説明

液体噴射装置のクリーニング方法及び液体噴射装置

【課題】堆積物を除去するために気体を噴出することにより、メンテナンスのための液体消費を抑制できるとともに、コスト低減を図ることができ、又、廃液タンクも大型化することがない液体噴射装置のクリーニング方法及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】プリンタ11は、紙Pに対してインクを噴射するノズルが形成された記録ヘッド20と、記録ヘッド20から出された液体を滞留する廃液タンク25を備える。廃液タンク25に堆積した廃液インクの堆積物100に空気を吹き付けて該堆積物を吹き飛ばす吸引ポンプ34を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置、ディスプレイ製造装置、電極形成装置、或いは、バイオチップ製造装置等、液体吐出ヘッドを用いて液体を液滴として吐出する液体噴射装置のクリーニング方法及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体をターゲットに噴射させる液体噴射装置として、インク滴を紙に噴射させて画像等を印刷するインクジェット式プリンタがある。この種のプリンタは、記録ヘッドにインクを噴射する複数のノズルが形成されており、このノズルには、噴射するためのインクが常に充填された状態にある。
【0003】
このインクジェット式プリンタは、印刷を休止している場合等には、ノズル内に存在するインク溶媒の揮発により、インクの増粘や固化、粉塵の付着による目詰まりが生じることがある。又、ノズルの開口部から気泡が混入し、ドット抜け等の印刷不良を招くこともある。そこで、インクジェット式プリンタには、記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャップと、このキャッップに接続され、キャップに負圧を印加する吸引ポンプが備えられている。そして、印刷時以外に、記録ヘッドを覆うキャップに連通した吸引ポンプを駆動して、記録ヘッドのノズル内において増粘したインクや固化したインクを、廃液タンクに強制的に排出する、クリーニング動作が行われている。このクリーニングにより、前記増粘したインクや固化したインクとともに、増粘や固化していないインクも廃液タンクに排出される。
【0004】
ところで、最近のインクの耐久性や発光性を重視する傾向から、染料インクよりも耐久性や発光性などに優れる顔料インクが使用されるようになっている。顔料インクは、インク溶媒中に顔料の粒子が分散しており、染料インクに比べて、揮発性が高く固化し易い。
【0005】
従って、ノズルから吸引されるインクが顔料インクである場合、吸引して廃液タンクに排出された廃液インク(増粘したインクや固化したインクとともに、増粘や固化していないインクを含む)が固まってしまうことがある。このため、クリーニングが行われるに従って、廃液タンク内において廃液インクが排出された部位には、固化したインクが徐々に堆積して、例えば、吸引ポンプに接続されて吸引された廃液インクを廃液タンクに吐出する吸引チューブの吐出口を閉塞する等の不具合を生じることがある。
【0006】
特許文献1では、廃液タンク内に堆積した廃液インクを、吸引ポンプで吸引したインクを新たに強制的に吐出することにより、堆積した廃液インクを溶かすことが開示されている。
【0007】
又、特許文献2では、堆積した廃液インクを、歯車と除去板からなる除去装置や、ベルトコンベアにて、除去するようにしている。
【特許文献1】特開2004−174766号公報
【特許文献2】特開2004−167945号公報(段落0031、0032、0034、0035、図4,図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、堆積したインクを除去するために、新たに、インクを吸引ポンプにて液体噴射ヘッドから吸引する必要があることから、インク消費が増し、このためコスト高となる問題がある。又、特許文献2に開示された除去装置等を廃液タンクに組み込む場合、除去装置等の取付けスペースが増す分、廃液タンクが大型化するとともに、除去装置等を廃液タンク内に組み込む必要があるため、メカニズムが複雑となる問題がある。
【0009】
上記説明は、プリンタを例に挙げたが、ディスプレー製造装置、電極形成装置、或いは、バイオチップ製造装置等の他の液体噴射ヘッドを用いて液体を液滴として吐出する液体噴射装置においても、不使用時に廃液中の溶媒が蒸発することにより、廃液タンク内に排出した廃液中の固形成分が堆積するものでは、同様の課題が生ずる。
【0010】
本発明は、堆積物を除去するために気体を噴出することにより、メンテナンスのための液体消費を抑制できるとともに、コスト低減を図ることができ、又、廃液タンクも大型化することがない液体噴射装置のクリーニング方法及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、本発明は、ターゲットに対して液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから出された液体を滞留する廃液タンクと、を備えた液体噴射装置のクリーニング方法において、気体吹き出し装置を駆動して、前記廃液タンクに堆積した廃液由来の堆積物に気体を吹き付けて該堆積物を吹き飛ばすことを特徴とする液体噴射装置のクリーニング方法を要旨とするものである。
【0012】
本発明によれば、気体で廃液タンクに堆積した堆積物を吹き飛ばすことができるため、装置の機能不良がなくなり、信頼性の高いメンテナンスを行うことができる。又、従来と異なり、堆積物除去のために液体噴射ヘッドから出される液体を使用することがないため、メンテナンスのための液体消費を抑制でき、コスト低減を図ることができる。さらに、廃液タンク内に、堆積物を除去する装置を組み込むためのスペースが必要としないため、廃液タンクが大型化することがない効果がある。
【0013】
また、前記気体吹き出し装置が気体を上流側から吸引して下流側へ排出可能なポンプで構成される場合において該ポンプを駆動する際には、該ポンプの下流側を閉塞した状態でポンプを駆動することにより前記気体を吸引し、その気体の圧力が高まった時点で前記ポンプの下流側を開放して前記堆積物に前記気体を吹き付けることが好ましい。
【0014】
こうすると、堆積物に対して高圧の気体が一気に吹き付けられることになり、堆積物を強力に吹き飛ばすことができる。
この場合、前記ポンプは、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル内から液体を強制的に排出させる吸引ポンプと兼用しており、前記吸引ポンプの上流側を大気に開放した状態で、吸引ポンプを駆動し、前記廃液タンクに堆積した堆積物を気体で吹き飛ばすことが好ましい。
【0015】
こうすると、吸引ポンプにて液体噴射ヘッドから吸引された液体を排出する吐出口が、堆積物で塞がれても、気体で吹き飛ばすことができるため、装置の機能不良がなくなり、信頼性の高いメンテナンスを行うことができる。
【0016】
さらに、前記液体噴射ヘッドのクリーニング時に、前記液体噴射ヘッドに対してそのノズルを覆うように着脱自在に設けられるとともに、前記吸引ポンプの上流側に接続されるキャップを備え、前記吸引ポンプは、クリーニング時に前記キャップを介して、前記液体噴射ヘッドから前記ノズル内の液体を強制的に排出するために駆動するものであり、前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う際に、前記キャップで前記液体噴射ヘッドを覆う前に、前記吸引ポンプを該吸引ポンプの上流側を大気に開放した状態で駆動して、前記堆積物を気体で吹き飛ばすことが好ましい。
【0017】
こうすると、前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う際、前記キャップで前記液体噴射ヘッドを覆う前に、堆積物を気体で吹き飛ばすことができるため、クリーニング時において、装置の機能不良がなくなり、信頼性の高いメンテナンスを行うことができる。
【0018】
さらに、前記吸引ポンプを該吸引ポンプの上流側を大気に開放した状態で駆動する速度を、前記キャップで前記液体噴射ヘッドのノズルを覆った状態で前記吸引ポンプを駆動する速度よりも高速にすることが好ましい。
【0019】
こうすると、液体噴射ヘッドのクリーニングを行う際、前記キャップで前記液体噴射ヘッドを覆う前に、吸引ポンプを前記キャップで前記液体噴射ヘッドのノズルを覆った状態のときよりも高速に駆動することにより、効率的に、堆積物を吹き飛ばすことができる。
