説明

液体吐出装置

【課題】画質の向上を図る。
【解決手段】光の照射によって硬化する液体を吐出するノズル列を有し、移動方向に移動するキャリッジと、ノズル列と対応してキャリッジに設けられ、光を照射する照射部と、キャリッジを移動方向に移動させつつ、ノズル列から液体を吐出させるとともに、照射部から光を照射させる吐出照射動作と、媒体を搬送方向に搬送させる搬送動作とを交互に実行するコントローラーと、を備え、ノズル列は、搬送方向の端部と、端部よりも搬送方向の内側の中央部であって、当該中央部のノズルで形成されたドットに照射される光量ばらつきが、端部のノズルで形成されたドットに照射される光量ばらつきよりも小さい中央部とを有し、コントローラーは、上端印刷又は下端印刷を行う際に、第一の吐出照射動作における中央部のノズルを、第一の吐出照射動作よりも後の第二の吐出照射動作における端部のノズルよりも優先して用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光(例えば紫外線(UV))の照射を受けることによって硬化する液体(例えばUVインク)を用いて印刷を行なう液体吐出装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このような液体吐出装置では、光を照射する照射部を備えており、ノズルから媒体に液体を吐出した後、媒体に形成されたドットに照射部から光を照射する。こうすることにより、ドットが硬化して媒体に定着する。また、このような液体吐出装置として、媒体の搬送方向に複数のノズルが並ぶノズル列を有し、搬送方向と交差する移動方向に移動するキャリッジにおいて、ノズル列と移動方向に並ぶ位置にノズル列と対応するように照射部を設けるようにしたものが提案されている。この場合、キャリッジが移動方向に移動する際にノズルからの液体の吐出と、媒体に形成されたドットへの光の照射を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-191594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような液体吐出装置において、照射部による光の光量が位置によって異なることがある。例えば、ノズル列の中央部に対応する部分と比べて、ノズル列の端部に対応する部分では光量のばらつきが大きいことがある。この場合、ノズル列の各ノズルで形成されたドット(光の照射後のドット)の大きさがばらつくことになる。このため、画質が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、画質の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
光の照射によって硬化する液体を吐出するノズルが媒体の搬送方向に複数並んだノズル列を有し、前記搬送方向と交差する移動方向に移動するキャリッジと、前記ノズル列と対応して前記搬送方向に沿って前記キャリッジに設けられ、光を照射する照射部と、前記キャリッジを前記移動方向に移動させつつ、前記ノズル列の各ノズルから前記液体を吐出させるとともに、媒体に形成されたドットに前記照射部からの光を照射させる吐出照射動作と、媒体を前記搬送方向に搬送させる搬送動作とを交互に実行するコントローラーと、を備えた液体吐出装置であって、前記ノズル列は、前記搬送方向の端部と、前記端部よりも前記搬送方向の内側の中央部であって、吐出照射動作の際に当該中央部のノズルで形成されたドットに前記照射部から照射される光量ばらつきが、前記端部のノズルで形成されたドットに前記照射部から照射される光量ばらつきよりも小さい中央部とを有し、前記コントローラーは、上端印刷又は下端印刷を行う際に、第一の吐出照射動作における前記中央部のノズルを、前記第一の吐出照射動作よりも後の第二の吐出照射動作における前記端部のノズルよりも優先して用いることを特徴とする液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンターの構成を示すブロック図である。
【図2】プリンターのヘッド周辺の概略図である。
【図3】図3A及び図3Bは、プリンターの横断面図である。
【図4】ヘッドの構成の説明図である。
【図5】図5A〜図5Cは、媒体上に着弾したUVインク(ドット)の形状と、仮硬化のUVの照射エネルギーの説明図である。
【図6】UVの照度分布とノズル列との関係を説明するための概念図である。
【図7】第1照射部42aの照度分布を説明するための概念図である。
【図8】第1実施形態における通常印刷の説明図である。
【図9】第1実施形態における上端印刷の説明図である。
【図10】第1実施形態における下端印刷の説明図である。
【図11】第2実施形態における通常印刷の説明図である。
【図12】第2実施形態における上端印刷の説明図である。
【図13】第2実施形態における下端印刷の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
光の照射によって硬化する液体を吐出するノズルが媒体の搬送方向に複数並んだノズル列を有し、前記搬送方向と交差する移動方向に移動するキャリッジと、前記ノズル列と対応して前記搬送方向に沿って前記キャリッジに設けられ、光を照射する照射部と、前記キャリッジを前記移動方向に移動させつつ、前記ノズル列の各ノズルから前記液体を吐出させるとともに、媒体に形成されたドットに前記照射部からの光を照射させる吐出照射動作と、媒体を前記搬送方向に搬送させる搬送動作とを交互に実行するコントローラーと、を備えた液体吐出装置であって、前記ノズル列は、前記搬送方向の端部と、前記端部よりも前記搬送方向の内側の中央部であって、吐出照射動作の際に当該中央部のノズルで形成されたドットに前記照射部から照射される光量ばらつきが、前記端部のノズルで形成されたドットに前記照射部から照射される光量ばらつきよりも小さい中央部とを有し、前記コントローラーは、上端印刷又は下端印刷を行う際に、第一の吐出照射動作における前記中央部のノズルを、前記第一の吐出照射動作よりも後の第二の吐出照射動作における前記端部のノズルよりも優先して用いることを特徴とする液体吐出装置。
このような液体吐出装置によれは、上端印刷や下端印刷において形成されるドットの大きさのばらつきを低減させることが可能である。よって、画質の向上を図ることができる。
【0010】
