説明

液体吐出装置

【課題】液体の吐出対象を平面的に維持でき、液体吐出時の状態から待機時の状態に簡単に切り替えられ、切替え部の小型化が可能な液体吐出装置とする。
【解決手段】ラインヘッド20のインク吐出面22に対向して配置され、ノズル31から吐出されたインクを通過させることが可能な複数の貫通穴44が形成されるとともに、上面に記録用紙を載置して搬送可能な無端状の搬送ベルト40と、搬送ベルト40を周回可能に張架する一対の張架ローラ41,42と、搬送ベルト40の内面側に、インク吐出面22に対向するように配置され、上面が開口するとともに、貫通穴44を通過したインクを収容可能なキャップユニット50と、ノズル31と貫通穴44とが対応した位置にあるときに、搬送ベルト40を介してインク吐出面22とキャップユニット50とを相対的に当接させるための当接手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出するためのノズル列が形成された液体吐出ヘッドにおいて、液体吐出時の状態から待機時の状態に簡単に切り替えられ、切替え部の小型化が可能な液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに形成されたノズル列から液体を吐出し、記録用紙に画像等を形成している。そのため、液体吐出ヘッドの液体吐出面(ノズル列の形成部分)にホコリや紙粉等が付着した状態で画像等を形成すると、印画品質が低下してしまう。また、待機中に液体吐出面が乾燥してしまうと、ノズルの目詰まりが生じる。
【0003】
そこで、液体吐出ヘッドの性能を維持するため、液体吐出面をキャッピングすることにより、ホコリや紙粉等の付着、乾燥から液体吐出面を保護する技術が知られている。
具体的には、上面が開口した浅い箱状のキャップユニットを液体吐出面に対向するように配置する。そして、非印画時等の待機時に、キャップユニットを液体吐出面に当接させることによってノズル列の周囲を覆う。これにより、キャップユニット内が密閉された状態となり、ホコリや紙粉等から液体吐出面が保護されるとともに、乾燥しにくくなる。その結果、ノズルの目詰まりを防止できるようになる。
なお、印画時には、液体吐出面からキャップユニットを開放して液体を吐出することにより、記録用紙に印画を行う。
【0004】
このようなキャップユニットの開閉動作は、液体吐出ヘッド又はキャップユニットのいずれかを移動させることによって行う。そして、液体吐出装置がシリアルヘッド式のインクジェットプリンタの場合には、シリアルヘッドを移動させ、印画位置から退避させてキャッピングすることが多い。
一方、液体吐出ヘッドの長さが用紙幅に相当するラインヘッド式のインクジェットプリンタにおいては、ラインヘッドが大型かつ精巧である。また、ラインヘッドに対応するキャップユニットも大型になる。そのため、ラインヘッドの移動に必要な機構や占有スペースの規模が大きくなってしまう。その結果、シリアルヘッドと同様なキャッピング方法では、インクジェットプリンタが大型化したりコスト高になったりするだけでなく、所望の精度や性能を維持することがむずかしくなる。
【0005】
したがって、ラインヘッド式のインクジェットプリンタでは、ラインヘッドの移動量を減らしたり固定したりする代わりにキャップユニットを移動可能に構成することが多い。例えば、定位置に設定されたラインヘッドと、ラインヘッドの液体吐出面を開閉するキャップユニットと、キャップユニットを液体吐出面の閉塞位置と開放位置との間で開閉駆動するキャップユニット開閉機構とを備えるインクジェットプリンタが知られている。
【0006】
また、ラインヘッドの液体吐出面を密閉可能なキャップユニットを液体吐出面に対向するように配置し、液体吐出面とキャップユニットとの間に位置するプラテンには、キャップユニット又はラインヘッドの通過を可能とする開口部を形成する。そして、インクジェットプリンタの待機時は、プラテンの開口部を通して、キャップユニットによる液体吐出面の密閉を可能とする技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−94676号公報
【特許文献2】特開2004−291273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1の技術(キャップユニット開閉機構を備える技術)では、モータによって直線状に駆動されるラックで、キャップユニットを複雑な移動経路に沿ってスムーズに開閉駆動する。これにより、ラインヘッドを定位置に固定したまま、最小限の昇降量でキャップユニットを開閉駆動することができ、インクジェットプリンタを小型化(特に、薄型化)できる。
しかし、キャップユニットが閉塞位置と開放位置との間を移動するため、その移動量も無視できない大きさであり、未だ改善の余地がある。また、キャップユニットの開閉動作に時間を要するため、開閉動作中に液体吐出面の乾燥やノズルの目詰まりが進行することも考えられる。
【0009】
一方、特許文献2の技術(プラテンにキャップユニット等の通過を可能とする開口部を形成する技術)の場合には、キャップユニット又はラインヘッドの昇降のみによって液体吐出面を開閉できる。
しかし、キャップユニット等が通過できるような開口部をプラテンに形成するため、ノズル数や色構成の多いラインヘッドほど開口部面積が増大する。その結果、プラテンによって記録用紙(液体の吐出対象)を支持し、記録用紙の平面性を維持することが困難となり、別途、開口部を開閉するための遮蔽部材が必要となる。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、液体の吐出対象を平面的に維持でき、液体吐出時の状態から待機時の状態に簡単に切り替えられ、切替え部の小型化が可能な液体吐出装置とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の解決手段により、上述の課題を解決する。
