説明

液体噴射装置

本発明による液体噴射装置が備える液体噴射デバイス10は、第1液体が導入されるチャンバー10−3と、圧電/電歪素子11と、圧電/電歪素子11を保持する加振用チャンバー12とを具備している。圧電/電歪素子は、複数の電極層を備えて振動する活性部と、電極層を備えずに振動しない不活性部とからなる。活性部は圧電/電歪素子のY軸方向略中央部にのみ設けられ、Y軸方向両端部は不活性部となっている。加振用チャンバーは圧電/電歪素子のY軸方向両端部の不活性部にて同圧電/電歪素子を保持する。圧電/電歪素子の活性部の変形による振動は加振用チャンバー内の第2液体を介して液体噴射孔10−3aから噴射される第1液体に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、噴射する液体を微粒子化するように構成された液体噴射装置に関する。
【背景技術】
従来から知られるこの種の液体噴射装置は、図18に記載したように、圧電素子301により容積が変更せしめられるとともに液体噴射孔302を備えたチャンバー303と、液体導入孔304と、液体供給通路305とを備えている。液体は、液体供給通路305内に供給され、次いで、液体導入孔304を介してチャンバー303内に導入される。そして、液体は、チャンバー303内において圧電素子301の作動により加圧され、液体噴射孔302から噴射される(例えば、特開2000−279796号公報(第2頁、第3頁、図2)参照。)。
しかしながら、従来の装置は、圧電/電歪素子301の発生する加圧力のみで液体を噴射しようとするため、液体を噴射する空間の温度及び圧力等が激しく変動する周囲環境下で使用された場合、液体を確実に微粒子化しながら噴射することが困難となる場合がある。またチャンバー303の上面を金属等により形成し圧電/電歪素子301を同金属に接着した場合、接着面が圧電/電歪素子301により頻繁に変形されることになるため、同圧電/電歪素子301が剥離する可能性もある。
【発明の開示】
従って、本発明の目的は、噴射される液滴を確実に微粒子化することができるとともに、接着部分が振動されることのない構造を採用することにより耐久性がより向上された液体噴射装置を提供することにある。
本発明による液体噴射装置は、第1液体を加圧するとともに同加圧された第1液体を吐出部から吐出する加圧手段と、前記吐出部から吐出された第1液体が導入される液体導入空間を画定する壁と同壁に備えられた液体噴射孔とを有する液体噴射部と、圧電/電歪層と少なくとも一対の電極層とを含むとともに同一対の電極層により同圧電/電歪層に電界が付与される活性部と同圧電/電歪層に電界が付与されない不活性部とを有するように構成された圧電/電歪素子を同不活性部にて保持し、且つ、前記液体噴射部の壁の外面に固定されて同壁の外面とともに液体収容空間を画定する壁を備え、同液体収容空間内に同圧電/電歪素子の活性部と第2液体とを収容した加振用チャンバーと、を備え、前記圧電/電歪素子の活性部の変形による振動が前記第2液体を介して前記液体噴射孔から噴射される第1液体に伝達されるように構成されている。
なお、本明細書において、「液体噴射孔」は「壁に設けられた中空円筒状の貫通孔(即ち、流れの方向に断面積を変化させていない流路)」のみでなく、「第1液体のもつ圧力や熱のエネルギーを運動エネルギーに変換して流れを増速させる目的で、流れの方向に断面積を変化させた流路(即ち、ノズル)」をも含む用語として使用される。
これによれば、第1液体が液体噴射孔を介して噴射されるのに必要な圧力は加圧手段により発生され、第1液体が微粒子化するための振動は圧電/電歪素子により付与される。従って、上記液体噴射装置は、液体を噴射する空間の環境が激しく変化しても、第1液体の噴射及び微粒子化を確実に達成することができる。
また、圧電/電歪素子は、実質的に変形することのない不活性部において加振用チャンバーに保持されるので、その保持部が圧電/電歪素子により振動されることがない。更に、圧電/電歪素子の活性部に生じる振動は第2液体を介して第1液体に伝達されるので、従来の装置のように、圧電/電歪素子の接着面が振動されることはない。従って、この液体噴射装置は、圧電/電歪素子を長期に渡り確実に保持することができ、その耐久性が著しく向上する。
この場合、前記加圧手段の吐出部から前記液体噴射孔までの間であって前記液体噴射部に介装されるとともに、前記加圧手段から前記液体噴射孔に向けての前記第1液体の通流を停止及び許容する開閉弁を備えることが好適である。
これによれば、第1液体の噴射開始タイミング及び噴射終了タイミングを確実に制御することが可能となる。
この場合、圧電/電歪素子の一対の電極層の間に電位差を付与したとき、圧電/電歪層に電界が確実に付与されるようにするため、前記第2液体は非導電性(絶縁性)の液体であることが好適である。
また、電極層の間に付与される電位差による発火を防止するため、前記第2液体は不燃性の液体であることが望ましい。
さらに、前記加振用チャンバーの液体収容空間内に更に固体の粒子を収容することが好ましい。これによれば、圧電/電歪素子の活性部の振動に基づく圧力波の進行方向を固体の粒子によって分散することができるので、より大きな面積の壁面を均一な圧力で加振することが可能となる。その結果、液体噴射孔をより大きな面積を有する部分に配置できるので、均一に微粒子化された液滴を大量に噴射することが可能となる。
また、前記圧電/電歪素子は、前記加振用チャンバーの液体収容空間内に前記不活性部を有するとともに、同不活性部に連続した不活性部の両端において前記加振用チャンバーに保持されることが好適である。
これによれば、圧電/電歪素子の活性部の伸縮を不活性部によって同圧電/電歪素子の屈曲変形という形で発現させることができる。従って、電極層間に付与する電位差を小さくしても、十分な振動を第1液体に伝達することが可能となる。その結果、圧電/電歪素子の消費電力を低減することができる。
