液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、及び、液体噴射装置
【課題】ヘッド固定部材に対して位置精度良く取り付けることが可能な液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、及び、液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ヘッドケース56は、サブキャリッジ26に固定されるフランジ部61a,61bを、流路ユニット53が接合されるケース本体60を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれ突出し、ケース本体と流路ユニットとの接合面から外れた表面のうち、少なくともフランジ部の表面には、防湿コーティング層84が形成された。
【解決手段】ヘッドケース56は、サブキャリッジ26に固定されるフランジ部61a,61bを、流路ユニット53が接合されるケース本体60を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれ突出し、ケース本体と流路ユニットとの接合面から外れた表面のうち、少なくともフランジ部の表面には、防湿コーティング層84が形成された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置に用いられる液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、及び、液体噴射装置に関し、特に、ヘッド固定部材に対して複数の液体噴射ヘッドを着脱可能に取り付けることが可能な液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、及び、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、ディスプレイ製造装置などの各種の製造装置にも応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
近年、上記プリンターには、ノズルを複数列設してなるノズル列を有する記録ヘッドをサブキャリッジなどのヘッド固定部材に複数並べて固定したものを1つのヘッドユニットとする構成(マルチヘッド型)を採用するものがある。そして、サブキャリッジに対して各記録ヘッドが位置決めされた状態でネジ留めされる構成においては、位置決めの後、ネジ留めの前に、記録ヘッドをサブキャリッジに対して接着剤(例えば、瞬間接着剤)によって仮留することが行われている。これにより、ネジ留めにより本固定するときにネジ留め時の回転モーメントにより記録ヘッドの位置がずれることが防止される。このような接着剤による仮留を採用する場合、一旦サブキャリッジに固定された記録ヘッドを修理或いは交換するために取り外すことが困難となる。このような問題に対し、記録ヘッドとサブキャリッジの間にスペーサーと呼ばれる仲介部材を介在させる構成も提案されている(例えば、特許文献1)。この構成によれば、記録ヘッドにスペーサーをネジ留めにより予め固定しておき、スペーサーとサブキャリッジとの間を接着剤で仮留してからスペーサーとサブキャリッジとをネジ留めにより本固定することで、サブキャリッジに一旦固定された記録ヘッドは、スペーサーとの間のネジの締結を解除することにより、スペーサー及びサブキャリッジから取り外すことができる。これにより、記録ヘッドの交換や修理等による記録ヘッドの着脱が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−90327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した記録ヘッドは、共通インク室(共通液体室)から圧力室を通ってノズルに至るまでの一連のインク流路を備え、圧電振動子等の圧力発生素子を作動させて圧力室内のインク(液体)に圧力変動を生じさせることにより、この圧力変動を利用して圧力室内のインクをノズルからインク滴として吐出(噴射)可能に構成されている。そして、この記録ヘッドには、圧電振動子群を固定板に接合したアクチュエーターユニット(振動子ユニット)と、このアクチュエーターユニットを個別に収納可能な収容室をアクチュエーターユニット毎に形成した樹脂製のヘッドケースと、上記インク流路を形成する流路ユニットとを備えた構成を採るものがある。
【0006】
上記のヘッドケースは、例えば、流路ユニットが接合されるケース本体を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれフランジ部を突出させており、各フランジ部を金属製のサブキャリッジに対して位置決めした状態で固定されている。しかしながら、樹脂製のヘッドケースは、位置調整がミクロン単位で緻密に調整されていることを考えると、空気中の水分を吸湿した際の寸法の変化が、位置調整の緻密さに比べて激しい。このため、ヘッドケースがサブキャリッジに固定された状態で吸湿などによって膨潤した場合、記録ヘッドの位置精度が低下することがあった。特に、ヘッドユニットにおけるノズルの相対位置がずれてしまった場合には、ノズルから噴射される液体の記録媒体等に対する着弾位置が望ましい位置からずれてしまう可能性がある。その結果、例えば記録媒体に記録された画像の画質が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッド固定部材に対して位置精度良く取り付けることが可能な液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、及び、液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ノズルが開設されたノズル形成基板と当該ノズルに連通する圧力室が形成された流路形成基板とを有する流路ユニット、および、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を樹脂製のヘッドケースに取り付けて構成され、前記圧力発生手段を駆動させることで前記圧力室内の液体を前記ノズルから噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記ヘッドケースは、ヘッド固定部材に固定されるフランジ部を、前記流路ユニットが接合されるケース本体を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれ突出し、前記ケース本体と前記流路ユニットとの接合面から外れた表面のうち、少なくとも前記フランジ部の表面には、防湿コーティング層が形成されたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ヘッドケースは、ヘッド固定部材に固定されるフランジ部を、流路ユニットが接合されるケース本体を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれ突出し、ケース本体と流路ユニットとの接合面から外れた表面のうち、少なくともフランジ部の表面には、防湿コーティング層が形成されたので、吸湿によってフランジ部が膨潤することが抑制され、ヘッド固定部材に対して固定される液体噴射ヘッドの位置精度の低下が防止される。また、防湿コーティング層はフランジ部の表面のみに選択的に形成されることにより、例えば、ケース本体の流路ユニットとの接合面などの接着剤による接着が必要な部分に防湿コーティング層が形成されないので、接着固定する際の接着強度の低下を防止することできる。
【0010】
上記構成において、前記ケース本体の内部には、金属製の補強材が配設された構成を採用することが望ましい。
【0011】
上記構成によれば、ケース本体の内部には、金属製の補強材が配設されたので、ケース本体の変形を抑制することができ、ヘッド固定部材に対する液体噴射ヘッドの位置精度を向上させることができる。更にいうならば、ケース本体には、流路形成基板(シリコン)や、固定板(SUS等からなるPZT取付板)も貼り付けられ、ケース本体の変形が抑制されている。また、補強材の一部がヘッドケース成型時の支持部としてケース本体から露出していたとしても、ケース本体を避けたフランジ部の表面に防湿コーティング層が形成されることにより、補強材の支持部にコーティング液が付着し、付着したコーティング液が補強材を伝ってヘッドケース内に浸透することを抑制することができる。これにより、ヘッドケース内に浸透したコーティング液がアクチュエーターユニット等に付着することで故障が生じる不具合を防止することができる。
【0012】
上記構成において、前記ヘッドケースの両側のフランジ部は、前記ヘッドケースと同じ材料から作製された仲介部材を介在させた状態で前記ヘッド固定部材に固定され、
前記仲介部材の表面には、防湿コーティング層が形成された構成を採用することが望ましい。
【0013】
上記構成によれば、ヘッドケースの両側のフランジ部は、ヘッドケースと同じ材料から作製された仲介部材を介在させた状態でヘッド固定部材に固定され、仲介部材の表面には、防湿コーティング層が形成されたので、仲介部材を用いる構成においても吸湿によって仲介部材が膨潤することが抑制され、液体噴射ヘッドにおけるノズルの位置精度の低下が防止される。
【0014】
上記構成において、前記防湿コーティング層が、導電性を有する金属メッキである構成を採用することが望ましい。
【0015】
上記構成によれば、防湿コーティング層が、導電性を有する金属メッキであるので、ヘッドケースが静電気などに帯電したとしても、防湿コーティング層を介してヘッド固定部材側に逃がすことができる。
【0016】
上記構成において、前記防湿コーティング層が、撥水性を有するフッ素系のコーティング剤である構成を採用することが望ましい。
【0017】
上記構成によれば、防湿コーティング層が、撥水性を有するフッ素系のコーティング剤であるので、ノズルから噴射されたミスト状の液体等がフランジ部に付着することを抑制することができる。
【0018】
また、本発明の液体噴射ヘッドユニットは、上記各構成の液体噴射ヘッドと、当該液体噴射ヘッドが固定されるヘッド固定部材と、を備え、該ヘッド固定部材が前記ヘッドケースの素材よりも吸湿による膨張率が低い素材から構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、湿度の変化に起因する液体噴射ヘッドユニットにおけるノズルの相対位置精度の低下が抑制されるので、着弾対象に対する液体の着弾位置精度の低下が防止される。これにより、液体噴射ヘッドユニットの信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の液体噴射装置は、上記構成の液体噴射ヘッドユニットを備えることを特徴とする。
この構成によれば、湿度の変化に起因する液体の着弾位置精度の低下が防止されるので、液体噴射装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プリンターの内部構成の一部を示す斜視図である。
【図2】プリンターの内部構成の一部を示す平面図である。
【図3】キャリッジの上面図である。
【図4】キャリッジの右側面図である。
【図5】ヘッドユニットの斜視図である。
【図6】ヘッドユニットの上面図である。
【図7】ヘッドユニットの下面図である。
【図8】ヘッドユニットの右側面図である。
【図9】ヘッドユニットの下面側の斜視図である。
【図10】サブキャリッジの構成を説明する下面図である。
【図11】記録ヘッドの構成を説明する斜視図である。
【図12】記録ヘッドの構成を説明する下面図である。
【図13】記録ヘッドの構成を説明する右側面図である。
【図14】図12におけるA−A線断面図である。
【図15】図12におけるB−B線断面図である。
【図16】図15における領域Cの拡大図である。
【図17】サブキャリッジに固定された記録ヘッドの構成をより簡略化して示した断面図である。
【図18】流路ユニットの構成を説明する分解斜視図である。
【図19】フランジ部のコーティング工程を説明する図である。
【図20】他の実施形態におけるサブキャリッジに固定された記録ヘッドの構成をより簡略化して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0022】
