説明

液体噴射装置およびその制御方法

【課題】フラッシング動作による液体の噴射量を適切に設定する。
【解決手段】記録ヘッド24は、インクが充填された圧力室50と圧力室50内の圧力を変動させる圧電素子45とを含み、圧力室50内の圧力の変動に応じてインクをノズル52から噴射する。制御部60は、圧電素子45を制御して、ノズル52からインクを噴射させる噴射駆動またはノズル52からインクが噴射しない程度にノズル52内の液面を微振動させる微振動駆動を実行させる一方、駆動期間TDR内における微振動駆動の回数Nbに応じた噴射量AFLのフラッシング動作を当該駆動期間TDRの経過後の準備期間TFLにて実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を噴射する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子や発熱素子等の圧力発生素子により圧力室内の圧力を変化させることで圧力室内の液体(例えばインク)をノズルから噴射する液体噴射技術が従来から提案されている。液体噴射技術を採用したインクジェット方式の記録ヘッドは、ノズルに連通する複数の圧力室と、各圧力室に連通する共通の液体室であるリザーバーと、圧力室内の圧力を変化させてノズルから液滴を噴射させる圧力発生手段とを具備する。圧力発生手段としては、例えば、縦振動型の圧電素子や撓み振動型の圧電素子,静電気力を利用した素子,発熱素子等が採用される。
【0003】
インクジェット方式の記録ヘッドでは、長時間にわたって印字に関与しないノズル内のインクが増粘し、次回の噴射時に噴射量が低減するという問題や、インクの増粘した成分(以下「増粘成分」という)がノズルに詰まるという問題がある。そこで、増粘成分をノズルから噴射するフラッシング動作を定期的に実行する構成が採用される(例えば特許文献1および特許文献2)。
【0004】
また、インクジェット方式の記録ヘッドでは、ノズル内に露出するインクの自由表面(メニスカス)をインクが噴射しない程度に微振動させる微振動駆動が実行される。微振動駆動によりノズルの近傍のインクを撹拌することで、ノズルの近傍のインクを適切な粘度に維持することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−117993号公報
【特許文献2】特開2003−001857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、微振動駆動を実行した場合には、ノズルの近傍の増粘成分が圧力室内に拡散するから、微振動駆動の実行後のフラッシング動作で所望の噴射特性を回復するためには、ノズルの近傍だけでなく圧力室の内部まで拡散した増粘成分も排出する必要がある。すなわち、微振動駆動の結果として、フラッシング動作で必要なインクの噴射量が増加するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の液体噴射装置は、液体が充填された圧力室と前記圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子とを含み、前記圧力室内の圧力の変動に応じて前記液体をノズルから噴射する液体噴射装置であって、前記圧力発生素子を制御して、前記ノズルから前記液体を噴射させる噴射駆動または前記ノズルから前記液体が噴射しない程度に前記ノズル内の液面を微振動させる微振動駆動を実行させる駆動制御手段と、所定の駆動期間内における微振動駆動の回数に応じた噴射量のフラッシング動作を当該駆動期間の経過後に実行させる制御手段とを具備する。以上の構成では、微振動駆動の回数に応じた噴射量でフラッシング動作が実行されるため、フラッシング動作の所期の効果を維持しながらフラッシング動作での液体の消費量を削減することが可能である。
【0008】
本発明の好適な態様において、前記制御手段は、前記圧力発生素子を制御する内容を指定するデータに基づいて、前記駆動期間内における微振動駆動の回数を計数する微振動計数手段と、前記駆動期間内における微振動駆動の回数に応じてフラッシング動作での前記液体の噴射量を決定する噴射量決定手段とを含む。以上の態様では、圧力発生素子を制御する内容を指定するデータから微振動駆動の回数を簡易かつ確実に計数できるという利点がある。
【0009】
また、駆動期間での微振動駆動の回数が多いほど、ノズルの近傍の増粘成分が圧力室内の広範囲に拡散するという傾向がある。以上の傾向を考慮すると、駆動期間内における微振動駆動の回数が多いほどフラッシング動作での噴射量を多くする構成が好適である。また、駆動期間における液体の噴射でも圧力室内の増粘成分が排出される。したがって、駆動期間内における噴射駆動の回数が多いほどフラッシング動作での噴射量を少なくする構成によれば、フラッシング動作での液体の消費量を削減することが可能である。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記駆動制御手段は、前記液体を噴射しない駆動期間において、噴射駆動および微振動駆動を停止させる。以上の態様では、駆動期間内で1回も液体を噴射しない場合には圧力室内の増粘成分の無用な拡散が抑制されるから、フラッシング動作での噴射量を削減することが可能である。例えば、前記制御手段は、前記液体を噴射しない駆動期間の経過後に実行されるフラッシング動作での噴射量を、1回以上の微振動駆動が実行される駆動期間の経過後のフラッシング動作での噴射量よりも少ない所定量に設定することが可能である。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記駆動制御手段は、前記駆動期間のうち最後に前記液体の噴射が実行された後の残余期間では微振動駆動を停止させる。以上の態様では、最後の液体の噴射後の残余期間では微振動駆動が停止されるから、圧力室内の増粘成分の無用な拡散が抑制されるという利点がある。なお、以上の態様の具体例は、例えば第2実施形態として後述される。
