液体搬送基板及び分析システム
【課題】静電力を用いて粒状の液体を搬送する際、電極に印加した電圧を切っても、絶縁膜や撥水膜の帯電により粒状の液体が吸着され、移動することができなくなる場合が想定される。
【解決手段】電極に単なる直流電圧を印加するのではなく、全ての電極に常時交流電圧を加えておき、所望の電極にのみバイアスを印加することで解決する。また、電圧を印加する電極の近傍に接地電極を設けることと、撥水膜に僅かながら導電性を持たせることで、帯電した電荷を除去しやすくし、粒状の液体を所望する電極上に確実に移動可能な液体搬送機構を提供する。
【解決手段】電極に単なる直流電圧を印加するのではなく、全ての電極に常時交流電圧を加えておき、所望の電極にのみバイアスを印加することで解決する。また、電圧を印加する電極の近傍に接地電極を設けることと、撥水膜に僅かながら導電性を持たせることで、帯電した電荷を除去しやすくし、粒状の液体を所望する電極上に確実に移動可能な液体搬送機構を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる成分量を検出する分析であって、搬送少量の試料の分析に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる成分量を検出する分析装置として、ハロゲンランプ等からの白色光を試料溶液に照射し、試料溶液を透過してきた光を回折格子で分光して必要な波長成分を取り出し、その吸光度を割り出すことで目的の成分量を測定する分光分析装置が広く用いられている。あるいは、白色光を回折格子で分光した後、試料溶液に照射する場合もある。これらの分析装置においては、従来、プラスチックやガラスの反応容器内に試料と試薬を分注し、これらを混合して試料溶液とした物に光を照射し、成分量を測定していた。
【0003】
しかし近年、試薬コストの削減や、環境への負荷低減のため、分析に用いる試料溶液の微少量化が求められており、従来方式での試料溶液微少量化では液の取り扱いが困難になり、分注、混合時に発生する気泡等により正確な測定ができなくなるという問題もあった。このため、微少量の液体を的確に搬送する技術が求められていた。
微少量の液体を搬送する一つの方式として、基板に形成された電極上の液体を電気的な制御により搬送する方式が上げられる。この方式には一般的に次の二つの方式が用いられている。
【0004】
一つ目の方式は、複数の電極を形成した二つの対向する基板間に搬送する液体を挟みこみ、二つの対向する基板間の表面に沿って配置された電極に電圧を印加することで、液体を駆動する方式(例えば(特許文献1))である。この方式では、通常、下側に配置された片方の基板上に液体を搬送させる液体搬送路に沿って多数の電極が形成され、もう一方の基板上にほぼ一面にグランドに接続された一つの電極を備える。液体がいくつかの電極上にまたがって静置している状態で液体下部の電極の一つに電圧を印加すると、電気毛管現象(例えば(特許文献2))により電圧を印加した電極上の液体の濡れ性が良くなり、最終的にその電圧を印加した電極の真上にその粒状の液体が搬送する。これを繰り返し搬送する。
【0005】
もう一つの方式として、多数の電極を有した一つの基板の上に搬送する液体を供給し、液体付近の電極に電圧を印加して、液体を駆動する方式(例えば(特許文献3))がある。多数の電極は液体を搬送させる液体搬送路に沿って配置される。液体の下部に存在する電極と液体付近の電極との間に電界を形成し、電界の力を利用し、駆動させる。これを繰り返し搬送する。
【0006】
これらの両方式とも微少量の液体を搬送する。また二つの微少量の液体同士を同じ電極上に搬送することにより混合させることも可能であり、さらには一つの微少量の液体を二つに分割することも可能である。このように、両方式とも電極を配置した基板上で電圧印加する電極を切り替えることで微量液体を搬送する。(このような搬送の駆動力を、以下、静電力という。)このようなシステムの利点は、周囲が壁に囲まれた容器に比べ、単一もしくは二枚の基板を利用するため気泡の影響を受けにくいことが挙げられる。
【0007】
基板上での分析システムを考案したものとしての報告もなされている(例えば[非特許文献1]及び[非特許文献2])。
上記文献記載の分析システム例では、基板上に試料を導入する試料導入部、試薬と混合する混合部、測定のための測定部、試料溶液を排出する排出部が存在し、各部は多数の電極から形成される液体搬送路で結ばれている。そして、試料導入部から導入された試料は、液体搬送路を搬送され、混合部において試薬と混合され反応液となり、測定部で成分を測定後、再び同じ液体搬送路を搬送され、排出部にて排出される。
