説明

液体噴射装置及び気泡排出方法

【課題】インクジェット記録装置等の液体噴射ヘッドに装着されるインクカートリッジ等の液体収容部の交換等により混入される気泡等の状態に基づいて気泡排出動作を行うことができる液体噴射装置等の提供。
【解決手段】ノズル開口部を有する液体噴射ヘッドと、液体を供給する液体収容部と、キャリッジ部と、ノズル開口部を介して液体噴射ヘッド内の液体を吸引排出するための吸引排出部と、を有し、液体収容部は、着脱可能な構成となっており、液体噴射ヘッド側の気泡を排出するための気泡排出クリーニング動作を実行するための基準時間情報を格納する基準時間情報格納部11と、液体収容部の着脱回数情報を取得する液体収容部着脱回数情報取得部14と、液体収容部の着脱回数情報に基づいて基準時間情報を補正する基準時間情報補正部18と、を有する液体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射装置及び気泡排出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、インクジェット式記録装置には、インクジェット式記録ヘッドが備えられている。このインクジェット式記録ヘッドは、記録用紙等にインクを吐出するためのノズルが多数設けられていると共に、このノズルから吐出されるインクを供給するためのインクカートリッジが接続されている。
つまり、ノズルから吐出されるインクは、インクジェット式記録装置内のインク供給路やノズル近傍の共通液室と称されるインク溜まりを介して吐出される構成となっている。
【0003】
このため、このインクジェット式記録ヘッドのインク供給路やインク溜まりに気泡等が混入すると、ノズルへのインクの供給が阻害され、インクが正常に吐出されないという事態が生じる。
このようにインクジェット式記録ヘッド内に気泡等が混入すると、その気泡の存在や気泡の大きさなどを直接検出することが困難である。そこで、長時間インクの吐出が行われなかった場合は、放置時間を計測し、その放置時間が所定の時間を超えると、インクの吸引等を行い、インク内に混入した気泡を排出する方法が採用された。
しかし、これではインクジェット式記録ヘッド内の気泡の状態の変化にかかわらずインクの吸引を行うため、インクを無駄に消費し、ランニングコストが低下するという問題が生じる。
そのため、インクジェット式記録ヘッドが置かれている温度等の要因から適切な間隔を計算し、無駄なくインク吸引等を行うための提案がなされている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−6531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようにインクジェット記録ヘッドの雰囲気温度等を考慮し、気泡の発生程度を予想しても以下のような問題があった。すなわち、インクジェット記録ヘッドに接続されているインクカートリッジを交換する際は、インクジェット記録ヘッド内に気泡が混入しやすい。このため、折角、インクジェット記録ヘッドの雰囲気温度等から気泡の状態を予想しても、インクカートリッジの交換回数等が多いと、気泡が予想と全く異なる状態となるという問題が生じ、依然として、インクを無駄に消費し、ランニングコストが上昇するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、インクジェット記録装置等の液体噴射ヘッドに装着されるインクカートリッジ等の液体収容部の交換等により混入される気泡等の状態に基づいて気泡排出動作を行うことができる液体噴射装置及び気泡排出方法に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、本発明によれば、ターゲットに対して液体を吐出するノズル開口部を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドに対して着脱可能で、装着した状態で前記液体を供給する液体収容部と、前記ノズル開口部を介して前記液体噴射ヘッド内の前記液体を吸引排出するための吸引排出部と、を有し、前記液体噴射ヘッド側の気泡を排出するための気泡排出クリーニング動作を実行するための基準時間情報を格納する基準時間情報格納部と、前記液体収容部の着脱回数情報を取得する液体収容部着脱回数情報取得部と、前記液体収容部の着脱回数情報に基づいて前記基準時間情報を補正する基準時間情報補正部と、を有することを特徴とする液体噴射装置により達成される。
