずかであるために、安定して脱気液体を供給可能である。また、図14(c)に示すように、脱気液体流路202が形成された流路部材204をブレード166に接合し、脱気液体供給ノズル200と脱気液体流路202とを連通させてもよい。脱気液体流路202には所定の遮気性を有する部材(例えば、金属)が用いられる。
【0155】
〔ブレードの変形例2〕
次に、ワイピング処理部13が有するブレードの他の変形例について詳説する。図15に示すブレード166’は、ワイピング方向(図15に矢印線で図示)と略直交方向の両端部が液体を吸収する性能を有する多孔質部材208で形成されている。
【0156】
図15に示すブレード166’によれば、多孔質部材208に脱気液体が吸収されることでブレード166’とノズル形成面51A(図15には不図示)との接触部分の近傍に形成される液たまりの液量が規制され、該液たまりの液量が多くなることで起こる拭き残しが抑制される。また、ワイピング処理終了後に回収する脱気液体量が低減されるので、使用後の脱気液体の回収付加及びその処理負荷が低減される。
【0157】
〔ブレードの変形例3〕
図16には、ワイピング処理部13が有するブレードの更に他の態様を示す。図16に示すブレード166”は、2枚の硬質ゴム210(先に説明したブレード66、166、166’と同一部材)の間に脱気液体212が充填される隙間212が設けられている。図16に示すワイピング処理部13”は、ブレード166”を保持するとともに、隙間212に充填される脱気液体が貯蔵される脱気液体貯蔵容器214を備えている。
【0158】
即ち、脱気液体貯蔵容器214は、ブレード166”を保持するブレード保持部材216と、脱気液体が貯蔵され、ブレード166”の下側の略1/2の部分が脱気液体に浸漬させる脱気液体プール218と、ブレード166”が配置される位置に設けられた開口部220と、を有して構成される。
【0159】
2枚のブレード(硬質ゴム)210は、0.1mm〜0.2mmの隙間212を有して略平行に設置され、脱気液体は毛細管力によって隙間212に充填され、隙間212全体に広がっていく。
【0160】
また、脱気液体貯蔵容器214には、一定量の脱気液体が貯留されるように、供給路222及び排出路224が設けられている。
【0161】
1枚のブレードによるワイピングでは、ブレードの幅方向(図16に矢印線で図示するワイピング方向と略直交方向)における中央部では液たまりの液量が多くなり、端部では液たまりの液量が少なくなるというように、液たまりの液量が均一にならない(脱気液体供給ノズル100の近傍では液量が多くなり、脱気液体供給ノズル100から離れるほど液量が少なくなる)現象が起こってしまう。
【0162】
図16に示すブレード166”を用いたワイピング処理では、2枚の硬質ゴム210の隙間212に脱気液体の液たまりが形成されるので、毛管現象によりブレードの幅方向にわたって均一な液たまりを形成することができる。
【0163】
〔応用例〕
次に、本発明の応用例について説明する。図17(a)は、本応用例に係るワイピング処理部13及びワイピング処理部移動機構110の概略構成図である。なお、図17(a)に示すワイピング処理部13は、脱気液体供給ノズル等ブレード66以外の部材の図示が省略されている。
【0164】
本応用例のブレード66は、その幅方向がヘッド50の短手方向と角度αをなす斜め方向を向いて配置されている。また、ブレード66は1回の短手方向への移動でヘッド50のノズル形成面51A(図17(a)では不図示)の一部に対してワイピング処理可能な長さを有し、また、1回の長手方向の移動でヘッド50のノズル51が形成される全領域(ノズル領域、図18(b)に図示)をワイピング処理可能な長さを有している。
【0165】
ワイピング処理部移動機構110は、ブレード66を支持しながらブレード66をヘッド50の短手方向に沿って移動させる短手方向移動機構222と、短手方向移動機構222を支持しながらブレード66(及び短手方向移動機構222)をヘッド50の長手方向に沿って移動させる長手方向移動機構230と、ブレード66の位置(図17(a)では、ヘッド50の長手方向の位置)を検出するリニアエンコーダ239と、を有して構成される。また、ブレード66のヘッド50の短手方向の位置を検出する位置検出手段(ロータリーエンコーダ)225を備えている。この位置検出手段には、リニアエンコーダや位置検出センサなどを適用してもよい。
【0166】
なお、シリアル方式を適用する場合、図17(a)の長手方向移動機構230は、ヘッドの主走査方向走査機構と兼用可能(長手方向移動機構230を省略可能)である。
【0167】
短手方向移動機構222は、駆動源たるモータ224と、モータ224の回動に応じてブレード66をヘッド50の短手方向に移動させるボールねじ(直動機構)226と、を有している。また、長手方向移動機構230は、短手方向移動機構222を支持するガイド232、234と、モータ236の回動に応じてブレード66(短手方向移動機構222)をヘッド50の長手方向に移動させるベルト搬送機構238と、を有して構成される。
【0168】
図17(a)に示すように、ヘッド50の短手方向及び長手方向と直交しない斜め方向のブレード66によれば、ヘッド50の短手方向と略平行方向及び長手方向と略平行方向の何れにもワイピング処理を行うことが可能である。
【0169】
図17(b)は、ブレード66のワイピング領域を説明する図である。ヘッド50の短手方向に沿ってワイピングを実行する場合、ブレード66をヘッド50の短手方向に1回移動させたときのワイピング領域の長さ(ブレード66の有効長)は、ブレード66の幅L、ブレード66とヘッド50の短手方向とのなす角度αを用いてL×sinαと表すことができる。このブレード66の有効長をヘッド50の短手方向の長さよりも短くすることで、ヘッド50のノズル形成面51Aに対してワイピング処理を施す領域を細かく設定することができる。