かかる液体吐出装置であって、前記ノズル列の前記端部は、前記中央部からの距離が所定値の第一ノズルと、前記中央部からの距離が前記所定値よりも大きい第二ノズルとを有し、前記第二ノズルによって形成されたドットに前記照射部から照射される光量は、前記第一ノズルによって形成されたドットに前記照射部から照射される光量よりも小さくてもよい。
このような液体吐出装置によれば、照射部の照度がノズル列の端部で低下するような場合でも、上端印刷又は下端印刷において、中央部のノズルを優先して用いるのでドットの大きさに影響を与えることがない。
【0011】
かかる液体吐出装置であって、前記コントローラーは、前記移動方向にドットが並ぶ所定ドット列を、複数回の前記吐出照射動作によって形成することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、ノズルによってドットの大きさに傾向がある場合でも、大きさの異なるドットを分散させるようにできる。よって、画質の劣化を防止できる。
【0012】
かかる液体吐出装置であって、前記第一ノズルは前記ノズル列の前記搬送方向の一方の端部に設けられ、前記第二ノズルは前記ノズル列の前記搬送方向の他方の端部に設けられており、前記コントローラーは、前記所定ドット列を形成する際に、前記第一ノズル、又は、前記第二ノズルを使用可能である場合、前記第一ノズルを優先して用いることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、ドットの大きさのばらつきをできるだけ小さくすることができる。
【0013】
かかる液体吐出装置であって、前記第一ノズルは前記ノズル列の前記搬送方向の一方の端部に設けられ、前記第二ノズルは前記ノズル列の前記搬送方向の他方の端部に設けられており、前記コントローラーは、前記第一ノズル及び前記第二ノズルを用いて前記所定ドット列を形成することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、ドットの大きさのばらつきによる画質の劣化を目立ち難くすることができる。
【0014】
以下の実施形態では、液体吐出装置としてインクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
【0015】
===第1実施形態===
<プリンターの構成について>
以下、図1、図2、図3A、及び図3Bを参照しながら本実施形態のプリンター1について説明する。図1は、プリンター1の構成を示すブロック図である。図2は、プリンター1のヘッド周辺の概略図である。図3A及び図3Bは、プリンター1の横断面図である。
【0016】
本実施形態のプリンター1は、紙、布、フィルムシート等の媒体に向けて、液体を吐出することにより、媒体に画像を印刷する装置である。本実施形態では、液体として、光の一種である紫外線(以下、UVともいう)の照射を受けることによって硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインクともいう)が用いられる。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、本実施形態のプリンター1は、CMYKの4色のUVインクを用いて画像を印刷する。
【0017】
プリンター1は、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0018】
搬送ユニット10は、媒体(例えば、紙)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。搬送ユニット10は、給紙ローラー11と、搬送モータ(不図示)と、搬送ローラー13と、プラテン14と、排紙ローラー15とを有する。給紙ローラー11は、紙挿入口に挿入された媒体をプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラー11によって給紙された媒体を印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーターによって駆動される。プラテン14は、印刷中の媒体を支持する。排紙ローラー15は、媒体をプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0019】
キャリッジユニット20は、ヘッドを移動方向に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。なお、移動方向は、搬送方向と交差する方向である。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター(不図示)とを有する。また、キャリッジ21は、UVインクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。そして、キャリッジ21は、後述する搬送方向と交差したガイド軸24に支持された状態で、キャリッジモーターによりガイド軸24に沿って往復移動する。
【0020】
ヘッドユニット30は、媒体に液体(本実施形態ではUVインク)を吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、複数のノズルを有するヘッド31を備える。このヘッド31はキャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そして、ヘッド31が移動方向に移動中にUVインクを断続的に吐出することによって、移動方向にドットが並ぶドット列(ラスタライン)が媒体に形成される。なお、本実施形態において、図2の移動方向の一端側から他端側に向かって移動する経路のことを往路とし、他端側から一端側に移動する経路のことを復路とする。本実施形態では、往路においてヘッド31からUVインクを吐出し、復路ではインクを吐出しない。すなわち、本実施形態のプリンター1は、単方向印刷を行なう。
なお、ヘッド31の構成については、後述する。
【0021】
照射ユニット40は、媒体に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。媒体上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることにより、硬化する。本実施形態の照射ユニット40は、第1照射部42a、42b及び第2照射部44を備えている。このうち第1照射部42a、42bは、キャリッジ21に設けられている。このため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、第1照射部42a、42bも移動方向に移動する。