請求項1に記載の発明は、液体を吐出するための複数のノズルと、前記ノズルを一方向に配列したノズル列が形成された液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に対向して配置され、前記ノズルから吐出された液体を通過させることが可能な複数の貫通穴が形成されるとともに、上面に液体の吐出対象を載置して搬送可能な無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトを周回可能に張架する一対の張架ローラと、前記搬送ベルトの内面側に、前記ノズル列の形成部分に対向するように配置され、上面が開口するとともに、前記貫通穴を通過した液体を収容可能なキャップユニットと、前記ノズルと前記貫通穴とが対応した位置にあるときに、前記搬送ベルトを介して前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分と前記キャップユニットとを相対的に当接させるための当接手段とを有する液体吐出装置である。
【0012】
(作用)
上記の請求項1に記載の発明は、液体吐出ヘッドのノズル列の形成部分に対向して無端状の搬送ベルトが配置されているので、液体吐出時は、搬送ベルトの上面に液体の吐出対象を載置して搬送することができる。また、搬送ベルトには、ノズルから吐出された液体を通過させることが可能な複数の貫通穴が形成されている。さらにまた、搬送ベルトの内面側には、ノズル列の形成部分に対向するように、上面が開口するとともに、貫通穴を通過した液体を収容可能なキャップユニットが配置されている。そして、ノズルと貫通穴とが対応した位置にあるときは、当接手段により、搬送ベルトを介して液体吐出ヘッドのノズル列の形成部分とキャップユニットとを当接させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搬送ベルトにより、液体の吐出対象の平面性が維持される。また、搬送ベルトの内面側にキャップユニットを配置することにより、省スペース化が図られる。さらにまた、液体吐出ヘッドのノズル列の形成部分とキャップユニットとを当接させる当接手段により、液体吐出時の状態から待機時の状態に簡単に切り替えられる。そして、待機時にノズルから吐出された液体は、搬送ベルトの貫通穴を通してキャップユニットに収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)である。
【図2】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す斜視図である。
【図3】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおけるラインヘッドを示す斜視図である。
【図4】図3に示すラインヘッド中の1つのヘッドモジュールを示す分解斜視図である。
【図5】図4に示すヘッドモジュールのインク吐出面側を示す斜視図、及びヘッドモジュール中の1つのヘッドチップを示す断面図である。
【図6】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおけるキャップユニットを示す斜視図である。
【図7】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおける搬送ベルトの上面側を示す斜視図である。
【図8】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタにおける搬送ベルトの下面側を示す斜視図である。
【図9】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)であり、印画開始時の状態を示す図である。
【図10】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)であり、印画終了時の状態を示す図である。
【図11】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)であり、位置合わせ時の状態を示す図である。
【図12】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)であり、位置合わせ後の状態を示す図である。
【図13】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)であり、キャッピング後の状態を示す図である。
【図14】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)であり、インクの空吐出中の状態を示す図である。
【図15】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)であり、インク吐出面の湿潤中の状態を示す図である。
【図16】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第2実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)であり、インクの空吐出中の状態を示す図である。
【図17】本発明の液体吐出装置の一実施形態(第3実施形態)としての、インクジェットプリンタの概要を示す正面図(一部断面図)であり、インクの空吐出中の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
ここで、本発明における液体吐出装置は、以下の実施の形態では、液体としてインクを吐出するインクジェットプリンタ10,60,70であるとする。また、インクジェットプリンタ10,60,70は、ラインヘッド式となっており、印画幅分(例えば、A4サイズ)のラインヘッド20,71(本発明における液体吐出ヘッドに相当する)を備えている。さらにまた、インクジェットプリンタ10,60,70は、フルカラー対応となっており、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色のインクを吐出する。そして、インクジェットプリンタ70は、各色のインクに加え、保湿液も吐出可能となっている。
なお、説明は、以下の順序で行う

1.第1の実施の形態(キャップユニット:内部を区画していない例)
2.第2の実施の形態(キャップユニット:内部をインク色ごとに区画した例)
3.第3の実施の形態(ラインヘッド:保湿液を吐出するノズルを設けた例)

【0016】
<1.第1の実施の形態>
[液体吐出装置の構成例]