【0020】
さらに、前記堆積物に気体を吹き付けるために、駆動される前記吸引ポンプの総回転数を、クリーニング時の総回転数よりも多くすることが好ましい。
こうすると、液体噴射ヘッドのクリーニングを行う際、前記キャップで前記液体噴射ヘッドを覆う前に、吸引ポンプによりクリーニング時の総回転数よりも多く回転することにより、吹き付ける気体を多くして堆積物を吹き飛ばすことができる。
【0021】
又、ターゲットに対して液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから出された液体を滞留する廃液タンクと、備えた液体噴射装置において、前記廃液タンクに堆積した堆積物に気体を吹き付けて該堆積物を吹き飛ばす気体吹き出し装置を備えたことを特徴とする液体噴射装置としてもよい。
【0022】
こうすると、気体で廃液タンクに堆積した堆積物を吹き飛ばすことができるため、装置の機能不良がなくなり、信頼性の高いメンテナンスを行うことができる。又、従来と異なり、堆積物除去のために液体噴射ヘッドから出される液体を使用することがないため、メンテナンスのための液体消費を抑制でき、コスト低減を図る液体噴射装置とすることができる。
【0023】
又、前記液体噴射装置では、前記気体吹き出し装置は、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル内から液体を強制的に吸引して排出させる吸引ポンプであり、前記吸引ポンプの上流側を大気に開放した状態で、吸引ポンプを駆動し、前記廃液タンクに堆積した堆積物を気体で吹き飛ばすことが好ましい。
【0024】
こうすると、吸引ポンプにて液体噴射ヘッドから吸引された液体を排出する排出口が、堆積物で塞がれても、気体で吹き飛ばすことができるため、装置の機能不良がなくなり、信頼性の高いメンテナンスを行うことができる装置になる。
【0025】
さらに、前記液体噴射ヘッドのクリーニング時に、前記液体噴射ヘッドに対してそのノズルを覆うように着脱自在に設けられるとともに、前記吸引ポンプの上流側に接続されるキャップと、前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う際に、前記キャップで前記液体噴射ヘッドのノズルを覆う前に、前記吸引ポンプを該吸引ポンプの上流側を大気に開放した状態で駆動開始するように駆動制御する制御手段を備えることが好ましい。
【0026】
このように構成すると、前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う際、前記キャップで前記液体噴射ヘッドを覆う前に、堆積物を気体で吹き飛ばすことができるため、クリーニング時において、装置の機能不良がなくなり、信頼性の高いメンテナンスを行うことができる。
【0027】
さらに、前記制御手段は、前記吸引ポンプを該吸引ポンプの上流側を大気に開放した状態で駆動する速度を、前記キャップで前記液体噴射ヘッドのノズルを覆った状態で前記吸引ポンプを駆動する速度よりも、高速に制御することが好ましい。
【0028】
こうすると、液体噴射ヘッドのクリーニングを行う際、前記キャップで前記液体噴射ヘッドを覆う前に、吸引ポンプを前記キャップで前記液体噴射ヘッドのノズルを覆った状態のときよりも高速に駆動することにより、効率的に、堆積物を吹き飛ばすことができる。
【0029】
さらに、前記制御手段は、前記堆積物に気体を吹き付けるために、前記吸引ポンプの総回転数を、クリーニング時の総回転数よりも多くするように制御することが好ましい。
こうすると、液体噴射ヘッドのクリーニングを行う際、前記キャップで前記液体噴射ヘッドを覆う前に、吸引ポンプによりクリーニング時の総回転数よりも多く回転することにより、吹き付ける気体を多くして堆積物を吹き飛ばすことができる。
【0030】
さらに、前記制御手段は、前記堆積物の堆積促進因子の大きさ又は堆積度合いに応じて、前記吸引ポンプを駆動する速度及び前記吸引ポンプの総回転数のうち、少なくともいずれか一方を可変制御することが好ましい。
【0031】
こうすると、堆積促進因子の大きさ又は堆積度合いに応じて、吸引ポンプを駆動する速度及び前記吸引ポンプの総回転数のうち、少なくともいずれか一方を可変できる。すなわち、堆積促進因子の大きさが、堆積を促進していない場合は、そうでない場合よりも、吸引ポンプの総回転数を少なくする。又、堆積度合いが、小さい場合は、堆積度合いが大きい場合よりも、総回転数を少なくする。この結果、堆積が少ない場合や、堆積を促進していない場合には、そうでない場合よりも、少ない総回転数で、ポンプを駆動できる。
【0032】
又、一般に、吸引ポンプは、速度が速いと騒音が大きくなる。そこで、堆積促進因子の大きさが、堆積を促進していない場合は、そうでない場合よりも、吸引ポンプの速度を遅くすることにより、駆動による騒音を低減できる。
【0033】
又、堆積度合いが、小さい場合は、堆積度合いが大きい場合よりも、吸引ポンプの速度を遅くすることにより、駆動による騒音を低減できる。
さらに、前記廃液タンクに堆積する堆積物の堆積促進因子の大きさ又は堆積度合いを検出する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段の検出による堆積度合いに基づいて、前記吸引ポンプを駆動制御することが好ましい。
【0034】
こうすると、検出手段の堆積物の堆積促進因子の大きさ又は堆積度合いの検出結果に応じて、すなわち、堆積が少ない場合や、堆積を促進していない場合には、そうでない場合よりも、少ない総回転数で、ポンプを駆動できる。又、堆積促進因子の大きさが、堆積を促進していない場合や堆積度合いが小さい場合は、そうでない場合よりも、吸引ポンプの速度を遅くすることにより、駆動による騒音を低減できる。
【0035】
さらに、前記堆積促進因子は、前回クリーニングをしたときからクリーニングしていない放置時間であり、前記検出手段は、前記放置時間を計測する計測タイマであることが好ましい。
【0036】
こうすると、前回クリーニングをしたときからのクリーニングしていない放置時間に応じて、すなわち、放置時間が少ない場合には、多い場合よりも、少ない総回転数で、ポンプを駆動できる。又、放置時間が少ない場合には、多い場合よりも、吸引ポンプの速度を遅くすることにより、駆動による騒音を低減できる。
【0037】
さらに、前記堆積促進因子は、前記堆積物の環境温度であり、前記検出手段は、前記環境温度を検出する温度センサであることが好ましい、
こうすると、環境温度に応じて、すなわち環境温度が低い場合には、高い場合よりも、少ない総回転数で、ポンプを駆動できる。又、環境温度が低い場合には、高い場合よりも、吸引ポンプの速度を遅くすることにより、駆動による騒音を低減できる。
【0038】
さらに、前記堆積促進因子は、前記堆積物の環境湿度であり、前記検出手段は、前記環境湿度を検出する湿度センサであることが好ましい。
こうすると、環境湿度に応じて、すなわち環境湿度が高い場合には、低い場合よりも、少ない総回転数で、ポンプを駆動できる。又、環境湿度が高い場合には、低い場合よりも、吸引ポンプの速度を遅くすることにより、駆動による騒音を低減できる。
【0039】
さらに、前記堆積度合いは、前記堆積物の高さであり、前記検出手段は、前記堆積物の高さを検出する高さ検出手段であることが好ましい。
こうすると、前記堆積物の高さに応じて、すなわち堆積物の高さが低い場合には、高い場合よりも、少ない総回転数で、ポンプを駆動できる。又、堆積物の高さが低い場合には、高い場合よりも、吸引ポンプの速度を遅くすることにより、駆動による騒音を低減できる。
【0040】
また、前記気体吹き出し装置による気体吹き出し方向の下流側に開閉弁を備え、前記堆積物に気体を吹き付けるために前記気体吹き出し装置が駆動される際には、前記開閉弁が閉弁された状態で前記気体吹き出し装置が駆動開始されると共に、該気体吹き出し装置の駆動に伴い前記開閉弁よりも上流側で前記気体の圧力が高まった時点で前記開閉弁が開弁されるようにした構成とするのが好ましい。
【0041】
こうすると、開閉弁が開弁されると同時に堆積物に対して高圧の気体が一気に吹き付けられることになり、堆積物を強力に吹き飛ばすことができるようになる。
また、前記気体吹き出し装置による気体吹き出し方向の下流側に第1開閉弁と第2開閉弁を第1開閉弁の方が下流側となるように設けると共に、該第1開閉弁と第2開閉弁との間には第3開閉弁が設けられた分岐流路を介して前記気体を貯留可能な圧力室を接続し、前記堆積物に気体を吹き付けるために前記気体吹き出し装置が駆動される際には、前記第1開閉弁が閉弁されると共に前記第2開閉弁と第3開閉弁が開弁された状態で前記気体吹き出し装置が駆動開始され、該気体吹き出し装置の駆動に伴い前記圧力室内の前記気体の圧力が高まった時点で前記第2開閉弁が閉弁されると共に第1開閉弁と第3開閉弁が開弁されるようにした構成とするのが好ましい。