【0022】
第1照射部42a、42bは、ヘッド31を挟むようにして、キャリッジ21上のヘッド31の移動方向の一端側と他端側に、それぞれ搬送方向に沿って設けられている。本実施形態において第1照射部42a、42bの搬送方向の長さは、ヘッド31のノズル列の長さとほぼ同じになっている。そして、第1照射部42a、42bは、ヘッド31とともに移動して、ヘッド31のノズル列がドットを形成する範囲にUVを照射する(後述する仮硬化)。本実施形態の第1照射部42a、42bは、UVの光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を備えている。LEDは入力電流の大きさを制御することにより、UVの照射エネルギーを容易に変更することが可能である。
【0023】
図のように、キャリッジ21における移動方向の両端に第1照射部42a、42bを設けているので、往路と復路に応じてUVを照射する照射部を切り替えることで、パスの際にヘッド31によって媒体に形成された直後のドットにUVを照射することができる。なお、本実施形態では、第1照射部42a、42bのうちの一方(第1照射部42a)のみを使用することとする。
【0024】
第2照射部44は、キャリッジ21よりも搬送方向下流側に設けられている。つまり、第2照射部44は、ヘッド31のノズル列、及び、第1照射部42a、42bよりも搬送方向下流側に設けられている。また、第2照射部44の移動方向の長さは、印刷対象となる媒体の最大幅よりも長くなっている。そして、第2照射部44は、搬送動作によって第2照射部44の下に搬送された媒体に向けてUVを照射する(後述する本硬化)。本実施形態の第2照射部44は、UVを照射する光源として、ランプ(メタルハライドランプ、水銀ランプなど)を備えている。
【0025】
検出器群50には、リニア式エンコーダー(不図示)、ロータリー式エンコーダー(不図示)、紙検出センサー53、および光学センサー54等が含まれる。リニア式エンコーダーは、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー13の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の媒体の先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、媒体の有無を検出する。そして、光学センサー54は、キャリッジ21によって移動しながら媒体の端部の位置を検出し、媒体の幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、媒体の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0026】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0027】
印刷を行うとき、コントローラー60は、後述するよう移動方向に移動中のヘッド31からUVインクを吐出させる吐出動作と、搬送方向に媒体を搬送する搬送動作とを交互に繰り返し、複数のドットから構成される画像を媒体に印刷する。以下の説明において、吐出動作のことを「パス」と呼ぶ。また、n回目のパスのことをパスnと呼ぶ。なお、本実施形態において、コントローラー60は、後述するように、パスの際に第1照射部42aから媒体にUVの照射も行わせる。すなわち、パスは、吐出照射動作に相当する。
【0028】
<印刷手順について>
コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データを印刷する際、プリンター1の各ユニットに以下の処理を行わせる。
まず、コントローラー60は、給紙ローラー11を回転させ、印刷すべき媒体(ここでは用紙S)を搬送ローラー13の所まで送る。次に、コントローラー60は、搬送モーター(不図示)を駆動させることによって搬送ローラー13を回転させる。搬送ローラー13が所定の回転量にて回転すると、用紙Sは所定の搬送量にて搬送される。
【0029】
用紙Sがヘッド31の下部まで搬送されると、コントローラー60は、キャリッジモーター(不図示)を所定方向に回転させる。このキャリッジモーターの回転に応じて、キャリッジ21が移動方向に移動する。また、キャリッジ21が移動することによって、キャリッジ21に設けられたヘッド31及び第1照射部42a、42bも同時に移動方向に移動する。そして、コントローラー60は、この間にヘッド31から断続的にインク滴を吐出させる。このインク滴が、用紙Sにインク滴が着弾することによって、移動方向に複数のドットが並ぶドット列(ラスタライン)が形成される。また、コントローラー60は、ヘッド31が移動している間に、キャリッジ21の第1照射部42aからUV照射を行なわせる。このUV照射により、用紙Sに形成されたドットの広がりやドット間の滲みが抑制される。
【0030】
次に、コントローラー60は、パスの合間に搬送モーターを駆動させる。搬送モーターは、コントローラー60からの指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。この駆動力を用いて搬送モーターは、搬送ローラー13を回転させる。搬送ローラー13が所定の回転量にて回転すると、用紙Sは所定の搬送量にて搬送される。つまり、用紙Sの搬送量は、搬送ローラー13の回転量に応じて定まることになる。このように、パスと搬送動作を交互に繰り返して行い、用紙Sの各画素にドットを形成していく。こうして用紙Sに画像が印刷される。
【0031】
そして、コントローラー60は、搬送動作によって用紙Sが第2照射部44の下を通る際に、用紙Sに向けて第2照射部44からUVの照射を行なわせる。このUV照射により、用紙S上のドットを完全に硬化させて用紙Sに定着させる。
印刷の終わった用紙Sは、搬送ローラー13と同期して回転する排紙ローラー15によって、排紙される。
【0032】
なお、本実施形態では、用紙Sの上端(搬送方向下流側の端部)に印刷する上端印刷、及び、下端(搬送方向上流側の端部)に印刷する下端印刷も行う。この上端印刷及び下端印刷の詳細については後述する。
【0033】