この場合、前記活性部が前記不活性部よりも前記液体噴射部の壁側に配置されることが好適である。
これによれば、大きな圧力変動を有する圧力波を前記液体噴射部の壁側に向けて発生させ易くなるので、圧電/電歪素子の消費電力をより一層低減することができる。
また、前記加振用チャンバーは前記液体収容空間内に発生する気体を外部に排出する気体排出部を備えることが好適である。
これによれば、第2液体中の溶存気体が同第2液体の圧力変動で気体となった場合に、同気体を加振用チャンバーの外部に排出することができる。従って、加振用チャンバー内において、圧電/電歪素子による振動が気体により吸収されるととが回避される。
【図面の簡単な説明】
図1は、内燃機関に適用した本発明の第1実施形態に係る液体噴射装置の概略を示した図である。
図2は、図1に示した電磁開閉式吐出弁の正面図である。
図3は、図1に示した液体噴射デバイスの平面図である。
図4は、図3の1−1線に沿った平面にて液体噴射デバイスを切断した断面図及び図2に示した電磁開閉式吐出弁の拡大正面図である。
図5は、図3の2−2線に沿った平面にて液体噴射デバイスを切断した断面図である。
図6は、本発明の第2実施形態に係る液体噴射デバイスの断面図である。
図7は、本発明の第3実施形態に係る液体噴射デバイスの平面図である。
図8は、図7の3−3線に沿った平面にて液体噴射デバイスを切断した断面図である。
図9は、図7の4−4線に沿った平面にて液体噴射デバイスを切断した断面図である。
図10は、本発明の第4実施形態に係る液体噴射デバイスの平面図である。
図11は、図10の5−5線に沿った平面にて液体噴射デバイスを切断した断面図である。
図12は、図10の6−6線に沿った平面にて液体噴射デバイスを切断した断面図である。
図13は、本発明の第5実施形態に係る液体噴射デバイスの平面図である。
図14は、図13の7−7線に沿った平面にて液体噴射デバイスを切断した断面図である。
図15は、図13の8−8線に沿った平面にて液体噴射デバイスを切断した断面図である。
図16Aは本発明の第6実施形態に係る液体噴射デバイスの断面図であり、図16Bは図16Aの9−9線に沿った平面にて液体噴射デバイスを切断した断面図である。
図17は、本発明の第7実施形態に係る液体噴射デバイスの断面図である。
図18は、従来の液体噴射装置の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明による液体噴射装置(液体噴霧装置、液体供給装置、液滴吐出装置)の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る液体噴射装置は、図1の概略構成図に示したように、例えば、微粒子化された液体(燃料)を必要とする機械装置としての内燃機関に対する電子式燃料噴射制御装置(電子式液体噴射制御装置)として使用される。
この液体噴射装置は、アクチュエータとして機能する圧電/電歪素子を備えた液体噴射デバイス10、加圧手段としての加圧ポンプ(燃料ポンプ)21、燃料供給管(液体供給管、燃料配管)22、プレッシャレギュレータ23、電磁開閉式吐出弁(吐出弁、開閉弁)24、燃料タンク(液体貯蔵タンク)25及び電気制御装置40を含んでいる。加圧ポンプ21及びプレッシャレギュレータ23は燃料供給管22に介装されている。係る液体噴射装置は、内燃機関の吸気管(又は吸気ポート)30等により形成される燃料噴射空間(液体噴射空間)31に、内燃機関の吸気弁32の背面に向けて、微粒子化された液体(液体燃料、例えばガソリン、以下、単に「燃料」又は「第1液体」と云うこともある。)を噴射するようになっている。
加圧ポンプ21は、燃料供給管22を介して燃料タンク25の底部に連通された導入部21aと、同燃料供給管22を介してプレッシャレギュレータ23に接続された吐出部21bとを備えている。加圧ポンプ21は、燃料タンク25内の燃料を導入部21aから導入して加圧するとともに、同加圧した燃料を吐出部21bから吐出するようになっている。加圧ポンプ21は、仮に液体噴射デバイス10の圧電/電歪素子が作動されていない場合であっても、燃料がプレッシャレギュレータ23と電磁開閉式吐出弁24と液体噴射デバイス10とを介して液体噴射空間31に対し噴射され得る圧力以上の圧力(この圧力を「加圧ポンプ吐出圧」と云う。)にまで加圧するようになっている。
プレッシャレギュレータ23は、図示しない配管により吸気管30内の圧力が与えられている。プレッシャレギュレータ23は、この吸気管30内の圧力に基づいて加圧ポンプ21により加圧された燃料の圧力を減圧(又は、調圧)するようになっている。この結果、プレッシャレギュレータ23と電磁開閉式吐出弁24との間の液体供給管22内の燃料の圧力は、吸気管30内の圧力よりも所定(一定)圧力だけ高い圧力(この圧力を「調整圧」と云う。)となるように調整される。従って、電磁開閉式吐出弁24が所定時間だけ開弁されると、同所定時間に略比例した燃料量の燃料が吸気管30内の圧力に拘らず同吸気管30内に噴射される。
電磁開閉式吐出弁24は、従来から内燃機関の電子式燃料噴射制御装置に広く採用されている周知のフューエルインジェクタ(電磁噴射弁)である。図2は、この電磁開閉式吐出弁24の正面図であって、その先端側部位を同電磁開閉式吐出弁24の中心線を含む平面にて切断した断面により示している。