【0008】
なお、静電力により液体を搬送させるために用いる電極の形状としては、例えば、相互にはめ合わされる三角形電極列(例えば(特許文献4))や凸状部分と凹状部分とを有する電極対や山形電極(例えば(特許文献5))が報告されている。また、互いに噛合う関係の突起部を各々有する複数の電極(例えば(特許文献6))が報告されている。また、突起部分が設けられた電極であって、隣接する電極の凹部へそれら突起部分が入り込む形状とすることが報告されている(例えば(特許文献7))。
【0009】
【特許文献1】特開昭60-216324号公報
【0010】
【特許文献2】特開2004-000935号公報
【特許文献3】特開平10-267801号公報
【特許文献4】米国特許第4636785号公報
【特許文献5】米国特許第4569575号公報
【特許文献6】米国特許6565727号公報
【特許文献7】特開2004-336898号公報
【非特許文献1】R. B. Fair et al. "Electrowetting-based On-Chip Sample Processing for Integrated Microfluidics" IEEE Inter. Electron Devices Meeting 2003
【非特許文献2】Vijay Srinivasan et al. "Clinical diagnostics on human whole blood、 plasma、 serum、 urine、 saliva、 sweat、 and tears on a digital microfluidic platform" μTAS 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
液体中に含まれる成分量を検出する装置等で、静電力を用いて粒状の液体を搬送するためには、まず、多数の電極を有した基板の上に、搬送する粒状の液体をいくつかの電極にまたがって静置する分量だけ供給する。この状態から粒状の液体を搬送するために、いくつかの電極上にまたがって静置している粒状の液体下部の電極の一つに電圧を印加する。すると、電気毛管現象等により、その電圧を印加した電極の真上にその粒状の液体が移動する。次に、電圧を印加した電極の電圧を切ると、粒状の液体は電圧を切った電極上で電気毛管現象が解除され、両隣の電極上にもわずかに掛かった状態で静止する。続いて、両隣の電極の内、粒状の液体の移動方向側の隣の電極に電圧を印加すると、再度、電気毛管現象等により、その電圧を印加した電極の真上にその粒状の液体が移動する。電圧を印加する電極を順次切り替え、以上の動作を繰り返すことで粒状の液体を搬送することができる。
【0012】
この時用いる多数の電極を有した基板には、電極を覆うように絶縁膜が設けられており、さらに絶縁膜を覆うように撥水膜が設けられている。そのため、粒状の液体と電極の間には絶縁膜と撥水膜があり、粒状の液体は撥水膜の上に供給され、撥水膜の上を搬送し、撥水膜の上で成分量を検出され、撥水膜の上から排出される。
【0013】
粒状の液体を搬送するために電極に電圧を印加すると、電気毛管現象によりその電圧を印加した電極の真上にその粒状の液体が移動し、電圧を切ると電気毛管現象が解除されるが、電極に印加した電圧を切っても電気毛管現象が解除されない場合がある。その理由は、粒状の液体と電極間にある絶縁膜や撥水膜が帯電するためである。このような状態になると粒状の液体は帯電した部分に吸い寄せられたままになり、隣の電極に電圧を印加しても移動することが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための手段として、電極上の絶縁膜や撥水膜に帯電した電荷を取り除くことにより、粒状の液体が帯電した部分に吸い寄せられたまま移動しない状態から脱し、スムーズに搬送することができる。
【0015】
具体的には、電極に印加する直流電圧に加え、全ての電極に、もしくは、少なくとも粒状の液体が配置されている電極と、その隣にある電極に、装置立ち上げ時から装置使用終了までの間、もしくは、液体搬送開始時点から液体搬送終了時点まで、交流電圧を印加し、帯電を除去すること、すなわち、全ての電極には通常交流電圧を加えておき、所望の電極にのみバイアスを印加することで解決する。また、電圧を印加する電極の近傍に接地電極を設けることと、撥水膜及びもしくは絶縁膜に僅かながら導電性を持たせることで、帯電した電荷を除去しやすくしている。
【0016】