<ヘッド31の構成について>
図4は、ヘッド31の構成の一例の説明図である。なお、図4はヘッド31のノズルを上から透過して見た図である。ヘッド31の下面には、図4に示すように、ブラックインクノズル列Kと、シアンインクノズル列Cと、マゼンダインクノズル列Mと、イエローインクノズル列Yとが形成されている。各ノズル列は、各色のUVインクを吐出するための吐出口であるノズルを複数個(本実施形態では180個)備えている。
【0034】
各ノズル列の複数のノズルは、搬送方向に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、媒体に形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720インチ)である場合、k=4である。
【0035】
各ノズル列のノズルには、搬送方向下流側のノズルほど若い番号が付されている。各ノズルには、各ノズルからUVインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。このピエゾ素子を駆動信号によって駆動させることにより、前記各ノズルから滴状のUVインクが吐出される。吐出されたUVインクは、媒体に着弾してドットを形成する。そして、媒体に形成されたドットは照射ユニット40によるUVの照射を受けることによって硬化する。本実施形態では、UVインクを硬化させるのに、仮硬化と本硬化の2段階の硬化を行っている。
【0036】
<仮硬化及び本硬化について>
仮硬化は、媒体に形成されたドットの流動(広がり)や、ドット間の滲みを抑えるためのUV照射である。このため、仮硬化後のドットは完全に硬化していないが、最終的なドット形状はこの仮硬化によって決まる。
【0037】
図5A〜図5Cは、媒体上に着弾したUVインク(ドット)の形状と、仮硬化のUVの照射エネルギーの説明図である。図5A、図5B、図5Cの順で仮硬化におけるUVの照射エネルギーが低くなっている。なお、各図においてUV照射のタイミング(ドットを形成してからUVが照射されるまでの時間)は同じである。
【0038】
仮硬化の際のUVの照射エネルギーが高い場合、例えば図5Aに示すようにドットの流動(広がり)が小さくなる。すなわちドット径が小さくなる。この場合、表面の凹凸が大きくなるため、光沢を抑えた低光沢の画質になる。なお、この場合、他のインク間との間で滲みが生じに難くなる。
【0039】
一方、仮硬化の際のUVの照射エネルギーが低い場合、例えば例えば図5Cに示すようにドットの流動(広がり)が大きくなる。すなわちドット径が大きくなる。この場合、表面の凹凸が小さくなるため、光沢を高めた高光沢の画質になる。なお、この場合、他のインクとの間で滲みが生じやすくなる。
【0040】
本硬化は、インクを完全に硬化させるためのUV照射である。このため第2照射部44の光源には、第1照射部42a、42bよりも強いエネルギーのUVを照射する光源(例えばランプ等)が用いられる。
【0041】
<照度分布とノズル列との関係について>
次に、第1照射部42a、42bの照度分布とヘッド31のノズル列との関係について説明する。なお、第1照射部42aと第1照射部42bは同一構成である。よって、これらのうちの一方のみ(本実施形態では第1照射部42a)を用いて説明する。また、ヘッド31には4つのノズル列があるが、ここではそのうちの一つ(例えばブラックノズル列)のみを用いて説明する。
【0042】
図6は、UVの照度分布とノズル列との関係を説明するための概念図である。同図には、第1照射部42aと、ヘッド31のノズル列(例えばブラックノズル列)と、ノズル列によって形成されるドットのイメージが示されている。
【0043】
なお、説明の簡略化のため、ヘッド31のノズル列のノズル数を12個(#1〜#12)としている。このため、第1照射部42aはヘッド31の12個のノズル列と対応する長さで示されている。
【0044】
第1照射部42aは、キャリッジ21においてヘッド31のノズル列と対応する位置(すなわち移動方向に並ぶ位置)に設けられている。そして、第1照射部42aは、キャリッジ21が往路方向(移動方向の一端側から他端側)に移動する際にヘッド31のノズル列によって形成されたドットに対して仮硬化のためのUVを照射する。ここでは、図のノズル列の各ノズルから同一条件(インクの吐出量など)でUVインクを吐出することとしている。つまり媒体に形成された直後のドット(UV照射を受ける前のドット)の大きさは同じである。これらのドットは、パスの際にノズル列よりも移動方向の下流側に位置する第1照射部42aからUV照射を受けて仮硬化される。
【0045】
図において第1照射部42aの下側に示す曲線は、第1照射部42aの照度分布を示している。この照度分布は、第1照射部42aからのUVの照射量(光量)を概念的に示したものであり、図において上側ほど低く、下側ほど高くなっている。図からわかるように第1照射部42aの中央付近では照度が高く、且つ、安定しているが、第1照射部42aの端部に近づくにつれて、照度が低くなっている。すなわち端部では中央部よりも照度のばらつきが大きくなっている。
【0046】
以下、照度分布が図6のようになる理由について図7を参照しつつ説明する。
図7は、第1照射部42aの照度分布を説明するための概念図である。第1照射部42aには、UVを照射する光源としてLED421が図7の左側の図に示すように複数設けられている。なお、図では、縦方向(搬送方向)と横方向(移動方向)にそれぞれLED421が複数設けられているが、LED421は、少なくとも縦方向(搬送方向)に沿って複数設けられていればよい。こうすることでヘッド31のノズル列によって形成された各ドットに対してUVを照射することができる。
【0047】
図7の右側の図は、第1照射部42aの照度分布を示している。図において実線は搬送方向に並ぶLED421のそれぞれの照度分布を示し、破線は第1照射部42aの照度分布を示している。
【0048】
図の実線に示すように、個々のLED421の照度は、中心で最大(ピーク)となり、中心から離れるにつれて曲線的に照度が低下している。これらの各LED421によるUVの照度分布を重ね合わせると、照度分布は図の破線のようになる。つまり、搬送方向の中央付近では照度が高く、且つ、ばらつきが小さいが、搬送方向の端部に近づくにつれて、照度が低下し、これにより、ばらつきが大きくなる。よって、第1照射部42aのUVの照射分布は、図6に示したような分布形状になる。