電磁開閉式吐出弁24は、液体供給管22が接続されてプレッシャレギュレータ23に連通した液体導入口24aと、同液体導入口24aに連通した液体通路24bを形成する外筒部24cと、電磁式開閉弁として作動する開閉弁(ニードル弁)24dと、外筒部24cの先端に形成されるとともに開閉弁24dの先端により開閉される吐出孔24eと、開閉弁24dを駆動する図示しない電磁機構とを備えている。電磁開閉式吐出弁24の液体通路24bは吐出孔24eを介して液体噴射デバイス10に接続されている。これにより、電磁開閉式吐出弁24は、液体通路24b(吐出孔24e)が開閉弁24dにより開放されたとき、プレッシャレギュレータ23を介して加圧ポンプ21から供給される加圧された燃料を同液体通路24b及び吐出孔24eを介して液体噴射デバイス10に供給するようになっている。
液体噴射デバイス10は、燃料噴射空間31に噴射する液体(吸気弁32の背面に向けて噴射する燃料)を微粒子化するために少なくともその壁面に圧電/電歪素子を形成したチャンバーと、その圧電/電歪素子が形成された壁と異なる壁に形成された液体噴射孔(液体噴射用ノズル)とを備えた噴射デバイスであり、図3〜図5に詳細に示されている。
液体噴射デバイス10は、各辺が互いに直交するX,Y及びZ軸に対して平行に延びる略直方体形状を有している。液体噴射デバイス10の基体部(以下、「液体噴射部」とも称呼する。)は、図4及び図5に示したように、順に積層されて互いに接合された複数の金属の薄板(以下、「金属板」と云う。)10a〜10cからなっている。金属板10a〜10cの材質は、この例においてはステンレス(SUS304又はSUS316)である。金属板10cは後述する加振用チャンバー12に支持された圧電/電歪素子11によって発生される振動を伝達する振動伝達板として機能する。なお、後述する他の実施形態に係る金属板の材質も金属板10a〜10cと同様である。
液体噴射デバイス10は、液体導入口10−1と、液体供給通路10−2と、チャンバー10−3と、液体供給通路10−2とチャンバー10−3とを連通する液体導入通路部10−4と、圧電/電歪素子11と、金属板10cの上に固定されるとともに圧電/電歪素子11を保持する加振用チャンバー12とを備えている。
液体導入口10−1は、金属板10cに形成された円形の貫通穴である。液体導入口10−1は、金属板10cのY軸方向中央であってX軸負方向端部近傍に設けられている。液体導入口10−1には、図4に示したように、電磁開閉式吐出弁24の吐出孔24eがスリーブ25により液密に接続されている。
液体供給通路10−2は、金属板10aの上面と、金属板10bに設けられた貫通穴を形成する側壁面と、金属板10cの下面とにより画定された空間である。液体供給通路10−2の平面形状(Z軸正方向から見た形状)は、図3に示したように、液体導入口10−1の円弧と一致する頂部Pと、同頂部PからX軸正方向に所定距離だけ隔てた位置においてY軸に沿った底辺Tを有する略二等辺三角形である。底辺Tの長さはWである。
チャンバー10−3は、金属板10aの上面と、液体供給通路10−2に対してX軸正方向に所定距離隔てた位置において金属板10bに設けられた貫通穴を形成する側壁面と、金属板10cの下面とにより画定された空間である。チャンバー10−3の平面形状は、図3に示したように、Y軸及びX軸にそれぞれ沿う長辺LH及び短辺SHを有する略長方形である。長辺LHの長さは、液体供給通路10−2の底辺Tの長さWより僅かだけ長くなっている。一対の短辺SHの位置は、底辺Tの両端部よりY軸方向の外側(Y軸正方向外側及びY軸負方向外側)に位置している。
チャンバー10−3を構成している一つの壁(下壁)である金属板10aには、複数(この例では、全部で15×8=90個)の貫通孔が液体噴射孔(液体噴射用ノズル)10−3aとして形成されている。各液体噴射孔10−3aは、Z軸方向に軸を有する底面の直径がdである円筒状の空間である。従って、金属板10aの下面には、直径dの円形の噴射口が複数個形成されている。複数の液体噴射孔10−3aは正方格子状に配列されている。
即ち、複数の液体噴射孔10−3aの各中心点は、一定の距離を隔てて配列された複数のX軸に平行な線と、同じ一定の距離を隔てて配列された複数のY軸に平行な線との交点に一致している。なお、本明細書においては、「液体噴射孔」は「液体噴射孔10−3aのようにチャンバー10−3を構成する壁に設けられた中空円筒状の液体噴射用貫通孔(即ち、流れの方向に断面積を変化させていない流路)」のみでなく、「第2液体のもつ圧力や熱のエネルギーを運動エネルギーに変換して流れを増速させる目的で、流れの方向(この場合、Z軸負方向)に断面積を変化(減少)させた液体噴射用の流路」をも含む用語として使用される。
液体導入通路部10−4は、金属板10bのX軸方向略中央部の上面及びこの上面のY軸方向両端部から立設した側壁面と、金属板10cの下面とにより画定され、薄板状の中空空間(即ち、スリット)を構成する空間である。このスリットは、液体導入通路とも呼ばれる。金属板10bのX軸方向略中央部の上面のZ軸方向の高さは、金属板10bのX軸方向両端部のZ軸方向の高さよりtだけ低くなっている。従って、上記スリットのZ軸方向長さ(スリットの巾)はtである。
液体導入通路部10−4のスリットの平面形状は、図3に示したように、Y軸及びX軸にそれぞれ沿う長辺LIと短辺SIを有する略長方形である。長辺LIは液体供給通路10−2の底辺Tと同じ長さWである。一方の長辺LIは液体供給通路10−2の底辺Tと一致している。従って、一対の短辺SIの始点は、底辺Tの両端部と一致している。
このように、液体導入通路部10−4のスリットは平面視において短辺SIと長辺LIの長方形状をなしている。この長方形の対向する一対の短辺SI,SIは液体の通流方向(X軸方向)と平行である。複数の液体噴射孔10−3aは、平面視において、一対の短辺SI,SIを仮想的にX軸正方向に延長した直線で規定される領域の内側のみに配設されている。