【0007】
前記構成によれば、液体収容部の着脱回数情報を取得する液体収容部着脱回数情報取得部と、液体収容部の着脱回数情報に基づいて基準時間情報を補正する基準時間情報補正部と、を有する。
このため、液体噴射ヘッド側の気泡を排出するための気泡排出クリーニング動作を実行する時間は、必ず予め定められた基準時間通りに行われるのではなく、インクカートリッジ等の液体収容部の着脱回数である例えば、インクカートリッジの交換回数に基づいて補正された時間で実行される。
すなわち、インクカートリッジ等の交換時には、キャリッジ部側のインク供給路等に気泡が混入することが多いため、インクカートリッジ等の交換回数が多ければ多いほど、早めに気泡排出クリーニング動作を行うことができる構成となっている。また、逆に、インクカートリッジ等の交換回数が少なければ少ないほど、予め定められた基準時間で気泡排出クリーニング動作を行う構成となっている。
このように、インクカートリッジ等の交換により混入される気泡の状態に対応して、気泡排出クリーニング動作を適切に行うため、インクカートリッジ等内のインク等の液体を無駄に消費することがなく、ランニングコストが上昇することがない液体噴射装置となる。
また、従来は、インクカートリッジ等の交換時に気泡の混入が予想されるため、インクカートリッジ等の交換時に気泡排出クリーニング動作をすることがあったが、前記構成によれば、インクカートリッジ等の交換時毎に、気泡排出クリーニング動作を行う必要がないので、この点からも、ランニングコストが上昇しない効率的な液体噴射装置となる。
【0008】
好ましくは、前記液体収容部が、複数配置され、各前記液体収容部には、それぞれ異なった色の前記液体が収容される色別液体収容部となり、前記液体収容部着脱回数情報取得部が、前記色別液体収容部毎の着脱回数情報を取得する構成となっていることを特徴とする液体噴射装置である。
【0009】
前記構成によれば、液体収容部着脱回数情報取得部が、色別液体収容部毎の着脱回数情報を取得する構成となっているので、気泡の混入をより精度良く把握でき、より効率的な気泡排出クリーニング動作を実行することができる。
【0010】
好ましくは、前記基準時間情報補正部が補正するための補正基準情報を格納する補正基準情報格納部を有し、前記補正基準情報は、前記液体収容部の1回の着脱における気泡混入を考慮した時間情報となっていることを特徴とする液体噴射装置である。
【0011】
前記構成によれば、補正基準情報は、液体収容部の1回の着脱における気泡混入を考慮した時間情報となっているので、基準時間情報補正部は、この時間情報に着脱回数を乗ずる等をすることで、容易に基準時間情報を補正することができる。
【0012】
好ましくは、前記基準時間補正部が前記補正基準情報に基づいて生成した補正基準時間情報を格納する補正基準時間情報格納部と、現在時刻情報を取得する現在時刻情報取得部と、を有し、前記現在時刻情報が前記補正基準時間情報に該当するか否かに基づいて、前記気泡排出クリーニング動作を実行するか否かを判断する気泡排出クリーニング動作実行可否判断部を有することを特徴とする液体噴射装置である。
【0013】
前記構成によれば、現在時刻情報が補正基準時間情報に該当するか否かに基づいて、気泡排出クリーニング動作を実行するか否かを判断する気泡排出クリーニング動作実行可否判断部を有しているので、気泡排出クリーニング動作実行可否を容易に判断できる。すなわち、気泡排出クリーニング動作実行可否判断に複雑な演算等は必要ないので、低コストな液体噴射装置となる。
【0014】
好ましくは、前記基準時間補正部が、前記色別液体収容部毎の着脱回数情報と、前記補正基準情報に基づいて前記補正基準時間情報を生成することを特徴とする液体噴射装置である。
【0015】
前記構成によれば、基準時間補正部が、色別液体収容部毎の着脱回数情報と、補正基準情報に基づいて補正基準時間情報を生成するので、容易に補正基準時間情報を生成することができる。
【0016】
好ましくは、前記基準時間補正部は、前記着脱回数情報と、前記補正基準情報によって生成した基礎補正基準時間を、前記基準時間情報から除して、若しくは、前記現在時刻情報に加えて、前記補正基準時間情報を生成することを特徴とする液体噴射装置である。