【0049】
また図6には各ノズルによって形成されたドットのドット形状(第1照射部42aからのUV照射を受けた後のドット形状)が示されている。第1照射部42aの照度が前述したような分布形状であるため、ヘッド31のノズル列の各ノズルによって同一条件でドットの形成を行った場合、ドット形成直後(UV照射前)は同一サイズであったとしても、UV照射後のドットは、図のように大きさにばらつきが生じてしまう。具体的には、ノズル列における搬送方向の中央部のノズルで形成されたドットは、ほぼ同一のドットサイズであるが、ノズル列の搬送方向の端部のノズルで形成されたドットは、搬送方向の端に近づくにつれてドットサイズが大きくなる。このため、全てのノズルを同様に使用して画像を印刷すると画質が低下するおそれがある。そこで本実施形態では、印刷時に使用するノズルに優先順序を設けることによって画質の向上を図っている。なお、以下の説明において、ノズル列の中央部のことを領域Ncともいう。また、搬送方向下流側のノズル端部のことを領域Ntといい、搬送方向上流側のノズル端部のことを領域Nbともいう。図に示すように、領域Ncのノズルはノズル#3〜#10であり、領域Ntのノズルはノズル#1、#2であり、領域Nbのノズルはノズル#11、#12である。
【0050】
===第1実施形態の印刷方式===
<通常印刷(フルオーバーラップ印刷)>
本実施形態のプリンター1では、フルオーバーラップ印刷によって画像の形成を行う。「フルオーバーラップ印刷」とは、ラスタラインを複数のノズルで形成する印刷方法を意味する。なお、以下の印刷の動作はコントローラー60によって実行される。
【0051】
図8は、第1実施形態における通常印刷の説明図である。フルオーバーラップ印刷では、媒体(紙)が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、数ドットおきに間欠的にドットを形成する。そして、他のパスにおいて、他のノズルが既に形成されている間欠的なドットを補完するように(ドットの間を埋めるように)ドットを形成することにより、1つラスタラインが複数のノズルにより形成される。このようにM回のパスにて1つのラスタラインが形成される場合、「オーバーラップ数M」と定義する。例えば、2回のパスにて1つのラスタラインが形成される場合、オーバーラップ数M=2になる。また、本実施形態の印刷方法では、ノズル列の各ノズルで形成されるラスタラインの間に、1本のラスタラインが挟まれて形成される。すなわち、ノズルピッチはドットピッチ(D)の2倍(k=2)である。
【0052】
図8では説明の都合上、複数あるノズル列のうちの一つのノズル列のみを示し、また、ノズル列のノズル数を図6と同様(12個)にしている。図のノズル列において四角で示されるノズルは、ノズル列の端部(領域Nt、領域Nb)のノズルであり、丸で示されるノズルは、ノズル列の中央部(領域Nc)のノズルである。
【0053】
図では、パス毎のヘッド31(すなわちノズル列)の位置を示している。説明の便宜上、パス毎にノズル列が搬送方向(図の上下方向)に移動しているように描かれているが、同図は媒体に対するノズル列の相対的な位置を示すものであって、実際には媒体が搬送方向に搬送されている(移動している)。また、同図では説明の都合上、ノズル列のみを示しているが、このノズル列が移動方向(図の左右方向)に移動する際にノズルから断続的にインク滴が吐出されるので、移動方向に沿って多数のドットが並ぶことになる。
【0054】
図において送り量とは、パスの合間の搬送動作における、媒体とノズル列との搬送方向の相対的な移動量(すなわち、媒体の搬送量)のことである。なお、送り量の単位はドットピッチDである。図8では1回のパス毎に媒体が搬送方向に5D搬送されている。これにより、ノズル列と媒体との搬送方向における相対的な位置が5D分ずれる。例えば、パス2におけるノズル#1は、搬送方向について、その前のパス(パス1)においてノズル#3で形成したドット列(移動方向のドット列)と#4で形成したドット列(移動方向のドット列)の間にドットを形成することになる。
【0055】
図において、水平位置が「1」のノズルは、媒体の移動方向に並ぶ画素のうち奇数番目の画素(以下、奇数画素ともいう)にドットを形成する。また、水平位置が「2」のノズルは、媒体の移動方向に並ぶ画素のうち、偶数番目の画素(以下、偶数画素ともいう)にドットを形成する。つまり、図に示す各ノズルはパスの際に、2画素につき1画素の割合でドットを形成する。例えば、パス1では、水平位置が「1」なので、ノズル列が移動方向に移動しつつ、各ノズルから奇数画素に対してインクを吐出する。これにより、媒体には、移動方向の1画素おき(奇数画素)にドットが形成される。
【0056】
これからわかるように、コントローラー60は、移動方向にノズルが並んで示されるノズルによって、複数回のパスでラスタラインを形成する。例えば、パス1におけるノズル#8と、パス3におけるノズル#3は移動方向に並んで示されている(搬送方向の位置が同じになっている)。この場合、パス1では水平位置が「1」なのでノズル#8は奇数画素にドットを形成し、パス3では水平位置が「2」なのでノズル#3は偶数画素にドットを形成する。つまり、パス3におけるノズル#3は、パス1においてノズル#8で形成したドット間に(すなわち偶数画素に)ドットを形成する。こうして、2回のパスで移動方向に沿ってドットが並ぶドット列(ラスタライン)を形成する。
【0057】
また、図において各パスの移動方向に並んで示されるノズルのうち、水平位置の番号が同じノズルは、偶数画素又は奇数画素に対して、交互にドットを形成する。例えば、パス1におけるノズル#11と、パス5におけるノズル#1は、共に水平位置が「1」である。この場合、ノズル#11とノズル#1は奇数画素に対して交互にドットを形成する。すなわち、パス1におけるノズル#11と、パス5におけるノズル#1は4画素に1画素の割合でドットを形成する。このようなノズルのことを、「POLノズル」と呼ぶ。このようにPOLノズルを使用する場合は、3回のパスでラスタラインを形成することになる(オーバーラップ数M=3)。
【0058】