従って、液体は各液体噴射孔10−3aに対してほぼ同じ圧力を有しながら到達することができ、各液体噴射孔10−3a内における流速が互いに略等しくなる。この結果、各液体噴射孔10−3aからの液体噴射速度が互いに略同一となるから、各液体噴射孔10−3aから噴射される液滴の粒径を略均一にすることが可能となる。
図3に示したように、液体導入通路部10−4には、複数の支持部(桟部)10−4aが設けられている。各支持部10−4aは、金属板10bのX軸方向略中央部上面においてX軸方向に延びている。複数の支持部10−4aはY軸方向に沿う所定の距離毎に配置される。各支持部10−4aは、金属板10bのX軸方向略中央部上面から金属板10cの下面に到っている。
この支持部10−4aにより、液体導入通路部10−4のスリットが複数(ここでは5個)の独立したスリットに分割されている。この複数のスリットは互いに同一形状を備える。各スリットをY−Z平面に沿った平面にて切断した断面はZ軸方向及びY軸方向に短辺及び長辺をそれぞれ有する長方形状となっている。
アクチュエータとしての圧電/電歪素子11は、X,Y及びZ軸に対して平行に延びる略直方体形状を有している。圧電/電歪素子11のX軸方向長さは、チャンバー10−3のX軸方向長さより僅かに短い。圧電/電歪素子11のY軸方向長さは、チャンバー10−3のY軸方向長さより長く、且つ、金属板10a〜10cのY軸方向長さより短い。
圧電/電歪素子11は、一対の電極11a,11b及び圧電/電歪層11cからなっている。一対の電極11a,11bは、それぞれの共通電極からX−Y平面に平行に平面的に広がった複数の櫛歯状電極(電極層)を備えている。電極11aの複数の櫛歯状電極と電極11bの複数の櫛歯状電極とは交互に対向している。対向する櫛歯状電極間のそれぞれには、圧電/電歪層11cが存在している。
図5に示したように、一対の電極11a,11bの櫛歯状電極は、圧電/電歪層11cのY軸方向略中央部であってチャンバー10−3の上方にのみ設けられ、圧電/電歪層11cのY軸方向両端部には設けられていない。圧電/電歪層11cの櫛歯状電極が形成されている部分は、これらの電極により電界が付与される活性部を形成している。また、圧電/電歪層11cの櫛歯状電極が形成されていない部分は、圧電/電歪層11cに電界が付与されない不活性部を形成している。
即ち、圧電/電歪素子11は、層状の圧電/電歪素子と層状の電極とを交互に多層にわたり積層することで形成された「横効果タイプの積層ピエゾアクチュエータ」であり、一対の電極11a,11bに周期的に電圧が変化する駆動電圧が付与されたとき、その活性部に周期的に変化する電界が加わり、その活性部のみがY軸方向に縮みZ軸方向に延びて(伸縮して)振動するようになっている。
加振用チャンバー12は、X,Y及びZ軸に対して平行に延びる各辺を備えた略直方体形状を有していて、平面視においてチャンバー10−3よりも僅かだけ大きくなっている。加振用チャンバー12は、絶縁性の樹脂(例えば、アクリル系樹脂、peek系樹脂、又はポリカーボネイト系樹脂等)からなる固定部12a及び蓋部12bを備えている。
固定部12aは、上面及び下面が開放された中空の角柱状枠体であって、金属板10cの上に接着により固定されている。固定部12aの側壁(Z−X平面に平行な壁)の上側には切り込み部が形成されている。蓋部12bは、上面が閉塞され下面が開放された中空の角柱状蓋体であって、側壁(Z−X平面に平行な壁)の下側には切り込み部が形成されている。
加振用チャンバー12は、固定部12aの切り込み部と蓋部12bの切り込み部との間に、圧電/電歪素子11の不活性部である圧電/電歪素子11のY軸方向両端部を挟み込み、圧電/電歪素子11を保持するようになっている。固定部12a、圧電/電歪素子11及び蓋部12bは、互いに接着性ゴム等により固着されている。この結果、加振用チャンバー12は、金属板10cとともに、その内部に圧電/電歪素子11の活性部を備えた密閉空間12cを形成するようになっている。
加振用チャンバー12の密閉空間12cには、液体が収容されている。この液体を便宜上「第2液体」と称呼する。第2液体は非導電性で、且つ、不燃性の液体である。この第2液体は、圧電/電歪素子11の伸縮に伴う振動を、粗密波(縦波)として金属板10c等に伝達する。
なお、加振用チャンバー12は、例えばSUS或いはアルミニウム合金等の金属を絶縁膜で被覆した材質により構成してもよい。また、固定部12a、圧電/電歪素子11及び蓋部12bを互いに絶縁性の接着性ゴムにより接着したり、或いは、固定部12a及び蓋部12bと圧電/電歪素子11との間にゴム等の絶縁性部材を介在させるように構成すれば、加振用チャンバー12自体を絶縁膜を有さない金属のみで構成することもできる。
図1に示した電気制御装置40は、マイクロコンピュータを含む回路であり、エンジン回転速度センサ41及び吸気管圧力センサ42等のセンサと接続されている。電気制御装置40は、これらのセンサからエンジン回転速度Nや吸気管圧力Pを入力して内燃機関に必要な燃料量及び噴射開始タイミングを決定するとともに、同決定した燃料量及び噴射開始タイミングに応じて電磁開閉式吐出弁24の電磁機構に吐出弁駆動信号INJを供給するようになっている。
また、電気制御装置40は、少なくとも吐出弁駆動信号INJが供給及び供給停止されることによりチャンバー10−3内の液体の圧力が上昇及び下降している期間、圧電/電歪素子11の電極11a及び11b間に駆動周波数fで0(V)とVmax(V)との間を変化する圧電素子駆動電圧信号DVを送出するようになっている。
以上の構成により、電磁開閉式吐出弁24の吐出孔24eから吐出された燃料は、液体注入口10−1を介して液体供給通路10−2に供給され、その後、液体導入通路部10−4のスリットを介して(スリット内をX軸方向に通流して)チャンバー10−3内に導入される。そして、チャンバー10−3内に導入された液体は液体噴射孔10−3a(液体噴射孔の噴射口)を介し吸気管30内に押し出される(噴射される)。
