説明

液体吐出装置

【課題】使用する開閉弁の数を削減した上で、シリンジに対して加圧、吸引、大気開放の3つの状態を実現できるようにする。
【解決手段】液体を充填するシリンジ10と、該シリンジに加圧空気を供給し、充填されている液体を先端部から吐出させる空気圧源12とを備えている液体吐出装置において、前記シリンジには、負圧発生機能を有するエジェクタ14の吸引ポート14Cが、前記空気圧源には、該エジェクタの給気ポート14Aが、それぞれ連結され、前記空気圧源と前記エジェクタの給気ポートとの間には給気開閉弁18が、前記エジェクタの排気ポート14Bの出側には排気開閉弁20が、それぞれ配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、特に電子基板に接着剤を塗布する際に適応した好適な液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子基板に電子部品を搭載する表面実装装置においては、基板の両面に部品を搭載する両面実装が一般的に行われている。
【0003】
この両面実装の工程においては、基板を裏返した際に電子部品が落下しないようにするために、搭載した電子部品を接着剤で固定することが一般的に行われている。そこで、基板の所定位置に接着剤を塗布するために、従来より接着剤塗布装置(液体吐出装置)が用いられている。
【0004】
このような接着剤塗布装置としては、例えば特許文献1には加圧、吸引、大気開放という3つの状態を作り出すために、加圧源、負圧源、大気開放ポートを備え、これらを個別に制御する3つのON/OFF回路を設けてそれぞれを切替えることにより、接着剤が充填されたシリンジに対して、正圧を供給して吐出を行い、負圧を供給して吐出時の残圧を急速除去し、その後大気開放するという一連の動作により塗布を実現したものが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−192371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示されている接着剤塗布装置には、充填されている接着剤を吐出するシリンジへの正圧供給(加圧)、負圧供給(吸引)及び大気開放という3状態を作り出すために、正圧源、負圧源、大気開放ポートに対して開閉弁を個別に設けていることから、合計3つの開閉弁が必要となるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決すべくなされたもので、使用する開閉弁の数を削減した上で、シリンジに対して加圧、吸引、大気開放の3つの状態を確実に実現することができる液体吐出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体を充填するシリンジと、該シリンジに加圧空気を供給し、充填されている液体を先端部から吐出させる空気圧源とを備えている液体吐出装置において、前記シリンジには、負圧発生機能を有するエジェクタの吸引ポートが、前記空気圧源には、該エジェクタの給気ポートが、それぞれ連結され、前記空気圧源と前記エジェクタの給気ポートとの間には給気開閉弁が、前記エジェクタの排気ポートの出側には排気開閉弁が、それぞれ配設されていることにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本発明は、又、給気開閉弁を開き、排気開閉弁を閉じて液体の吐出を行うステップと、給気開閉弁を開いたまま、排気開閉弁を開いてシリンジ内の残圧を吸引するステップと、排気開閉弁を開いたまま、給気開閉弁を閉じてシリンジ内を大気開放するステップとを含む吐出動作を制御する制御手段を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加圧源である空気圧源とシリンジとの間に、給気ポートから供給した高圧空気を排気ポートから排出させると、吸引ポートに負圧を発生させることができる負圧発生機能を有するエジェクタを介設すると共に、給気ポートの入側に給気開閉弁を、排気ポートの出側に排気開閉弁をそれぞれ配設するようにしたので、これら2つの開閉弁による開閉動作を適切に切替えることにより、シリンジ内に加圧、吸引、大気開放という3つの状態を確実に作り出すことができる。従って、従来はこれを実現するために3つの開閉弁が必要であったものを、2つに削減することができることから、既存の方式に比べて電磁弁のコストを2/3に抑えることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明に係る一実施形態の接着剤塗布装置の要部を構成する空気圧回路の概要を示す。
【0013】
本実施形態の接着剤塗布装置(液体吐出装置)は、Z軸駆動機構により上下動されるヘッド(図示せず)に装着されていると共に、接着剤(液体)が充填されたシリンジ10と、該シリンジ10に配管を通して加圧空気を供給し、充填されている接着剤を先端部から吐出させる、コンプレッサ等からなる空気圧源12を備えている。
【0014】
この接着剤塗布装置では、シリンジ10と空気圧源12の間には負圧発生機能を有するエジェクタ(エジェクタ式真空発生機)14が介設されている。このエジェクタ14は、その給気ポート14Aに供給される加圧空気が排気ポート14Bから排出されると、吸引ポート14Cに負圧を発生させることができる。
【0015】
本実施形態では、前記シリンジ10には、このエジェクタ14の吸引ポート14Cが連結され、前記空気圧源12には、空気圧を調整する調圧装置16を介して該エジェクタ14の給気ポート14Aが連結されている。
【0016】
前記空気圧源12と前記エジェクタ14の給気ポート14Aとの間には、調圧装置16とは別に給気開閉弁18が配設され、また、前記エジェクタ14の排気ポート14Bの出側には排気開閉弁20が配設されていると共に、該排気開閉弁20はサイレンサ22を介して大気側に連通されている。なお、前記シリンジ10とエジェクタ14の吸引ポート14Cとを連結する配管には、該配管内の圧力を検出する圧力計24が取りつけられている。
【0017】
また、本実施形態では、前記給気開閉弁18及び排気開閉弁20はいずれも電磁弁から成り、制御部(制御手段)26により各電磁弁のソレノイドに対する開閉動作が制御されるようになっている。
【0018】