なお、図6に示すように、ノズル列の端になるほどドットが大きくなる傾向がある。このため、POLノズルとしてノズル列の端部(領域Nt、領域Nb)を用いる場合、POLをノズル列の最も端のノズル(例えばノズル#1とノズル#12)を組み合わせると、そのラスタラインは、領域Ncのノズルで形成したドットよりも大きいドットが多くなり画質の劣化が目立ちやすい。これに対し、本実施形態では、POLノズルとしてノズル列の端部(領域Nt、領域Nb)を用いる場合に、ノズル列の端に近いノズルと、中央部(領域Nc)に近いノズルとを組み合わせて使用するようにしている。例えば、前述したパス1のノズル#11と、パス5のノズル#1の場合、ノズル#11は領域Ncに近いノズルであり、ノズル#1はノズル列の端に近いノズルである。こうすることにより、図6に示すドットのうち、ドット径が最も大きいドットと、次に大きいドット、および、中央部の小さいドットの組み合わせでラスタラインを形成することになり、巨視的に見た場合におけるドットの大きさのばらつきが目立ち難くなる。パス1のノズル#12とパス5のノズル#2などについても同様である。
【0059】
<上端印刷及び下端印刷について>
上記(図8)のような印刷が最初から行われると、一部のラスタラインが連続して形成されないことがある。例えば、図8において、ノズル#1によって形成される1番目のラスタラインと、ノズル#2によって形成される2番目のラスタラインは、搬送方向に連続するラスタラインとして形成されていない。
そこで、コントローラー60は、以下に説明するような「上端印刷」を行うことにより、搬送方向に連続するラスタラインを形成する。
また、上記のような印刷を最後に終えると、一部のラスタラインが連続して形成されないことがある。例えば、図8において、搬送方向上流側のラスタラインは、搬送方向に連続するラスタラインとして形成されていない。そこで、コントローラー60は、以下に説明するような「下端印刷」を行うことにより、搬送方向に連続するラスタラインを形成する。
【0060】
図9は、第1実施形態における上端印刷の説明図である。
図9において、パス1〜パス4までが上端処理であり、パス5以降が通常の印刷処理である。上端処理では各パスの合間の搬送処理における送り量(搬送量)を1(すなわちドットピッチD)としている。また、図において、黒色で示されるノズルは、パスの際に吐出不可に設定されたノズル(インクを吐出しないノズル)である。
なお、図中の「上端印刷領域」とは、媒体に形成される搬送方向最下流のラスタラインから、上端印刷により形成されるラスタラインのうちの搬送方向最上流のラスタラインまでの領域を指す。ここで、上端印刷とは、この上端印刷領域にラスタラインを形成するための印刷のことである。この例の場合、パス1〜パス7までが上端印刷に含まれ、上端印刷領域は17個のラスタラインによる領域となっている。
また、図中の「通常領域」とは、上端印刷領域以降に形成されたラスタラインの領域を指す。この図9の通常領域は、18番目のラスタライン以降の領域である。
【0061】
また、図10は第1実施形態における下端印刷の説明図である。図において、ノズル列等の表記方法は図9と同様であるので説明を省略する。なお、図では、説明の都合上、通常印刷(パス1)から印刷を開始することとしている。
図10において、パス7〜パス10までが下端処理であり、送り量が通常領域での送り量よりも小さくなっている。また、パス1〜パス6が通常の印刷処理である。下端印刷とは、下端印刷領域にラスタラインを形成する印刷のことである。この例の場合、パス3〜パス10までが下端印刷に含まれ、上端印刷領域は20個のラスタラインによる領域となっている。
【0062】
<不吐出ノズルについて>
例えば、図9において、パス1におけるノズル#5とパス5におけるノズル#1は、上端印刷領域の搬送方向下流側から3番目のラスタラインの奇数画素を形成可能である。よって、パス1におけるノズル#5とパス5におけるノズル#1とをPOLノズルとする方法、あるいは、パス1におけるノズル#5を不吐出ノズルにする方法もある。しかしながら本実施形態では、パス5におけるノズル♯1を不吐出ノズルにしている。もし仮に、パス5のノズル#1を用いると、上端処理領域のラスタライン3に形成されるドットの大きさが領域Ncのノズルで形成したドットの大きさよりも大きくなるため画質が劣化してしまうおそれがある(図6参照)。そこで、図のように、本実施形態では、上端印刷において先のパスにおける領域Ncのノズルを優先し、それよりも後のパスにおける領域Ntのノズルを不吐出ノズルとしている。パス2のノズル#7とパス6のノズル#1や、パス3のノズル#9とパス7のノズル#1の場合も同様にノズル#1を不吐出ノズルとしている。こうすることにより、上端処理領域に形成されるドットの大きさを揃えることができ、画質の向上を図ることができる。
【0063】
図10の下端印刷の場合も同様である。例えば、パス3におけるノズル#10とパス7におけるノズル#1は、同じラスタライン(下端印刷領域の最も搬送高校下流側のラスタライン)の偶数画素にドットを形成可能である。この場合においても、先のパス(パス3)における領域Ncのノズル(ノズル#10)を優先し、それよりも後のパス(パス7)における領域Ntのノズル(ノズル#1)を不吐出ノズルとしている。こうすることにより画質の向上を図ることができる。なお、図6からわかるように、ラスタラインを形成する際に、領域Ncのノズルが使用できない場合は、領域Ncにより近いノズルを使用することが望ましい。
【0064】
以上、説明したように、本実施形態のプリンター1は、UVの照射によって硬化するインクを吐出するノズルが搬送方向に複数並んだノズル列を有し、移動方向に移動するキャリッジ21と、ノズル列と対応して搬送方向に沿ってキャリッジ21に設けられ、UVを照射する第1照射部42aを備えている。また、キャリッジ21を移動方向に移動させつつ、ノズル列の各ノズルからインクを吐出させるとともに、媒体に形成されたドットに第1照射部42aからの光を照射させるパスと、媒体を搬送方向に搬送させる搬送動作とを交互に実行するコントローラー60を備えている。キャリッジ21のノズル列は、搬送方向の端部の領域Nt、Nbと、中央部の領域Ncを有しており、パスの際に領域Ncのノズルで形成されたドットに第1照射部42aから照射されるUVの光量ばらつきが、領域Nt、Nbのノズルで形成されたドットに第1照射部42aから照射されるUVの光量ばらつきよりも小さくなっている。
【0065】