このとき、圧電/電歪素子11の作動による振動が、第2液体及び金属板10cを介してチャンバー10−3内の噴射される燃料に加えられる。従って、噴射される燃料に付与された振動によるくびれ部が発生し、同燃料はその先端部において同くびれ部からちぎれるように離脱する。この結果、均一で精細に微粒子化された燃料が吸気管30の燃料噴射空間31内に噴射される。なお、以下に述べる他の実施形態に係る液体噴射装置も、上述した液体噴射装置の作動と同様に作動する。
以上、説明したように、液体噴射デバイス10によれば、第1液体(燃料)が液体噴射孔10−3aを介して噴射されるのに必要な圧力は加圧手段である加圧ポンプ21により発生され、第1液体が微粒子化するための振動は圧電/電歪素子11により付与される。従って、液体噴射デバイス10は、液体を噴射する空間の環境が激しく変化しても、第1液体の噴射及び微粒子化を確実に達成することができる。
また、圧電/電歪素子11は、実質的に変形することのない不活性部において加振用チャンバー12に保持されている。従って、その保持部が圧電/電歪素子11により振動されることがない。更に、圧電/電歪素子11の活性部に生じる振動は第2液体を介して液体噴射孔10−3aから噴射される第1液体に伝達される。この結果、従来の装置のように、圧電/電歪素子の接着面が振動されることはないので、液体噴射デバイス10は、圧電/電歪素子11を長期に渡り確実に保持することができ、その耐久性が著しく向上したものとなっている。
なお、液体導入通路部10−4のスリットの断面形状である長方形状の短辺の長さtは0.005乃至0.5mmであることが好ましい。短辺の長さtが0.005mmより小さいと液体導入通路部10−4の呈する流路抵抗が過大となり、チャンバー10−3内に大量の液体を導入することができず、その結果、大量の液体を噴射することができないからである。また、短辺の長さtが0.5mmより大きいと、圧電/電歪素子11の作動によりチャンバー10−3内の液体に付与された圧力変動が液体供給通路10−2に伝達されてしまうので、チャンバー10−3内における液体の圧力変動を大きくできず、その結果、液体の微粒子化が困難になる恐れがあるからである。
また、支持部10−4aは、スリットの剛性向上のために有効に機能するが、省略することもできる。
更に、液体噴射孔10−3aの直径d(円筒形底面及び上面の直径d)を0.03mmとし、液体噴射孔10−3aの個数を90個とした実施例において、液体噴射デバイス10に流入する燃料の流量(従って、噴射される燃料の流量)が40cc/分であるとき、圧電素子駆動電圧信号DVの駆動周波数f(即ち、加振用チャンバー12内により発生されて噴射される燃料に伝達される圧力波の周波数f)を70kHzとすると、それぞれの直径が略0.06mmである粒子径(液滴径)の液滴を得ることができた。また、圧力波の周波数fを除き上記と同一の条件で、圧力波の周波数fを140kHzとすると、それぞれの直径が略0.035mmである粒子径(液滴径)の液滴を得ることができた。
更に、液体噴射孔10−3aから噴射される液滴の速度をV(mm/秒)、液体噴射孔10−3aの直径をd(mm)、前述した圧力波の周波数をF(Hz)としたとき、直径dは0.005〜0.1(mm)で、周波数FはV/(4.49・d)の0.5〜5倍の範囲内の値とすることが好ましい。V/(4.49・d)という値は、上記条件で液体を噴射したときに自然に得られる単位時間あたりの液滴の個数に相当する値であって、液柱分裂についてのレイリーの理論(液柱分裂に関与する変動波の波長は、液柱径の4.49倍であるという理論)に基づく値である。
直径dを0.005(mm)より大きくするのは、直径dが0.005(mm)以下となると、液体中に含まれる異物により液体噴射孔10−3aが詰まり易くなるので、安定した噴射ができなく恐れがあるからである。また、直径dを00.1(mm)より小さくするのは、直径dが0.1(mm)以上であると、噴射される液体の直径が過大となって噴射後の飛行中に分裂するため、均一な直径を有する液滴を得ることが困難となるからである。
また、圧力波の周波数FをV/(4.49・d)の0.5〜5倍の範囲内の値とするのは、次の理由による。即ち、圧力波の周波数FがV/(4.49・d)の0.5倍より小さいと、液体噴射孔10−3aから噴射された液体のくびれの間隔が過大となり、液体の微粒子化が不十分となる。これに対し、圧力波の周波数FがV/(4.49・d)の5倍以上となると、液体のくびれの間隔が過小となって周波数Fに応じた直径の液滴が形成され難くなるか、或いは、仮に噴射される液滴が周波数Fに応じた直径に微粒子化されても、それらの液滴の間隔が過小となって、噴射後の飛行中に再結合し易くなるからである。
この場合、液体噴射孔10−3aからある程度の距離だけ離れた位置において、均一な直径を有する液滴を確実に形成することを考慮すると、圧力波の周波数FはV/(4.49・d)の1倍以上で3倍以下の範囲内の値であることが更に好適である。特に、圧力波の周波数FをV/(4.49・d)の整数倍近傍の値(即ち、略1倍、略2倍、又は略3倍)とすると、圧電/電歪素子11に与える電力量をより小さくしても所望の液滴を確実に形成することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る液体噴射装置について説明する。第2実施形態に係る液体噴射装置は、液体噴射デバイス10の液体導入通路部10−4を液体導入通路部10−5に置換した液体噴射デバイス50を同液体噴射デバイス10に代えて採用した点のみにおいて同第1実施形態に係る液体噴射装置と異なっている。従って、以下、係る相違点を中心として図6を参照しながら説明する。