図1はプリンター1の内部構成の一部を示す斜視図、図2はプリンター1の平面図である。例示したプリンター1は、記録用紙、布、フィルム等の記録媒体(着弾対象)に向けて、液体の一種であるインクを噴射する。このプリンター1は、フレーム2の内部にキャリッジ3(ヘッドユニット保持部材の一種)を、記録媒体の送り方向に交差する方向である主走査方向に往復移動可能に搭載している。プリンター1の背面側のフレーム2の内壁には、当該フレーム2の長手方向に沿って長尺な上下一対のガイドロッド4a,4bが互いに間隔を空けて平行に取り付けられている。キャリッジ3は、その背面側に設けられた軸受け部7(図4参照)等にガイドロッド4a,4bが嵌合することで、これらのガイドロッド4a,4bに対して摺動可能に支持されている。
【0023】
フレーム2の背面側であって主走査方向の一端側(図2における右端部)には、キャリッジ3を移動させるための駆動源としてのキャリッジモーター8が配設されている。このキャリッジモーター8の駆動軸は、フレーム2の背面側から内面側に突出しており、その先端部分には、駆動プーリー(図示せず)が接続されている。この駆動プーリーは、キャリッジモーター8の駆動により回転される。また、この駆動プーリーに対して主走査方向における反対側(図2における左端部)の位置には、遊転プーリー(図示せず)が設けられている。これらのプーリーには、タイミングベルト9が架け渡されている。このタイミングベルト9には、キャリッジ3が接続されている。そして、キャリッジモーター8が駆動されると、駆動プーリーの回転に伴ってタイミングベルト9が回動し、キャリッジ3がガイドロッド4a,4bに沿って主走査方向に移動する。
【0024】
フレーム2の背面の内壁には、リニアスケール10(エンコーダーフィルム)が、主走査方向に沿ってガイドロッド4a,4bと平行に張設されている。リニアスケール10は、透明な樹脂製フィルムによって作製された帯状(バンド状)部材であり、例えば、透明なベースフィルムの表面に帯幅方向を横断する不透明なストライプが複数印刷されたものである。各ストライプは、同じ幅とされ、帯長手方向に一定ピッチで形成されている。また、キャリッジ3の背面側には、このリニアスケール10のストライプを光学的に読み取るためのリニアエンコーダーが設けられている(図示せず)。このリニアエンコーダーは位置情報出力手段の一種であり、キャリッジ3の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力する。これにより、プリンターの制御部(図示せず)は、エンコーダーパルスに基づいてキャリッジ3の走査位置を認識しながら、ヘッドユニット17による記録媒体に対する記録動作を制御することができる。そして、プリンター1は、主走査方向の一端側のホームポジションから反対側の端部(フルポジション)へ向けてキャリッジ3が移動する往動時と、フルポジションからホームポジション側にキャリッジ3が戻る復動時との双方向で記録紙上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録処理が可能に構成されている。
【0025】
図2に示すように、キャリッジ3には、ヘッドユニット17の各記録ヘッド18に各色のインクを供給するためのインク供給チューブ14と、駆動信号等の信号を供給するための信号ケーブル15が接続されている。その他、プリンター1には、図示しないが、インクを貯留したインクカートリッジ(液体供給源)が着脱可能に取り付けられるカートリッジ装着部、記録紙を搬送する搬送部、待機状態の記録ヘッド18のノズル形成面58(図11参照)をキャッピングするキャッピング部等が設けられている。
【0026】
図3はキャリッジ3の平面(上面)図、図4はキャリッジ3の右側面図である。なお、図3は、キャリッジカバー13が外された状態を図示している。キャリッジ3は、後述するヘッドユニット17(本発明における液体噴射ヘッドユニットの一種。)を内部に搭載するキャリッジ本体12と、このキャリッジ本体12の上部開口を塞ぐキャリッジカバー13とから成り、上下に分割可能な中空箱体状の部材である。キャリッジ本体12は、略矩形状の底板部12aと、当該底板部12aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した側壁部12bとから成り、これらの底板部12a及び側壁部12bに囲まれた空間内にヘッドユニット17を収容する。底板部12aには、収容されたヘッドユニット17の各記録ヘッド18のノズル形成面58を露出させるための底部開口が開設されている。そして、ヘッドユニット17をキャリッジ本体12内に収容した状態では、底板部12aの底部開口から各記録ヘッド18のノズル形成面58が、キャリッジ本体12の底部よりも下方(記録動作時における記録媒体側)に突出する。
【0027】
図5はヘッドユニット17の斜視図であり、(a)は流路部材24が取り付けられた状態、(b)は流路部材24が外された状態をそれぞれ示している。また、図6はヘッドユニット17の上面図、図7はヘッドユニット17の下面図(流路部材24が外された状態)、図8はヘッドユニット17の右側面図、図9はヘッドユニット17の下面側の斜視図である。さらに、図10は記録ヘッド18が取り付けられるサブキャリッジ26の下面図である。
【0028】
ヘッドユニット17は、複数の記録ヘッド18等をユニット化したものであり、これらの記録ヘッド18が取り付けられるサブキャリッジ26(本発明におけるヘッド固定部材の一種)と、流路部材24と、を備えている。サブキャリッジ26は、記録ヘッド18が固定される板状のベース部26aと、このベース部26aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した起立壁部26bと、から上面が開口した中空箱体状に形成されている。これらのベース部26aと四方の起立壁部26bとから囲まれた空間が、記録ヘッド18の少なくとも一部(主にサブタンク37)を収容する収容部として機能する。本実施形態のサブキャリッジ26は、金属、例えばアルミニウムにより作製されており、キャリッジ本体12やキャリッジカバー13と比較して剛性が高められている。なお、サブキャリッジ26の材料としては、金属には限られず、ガラス、セラミックス、ガラスフィラー入りの樹脂などの膨潤し難い(ヘッドケースの素材(エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂)よりも吸湿による膨張率が低い)素材を採用することも可能である。
【0029】
サブキャリッジ26のベース部26aの略中央部分には、複数の記録ヘッド18を挿通可能な(即ち、各記録ヘッド18に共通な1つの)ヘッド挿通開口28が開設されている。このためベース部26aは、四方の辺部から成る額縁状の枠体となっている。このベース部26aの下面(記録時の記録媒体に対向する側の面)には、各記録ヘッド18の取り付け位置に対応して、ヘッド取付部40が複数横並びに設けられている(図10参照)。本実施形態において、ヘッド取付部40は、1つの記録ヘッド18の取り付け位置に対して、ヘッド挿通開口28を間に挟んでノズル列方向に対応する方向(ヘッド列設方向に直交する方向)の両側の辺部に、後述する記録ヘッド18におけるヘッドケース56に突出した状態で設けられた一対のフランジ部61a,61bに対応してそれぞれ1つずつ、合計2箇所設けられている。
【0030】
ヘッド取付部40は、平面視においてヘッド挿通開口28側から反対の外側に向かって幅が狭くなる略ベース状に形成されており、その下面(記録時の記録媒体に対向する側の面)は、記録ヘッド18のフランジ部61を載置するヘッド載置面41として機能する。このため、一対のヘッド取付部40におけるヘッド載置面41の形状および寸法に関して、より高い精度が要求される。特に、このヘッド載置面41は、必要なネジ穴(後述する止着穴29および補助止着穴44等)以外に凹凸が無く平面度が確保されていることが望ましい。
【0031】
また、サブキャリッジ26におけるベース部26aの下面におけるヘッド取付部40よりも外側には、ヘッド載置面41から反対側(図10において紙面の奥向き)に窪ませて形成された溝部42が設けられている。即ち、ヘッド取付部40は、その両側に設けられた溝部42によって独立した島状に形成されており、ベース部26aから下方(記録動作時における記録媒体側であって、当該ヘッド載置面41に固定される記録ヘッド18のフランジ部61側)に向けて突出している。このように、ヘッド取付部40は、記録ヘッド18のフランジ部61に対して突出した島状に形成されているので、サブキャリッジ26の製造時において、当該ヘッド取付部40(ヘッド載置面41)の形状・寸法を重点的に管理することで、当該ヘッド取付部40に取り付けられる記録ヘッド18の位置精度を高めることができる。
【0032】
これらの各ヘッド取付部40には、止着穴29が開設されている(図10,18参照)。本実施形態において、止着穴29は、ヘッド取付部40におけるノズル列方向の中央であってヘッド挿通開口28寄りに、後述する記録ヘッド18におけるフランジ部61のヘッド固定穴62に対応して設けられている。
【0033】
本実施形態においては、図7及び図9に示すように、第1の記録ヘッド18a、第2の記録ヘッド18b、第3の記録ヘッド18c、第4の記録ヘッド18d、及び第5の記録ヘッド18eの合計5つの記録ヘッド18が、後述するサブタンク37をヘッド挿通開口28の下方から挿通させて収容部内に収容した状態で、ノズル列に直交する方向に横並びで、ベース部26aにそれぞれ固定される。
【0034】
図5,6等に示すように、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bのうちの3つには、側方に向けてフランジ部30が突設されている。フランジ部30には、キャリッジ本体12の底板部12aのヘッドユニット17の取り付け位置に開設された図示しない3箇所の取り付けネジ穴に対応して、挿通穴31がそれぞれ開設されている。そして、キャリッジ本体12の底板部12aの各取り付けネジ穴に、それぞれ対応する挿通穴31の位置を合わせた状態で、ヘッドユニット固定ネジ22(図3参照)を、挿通穴31を通じて取り付けネジ穴に止着することで、キャリッジ本体12内部にヘッドユニット17が収容・固定される。また、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bの上端面には、流路部材24を固定するための固定ネジ穴33が合計4箇所設けられている。
【0035】
流路部材24は、上下方向が薄い箱体状の部材であり、例えば、合成樹脂により作製される。この流路部材24の内部には、各記録ヘッド18のサブタンク37(後述)の流路接続部38にそれぞれ対応した各色のインク分配流路(図示せず)が区画形成されている。この流路部材24の上面(サブキャリッジ26に固定される側の面とは反対側の面)には、チューブ接続部34が設けられている。図6に示すように、このチューブ接続部34の内部には、各色のインクに対応した導入口39が複数設けられている。各導入口39は、それぞれ対応する色のインク分配流路に連通している。そして、チューブ接続部34に上記のインク供給チューブ14が接続されると、インク供給チューブ14内の各色のインク供給路と、それぞれ対応する導入口39とが液密状態で連通する。これにより、インクカートリッジ側からインク供給チューブ14を通じて送られてきた各色のインクが、導入口39を通じて流路部材24内のインク分配流路にそれぞれ導入される。また、流路部材24の下面において各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38に対応する位置には図示しない接続流路が設けられている。各接続流路は、各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結されるように構成されている。さらに、流路部材24の四隅には、サブキャリッジ26の固定ネジ穴33に対応する流路挿通穴(図示せず)が、それぞれ板厚方向を貫通した状態で形成されている。流路部材24がサブキャリッジ26に固定される際に、流路止着ネジ45が流路挿通穴を通じて固定ネジ穴33に止着(螺合)される。そして、流路部材24内部のインク分配流路を通ったインクは、接続流路と流路接続部38を介して各記録ヘッド18のサブタンク37に供給される。
【0036】