図1は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す正面図(一部断面図)である。
また、図2は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す斜視図である。
図1に示すように、第1実施形態のインクジェットプリンタ10は、給紙部(図示せず)から搬送された記録用紙11(本発明における液体の吐出対象に相当する)に対して印画を行う。そのため、記録用紙11を給紙する給紙ローラ12と、印画が行われた記録用紙11をペーパトレイ(図示せず)に排紙する排紙ローラ13とを備えている。
【0017】
また、インクジェットプリンタ10は、記録用紙11に向けてインクを吐出し、画像を形成するためのラインヘッド20を備えている。そして、ラインヘッド20は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクをそれぞれ別々に吐出する4つのヘッドモジュール30によって構成されており、各色のインクは、ノズル31から吐出される。
なお、各ヘッドモジュール30は、ラインヘッド20のヘッドフレーム21に保持されている。
【0018】
さらにまた、インクジェットプリンタ10は、上面に記録用紙11を載置して搬送可能な無端状の搬送ベルト40を備えている。搬送ベルト40は、ゴム質の弾性体から形成されており、一対の張架ローラ41,42によって周回可能に張架されている。また、張架ローラ41には、プーリ43が連結されている。そして、モータ44(図2参照)の回転軸45とプーリ43との間には、伝達ベルト46が張架されている。そのため、モータ44を回転駆動すれば、回転軸45、伝達ベルト46、プーリ43、及び張架ローラ41を介して搬送ベルト40が周回するので、搬送ベルト40の上面に載置した記録用紙11を搬送できる。
【0019】
さらに、搬送ベルト40の内面側であって、張架ローラ41と張架ローラ42との間には、ラインヘッド20のインク吐出面22(各ヘッドモジュール30の下面)を保護するキャップユニット50が配置されている。このキャップユニット50は、インクジェットプリンタ10のメインフレーム(図示せず)に固定されており、上面が開口している。そして、開口内には、液体(インク、水等の保湿液)を吸収可能な連続気孔の多孔質体51が挿入されている。
【0020】
[液体吐出ヘッドの構成例]

図3は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10におけるラインヘッド20を示す斜視図である。
図3に示すように、ラインヘッド20は、ヘッドフレーム21と、ヘッドフレーム21に保持された複数のヘッドモジュール30とから構成されている。具体的には、各ヘッドモジュール30がヘッドフレーム21の長手方向(用紙幅方向)に挿入され、印画可能な最大サイズの記録用紙11(図1参照)の用紙幅(例えば、A4の横幅)の長さをカバーして1色を印画するようになっている。また、ヘッドモジュール30が平行に4ライン設けられ、各ラインがそれぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のインクを吐出することで、フルカラー画像を形成する。
【0021】
さらに、各ヘッドモジュール30は、それぞれ複数のヘッドチップ32を備えている。具体的には、各ヘッドモジュール30には、ヘッドチップ32が千鳥状に、4個×2列で合計8個配置されている。また、各ヘッドチップ32には、インクを吐出するための複数のノズル31が一方向に配列され、ノズル列31aとなっている。そのため、ノズル列31aは、各ヘッドモジュール30について2列に並列し、全体として記録用紙11(図1参照)の横幅に対応する長さとなっている。そして、このノズル列31aの形成部分(ノズル列31aが形成されている側の面)がインク吐出面22となっている。
なお、各ノズル31の相互の間隔は、千鳥状に隣接する部分を含めて、すべて等間隔である。
【0022】
図4は、図3に示すラインヘッド20中の1つのヘッドモジュール30を示す分解斜視図である。
図4に示すように、ヘッドモジュール30は、8個のヘッドチップ32と、各ヘッドチップ32が配置されるフレキシブルシート33と、インクタンク34とから構成されている。
【0023】
ここで、フレキシブルシート33は、ヘッドチップ32と制御基板(図示せず)とを電気的に接続するための可撓性を有する配線基板であり、厚さが約50μm程度のポリイミド製のものである。また、フレキシブルシート33には、千鳥状に開口部33aが形成されている。そして、各ヘッドチップ32は、すべてのノズル31(図3参照)が開口部33a内に位置するとともに、ヘッドチップ32が開口部33aを塞ぐようにして、フレキシブルシート33に接合される。
【0024】
また、フレキシブルシート33の上には、各ヘッドチップ32を覆うようにして、インクタンク34が接合される。このインクタンク34は、各ヘッドチップ32にインクを供給する共通流路を形成するものである。そして、インクのカートリッジ(図示せず)と接続され、共通流路内にインクを供給するためのインク供給口35と、共通流路内のインクを排出するためのインク排出口36とを有している。そのため、カートリッジ内のインクは、インク供給口35を通ってインクタンク34内の共通流路を流れ、各ヘッドチップ32に供給される。
なお、ヘッドモジュール30をヘッドフレーム21(図3参照)に挿入する際は、ヘッドモジュール30からはみ出た部分のフレキシブルシート33がインクタンク34の側面に沿って折り曲げられる。
【0025】
図5は、図4に示すヘッドモジュール30のインク吐出面22側を示す斜視図、及びヘッドモジュール30中の1つのヘッドチップ32を示す断面図である。
図5に示すように、ヘッドモジュール30は、フレキシブルシート33とインクタンク34との内部空間に8個のヘッドチップ32を千鳥状に配置したものである。そして、各ヘッドチップ32のすべてのノズル31は、フレキシブルシート33の開口部33a内に位置している。そのため、インク吐出面22は、開口部33aを除くフレキシブルシート33の表面と、開口部33a内のヘッドチップ32の表面とによって構成されることとなる。
【0026】