【0012】
本発明の好適な態様の液体噴射装置は、前記圧力室と前記圧力発生素子と前記ノズルとを有する液体噴射ヘッドを第1位置と第2位置との間で移動させる移動機構を具備する。前記駆動期間の典型例は、前記液体噴射ヘッドが前記第1位置および前記第2位置の一方から他方に移動する期間、または、前記液体噴射ヘッドが前記第1位置と前記第2位置との間を1往復する期間である。以上の態様では、液体噴射ヘッドが第1位置および第2位置の一方から他方に移動する期間または第1位置と第2位置との間を往復する期間を駆動期間としてフラッシング動作が実行されるから、圧力室内の液体の増粘を有効に防止することが可能である。以上の効果は、20inch/s以上かつ50inch/s以下の最高速度で前記移動機構が前記液体噴射ヘッドを移動させ、前記駆動期間の時間長が2.0秒以上かつ8.0秒以下であり、前記液体の粘度が1.0mPa・s(ミリパスカル秒)以上かつ30.0mPa・s以下である構成のもとで格別に顕著となる。
【0013】
本発明は、以上の各形態に係る液体噴射装置を制御する方法としても特定される。本発明に係る液体噴射装置の制御方法は、液体が充填された圧力室と前記圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子とを含み、前記圧力室内の圧力の変動に応じて前記液体をノズルから噴射する液体噴射装置の制御方法であって、前記圧力発生素子を制御して、前記ノズルから前記液体を噴射させる噴射駆動または前記ノズルから前記液体が噴射しない程度に前記ノズル内の液面を微振動させる微振動駆動を実行させる一方、所定の駆動期間内における微振動駆動の回数に応じた噴射量のフラッシング動作を当該駆動期間の経過後に実行させる。以上の制御方法でも、本発明の液体噴射装置と同様の作用および効果が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の部分的な模式図である。
【図2】記録ヘッドの吐出面の平面図である。
【図3】記録ヘッドの構成図である。
【図4】印刷装置の電気的な構成のブロック図である。
【図5】駆動信号の波形図である。
【図6】記録ヘッドの電気的な構成のブロック図である。
【図7】駆動期間および準備期間の説明図である。
【図8】制御データを生成する動作の説明図である。
【図9】空走時間と着弾位置誤差との関係を示すグラフである。
【図10】制御部のうちフラッシング動作を制御する機能のブロック図である。
【図11】微振動駆動の回数とフラッシング動作での噴射量との関係を示すグラフである。
【図12】第2実施形態の制御部が制御データを生成する動作の説明図である。
【図13】変形例における制御部のうちフラッシング動作を制御する機能のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット方式の印刷装置100の部分的な模式図である。印刷装置100は、インクの液滴を記録紙200に噴射する液体噴射装置であり、キャリッジ12と移動機構14と用紙搬送機構16とを具備する。
【0016】
キャリッジ12には、インクカートリッジ22と記録ヘッド24とが搭載される。インクカートリッジ22は、記録紙200に噴射されるインク(液体)を貯留する容器である。記録ヘッド24は、インクカートリッジ22に貯留されたインクを記録紙200に噴射する液体噴射ヘッドとして機能する。なお、印刷装置100の筐体(図示略)にインクカートリッジ22を固定して記録ヘッド24にインクを供給する構成も採用され得る。第1実施形態のインクの粘度は、例えば1.0mPa・s(ミリパスカル秒)以上かつ30.0mPa・s以下に設定され、特に水系のインクでは2.0mPa・s以上かつ7.0mPa・s以下に設定される。
【0017】
図2は、記録ヘッド24のうち記録紙200に対向する吐出面26の平面図である。図2に示すように、記録ヘッド24の吐出面26には、相異なるインク色(ブラック(K),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C))に対応する複数のノズル列28(28K,28Y,28M,28C)が形成される。各ノズル列28は、副走査方向に直線状に配列されたN個のノズル(吐出口)52の集合である(Nは自然数)。ノズル列28Kの各ノズル52からはブラック(K)のインクが吐出される。同様に、ノズル列28Yの各ノズル52からはイエロー(Y)のインクが吐出され、ノズル列28Mの各ノズル52からはマゼンタ(M)のインクが吐出され、ノズル列28Cの各ノズル52からはシアン(C)のインクが吐出される。なお、各ノズル52を千鳥状に配列した構成も好適である。
【0018】