液体搬送基板の一例としては、第1の基板と、前記第1の基板と対向する第2の基板と、前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、前記第2の基板上に設けられた第2電極と、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材と、第1の液体を導入するための導入口と、前記第1の液体を排出するための排出口と、前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加するための導電手段とを有することを特徴とする。
【0017】
液体搬送基板の他の例としては、第1の基板と、前記第1の基板と対向する第2の基板と、前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、前記第2の基板上に設けられた第2電極と、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材と、第1の液体を導入するための導入口と、前記第1の液体を排出するための排出口と、前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加し、前記起動電圧の印加、印加解除の少なくともいずれかのときに、前記駆動電圧を印加した第1電極に、減衰波形を持つ交流電圧を印加するための導電手段とを有することを特徴とする。
【0018】
液体搬送基板の他の例としては、第1の基板と、前記第1の基板と対向する第2の基板と、前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、前記第2の基板上に設けられた第2電極と、少なくとも1つの前記第1電極の近傍に設けられた、制御電極と、前記制御電極の少なくとも一部、及び、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、第1の液体を前記第1の層状部材の上に導入するための導入口と、前記第1の液体を排出するための排出口と、前記制御電極を接地電位とし、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部と前記第2電極との間に電圧を印加する導電手段を有することを特徴とする。
【0019】
分析システムの一例としては、第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、前記電圧印加手段は、前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加することを特徴とする。
【0020】
分析システムの他の例としては、第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、少なくとも1つの前記第1電極の近傍に設けられた制御電極と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、前記電圧印加手段は、前記制御電極を接地電位とし、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
液体中に含まれる成分量を検出する装置等で、静電力を用いて粒状の液体を搬送する際に、帯電により粒状の液体が搬送されなくなることを防止することができ、粒状の液体を所望する電極上に確実に移動することができる。これにより、粒状の液体を移動制御する際に、粒状の液体の位置を検出してフィードバックすることなしに、オープンループで制御することも可能になる。
【実施例1】
【0022】
図1から図3は液体搬送基板の構成の例を示す略図である。図1は基板の内部構成を示す略図であり、(a)は立体的に構成を説明するための図であり(b)は部分断面図である。図2はA-A断面における断面図を、図3はB-B断面における断面図を表している。本実施例での液体搬送基板は、大きく分けて下側の第1の基板1と上側の第2の基板2から構成されている。
【0023】
第1の基板1と第2の基板2は、後述する液体搬送、及び、試料中に含まれる成分量検出のために、絶縁物かつ必要な波長の光を透過する材質を用いている。このような材質は、例えば実質的に透明なものを使用できる。具体的にはガラスやプラスチック等でもよい。図1及び図2に於いて、第1の基板1には、測定部4と測定部4を含む液体搬送路3とを形成する複数の第1の電極5が構成され、第2の基板2には、複数の第1の電極5と対面する領域に第2の電極6が構成される。
【0024】
第1の電極5は、様々な形状を取ることが出来るが、図面の簡単のため、正方形に簡略化して説明する。