【0042】
こうすると、気体吹き出し装置から吹き出される気体の圧力よりも高圧の気体を圧力室内に蓄積でき、その高圧の気体を堆積物に対して一気に吹き付けられることになり、堆積物を更に強力に吹き飛ばすことができるようになる。また、圧力室内に蓄積された高圧の気体を堆積物に向けて吹き付ける際には、気体吹き出し装置を駆動停止させておくことも可能となるため、吸引ポンプが気体吹き出し装置を兼用する場合には、キャップが液体噴射ヘッドのノズルを封止した状態にあっても不必要にノズル内から液体が吸引されることもない。
【0043】
また、前記気体吹き出し装置は、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル内から液体を強制的に吸引して排出させる吸引ポンプとは別に、前記廃液タンクに堆積した堆積物に向けて気体を吹き付け可能に設けられた構成としてもよい。
【0044】
こうすると、吸引ポンプの駆動とは無関係に気体吹き出し装置を駆動して堆積物を吹き飛ばすことが可能になる。また、吸引ポンプの吸引能力よりも強力に気体吹き出し装置の気体吹き出し能力をすることも容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の液体噴射装置としてのプリンタ11は、フレーム12、ガイド部材14、キャリッジ15、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド20、インクカートリッジ21、プラテン23、廃液タンク25、ヘッドクリーニング機構27を備える。
【0046】
フレーム12は、プリンタ11の装置全体を覆うものである。ガイド部材14は、このフレーム12の長手方向に沿って架設されている。又、キャリッジ15は、ガイド部材14に対して移動可能に挿通支持されている。そして、キャリッジ15は、タイミングベルト28を介してキャリッジモータ29に接続されており、キャリッジモータ29の駆動により、ガイド部材14に沿う方向、すなわち、主走査方向Xに沿って、往復移動される。
【0047】
記録ヘッド20は、前記キャリッジ15の下部に搭載されており、その記録ヘッド20の下面(以下、「ノズル形成面」ともいう。)には、図4に示すように、複数(図4には4つのみ図示)のノズル20aが形成されている。インクカートリッジ21は、キャリッジ15の上部に搭載されており、記録ヘッド20において圧電素子(図示しない)が駆動されることによって、インクカートリッジ21から記録ヘッド20へと液体としてのインクが供給され、記録ヘッド20のノズル20aから液体としてのインク滴が吐出される。
【0048】
プラテン23は、ターゲットとしての紙Pを支持する支持台である。そして、プラテン23は、前記フレーム12に対して、ガイド部材14と平行となるようにして架設されており、記録ヘッド20と対向している。又、プラテン23は、図2の右側の端部に、上下方向に貫通する貫通孔23aを備えている。又、このプラテン23上には、図示しない紙送り機構によって、主走査方向Xと直交する副走査方向Y(図1参照)に沿って紙Pが給送されるようになっており、紙Pはこのプラテン23上において、前記記録ヘッド20に対向するようになる。
【0049】
そして、前記キャリッジ15の記録ヘッド20が、紙Pと対向する領域内で、ガイド部材14に沿って往復移動されながら、印刷データに基づいて前記圧電素子が駆動されると、記録ヘッド20から紙Pに対してインク滴が吐出され、印刷が行われる。
【0050】
図2に示すように、廃液タンク25は、上面が開口する箱形に形成されている。そして、この廃液タンク25は、前記プラテン23を下方に投影したときに、廃液タンク25の上部開口が、その投影した部分全体を包含することができるような大きさ及び位置に設けられている。この廃液タンク25には、多孔質素材、例えばパルプ材等による廃液吸収材31が、積層されるようにして複数備えられている。
【0051】
又、同廃液タンク25の図2の右端部には、プラテン23の貫通孔23aに対向する位置にフラッシング液受け部37が区画されている。従って、記録ヘッド20はプラテン23の貫通孔23aを介して、このフラッシング液受け部37にインクを噴射することができる。この記録ヘッド20が貫通孔23aと対向する位置は、以下では、キャップ開位置という。更に、このフラッシング液受け部37には、図2〜4に示すように、後述する吸引ポンプ34に接続している吸引チューブ33の一端部が位置している。従って、吸引ポンプ34によりインクが廃液タンク25のフラッシング液受け部37に排出される。又、フラッシング液受け部37は、廃液吸収材31に隣接している。従って、フラッシング液受け部37のインクは、廃液吸収材31に接する部分から廃液吸収材31に吸収される。
【0052】
なお、フラッシングとは、プリンタ11において、記録ヘッド20に対して印刷とは関係のない駆動信号を出力してノズル20aからインク滴を吐出させる動作のことをいう。
(ヘッドクリーニング機構27)
次に、ヘッドクリーニング機構27について図4を参照して説明する。
【0053】
ヘッドクリーニング機構27は、プリンタ11の図2の右側端部、すなわち、非印刷領域(すなわち、ホームポジション)に設けられている。そして、ヘッドクリーニング機構27は、キャッピング装置32と、吸引チューブ33と、同吸引チューブ33の途中に設けられている気体噴出し装置としての吸引ポンプ34とを備える。
【0054】
キャッピング装置32は、キャップ35と、同キャップ35を上下方向に移動させるための昇降装置70(図5及び図6参照)とからなる。
昇降装置70について説明する。
【0055】
図5及び図6に示すように、キャッピング装置32のフレームFには、スライダ71が摺動可能に支持され、このスライダ71にはキャップ35が支持されている。スライダ71の下底部には、ほぼ水平方向に向かって延びる一対の長孔71aが形成されている(図5、図6では、一方の長孔71aのみ図示されている。)。各長孔71a内には、フレームFに対して回動自在に取り付けられたアーム74の自由端側に配置された一対の水平軸76が移動自在に係入されている。この結果、スライダ71は、アーム74を介してフレームFに対して円弧状軌跡をもって立ち上がりが可能である。すなわち、スライダ71は、フレームFに支持された状態で昇降自在とされている。
【0056】
スライダ71の非印刷領域側の端部両側にはそれぞれガイドピン71bが形成されている。この一対のガイドピン71bはフレームFに形成された一対の案内溝77に係入されることにより支持されている。案内溝77は、一端部に形成された低所部77aと、他端部に水平に形成された高所部77bと、両者を接続する傾斜部77cとにより構成されており(図6参照)、これらが互いに連通されている。
【0057】
スライダ71には、上方に延びる係合部72が設けられており、その下方にはフレームFとの間にバネ部材73(図6参照)が張設されている。このため、スライダ71は係合部72がキャリッジ15の係合部15aに係合して図5の右方に移動することにより、図6に示すように、バネ部材73の弾性力に抗して水平軸76を中心として右上方に移動する。又、スライダ71の係合部72とキャリッジ15の係合部15aとの係合が解かれると、図5に示すように、バネ部材73の復元力により水平軸76を中心として左下方へ移動する。このような昇降装置70の構成により、キャップ35が上下動可能、すなわち、昇降自在となっている。
【0058】
すなわち、キャッピング装置32は、キャリッジ15が非印刷領域(すなわち、ホームポジション)まで移動すると、昇降装置70がキャップ35を上昇させ、記録ヘッド20の下面(ノズル形成面)に当接してノズル20aの開口を封止するように構成されている。又、記録ヘッド20内のインクを吸引するクリーニングが行われる際には、記録ヘッド20のノズル形成面をキャップ35が封止し、キャップ35に接続された吸引ポンプ34によりキャップ35内に負圧が印加され、記録ヘッド20内のインクが吸引される。吸引されたインクは、フレーム12内の下方に設置された廃液タンク25に収容されるようになっている。なお、ここでのクリーニングとは、記録ヘッド20のノズル20a内において増粘したインクや固化したインクを、廃液タンク25に強制的に排出する動作をいう。
【0059】