図11は記録ヘッド18(液体噴射ヘッドの一種)の構成を説明する斜視図である。図12は記録ヘッド18の下面図である。図13は記録ヘッド18の右側面図である。図14は図12におけるA−A線断面図である。図15は図12におけるB−B線断面図である。図16は図15における領域Cの拡大図である。なお、図11乃至図15では、カバー部材28を取り外した状態の記録ヘッド18を示している。また、基本的な構造等は各記録ヘッド18で共通であるため、サブキャリッジ26に取り付けられる5つの記録ヘッド18のうちの1つを代表として示している。図17はサブキャリッジ26に固定された記録ヘッド18の構成をより簡略化して示した断面図である。さらに、図18は流路ユニット53の構成を説明する分解斜視図である。
【0037】
記録ヘッド18は、ノズル51に連通する圧力室52(図18参照)を含むインク流路を形成する流路ユニット53や、圧力室52内のインクに圧力変動を生じさせる圧電振動子54(本発明における圧力発生手段の一種。何れも図16等参照)等を有する振動子ユニット55をヘッドケース56に備えている。本実施形態における記録ヘッド18は、平面視においてノズル列方向に長尺である一方、ノズル列57に直交する幅方向に短尺な形状に形成されている。そして、この記録ヘッド18は、プリンター1の制御部側からの駆動信号を圧電振動子54に印加して圧電振動子54を駆動することにより、ノズル51からインクを噴射して記録紙等の記録媒体に着弾させる記録動作を行うように構成されている。各記録ヘッド18のノズル形成面58には、インクを噴射するノズル51が複数列設されてノズル列57(ノズル群)が構成され、このノズル列57がノズル列に直交する方向に2列並べて形成されている。1つのノズル列57は、例えば360dpiのピッチで開設された360個のノズルから成る。
【0038】
ヘッドケース56は、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂によって成型された中空箱体状部材であり、その先端側には、ノズル形成面58を露出させた状態で流路ユニット53が固定されている。なお、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂は、成型での精度および機械的剛性に優れているが、吸湿により寸法変化しやすい。また、ヘッドケース56の内部に対となるノズル列57それぞれに対応して形成された収容空部59A,59B内には圧電振動子54などを有する一対の振動子ユニット55A,55Bが、圧電振動子54側を互いに向かい合わせた状態でそれぞれ収容され、先端面とは反対側の基端面側(上面側)には、流路ユニット53側にインクを供給するためのサブタンク37が装着されている。
【0039】
また、ヘッドケース56の上面側におけるノズル列方向の両側には、ヘッドケース56の本体部となるケース本体60を間に挟んで両側からそれぞれ側方(外側)に向けて突出したフランジ部61がそれぞれ形成されている。このフランジ部61には、図17等に示すように、サブキャリッジ26のヘッド取付部40における止着穴29に対応して、ヘッド固定穴62(62a,62b)がそれぞれ開設されている。両側のフランジ部61a,61bをサブキャリッジ26のヘッド取付部40にそれぞれ固定する際に、各フランジ部61a,61bをサブキャリッジ26のヘッド取付部40におけるヘッド載置面41に重ねた状態で、このヘッド固定穴62にヘッド固定ボルト27aの軸部が挿通され、このヘッド固定ボルト27aをヘッド固定ナット27bに螺合することよって、記録ヘッド18がサブキャリッジ26に固定される。
【0040】
このヘッド固定穴62は、フランジ部61において、両側のフランジ部61a,61bの並び方向に直交する方向(サブキャリッジ26のヘッド取付部40との締結箇所同士の並び方向またはノズル列に直交する方向)であるフランジ幅方向の中央部に、フランジ部61の厚さ方向を貫通した状態で形成されている。両側のフランジ部61a,61bのヘッド固定穴62のうちの一方(図12における右側)のヘッド固定穴62aは、図12,14等に示すように、平面視において丸穴形状の貫通穴であり、その内径はヘッド固定ボルト27aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、この一方のヘッド固定穴62aは、ヘッド固定ボルト27aの軸部を円滑に挿通することが可能であり、尚かつ、両者の間にガタツキが生じ難いように構成されている。これに対し、他方(図12における左側)のヘッド固定穴62bは、平面視においてこれらの対となるヘッド固定穴62a,62bの並び方向(ノズル列方向)に長尺な長穴となっている。この他方のヘッド固定穴62bの取付穴並び方向の内径(長径)はヘッド固定ボルト27aの軸部の外径よりも十分に大きく設定されており、取付穴並び方向に直交するフランジ幅方向の内径(短径)は一方のヘッド固定穴62aの内径に揃えられている。このように、両側のフランジ部61a,61bのヘッド固定穴62a,62bのうちの一方を丸穴とし、他方を長穴とすることにより、両フランジ部61a,61bをサブキャリッジ26のヘッド取付部40に対してネジ留めする際に、サブキャリッジ26側の止着穴29の間隔とヘッド固定穴62a,62bの間隔との誤差が、長穴の長径の範囲内で許容される。
【0041】
また、ケース本体60の内部には、金属プレート63(本発明における補強材の一種)がインサート成型により埋設されている。具体的には、本発明におけるヘッドケース56には、図14乃至図17に示すように、その高さ方向を貫通した収容空部59が複数形成されており、隣り合う収容空部59A,59B同士を区画する隔壁64内に金属プレート63が埋設されている。即ち、ノズル列同士の間隔を小さくしてヘッドのコンパクト化を図るために隔壁64を厚くすることはできないため、ヘッドケース56の成型時に、隔壁64内に金属プレート63を埋設することでこの金属プレート63によって隔壁64を補強することによりヘッドケース56の剛性低下が抑制されている。なお、金属プレート63は、その長手方向をノズル列方向に沿った状態で配設されており、両端部を成型時の支持部としてケース本体60から露出させている(図11,12等参照)。
【0042】
そして、このヘッドケース56の先端面側には、図9等に示すように、流路ユニット53やノズル形成面58の周縁部を記録紙等の接触から保護するカバー部材65が取り付けられる。このカバー部材65は、ステンレス鋼などの導電性を有する薄手の金属板で作製されている。本実施形態におけるカバー部材65は、中央部分に開口窓部66が開設された額縁状のフレーム部65aと、ヘッドケース56への取付け状態でフレーム部65aのノズル列方向両側の縁部からヘッドケース56の側面に沿ってそれぞれ延出した側板部65bと、により概略構成されている。各側板部65bの先端部は、フランジ部61に沿う形となるように外側に向けて屈曲されており、カバー止着ネジ67(図7及び図8参照)によって各フランジ部61a,61bに形成されたカバー止着穴68にそれぞれネジ留めされている。このカバー部材65は、流路ユニット53やノズル形成面58の周縁部を保護する機能以外に、ノズル形成面58を接地電位に調整する機能も有している。
【0043】
上記サブタンク37は、図14等に示すように、流路部材24からのインクを記録ヘッド18の圧力室52側に導入する部材である。サブタンク37は、内部の圧力変動に応じてバルブ69を開閉し、圧力室52側へのインクの導入を制御する自己封止機能を有している。このサブタンク37の後端面(上面)におけるノズル列方向の両端部に、上記流路部材24の接続流路が接続される流路接続部38が設けられている。この流路接続部38にはリング状のパッキン70が嵌め込まれており、このパッキン70により流路部材24との液密性が確保される。また、サブタンク37の内部には、圧電振動子54に駆動信号を供給するための駆動基板が設けられている(図示せず)。サブタンク37の後端面の中央部の開口内には、当該駆動基板にフレキシブルケーブル(配線部材の一種。図示せず)を電気的に接続するコネクター71が配設されている。
【0044】
次に、上記の流路ユニット53について説明する。流路ユニット53は、図18に示すように、ノズルプレート72(本発明におけるノズル形成基板に相当)、流路形成基板73、及び振動板74を順次積層した状態で接着剤等によってヘッドケース56の先端面に接合されている。
【0045】
流路ユニット53の底部に配置されるノズルプレート72は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば、360dpi)で複数のノズル51を列状に開設した薄い金属板である。本実施形態のノズルプレート72は、ステンレス鋼製の板材によって作製され、ノズル51の列(ノズル列57)がノズル列に直交する方向に2列並べて形成されている(図18では、一対のノズル列57のうち1列分を示す)。
【0046】
流路形成基板73は、ノズルプレート72と振動板74との間に配置される部材であり、共通液体室の一種である共通インク室75、インク供給口76、圧力室52等のインク流路となる空部を隔壁で区画した状態で各ノズル51に対応させて複数ノズル列方向に沿って列状に形成した板状の部材である。この流路形成基板73は、例えば、シリコンウェハーをエッチング処理することによって作製される。上記の圧力室52は、ノズル列方向(主走査方向)に対して直交する方向(副走査方向)に細長い室として形成されている。そして、各圧力室52は、ノズル列57に沿って形成された後述する圧電振動子54毎に対応した位置に配される。なお、本発明における流路形成基板73は、シリコンで作製するが、ステンレス鋼やニッケル等の金属の基板などをプレス加工することで作製しても良い。
【0047】
振動板74は、流路形成基板73とヘッドケース56との間に配置される板材であり、ステンレス鋼等の金属製の支持板77上に弾性フィルム78をラミネート加工した二重構造の複合板である。この振動板74の圧力室52に対応する部分には、エッチングなどによって支持板77を環状に除去することで、圧電振動子54の自由端の先端面を接合するための島部79が形成されており、この部分はダイヤフラム部として機能する。即ち、この振動板74は、圧電振動子54の作動に応じて島部79の周囲の弾性フィルム78が弾性変形するように構成されている。
【0048】
次に振動子ユニット55について説明する。なお、ヘッドケース56内に配置される一対の振動子ユニット55A,55Bの基本的な構成は同様であるので、以下では一方の振動子ユニット55のみを例に挙げて説明する。振動子ユニット55は、図16に示すように、櫛歯状の圧電素子群80と、この圧電素子群80の基端部分が接合される固定板81と、圧電素子群80に駆動信号を供給するためのCOF(Chip On Film)やTCP(Tape Carrier Package)などのフレキシブルケーブル82とにより構成される。
【0049】
圧電素子群80は、ノズル列方向に沿って列状に並べて形成された複数本の圧電振動子54を備える。これらの各圧電振動子54は、例えば、50μm〜100μm程度の極めて細い幅の櫛歯状に切り分けられ、360本設けられる。また、圧電素子群80は、自由端部を固定板81の先端面よりも外側(先方の圧力室側)に突出させることで、所謂片持ち梁の状態で固定板81上に支持されている。これらの各圧電振動子54は、流路ユニット53の圧力室52の形成ピッチと同じピッチで切り分けられており、1つの圧力室52(図18参照)に対して1つずつ対応するように構成されている。
【0050】
一方、圧電素子群80を支持する固定板81は、圧電素子群80からの反力を受け止め得る剛性を備えた金属製の板状部材であり、本実施形態においては、ステンレス鋼を用いている。フレキシブルケーブル82は、一端側が電極(図示せず)に、他端側が圧電素子群80に電気的に接続されており、電気信号を圧電振動子54に送る信号ケーブルである。このフレキシブルケーブル82の表面には、各圧電振動子54の駆動等を制御するための制御用IC83が実装されている。
【0051】
ここで、上記したように、本発明におけるヘッドケース56は樹脂製である一方、サブキャリッジ26はアルミニウム製等の金属製である。一般的に樹脂は金属製と比べて吸水率が高い。つまり、アルミニウム製のサブキャリッジ26に比べて、ヘッドケース56、特にフランジ部61は、空気中の水分等を吸湿することによって膨潤する度合いが大きい。特に、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂は、成型での精度および機械的剛性に優れているが、吸湿により寸法変化しやすい。このフランジ部61は、サブキャリッジ26に固定される部分であるため、サブキャリッジ26に固定された状態のヘッドケース56が吸湿によって膨潤すると、記録ヘッド18の位置精度が低下する虞がある。