【0017】
好ましくは、前記基準時間補正部が、前記色別液体収容部毎の着脱回数情報のうち、最も着脱回数の多い前記色別液体収容部に関する着脱回数に基づいて前記補正基準時間情報を生成することを特徴とする液体噴射装置である。
【0018】
前記構成によれば、最も着脱回数の多い色別液体収容部に関する着脱回数に基づいて補正基準時間情報を生成するので、気泡排出クリーニング動作で、確実に気泡を排出させることができる。
【0019】
前記課題は本発明によれば、ターゲットに対して液体を吐出するノズル開口部を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドに対して着脱可能で、装着した状態で、前記液体を供給する液体収容部と、前記ノズル開口部を介して前記液体噴射ヘッド側の前記液体を吸引排出するための吸引排出部と、を有する液体噴射装置における気泡排出方法であって、液体収容部着脱回数情報取得部が、前記液体収容部の着脱回数情報を取得する液体収容部着脱回数情報取得工程と、基準時間情報補正部が、前記液体収容部の着脱回数情報に基づいて、前記液体噴射ヘッド内の気泡を排出するための気泡排出クリーニング動作を実行するための基準時間情報を補正する基準時間情報補正工程と、を有することを特徴とする気泡排出方法により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0021】
図1は本発明の液体噴射装置の実施の形態にかかるインクジェット式記録装置(以下「記録装置」という)100を示す概略斜視図である。
図1に示すように、記録装置100は、キャリッジ部である例えば、キャリッジ101を有し、このキャリッジ101はキャリッジモータ102により駆動されるタイミングベルト103を介し、ガイド部材104に案内されてプラテン105の軸方向に往復移動されるように構成されている。
図1のキャリッジ101には、ターゲットである例えば、記録用紙200に対向する側には、後述する液体噴射ヘッドである例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下「記録ヘッド」という)110が搭載されている。
【0022】
また、キャリッジ101の上部には、記録ヘッド110に液体である例えば、インクを供給する液体収容部である例えば、ブラックインクカートリッジ106、シアンインクカートリッジ107、マゼンタインクカートリッジ108及びイエローインクカートリッジ109が着脱可能に装填されている。
本実施の形態では、4色のインクカートリッジを例に説明しているが、これに限らず、6色や8色等であってもよく、この場合は、6個や8個のインクカートリッジが配置されることなる。
このようなブラックインクカートリッジ106等からそれぞれの色のインクが記録ヘッド110に供給される構成となっている。また、それぞれのインクカートリッジ内のインクをすべて供給し終わると、インクカートリッジを取り外し、新しいインクカートリッジと交換できる構成となっている。
つまり、ブラックインクカートリッジ106等は、色別液体収容部の一例となっている。
【0023】
ところで、図1の記録用紙200は、印字領域Pに配置されると共に、インクが吐出され印字等される。
また、図1に示すように、記録用紙200が配置されないホームポジションH(非印字領域)には、キャッピング装置120及び吸引ポンプ130そしてワイピング部材140が配置されている。
【0024】
図2は、図1のブラックインクカートリッジ106と記録ヘッド110等との関係を示す概略断面図である。図2に示すように、ブラックインクカートリッジ106は、キャリッジ101に固定されているホルダ101b上に保持されている。このホルダ101bの下面側には、記録ヘッド110が配置されている。
そして、ホルダ101bは、ブラックインクカートリッジ106側に突出するように針部であるニードル管101aを有している。このニードル管101aは、フィルタ室101cを介して、インク供給路101dと接続されている。
すなわち、ブラックインクカートリッジ106内のインクは、ニードル管101a、フィルタ室101c及びインク供給路101dを経て、記録ヘッド110に供給される構成となっている。この構造は、シアンインクカートリッジ107等の他のインクカートリッジも同様である。