このような構成において、コントローラー60は、上端印刷又は下端印刷を行う際に、先のパスにおける領域Ncのノズルを、後のパスにおける領域Nt、Nbのノズルよりも優先して用いている。こうすることにより、上端印刷領域や下端印刷領域に形成されるドット(UV照射後のドット)の大きさのばらつきを低減することができる。よって、画質の向上を図ることができる。
【0066】
===第2実施形態===
第2実施形態では、ノズル列のノズル数、及び、パスの際に使用するノズルが第1実施形態と異なる。
図11は、第2実施形態における通常印刷の説明図である。第2実施形態においてもフルオーバーラップ印刷で印刷を行う。ただし、図に示すように、第2実施形態では、ノズル列のノズル数は14(#1〜#14)である。第1実施形態と同様に、図において四角で示されるノズルは、ノズル列の端部(領域Nt、領域Nb)のノズルであり、丸で示されるノズルは、ノズル列の中央部(領域Nc)のノズルである。第2実施形態では領域Ntはノズル#1〜#4、領域Ncはノズル#5〜#10、領域Nbはノズル#11〜#14となっている。なお、第2実施形態においても、領域Nt及び領域Nbでは、ノズル列の端に近づくほどUVの照度が低くなる。つまり、UV照射後におけるドット径はノズル列の端に近づくほど大きくなる。これに対し、領域NcではUV照射後のドット径はほぼ均一である。
【0067】
図11においてノズル列等の表記方法については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。第2実施形態においても、コントローラー60は、領域Ntと領域NbのノズルでPOLノズルを構成する場合に、ノズル列の中央に近いノズルと、ノズル列の端に近いノズルを組み合わせで使用するようにしている。例えば、パス1におけるノズル#11(領域Nbのうちノズル列の中央に近いノズル)と、パス5におけるノズル#1(領域Ntのうちノズル列の端に近いノズル)をPOLノズルとして用いている。パス1におけるノズル#12とパス5におけるノズル#2などについても同様である。もし仮に、領域Ntの端のノズルと領域Nbの端のノズルでPOLノズルを構成するようにすると、そのPOLノズルで形成されるラスタラインにドット径の大きいドットが増加するため画質の劣化が目立ちやすくなる。そこで上述したように領域Ntと領域NbでPOLノズルを構成する場合に、ノズル列の中央に近いノズルと、ノズル列の端に近いノズルを組み合わせることで、画質の劣化を抑えることができる。
【0068】
図12は、第2実施形態における上端印刷の説明図である。
図12において、パス1〜パス4までが上端処理であり、パス5以降が通常の印刷処理である。上端処理では各パスの合間の搬送処理における送り量(搬送量)を1(すなわちドットピッチD)としている。また、図において、黒色で示されるノズルは、パスの際に吐出不可に設定されたノズル(インクを吐出しないノズル)である。
【0069】
第2実施形態では、図の上端印刷領域にラスタラインを形成する上端印刷にはパス1〜パス7までが含まれ、上端印刷領域は13個のラスタラインによる領域となっている。また、通常印刷は14番目のラスタライン以降の領域である。
第2実施形態においても、コントローラー60は、上端印刷の際に、後のパスにおける領域Nt、Nbのノズルよりも、先のパスにおける領域Ncのノズルを優先して用いるようにしている。例えば、パス1におけるノズル#6とパス5におけるノズル#2は、上端印刷領域の最も搬送方向下流側のラスタラインの奇数画素を形成可能である。この場合、先のパス(パス1)における領域Ncのノズル(ノズル#6)を優先し、それよりも後のパス(パス5)における領域Ntのノズル(ノズル#2)を不吐出ノズルとしている。その他の場合も同様である。こうすることにより、上端印刷領域に形成されるドットの大きさのばらつきを低減することができ、画質の向上を図ることができる。
【0070】
さらに、コントローラー60は、ラスタラインを構成する際に領域Ncのノズルを使用できない場合は、領域Nt又は領域Nbのノズルのうち領域Ncに近い方(すなわち照度分布の勾配の低い方)のノズルを優先して用いる。例えば、パス3におけるノズル#11(領域Nb)と、パス7におけるノズル#3(領域Nt)は、上端印刷領域の最も搬送方向の上流側のラスタラインの偶数画素を形成可能である。この場合、コントローラー60は、領域Ncに近いノズルを優先して用いる。図からわかるように、ノズル#11とノズル#3とでは、ノズル#11の方が領域Ncに近い。よって、コントローラー60は、パス3におけるノズル#11を優先し、パス7におけるノズル#3を不吐出ノズルとしている。
【0071】
また、コントローラー60は、上端印刷領域のみではなく、通常領域においても同様の処理を行う。例えば、パス4におけるノズル#11(領域Nb)と、パス8におけるノズル#1(領域Nt)は、通常領域の最も搬送方向の下流側のラスタラインの奇数画素を形成可能である。この場合においても、コントローラー60は、領域Ncに近いノズルを優先して用いる。図からわかるように、ノズル#11とノズル#1とでは、ノズル#11の方が領域Ncに近い。よって、コントローラー60は、パス4におけるノズル#11を優先し、パス8におけるノズル#1を不吐出ノズルとしている。
また、図13は第2実施形態における下端印刷の説明図である。なお、図では、説明の都合上、通常印刷(パス1)から印刷を開始するようにしている。
【0072】
図13において、パス6〜パス9までが下端処理であり、送り量が通常領域での送り量よりも小さくなっている。また、パス1〜パス5が通常の印刷処理である。
この場合においても、コントローラー60は、前述した場合と同様に、下端印刷の際に後のパスの領域Nt、Nbのノズルよりも、先のパスの領域Ncのノズルを優先して用いる。また、ラスタラインを構成するのに領域Ncのノズルを使用できない場合は、領域Nt又は領域Nbのノズルのうち領域Ncに近い方(すなわち照度分布の勾配の低い方)のノズルを優先して用いる。こうすることにより、第2実施形態においても画質の向上を図ることができる。
【0073】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0074】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、装置の一例としてプリンターが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。
【0075】
<ヘッドについて>