【0052】
上記の問題に鑑み、本発明に係る記録ヘッド18におけるヘッドケース56のフランジ部61の表面には、防湿コーティング層84が形成されている。本実施形態において、フランジ部61には、導電性を有するクロムや金からなる金属メッキが施されることで、防湿コーティング層84が形成されている。つまり、樹脂製のヘッドケース56の表面のうち、流路ユニット53が接合されるケース本体60の表面には防湿コーティング層が形成されておらず樹脂が露出する一方、流路ユニット53との前記接合面から外れた表面のうち少なくともフランジ部61の表面は防湿コーティング層84によって覆われている。なお、ケース本体60の側面に防湿コーティング層を形成しても良い。
【0053】
図19は、フランジ部61のコーティング工程を説明する図である。
次に、フランジ部61の表面に防湿コーティング層84を形成するコーティング工程について説明する。図19に示すように、コーティング液85(例えば、クロムを溶解させたクロムメッキ溶液)を貯留した電解槽86の上面側の開口から、樹脂成型されたヘッドケース56を、予め表面に導電化処理が施された両フランジ部61a、61bのうちの一方側(例えばフランジ部61a)を下方に向けた状態で下降させて侵入させる。そして、下方側に位置するフランジ部61aの全体がコーティング液85に浸かる位置(ケース本体60の手前)でヘッドケース56の下降を停止する。これにより、ヘッドケース56のうち一方のフランジ部61aの表面にコーティング液85が付着する。そして、ヘッドケース56を電解槽86内から上昇させ、フランジ部61aの表面に付着したコーティング液85を固化させる。コーティング液85の固化後に、ヘッドケース56を上下反転させて、他方のフランジ部61bについても同様に防湿コーティング層84を形成することで、ヘッドケース56の表面のうち、ケース本体60を避けた両側のフランジ部61a,61bの表面に膜状の防湿コーティング層84が形成される。なお、フランジ部61の表面にメッキにより防湿コーティング層84を形成する方法としては、上記の電解メッキの他、無電解メッキや真空蒸着などを採用することもできる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のヘッドケース56は、金属製のサブキャリッジ26に固定されるフランジ部61a,61bの表面に防湿コーティング層84が形成されているので、吸湿によるフランジ部61の膨潤を抑制することができる。これにより、プリンター1が使用される環境下で湿度が上昇した場合においても、サブキャリッジ26に固定される記録ヘッド18の位置精度の低下が防止される。これにより、ノズル51から噴射されるインクの着弾位置精度の低下を抑制することができる。また、防湿コーティング層84がヘッドケース56の表面のうちフランジ部61の表面のみに選択的に形成されることにより、ケース本体60の流路ユニット53との接合面などの接着剤による接着が必要な部分に防湿コーティング層84が形成されないので、接着固定する際の接合面における接着強度を確保することできる。この結果、記録ヘッド18の信頼性を向上させることができる。
【0055】
ケース本体60の内部には、金属製の金属プレート63が配設されたので、ケース本体60の変形を抑制することができ、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の位置精度を向上させることができる。また、金属プレート63の端部がヘッドケース56成型時の支持部としてケース本体60から露出していたとしても、ケース本体60を避けたフランジ部61の表面に防湿コーティング層が形成されることにより、金属プレート63の露出部分(支持部)にコーティング液85が付着し、付着したコーティング液85が金属プレート63を伝ってヘッドケース56内に浸透することを抑制することができる。これにより、ヘッドケース56内に浸透したコーティング液85が振動子ユニット55やその他の電子部品に分着することで故障が生じる不具合を防止することができる。その結果、記録ヘッド18の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0056】
また、防湿コーティング層84が導電性を有するので、例えば、ノズルプレート72が静電気に帯電したとしても、この静電気を、防湿コーティング層84を介してサブキャリッジ26側に逃がすことができる。つまり、防湿コーティング層84をサブキャリッジ26に導通させて接地することができる。
【0057】
また、本実施形態のヘッドユニット17は、上記した記録ヘッド18と、当該記録ヘッド18が固定される金属製のサブキャリッジ26と、を備えているので、各記録ヘッド18におけるノズル51の相対位置精度が向上し、記録媒体に対するインクの着弾位置精度を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態のプリンター1は、上記したヘッドユニット17を備えているので、記録ヘッド18におけるノズル51の位置精度が向上し、記録媒体に対するインクの着弾位置精度を向上させることができる。その結果、プリンター1の信頼性を向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0060】
図20は、他の実施形態におけるサブキャリッジ26に固定された記録ヘッド18の構成をより簡略化して示した断面図である。
本実施形態におけるヘッドケース56におけるフランジ部61(即ち、記録ヘッド18)とサブキャリッジ26とは、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂によって成型されたスペーサー88(本発明における仲介部材の一種)を介在させた状態で固定されており、スペーサー88は、ヘッドケース56と同じ材料から作製され、その表面には、防湿コーティング層89が形成されている。具体的には、本実施形態におけるサブキャリッジ26における各ヘッド取付部40には、止着穴29のノズル列方向の両側であってヘッド挿通開口28とは反対側に、本実施形態においては使用されない補助止着穴90(図10参照)がノズル列方向に直交する方向(ヘッド列設方向)に横並びにそれぞれ2つずつ設けられている。スペーサー88は、平面視においてサブキャリッジ26におけるヘッド取付部40と同形状の略べース状に形成されている。スペーサー88には、各補助止着穴90に対応してヘッド固定ナット27aを収容固定するサブキャリッジ用挿通穴91が横並びに設けられ、記録ヘッド28のフランジ部61におけるヘッド固定穴62に対応してスペーサー固定ナット92bを収容固定するスペーサー固定用挿通穴93が設けられている。
【0061】
このようなスペーサー88を介在させた状態で記録ヘッド18をサブキャリッジ26に組付けるには、まず、フランジ部61にスペーサー88を重ねた状態で位置決めし、この位置決め状態でフランジ部61側からヘッド固定穴62に挿入したスペーサー固定ボルト92aをスペーサー固定用挿通穴91内に収容固定されたスペーサー固定ナット92bに螺合することで、フランジ部61にスペーサー88を固定する。次に、スペーサー88におけるフランジ部61に固定した面とは反対側の面を、サブキャリッジ26のヘッド取付部40におけるヘッド載置面41に載置させた状態で位置決めし、この位置決め状態で、スペーサー88とヘッド載置面41との間に接着剤が流し込まれて接着(仮固定)される。接着剤が硬化した後、サブキャリッジ26側から補助止着穴90に挿入したヘッド固定ボルト27aをサブキャリッジ用挿通穴91内に収容固定されたヘッド固定ナット27bに螺合することで、スペーサー88とサブキャリッジ26とが固定され、これにより、スペーサー88を介した状態で記録ヘッド18がサブキャリッジ26に固定される。
【0062】
このように、スペーサー88を用いる構成においても、当該スペーサー88の表面に防湿コーティング層89を形成することで、吸湿によってスペーサー88が膨潤することを抑制することができ、湿度の上昇に起因するノズル51の位置精度の低下を防止することができる。また、上記のように、スペーサー88をサブキャリッジ26に接着する構成において、記録ヘッド18とスペーサー88とのネジ締結を解除することによって、記録ヘッド18を取り外すことができ、記録ヘッド18の交換やメンテナンスが容易となる。
【0063】
また、前述した実施形態におけるフランジ部61の防湿コーティング層84は、フランジ部61の表面に施された導電性を有するクロムや金からなる金属メッキであったが、本発明における防湿コーティング層84は、撥水性を有するフッ素コーティング剤等の撥水膜であっても良い。このようにフランジ部61の表面に撥水性を有する防湿コーティング層84を形成することで、ノズル51から噴射されたミスト状のインク等がヘッドケース56の表面に付着しても、付着したインクがヘッドケース56における流路ユニット53とは反対側に配置される回路基板等の電子部品側にフランジ部61を伝って回り込むことが防止される。
【0064】
また、前述した実施形態では、ヘッドケース56が樹脂製であって、サブキャリッジ26がアルミニウム製である例を挙げたが、本発明のヘッドケース56とサブキャリッジ26の材質は上記した材質に限定されない。サブキャリッジ26よりもヘッドケース56の吸水率が大きい程、サブキャリッジ26に対するヘッドケース56の吸湿による膨潤が大きくなるため、本発明を適用することで上記したフランジ部61の膨潤に対する抑制効果を高めることができる。
【0065】
そして、以上では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、ヘッド固定部材に対して液体噴射ヘッドが固定される構成を採用する他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,ごく少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…プリンター,17…ヘッドユニット,18…記録ヘッド,26…サブキャリッジ,51…ノズル,52…圧力室,53…流路ユニット,54…圧電振動子,56…ヘッドケース,60…ケース本体,61…フランジ部,63…金属プレート,72…ノズルプレート,73…流路形成基板,84…防湿コーティング層,88…スペーサー,89…防湿コーティング層
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置に用いられる液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、及び、液体噴射装置に関し、特に、ヘッド固定部材に対して複数の液体噴射ヘッドを着脱可能に取り付けることが可能な液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、及び、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、ディスプレイ製造装置などの各種の製造装置にも応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