図1の移動機構14は、位置L1と位置L2との間でキャリッジ12を主走査方向(記録紙200の幅方向)に往復させる。キャリッジ12の最高速度は例えば20inch/s(インチ毎秒)以上かつ50inch/s以下に設定され、更に好適には24inch/s以上かつ40inch/s以下に設定される。キャリッジ12の位置は、リニアエンコーダー等の検出器(図示略)で検出されて移動機構14の制御に利用される。位置L1および位置L2は、吐出面26が記録紙200に対向する範囲の外側の位置(記録紙200に垂直な方向からみて記録紙200を主走査方向に挟む位置)である。位置L1がキャリッジ12の待機位置(ホームポジション)に相当し、位置L1にある記録ヘッド24の吐出面26に対向するようにキャップ18が配置される。キャップ18は、記録ヘッド24の吐出面26を封止する。キャップ18の近傍には吐出面26を払拭するワイパー(図示略)が配置される。
【0019】
図1の用紙搬送機構16は、キャリッジ12の往復に並行して記録紙200を副走査方向に移動させる。キャリッジ12の往復時に記録ヘッド24が記録紙200にインクを噴射することで所望の画像が記録紙200に記録(印刷)される。
【0020】
図3は、第1実施形態の記録ヘッド24の構成図である。具体的には、図3の部分(A)は記録ヘッド24の平面図であり、図3の部分(B)は部分(A)におけるIIIb−IIIb線の断面図であり、図3の部分(C)は部分(A)におけるIIIb-IIIb線に垂直な断面での断面図である。図3に示すように、記録ヘッド24は、概略的には、流路形成基板41とノズル形成基板42と弾性膜43と絶縁膜44と圧電素子45と保護基板46とを積層した構造である。
【0021】
流路形成基板41は、例えばステンレス鋼等の金属板材またはシリコン単結晶基板等で構成される板材である。図3の部分(A)および部分(C)に示すように、流路形成基板41には、長尺状の複数の圧力室50が各々の幅方向(ノズル52の配列方向)に並設される。相互に隣合う圧力室50は隔壁412で区画される。また、流路形成基板41のうち各圧力室50の長手方向の外側の領域には連通部414が形成される。連通部414と各圧力室50とは、圧力室50毎に形成されたインク供給路416を介して相互に連通する。インク供給路416は、圧力室50よりも狭い幅に形成され、連通部414から圧力室50に流入するインクに対して一定の流路抵抗を付与する。
【0022】
図3の部分(B)および部分(C)に示すように、流路形成基板41の表面(開口面)にはノズル形成基板42が例えば接着剤や熱溶着フィルム等で固定される。ノズル形成基板42には、各圧力室50のうちインク供給路416とは反対側の端部に連通するノズル(貫通孔)52が形成される。他方、流路形成基板41のうちノズル形成基板42とは反対側の表面には、弾性膜43が例えば二酸化シリコン(SiO2)で形成される。弾性膜43の表面には絶縁膜44が例えば酸化ジルコニウム(ZrO2)で形成され、絶縁膜44の表面には圧力室50毎に圧電素子45が形成される。
【0023】
図3の部分(B)および部分(C)に示すように、各圧電素子45は、下電極451と圧電体452と上電極453とを絶縁膜44側からこの順番に積層した構造体である。下電極451および上電極453の一方は、複数の圧力室50にわたって連続する共通電極であり、下電極451および上電極453の他方と圧電体452とは圧力室50毎に個別に形成(パターニング)される。下電極451および上電極453の何れを共通電極とするかは、例えば圧電体452の分極方向や配線の都合等に応じて適宜に決定される。各圧電素子45の上電極453には、例えば金(Au)等で形成されたリード電極47が接続される。リード電極47を介した駆動信号の供給で下電極451と上電極453との間に電界を付与すると、各圧電素子45および弾性膜43が変形(撓み変形)する。
【0024】
図3の部分(B)に示すように、流路形成基板41のうち各圧電素子45の設置面には保護基板46が固定される。保護基板46のうち各圧電素子45に対向する領域には、各圧電素子45を収容する圧電素子保持部461が形成される。圧電素子保持部461は、各圧電素子45の変位を阻害しない程度の大きさに成形されて各圧電素子45を保護する。また、保護基板46のうち流路形成基板41の連通部414に対応する領域には、保護基板46を貫通するリザーバー部462が形成される。リザーバー部462は、各圧力室50が配列する方向に沿う長尺状の空間である。流路形成基板41の連通部414と保護基板46のリザーバー部462とを連通させた空間が、各圧力室50の共通のインク室として機能するリザーバー54を構成する。
【0025】
保護基板46のうち圧電素子保持部461とリザーバー部462との間の領域には、保護基板46を厚さ方向に貫通する貫通孔463が形成される。圧電素子45の下電極451およびリード電極47が貫通孔463の内側に露出する。保護基板46の面上には、封止膜481と固定板482とを積層したコンプライアンス基板48が接合される。封止膜481は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えばポリフェニレンサルファイドフィルム)で構成され、保護基板46のリザーバー部462を封止する。固定板482は、金属等の硬質の材料(例えばステンレス鋼)で構成される。固定板482のうちリザーバー54(リザーバー部462)に対向する領域には開口部483が形成される。
【0026】
以上の構成の記録ヘッド24において、リザーバー54から各インク供給路416と各圧力室50とを介してノズル52に至る空間に、インクカートリッジ22から供給されるインクが充填される。駆動信号の供給により圧電素子45および弾性膜43が変形すると圧力室50内の圧力が変動する。圧力室50内の圧力変動を駆動信号に応じて制御することで、圧力室50内のインクをノズル52から噴射させる動作(以下「噴射駆動」という)または圧力室50内のインクが噴射されない程度にノズル52内のインクの液面(メニスカス)を微振動させる動作(以下「微振動駆動」という)を実行させることが可能である。