前述の実施形態では、キャリッジ21に一つのヘッド31が設けられていたがこれには限られず、キャリッジ21に複数のヘッド31が設けられていてもよい。この場合、複数のヘッド31の各ノズル列によるドット形成範囲に、UVを照射できるように第1照射部42a、42bを設けるようにすればよい。また、本実施形態では単方向印刷であったが、双方向印刷を行うようにしてもいい。この場合、復路のパスの際に第1照射部42bを用いるようにすればよい。
【0076】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0077】
<インクについて>
前述の実施形態は、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化するインク(UVインク)をノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出する液体は、このようなインクに限られるものではなく、UV以外の他の光(例えば可視光線など)の照射を受けることによって硬化する液体をノズルから吐出しても良い。この場合、各照射部から、その液体を硬化させるための光(可視光線など)を照射するようにすればよい。
【0078】
<照射部について>
前述した実施形態では単方向印刷を行うこととしていたが、双方向印刷を行うようにしてもよい。この場合、キャリッジ21(ヘッド31)の移動方向に応じて、使用する照射部(第1照射部42a又は第1照射部42b)を切り替えるようにすればよい。
【0079】
また、前述した実施形態では、キャリッジ21における移動方向の両端にそれぞれ第1照射部42aと第1照射部42bが設けられているが、何れか一方であってもよい。この場合、ヘッド31の移動方向の下流側に第1照射部を設けていると、ドット形成直後に、仮硬化のUV照射を行うことができる。
【0080】
また、前述した実施形態では、第2照射部44を設けて仮硬化後のドットに本硬化のUV照射を行っていたが、第1照射部42a、42bで本硬化を行ってもよい。例えば、キャリッジ21が移動方向に往復する際に第1照射部42a、42bからUVを照射する(すなわち、仮硬化のUV照射を2回行う)ことでドットを完全に硬化させるようにしてもよい。あるいは、第1照射部42a、42bのUV照射エネルギーを強めて1回のUV照射で完全にドットを硬化させるようにしてもよい。なお、このように第1照射部42a、42bでドットを完全に硬化させるようにした場合、第2照射部44を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 プリンター、10 搬送ユニット、11 給紙ローラー、
13 搬送ローラー、14 プラテン、15 排紙ローラー、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
40 照射ユニット、42a,42b 第1照射部、44 第2照射部、
50 検出器群、53 紙検出センサー、54 光学センサー、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、
63 メモリー、64 ユニット制御回路、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射によって硬化する液体を吐出するノズルが媒体の搬送方向に複数並んだノズル列を有し、前記搬送方向と交差する移動方向に移動するキャリッジと、
前記ノズル列と対応して前記搬送方向に沿って前記キャリッジに設けられ、光を照射する照射部と、
前記キャリッジを前記移動方向に移動させつつ、前記ノズル列の各ノズルから前記液体を吐出させるとともに、媒体に形成されたドットに前記照射部からの光を照射させる吐出照射動作と、媒体を前記搬送方向に搬送させる搬送動作とを交互に実行するコントローラーと、
を備えた液体吐出装置であって、
前記ノズル列は、前記搬送方向の端部と、前記端部よりも前記搬送方向の内側の中央部であって、吐出照射動作の際に当該中央部のノズルで形成されたドットに前記照射部から照射される光量ばらつきが、前記端部のノズルで形成されたドットに前記照射部から照射される光量ばらつきよりも小さい中央部とを有し、
前記コントローラーは、上端印刷又は下端印刷を行う際に、第一の吐出照射動作における前記中央部のノズルを、前記第一の吐出照射動作よりも後の第二の吐出照射動作における前記端部のノズルよりも優先して用いる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記ノズル列の前記端部は、前記中央部からの距離が所定値の第一ノズルと、前記中央部からの距離が前記所定値よりも大きい第二ノズルとを有し、
前記第二ノズルによって形成されたドットに前記照射部から照射される光量は、前記第一ノズルによって形成されたドットに前記照射部から照射される光量よりも小さい
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記移動方向にドットが並ぶ所定ドット列を、複数回の前記吐出照射動作によって形成する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置であって、
前記第一ノズルは前記ノズル列の前記搬送方向の一方の端部に設けられ、前記第二ノズルは前記ノズル列の前記搬送方向の他方の端部に設けられており、
前記コントローラーは、前記所定ドット列を形成する際に、前記第一ノズル、又は、前記第二ノズルを使用可能である場合、前記第一ノズルを優先して用いる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の液体吐出装置であって、
前記第一ノズルは前記ノズル列の前記搬送方向の一方の端部に設けられ、前記第二ノズルは前記ノズル列の前記搬送方向の他方の端部に設けられており、
前記コントローラーは、前記第一ノズル及び前記第二ノズルを用いて前記所定ドット列を形成する
ことを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−228793(P2012−228793A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97396(P2011−97396)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】