近年、上記プリンターには、ノズルを複数列設してなるノズル列を有する記録ヘッドをサブキャリッジなどのヘッド固定部材に複数並べて固定したものを1つのヘッドユニットとする構成(マルチヘッド型)を採用するものがある。そして、サブキャリッジに対して各記録ヘッドが位置決めされた状態でネジ留めされる構成においては、位置決めの後、ネジ留めの前に、記録ヘッドをサブキャリッジに対して接着剤(例えば、瞬間接着剤)によって仮留することが行われている。これにより、ネジ留めにより本固定するときにネジ留め時の回転モーメントにより記録ヘッドの位置がずれることが防止される。このような接着剤による仮留を採用する場合、一旦サブキャリッジに固定された記録ヘッドを修理或いは交換するために取り外すことが困難となる。このような問題に対し、記録ヘッドとサブキャリッジの間にスペーサーと呼ばれる仲介部材を介在させる構成も提案されている(例えば、特許文献1)。この構成によれば、記録ヘッドにスペーサーをネジ留めにより予め固定しておき、スペーサーとサブキャリッジとの間を接着剤で仮留してからスペーサーとサブキャリッジとをネジ留めにより本固定することで、サブキャリッジに一旦固定された記録ヘッドは、スペーサーとの間のネジの締結を解除することにより、スペーサー及びサブキャリッジから取り外すことができる。これにより、記録ヘッドの交換や修理等による記録ヘッドの着脱が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−90327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した記録ヘッドは、共通インク室(共通液体室)から圧力室を通ってノズルに至るまでの一連のインク流路を備え、圧電振動子等の圧力発生素子を作動させて圧力室内のインク(液体)に圧力変動を生じさせることにより、この圧力変動を利用して圧力室内のインクをノズルからインク滴として吐出(噴射)可能に構成されている。そして、この記録ヘッドには、圧電振動子群を固定板に接合したアクチュエーターユニット(振動子ユニット)と、このアクチュエーターユニットを個別に収納可能な収容室をアクチュエーターユニット毎に形成した樹脂製のヘッドケースと、上記インク流路を形成する流路ユニットとを備えた構成を採るものがある。
【0006】
上記のヘッドケースは、例えば、流路ユニットが接合されるケース本体を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれフランジ部を突出させており、各フランジ部を金属製のサブキャリッジに対して位置決めした状態で固定されている。しかしながら、樹脂製のヘッドケースは、位置調整がミクロン単位で緻密に調整されていることを考えると、空気中の水分を吸湿した際の寸法の変化が、位置調整の緻密さに比べて激しい。このため、ヘッドケースがサブキャリッジに固定された状態で吸湿などによって膨潤した場合、記録ヘッドの位置精度が低下することがあった。特に、ヘッドユニットにおけるノズルの相対位置がずれてしまった場合には、ノズルから噴射される液体の記録媒体等に対する着弾位置が望ましい位置からずれてしまう可能性がある。その結果、例えば記録媒体に記録された画像の画質が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッド固定部材に対して位置精度良く取り付けることが可能な液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、及び、液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ノズルが開設されたノズル形成基板と当該ノズルに連通する圧力室が形成された流路形成基板とを有する流路ユニット、および、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を樹脂製のヘッドケースに取り付けて構成され、前記圧力発生手段を駆動させることで前記圧力室内の液体を前記ノズルから噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記ヘッドケースは、ヘッド固定部材に固定されるフランジ部を、前記流路ユニットが接合されるケース本体を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれ突出し、前記ケース本体と前記流路ユニットとの接合面から外れた表面のうち、少なくとも前記フランジ部の表面には、防湿コーティング層が形成されたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ヘッドケースは、ヘッド固定部材に固定されるフランジ部を、流路ユニットが接合されるケース本体を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれ突出し、ケース本体と流路ユニットとの接合面から外れた表面のうち、少なくともフランジ部の表面には、防湿コーティング層が形成されたので、吸湿によってフランジ部が膨潤することが抑制され、ヘッド固定部材に対して固定される液体噴射ヘッドの位置精度の低下が防止される。また、防湿コーティング層はフランジ部の表面のみに選択的に形成されることにより、例えば、ケース本体の流路ユニットとの接合面などの接着剤による接着が必要な部分に防湿コーティング層が形成されないので、接着固定する際の接着強度の低下を防止することできる。
【0010】
上記構成において、前記ケース本体の内部には、金属製の補強材が配設された構成を採用することが望ましい。
【0011】
上記構成によれば、ケース本体の内部には、金属製の補強材が配設されたので、ケース本体の変形を抑制することができ、ヘッド固定部材に対する液体噴射ヘッドの位置精度を向上させることができる。更にいうならば、ケース本体には、流路形成基板(シリコン)や、固定板(SUS等からなるPZT取付板)も貼り付けられ、ケース本体の変形が抑制されている。また、補強材の一部がヘッドケース成型時の支持部としてケース本体から露出していたとしても、ケース本体を避けたフランジ部の表面に防湿コーティング層が形成されることにより、補強材の支持部にコーティング液が付着し、付着したコーティング液が補強材を伝ってヘッドケース内に浸透することを抑制することができる。これにより、ヘッドケース内に浸透したコーティング液がアクチュエーターユニット等に付着することで故障が生じる不具合を防止することができる。
【0012】
上記構成において、前記ヘッドケースの両側のフランジ部は、前記ヘッドケースと同じ材料から作製された仲介部材を介在させた状態で前記ヘッド固定部材に固定され、
前記仲介部材の表面には、防湿コーティング層が形成された構成を採用することが望ましい。
【0013】
上記構成によれば、ヘッドケースの両側のフランジ部は、ヘッドケースと同じ材料から作製された仲介部材を介在させた状態でヘッド固定部材に固定され、仲介部材の表面には、防湿コーティング層が形成されたので、仲介部材を用いる構成においても吸湿によって仲介部材が膨潤することが抑制され、液体噴射ヘッドにおけるノズルの位置精度の低下が防止される。
【0014】
上記構成において、前記防湿コーティング層が、導電性を有する金属メッキである構成を採用することが望ましい。
【0015】
上記構成によれば、防湿コーティング層が、導電性を有する金属メッキであるので、ヘッドケースが静電気などに帯電したとしても、防湿コーティング層を介してヘッド固定部材側に逃がすことができる。
【0016】
上記構成において、前記防湿コーティング層が、撥水性を有するフッ素系のコーティング剤である構成を採用することが望ましい。
【0017】
上記構成によれば、防湿コーティング層が、撥水性を有するフッ素系のコーティング剤であるので、ノズルから噴射されたミスト状の液体等がフランジ部に付着することを抑制することができる。
【0018】
また、本発明の液体噴射ヘッドユニットは、上記各構成の液体噴射ヘッドと、当該液体噴射ヘッドが固定されるヘッド固定部材と、を備え、該ヘッド固定部材が前記ヘッドケースの素材よりも吸湿による膨張率が低い素材から構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、湿度の変化に起因する液体噴射ヘッドユニットにおけるノズルの相対位置精度の低下が抑制されるので、着弾対象に対する液体の着弾位置精度の低下が防止される。これにより、液体噴射ヘッドユニットの信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の液体噴射装置は、上記構成の液体噴射ヘッドユニットを備えることを特徴とする。
この構成によれば、湿度の変化に起因する液体の着弾位置精度の低下が防止されるので、液体噴射装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プリンターの内部構成の一部を示す斜視図である。
【図2】プリンターの内部構成の一部を示す平面図である。
【図3】キャリッジの上面図である。
【図4】キャリッジの右側面図である。
【図5】ヘッドユニットの斜視図である。
【図6】ヘッドユニットの上面図である。
【図7】ヘッドユニットの下面図である。
【図8】ヘッドユニットの右側面図である。
【図9】ヘッドユニットの下面側の斜視図である。
【図10】サブキャリッジの構成を説明する下面図である。
【図11】記録ヘッドの構成を説明する斜視図である。
【図12】記録ヘッドの構成を説明する下面図である。
【図13】記録ヘッドの構成を説明する右側面図である。
【図14】図12におけるA−A線断面図である。
【図15】図12におけるB−B線断面図である。
【図16】図15における領域Cの拡大図である。
【図17】サブキャリッジに固定された記録ヘッドの構成をより簡略化して示した断面図である。
【図18】流路ユニットの構成を説明する分解斜視図である。
【図19】フランジ部のコーティング工程を説明する図である。
【図20】他の実施形態におけるサブキャリッジに固定された記録ヘッドの構成をより簡略化して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0022】
図1はプリンター1の内部構成の一部を示す斜視図、図2はプリンター1の平面図である。例示したプリンター1は、記録用紙、布、フィルム等の記録媒体(着弾対象)に向けて、液体の一種であるインクを噴射する。このプリンター1は、フレーム2の内部にキャリッジ3(ヘッドユニット保持部材の一種)を、記録媒体の送り方向に交差する方向である主走査方向に往復移動可能に搭載している。プリンター1の背面側のフレーム2の内壁には、当該フレーム2の長手方向に沿って長尺な上下一対のガイドロッド4a,4bが互いに間隔を空けて平行に取り付けられている。キャリッジ3は、その背面側に設けられた軸受け部7(図4参照)等にガイドロッド4a,4bが嵌合することで、これらのガイドロッド4a,4bに対して摺動可能に支持されている。
【0023】
フレーム2の背面側であって主走査方向の一端側(図2における右端部)には、キャリッジ3を移動させるための駆動源としてのキャリッジモーター8が配設されている。このキャリッジモーター8の駆動軸は、フレーム2の背面側から内面側に突出しており、その先端部分には、駆動プーリー(図示せず)が接続されている。この駆動プーリーは、キャリッジモーター8の駆動により回転される。また、この駆動プーリーに対して主走査方向における反対側(図2における左端部)の位置には、遊転プーリー(図示せず)が設けられている。これらのプーリーには、タイミングベルト9が架け渡されている。このタイミングベルト9には、キャリッジ3が接続されている。そして、キャリッジモーター8が駆動されると、駆動プーリーの回転に伴ってタイミングベルト9が回動し、キャリッジ3がガイドロッド4a,4bに沿って主走査方向に移動する。
【0024】
フレーム2の背面の内壁には、リニアスケール10(エンコーダーフィルム)が、主走査方向に沿ってガイドロッド4a,4bと平行に張設されている。リニアスケール10は、透明な樹脂製フィルムによって作製された帯状(バンド状)部材であり、例えば、透明なベースフィルムの表面に帯幅方向を横断する不透明なストライプが複数印刷されたものである。各ストライプは、同じ幅とされ、帯長手方向に一定ピッチで形成されている。また、キャリッジ3の背面側には、このリニアスケール10のストライプを光学的に読み取るためのリニアエンコーダーが設けられている(図示せず)。このリニアエンコーダーは位置情報出力手段の一種であり、キャリッジ3の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力する。これにより、プリンターの制御部(図示せず)は、エンコーダーパルスに基づいてキャリッジ3の走査位置を認識しながら、ヘッドユニット17による記録媒体に対する記録動作を制御することができる。そして、プリンター1は、主走査方向の一端側のホームポジションから反対側の端部(フルポジション)へ向けてキャリッジ3が移動する往動時と、フルポジションからホームポジション側にキャリッジ3が戻る復動時との双方向で記録紙上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録処理が可能に構成されている。
【0025】