液体導入通路部10−5は、液体噴射デバイス10の金属板10bに代わる金属体10dにより構成されている。金属体10dは、複数の金属板10d1〜10d6からなっている。そして、液体導入通路部10−5には、金属板10d1〜10d3により巾(高さ)t1の第1スリットが形成され、金属板10d3〜10d5により巾(高さ)t2の第2スリットが形成され、金属板10d5、10d6及び10cにより巾(高さ)t3の第3スリットが形成されている。
第1〜第3スリットの平面形状は液体噴射デバイス10の液体導入通路部10−4におけるスリットの平面形状と同一である。第1〜第3スリットのX軸方向及びY軸方向位置も、液体導入通路部10−4におけるスリットのX軸方向及びY軸方向位置と同一である。巾t3は前述した液体導入通路部10−4におけるスリットの巾tと同一である。巾t2は巾t3より大きく、巾t1は巾t2よりも大きい。
即ち、液体噴射デバイス50は、液体導入通路部10−5において、複数(ここでは3個)の互いに平行なスリットを有していて、何れのスリットもY−Z平面に沿った平面にて切断した断面はZ軸方向及びY軸方向にそれぞれ短辺及び長辺を有する長方形状となっている。また、それらのスリットは、その巾(厚み、Z軸方向長さ)が互いに異なり、Z軸負方向に行くにしたがって(金属板10aに近づくにしたがって)大きくなっている。
以上、説明したように、液体噴射デバイス50の液体導入通路部10−5は、液体導入通路部10−4のスリットと同等のスリットを複数備えている。従って、液体噴射デバイス50は、より大量の液体をチャンバー10−3に導入することができるので、より大量の液体を噴射することができる。また、液体噴射デバイス50は、チャンバー10−3及び液体供給通路10−2内の気泡が滞留し易い部分(例えば、チャンバー10−3又は液体供給通路10−2と、液体導入通路部10−6と、金属板10aとにより形成される角部で、図6中に黒塗りの三角で示した部分)に液体の流れを形成することが可能となるので、気泡の排出が促進される。
この結果、液体噴射デバイス50を採用した第2実施形態の液体噴射装置は、液体噴射デバイス10を採用した第1実施形態の液体噴射装置が有する利点に加え、チャンバー10−3内において液体に圧力変動を適切に付与することができるので(気泡により圧力変動の付与を阻害され難いので)、液体の噴射を安定した状態で行うことが可能となるという利点を有している。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る液体噴射装置について説明する。第3実施形態に係る液体噴射装置は、第1実施形態の液体噴射デバイス10に代えて液体噴射デバイス60を採用した点のみにおいて同第1実施形態の液体噴射装置と異なっている。また、液体噴射デバイス60は、液体噴射デバイス10の圧電/電歪素子11を圧電/電歪素子13に置換した点のみにおいて同液体噴射デバイス10と相違している。従って、以下、係る相違点を中心として図7〜図9を参照しながら説明する。
圧電/電歪素子13は、X,Y及びZ軸方向に沿った各辺を有する略直方体形状を有していて、層状の圧電/電歪素子と層状の電極とを交互に多層にわたり積層することで形成された「縦効果タイプの積層ピエゾアクチュエータ」である。即ち、一対の電極13a,13bには複数の櫛歯状電極が交互に接続されている。その櫛歯状電極(電極層)及び圧電/電歪層13cの層面はZ−X平面に平行である。圧電/電歪素子13は、平面視でチャンバー10−3よりも僅かに小さく、同平面視でチャンバー10−3の内側に配設されている。
一対の電極13a,13bの櫛歯状電極は、圧電/電歪層13cのY軸方向略中央部であってチャンバー10−3の上方にのみ設けられ、圧電/電歪層13cのY軸方向両端部には設けられていない。圧電/電歪層13cの櫛歯状電極が形成されている部分は、これらの櫛歯状電極により電界が付与される活性部を形成している。また、圧電/電歪層13cの櫛歯状電極が形成されていない部分は、圧電/電歪層11cに電界が付与されない不活性部を形成している。そして、圧電/電歪素子13は、一対の電極13a,13bに周期的に電圧が変化する駆動電圧が付与されたとき、その活性部に周期的に変化する電界が加わり、その活性部がY軸方向に延びZ軸方向に縮んで(伸縮して)振動するようになっている。
この圧電/電歪素子13は、圧電/電歪素子11と同様に、実質的に変形することのない不活性部において加振用チャンバー12に保持されている。従って、その保持部が圧電/電歪素子13により振動されることがない。更に、圧電/電歪素子13の活性部に生じる振動は第2液体を介して液体噴射孔10−3aから噴射される第1液体に伝達される。この結果、液体噴射デバイス60を採用した液体噴射装置は、液体噴射デバイス10を採用した液体噴射装置と同様に、圧電/電歪素子11を長期に渡り確実に保持することができ、その耐久性が著しく向上したものとなっている。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る液体噴射装置について説明する。第4実施形態に係る液体噴射装置は、第1実施形態に係る液体噴射デバイス10の圧電/電歪素子11を圧電/電歪素子14に置換した液体噴射デバイス70を採用した点のみにおいて同第1実施形態に係る液体噴射装置と異なっている。従って、以下、係る相違点を中心として図10〜図12を参照しながら説明する。
圧電/電歪素子14は、電極14a,14bのX−Y平面に平行に広がる櫛歯状電極がY軸方向略中央部で且つZ軸負方向にのみに形成されている。即ち、圧電/電歪素子14は、加振用チャンバー12の液体収容空間12c内において活性部が不活性部よりもチャンバー10−3側(液体噴射デバイスの金属板10c側)に配置されている。また、圧電/電歪素子14は、圧電/電歪素子11と同様に、Y軸方向両端部に形成された不活性部にて加振用チャンバー12に保持されている。