【0027】
図4は、印刷装置100の電気的な構成のブロック図である。図4に示すように、印刷装置100は、制御装置102と印刷処理部(プリントエンジン)104とを具備する。制御装置102は、印刷装置100の全体を制御する要素であり、制御部60と記憶部62と駆動信号発生部64と外部I/F(interface)66と内部I/F68とを含む。記録紙200に印刷される画像を示す印刷データDPが外部装置(例えばホストコンピューター)300から外部I/F66に供給され、内部I/F68には印刷処理部104が接続される。印刷処理部104は、制御装置102による制御のもとで記録紙200に画像を記録する要素であり、前述の記録ヘッド24と移動機構14と用紙搬送機構16とを含む。
【0028】
駆動信号発生部64は、駆動信号COMを生成する。駆動信号COMは、各圧電素子45を駆動する周期信号である。図5に示すように、駆動信号COMの1周期に相当する期間(以下「印字周期」という)TU内には定電位要素PSと噴射パルスPDと微振動パルスPBとが配置される。噴射パルスPDは、圧電素子45に供給された場合に所定量のインクがノズル52から噴射するように圧電素子45および弾性膜43を変形させて圧力室50内のインクを加圧する。他方、微振動パルスPBは、圧電素子45に供給された場合に圧力室50内のインクがノズル52から噴射されない程度に圧力室50内の圧力を変化させてノズル52内のメニスカスを微振動(揺動)させる。他方、定電位要素PSは、所定の基準電位VREFに維持される区間である。定電位要素PSの供給で圧電素子45は変位を停止して待機する。
【0029】
図4の記憶部62は、制御プログラム等を記憶するROMと、画像の印刷に必要な各種のデータを一時的に記憶するRAMとを含む。制御部60は、記憶部62に記憶された制御プログラムの実行で印刷装置100の各要素(例えば印刷処理部104)を統括的に制御する。具体的には、制御部60は、各印字周期TUでの圧電素子45の動作を指示する制御データDCを印刷データDPから生成する。制御データDCは、圧力室50内のインクをノズル52から噴射させる噴射駆動と、ノズル52内のインクのメニスカスを微振動させる微振動駆動と、圧電素子45の変位を停止させる待機状態(すなわち噴射駆動も微振動駆動も実行させない状態)とを圧電素子45の動作として指定するデータである。制御データDCは印字周期TU毎に繰返し生成される。
【0030】
図6は、記録ヘッド24の電気的な構成の模式図である。図6に示すように、記録ヘッド24は、相異なる圧電素子45に対応する複数の駆動回路32を含む。駆動信号発生部64が生成した駆動信号COMは、内部I/F68を介して複数の駆動回路32に共通に供給される。また、制御部60が生成した制御データDCは内部I/F68を介して各駆動回路32に供給される。
【0031】
各駆動回路32は、制御部60から供給される制御データDCに応じた区間を駆動信号COMから選択して圧電素子45に供給する。具体的には、制御データDCが噴射駆動を指示する場合、駆動回路32は、駆動信号COMの噴射パルスPDを選択して圧電素子45に供給する。したがって、圧力室50内のインクがノズル52から記録紙200に噴射される(噴射駆動)。他方、制御データDCが微振動駆動を指示する場合、駆動回路32は、駆動信号COMの微振動パルスPBを選択して圧電素子45に供給する。したがって、ノズル52内のメニスカスに微振動が付与され、圧力室50内のインクは噴射されずに適度に撹拌される(微振動駆動)。また、制御データDCが待機状態を指示する場合、駆動回路32は、駆動信号COMの定電位要素PSを選択して圧電素子45に供給する。定電位要素PSが供給された場合、圧電素子45は、噴射駆動も微振動駆動も実行せずに待機するから、圧力室50内のインクは撹拌されない。
【0032】
図7に示すように、印刷装置100の動作期間は複数の期間Tに区分される。複数の期間Tの各々は、駆動期間TDRと準備期間TFLとを含む。駆動期間TDRは、各ノズル52からのインクの噴射で記録紙200に画像を形成する期間である。例えば、記録ヘッド24によるインクの噴射に並行してキャリッジ12が位置L1と位置L2との間を1往復する期間(2ラスタ期間)が駆動期間TDRとして規定される。なお、駆動期間TDRの時間長(すなわち、記録ヘッド24が1往復する時間)は、例えば2.0秒以上かつ8.0秒以下である。各駆動期間TDRは、K個の印字周期TUで構成される。1個の印字周期TUは、記録紙200の表面に1個のドットを形成する時間に相当する。駆動期間TDRでは、K個の印字周期TUの各々について圧電素子45毎の制御データDCが生成される。
【0033】
図8は、N個(図8では便宜的に5個を例示)のノズル52(圧電素子45)について、駆動期間TDR内のK個の印字周期TU(図8の記号TU(1)〜TU(K))の各々で生成される制御データDCの内容を示す模式図である。図8の黒丸は噴射駆動を指示する制御データDCを意味し、網掛丸は微振動駆動を指示する制御データDCを意味し、白丸は待機状態(噴射駆動も微振動駆動も実行しない状態)を指示する制御データDCを意味する。
【0034】
図8における第1番(#1),第3番(#3)および第5番(#5)のノズル52のように、駆動期間TDR内に少なくとも1回のインクの噴射が必要であると印刷データDPから判定されるノズル52について、制御部60は、インクの噴射が必要なNt個の印字周期TUの各々については噴射駆動を指示する制御データDCを生成し、駆動期間TDR内の残余のNb個(Nb=K−Nt)の印字周期TUの各々については微振動駆動を指示する制御データDCを生成する。すなわち、制御部60は、噴射駆動または微振動駆動を駆動期間TDR内の印字周期TU毎に圧電素子45に順次に実行させる要素(駆動制御手段)として機能する。