図2に示すように、キャリッジ3には、ヘッドユニット17の各記録ヘッド18に各色のインクを供給するためのインク供給チューブ14と、駆動信号等の信号を供給するための信号ケーブル15が接続されている。その他、プリンター1には、図示しないが、インクを貯留したインクカートリッジ(液体供給源)が着脱可能に取り付けられるカートリッジ装着部、記録紙を搬送する搬送部、待機状態の記録ヘッド18のノズル形成面58(図11参照)をキャッピングするキャッピング部等が設けられている。
【0026】
図3はキャリッジ3の平面(上面)図、図4はキャリッジ3の右側面図である。なお、図3は、キャリッジカバー13が外された状態を図示している。キャリッジ3は、後述するヘッドユニット17(本発明における液体噴射ヘッドユニットの一種。)を内部に搭載するキャリッジ本体12と、このキャリッジ本体12の上部開口を塞ぐキャリッジカバー13とから成り、上下に分割可能な中空箱体状の部材である。キャリッジ本体12は、略矩形状の底板部12aと、当該底板部12aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した側壁部12bとから成り、これらの底板部12a及び側壁部12bに囲まれた空間内にヘッドユニット17を収容する。底板部12aには、収容されたヘッドユニット17の各記録ヘッド18のノズル形成面58を露出させるための底部開口が開設されている。そして、ヘッドユニット17をキャリッジ本体12内に収容した状態では、底板部12aの底部開口から各記録ヘッド18のノズル形成面58が、キャリッジ本体12の底部よりも下方(記録動作時における記録媒体側)に突出する。
【0027】
図5はヘッドユニット17の斜視図であり、(a)は流路部材24が取り付けられた状態、(b)は流路部材24が外された状態をそれぞれ示している。また、図6はヘッドユニット17の上面図、図7はヘッドユニット17の下面図(流路部材24が外された状態)、図8はヘッドユニット17の右側面図、図9はヘッドユニット17の下面側の斜視図である。さらに、図10は記録ヘッド18が取り付けられるサブキャリッジ26の下面図である。
【0028】
ヘッドユニット17は、複数の記録ヘッド18等をユニット化したものであり、これらの記録ヘッド18が取り付けられるサブキャリッジ26(本発明におけるヘッド固定部材の一種)と、流路部材24と、を備えている。サブキャリッジ26は、記録ヘッド18が固定される板状のベース部26aと、このベース部26aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した起立壁部26bと、から上面が開口した中空箱体状に形成されている。これらのベース部26aと四方の起立壁部26bとから囲まれた空間が、記録ヘッド18の少なくとも一部(主にサブタンク37)を収容する収容部として機能する。本実施形態のサブキャリッジ26は、金属、例えばアルミニウムにより作製されており、キャリッジ本体12やキャリッジカバー13と比較して剛性が高められている。なお、サブキャリッジ26の材料としては、金属には限られず、ガラス、セラミックス、ガラスフィラー入りの樹脂などの膨潤し難い(ヘッドケースの素材(エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂)よりも吸湿による膨張率が低い)素材を採用することも可能である。
【0029】
サブキャリッジ26のベース部26aの略中央部分には、複数の記録ヘッド18を挿通可能な(即ち、各記録ヘッド18に共通な1つの)ヘッド挿通開口28が開設されている。このためベース部26aは、四方の辺部から成る額縁状の枠体となっている。このベース部26aの下面(記録時の記録媒体に対向する側の面)には、各記録ヘッド18の取り付け位置に対応して、ヘッド取付部40が複数横並びに設けられている(図10参照)。本実施形態において、ヘッド取付部40は、1つの記録ヘッド18の取り付け位置に対して、ヘッド挿通開口28を間に挟んでノズル列方向に対応する方向(ヘッド列設方向に直交する方向)の両側の辺部に、後述する記録ヘッド18におけるヘッドケース56に突出した状態で設けられた一対のフランジ部61a,61bに対応してそれぞれ1つずつ、合計2箇所設けられている。
【0030】
ヘッド取付部40は、平面視においてヘッド挿通開口28側から反対の外側に向かって幅が狭くなる略ベース状に形成されており、その下面(記録時の記録媒体に対向する側の面)は、記録ヘッド18のフランジ部61を載置するヘッド載置面41として機能する。このため、一対のヘッド取付部40におけるヘッド載置面41の形状および寸法に関して、より高い精度が要求される。特に、このヘッド載置面41は、必要なネジ穴(後述する止着穴29および補助止着穴44等)以外に凹凸が無く平面度が確保されていることが望ましい。
【0031】
また、サブキャリッジ26におけるベース部26aの下面におけるヘッド取付部40よりも外側には、ヘッド載置面41から反対側(図10において紙面の奥向き)に窪ませて形成された溝部42が設けられている。即ち、ヘッド取付部40は、その両側に設けられた溝部42によって独立した島状に形成されており、ベース部26aから下方(記録動作時における記録媒体側であって、当該ヘッド載置面41に固定される記録ヘッド18のフランジ部61側)に向けて突出している。このように、ヘッド取付部40は、記録ヘッド18のフランジ部61に対して突出した島状に形成されているので、サブキャリッジ26の製造時において、当該ヘッド取付部40(ヘッド載置面41)の形状・寸法を重点的に管理することで、当該ヘッド取付部40に取り付けられる記録ヘッド18の位置精度を高めることができる。
【0032】
これらの各ヘッド取付部40には、止着穴29が開設されている(図10,18参照)。本実施形態において、止着穴29は、ヘッド取付部40におけるノズル列方向の中央であってヘッド挿通開口28寄りに、後述する記録ヘッド18におけるフランジ部61のヘッド固定穴62に対応して設けられている。
【0033】
本実施形態においては、図7及び図9に示すように、第1の記録ヘッド18a、第2の記録ヘッド18b、第3の記録ヘッド18c、第4の記録ヘッド18d、及び第5の記録ヘッド18eの合計5つの記録ヘッド18が、後述するサブタンク37をヘッド挿通開口28の下方から挿通させて収容部内に収容した状態で、ノズル列に直交する方向に横並びで、ベース部26aにそれぞれ固定される。
【0034】
図5,6等に示すように、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bのうちの3つには、側方に向けてフランジ部30が突設されている。フランジ部30には、キャリッジ本体12の底板部12aのヘッドユニット17の取り付け位置に開設された図示しない3箇所の取り付けネジ穴に対応して、挿通穴31がそれぞれ開設されている。そして、キャリッジ本体12の底板部12aの各取り付けネジ穴に、それぞれ対応する挿通穴31の位置を合わせた状態で、ヘッドユニット固定ネジ22(図3参照)を、挿通穴31を通じて取り付けネジ穴に止着することで、キャリッジ本体12内部にヘッドユニット17が収容・固定される。また、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bの上端面には、流路部材24を固定するための固定ネジ穴33が合計4箇所設けられている。
【0035】
流路部材24は、上下方向が薄い箱体状の部材であり、例えば、合成樹脂により作製される。この流路部材24の内部には、各記録ヘッド18のサブタンク37(後述)の流路接続部38にそれぞれ対応した各色のインク分配流路(図示せず)が区画形成されている。この流路部材24の上面(サブキャリッジ26に固定される側の面とは反対側の面)には、チューブ接続部34が設けられている。図6に示すように、このチューブ接続部34の内部には、各色のインクに対応した導入口39が複数設けられている。各導入口39は、それぞれ対応する色のインク分配流路に連通している。そして、チューブ接続部34に上記のインク供給チューブ14が接続されると、インク供給チューブ14内の各色のインク供給路と、それぞれ対応する導入口39とが液密状態で連通する。これにより、インクカートリッジ側からインク供給チューブ14を通じて送られてきた各色のインクが、導入口39を通じて流路部材24内のインク分配流路にそれぞれ導入される。また、流路部材24の下面において各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38に対応する位置には図示しない接続流路が設けられている。各接続流路は、各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結されるように構成されている。さらに、流路部材24の四隅には、サブキャリッジ26の固定ネジ穴33に対応する流路挿通穴(図示せず)が、それぞれ板厚方向を貫通した状態で形成されている。流路部材24がサブキャリッジ26に固定される際に、流路止着ネジ45が流路挿通穴を通じて固定ネジ穴33に止着(螺合)される。そして、流路部材24内部のインク分配流路を通ったインクは、接続流路と流路接続部38を介して各記録ヘッド18のサブタンク37に供給される。
【0036】
図11は記録ヘッド18(液体噴射ヘッドの一種)の構成を説明する斜視図である。図12は記録ヘッド18の下面図である。図13は記録ヘッド18の右側面図である。図14は図12におけるA−A線断面図である。図15は図12におけるB−B線断面図である。図16は図15における領域Cの拡大図である。なお、図11乃至図15では、カバー部材28を取り外した状態の記録ヘッド18を示している。また、基本的な構造等は各記録ヘッド18で共通であるため、サブキャリッジ26に取り付けられる5つの記録ヘッド18のうちの1つを代表として示している。図17はサブキャリッジ26に固定された記録ヘッド18の構成をより簡略化して示した断面図である。さらに、図18は流路ユニット53の構成を説明する分解斜視図である。
【0037】
記録ヘッド18は、ノズル51に連通する圧力室52(図18参照)を含むインク流路を形成する流路ユニット53や、圧力室52内のインクに圧力変動を生じさせる圧電振動子54(本発明における圧力発生手段の一種。何れも図16等参照)等を有する振動子ユニット55をヘッドケース56に備えている。本実施形態における記録ヘッド18は、平面視においてノズル列方向に長尺である一方、ノズル列57に直交する幅方向に短尺な形状に形成されている。そして、この記録ヘッド18は、プリンター1の制御部側からの駆動信号を圧電振動子54に印加して圧電振動子54を駆動することにより、ノズル51からインクを噴射して記録紙等の記録媒体に着弾させる記録動作を行うように構成されている。各記録ヘッド18のノズル形成面58には、インクを噴射するノズル51が複数列設されてノズル列57(ノズル群)が構成され、このノズル列57がノズル列に直交する方向に2列並べて形成されている。1つのノズル列57は、例えば360dpiのピッチで開設された360個のノズルから成る。
【0038】
ヘッドケース56は、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂によって成型された中空箱体状部材であり、その先端側には、ノズル形成面58を露出させた状態で流路ユニット53が固定されている。なお、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂は、成型での精度および機械的剛性に優れているが、吸湿により寸法変化しやすい。また、ヘッドケース56の内部に対となるノズル列57それぞれに対応して形成された収容空部59A,59B内には圧電振動子54などを有する一対の振動子ユニット55A,55Bが、圧電振動子54側を互いに向かい合わせた状態でそれぞれ収容され、先端面とは反対側の基端面側(上面側)には、流路ユニット53側にインクを供給するためのサブタンク37が装着されている。
【0039】
また、ヘッドケース56の上面側におけるノズル列方向の両側には、ヘッドケース56の本体部となるケース本体60を間に挟んで両側からそれぞれ側方(外側)に向けて突出したフランジ部61がそれぞれ形成されている。このフランジ部61には、図17等に示すように、サブキャリッジ26のヘッド取付部40における止着穴29に対応して、ヘッド固定穴62(62a,62b)がそれぞれ開設されている。両側のフランジ部61a,61bをサブキャリッジ26のヘッド取付部40にそれぞれ固定する際に、各フランジ部61a,61bをサブキャリッジ26のヘッド取付部40におけるヘッド載置面41に重ねた状態で、このヘッド固定穴62にヘッド固定ボルト27aの軸部が挿通され、このヘッド固定ボルト27aをヘッド固定ナット27bに螺合することよって、記録ヘッド18がサブキャリッジ26に固定される。