第1の電極5は図1に示されたような配列を構成するが、この配列は一端の電極51、他端の電極52、一端の電極51と他端の電極52との間に配置される中間電極の群53からなる。第1の電極5と第2の電極6は、通常第1の基板1もしくは第2の基板2の表面に薄膜として堆積された透明導電膜をパターンニングして形成され、やはり薄膜として堆積された光を透過する絶縁膜により覆われており、さらに絶縁膜の表面は光を透過する撥水膜で覆われている。電極、絶縁膜及び撥水膜は非常に薄いため、本実施例で使用する断面図では、ほとんどの場合電極のみが基板に埋め込まれたような形状で表すことにする。絶縁膜及び撥水膜は非常に薄いと述べたが、通常50nm程度から5μm程度であることが望ましい。この範囲は、製造上の厚さ精度を考慮すると50nm程度以上の厚さが必要であり、また5μm程度よりも厚くなると、電極と粒状の液体の距離が大きすぎ、粒状の液体を搬送するために十分な静電力を得ることが難しくなるため、搬送のためには高電圧の印加が必要となることによるものである。なお、ここでいう程度とは、製造上の誤差程度の範囲を指す。
【0025】
図1において、試料や試薬などの液体を導入するための導入口7と、前記液体を排出する排出口8は、第2の基板2に設けられている。
第1の基板1と第2の基板2は、一定の間隔を保って実質的に平行に向かい合わせるためのスペーサ9を挟み込んで固定されており、スペーサ9には、第1の基板1と第2の基板2との間の空間をシールする側壁10を兼ねた部分もある。ここで実質的に平行とは、平行と同一視できる程度の平行性をいう。この時、第1の基板1と第2の基板2は、第1の電極5が形成された面と第2の電極6が形成された面とが向かい合うように固定されている。
【0026】
第1の電極5からは、電圧を印加する導電手段としての配線(導線)11が引き出され、側壁10を通り越して外部に設けた配線接続部材たるパッド12に電気的に接続されている。このパッドは、外部の電源と接続するためのものである。第2の電極6からは、電圧を印加する導電手段としての配線13が引き出され、側壁10を通り越して外部に設けた配線接続部材たるパッド14に電気的に接続される。ここで、第2の電極6は第1の基板1に向き合う第2の基板2の面の一部に構成されている。具体的には、第2の基板における、第1の基板上の第1の電極が配置される領域と対面する部位を含む領域に構成されている。パッド12及びパッド14には、図3に示すように配線部材15を接続し、外部の電源を含む制御装置16に接続されている。
【0027】
ここで、図4に示すように、第2の電極を第2の基板略全面に設けることもできる。すなわち、第2の基板2上の第1の基板1と向き合う面の全面に第2の電極6を設け、第2の電極6の表面を覆っている絶縁膜60及び撥水膜61にエッチング等で窓62を加工し、配線接続部材たるパッド14の領域を設ける。このパッド14は第2の電極6のむき出しとなった部分であり、絶縁膜60及び撥水膜61は第2の電極6の第1の基板と向き合う面のうちパッド14の領域以外の領域に設けられることとなる。このような構成にすることにより、導電手段としての配線を意識することなく、パッド14に相当する領域を確保し、容易に液体搬送用の基板を作成することができる。パッド12及びパッド14には、図3に示すものと同様に配線部材15を接続し、外部の電源を含む制御装置16に接続されている。
【0028】
図5は、主として第2の電極6のパッド14にあたる領域を第1の基板側から見た部分拡大図である。図5の(a)は、第2の電極6から引き出された配線13が配線接続部材たるパッド14に接続された図1に対応する場合を示し、図5の(b)は、第2の電極6が第2の基板2全面に設けられ、電極の表面を覆っている絶縁膜60及び撥水膜61にエッチング等で窓62を加工し、第2の電極をむき出すことにより配線接続部材たるパッド14の領域を設けた図4に対応する場合を示している。
【0029】
図6を用い、本実施例での試料や試薬などの液体を導入、搬送、排出方法の例を説明する。本実施例では、第1の電極の数を6個にしているが、数が制限されている訳では無い。図6の(1)から(12)は、図2と同じ断面を用い、手順を時系列で示している。第1の電極5−1から第1の電極5−6の複数の第1の電極5は、それぞれスイッチ17−1からスイッチ17−6の複数のスイッチ17を介して電源18に接続されており、電源18の対極側は第2の電極6に接続されている。
【0030】