【0035】
他方、図8における第2番(#2)および第4番(#4)のノズル52のように、駆動期間TDR内で1回もインクを噴射する必要がないと印刷データDPから判定されるノズル52について、制御部60は、駆動期間TDR内の全部(K個)の印字周期TUの各々について待機状態を指示する制御データDCを生成する。すなわち、駆動期間TDR内で1回もインクを噴射する必要がないノズル52については、駆動期間TDR内で噴射駆動も微振動駆動も実行されない。以上の説明から理解されるように、第1実施形態の制御部60は、ノズル52からインクを噴射しない駆動期間TDRでは各印字周期TUで噴射駆動も微振動駆動も実行させずに圧電素子45を待機させる要素(駆動制御手段)として機能する。
【0036】
図7の準備期間TFLは、相前後する駆動期間TDRの合間に位置し、記録ヘッド24がフラッシング動作を実行する期間である。フラッシング動作は、記録ヘッド24を図1の位置L1(キャップ18上)に移動させた状態で各ノズル52から強制的にインクを噴射させる動作である。フラッシング動作で各ノズル52から噴射されたインクはキャップ18に受容される。以上のようにフラッシング動作を周期的に実行することで各ノズル52の目詰まりや圧力室50内への気泡の侵入が解消される。制御部60は、各圧電素子45に噴射駆動を指示する制御データDCを準備期間TFLにて記録ヘッド24に供給することでフラッシング動作を実行させる要素(後述するフラッシング制御部76)として機能する。
【0037】
図9は、フラッシング動作を周期的に実行させながら記録ヘッド24を空走させた時間(空走時間)と着弾位置誤差との関係の実験結果を示すグラフである。図9の横軸に図示された空走時間は、所定の時間毎(2.81秒毎)に微少量のフラッシング動作を実行しながらキャリッジ12を移動させた時間長を意味する。図9の縦軸に図示された着弾位置誤差は、空走時間の経過後にノズル52から噴射されたインクが実際に着弾する位置と目標の位置との距離(ズレ量)を意味する。空走時間内で圧電素子45に周期的に微振動駆動を実行させた場合の特性(実線)と、空走時間内で圧電素子45に微振動駆動を実行させない場合の特性(破線)とが併記されている。
【0038】
圧力室50内のインクは、ノズル52の内部に露出する表面(メニスカス)からの水分の蒸発や成分の凝集等に起因して局所的に増粘する。したがって、圧力室50内のインクを目標の噴射特性(噴射量や噴射速度)でノズル52から適切に噴射するには、微振動駆動によりインクを適度に撹拌することで、ノズル52の近傍のインク(メニスカス)の増粘を防止して適切な粘度に維持する必要がある。
【0039】
しかし、圧電素子45に微振動駆動を実行させてメニスカスを微振動させた場合には、微振動駆動を実行させない場合と比較して、所定の周期でフラッシング動作を実行しているにも関わらず、着弾位置誤差が増加するという傾向が図9から把握される。以上の傾向が観測されるのは、圧力室50内の増粘成分をフラッシング動作で充分に排出し切れないためであると考えられる。すなわち、微振動駆動により確かにメニスカスの近傍の増粘は防止されるが、ノズル52の近傍の増粘成分が圧力室50内の広範囲に拡散するため、通常のフラッシング動作で微少量のインクを排出しただけでは圧力室50内に拡散した増粘成分を充分に排出し切れず、記録ヘッド24の噴射特性が完全に回復しないのである。つまり、微振動駆動を実行しない場合には増粘成分がノズル52の近傍のみに滞留するため、微少量のインクをフラッシング動作で噴射した場合でも増粘成分が有効に排除されて噴射特性は回復するが、微振動駆動を実行した場合には増粘成分が圧力室50内の広範囲に拡散するため、微少量のインクをフラッシング動作で排出しただけでは増粘成分が充分に排出されず、噴射特性を充分に回復するために必要なインクの噴射量が多くなる。そして、空走時間が長く、微振動駆動の回数が多くなるほど以上の傾向は顕在化する。
【0040】
以上の傾向を考慮して、制御部60は、準備期間TFL内でのフラッシング動作によるインクの噴射量AFLを、直前の駆動期間TDRにて圧電素子45が実行した微振動駆動の回数(印字周期TUの個数)Nbに応じて可変に制御する。図10は、制御部60のうちフラッシング動作での噴射量AFLを制御する機能のブロック図である。図10に示すように、制御部60は、微振動計数部72,噴射量決定部74およびフラッシング制御部76として機能する。図10の各要素は、記憶部62に記憶された制御プログラムの実行で実現される。
【0041】
微振動計数部72は、外部装置300から供給される印刷データDPを解析することで、各駆動期間TDR内(すなわち、相前後するフラッシング動作の間隔内)で微振動駆動が実行される合計回数Nbをノズル52毎に計数する。噴射量決定部74は、微振動計数部72が計数した回数Nbに応じて直後のフラッシング動作でのインクの噴射量AFLをノズル52毎に決定する。フラッシング制御部76は、各圧電素子45を制御して、噴射量決定部74が決定した噴射量AFLのフラッシング動作を実行させる。例えば、フラッシング制御部76は、噴射量AFLのインクを噴射するための駆動条件(例えば噴射回数や1回の噴射量)を決定し、この駆動条件に基づいて圧電素子45を制御する。
【0042】