具体的には、この制御部26により、給気開閉弁18を開き、排気開閉弁20を閉じることにより、給気ポート14Aに供給されている正圧を吸引ポート14Cを介して前記シリンジ10へ導入し、接着剤の吐出を行うステップと、給気開閉弁18を開いたまま、排気開閉弁20を開くことにより、エジェクタ14の負圧発生機能を有効にすることにより、吸引ポート14Cから排気ポート14Bへ高圧空気を誘導し、シリンジ10内の残圧を吸引して急速除去するステップと、排気開閉弁20を開いたまま、給気開閉弁18を閉じることにより、シリンジ10内を大気開放するステップとを実行する制御を行う。
【0019】
以上の構成からなる本実施形態の作用を、図2、図3のフローチャートに従って、図4のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0020】
まず、ステップ0で開閉弁の初期化を行う。具体的には、図3のサブルーチンに示すように、加圧開閉弁(給気開閉弁)18を閉じ、排気開閉弁20を開放状態にし、シリンジ10内が大気開放された図1に示される初期状態にする。
【0021】
この開閉弁の初期化が終了した後、ステップ1〜ステップ13の塗布ループの動作を指定回数実行する。
【0022】
具体的には、シリンジ10が装着されているヘッド(図示せず)を塗布位置へ移動し(ステップ1)、タイミングt1で排気開閉弁20を閉じる(ステップ2)。
【0023】
次いで、タイミングt2でZ軸モータによりヘッドの下降を開始し(ステップ3)、予め設定してある指定時間待った後(ステップ4)、タイミングt3で加圧開閉弁18を開く(ステップ5)。
【0024】
その後、指定時間を待った後(ステップ6)、タイミングt4で排気開閉弁20を開にし(ステップ7)、更に指定時間待った後(ステップ8)、タイミングt5で加圧開閉弁を閉じ(ステップ9)、タイミングt6でヘッド下降が完了する(ステップ10)。その後、指定時間待った後(ステップ11)、タイミングt7でヘッド上昇を開始し(ステップ12)、ヘッド上昇が完了したら1回の塗布動作を終了する(ステップ13)。
【0025】
本実施形態では、図4にシリンジ内圧力の経時変化として示されるように、シリンジ内の残圧を吸引する過程においては、毎回大気圧丁度になった状態で吸引を停止するのは困難であることから、吸引動作の後はタイミングt5で大気開放を行うことにより、接着剤の漏れやシリンジ内への引き込みを防止するようにしている。
【0026】
以上詳述した本実施形態によれば、排気開閉弁20を閉じ、加圧開閉弁18を開放することにより、図5(A)にイメージを示すように、エジェクタ14の給気ポート14Aに供給された加圧エアをエジェクタ14の吸引ポート14Cを介してシリンジ10内に導入されるようにしたので、シリンジ10内部の接着剤をその先端部から吐出することができる。なお、図中10Aはフロート、Lは接着剤、Sは基板を表わしている。
【0027】
また、加圧開閉弁18を開いたまま排気開閉弁20を開くことにより、図5(B)にイメージを示すように、エジェクタ14が有する負圧発生機能を利用して、エジェクタ14の吸引ポート14Cから排気ポート14Bにシリンジ10内の加圧エアを吸引することができる。
【0028】
更に、シリンジ10内の残圧が無くなるタイミングで給気開閉弁18を閉じることにより、図5(C)にイメージを示すように、シリンジ10の内部を大気開放状態にすることができ、接着剤吐出以前の初期状態に復帰させることができるため、新たに吐出を行う準備が整うことから、次の吐出動作を開始することができる。
【0029】
従って、開閉弁を2つ使うだけで、シリンジ10内に正圧、負圧、大気開放の3つの状態を速やかに切替えることができるようになるため、効率の良い接着剤の塗布が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る一実施形態の接着剤塗布装置の要部を示す空気圧回路図
【図2】本実施形態の接着剤塗布装置による液体吐出動作の手順を示すフローチャート
【図3】液体吐出動作時に行う開閉弁の初期化ループを示すフローチャート
【図4】本実施形態の接着剤塗布装置による液体吐出動作の時間経過を示すタイムチャート
【図5(A)】本実施形態による液体吐出時のイメージを示す説明図
【図5(B)】本実施形態による残圧の急速除去時のイメージを示す説明図
【図5(C)】本実施形態による大気開放時のイメージを示す説明図
【符号の説明】
【0031】
10…シリンジ
12…空気圧源
14…エジェクタ
14A…給気ポート
14B…排気ポート
14C…吸引ポート
16…調圧装置
18…給気(加圧)開閉弁
20…排気開閉弁
22…サイレンサ
24…圧力計
26…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を充填するシリンジと、該シリンジに加圧空気を供給し、充填されている液体を先端部から吐出させる空気圧源とを備えている液体吐出装置において、
前記シリンジには、負圧発生機能を有するエジェクタの吸引ポートが、
前記空気圧源には、該エジェクタの給気ポートが、それぞれ連結され、
前記空気圧源と前記エジェクタの給気ポートとの間には給気開閉弁が、
前記エジェクタの排気ポートの出側には排気開閉弁が、それぞれ配設されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
給気開閉弁を開き、排気開閉弁を閉じて液体の吐出を行うステップと、給気開閉弁を開いたまま、排気開閉弁を開いてシリンジ内の残圧を吸引するステップと、排気開閉弁を開いたまま、給気開閉弁を閉じてシリンジ内を大気開放するステップとを含む吐出動作を制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(A)】
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【図5(B)】
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【図5(C)】
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【公開番号】特開2010−131493(P2010−131493A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308438(P2008−308438)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】