図6の(1)において、導入口7の上部には、試料や試薬などの液体19を吸引したディスペンサ20が待機している。図6の(2)において、ディスペンサ20の先端部分が導入口7から第1の基板1と第2の基板2の間の空間21内に入り、導入口7の下に配置されている第1の電極5−1のわずかに上で停止する。具体的には、ディスペンサ20の先端部分が第1の電極5−1の上部に位置する撥水膜の近傍に位置し、かつ撥水膜に接しない程度の位置で停止する。同時に第1の電極5−1に接続されたスイッチ17−1が閉になり、第1の電極5−1と第2の電極6との間に電圧が印加される。図6の(3)において、ディスペンサ20内の液体19を吐出すると、液体19は第1の電極5−1と第2の電極6との間に静電力で保持され、粒状の液体22となる。粒状の液体22は、第1の基板1と第2の基板2の間に挟まれた状態で保持されているため、つぶされた形状になっている。
【0031】
図6の(4)において、ディスペンサ20を退避する。図6の(5)から(9)において、スイッチ17を左から右方向に順次開閉を切り替えることによって、電圧が印加される第1の電極5が、左から右方向に順次切り替わり、粒状の液体22は第1の電極5−1の位置から、排出口8の下に配置されている第1の電極5−6の位置まで搬送される。図6の(10)において、待機していた、粒状の液体22を吸引するためのディスペンサ23の先端部分が、排出口8から第1の基板1と第2の基板2の間の空間21内に入り、排出口8の下に配置されている第1の電極5−6のわずかに上で停止する。具体的には、ディスペンサ20の先端部分が第1の電極5−6の上部に位置する撥水膜の近傍に位置し、かつ撥水膜に接しない程度の位置で停止する。同時に前記第1の電極5−6に接続されたスイッチ17−6が開になり、第1の電極5−6と第2の電極6との間に印加されていた電圧が解除される。図6の(11)において、第1の電極5−6上の粒状の液体22がディスペンサ23により廃液24として吸引される。図6の(12)において、ディスペンサ23が退避し液体搬送が終了する。
【0032】
本実施例のように微少量の液体を搬送する場合、その途中で粒状の液体が蒸発して体積が変化し、成分濃度が変化する可能性がある。それを防止するため、場合によって第1の基板1と第2の基板2の間の空間21内にオイルを入れ、そのオイル中に液体を導入して、粒状の液体22を搬送する。使用するオイルには、主にシリコーン系のオイルとフロロカーボン系があるが、粒状の液体22の成分が極力オイルに溶け込まないオイルを選択することが必要である。
【0033】
次に、前述の液体搬送基板により、試料中に含まれる成分量を検出する方法を、図7を用いて説明する。図7は、図2で示す液体搬送路3と測定部4とを形成する複数の第1の電極5の中の一部である測定部4の周辺を示す。測定部4の第1の電極5−5上には、前述の液体搬送手順により、試料である粒状の液体22が導入されている状態を示している。
【0034】
液体搬送基板外部には、光25を照射する光源26と、測定部4の電極を介して透過してきた光を受光して電気信号に変換する受光部27が計測部28として配置されている。
【0035】
本実施例による成分量検出方法は、大きく3通りある。1つ目の検出方法は、試料内の特定成分により、光の特定波長の減衰量を測定する方法である。光源26から出射された光25は、第2の基板2と第2の電極6を透過し、粒状の液体22に照射される。光25は、粒状の液体22に含まれる成分量により特定の波長領域が減衰され、第1の基板1と第1の電極5−5を透過し、受光部27で受光される。受光部で受光した光25の減衰量を計測することにより、試料内の成分量を検出することができる。一般的には特定の2波長の光の減衰量を比較することにより試料内の成分量を割り出すことが多い。
【0036】
2つ目の検出方法は、照射した光により試料内の特定成分が発した蛍光量を測定することにより成分量を測定する方法である。光源26から出射された光25は、第2の基板2と第2の電極6を透過し、粒状の液体22に励起光として照射される。粒状の液体22には、目的の成分量に比例して蛍光物質が含まれており、照射された光25により励起され蛍光を発する。その蛍光量を受光部27で受光し測定することにより、目的の成分量を計測することができる。このとき、励起光として照射される光25の波長と、蛍光物質から発する蛍光の波長は異なるように設定されており、フィルタ等の波長を分離するための機構、若しくは光25をパルス状に時分割して照射し、照射されていない時間に蛍光を計測する等で、励起光と蛍光を分離するようにしている。
【0037】
3つ目の検出方法は、試料から発する発光を計測する方法である。この場合光25と光源26は必要なく、単に粒状の液体22から発する発光量を受光部27で受光し測定する。