【0025】
このため、新しくブラックインクカートリッジ106を交換するときは、ブラックインクカートリッジ106内にニードル管101aを差し込むように装着することとなり、このとき、気泡がニードル管101a内に混入する。
このように混入した気泡は容易に排出されず、その存在によりインク供給路101d等におけるインクの流れが阻害され、結果的に、記録ヘッド110からのインクの吐出が不良等になるという問題が生じる。また、気泡が記録ヘッド内に達して、インクの吐出不良の原因ともなっている。
そこで、このように混入した気泡を排出するために、図1のキャッピング装置120及び吸引ポンプ130で、気泡排出クリーニング動作が実行されるが、その装置構成を以下、説明する。
【0026】
図3は、図1のキャリッジ101がホームポジションHに移動し、キャッピング装置120が記録ヘッド110に当接した状態を示す概略図である。
図3に示すように、記録ヘッド110の下面には、インクを実際に吐出するノズル開口である例えば、ノズルを有するノズルプレート111が配置されている。
キャッピング装置120は、記録ヘッド110のノズルプレート111に当接し、ノズルを覆うように配置される。
【0027】
また、ノズルプレート111は、図1の印字領域PからホームポジションHへ記録ヘッド110がキャリッジ101と共に移動する際に、ワイピング部材140に当接し、このワイピング部材140によりノズルプレート111面が払拭され、クリーニングされる構成となっている。
【0028】
キャッピング装置120は、図3に示すように、上面が開放され、凹状に形成されているキャップホルダ121やキャップ部材122等を有している。
また、キャッピング装置120は、スライダ124を有している。このスライダ124には、キャッピング装置120を記録ヘッド110に対して進退(図3の上下方向の移動)させる回動アーム125が設けられている。
【0029】
すなわち、この回動アーム125によってキャッピング装置120が移動し、図3に示すようにキャッピング手段120のキャップ部材122が、記録ヘッド110のノズルプレート111に当接すると、キャッピング装置120がノズルを覆うように配置されることになる。
【0030】
また、図3に示すように、キャッピング装置120には、大気開放口128と、ノズルを介して、記録ヘッド110側の気泡等をインクと共に吸引排出する吸引ポンプ130が接続されている。
このため、この大気開放口128を閉状態として、吸引ポンプ130でキャッピング装置120内の雰囲気を吸引すると、この雰囲気は負圧となりノズル内のインクが気泡等共に吸引ポンプ130によって排出される構成となっている。
つまり、キャッピング装置120及び吸引ポンプ130は、吸引排出部の一例となっている。
【0031】
図4は、図1の記録装置100の主なハードウエア構成等を示す概略ブロックである。図4に示すように、記録装置本体100aは、ホストコンピュータ1にローカルプリンタケーブル又は通信ネットワークを介して接続されている。ホストコンピュータ1には、記録装置100に対して印刷やクリーニングを実行させるためのコマンドを送るソフトウエアであるプリンタドライバ2が搭載されている。
記録装置本体100aは、プリンタドライバ2からのコマンドを解釈して各部を制御するコントローラ3が配置されている。また、このコントローラ3には、図1に示すキャッピング装置120、記録ヘッド110、キャリッジ101が接続されている他、時計である計時装置4も接続されている。
ところで、図1のブラックインクカートリッジ106等の各インクカートリッジ106,107、108、109には、ぞれぞれ、当該インクカートリッジ内のインクの残量情報等が記録されているブラックインクデータメモリ106a等(シアンインクデータメモリ107a、マゼンタインクデータメモリ108a、イエローインクデータメモリ109a)が備えられており、コントローラ3と接続されている。
したがって、記録装置100は、このブラックインクデータメモリ106a等のデータを入手することで、データの有無によってブラックインクカートリッジ106等の付け外しを検知し、付け外し前後のデータの変化により、インクカートリッジの交換があったことを検知できる構成となっている。