この結果、液体噴射デバイス70は、圧電/電歪素子14の活性部の伸縮を、その活性部よりもZ軸上方に設けられた不活性部により、同圧電/電歪素子14の屈曲変形という形で発現させることができる。従って、電極14a,14b間に付与する駆動電圧の電位差(即ち、圧電素子駆動電圧信号DVの最大値Vmax)を小さくしても、十分な振動を燃料に伝達することが可能となる。従って、圧電/電歪素子14の消費電力を低減することができる。
また、圧電/電歪素子14は、活性部が不活性部よりもチャンバー10−3の金属板10c側に配置されている。従って、大きな圧力変動を有する圧力波を金属板10cに向けて発生させ易くなるので、圧電/電歪素子14の消費電力をより一層低減することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る液体噴射装置について説明する。第5実施形態に係る液体噴射装置は、第1実施形態に係る液体噴射装置の液体噴射デバイス10の圧電/電歪素子11を圧電/電歪素子15に置換するとともに、加振用チャンバー12を加振用チャンバー16に置換した液体噴射デバイス80を採用した点のみにおいて同第1実施形態に係る液体噴射装置と異なっている。従って、以下、係る相違点を中心として図13〜図15を参照しながら説明する。
圧電/電歪素子15は、図15に示したように、Y軸方向両端部にてZ軸正方向に屈曲するとともにX軸方向に延びるフランジ部15f1,15f2を有している点のみにおいて、圧電/電歪素子11と相違している。このフランジ部15f1の上面には電極15aの共通電極が形成され、フランジ部15f2の上面には電極15bの共通電極が形成されている。
従って、図15に仮想線にて示したように、フランジ15f1,15f2をコネクタ(クリップ)CL,CLで挟持することにより、圧電/電歪素子14の電極15a,15bの共通電極を確実に保持して電気制御装置40との電気的接続を維持することができるので、液体噴射デバイス80の信頼性を向上することができる。
一方、加振用チャンバー16は、加振用チャンバー12に対して気体排出部を備えた点のみにおいて、同加振用チャンバー12と相違している。即ち、気体排出部は、蓋部12bと同様な蓋部16bの上壁に形成された貫通孔16dと、その貫通孔16dの中に配設されたフィルタ16eとからなっている。
これによれば、第2液体中の溶存気体が同第2液体の圧力変動により気体となった場合に、同気体を気体排出部を介して加振用チャンバー16の外部に排出することができる。従って、加振用チャンバー16内において、圧電/電歪素子15による振動が気体により吸収されるととが回避されるので、液体噴射孔10−3aから噴射される液体に確実に振動を付与することができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る液体噴射装置について図16A及び図16Bを参照しながら説明する。第6実施形態に係る液体噴射装置は、第1実施形態に係る液体噴射装置の液体噴射デバイス10に代わる液体噴射デバイス90を採用した点のみにおいて、同第1実施形態に係る液体噴射装置と相違している。従って、以下、液体噴射デバイス90を中心として説明する。
液体噴射デバイス90は、チャンバー91と液体導入通路部92と加振用チャンバー93と、圧電/電歪素子94とからなっている。チャンバー91は略円錐形状(ロート形状)をなしている。その底壁91aには、液体噴射孔10−3aと同一である中空円筒状の液体噴射孔(液体噴射用ノズル)91a1が複数個形成されている。複数の液体噴射孔91a1は正方格子状に配列されている。
液体導入通路部92は、図16Bに示したように、金属の薄板で構成された管である。液体導入通路部92は、その一端がチャンバー91の頂部に接続されるとともに、その他端が図示しない電磁開閉式吐出弁24の吐出孔24eに接続されている。これにより、液体導入通路部92は、電磁開閉式吐出弁24の液体通路24b(吐出孔24e)が開閉弁24dにより開放されたとき、プレッシャレギュレータ23を介して加圧ポンプ21から供給される加圧された燃料をチャンバー91に流入せしめるようになっている。
加振用チャンバー93は、加振用チャンバー12と同様な構成を有している。圧電/電歪素子94は、圧電/電歪素子11と同様な構成を有していて、その両端部に設けられた不活性部におて加振用チャンバー93に保持されている。加振用チャンバー93は、液体導入通路部92の壁の一部に固定されていて、この壁とともに形成される密閉空間に第2液体を収容している。
液体噴射デバイス90を採用した液体噴射装置の作動は、液体噴射デバイス10を採用した液体噴射装置の作動と同様である。即ち、圧電/電歪素子94の図示しない電極に所定の周波数を有する圧電素子駆動電圧信号DVが印加されると、圧電/電歪素子94が伸縮し、その伸縮に基づく振動が第2液体及び液体導入通路92を構成している壁を介して液体導入通路部92内の液体(燃料)に伝達される。これにより、液体噴射孔91a1から噴射される液体が微粒子化される。このように、加振用チャンバー93は、液体導入通路部92に隣接配置してもよい。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態に係る液体噴射装置について説明する。第7実施形態に係る液体噴射装置は、第1実施形態の液体噴射デバイス10に代わる液体噴射デバイス100を採用した点のみにおいて同第1実施形態の液体噴射装置と相違している。