【0038】
以上、液体搬送基板を用い、試料や試薬などの液体を導入口7から導入し、液体搬送路3を搬送して、途中、測定部4で成分量を計測し、排出口8から排出する一連の動作を述べた。
【0039】
本実施例での試料や試薬などの液体を導入、搬送、排出方法の例を図6を用いて説明した際の、第1の電極5−1から第1の電極5−6それぞれに印加される電圧の一例を、図8に横軸を時間にして表す。図6を用いて説明した際には、スイッチ17−1からスイッチ17−6を順次開閉し、図8に示すようなタイミングで第1の電極5−1から第1の電極5−6に順次直流電圧が印加されている。電圧が印加されていない部分は0V若しくは接地されている。
【0040】
前述のスイッチ17の開閉時、一度スイッチ17が閉になり第1の電極5に電圧が印加されると、その後スイッチ17を開にしても、第1の電極5の上面部分の絶縁膜60や撥水膜61が部分的に帯電したままになる場合がある。それは、絶縁膜60や撥水膜61の材質による特性や厚さによるが、その場合、図9のような回路で第1の電極5を第2の電極6と同電位にするか、図10のような回路にし、第1の電極5に瞬間的に(スイッチを開とする前後に一時的に)逆電位を印加することにより解決することができる。しかし、このような手段では帯電を除去できない場合も想定される。その場合、第1の電極5に逆電圧を印加した後、再度正電圧を印加するという動作を繰り返すことで、帯電の除去を早めることが可能である。その場合、最初に印加した電圧よりも低い正負の電圧でも良い。また、正負の電圧を減衰波形として印加することにより、より短い時間での帯電除去が可能である。 そこで本実施例では、絶縁膜60や撥水膜61に起こる帯電を除去するため、電圧が印加されていない場合0V若しくは接地する代わりに、第1の電極5−1から第1の電極5−6それぞれに、装置立ち上げ時から装置使用終了までの間、もしくは、液体搬送開始時点から液体搬送終了時点まで、交流電圧を印加しておき、加えて、図8に示すようなタイミングで第1の電極5−1から第1の電極5−6に順次直流電圧を印加する代わりに、前記交流電圧にバイアスを与えるようにした。この場合の図8に代わる電圧印加の一例を図11に示す。本実施例では、第1の電極5−1から第1の電極5−6全てに常時交流電圧を印加しておき、所望の電極にバイアスを与えているが、交流電圧を印加しておくのは、少なくとも粒状の液体が配置されている電極と、その隣にある電極のみで良い。
【0041】
本実施例により、電圧を印加した電極上の絶縁膜や撥水膜が、正負どちらかの電圧で帯電したままになることを防ぐことができるため、粒状の液体を所望の電極上にスムーズに移動することができる。
【0042】
また、交流電圧にバイアスを与えるのではなく、交流と直流を切り替え、電極への印加時に直流となるように制御することにより、同様の効果を得ることもできる。その場合の電圧印加の一例を図12に示す。この方法によれば、交流と直流をリレー等で切り替えれば良いので、バイアスを印加する方法に比べて回路を簡略化することが可能である。
【0043】
以上、図11、図12を用いた説明では、連続的な交流電圧と直流電圧の組合せにより帯電を除去する例を述べた。この場合の交流波形は、正弦波に限らず、正負の電圧が繰り返していれば良い。
【0044】
次に、連続的な交流電圧ではなく、減衰波形を用いた例を示す。前述の連続的な交流電圧では、交流電圧にバイアスを印加している時間、若しくは直流電圧に切り替えて印加している時間、及び、それらの間隔よりも早い周波数で正負の電圧が変化する交流電圧を印加することにより、つまり、粒状の液体が移動する時間よりも短時間に正負の電圧を切り替えることにより、正負どちらかに帯電したままになることを防いで、粒状の液体がスムーズに移動するようにしている。
【0045】
それに対し減衰波形を用いる方式は、短時間に正負の電圧を切り替えながら電圧を下げて行き、最終的には0V(若しくは正負の略中間の電圧)にする。そのため、交流電圧を印加する場合のように連続的に印加しておくことは必要なく、一定時間の電圧印加だけであるため、電力消費が少なくて済み、前記第1の基板1や同じく第2の基板2の長寿命化にも有利である。
【0046】
図13に、図6の直流電源に変わり、減衰波形発生器29を用いた場合の略図を、図14に各第1の電極5に印加される電圧の一例を、横軸を時間にして表す。図14では、任意の電極へ直流電圧を印加し、その電圧の印加を切断するときに、いわゆる電圧の立下り(電圧の解除のとき)のときに減衰波形となるようにしている。これ以外にも、図15のように、任意の電極への印加電圧の立ち上がりと立ち下り両方で減衰波形となるように電圧を印加することも可能である。この場合、第1の電極5へ直流電圧を印加するときに一瞬高い電圧を与えることができるため、粒状の液体の移動レスポンスが良くなるという効果もある。