【0032】
図5は、図1及び図4等の記録装置100の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。図6は、図4等の記録装置100で実行される気泡排出クリーニングのうち「次回気泡排出クリーニング実行日補正フローチャート」を示す概略フローチャートであり、図7は、気泡排出クリーニング実行フローチャートを示す概略フローチャートである。
以下、図6の次回気泡排出クリーニング実行日補正フローチャート及び図7の気泡排出クリーニング実行フローチャートを説明しつつ、図5についても説明する。
まず、前提として、気泡排出クリーニングは、原則として一定の周期、例えば6ヶ月毎に行われる。このため、図5に示すように、制御部10には、気泡排出CL(クリーニング)基準時間格納部11が接続されている。
この気泡排出CL基準時間格納部11には、6ヶ月という時間情報が格納されており、気泡排出CL基準時間格納部11は、基準時間情報格納部の一例となっており、6ヶ月が基準時間情報の一例となっている。
【0033】
また、図5に示すように、制御部10には、気泡排出CL実行部12が接続され、この気泡排出CL実行部12の指示に従い、上述したように、キャッピング装置120と吸引ポンプ130が図3に示すように動作し、記録ヘッド110のノズル内のインクを吸引する気泡排出クリーニング動作が実行される構成となっている。
【0034】
次に、このような記録装置100に配置されているブラックインクカートリッジ106等の内部のインクが空となり、ブラックインクカートリッジ106等を交換する場合には、この交換によってキャリッジ101等の内部に気泡が混入するため、通常の気泡排出クリーニング動作の間隔である6ヶ月(気泡排出CL基準時間)としたのでは、気泡が多く混入し過ぎることになる。そこで、図6に示すような「次回気泡排出クリーニング実行日補正フローチャート」を行う。
以下、図6のフローチャートを説明する。まず、ST1でインクカートリッジが交換されたか否かが判断され、インクカートリッジが交換された場合は、ST2で交換されたインクカートリッジを特定する。
具体的には、図5の制御部10と接続されている色別インクカートリッジ交換検知部13が動作する。つまり、図4の各インクカートリッジ106等のインクデータメモリ106a等のデータを入手することでインクカートリッジの交換があったか否かを判断する。
このとき、このインクデータメモリ106a等のデータから何色のインクカートリッジ106等が交換されたかを特定する(液体収容部着脱回数情報取得工程の一例)。
【0035】
次に、ST3で、特定されたインクカートリッジのインクカートリッジ交換回数記憶部データを更新する。すなわち、図5の制御部10に接続されている色別インクカートリッジ交換回数データ更新部14が動作する。
制御部10には、図5に示すように色別インクカートリッジ交換回数記憶部15が接続されており、この色別インクカートリッジ交換回数記憶部15内には、インクカートリッジ毎の交換回数を記憶する記憶部が設けられている。
すなわち、ブラックインクカートリッジ交換回数記憶部15a、シアンインクカートリッジ交換回数記憶部15b、マゼンタインクカートリッジ交換回数記憶部15c、及びイエローインクカートリッジ交換回数記憶部15dが形成されている。
このため、色別インクカートリッジ交換回数データ更新部14は、当該特定された色のインクカートリッジの交換回数記憶部のデータに例えば、「1」を加算した新たなデータとする。
【0036】
このように、インクカートリッジが交換される毎に、その交換回数データが、インクカートリッジ106等毎に加算、記憶される構成となっている。
つまり、色別インクカートリッジ交換回数データ更新部は、インクカートリッジの着脱回数を取得する液体収容部着脱回数情報取得部の一例となっている。
また、この色別インクカートリッジ交換回数データ更新部は、色別のインクカートリッジの着脱回数を取得する構成ともなっている。
【0037】
次に、図6のST4に進み、最も交換回数の多い色別インクカートリッジ交換回数記憶部のデータと補正用データに基づいて、次回気泡排出CL実行日を演算し、記憶部に記憶させる(基準時間情報補正工程の一例)。