具体的には、図11に示すように、微振動計数部72が計数した駆動期間TDRでの微振動駆動の回数Nbが多いほど(すなわち増粘成分が圧力室50内の広範囲に拡散するほど)、準備期間TFLでのフラッシング動作による噴射量AFLが多くなるように噴射量決定部74が噴射量AFLをノズル52毎に決定し、この噴射量AFLのインクを排出するフラッシング動作をフラッシング制御部76が各圧電素子45に実行させる。もっとも、第1実施形態では、駆動期間TDR内での微振動駆動の回数Nbと噴射駆動の回数Ntとの合計値は駆動期間TDR内の印字周期TUの総数Kであるから、駆動期間TDRでの噴射駆動の回数Ntが多いほど(圧力室50内の増粘成分が噴射されるほど)、準備期間TFLでのフラッシング動作による噴射量AFLが少なくなるように各圧電素子45が制御されると換言することも可能である。なお、制御部60の噴射量決定部74が回数Nbおよび回数Ntに応じて噴射量AFLを決定する方法は任意であるが、例えば、回数Nb(または回数Nt)の各数値と噴射量AFLの各数値とを対応させたテーブルから実際の回数Nbに応じた噴射量AFLを検索する構成や、回数Nbと噴射量AFLとの関係を定義する所定の数式の演算で噴射量AFLを算定する構成が好適である。
【0043】
例えば図8の例示では、駆動期間TDR内の微振動駆動の回数Nbが中程度(図11の閾値Nth1と閾値Nth2との間)である第3番のノズル52については、準備期間TFLにて噴射量AFL2のフラッシング動作が指示される。他方、駆動期間TDR内の微振動駆動の回数Nbが図11の閾値Nth1を下回る(噴射駆動の回数Ntが多い)第1番のノズル52については、噴射量AFL2よりも少ない噴射量AFL1(AFL1<AFL2)のフラッシング動作が指示される。駆動期間TDR内の微振動駆動の回数Nbが図11の閾値Nth2を上回る(噴射駆動の回数Ntが少ない)第5番のノズル52については、噴射量AFL2よりも多い噴射量AFL3(AFL3>AFL2)のフラッシング動作が指示される。また、駆動期間TDR内で待機状態が指示されるノズル52(すなわち1回もインクを噴射しないノズル52)については、駆動期間TDR内で微振動駆動が実行されるノズル52の噴射量AFLの最小値(噴射量AFL1)を更に下回る所定の噴射量AFL0(AFL0<AFL1)のフラッシング動作が指示される。
【0044】
以上に説明した第1実施形態では、フラッシング動作によるインクの噴射量AFLが、駆動期間TDRでの微振動駆動の回数Nb(すなわち増粘成分の拡散の程度)に応じて可変に制御される。換言すると、駆動期間TDRでの噴射駆動の回数Nt(すなわち増粘成分の排出の程度)に応じてフラッシング動作による噴射量AFLが可変に制御される。これにより、例えば微振動駆動の回数Nbや噴射駆動の回数Ntに関わらず各圧電素子45が噴射量AFL3のフラッシング動作を実行する構成と比較してフラッシング動作によるインクの消費量を削減することが可能である。また、例えば微振動駆動の回数Nbや噴射駆動の回数Ntに関わらず各圧電素子45が噴射量AFL1のフラッシング動作を実行する構成と比較すると、微振動で圧力室50内に拡散した増粘成分を充分に排出することが可能である。すなわち、第1実施形態によれば、フラッシング動作の所期の効果(ノズル52の目詰まりや圧力室50への気泡の侵入の解消)を充分に維持しながら、フラッシング動作に起因したインクの消費量を削減できるという利点がある。
【0045】
<B:第2実施形態>
図12は、各ノズル52について印字周期TU毎に生成される制御データDCの内容を前掲の図8と同様の方法で図示した模式図である。駆動期間TDR内でインクの噴射が必要なノズル52について圧電素子45が噴射駆動と微振動駆動とを択一的に実行する第1実施形態では、駆動期間TDRのうち最後にインクを噴射した印字周期TUの経過後の1個以上の印字周期(以下「残余期間」という)でも微振動駆動が実行される。しかし、微振動はインクの噴射に備える目的の動作であるから、インクを噴射する必要がない残余期間では、微振動駆動を実行しなくてもよい。そこで、第2実施形態の制御部60は、図12の第3番および第5番のノズル52について二重丸で図示したように、駆動期間TDRのうち最後にインクを噴射する印字周期TUの経過後の各印字周期TU(残余期間)については、待機状態を指示する制御データDCを生成する。すなわち、駆動期間TDRのうち最後のインクの噴射から駆動期間TDRの終点までの残余期間では各圧電素子45に噴射駆動も微振動駆動も実行させない。
【0046】
以上の第2実施形態では、駆動期間TDRの途中でインクの噴射が終了するノズル52については残余期間内の印字周期TUの個数分だけ微振動駆動の回数Nbが減少するから、直後の準備期間TFLにおけるフラッシング動作での噴射量AFLを第1実施形態と比較して更に減少させることができる。したがって、第1実施形態と同様の効果に加えて、フラッシング動作でのインクの消費量を更に削減することが可能である。また、残余期間では圧電素子45に対する微振動パルスPBの供給(圧電素子45の振動)が停止されるから、残余期間でも微振動を付与する構成と比較すると、消費電力を低減するとともに圧電素子45の劣化を抑制できるという利点がある。
【0047】
<C:変形例>
以上の各形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
【0048】
(1)変形例1