図4は、記録ヘッド20の下面(ノズル形成面)を封止したキャップ35と吸引ポンプ34とを示す模式図であり、便宜上、要部のみ断面を示す。
キャップ35は、キャップホルダ35aと、キャップホルダ35aの上端に配設された、エラストマー等の可撓性素材からなる四角枠形状のキャップ部材35bとから構成されている。キャップ35の底面には、排出口35cが形成されており、この排出口35cには吸引チューブ33の一端が接続されている。吸引チューブ33の他端は、廃液タンク25に接続しており、排出口35cと廃液タンク25との間には、吸引ポンプ34が配設されている。吸引チューブ33は、シリコンゴム等の可撓性材料によって形成されている。以下、吸引チューブ33の他端開口は、吐出口33aという。
【0060】
そして、キャップ35が昇降装置70により上昇し、キャップ部材35bが記録ヘッド20のノズル形成面に当接すると、記録ヘッド20のノズル形成面とキャップ35で囲まれた空間は、ほぼ密閉状態となる。この状態で吸引ポンプ34を駆動させると、この空間内の、気体としての空気やインク等が吸引されて負圧となり、この負圧がノズル20aに加わる。このため、ノズル20a内のインクは、キャップホルダ35aの底面に形成された排出口35cから排出される。
【0061】
又、キャップホルダ35a内には、シート状のインク吸収材35dが設けられている。このインク吸収材35dは、ノズル20aから吐出されるインクを受け止めて、インクを一時保持する。そして、キャップ35によりノズル形成面が封止されたときに、キャップ35内の湿度を高く保ち、ノズル20a内のインクの乾燥を防止する。
【0062】
吸引チューブ33の途中に設けられた吸引ポンプ34は、フレーム12に固定されており、ポンプフレーム36aと、ポンプホイル36bと、ポンプホイル36bに形成されたローラ支持溝36c,36dに沿ってそれぞれ移動するローラ36e,36fとを有している。ポンプフレーム36aは、吸引チューブ33の外側方向への移動を円弧状に規制しており、ポンプフレーム36aとポンプホイル36bとの間には、吸引チューブ33が重なり部(即ち、吸引チューブ33がポンプフレーム36a内に重なって配設された部分)を含んだ状態で配置されている。
【0063】
このポンプホイル36bは、紙送りモータ30(図7参照)の駆動により回転する。ポンプホイル36bを、正方向(図4でポンプホイル36b内に示す矢印方向、以下、ポンプ吸引方向という)に回転させると、各ローラ36e,36fがローラ支持溝36c,36dのホイル外周部側に移動し、吸引チューブ33を順次押し潰しながら回転する。この押し潰し状態を、以後、ポンプ噛み合わせ状態という。
【0064】
この結果、吸引ポンプ34の吸引時には上流側の吸引チューブ33の内部が減圧されるようになっている。そして、ノズル形成面を封止したキャップ35の内部の空気又はインクは、ポンプホイル36bの回転動作により、徐々に廃液タンク25方向へ排出されていくため、キャップ35内には負圧が蓄積されていく。
【0065】
又、ポンプホイル36bを逆方向(図4でポンプホイル36b内に示す矢印方向と反対方向)に回転させると、各ローラ36e,36fがローラ支持溝36c,36dのホイル内周側に移動する。この結果、各ローラ36e,36fがそれぞれ吸引チューブ33に少しだけ接するレリース状態になる。その結果、吸引ポンプ34の内部の圧力は、大気圧となる。
【0066】
(制御回路40)
次に、プリンタの制御回路40を図7のブロック図を参照して説明する。
印刷制御部50は、プリンタのホストコンピュータからの印刷データに基づいて、液滴噴射データとしてのビットマップデータを生成する。そして、このデータに基づいてヘッド駆動部51により駆動信号を発生させて、記録ヘッド20からインクを吐出させる。
【0067】
制御手段としてのクリーニング制御部60は、プリンタ11の操作パネル等(図示しない)に配置されたクリーニング指令スイッチSWのオン操作信号を受けたクリーニング(CL)指令検知部63からのクリーニング実行命令により、クリーニング動作を実行させる。この場合、クリーニング制御部60は、ホストコンピュータ(図示しない)からのクリーニングシーケンスプログラムを取り込むクリーニングシーケンス制御部69よりシーケンス制御信号を受けてポンプ駆動部65を介して紙送りモータ30を制御する。すなわち、クリーニング制御部60は、ポンプ駆動部65、紙送りモータ30を介して吸引ポンプ34を制御する。ポンプ駆動部65は、紙送りモータ30を駆動する回路である。紙送りモータ30は、ポンプ駆動部65から出力されたパルス信号に応じて、所定の角度ずつ回転する。このため、吸引ポンプ34は、ポンプ駆動部65からの入力パルス信号の周波数に応じて、回転速度が可変となっており、又、ポンプ駆動部65からの入力パルス信号の出力継続時間に応じて吸引ポンプ34の総回転数が可変となっている。
【0068】
一方、クリーニングシーケンス制御部69からは、キャリッジモータ制御部59にも制御信号が送出されるように構成されており、これによりキャリッジモータ29が駆動制御される。
【0069】
計測タイマ66は、前回クリーニングしたときからの経過時間T1(すなわち、クリーニングされていない放置時間)を計時する。すなわち、計測タイマ66はクリーニングの実行を終了する毎に、計時を開始し、次のクリーニングのクリーニング実行命令を入力するまでの時間を計時する。温度センサ67は、廃液タンク25に設けられており、フラッシング液受け部37の環境温度を検出し、その検出信号をクリーニング制御部60に出力する。湿度センサ68は、廃液タンク25に設けられており、フラッシング液受け部37の環境湿度を検出し、その検出信号をクリーニング制御部60に出力する。
【0070】
次に、上記のように構成されたプリンタにおいてなされる記録ヘッド20のクリーニングシーケンスについて、図8に示したフローチャートに基づいて説明する。
以下に、説明するクリーニングシーケンスは、図7に示したクリーニングシーケンス制御部69に格納された制御プログラムに基づいて、クリーニングシーケンス制御部69により主に、クリーニング制御部60及びキャリッジモータ制御部59に対して制御信号を供給することにより、実行される。又、クリーニング制御部60と、クリーニングシーケンス制御部69間は、各種データの送受信が可能である。
【0071】
ユーザが、クリーニング指令スイッチSWをオン操作すると、クリーニング指令検知部63からクリーニング実行命令がクリーニング制御部60に送出される。
(S10)
クリーニング制御部60はクリーニング実行命令を受信すると、ステップ(以下、ステップを単にSで記す)10において、前回クリーニングからの経過時間T1が基準時間T0以上か否かを、現在の計測タイマ66の計時に基づいて判定する。なお、基準時間T0は、予め、クリーニングシーケンス制御部69に格納されている。
【0072】
クリーニング制御部60は、S10において、経過時間T1が、基準時間T0以上であれば、判定を「YES」とし、S21に移行する。又、クリーニング制御部60は、S10において、経過時間T1が、基準時間T0未満であれば、判定を「NO」とし、S11に移行する。
【0073】
なお、基準時間T0は、排出された廃液インクが常温(例えば、20℃)、湿度50〜80%の下で、そのインク溶媒が蒸発して、増粘又は乾燥して、廃液インクの固形成分が堆積するのに必要な最短時間である。この値は、試験等により得ることができる。従って、経過時間T1が基準時間T0以上の場合は、記録ヘッド20から廃液タンク25内に排出された廃液インクのインク溶媒が蒸発して乾燥し、或いは増粘して、その固形性分が、堆積している可能性が高く、廃液インクが堆積していると見なされるのである。
【0074】
(S11)
S11において、クリーニング制御部60は、温度センサ67が検出したフラッシング液受け部37の環境温度、すなわち、検出温度K1が、基準温度K0以上か否かを判定する。なお、基準温度K0以上の温度は、廃液インクが、固形又は、増粘しやすい温度とされており、すなわち、その固形性分が、堆積している可能性が高く、廃液インクが堆積していると見なされる温度である。基準温度K0は、試験等により、得ることができる。この基準温度K0の値は、予め、クリーニングシーケンス制御部69に格納されている。クリーニング制御部60は、S11において、検出温度K1が、基準温度K0以上であれば、判定を「YES」とし、S21に移行する。又、クリーニング制御部60は、S11において、検出温度K1が、基準温度K0未満であれば、判定を「NO」とし、S12に移行する。
【0075】
(S12)