ところで、図5に示すように、制御部10には、気泡排出CL実行日補正用データ格納部16が接続されている。この気泡排出CL実行日補正用データ格納部16には、例えば、インクカートリッジ交換回数、1回につき気泡排出クリーニング期間をどのくらい短縮すべきかのデータ、例えば、1ヶ月というデータが格納されている。
つまり、気泡排出CL実行日補正用データ格納部16は、補正基準情報格納部の一例であり、1ヶ月とのデータが、インクカートリッジの1回の着脱における気泡混入を考慮した時間情報の一例となっている。
【0038】
このような前提で、図5の色別インクカートリッジ交換回数データ抽出部17が、図5の色別インクカートリッジ交換回数記憶部15の各インクカートリッジ交換回数記憶部15a等のうち最も交換回数(着脱回数)が大きいデータを抽出する。
そして、次回気泡排出CL実行日補正部18が、最も交換回数が多いデータ(例えば、3回)と気泡排出CL実行日補正用データ(例えば、1ヶ月)を乗じて、例えば、3ヶ月というデータを作成し、この3ヶ月を、気泡排出CL基準時間(例えば、6ヶ月)から減ずることで3ヶ月というデータを生成し、この3ヶ月を、前回気泡排出CL実行日データ格納部19のデータ(例えば、2006年5月1日)に加えることで、次回気泡排出CL実行日(例えば、2006年8月1日)を生成し、図5の次回気泡排出CL実行日格納部20に格納する。
【0039】
このように処理することで、前回の気泡排出クリーニング動作の実行日である、例えば、2006年5月1日(前回気泡排出CL実行日データ)から6ヶ月後(気泡排出CL基準時間)の2006年11月1日に気泡排出クリーニング動作を行う予定が、この補正処理により3ヶ月早く実行される。
この補正処理では、インクカートリッジの交換回数が多ければ、多いほど気泡排出クリーニング動作の実行が早まることになる。
つまり、インクカートリッジの交換回数が多いほど気泡が多く混入されるため、より早くこの気泡排出クリーニング動作を行う必要がある。本実施の形態では、このような要請に応え、混入される気泡が多くなる状況では、迅速に気泡排出クリーニング動作を行う反面、インクカートリッジの交換がない場合は、通常の期間で気泡排出クリーニング動作を行わせることで、気泡排出クリーニング動作で吸引するインクの無駄を抑え、ランニングコストを上昇させない構成となっている。
【0040】
つまり、次回気泡排出CL実行日補正部18は、基準時間情報補正部の一例であり、次回気泡排出CL実行日格納部20は、補正基準時間情報格納部の一例となっている。また、次回気泡排出CL実行日格納部20のデータは、色別のインクカートリッジの着脱回数(交換回数)と気泡排出CL実行日補正用データ(交換1回に対して1ヶ月)に基づいて生成されている。
また、上述では、次回気泡排出CL実行日補正部18が、最も交換回数が多いデータ(例えば、3回)と気泡排出CL実行日補正用データ(例えば、1ヶ月)を乗じて、例えば、3ヶ月というデータを作成したが、この3ヶ月というデータが、基礎補正基準時間の一例となっている。
【0041】
次に、図7の気泡排出クリーニング実行フローチャートを説明する。前提として、図6の工程を経て、図5の次回気泡排出CL実行日格納部20に例えば、2006年8月1日というデータが記憶されているとして説明する。
まず、図7のST11で計時装置から現在時刻を取得する。具体的には、図4の計時装置4から図5の現在時刻取得部22が現在時刻を取得する。この時刻が例えば、2006年8月2日とする。
すると、図7のST12に示すように、現在時刻が気泡排出CL実行日に達したか否かを判断する。具体的には、図5の気泡排出CL実行可否判断部21が、現在時刻(2006年8月2日)と次回気泡排出CL実行日(2006年8月1日)を比較し、この例では実行日に達していると判断する。
そして、ST13で、気泡排出クリーニングを実行する。すなわち、図5の気泡排出CL実行部12が、図3のキャッピング装置120と吸引ポンプ130等を動作させ、記録ヘッド110のノズルからインクを吸引して、気泡排出クリーニングを行う。
【0042】
すなわち、現在時刻取得部22が、現在時刻情報取得部の一例であり、気泡排出CL実行可否判断部21は、気泡排出クリーニング動作実行可否判断部の一例である。
【0043】