【0047】
絶縁膜60や撥水膜61に帯電が起こらなければ、粒状の液体22は第1の電極5−1上から第1の電極5−6上に移動する。しかし帯電すると、電圧を印加する第1の電極を切り替えても粒状の液体22はついて行かず、ステッピングモータの脱調のような現象が起こってしまうため、粒状の液体22の位置と動きを確認し、制御しながら電圧を印加する等の対策が必要になる。本実施例によれば、そのようないわゆるクローズドループによる粒状の液体の制御ではなく、オープンループによる粒状の液体の制御が可能になる。
【実施例2】
【0048】
図16に液体搬送基板の構成の例として第1の基板1を示す。第1の基板1上には、第1の電極5と、導電手段としての配線(導線)11及びパッド12が薄膜として堆積された透明導電膜をパターンニングして形成されており、やはり薄膜として堆積された光を透過する絶縁膜60により覆われており、さらに絶縁膜60の表面は光を透過する撥水膜61で覆われている。絶縁膜60と撥水膜61には、薄膜成膜時のマスキングや薄膜成膜後のエッチング等で窓62が加工されているため、パッド12が露出し、外部からの電圧を印加できるようになっている。
【0049】
本実施例では前記に加え、図17に示すように、第1電極5の近傍に制御電極54が設けられている。制御電極54は、第1の電極5と同時にパターンニングされ、窓62の部分でその一部がパッド55として露出している。本実施例での制御電極54は、第1の基板1の導線11、パッド12及び第1の電極5が形成されている面の上側からみて、導線11、パッド12及び第1の電極5が位置する領域と重ならない領域に配置されている。
ここで、この制御電極54は図示したように当該重ならない領域の少なくとも一部に配置されてもよく、またその全部に配置されても良い。また、図示したように粒状の液体22が第1の電極5の配列からなる液体搬送路3上を移動する範囲に重ならないように、かつ、第1の電極5に極力近接するように配置されてもよい。すなわち、制御電極54は、第1の電極5の配列からなる液体搬送路3上を移動する粒状の液体22が接さない領域であってかつ第1の電極5の近傍配置されてもよい。制御電極54はパッド55部分で接地されている。
【0050】
さらに、本実施例で使用している絶縁膜60と撥水膜61は、少なくともどちらか一方が僅かに導電性を持つように成膜されている。また、絶縁膜と撥水膜は、第1の基板と第2の基板の各々の上に形成されているものであるが、そのいずれか側において、僅かに導電性を持つように成膜されていてもよい。また、接地されていてもよい。ここで、僅かに導電性を持つとは、絶縁膜や撥水膜に、金属微粉末やカーボンナノチューブ等の微粉末をパーコレーションの閾値が導電性に変わる程度に添加して得られる導電性のことであり、表面の帯電は接地部に除去することができるが、粒状の液体を搬送するための静電力には影響を及ぼさない程度の僅かな導電性である。それぞれの比抵抗は108から1011Ωcm程度であり、高抵抗であるため、流れる電流はごくわずかであり、第1の電極5に印加された電圧が隣の電極に影響することは無い。
【0051】
制御電極54と導電性を持った絶縁膜60若しくは撥水膜61の役割は、帯電した電荷を絶縁膜60や撥水膜61、及び、制御電極54を通し、パッド55から除去することにある。これにより、実施例1で述べたような交流電圧や減衰波形の電圧を印加することなく帯電を防ぐことができ、粒状の液体22をスムーズに移動する事ができる。そのため、クローズドループによる粒状の液体の制御ではなく、オープンループによる粒状の液体の制御が可能になる。実施例1と実施例2を組み合わせて用いれば、更に帯電防止の効果が上がる。
【0052】
本実施例では、液体搬送基板の構成の例として第1の基板1を有し、実施例1で用いたような第2の基板を用いない構成を示したが、第2の基板として、実施例1で用いた第2の基板の絶縁膜及び撥水膜を上記の絶縁膜と撥水膜に置換えたものを使用してもよい。この場合には、第2の基板の表面も高抵抗であるため、帯電防止の効果をより高めることができる。
【実施例3】
【0053】