【0170】
図18(a),(b)に示すように、本応用例に係るワイピング処理制御では、ワイピング処理対象領域240のヘッド50の短手方向の長さxがブレード66の有効長未満の場合には、ブレード66をヘッド50の短手方向に沿って移動させるワイピング処理(短手方向ワイピング)が実行され(図18(a)参照)、ワイピング処理対象領域のヘッド50の短手方向の長さxがブレード66の有効長以上の場合には、ブレード66をヘッド50の長手方向に沿って移動させるワイピング処理(長手方向ワイピング)が実行される(図18(b)参照)。
【0171】
即ち、図18(a)に示すように、吐出異常ノズルが発見された領域(即ち、ワイピング対象領域)240のヘッド50の短手方向のxとブレード66の有効長との関係がx<L×sinαとなる場合には、ブレード66をヘッド50の退避位置(図18(a)に破線で図示)からヘッド50の長手方向と略平行方向に移動させ、ワイピング対象領域240に対応するワイピング開始位置で停止させる。その後、ブレード66をヘッド50のノズル形成面に当接させながらヘッド50の短手方向と略平行方向に移動させると、ヘッド50のノズル形成面にワイピング処理が施される。
【0172】
一方、図18(b)に示すように、吐出異常ノズルが発見された領域(ワイピング対象領域)240のヘッド50の短手方向のxとブレード66の有効長との関係がx≧L×sinαとなる場合には、ブレード66を退避位置(図18(b)に破線で図示)からヘッド50の短手方向と略平行方向に移動させ、ワイピング対象領域240に対応するワイピング開始位置で停止させる。その後、ブレード66をヘッド50のノズル形成面に当接させながらヘッド50の長手方向と略平行方向に1回移動させると、ヘッド50のノズル形成面のノズル範囲にワイピング処理が施される。
【0173】
ブレード66とヘッド50の短手方向とのなす角度αを大きくすると、1回の短手方向ワイピングの処理範囲(有効処理幅)が大きくなり、角度αを小さくすると1回の長手方向ワイピングの処理範囲が大きくなる。α=45°とすると、1回の短手方向ワイピングの処理範囲と1回の長手方向ワイピングの処理範囲が略同一になる。ブレード66とヘッド50の短手方向とのなす角度αが、30°≦α≦60°となるようにブレード66を配置する態様が好ましい。
【0174】
図19は、ワイピング処理方向(ワイピング処理時におけるブレード66の移動方向)を選択的に切り換えるワイピング処理の制御の流れを示すフローチャートである。なお、図19中図13と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0175】
図19に示すワイピング処理制御では、吐出異常ノズルが特定されると(ステップS18)、短手方向ワイピング処理が可能であるか否かが判断される(ステップS100)。
【0176】
即ち、ステップS100では、吐出異常ノズルが発見された領域のヘッド50の短手方向の長さとブレード66の有効長とを比較して、(吐出異常ノズルが発見された領域のヘッド50の短手方向の長さ)<(ブレード66の有効長)の場合には(YES判定)、図18(a)に示す短手方向ワイピングが可能と判断され、短手方向ワイピング開始位置(図18(a)参照)にブレード66を移動させて(図19のステップS102)、短手方向ワイピングが実行される(ステップS104)。
【0177】
ステップS104において短手方向ワイピングが終了すると(即ち、吐出異常ノズルの発生領域をブレード66が通過すると)、ブレード66を停止させて、ヘッド50のノズル形成面に残った脱気液体が回収される(ステップS24)。その後、ブレード66を退避位置(図18(a)参照)に移動させて(図19のステップS26)、当該ワイピング処理が終了される(ステップS28)。
【0178】
一方、ステップS100において、短手方向ワイピングが実行できないと判断されると(NO判定)、ブレード66を長手方向ワイピング開始位置(図18(b)参照)に移動させて(図19のステップS106)、図18(b)に示す長手方向ワイピングが実行される(図19のステップS108)。
【0179】
ステップS108において長手方向ワイピングが終了すると、ヘッド50のノズル形成面に残った脱気液体が回収される(ステップS24)。その後、ブレード66を退避位置(図18(b)参照)に移動させて(図19のステップS26)、当該ワイピング処理が終了される(ステップS28)。
【0180】
上述したワイピング制御によれば、吐出異常ノズルが存在する範囲に応じて最短時間でワイピング処理が可能になり、印字処理速度の向上が見込まれる。
【0181】
上述した実施形態では、ノズル51からインク液滴を吐出させる吐出力付与手段として圧電アクチュエータ58用いる態様を示したが、本発明は圧力室52内のインクを加熱してバブルを発生させることで圧力室52内のインクを吐出させるサーマル方式にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図2】図1に示したインクジェット記録装置の印字周辺の要部平面図
【図3】印字ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】図3(a),(b) 中のIV−IV線に沿う断面図
【図5】図1に示したインクジェット記録装置のインク供給部及び脱気液体供給部の構成を示す概要図
【図6】本発明に係るワイピング処理を説明する概念図
【図7】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図8】図7に示す脱気液体供給部の変形例を示す概要図