次に、ST14で、気泡排出クリーニング実行日(例えば、2006年8月2日)を、図5の前回気泡排出CL実行日データ格納部19に格納し、新しい前回気泡排出CL実行日データとする。これにより、次回の気泡排出クリーニング動作の期間は、この2006年8月2日より計算されることになる。
また、ST15で、色別インクカートリッジ交換回数記憶部及び次回気泡排出クリーニング実行日データをリセットして、本処理は終了する。
【0044】
以上のように、本実施の形態によれば、インクを無駄にしない気泡排出クリーニング動作を効率よく実行できるだけでなく、その処理に際し、複雑な演算を使用しないので全体としても低コストのシステムとなる。
さらに、気泡排出クリーニング動作の時期を定めるデータとして、色別のインクカートリッジの交換回数に基づいているので、気泡の混入やその程度を精度良く把握できる。
そして、最も交換回数の多いインクカートリッジについてのデータに基づくので、気泡の排出を迅速且つ確実に行うことができる。
【0045】
また、本実施の形態では、気泡排出CL基準時間(例えば、6ヶ月)からインクカートリッジの交換があるほど、その期間を減らすように構成されているが、これに限らず、カートリッジ交換があるほど、その期間が現在時間に足されるように処理され、早めに気泡排出クリーニング動作が実行される構成としてもよい。
すなわち、例えば、現在時刻が2006年8月2日であれば、これに例えば、3ヶ月を足し、2006年11月2日とする。
一方、前回の気泡排出クリーニング動作実行日に、気泡排出CL基準時間(6ヶ月)を足した日、すなわち、2006年11月1日を、次回気泡排出CL実行日とする。
そして、両者を比較して気泡排出クリーニング動作を実行すれば、インクカートリッジの交換回数が多ければ多いほど、早めに気泡排出クリーニング動作が実行されることになり、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0046】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。また、本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の液体噴射装置の実施の形態にかかるインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1のブラックインクカートリッジと記録ヘッド等との関係を示す概略断面図である。
【図3】図1のキャリッジがホームポジションに移動し、キャッピング装置が記録ヘッドに当接した状態を示す概略図である。
【図4】図1の記録装置の主なハードウエア構成等を示す概略ブロックである。
【図5】図1及び図4等の記録装置の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
【図6】図4等の記録装置で実行される気泡排出クリーニングのうち「次回気泡排出クリーニング実行日補正フローチャート」を示す概略フローチャートでる。
【図7】気泡排出クリーニング実行フローチャートを示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1・・・ホストコンピュータ、2・・・プリンタドライバ、3・・・コントローラ、4・・・計時装置、10・・・制御部、11・・・気泡排出CL基準時間格納部、12・・・気泡排出CL実行部、13・・・色別インクカートリッジ交換検知部、14・・・色別インクカートリッジ交換回数データ更新部、15・・・色別インクカートリッジ交換回数記憶部、16・・・気泡排出CL実行日補正用データ格納部、17・・・色別インクカートリッジ交換回数データ抽出部、18・・・次回気泡排出CL実行日補正部、19・・・前回気泡排出CL実行日データ格納部、20・・・次回気泡排出CL実行日格納部、21・・・気泡排出CL実行可否判断部、22・・・現在時刻取得部、100・・・インクジェット式記録装置、101・・・キャリッジ、101a・・・ニードル管、101b・・・ホルダ、101c・・・フィルタ室、101d・・・インク供給路、102・・・キャリッジモータ、103・・・タイミングベルト、104・・・ガイド部材、105・・・プラテン、106・・・ブラックインクカートリッジ、107・・・シアンインクカートリッジ、108・・・マゼンタインクカートリッジ、109・・・イエローインクカートリッジ、110・・・インクジェット式記録ヘッド、111・・・ノズルプレート、120・・・キャッピング装置、121・・・キャップホルダ、122・・・キャップ部材、124・・・スライダ、125・・・回動アーム、128・・・大気開放口、130・・・吸引ポンプ、140・・・ワイピング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットに対して液体を吐出するノズル開口部を有する液体噴射ヘッドと