S12において、クリーニング制御部60は、湿度センサ68が検出したフラッシング液受け部37の環境湿度、すなわち、検出湿度W1が、基準湿度W0以下か否かを判定する。なお、基準湿度W0以下の湿度は、廃液インクが、固形又は、増粘しやすい湿度とされており、すなわち、その固形性分が、堆積している可能性が高く、廃液インクが堆積していると見なされる湿度である。基準湿度W0は、試験等により得ることができる。この基準湿度W0は、予め、クリーニングシーケンス制御部69に格納されている。クリーニング制御部60は、S12において、検出湿度W1が、基準湿度W0以下であれば、判定を「YES」とし、S21に移行する。又、クリーニング制御部60は、S12において、検出湿度W1が、基準湿度W0を越えていれば、判定を「NO」とし、S13に移行する。
【0076】
上記した、S10,S11,S12の経過時間(すなわち放置時間)、環境温度、環境湿度は、廃液インクの堆積を促進する堆積促進因子に相当する。
(S13)
S13は、総回転数としての吸引回転数RTと回転速度SPの設定ステップである。S13においては、クリーニング制御部60は、吸引回転数RTをN1に、及び回転速度SPをV1にセットし、S14に移行する。N1及び、V1の値は、予めクリーニングシーケンス制御部69に格納されており、S10〜A12の判定がいずれも「NO」のときに読み出される値である。
【0077】
(S21)
S21においては、クリーニング制御部60がS10,S11或いはS12において、「YES」と判定した場合の総回転数としての吸引回転数RTと回転速度SPの設定ステップである。S21では、クリーニング制御部60は、吸引回転数RTをN2に、及び回転速度SPをV2にセットし、S14に移行する。N2、及びV2の値は、予めクリーニングシーケンス制御部69に格納されている。
【0078】
ここで、吸引回転数RTとして設定されるN1とN2の大小関係は、N1<N2としている。又、回転速度SPとして設定されるV1とV2の大小関係は、V1<V2としている。例えば、本実施形態では、N1を3回転、N2を9回転としている。又、V1を0.5rpsとし、V2を3rpsとしている。
【0079】
このようにS13よりも、S21において、吸引回転数RT及び回転速度SPを、大きくしている理由は、S10、S11,S12においては、「YES」と判定されて、廃液インクが堆積していると見なしているため、後述するS15における、インク吹き飛ばしを短時間、かつ、高速で行うためである。このように、高速の回転速度で吸引ポンプ34を駆動するが、駆動時間は短時間である結果、吸引ポンプ34の駆動による騒音の発生は短時間で済む。
【0080】
又、逆に、S21よりも、S13において、吸引回転数RT及び回転速度SPを、小さくしている理由は、S10、S11,S12においては、いずれも「NO」と判定されて、廃液インクが堆積していないと判定しているため、後述するS15における、インク吹き飛ばしを長時間、かつ、低速で行うためである。このように低速の回転速度で吸引ポンプ34を駆動する結果、吸引ポンプ34の駆動による騒音の発生が抑制される。
【0081】
(S14)
S13,又はS21の設定ステップの処理がされた後、S14では、クリーニングシーケンス制御部69は、制御信号をキャリッジモータ制御部59に送出させ、記録ヘッド20がキャップ開位置に位置するようにキャリッジモータ29を駆動制御する。
【0082】
(S15)
S15では、クリーニング制御部60は、ポンプ駆動部65を制御し、ポンプ駆動部65から制御信号を紙送りモータ30に出力する。この制御信号により、紙送りモータ30を駆動して、吸引ポンプ34をポンプ吸引方向へ回転させるようにして、回転速度SPで、吸引回転数RT分回転する。すなわち、S15では、吸引ポンプ34に駆動力が与えられることにより、吸引ポンプ34における各ローラ36e,36fは、可撓性の吸引チューブ33を押し潰す態勢となるポンプ噛み合わせ状態とされる。
【0083】
又、S15では、吸引ポンプ34は、S13又はS21で設定された回転速度SPで、吸引回転数RT分回転される。
ここで、S21で設定された回転速度SP(=V2=3rps)で、吸引回転数RT(=N2=9回転)分、吸引ポンプ34がポンプ吸引方向へ回転した場合は、吸引ポンプ34の上流側は、大気に開放された状態で、その吸引動作が実行され、S13で設定された回転速度SPよりも高速で回転される。このことにより、吸引チューブ33の吐出口33aから、廃液タンク25内のフラッシング液受け部37に堆積した廃液インク由来の堆積物100に向かって空気が勢いよく吹き出され、堆積物100を吹き飛ばす。なお、堆積物100は、記録ヘッド20からインク滴がフラッシングにより、貫通孔23aを介して吐出された場合のインクや、吐出口33aを介して排出された廃液インクのインク溶媒が蒸発することにより、増粘した場合や、固化した場合に形成される。廃液インク由来の堆積物100は、堆積した廃液由来の堆積物に相当する。
【0084】
又、この場合は、S13で設定された吸引回転数RT(=N1=3回転)よりも多い、吸引回転数RT(=N2=9回転)で回転する。この場合の回転時間は、3秒(=N2/V2)であり、S13で設定された回転速度と回転数より導き出される回転時間6秒(=N1/V1)よりも短い時間である。このように、高速の回転速度で吸引ポンプ34を駆動するが、駆動時間は短時間である結果、吸引ポンプ34の駆動による騒音の発生は短時間で済む。
【0085】
一方、S13で設定された回転速度SP(=V1=0.5rps)で、吸引回転数RT(=N1=3回転)分、吸引ポンプ34がポンプ吸引方向へ回転した場合は、吸引ポンプ34の上流側は、大気に開放された状態で、その吸引動作が実行され、S21で設定された回転速度SPよりも低速で回転される。このことにより、吸引チューブ33の吐出口33aから、廃液タンク25内のフラッシング液受け部37に堆積した廃液インク由来の堆積物100に向かって空気が勢いよく吹き出され、堆積物100を吹き飛ばす。
【0086】
又、この場合は、S21で設定された吸引回転数RT(=N2=9回転)よりも少ない、吸引回転数RT(=N1=3回転)で回転する。この場合の回転時間は、6秒(=N1/V1)であり、S21で設定された回転速度と回転数より導き出される回転時間3秒(=N2/V2)よりも長い時間である。このように、低速の回転速度で吸引ポンプ34を駆動する結果、吸引ポンプ34の駆動による騒音の発生が抑制できる。
【0087】
(S16)
S15のステップの後、S16においては、クリーニングシーケンス制御部69は、制御信号をキャリッジモータ制御部59に送出させ、キャリッジ15がホームポジションに位置するようにキャリッジモータ29を駆動制御する。以下では、キャリッジ15がホームポジションに位置する位置を、記録ヘッド20のキャップ閉位置という。このように記録ヘッド20がキャップ閉位置に移動すると、昇降装置70がキャップ35を上昇させ、記録ヘッド20に嵌合してノズル20aの開口を封止する。
【0088】
(S17)
S17では、クリーニング制御部60からの指令を受けたポンプ駆動部65は、紙送りモータ30を駆動して、吸引ポンプ34をポンプ吸引方向へ回転駆動させて本吸引動作を行わせる。この結果、キャップ35内の内部空間が負圧に吸引され、記録ヘッド20のノズル20a内からインクがキャップ35内に吸引排出される。このときの吸引ポンプ34は、S21で設定される回転速度と同速とされており、高速で回転される。又、このときの総回転数はS21で設定される吸引回転数RTよりは、少なく、かつS13で設定される吸引回転数RTよりは多くされている。本実施形態では、本吸引動作の総回転数は、5回転とされており、従って、回転時間は、1.67秒(=5回転/3rps)とされ、S21で設定された吸引回転数RT及び回転速度SPで決定される回転時間よりも短時間とされている。すなわち、S17の本吸引動作は、短時間で実行される。
【0089】
(S18)
続くS18では、クリーニングシーケンス制御部69は、制御信号をキャリッジモータ制御部59に送出させ、記録ヘッド20がキャップ開位置に位置するようにキャリッジモータ29を駆動制御する。この記録ヘッド20のキャップ開位置への移動により、昇降装置70は、キャップ35を下降させて、記録ヘッド20から離間させ、キャップ35による記録ヘッド20のノズル20aの開口に対する封止を解く。
【0090】
(S19)