以上の各形態では、駆動期間TDR内での微振動駆動の回数Nbや噴射駆動の回数Ntに応じてフラッシング動作でのインクの噴射量AFLを決定したが、駆動期間TDR内でのインクの噴射量の合計(以下「合計噴射量」という)Atを噴射量AFLに反映させることも可能である。図13は、変形例1における制御部60のうちフラッシング動作での噴射量AFLを制御する機能のブロック図である。図13に示すように、変形例1の制御部60は、前述の各形態と同様の要素(微振動計数部72,噴射量決定部74,フラッシング制御部76)に加えて総噴射量算定部78として機能する。
【0049】
総噴射量算定部78は、各駆動期間TDRにおけるインクの合計噴射量Atを、印刷データDPを解析することでノズル52毎に算定する。具体的には、総噴射量算定部78は、駆動期間TDRでの噴射駆動の回数Ntと各回でのインクの噴射量とに応じて合計噴射量Atを算定する。例えば、サイズが相違する複数種のドット(例えば大ドット,中ドット,小ドット)を記録ヘッド24が記録紙200に形成する場合、総噴射量算定部78は、ドットの種類毎にインクの噴射回数を計数し、各計数値とドット毎のインクの噴射量とから合計噴射量Atを算定する。
【0050】
噴射量決定部74は、微振動計数部72が計数した微振動駆動の回数Nbと総噴射量算定部78が算定した合計噴射量Atとに応じてフラッシング動作での噴射量AFLをノズル52毎に決定する。具体的には、噴射量決定部74は、前述の各形態と同様に微振動駆動の回数Nbに応じて噴射量AFLを決定するほか、合計噴射量Atが多いほどフラッシング動作による噴射量AFLが少なくなるように噴射量AFLを決定する。以上の構成によれば、微振動駆動の回数Nbに加えて駆動期間TDR内の合計噴射量Atが噴射量AFLに反映されるから、前述の各形態と比較して噴射量AFLを適切に決定できるという利点がある。
【0051】
(2)変形例2
駆動期間TDRの時間長(フラッシング動作の間隔)は任意である。例えば、位置L1および位置L2の双方でフラッシング動作を実行可能な構成(例えば位置L1および位置L2の双方にキャップ18が設置された構成)では、キャリッジ12が位置L1および位置L2の一方から他方に移動する期間(1ラスタ期間)が駆動期間TDRに設定される。また、位置L1と位置L2との間をキャリッジ12が複数回にわたって往復する期間を駆動期間TDRに設定することも可能である。
【0052】
(3)変形例3
各圧電素子45にフラッシング動作を実行させる方法や噴射量AFLを変化させる方法は任意である。例えば、前述の各形態では、駆動期間TDRで各圧電素子45に噴射駆動を実行させる駆動信号COMを準備期間TFL内のフラッシング動作にも流用したが、各圧電素子45にフラッシング動作を実行させる専用の駆動信号を生成することも可能である。また、前述の各形態では、インクの噴射の回数を制御することで噴射量AFLを変化させたが、例えば1回の噴射量(圧力室50に付与される振動の振幅)を制御することでフラッシング動作による噴射量AFLを変化させることも可能である。
【0053】
(4)変形例4
以上の各形態では、駆動期間TDR内の微振動駆動の回数Nbの範囲毎にフラッシング動作での噴射量AFLを段階的(AFL1,AFL2,AFL3)に変化させたが、回数Nbや回数Ntと噴射量AFLとの関係は任意である。例えば、回数Nbや回数Ntに対して直線的に変化するように噴射量AFLを設定する構成や、噴射量AFLが回数Nbや回数Ntの所定の関数として定義される構成も採用され得る。
【0054】
(5)変形例5
前述の各形態では1系統の駆動信号COMを記録ヘッド24に供給したが、複数系統の駆動信号を各圧電素子45の駆動に使用する構成(例えば噴射パルスPDと微振動パルスPBとを別個の駆動信号に設定した構成)も採用され得る。また、前述の各形態では1個の印字周期TUにてインクを1回だけ噴射したが、1個の印字周期TU内に複数回のインクの噴射を実行することも可能である。また、駆動信号の各パルス(PD,PB)の波形は任意である。
【0055】
(6)変形例6
以上の各形態では、記録ヘッド24を搭載したキャリッジ12を移動させるシリアル型の印刷装置100を例示したが、記録紙200の幅方向の全域に対向するように複数のノズル52が配列されたライン型の印刷装置100にも本発明を適用することが可能である。ライン型の印刷装置100では記録ヘッド24が固定され、記録紙200を搬送させながら各ノズル52からインクの液滴を噴射することで記録紙200に画像が記録される。以上の説明から理解されるように、記録ヘッド24自体の可動/固定は本発明において不問である。
【0056】
(7)変形例7
圧力室50内の圧力を変化させる要素(圧力発生素子)の構成は以上の例示に限定されない。例えば、静電アクチュエーター等の振動体を利用することも可能である。また、本発明の圧力発生素子は、圧力室50に機械的な振動を付与する要素に限定されない。例えば、圧力室50の加熱で気泡を発生させて圧力室50内の圧力を変化させる発熱素子(ヒーター)を圧力発生素子として利用することも可能である。すなわち、本発明の圧力発生素子は、圧力室50内の圧力を変化させる要素として包括され、圧力を変化させる方法(ピエゾ方式/サーマル方式)や構成の如何は不問である。
【0057】
(8)変形例8