液体噴射デバイス100は、液体噴射デバイス10の液体導入通路部10−4を省略して、液体供給通路10−2とチャンバー10−3とを一体化した一つのチャンバー100−1を備えたものであり、その他の点は液体噴射デバイス10と同様な構成を有している。この液体噴射デバイス100も、液体噴射デバイス10と同様に作動する。このように、液体導入通路部10−4は必ずしも必要ではない。
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る液体噴射装置は、圧電/電歪素子を実質的に変形することのない不活性部において加振用チャンバーに保持させている。従って、加振用チャンバーの保持部が圧電/電歪素子により振動されることがない。更に、圧電/電歪素子の活性部に生じる振動は第2液体を介して液体噴射孔から噴射される第1液体に伝達される。この結果、従来の装置のように、圧電/電歪素子の接着面が振動されることはないので、液体噴射装置は、圧電/電歪素子を長期に渡り確実に保持することができ、その耐久性が著しく向上したものとなっている。
また、上述した各実施形態に係る液体噴射装置は、液体を加圧する加圧手段(加圧ポンプ21)と、電磁開閉式吐出弁24とを備えていて、電磁開閉式吐出弁24内の液体通路24bが開放されたとき加圧手段21から供給される加圧された液体が同液体通路24bを介して液体導入通路部(10−4〜10−7、10−10〜10−13)に供給されるようになっている。
その液体は、更に、液体導入通路部を介してチャンバーに供給され、チャンバーの液体噴射孔を介して噴射される。従って、液体の噴射に必要な圧力は加圧手段21により発生されることから、適用する機械の運転条件等の変動などにより、液体噴射空間31の環境(例えば、吸気管30内の圧力や温度)が激しく変動しても、同液体を所望の微細な粒子として安定して噴射、供給することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態の液体噴射装置は、吸気管(吸気ポート)30内に燃料を噴射する形式のガソリン内燃機関に適用されていたが、本発明による液体噴射装置を、気筒内に燃料を直接噴射する所謂「直噴式ガソリン内燃機関」に適用することもできる。
即ち、従来のフューエルインジェクタを用いた電気制御式燃料噴射装置により気筒内に直接的に燃料を噴射すると、シリンダーとピストンとの隙間(クレビス)に燃料が溜まることがあり、未燃HC(ハイドロカーボン)量が増大する場合があったのに対し、本発明による液体噴射装置を用いて気筒内に直接的に燃料を噴射すると、燃料が微粒子化された状態で気筒内に噴射されるので、気筒内壁面への燃料付着量が低減でき、あるいはシリンダーとピストンとの隙間に侵入する燃料量を低減できるから、未燃HCの排出量を低減することができる。更に、本発明による液体噴射装置を、ディーゼルエンジン用の直噴インジェクタとして用いることも有効である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体を加圧するとともに同加圧された第1液体を吐出部から吐出する加圧手段と、
前記吐出部から吐出された第1液体が導入される液体導入空間を画定する壁と同壁に備えられた液体噴射孔とを有する液体噴射部と、
圧電/電歪層と少なくとも一対の電極層とを含むとともに同一対の電極層により同圧電/電歪層に電界が付与される活性部と同圧電/電歪層に電界が付与されない不活性部とを有するように構成された圧電/電歪素子を同不活性部にて保持し、且つ、前記液体噴射部の壁の外面に固定されて同壁の外面とともに液体収容空間を画定する壁を備え、同液体収容空間内に同圧電/電歪素子の活性部と第2液体とを収容した加振用チャンバーと、
を備え、前記圧電/電歪素子の活性部の変形による振動が前記第2液体を介して前記液体噴射孔から噴射される第1液体に伝達されるように構成された液体噴射装置。
【請求項2】
請求の範囲1に記載の液体噴射装置であって、
前記加圧手段の吐出部から前記液体噴射孔までの間であって前記液体噴射部に介装されるとともに、前記加圧手段から前記液体噴射孔に向けての前記第1液体の通流を停止する開閉弁を備えた液体噴射装置。
【請求項3】
請求の範囲1又は請求の範囲2に記載の液体噴射装置であって、前記第2液体は非導電性の液体である液体噴射装置。
【請求項4】
請求の範囲3に記載の液体噴射装置であって、前記第2液体は不燃性の液体である液体噴射装置。
【請求項5】
請求の範囲1乃至請求の範囲4の何れか一項に記載の液体噴射装置であって、前記加振用チャンバーの液体収容空間内に更に固体の粒子を収容した液体噴射装置。
【請求項6】
請求の範囲1乃至請求の範囲5の何れか一項に記載の液体噴射装置であって、前記圧電/電歪素子は、前記加振用チャンバーの液体収容空間内に前記不活性部を有するとともに、同不活性部に連続した不活性部の両端において前記加振用チャンバーに保持されてなる液体噴射装置。
【請求項7】
請求の範囲6に記載の液体噴射装置であって、前記加振用チャンバーの液体収容空間内において前記活性部が前記不活性部よりも前記液体噴射部の壁側に配置されてなる液体噴射装置。
【請求項8】
請求の範囲1乃至請求の範囲7の何れか一項に記載の液体噴射装置であって、前記加振用チャンバーは前記液体収容空間内に発生する気体を外部に排出する気体排出部を備えた液体噴射装置。

【国際公開番号】WO2004/106729
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506569(P2005−506569)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007748
【国際出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】