【図9】本発明の第2実施形態に係るワイピング処理を説明する概念図
【図10】第2実施形態に係る脱気液体供給部の構成を示す概要図
【図11】図10に示す脱気液体供給部の変形例を示す概要図
【図12】本発明の第2実施形態に係るワイピング処理を説明する概念図
【図13】本発明の第4実施形態に係るワイピング制御の流れを示すフローチャート
【図14】図5に示すブレードの変形例を示す図
【図15】図5に示すブレードの変形例の他の変形例を示す図
【図16】図5に示すブレード変形例の更に他の変形例を示す図
【図17】本発明の応用例に係るブレード移動機構の概略構成を示す概念図
【図18】ワイピング方向切換制御を説明する概念図
【図19】図18に示すワイピング方向切換制御の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0183】
10…インクジェット記録装置、12…印字部、13,13”…ワイピング処理部、50…ヘッド、51…ノズル、51A…ノズル形成面、58…圧電アクチュエータ、60…インク供給タンク、66,166,166’,166”…ブレード、67,104…ポンプ、72…システムコントローラ、76…モータドライバ、85…ポンプドライバ、100,200…脱気液体供給ノズル、106…脱気液体供給タンク、140…回収部材、152…脱気装置、208…多孔質部材、212…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体を吐出するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドのノズル形成面にワイピング処理を施すワイピング処理手段と、
前記液体吐出ヘッドと前記ワイピング処理手段とを相対的に移動させる移動手段と、
を備え、
前記ワイピング処理手段は、前記液体吐出ヘッドのノズル形成面を払拭する払拭部材と、
ワイピング処理時に、前記払拭部材の進行方向側の前記払拭部材と前記液体吐出ヘッドのノズル形成面との接触部分近傍に所定の脱気処理が施された第2の液体を供給する第2の液体供給手段と、
を具備することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドのノズル形成面に供給された前記第2の液体を回収する回収手段と、
前記回収手段によって回収された前記第2の液体に脱気処理を施す脱気手段と、
前記脱気手段によって脱気処理された前記第2の液体を前記第2の液体供給手段に送る送液手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記ノズルと連通し、前記ノズルから吐出される前記第1の液体を収容する圧力室と、
前記圧力室内の前記第1の液体を加圧する加圧手段と、
前記加圧手段に駆動信号を与える駆動信号付与手段と、
ワイピング処理時において、前記ノズルから前記第1の液体を吐出させないように前記圧力室内の前記第1の液体を加圧する駆動信号を前記加圧手段に付与するように前記駆動信号付与手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記払拭部材は、前記液体吐出ヘッドのノズル形成面に第2の液体を供給する構造を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記払拭部材は、前記液体吐出ヘッドのノズル形成面に供給される前記第2の液体の量を規制する規制部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ワイピング処理手段の位置を検出する位置検出手段と、
吐出異常ノズルを検出する吐出異常ノズル検出手段と、
前記吐出異常ノズル検出手段によって検出された吐出異常ノズルに対して前記ワイピング処理手段によるワイピング処理を施すように前記ワイピング処理手段及び前記移動手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドは、前記液体吐出ヘッドから第1の液体の吐出を受ける被吐出媒体の幅に対応したライン型ヘッドであり、
前記払拭部材は、ワイピング処理時において前記液体吐出ヘッドの短手方向と角度α(0度<α<90度)をなす斜め方向に配置され、
前記移動手段は、前記ワイピング処理手段を前記液体吐出ヘッドの短手方向へ移動させるか、或いは前記ワイピング処理手段を前記液体吐出ヘッドの長手方向に移動させるかを切換可能に構成され、
前記制御手段は、前記移動手段による前記ワイピング処理手段の移動方向を選択的に切り換えることを特徴とする請求項6記載の液体吐出装置。
【請求項8】
第1の液体を吐出するノズルが形成されたノズル形成面を有する液体吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、
前記液体吐出ヘッドのノズル形成面を払拭する払拭部材を有するワイピング処理手段によるワイピング処理時において、前記払拭部材と前記液体吐出ヘッドのノズル形成面との接触部分近傍に所定の脱気処理が施された第2の液体を供給しながら、前記ワイピング処理手段と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させることを特徴とする液体吐出ヘッドのメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−261088(P2007−261088A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89288(P2006−89288)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】