以上の各形態の印刷装置100は、プロッターやファクシミリ装置,コピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は画像の印刷に限定されない。例えば、各色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、液体状の導電材料を噴射する液体噴射装置は、例えば有機EL(Electroluminescence)表示装置や電界放出表示装置(FED:Field Emission Display)等の表示装置の電極を形成する電極製造装置として利用される。また、生体有機物の溶液を噴射する液体噴射装置は、生物化学素子(バイオチップ)を製造するチップ製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0058】
100……印刷装置、12……キャリッジ、14……移動機構、16……用紙搬送機構、18……キャップ、22……インクカートリッジ、24……記録ヘッド、32……駆動回路、41……流路形成基板、42……ノズル形成基板、43……弾性膜、44……絶縁膜、45……圧電素子、46……保護基板、50……圧力室、52……ノズル、102……制御装置、104……印刷処理部、60……制御部、62……記憶部、64……駆動信号発生部、66……外部I/F、68……内部I/F、72……微振動計数部、74……噴射量決定部、76……フラッシング制御部、78……総噴射量算定部、200……記録紙、300……外部装置、COM……駆動信号、PD……噴射パルス、PB……微振動パルス、PS……定電位要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填された圧力室と前記圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子とを含み、前記圧力室内の圧力の変動に応じて前記液体をノズルから噴射する液体噴射装置であって、
前記圧力発生素子を制御して、前記ノズルから前記液体を噴射させる噴射駆動または前記ノズルから前記液体が噴射しない程度に前記ノズル内の液面を微振動させる微振動駆動を実行させる駆動制御手段と、
所定の駆動期間内における微振動駆動の回数に応じた噴射量のフラッシング動作を当該駆動期間の経過後に実行させる制御手段と
を具備する液体噴射装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記圧力発生素子を制御する内容を指定するデータに基づいて、前記駆動期間内における微振動駆動の回数を計数する微振動計数手段と、
前記駆動期間内における微振動駆動の回数に応じてフラッシング動作での前記液体の噴射量を決定する噴射量決定手段とを含む
請求項1の液体噴射装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記駆動期間内における微振動駆動の回数が多いほどフラッシング動作での噴射量を多くする
請求項1または請求項2の液体噴射装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記駆動期間内における噴射駆動の回数が多いほどフラッシング動作での噴射量を少なくする
請求項1から請求項3の何れかの液体噴射装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、前記液体を噴射しない駆動期間において、前記噴射駆動および微振動駆動を停止させる
請求項1から請求項4の何れかの液体噴射装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記液体を噴射しない駆動期間の経過後に実行されるフラッシング動作での噴射量を、1回以上の微振動駆動が実行される駆動期間の経過後のフラッシング動作での噴射量よりも少ない所定量に設定する
請求項5の液体噴射装置。
【請求項7】
前記駆動制御手段は、前記駆動期間のうち最後に前記液体の噴射が実行された後の残余期間では微振動駆動を停止させる
請求項1から請求項6の何れかの液体噴射装置。
【請求項8】
前記圧力室と前記圧力発生素子と前記ノズルとを有する液体噴射ヘッドを第1位置と第2位置との間で移動させる移動機構
を具備する請求項1から請求項7の何れかの液体噴射装置。
【請求項9】
前記駆動期間は、前記液体噴射ヘッドが前記第1位置および前記第2位置の一方から他方に移動する期間、または、前記液体噴射ヘッドが前記第1位置と前記第2位置との間を1往復する期間である
請求項8の液体噴射装置。
【請求項10】
前記移動機構は、20inch/s以上かつ50inch/s以下の最高速度で前記液体噴射ヘッドを移動させ、
前記駆動期間の時間長は、2.0秒以上かつ8.0秒以下であり、
前記液体の粘度は、1.0mPa・s以上かつ30.0mPa・s以下である
請求項8または請求項9の液体噴射装置。
【請求項11】
液体が充填された圧力室と前記圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子とを含み、前記圧力室内の圧力の変動に応じて前記液体をノズルから噴射する液体噴射装置の制御方法であって、
前記圧力発生素子を制御して、前記ノズルから前記液体を噴射させる噴射駆動または前記ノズルから前記液体が噴射しない程度に前記ノズル内の液面を微振動させる微振動駆動を実行させる一方、
所定の駆動期間内における微振動駆動の回数に応じた噴射量のフラッシング動作を当該駆動期間の経過後に実行させる
液体噴射装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−158000(P2012−158000A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17634(P2011−17634)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】