また、各ヘッドチップ32は、各ノズル31と対向する位置に複数の発熱抵抗体37が配列されており、各ノズル31と各発熱抵抗体37との間がインクの液室となっている。そして、インク供給口35からインクが供給されると、ヘッドチップ32の周囲だけでなく、ヘッドチップ32の液室内がインクで満たされる。
【0027】
ここで、制御基板(図示せず)からの指令により、フレキシブルシート33の配線を介して発熱抵抗体37に短時間(例えば、1〜3μsec)のパルス電流が流れると、発熱抵抗体37が急速に加熱される。そのため、発熱抵抗体37と接する部分にインクの気泡が発生(インクが沸騰)し、その気泡の膨張によって所定の体積のインクが押しのけられる。その結果、これが吐出圧力となり、押しのけられたインクと同等の体積のインクがノズル31から吐出されるようになる。
【0028】
このように、ヘッドチップ32は、発熱抵抗体37を加熱させてノズル31からインクを吐出し、記録用紙11(図1参照)に画像を形成する。そのため、インク吐出面22にホコリや紙粉等が付着したり、インク吐出面22が乾燥してノズル31に目詰まりが生じると、インクの吐出が阻害され、不吐出や不完全吐出等の吐出不良を起こしてしまう。
そこで、インク吐出面22をホコリ、紙粉、乾燥等から保護し、ノズル31の目詰まりを回復したりヘッドモジュール30内の気泡の除去するための吐出回復動作によって空吐出されたインクを受けるキャップユニット50(図1及び図2参照)が設けられている。
【0029】
[キャップユニットの構成例]

図6は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10におけるキャップユニット50を示す斜視図である。
図6に示すように、キャップユニット50は、上面が開口した浅い箱状の硬質樹脂製の容器であり、図3に示すラインヘッド20のインク吐出面22を全面にわたって覆うことができる大きさとなっている。そして、キャップユニット50の開口内は、液体(インクや、インク吐出面22の乾燥を防止するための純水等の保湿液)を収容可能な液体収容部52となっている。
なお、このキャップユニット50は、取付けボス53により、インクジェットプリンタ10(図1及び図2参照)のメインフレーム(図示せず)に固定されている。
【0030】
また、液体収容部52には、液体(インク、保湿液)を吸収可能な連続気孔の多孔質体51が全体的に挿入されている。多孔質体51は、例えば、PVA(polyvinyl alcohol)等の親水性の高い材質で形成されたスポンジ状の液体吸収体である。そのため、多孔質体51によって吸水・保水能力が高められ、ノズル31(図5参照)の吐出回復動作によって空吐出されたインクを能率良く受け入れたり、保湿液を能率良く保持できる。
なお、多孔質体51の形態や材質等は、液体を吸収可能であればスポンジ状のPVAに限定されない。
【0031】
さらにまた、キャップユニット50には、吐出回復動作によって多孔質体51に空吐出された廃インクや余分な保湿液等を外部に排出するための液体排出口54が設けられている。そして、液体排出口54に吸引ポンプ(図示せず)が接続されており、多孔質体51に含浸された液体(インク、保湿液)を必要に応じて適度なタイミングで吸引するようになっている。そのため、多孔質体51の水分量が適正に維持される。
【0032】
ここで、液体排出口54は、液体収容部52に純水等の保湿液を供給するための液体供給口として使用することもできる。そして、供給ポンプ(図示せず)によって液体収容部52に保湿液を供給し、多孔質体51に保湿液を含浸させておくことができる。これにより、保湿液を気化させ、インク吐出面22(図5参照)を湿潤状態とし、インク吐出面22の乾燥を能動的に防止できるようになる。
【0033】
さらに、キャップユニット50の開口の周囲には、搬送ベルト40(図1及び図2参照)の内面に当接して当接部内を密閉するためのシール突起55が全周にわたって設けられている。このシール突起55は、樹脂製のキャップユニット50と一体的に設けられており、キャッピングの際に、ゴム質の搬送ベルト40の内面を押圧する。そのため、シール突起55の頂点付近に押圧力が集中するので、搬送ベルト40の弾性力を利用して機密性の高いキャッピングが可能となる。
なお、シール突起55をゴム製とすることにより、搬送ベルト40との密着性を高めることもできる。
【0034】
このように、キャップユニット50は、シール突起55を搬送ベルト40(図1及び図2参照)の内面に当接させてキャッピングを行う。そのため、キャップユニット50は、搬送ベルト40内面側であって、インク吐出面22(図3参照)に対向するように配置される。
【0035】
図7は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10における搬送ベルト40の上面側を示す斜視図である。
また、図8は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10における搬送ベルト40の下面側を示す斜視図である。
図7及び図8に示すように、搬送ベルト40は、一対の張架ローラ41,42によって周回可能に張架されている。そして、キャップユニット50は、搬送ベルト40の内面側であって、張架ローラ41と張架ローラ42との間に配置されている。
【0036】
ここで、搬送ベルト40は、図3に示すラインヘッド20のインク吐出面22に対向して配置されており、搬送ベルト40には、図7及び図8に示すように、複数の貫通穴44が形成されている。各貫通穴44は、ラインヘッド20の各ノズル列31a(図3参照)に合わせて配置され、各ノズル31(図3参照)から吐出されたインクを通過させることができるようになっている。
【0037】
したがって、吐出回復動作でノズル31から空吐出されたインクは、貫通穴44を通過してキャップユニット50に収容されることとなる。
一方、キャップユニット50内に保湿液が収容されている場合には、気化した保湿液が貫通穴44を通過してインク吐出面22を湿潤させるので、インク吐出面22の乾燥を防止することができる。
【0038】
また、貫通穴44は、搬送ベルト40に部分的に形成されている。そのため、貫通穴44が形成されていても、搬送ベルト40の上面に記録用紙11(図1参照)を載置することができ、記録用紙11の平面性が維持される。そして、モータ44を回転駆動すれば、回転軸45及び伝達ベルト46を介してプーリ43が回転し、張架ローラ41,42によって搬送ベルト40が周回するので、搬送ベルト40上の記録用紙11が搬送される。