【0040】
このヘッド固定穴62は、フランジ部61において、両側のフランジ部61a,61bの並び方向に直交する方向(サブキャリッジ26のヘッド取付部40との締結箇所同士の並び方向またはノズル列に直交する方向)であるフランジ幅方向の中央部に、フランジ部61の厚さ方向を貫通した状態で形成されている。両側のフランジ部61a,61bのヘッド固定穴62のうちの一方(図12における右側)のヘッド固定穴62aは、図12,14等に示すように、平面視において丸穴形状の貫通穴であり、その内径はヘッド固定ボルト27aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、この一方のヘッド固定穴62aは、ヘッド固定ボルト27aの軸部を円滑に挿通することが可能であり、尚かつ、両者の間にガタツキが生じ難いように構成されている。これに対し、他方(図12における左側)のヘッド固定穴62bは、平面視においてこれらの対となるヘッド固定穴62a,62bの並び方向(ノズル列方向)に長尺な長穴となっている。この他方のヘッド固定穴62bの取付穴並び方向の内径(長径)はヘッド固定ボルト27aの軸部の外径よりも十分に大きく設定されており、取付穴並び方向に直交するフランジ幅方向の内径(短径)は一方のヘッド固定穴62aの内径に揃えられている。このように、両側のフランジ部61a,61bのヘッド固定穴62a,62bのうちの一方を丸穴とし、他方を長穴とすることにより、両フランジ部61a,61bをサブキャリッジ26のヘッド取付部40に対してネジ留めする際に、サブキャリッジ26側の止着穴29の間隔とヘッド固定穴62a,62bの間隔との誤差が、長穴の長径の範囲内で許容される。
【0041】
また、ケース本体60の内部には、金属プレート63(本発明における補強材の一種)がインサート成型により埋設されている。具体的には、本発明におけるヘッドケース56には、図14乃至図17に示すように、その高さ方向を貫通した収容空部59が複数形成されており、隣り合う収容空部59A,59B同士を区画する隔壁64内に金属プレート63が埋設されている。即ち、ノズル列同士の間隔を小さくしてヘッドのコンパクト化を図るために隔壁64を厚くすることはできないため、ヘッドケース56の成型時に、隔壁64内に金属プレート63を埋設することでこの金属プレート63によって隔壁64を補強することによりヘッドケース56の剛性低下が抑制されている。なお、金属プレート63は、その長手方向をノズル列方向に沿った状態で配設されており、両端部を成型時の支持部としてケース本体60から露出させている(図11,12等参照)。
【0042】
そして、このヘッドケース56の先端面側には、図9等に示すように、流路ユニット53やノズル形成面58の周縁部を記録紙等の接触から保護するカバー部材65が取り付けられる。このカバー部材65は、ステンレス鋼などの導電性を有する薄手の金属板で作製されている。本実施形態におけるカバー部材65は、中央部分に開口窓部66が開設された額縁状のフレーム部65aと、ヘッドケース56への取付け状態でフレーム部65aのノズル列方向両側の縁部からヘッドケース56の側面に沿ってそれぞれ延出した側板部65bと、により概略構成されている。各側板部65bの先端部は、フランジ部61に沿う形となるように外側に向けて屈曲されており、カバー止着ネジ67(図7及び図8参照)によって各フランジ部61a,61bに形成されたカバー止着穴68にそれぞれネジ留めされている。このカバー部材65は、流路ユニット53やノズル形成面58の周縁部を保護する機能以外に、ノズル形成面58を接地電位に調整する機能も有している。
【0043】
上記サブタンク37は、図14等に示すように、流路部材24からのインクを記録ヘッド18の圧力室52側に導入する部材である。サブタンク37は、内部の圧力変動に応じてバルブ69を開閉し、圧力室52側へのインクの導入を制御する自己封止機能を有している。このサブタンク37の後端面(上面)におけるノズル列方向の両端部に、上記流路部材24の接続流路が接続される流路接続部38が設けられている。この流路接続部38にはリング状のパッキン70が嵌め込まれており、このパッキン70により流路部材24との液密性が確保される。また、サブタンク37の内部には、圧電振動子54に駆動信号を供給するための駆動基板が設けられている(図示せず)。サブタンク37の後端面の中央部の開口内には、当該駆動基板にフレキシブルケーブル(配線部材の一種。図示せず)を電気的に接続するコネクター71が配設されている。
【0044】
次に、上記の流路ユニット53について説明する。流路ユニット53は、図18に示すように、ノズルプレート72(本発明におけるノズル形成基板に相当)、流路形成基板73、及び振動板74を順次積層した状態で接着剤等によってヘッドケース56の先端面に接合されている。
【0045】
流路ユニット53の底部に配置されるノズルプレート72は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば、360dpi)で複数のノズル51を列状に開設した薄い金属板である。本実施形態のノズルプレート72は、ステンレス鋼製の板材によって作製され、ノズル51の列(ノズル列57)がノズル列に直交する方向に2列並べて形成されている(図18では、一対のノズル列57のうち1列分を示す)。
【0046】
流路形成基板73は、ノズルプレート72と振動板74との間に配置される部材であり、共通液体室の一種である共通インク室75、インク供給口76、圧力室52等のインク流路となる空部を隔壁で区画した状態で各ノズル51に対応させて複数ノズル列方向に沿って列状に形成した板状の部材である。この流路形成基板73は、例えば、シリコンウェハーをエッチング処理することによって作製される。上記の圧力室52は、ノズル列方向(主走査方向)に対して直交する方向(副走査方向)に細長い室として形成されている。そして、各圧力室52は、ノズル列57に沿って形成された後述する圧電振動子54毎に対応した位置に配される。なお、本発明における流路形成基板73は、シリコンで作製するが、ステンレス鋼やニッケル等の金属の基板などをプレス加工することで作製しても良い。
【0047】
振動板74は、流路形成基板73とヘッドケース56との間に配置される板材であり、ステンレス鋼等の金属製の支持板77上に弾性フィルム78をラミネート加工した二重構造の複合板である。この振動板74の圧力室52に対応する部分には、エッチングなどによって支持板77を環状に除去することで、圧電振動子54の自由端の先端面を接合するための島部79が形成されており、この部分はダイヤフラム部として機能する。即ち、この振動板74は、圧電振動子54の作動に応じて島部79の周囲の弾性フィルム78が弾性変形するように構成されている。
【0048】
次に振動子ユニット55について説明する。なお、ヘッドケース56内に配置される一対の振動子ユニット55A,55Bの基本的な構成は同様であるので、以下では一方の振動子ユニット55のみを例に挙げて説明する。振動子ユニット55は、図16に示すように、櫛歯状の圧電素子群80と、この圧電素子群80の基端部分が接合される固定板81と、圧電素子群80に駆動信号を供給するためのCOF(Chip On Film)やTCP(Tape Carrier Package)などのフレキシブルケーブル82とにより構成される。
【0049】
圧電素子群80は、ノズル列方向に沿って列状に並べて形成された複数本の圧電振動子54を備える。これらの各圧電振動子54は、例えば、50μm〜100μm程度の極めて細い幅の櫛歯状に切り分けられ、360本設けられる。また、圧電素子群80は、自由端部を固定板81の先端面よりも外側(先方の圧力室側)に突出させることで、所謂片持ち梁の状態で固定板81上に支持されている。これらの各圧電振動子54は、流路ユニット53の圧力室52の形成ピッチと同じピッチで切り分けられており、1つの圧力室52(図18参照)に対して1つずつ対応するように構成されている。
【0050】
一方、圧電素子群80を支持する固定板81は、圧電素子群80からの反力を受け止め得る剛性を備えた金属製の板状部材であり、本実施形態においては、ステンレス鋼を用いている。フレキシブルケーブル82は、一端側が電極(図示せず)に、他端側が圧電素子群80に電気的に接続されており、電気信号を圧電振動子54に送る信号ケーブルである。このフレキシブルケーブル82の表面には、各圧電振動子54の駆動等を制御するための制御用IC83が実装されている。
【0051】
ここで、上記したように、本発明におけるヘッドケース56は樹脂製である一方、サブキャリッジ26はアルミニウム製等の金属製である。一般的に樹脂は金属製と比べて吸水率が高い。つまり、アルミニウム製のサブキャリッジ26に比べて、ヘッドケース56、特にフランジ部61は、空気中の水分等を吸湿することによって膨潤する度合いが大きい。特に、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂は、成型での精度および機械的剛性に優れているが、吸湿により寸法変化しやすい。このフランジ部61は、サブキャリッジ26に固定される部分であるため、サブキャリッジ26に固定された状態のヘッドケース56が吸湿によって膨潤すると、記録ヘッド18の位置精度が低下する虞がある。
【0052】
上記の問題に鑑み、本発明に係る記録ヘッド18におけるヘッドケース56のフランジ部61の表面には、防湿コーティング層84が形成されている。本実施形態において、フランジ部61には、導電性を有するクロムや金からなる金属メッキが施されることで、防湿コーティング層84が形成されている。つまり、樹脂製のヘッドケース56の表面のうち、流路ユニット53が接合されるケース本体60の表面には防湿コーティング層が形成されておらず樹脂が露出する一方、流路ユニット53との前記接合面から外れた表面のうち少なくともフランジ部61の表面は防湿コーティング層84によって覆われている。なお、ケース本体60の側面に防湿コーティング層を形成しても良い。
【0053】
図19は、フランジ部61のコーティング工程を説明する図である。
次に、フランジ部61の表面に防湿コーティング層84を形成するコーティング工程について説明する。図19に示すように、コーティング液85(例えば、クロムを溶解させたクロムメッキ溶液)を貯留した電解槽86の上面側の開口から、樹脂成型されたヘッドケース56を、予め表面に導電化処理が施された両フランジ部61a、61bのうちの一方側(例えばフランジ部61a)を下方に向けた状態で下降させて侵入させる。そして、下方側に位置するフランジ部61aの全体がコーティング液85に浸かる位置(ケース本体60の手前)でヘッドケース56の下降を停止する。これにより、ヘッドケース56のうち一方のフランジ部61aの表面にコーティング液85が付着する。そして、ヘッドケース56を電解槽86内から上昇させ、フランジ部61aの表面に付着したコーティング液85を固化させる。コーティング液85の固化後に、ヘッドケース56を上下反転させて、他方のフランジ部61bについても同様に防湿コーティング層84を形成することで、ヘッドケース56の表面のうち、ケース本体60を避けた両側のフランジ部61a,61bの表面に膜状の防湿コーティング層84が形成される。なお、フランジ部61の表面にメッキにより防湿コーティング層84を形成する方法としては、上記の電解メッキの他、無電解メッキや真空蒸着などを採用することもできる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のヘッドケース56は、金属製のサブキャリッジ26に固定されるフランジ部61a,61bの表面に防湿コーティング層84が形成されているので、吸湿によるフランジ部61の膨潤を抑制することができる。これにより、プリンター1が使用される環境下で湿度が上昇した場合においても、サブキャリッジ26に固定される記録ヘッド18の位置精度の低下が防止される。これにより、ノズル51から噴射されるインクの着弾位置精度の低下を抑制することができる。また、防湿コーティング層84がヘッドケース56の表面のうちフランジ部61の表面のみに選択的に形成されることにより、ケース本体60の流路ユニット53との接合面などの接着剤による接着が必要な部分に防湿コーティング層84が形成されないので、接着固定する際の接合面における接着強度を確保することできる。この結果、記録ヘッド18の信頼性を向上させることができる。