S19では、クリーニング制御部60からの指令を受けたポンプ駆動部65は、紙送りモータ30を駆動して、吸引ポンプ34をポンプ吸引方向へ回転駆動させて空吸引動作を行わせる。この結果、キャップ35内のインクは、吸引ポンプ34を介して吸引チューブ33の吐出口33aから廃液タンク25内に排出される。このときの吸引ポンプ34は、S21で設定される回転速度と同速とされており、高速で回転される。又、このときの総回転数はS21で設定される吸引回転数RTよりは、多くされている。本実施形態の空吸引動作では、総回転数は、15回転とされており、従って、回転時間は、5秒(=15回転/3rps)とされている。
【0091】
(S20)
続いて、S20では、キャリッジモータ制御部59からキャリッジモータ29に制御信号が与えられ、キャリッジモータ29の駆動により、記録ヘッド20はキャップ閉位置に移動する。記録ヘッド20のキャップ閉位置の移動により、昇降装置70がキャップ35を上昇させ、記録ヘッド20に嵌合してノズル20aの開口を封止する。この結果、記録ヘッド20のノズル形成面はキャップ35により封止され、この状態でクリーニング動作が終了する。
【0092】
第1実施形態では、貫通孔23aを介して記録ヘッド20のノズル20aから噴射されたインクや、或いは、吸引ポンプ34に吸引されて吐出口33aから廃液タンク25内に排出されたインク(廃液インク)が、前回のクリーニングから基準時間T0以上の長期間経過した場合、廃液インクが堆積しているものと見なす。
【0093】
又、検出温度K1が、基準温度K0以上の場合や、検出湿度W1が基準湿度W0以下の場合にも、廃液インクが堆積しているものと見なす。
この結果、廃液インクが堆積していると見なされた場合には、大気開放した状態の吸引ポンプ34を吸引駆動することにより、噛み合わせ状態で吸引した空気を、吐出口33aから吹き出して堆積物100を吹き飛ばすことができる。
【0094】
又、本実施形態では、S17のインクを吸引する本吸引動作の前に、S15において、吸引ポンプ34の上流側を大気開放した状態で、堆積物100を空気で吹き飛ばすようにしているため、必要以上にインクを無駄に使用しない効果がある。
【0095】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図9〜11を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して、その説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0096】
第2実施形態では、計測タイマ66,温度センサ67,湿度センサ68が省略されており、その代わりに、図9に示すように、記録ヘッド20のノズル形成面に高さ検出手段としての高さセンサ80が設けられているところが異なっており、他の構成は第1実施形態と同一である。
【0097】
高さセンサ80は、発光部81と受光部82を有し、記録ヘッド20がキャップ開位置(図9の2点鎖線で示す位置)に位置する際に、発光部81から発せられた光を受光部82で受けることにより、図9に示す高さセンサ80の先端から堆積物100の頂点までの距離Mを検出する。そして、高さセンサ80は距離Mに基づいて、図10に示すように、クリーニング制御部60に対して、堆積物100の高さH1(=Hs−M)を入力するようにされている。ここで、堆積物100の高さH1は、廃液タンク25の底面から堆積物100の頂点までの高さである。又、Hsは、廃液タンク25の底面から、高さセンサ80までの距離である。
【0098】
図11は、第2実施形態のプリンタ11においてなされる記録ヘッド20のクリーニングシーケンスのフローチャートであり、第1実施形態とは、S10〜S12が省略されて、その代わりに、S22が実行されるところが、異なっている。
【0099】
S22では、クリーニング制御部60は、高さセンサ80から入力した堆積物100の高さH1が、基準高さH0以上か否かを判定する。
なお、基準高さH0以上の高さは、廃液インクの堆積物100が、吐出口33aを塞ぐ高さとされている。基準高さH0の値は、予め、クリーニングシーケンス制御部69に格納されている。クリーニング制御部60は、S22において、検出した高さH1が、基準高さH0以上であれば、判定を「YES」とし、S21に移行する。又、クリーニング制御部60は、S22において、検出した高さH1が、基準高さH0未満であれば、判定を「NO」とし、S13に移行する。
【0100】
他のステップは、図11に示すように第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第2実施形態では、堆積物100の高さH1、すなわち、堆積度合いに応じて、吸引ポンプ34を駆動する回転速度及び吸引ポンプ34の総回転数を可変できる。こうすることにより、堆積物100の高さに応じて、すなわち堆積物100の高さが、基準高さH0よりも低い場合には、高い場合よりも、少ない総回転数で、吸引ポンプ34を駆動できる。又、堆積物100の高さが基準高さH0よりも低い場合には、高い場合よりも、吸引ポンプ34の速度を遅くすることにより、駆動による騒音を低減できる。
【0101】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図12を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して、その説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0102】
第3実施形態では、吸引ポンプ34の下流側にクリーニング制御部60により開閉制御される開閉弁Vが設けられている。そして、この開閉弁Vは、記録ヘッド20がキャップ開位置にあって吸引ポンプ34が堆積物100を吹き飛ばすために回転開始した当初には閉弁(閉塞)され、その後において所定回数分だけ吸引ポンプ34が回転した時点で開弁(開放)されるようになっている。
【0103】
すなわち、この第3実施形態のプリンタ11においてなされる記録ヘッド20のクリーニングシーケンスのフローチャートは、図8に示す第1実施形態のフローチャートの場合と同じステップ構成であり、そのS15において開閉弁Vの開閉制御の処理が加わった点でのみ第1実施形態とは相違している。以下、第3実施形態におけるS15の処理内容について説明する。
【0104】
さて、S15において、クリーニング制御部60は、ポンプ駆動部65の制御に先立ち、開閉弁Vを閉弁制御する。そして、この開閉弁Vを閉弁させた後に、ポンプ駆動部65を制御して紙送りモータ30を駆動させることにより、S13又はS21で設定された回転速度SPで、且つ設定された吸引回転数RTに所定回転数(例えば、吸引回転数RTと同回転数)を加えた回転数分、吸引ポンプ34をポンプ吸引方向に回転させる。
【0105】
すると、吸引ポンプ34の回転に伴い開閉弁Vよりも上流側における吸引チューブ33内の空気の圧力が高まり、その空気の圧力の高まりと対応するように、クリーニング制御部60は、吸引ポンプ34が回転開始から所定回転数分だけ回転したところで、開閉弁Vを開弁制御する。その結果、その後において更に吸引回転数RT分だけ回転を続ける吸引ポンプ34側から開閉弁Vの開弁と同時に一気に高圧の空気が下流側へと送られ、その高圧の空気が吸引チューブ33の吐出口33aから噴出して堆積物100を強力に吹き飛ばす。
【0106】
このように、第3実施形態では、吸引ポンプ34の下流側に設けられた開閉弁Vを閉弁した状態で吸引ポンプ34を回転開始させた後、開閉弁Vよりも上流側における吸引チューブ33内の空気の圧力が高まった時点で開閉弁Vを開弁することにより、吸引チューブ33の吐出口33aから一気に噴出される高圧の空気で堆積物100を強力に吹き飛ばすことができる。
【0107】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を図13を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して、その説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0108】
第4実施形態では、吸引ポンプ34の下流側にクリーニング制御部60により開閉制御される第1開閉弁V1と第2開閉弁V2が第1開閉弁V1の方を下流側に位置させるようにして設けられている。また、第1開閉弁V1と第2開閉弁V2との間には吸引チューブ33から分岐した分岐チューブ(分岐流路)45を介して圧力室46が吸引チューブ33内と連通するように接続されている。そして、この分岐チューブ45の途中にはクリーニング制御部60により開閉制御される第3開閉弁V3が設けられている。
【0109】