【0039】
さらにまた、貫通穴44(44a,44b)は、図7及び図8に示す状態では、搬送ベルト40の上下両面に位置している。そして、記録用紙11(図1参照)の搬送によって上面側に位置していた貫通穴44aが下面側に移動すると、下面側の貫通穴44bが上面側に位置するようになる。
【0040】
ここで、貫通穴44の位置は、図8に示す位置センサ47によって検知される。位置センサ47は、例えば、フォトセンサであり、搬送ベルト40の所定の位置に設けられた位置マーク48を検知するようになっている。そのため、ノズル31(図3参照)と貫通穴44a又は貫通穴44bとが対応した位置にあることの検知が可能となる。そして、記録用紙11の搬送によって貫通穴44が移動した場合には、搬送ベルト40は、再びノズル31と貫通穴44a又は貫通穴44bとが一致する位置まで周回する。
【0041】
[液体吐出装置の動作例]

図9は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す正面図(一部断面図)であり、印画開始時の状態を示す図である。
また、図10は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す正面図(一部断面図)であり、印画終了時の状態を示す図である。
【0042】
インクジェットプリンタ10によって印画を行うには、最初に、給紙部(図示せず)の記録用紙11を給紙ローラ12によって給紙し、搬送ベルト40の上面に載置して平面的に保持する。そして、モータ44(図2参照)を反時計回りに回転駆動することにより、回転軸45、伝達ベルト46、プーリ43、及び張架ローラ41を介して搬送ベルト40を周回させ、記録用紙11を排紙ローラ13に向けて搬送する。同時に、図9に示すように、印画位置(搬送ベルト40の上面から離れるように上昇した位置)にあるラインヘッド20のヘッドモジュール30における各ノズル31からインクを吐出し、記録用紙11上に吹き付けて印画を行う。
【0043】
ここで、記録用紙11は、平坦な搬送ベルト40の上面に載置された状態で搬送されるだけなので、記録用紙11の平面性が維持される。そのため、先端部がラインヘッド20に引っ掛かることなく、ムラのない安定した搬送が可能となる。また、各ヘッドモジュール30からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクが吐出されるので、フルカラーでの印画が可能となる。
【0044】
このようにして印画が終了した記録用紙11は、図10に示すように、搬送ベルト40に乗ってそのまま搬送され、排紙ローラ13によってペーパトレイ(図示せず)に排紙される。
次に、インクジェットプリンタ10は、記録用紙11の搬送によって周回した搬送ベルト40の位置合わせを行う。
【0045】
図11は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す正面図(一部断面図)であり、位置合わせ時の状態を示す図である。
また、図12は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す正面図(一部断面図)であり、位置合わせ後の状態を示す図である。
【0046】
搬送ベルト40の位置合わせは、図11に示す位置センサ47によって行う。位置センサ47は、搬送ベルト40の下面側に配置されており、搬送ベルト40に設けられた位置マーク48(図8参照)を検知する。そして、モータ44(図2参照)は、位置センサ47が位置マーク48を検知するまで回転駆動され、位置マーク48の検知によってモータ44が停止すると、図12に示すように、上面側の貫通穴44aとノズル31との位置が一致するようになる。そのため、印画(搬送ベルト40の周回)によって貫通穴44(44a,44b)が移動しても、貫通穴44a又は貫通穴44bとノズル31とは、常に一致した位置になる。
【0047】
ここで、連続した印画を行う場合には、図9から図10に示す印画動作、及び図11から図12に示す位置合わせ動作を繰り返す。
一方、印画を行わず、インクジェットプリンタ10を待機させる場合には、キャップユニット50によるキャッピング動作を行う。
【0048】
図13は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す正面図(一部断面図)であり、キャッピング後の状態を示す図である。
また、図14は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す正面図(一部断面図)であり、インクの空吐出中の状態を示す図である。
さらにまた、図15は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第1実施形態)としての、インクジェットプリンタ10の概要を示す正面図(一部断面図)であり、インク吐出面22の湿潤中の状態を示す図である。
【0049】
本実施形態のインクジェットプリンタ10は、搬送ベルト40に対してラインヘッド20を垂直方向に昇降させる昇降手段を有している。この昇降手段は、本発明における当接手段に相当し、搬送ベルト40を介してインク吐出面22とキャップユニット50とを相対的に当接させることができる。そして、昇降手段は、例えば、駆動回転されるギヤ、ベルト、カム、ピストン、又はこれらの組合せ等によって構成される。
【0050】
したがって、ラインヘッド20は、昇降手段により、インク吐出面22と搬送ベルト40との間に記録用紙11(図9参照)の搬送スペースを形成する印画位置(図12に示す位置)に上昇させることができる。
一方、印画を行わずに待機させる場合には、搬送ベルト40の位置合わせの完了後に、ラインヘッド20を下降させる。これにより、ラインヘッド20が下降して待機位置となり、図13に示すように、搬送ベルト40を介してラインヘッド20のインク吐出面22とキャップユニット50とが当接する。
【0051】