前記液体噴射ヘッドに対して着脱可能で、装着した状態で前記液体を供給する液体収容部と、
前記ノズル開口部を介して前記液体噴射ヘッド内の前記液体を吸引排出するための吸引排出部と、を有し、
前記液体噴射ヘッド側の気泡を排出するための気泡排出クリーニング動作を実行するための基準時間情報を格納する基準時間情報格納部と、
前記液体収容部の着脱回数情報を取得する液体収容部着脱回数情報取得部と、
前記液体収容部の着脱回数情報に基づいて前記基準時間情報を補正する基準時間情報補正部と、を有することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体収容部が、複数配置され、各前記液体収容部には、それぞれ異なった色の前記液体が収容される色別液体収容部となり、
前記液体収容部着脱回数情報取得部が、前記色別液体収容部毎の着脱回数情報を取得する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記基準時間情報補正部が補正するための補正基準情報を格納する補正基準情報格納部を有し、
前記補正基準情報は、前記液体収容部の1回の着脱における気泡混入を考慮した時間情報となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記基準時間補正部が前記補正基準情報に基づいて生成した補正基準時間情報を格納する補正基準時間情報格納部と、
現在時刻情報を取得する現在時刻情報取得部と、を有し、
前記現在時刻情報が前記補正基準時間情報に該当するか否かに基づいて、前記気泡排出クリーニング動作を実行するか否かを判断する気泡排出クリーニング動作実行可否判断部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記基準時間補正部が、前記色別液体収容部毎の着脱回数情報と、前記補正基準情報に基づいて前記補正基準時間情報を生成することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記基準時間補正部は、前記着脱回数情報と、前記補正基準情報によって生成した基礎補正基準時間を、前記基準時間情報から除して、若しくは、前記現在時刻情報に加えて、前記補正基準時間情報を生成することを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記基準時間補正部が、前記色別液体収容部毎の着脱回数情報のうち、最も着脱回数の多い前記色別液体収容部に関する着脱回数に基づいて前記補正基準時間情報を生成することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
ターゲットに対して液体を吐出するノズル開口部を有する液体噴射ヘッドと
前記液体噴射ヘッドに対して着脱可能で、装着した状態で、前記液体を供給する液体収容部と、
前記ノズル開口部を介して前記液体噴射ヘッド側の前記液体を吸引排出するための吸引排出部と、を有する液体噴射装置における気泡排出方法であって、
液体収容部着脱回数情報取得部が、前記液体収容部の着脱回数情報を取得する液体収容部着脱回数情報取得工程と、
基準時間情報補正部が、前記液体収容部の着脱回数情報に基づいて、前記液体噴射ヘッド内の気泡を排出するための気泡排出クリーニング動作を実行するための基準時間情報を補正する基準時間情報補正工程と、を有することを特徴とする気泡排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−114400(P2008−114400A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297458(P2006−297458)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】