記録ヘッド20がキャップ開位置にあって吸引ポンプ34が堆積物100を吹き飛ばすために回転開始した当初には、まず、第1開閉弁V1が閉弁(閉塞)されると共に、第2開閉弁V2と第3開閉弁V3が開弁(開放)される。そして、その後において所定回数分だけ吸引ポンプ34が回転した時点で、第2開閉弁V2が閉弁(閉塞)されると共に、第1開閉弁V1と第3開閉弁V3が開弁(開放)されるようになっている。
【0110】
すなわち、この第4実施形態のプリンタ11においてなされる記録ヘッド20のクリーニングシーケンスのフローチャートは、図8に示す第1実施形態のフローチャートの場合と同じステップ構成であり、そのS15において第1〜第3の各開閉弁V1,V2,V3の開閉制御の処理が加わった点でのみ第1実施形態とは相違している。以下、第4実施形態におけるS15の処理内容について説明する。
【0111】
さて、S15において、クリーニング制御部60は、ポンプ駆動部65の制御に先立ち、第1〜第3の各開閉弁V1,V2,V3をそれぞれ開閉制御する。すなわち、第1開閉弁V1を閉弁(閉塞)させる一方、第2開閉弁V2と第3開閉弁V3を開弁(開放)させる。そして、その状態において、ポンプ駆動部65を制御して紙送りモータ30を駆動させることにより、S13又はS21で設定された回転速度SPで、且つ設定された吸引回転数RTに所定回転数(例えば、吸引回転数RTと同回転数)を加えた回転数分、吸引ポンプ34をポンプ吸引方向に回転させる。
【0112】
すると、吸引ポンプ34の回転に伴い吸引チューブ33から分岐チューブ45を介して圧力室46内に空気が流入し、その圧力室46内において空気の圧力が蓄積されて高圧になる。そして、その圧力室46内の空気圧の高まりと対応するように、クリーニング制御部60は、吸引ポンプ34が回転開始から所定回転数分だけ回転したところで、第2開閉弁V2を閉弁(閉塞)させると共に、第1開閉弁V1と第3開閉弁V3を開弁(開放)させる。その結果、第1開閉弁V1の開弁と同時に圧力室46内に蓄積されていた高圧の空気が一気に分岐チューブ45から吸引チューブ33内を下流側へと送られ、その高圧の空気が吸引チューブ33の吐出口33aから噴出して堆積物100を強力に吹き飛ばす。
【0113】
このように、第4実施形態では、吸引ポンプ34の下流側に設けられた圧力室46内に空気を高圧となるように蓄積し、その圧力が高まった高圧の空気を圧力室46内から各開閉弁V1,V2,V3を開閉制御することにより、吸引チューブ33の吐出口33aから一気に噴出して堆積物100を強力に吹き飛ばすことができる。なお、その際には、第2開閉弁V2が閉弁されているため、キャップ35が記録ヘッド20のノズル形成面を封止していたとしても記録ヘッド20のノズル20a内からインクが吸引されることはない。一方、堆積物を吹き飛ばすことなく、廃液インクを廃液タンク25内に排出する際には、第2開閉弁V2が閉弁されると共に第1開閉弁V1と第2開閉弁V2が開弁された状態において、吸引ポンプ34が駆動される。
【0114】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態を図14を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して、その説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0115】
第5実施形態では、吸引ポンプ34とは別に、クリーニング制御部60により駆動制御される空気吹き出し専用の空気ポンプ47がフレーム12の下方に設けられ、この空気ポンプ47から空気吹き出しチューブ48が廃液タンク25内に導入されている。そして、空気ポンプ47の駆動に伴い空気吹き出しチューブ48から吹き出される高圧の空気にて廃液タンク25内に堆積した堆積物を強力に吹き飛ばすようになっている。すなわち、クリーニング制御部60は、高さセンサ80から入力した堆積物100の高さH1が基準高さH0以上となった場合に空気ポンプ47を駆動して堆積物を吹き飛ばすようになっている。この場合には、吸引ポンプ34の駆動状態と関係なく、空気ポンプ47を駆動することにより、任意に堆積物100を吹き飛ばすことができる。
【0116】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更してもよい。
○ 第1実施形態では、S10,S11,S12の各ステップを組み合わせたが、S10を残して、S11,S12を省略してもよい。又、S11を残して、S10,S12を省略してもよい。さらに、又、S12を残して、S10,S112を省略してもよい。又、S10,S11を残して、S12を省略してもよい。S11,S12を残して、S10を省略してもよい。さらには、S10,S12を残して、S11を省略してもよい。
【0117】
○ 前記第1〜第4実施形態では、吸引ポンプ34又は空気ポンプ47から吹き出される空気にて堆積物100を吹き飛ばすようにしたが、気体吹き出し装置は、吸引ポンプ34又は空気ポンプ47に限定されるものではない。例えば、高圧ガス(空気)が充填されたガスタンクをフレーム12内に配置し、そのガスタンクから吹き出される高圧ガスにより、堆積物100を吹き飛ばすようにしてもよい。このようにすれば、ガスタンクからポンプよりも高圧の空気を吹き出すことが可能になる。また、そのようなガスタンクをインクカートリッジ21と同様の形態に構成し、堆積物100を吹き飛ばす際に、キャリッジ15上に搭載されているインクカートリッジ21と交換するようにしてもよい。
【0118】
○ 前記第4実施形態において、空気ポンプ47は、ユーザによって手動で駆動されるポンプ(例えば、シリンジポンプ)であってもよい。すなわち、高さセンサ80が堆積物100の高さH1を基準高さH0以上であると検出した場合に、その旨をユーザに対して報知するようにしてもよい。
【0119】
○ キャリッジ15上とは異なる位置に装着されたインクカートリッジ21に加圧ポンプから加圧空気を供給することにより、そのインクカートリッジ21から記録ヘッド20側にインク供給チューブを介してインクを加圧供給する所謂オフキャリッジタイプのプリンタの場合は、その加圧ポンプを気体吹き出し装置として兼用してもよい。
【0120】
○ 前記第1〜第4実施形態では、S17の本吸引動作では、その吸引ポンプ34の回転速度を、S21で設定する回転速度SPと同じとしたが、S21で設定する回転速度SPを、S17の本吸引動作の回転速度よりもさらに高速にしてもよい。
【0121】
このようにすることにより、吸引ポンプ34をクリーニング時(本吸引動作)よりも高速に駆動することにより、効率的に、堆積物100を吹き飛ばすことができる。
○ 第1実施形態において、第2実施形態の高さセンサ80をさらに追加した構成とし、第2実施形態のフローチャートのS22を、第1実施形態のフローチャートの、S10の前、S10とS11の間、S11とS12の間、或いは、S12とS13間に入れるようにしてもよい。
【0122】
○ 第3実施形態では、開閉弁Vを閉弁した状態での所定回転数分だけ吸引ポンプ34が長時間に亘って回転することになり、本吸引動作に移行するまでの時間がかかってしまうことになるため、S15で開閉弁Vを開閉制御する処理は、堆積物100の堆積度合いに応じて取捨選択するようにしてもよい。すなわち、S15での吸引ポンプ34の回転速度SP及び吸引回転数RTが、S13で設定されたものである場合は開閉弁Vを開弁した状態のままとしておき、堆積物が堆積している可能性が高いとしてS21で設定されたものである場合にのみ開閉弁Vの開閉制御を行うようにしてもよい。この点で、第3実施形態にも第2実施形態の高さセンサ80をさらに追加する構成とし、この高さセンサ80から入力した堆積物100の高さH1が吸引チューブ33の吐出口33aを塞ぐ基準高さH0以上である場合に開閉弁VをS15において開閉制御するようにしてもよい。
【0123】
○ 第3実施形態において、開閉弁Vよりも上流側における吸引チューブ33内の空気の圧力を高める際に吸引ポンプ34が回転させられる所定回転数は、必ずしも吸引回転数RTと同回転数である必要はなく、堆積物100を空気の噴出圧で効果的に吹き飛ばせるだけの圧力となる回転数ならば適宜の回転数でよい。
【0124】