具体的には、ラインヘッド20の下降によってインク吐出面22と搬送ベルト40の外面とが当接する。この際、ラインヘッド20は、真っ直ぐに下降するので、ノズル31と貫通穴44aとの位置がずれることはない。また、搬送ベルト40の内面は、ラインヘッド20の下降によって押し下げられ、キャップユニット50の開口の周囲に設けられたシール突起55と当接する。これにより、貫通穴44aの周囲は、ヘッドフレーム21とシール突起55とによって挟持される。そして、シール突起55の当接によってゴム質の搬送ベルト40の内面(当接部)が弾性変形することにより、当接部内を密閉する。
したがって、搬送ベルト40及びシール突起55がシール用パッキンの役割を担い、インク吐出面22は、キャップユニット50により、貫通穴44aを介して覆蓋される。
【0052】
ここで、貫通穴44は、キャッピングの際にノズル31と搬送ベルト40とが当接することがない大きさに形成され、ノズル31の逃げ空間となっている。そのため、図14に示すように、印画を再開する場合等に行うインクの空吐出や、ノズル31の目詰まりを回復したりヘッドモジュール30内の気泡の除去するために行う空吐出(吐出回復動作)を実行しても、インクは確実に、キャップユニット50に収容される。その結果、搬送ベルト40に空吐出のインクが付着することはなく、記録用紙11(図9参照)の裏面を汚損するおそれもなくなる。
【0053】
また、貫通穴44aは、図15に示すように、キャップユニット50内の多孔質体51に含浸された保湿液が気化して蒸気となった保湿成分の通り道となる。そのため、多孔質体51に保湿液が含浸されていれば、気化した保湿液によってノズル31の周辺部が加湿される。その結果、長期間にわたって印画が行われずに放置された場合であっても、ノズル31の目詰まりを予防することができる。さらに、ノズル31に乾燥インクや増粘インクがすでに詰まっている場合には、これらのインクを軟化させることができるので、吐出の回復が容易になる。
なお、保湿液は、多孔質体51に含浸させた純水等だけでなく、吐出回復動作によって空吐出され、多孔質体51に含浸されたインクを用いることもできる。
【0054】
このように、本実施形態のインクジェットプリンタ10は、ラインヘッド20を下降させることにより、搬送ベルト40を介してインク吐出面22とキャップユニット50とを当接させ、待機させることができる。そして、このようなキャッピング時に吐出回復動作等を行う。
【0055】
また、キャッピング時の状態から印画を実行するには、昇降手段によってラインヘッド20を数ミリ上昇させ、キャッピングを解除するだけでよい。そのため、ラインヘッド20やキャップユニット50を大きく退避させる必要がないので、数秒の短時間で印画動作に移行できる。
【0056】
<2.第2の実施の形態>
[液体吐出装置の構成例]

図16は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第2実施形態)としての、インクジェットプリンタ60の概要を示す正面図(一部断面図)であり、インクの空吐出中の状態を示す図である。
図16に示すように、第2実施形態のインクジェットプリンタ60は、図14に示す第1実施形態のインクジェットプリンタ10と同様の給紙ローラ12及び排紙ローラ13を備えている。そして、ラインヘッド20は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクをそれぞれ別々に吐出する4つのヘッドモジュール30によって構成されており、各色のインクは、ノズル31から吐出される。
【0057】
また、第2実施形態のインクジェットプリンタ60は、無端状の搬送ベルト40を備えている。この搬送ベルト40は、ゴム質の弾性体から形成されており、一対の張架ローラ41,42によって周回可能に張架され、張架ローラ41には、プーリ43が連結されている。そして、モータ44(図2参照)を回転駆動することにより、回転軸45、伝達ベルト46、プーリ43、及び張架ローラ41を介して搬送ベルト40を周回させることができる。
【0058】
搬送ベルト40には、複数の貫通穴44が形成されている。各貫通穴44は、ラインヘッド20の各ノズル31から吐出されたインクを通過させることができる。そして、貫通穴44は、搬送ベルト40に部分的に形成されているので、貫通穴44が形成されていても、搬送ベルト40の上面に記録用紙11(図14参照)を載置することができ、記録用紙11の平面性が維持される。
【0059】
また、搬送ベルト40の周回による記録用紙11(図14参照)の搬送により、貫通穴44とノズル31との位置がずれるが、貫通穴44の位置は、位置センサ47によって検知されている。そのため、記録用紙11の搬送終了後も搬送ベルト40を周回させることにより、ノズル31と貫通穴44との位置を再び一致させることができる。
【0060】
さらにまた、搬送ベルト40の内面側であって、張架ローラ41と張架ローラ42との間には、ラインヘッド20のインク吐出面22を保護するキャップユニット61が配置されている。このキャップユニット61は、上面が開口した浅い箱状の硬質樹脂製の容器であり、ラインヘッド20のインク吐出面22を全面にわたって覆うことができる大きさとなっている。
【0061】
さらに、キャップユニット61の開口内には、親水性の高い材質で形成され、インクを吸収可能な連続気孔の多孔質体62が挿入されている。そのため、多孔質体62によって吸水・保水能力が高められ、ノズル31の吐出回復動作によって空吐出されたインクを能率良く受け入れることができる。
【0062】
ここで、第2実施形態のインクジェットプリンタ60は、キャップユニット61の開口内が3つの隔壁63によって4つに区画されている。各隔壁63は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクを吐出する各ヘッドモジュール30の間に配置されており、4つのヘッドモジュール30に合わせて多孔質体62を4つに区分するようになっている。
【0063】
このような第2実施形態のインクジェットプリンタ60において、昇降手段によってラインヘッド20を下降させると、図16に示すように、インク吐出面22と搬送ベルト40の外面とが当接する。また、搬送ベルト40の内面がラインヘッド20の下降によって押し下げられ、キャップユニット61と当接し、当接部内が密閉される。そのため、インク吐出面22は、キャップユニット61により、搬送ベルト40を介して覆蓋されたキャッピング状態となる。