【0055】
ケース本体60の内部には、金属製の金属プレート63が配設されたので、ケース本体60の変形を抑制することができ、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の位置精度を向上させることができる。また、金属プレート63の端部がヘッドケース56成型時の支持部としてケース本体60から露出していたとしても、ケース本体60を避けたフランジ部61の表面に防湿コーティング層が形成されることにより、金属プレート63の露出部分(支持部)にコーティング液85が付着し、付着したコーティング液85が金属プレート63を伝ってヘッドケース56内に浸透することを抑制することができる。これにより、ヘッドケース56内に浸透したコーティング液85が振動子ユニット55やその他の電子部品に分着することで故障が生じる不具合を防止することができる。その結果、記録ヘッド18の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0056】
また、防湿コーティング層84が導電性を有するので、例えば、ノズルプレート72が静電気に帯電したとしても、この静電気を、防湿コーティング層84を介してサブキャリッジ26側に逃がすことができる。つまり、防湿コーティング層84をサブキャリッジ26に導通させて接地することができる。
【0057】
また、本実施形態のヘッドユニット17は、上記した記録ヘッド18と、当該記録ヘッド18が固定される金属製のサブキャリッジ26と、を備えているので、各記録ヘッド18におけるノズル51の相対位置精度が向上し、記録媒体に対するインクの着弾位置精度を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態のプリンター1は、上記したヘッドユニット17を備えているので、記録ヘッド18におけるノズル51の位置精度が向上し、記録媒体に対するインクの着弾位置精度を向上させることができる。その結果、プリンター1の信頼性を向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0060】
図20は、他の実施形態におけるサブキャリッジ26に固定された記録ヘッド18の構成をより簡略化して示した断面図である。
本実施形態におけるヘッドケース56におけるフランジ部61(即ち、記録ヘッド18)とサブキャリッジ26とは、エポキシ系樹脂やフェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂によって成型されたスペーサー88(本発明における仲介部材の一種)を介在させた状態で固定されており、スペーサー88は、ヘッドケース56と同じ材料から作製され、その表面には、防湿コーティング層89が形成されている。具体的には、本実施形態におけるサブキャリッジ26における各ヘッド取付部40には、止着穴29のノズル列方向の両側であってヘッド挿通開口28とは反対側に、本実施形態においては使用されない補助止着穴90(図10参照)がノズル列方向に直交する方向(ヘッド列設方向)に横並びにそれぞれ2つずつ設けられている。スペーサー88は、平面視においてサブキャリッジ26におけるヘッド取付部40と同形状の略べース状に形成されている。スペーサー88には、各補助止着穴90に対応してヘッド固定ナット27aを収容固定するサブキャリッジ用挿通穴91が横並びに設けられ、記録ヘッド28のフランジ部61におけるヘッド固定穴62に対応してスペーサー固定ナット92bを収容固定するスペーサー固定用挿通穴93が設けられている。
【0061】
このようなスペーサー88を介在させた状態で記録ヘッド18をサブキャリッジ26に組付けるには、まず、フランジ部61にスペーサー88を重ねた状態で位置決めし、この位置決め状態でフランジ部61側からヘッド固定穴62に挿入したスペーサー固定ボルト92aをスペーサー固定用挿通穴91内に収容固定されたスペーサー固定ナット92bに螺合することで、フランジ部61にスペーサー88を固定する。次に、スペーサー88におけるフランジ部61に固定した面とは反対側の面を、サブキャリッジ26のヘッド取付部40におけるヘッド載置面41に載置させた状態で位置決めし、この位置決め状態で、スペーサー88とヘッド載置面41との間に接着剤が流し込まれて接着(仮固定)される。接着剤が硬化した後、サブキャリッジ26側から補助止着穴90に挿入したヘッド固定ボルト27aをサブキャリッジ用挿通穴91内に収容固定されたヘッド固定ナット27bに螺合することで、スペーサー88とサブキャリッジ26とが固定され、これにより、スペーサー88を介した状態で記録ヘッド18がサブキャリッジ26に固定される。
【0062】
このように、スペーサー88を用いる構成においても、当該スペーサー88の表面に防湿コーティング層89を形成することで、吸湿によってスペーサー88が膨潤することを抑制することができ、湿度の上昇に起因するノズル51の位置精度の低下を防止することができる。また、上記のように、スペーサー88をサブキャリッジ26に接着する構成において、記録ヘッド18とスペーサー88とのネジ締結を解除することによって、記録ヘッド18を取り外すことができ、記録ヘッド18の交換やメンテナンスが容易となる。
【0063】
また、前述した実施形態におけるフランジ部61の防湿コーティング層84は、フランジ部61の表面に施された導電性を有するクロムや金からなる金属メッキであったが、本発明における防湿コーティング層84は、撥水性を有するフッ素コーティング剤等の撥水膜であっても良い。このようにフランジ部61の表面に撥水性を有する防湿コーティング層84を形成することで、ノズル51から噴射されたミスト状のインク等がヘッドケース56の表面に付着しても、付着したインクがヘッドケース56における流路ユニット53とは反対側に配置される回路基板等の電子部品側にフランジ部61を伝って回り込むことが防止される。
【0064】
また、前述した実施形態では、ヘッドケース56が樹脂製であって、サブキャリッジ26がアルミニウム製である例を挙げたが、本発明のヘッドケース56とサブキャリッジ26の材質は上記した材質に限定されない。サブキャリッジ26よりもヘッドケース56の吸水率が大きい程、サブキャリッジ26に対するヘッドケース56の吸湿による膨潤が大きくなるため、本発明を適用することで上記したフランジ部61の膨潤に対する抑制効果を高めることができる。
【0065】
そして、以上では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、ヘッド固定部材に対して液体噴射ヘッドが固定される構成を採用する他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,ごく少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…プリンター,17…ヘッドユニット,18…記録ヘッド,26…サブキャリッジ,51…ノズル,52…圧力室,53…流路ユニット,54…圧電振動子,56…ヘッドケース,60…ケース本体,61…フランジ部,63…金属プレート,72…ノズルプレート,73…流路形成基板,84…防湿コーティング層,88…スペーサー,89…防湿コーティング層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが開設されたノズル形成基板と当該ノズルに連通する圧力室が形成された流路形成基板とを有する流路ユニット、および、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を樹脂製のヘッドケースに取り付けて構成され、前記圧力発生手段を駆動させることで前記圧力室内の液体を前記ノズルから噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記ヘッドケースは、ヘッド固定部材に固定されるフランジ部を、前記流路ユニットが接合されるケース本体を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれ突出し、前記ケース本体と前記流路ユニットとの接合面から外れた表面のうち、少なくとも前記フランジ部の表面には、防湿コーティング層が形成されたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記ケース本体の内部には、金属製の補強材が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記ヘッドケースの両側のフランジ部は、前記ヘッドケースと同じ材料から作製された仲介部材を介在させた状態で前記ヘッド固定部材に固定され、
前記仲介部材の表面には、防湿コーティング層が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記防湿コーティング層が、導電性を有する金属メッキであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記防湿コーティング層が、撥水性を有するフッ素系のコーティング剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、当該液体噴射ヘッドが固定されるヘッド固定部材と、を備え、該ヘッド固定部材が前記ヘッドケースの素材よりも吸湿による膨張率が低い素材から構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の液体噴射ヘッドユニットを備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項1】
ノズルが開設されたノズル形成基板と当該ノズルに連通する圧力室が形成された流路形成基板とを有する流路ユニット、および、前記圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を樹脂製のヘッドケースに取り付けて構成され、前記圧力発生手段を駆動させることで前記圧力室内の液体を前記ノズルから噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記ヘッドケースは、ヘッド固定部材に固定されるフランジ部を、前記流路ユニットが接合されるケース本体を間に挟んで両側から互いに反対に向かってそれぞれ突出し、前記ケース本体と前記流路ユニットとの接合面から外れた表面のうち、少なくとも前記フランジ部の表面には、防湿コーティング層が形成されたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記ケース本体の内部には、金属製の補強材が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記ヘッドケースの両側のフランジ部は、前記ヘッドケースと同じ材料から作製された仲介部材を介在させた状態で前記ヘッド固定部材に固定され、
前記仲介部材の表面には、防湿コーティング層が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記防湿コーティング層が、導電性を有する金属メッキであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記防湿コーティング層が、撥水性を有するフッ素系のコーティング剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、当該液体噴射ヘッドが固定されるヘッド固定部材と、を備え、該ヘッド固定部材が前記ヘッドケースの素材よりも吸湿による膨張率が低い素材から構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の液体噴射ヘッドユニットを備えることを特徴とする液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−143922(P2012−143922A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2755(P2011−2755)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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