○前記各実施形態では、液体噴射装置として、液体としてのインクを液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド20を介してターゲットとしての紙Pに対して噴射するプリンタ11(ファックス、コピア等の印刷装置を含む)を用いて説明した。これを、他の液体を噴射する液体噴射装置に具体化するようにしてもよい。例えば、他の液体を噴射する液体噴射装置として、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。又、液体もインク以外の液体を使用するようにしてももちろんよい。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】第1実施形態におけるプリンタの斜視図。
【図2】同じく、プリンタの断面図。
【図3】同じく、プリンタの断面図。
【図4】キャップ35と吸引ポンプ34とを示す模式図。
【図5】昇降装置の側面図。
【図6】昇降装置の側面図。
【図7】プリンタの制御回路を示したブロック図。
【図8】フローチャート。
【図9】第2実施形態のプリンタの断面図。
【図10】プリンタの制御回路を示したブロック図。
【図11】フローチャート。
【図12】第3実施形態のプリンタの断面図。
【図13】第4実施形態のプリンタの一部断面図。
【図14】第5実施形態のプリンタの一部断面図。
【符号の説明】
【0126】
11…プリンタ(液体噴射装置)、20…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、20a…ノズル、25…廃液タンク、34…吸引ポンプ(気体吹き出し装置)、35…キャップ、60…クリーニング制御部(制御手段)、46…圧力室、66…計測タイマ、67…温度センサ(検出手段)、68…湿度センサ(検出手段)、80…高さセンサ(高さ検出手段,検出手段)、100…堆積物、H1…高さ、P…紙(ターゲット)、V,V1,V2,V3…開閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットに対して液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドから出された液体を滞留する廃液タンクと、
を備えた液体噴射装置のクリーニング方法において、
気体吹き出し装置を駆動して、前記廃液タンクに堆積した廃液由来の堆積物に気体を吹き付けて該堆積物を吹き飛ばすことを特徴とする液体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記気体吹き出し装置が気体を上流側から吸引して下流側へ排出可能なポンプで構成され、該ポンプを駆動する際に、該ポンプの下流側を閉塞した状態でポンプを駆動することにより前記気体を吸引し、その気体の圧力が高まった時点で前記ポンプの下流側を開放して前記堆積物に前記気体を吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置のクリーニング方法。
【請求項3】
ターゲットに対して液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドから出された液体を滞留する廃液タンクと、
を備えた液体噴射装置において、
前記廃液タンクに堆積した堆積物に気体を吹き付けて該堆積物を吹き飛ばす気体吹き出し装置を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
前記気体吹き出し装置は、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル内から液体を強制的に吸引して排出させる吸引ポンプであり、
前記吸引ポンプの上流側を大気に開放した状態で、吸引ポンプを駆動し、前記廃液タンクに堆積した堆積物を気体で吹き飛ばすことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記液体噴射ヘッドのクリーニング時に、前記液体噴射ヘッドに対してそのノズルを覆うように着脱自在に設けられるとともに、前記吸引ポンプの上流側に接続されるキャップと、
前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う際に、前記キャップで前記液体噴射ヘッドのノズルを覆う前に、前記吸引ポンプを該吸引ポンプの上流側を大気に開放した状態で駆動開始するように駆動制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記吸引ポンプを該吸引ポンプの上流側を大気に開放した状態で駆動する速度を、前記キャップで前記液体噴射ヘッドのノズルを覆った状態で前記吸引ポンプを駆動する速度よりも、高速に制御することを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記堆積物に気体を吹き付けるために、前記吸引ポンプの総回転数を、クリーニング時の総回転数よりも多くするように制御することを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記堆積物の堆積促進因子の大きさ又は堆積度合いに応じて、前記吸引ポンプを駆動する速度及び前記吸引ポンプの総回転数のうち、少なくともいずれか一方を可変制御することを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記廃液タンクに堆積する堆積物の堆積促進因子の大きさ又は堆積度合いを検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段の検出による堆積度合いに基づいて、前記吸引ポンプを駆動制御することを特徴とする請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記堆積促進因子は、前回クリーニングをしたときからクリーニングしていない放置時間であり、
前記検出手段は、前記放置時間を計測する計測タイマであることを特徴とする請求項9に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記堆積促進因子は、前記堆積物の環境温度であり、
前記検出手段は、前記環境温度を検出する温度センサであることを特徴とする請求項9に記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記堆積促進因子は、前記堆積物の環境湿度であり、
前記検出手段は、前記環境湿度を検出する湿度センサであることを特徴とする請求項9に記載の液体噴射装置。
【請求項13】
前記堆積度合いは、前記堆積物の高さであり、
前記検出手段は、前記堆積物の高さを検出する高さ検出手段であることを特徴とする請求項9に記載の液体噴射装置。
【請求項14】
前記気体吹き出し装置による気体吹き出し方向の下流側に開閉弁を備え、前記堆積物に気体を吹き付けるために前記気体吹き出し装置が駆動される際には、前記開閉弁が閉弁された状態で前記気体吹き出し装置が駆動開始されると共に、該気体吹き出し装置の駆動に伴い前記開閉弁よりも上流側で前記気体の圧力が高まった時点で前記開閉弁が開弁されるようにしたことを特徴とする請求項3〜請求項13のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項15】
前記気体吹き出し装置による気体吹き出し方向の下流側に第1開閉弁と第2開閉弁を第1開閉弁の方が下流側となるように設けると共に、該第1開閉弁と第2開閉弁との間には第3開閉弁が設けられた分岐流路を介して前記気体を貯留可能な圧力室を接続し、前記堆積物に気体を吹き付けるために前記気体吹き出し装置が駆動される際には、前記第1開閉弁が閉弁されると共に前記第2開閉弁と第3開閉弁が開弁された状態で前記気体吹き出し装置が駆動開始され、該気体吹き出し装置の駆動に伴い前記圧力室内の前記気体の圧力が高まった時点で前記第2開閉弁が閉弁されると共に第1開閉弁と第3開閉弁が開弁されるようにしたことを特徴とする請求項3〜請求項13のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項16】
前記気体吹き出し装置は、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル内から液体を強制的に吸引して排出させる吸引ポンプとは別に、前記廃液タンクに堆積した堆積物に向けて気体を吹き付け可能に設けられている請求項3に記載の液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−152926(P2007−152926A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31571(P2006−31571)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】