【0064】
この状態で、印画を再開する場合等に行うインクの空吐出や、ノズル31の目詰まりを回復したりヘッドモジュール30内の気泡の除去するために行う空吐出(吐出回復動作)を実行すると、インクが貫通穴44を通過してキャップユニット61に収容される。そして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクは、隔壁63によって区分された別々の多孔質体62に吸収され、保持される。
【0065】
したがって、第2実施形態のインクジェットプリンタ60では、吐出回復動作等で空吐出された各色のインクがキャップユニット61内で混ざらずに収容される。そして、余分なインクは、適度なタイミングで吸引され、各色ごとに排出される。そのため、多孔質体62のインク量が適正に維持されるだけでなく、廃インクの再利用が可能となる。
なお、廃インクの再利用に際しては、異物等を除去するため、フィルタを通すことが好ましい。
【0066】
また、貫通穴44は、キャップユニット61内の多孔質体62に含浸された各色のインクが気化して蒸気となった場合の通り道となる。そのため、気化インクによってインク吐出面22が湿潤し、長期間にわたって印画が行われずに放置されたとしても、インク吐出面22の乾燥が防止されるので、ノズル31の目詰まりを予防できる。また、ノズル31に乾燥インクや増粘インクがすでに詰まっている場合には、これらのインクを軟化させることができるので、吐出の回復が容易になる。
【0067】
<3.第3の実施の形態>
[液体吐出装置の構成例]

図17は、本発明の液体吐出装置の一実施形態(第3実施形態)としての、インクジェットプリンタ70の概要を示す正面図(一部断面図)であり、インクの空吐出中の状態を示す図である。
図17に示すように、第3実施形態のインクジェットプリンタ70は、図14に示す第1実施形態のインクジェットプリンタ10と同様の給紙ローラ12及び排紙ローラ13を備えている。
【0068】
ここで、第3実施形態のインクジェットプリンタ70では、ラインヘッド71を構成するヘッドモジュール30が5つ配置されている。
具体的には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色のインクをそれぞれ別々に吐出する4つのヘッドモジュール30と、純水等の保湿液(L)を吐出するヘッドモジュール30とを有している。そして、各色のインク及び保湿液は、各ヘッドモジュール30のノズル31から吐出される。
【0069】
また、第3実施形態のインクジェットプリンタ70は、無端状の搬送ベルト40を備えている。この搬送ベルト40は、ゴム質の弾性体から形成されており、一対の張架ローラ41,42によって周回可能に張架され、張架ローラ41には、プーリ43が連結されている。そして、モータ44(図2参照)を回転駆動することにより、回転軸45、伝達ベルト46、プーリ43、及び張架ローラ41を介して搬送ベルト40を周回させることができる。
【0070】
搬送ベルト40には、複数の貫通穴44が形成されている。各貫通穴44は、ラインヘッド20の各ノズル31から吐出された各色のインク及び保湿液を通過させることができる。そして、貫通穴44は、搬送ベルト40に部分的に形成されているので、貫通穴44が形成されていても、搬送ベルト40の上面に記録用紙11(図14参照)を載置することができ、記録用紙11の平面性が維持される。
【0071】
また、搬送ベルト40の周回による記録用紙11(図14参照)の搬送により、貫通穴44とノズル31との位置がずれるが、貫通穴44の位置は、位置センサ47によって検知されている。そのため、記録用紙11の搬送終了後も搬送ベルト40を周回させることにより、ノズル31と貫通穴44との位置を再び一致させることができる。
【0072】
さらにまた、搬送ベルト40の内面側であって、張架ローラ41と張架ローラ42との間には、ラインヘッド71のインク吐出面22を保護するキャップユニット72が配置されている。このキャップユニット72は、上面が開口した浅い箱状の硬質樹脂製の容器であり、ラインヘッド71のインク吐出面22を全面にわたって覆うことができる大きさとなっている。
【0073】
さらに、キャップユニット72の開口内は、液体収容部73となっており、液体収容部73には、親水性の高い材質で形成され、インクを吸収可能な連続気孔の多孔質体74が挿入されている。そのため、多孔質体74によって吸水・保水能力が高められ、ノズル31の吐出回復動作によって空吐出されたインクや保湿液を能率良く受け入れることができる。また、多孔質体74は、液体収容部73の底部から少し離れて配置されており、多孔質体74を通った保湿液が液体収容部73の底部に溜まるようになっている。
【0074】
このような第3実施形態のインクジェットプリンタ70において、昇降手段によってラインヘッド71を下降させると、図17に示すように、インク吐出面22と搬送ベルト40の外面とが当接する。また、搬送ベルト40の内面がラインヘッド71の下降によって押し下げられ、キャップユニット72と当接し、当接部内が密閉される。そのため、インク吐出面22は、キャップユニット72により、搬送ベルト40を介して覆蓋される。
【0075】
ここで、保湿液(L)を吐出するヘッドモジュール30を駆動し、ノズル31から保湿液を吐出すると、保湿液が貫通穴44を通過して多孔質体74に吸収される。そして、保湿液の吐出を続けると、保湿液は、多孔質体74を通過して液体収容部73の底部に溜まるようになる。その結果、多孔質体74内での拡散と液体収容部73の底部からの気化により、多孔質体74の全体に保湿液が含浸される。
【0076】
したがって、長期間にわたって印画が行われずに放置されたとしても、多孔質体74の全体に含浸された保湿液が気化し、気化した蒸気が貫通穴44を通ってインク吐出面22を湿潤させる。そのため、インク吐出面22の乾燥が防止されるので、ノズル31の目詰まりを予防できる。また、ノズル31に乾燥インクや増粘インクがすでに詰まっている場合には、これらのインクを軟化させることができるので、吐出の回復が容易になる。
【0077】
また、印画を再開する場合等に行うインクの空吐出や、ノズル31の目詰まりを回復したりヘッドモジュール30内の気泡の除去するために行う空吐出(吐出回復動作)を実行すると、インクが貫通穴44を通過してキャップユニット72に収容される。そして、余分なインクは、適度なタイミングで吸引されて排出される。
【0078】
以上、説明したように、本実施形態のインクジェットプリンタ10,60,70は、搬送ベルト40により、記録用紙11の平面性を維持したまま、安定した搬送を行うことができる。また、搬送ベルト40の内面側に配置されたキャップユニット50,61,72により、省スペースでキャッピングを行うことができる。さらにまた、キャッピング時(待機時)の状態から印画時の状態に簡単に切り替えることができる。さらに、キャッピング時に空吐出されたインクや保湿液は、搬送ベルト40の貫通穴44を通してキャップユニット50,61,72に収容できる。
【0079】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、以下のような種々の変形等が可能である。
(1)本実施形態は、ラインヘッド20,71を備えるラインヘッド式のインクジェットプリンタ10を液体吐出装置としている。しかし、液体吐出装置は、これに限らず、ヘッドを記録用紙の幅方向に移動させて印画を行うシリアルヘッド式のプリンタであってもよい。また、プリンタの他、複写機、ファクシミリ等にも適用できる。
【0080】
(2)本実施形態では、昇降手段(当接手段)により、ラインヘッド20,71を下降させてインク吐出面22、搬送ベルト40、及びキャップユニット50,61,72を当接させている。しかし、キャップユニット側を昇降させたり、ラインヘッド及びキャップユニットの両方を昇降させることもできる。
【符号の説明】
【0081】
10 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
11 記録用紙(液体の吐出対象)
12 給紙ローラ
13 排紙ローラ
20 ラインヘッド(液体吐出ヘッド)
21 ヘッドフレーム
22 インク吐出面(ノズル列の形成部分)
30 ヘッドモジュール
31 ノズル
31a ノズル列
40 搬送ベルト
41,42 張架ローラ
43 プーリ
44,44a,44b 貫通穴
45 回転軸
46 伝達ベルト
47 位置センサ
50 キャップユニット
51 多孔質体
52 液体収容部
54 液体排出口
55 シール突起
60 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
61 キャップユニット
62 多孔質体
70 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
71 ラインヘッド(液体吐出ヘッド)
72 キャップユニット
73 液体収容部
74 多孔質体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数のノズルと、
前記ノズルを一方向に配列したノズル列が形成された液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分に対向して配置され、前記ノズルから吐出された液体を通過させることが可能な複数の貫通穴が形成されるとともに、上面に液体の吐出対象を載置して搬送可能な無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを周回可能に張架する一対の張架ローラと、
前記搬送ベルトの内面側に、前記ノズル列の形成部分に対向するように配置され、上面が開口するとともに、前記貫通穴を通過した液体を収容可能なキャップユニットと、
前記ノズルと前記貫通穴とが対応した位置にあるときに、前記搬送ベルトを介して前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分と前記キャップユニットとを相対的に当接させるための当接手段と
を有する液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記ノズルと前記貫通穴とが対応した位置にあることを検知するための位置センサを有する
液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記キャップユニットは、前記貫通穴を通過した液体を収容するための液体収容部を有する
液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記キャップユニットは、前記貫通穴を通過した液体を収容するための液体収容部を有し、
前記液体収容部には、液体を吸収可能な連続気孔の多孔質体が配置されている
液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記キャップユニットは、
前記貫通穴を通過した液体を収容するための液体収容部と、
前記液体収容部に対し、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列の形成部分の乾燥を防止するための保湿液を供給可能な液体供給口と
を有する液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記キャップユニットは、
前記貫通穴を通過した液体を収容するための液体収容部と、
前記液体収容部に収容された液体を外部に排出するための液体排出口と
を有する液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記キャップユニットは、前記開口の周囲に設けられ、前記搬送ベルトの内面に当接して当接部内を密閉するためのシール突起を有する
液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記液体吐出ヘッドは、前記吐出対象の横幅に対応する長さの前記ノズル列が形成されたラインヘッドである
液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−16315(P2011−16315A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163190(P2009−163190)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】