以下、実施例1、2に示した液体搬送基板を分析システムに用いた例を示す。本実施例では,試料として血清を用い,基板上で複数の試料を実質的に一方向に順次搬送させ,測定部において透過光量を測定し,試料の濁度を測定する。装置構成を図18に示す。装置は試料ディスクユニット100,搬送基板ユニット200,光学ユニット300,廃液ユニット400から構成されている。試料は試料ディスクユニット100内のピペッタ101により試料ディスクユニット100から搬送基板ユニット200内に分注され,搬送基板ユニット200内で基板に配置された電極に順次電圧を印加することにより搬送され,光学ユニット300により検出後,廃液ユニット400内のシッパー401により搬送基板ユニット200内から廃液タンク402に排出される。
【0054】
試料ディスクユニット100の構成を図19に示す。液体102は容器103の中に収められ,試料ディスク104の円周上に複数配置される。試料ディスク104はモーターにより回転する。試料ディスク104の内周側には前処理ディスク105が設けられ,複数配置された前処理容器106にて試料の希釈を行う。ピペッタ101は上下方向と支柱を中心とした円周方向に移動し,試料ディスク104と前処理ディスク105の回転移動と合わせて,容器103内の液体102を吸引し,前処理容器106内へ吐出,また,前処理容器106から吸引し,搬送基板ユニット200内に液体を吐出する。
【0055】
搬送基板ユニット200としては実施例1または実施例2に示した搬送基板、もしくは実施例1と実施例2とを組み合わせた搬送基板を用いるが、ここでは簡単のため、概略図の図20を用いて説明する。搬送基板ユニット200内には,導入口201(導入口7等に対応),測定部202(測定部4等に対応),排出口203(排出口8等に対応)が配置され,導入口201と排出部203は粒状の液体を搬送する液体搬送路204で結ばれ,途中に測定部202が存在する。ピペッタ101により試料導入口201に分注された液体は,液体搬送路204を排出部203まで搬送される間に,測定部202にて測定される。その後,廃液ユニット400内のシッパー401により廃液タンク402に排出される。
【0056】
実施例1または実施例2に示した搬送基板、もしくは実施例1と実施例2とを組み合わせた搬送基板を用いることにより、粒状の液体の搬送について実施例1または実施例2、もしくは実施例1と実施例2とを組み合わせた場合の各々の効果を有する分析システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】液体搬送基板の構成の例を示す平面図である。
【図2】液体搬送基板の構成の例を示す正面側からの断面図である。
【図3】液体搬送基板の構成の例を示す側面側からの断面図である。
【図4】液体搬送基板の構成の例を示す平面図である。
【図5】パッド領域の一例を第1の基板側から見た部分拡大図である。
【図6】図2と同じ断面を用い、手順を時系列で示した略図である。
【図7】試料中に含まれる成分量検出の方法の例を示す、液体搬送基板の正面側からの断面図である。
【図8】電極に印加する電圧のタイムチャートである。
【図9】図4で示す方式の、別方式配線を示す回路図である。
【図10】図4で示す方式の、別方式配線を示す回路図である。
【図11】電極に印加する電圧のタイムチャートで、交流電圧とバイアス印加の例である。
【図12】電極に印加する電圧のタイムチャートで、交流電圧と直流電圧を切り替えて印加する例である。
【図13】図4で示す方式の、別方式配線を示す回路図である。
【図14】電極に印加する電圧のタイムチャートで、直流電圧と減衰波形電圧を印加する例である。
【図15】電極に印加する電圧のタイムチャートで、直流電圧と減衰波形電圧を印加する例である。
【図16】第1の基板の平面図である。
【図17】第1の基板の平面図である。
【図18】液体搬送基板を分析システムに用いた例である。
【図19】試料ディスクユニット110の構成の例である。
【図20】搬送基板ユニット200の概略図である。
【符号の説明】
【0058】
1…第1の基板、2…第2の基板、3…液体搬送路、4…測定部、5…第1の電極、5−1…第1の電極、5−2…第1の電極、5−3…第1の電極、5−4…第1の電極、5−5…第1の電極、5−6…第1の電極、6…第2の電極、7…導入口、8…排出口、9…スペーサ、10…側壁、11…配線、12…パッド、13…配線、14…パッド、15…配線部材、16…制御装置、17…スイッチ、17−1…スイッチ、17−2…スイッチ、17−3…スイッチ、17−4…スイッチ、17−5…スイッチ、17−6…スイッチ、18…電源、19…液体、20…ディスペンサ、21…空間、22…粒状の液体、23…ディスペンサ、24…廃液、25…光、26…光源、27…受光部、28…計測部、29…減衰波形発生器、51…電極、52…電極、53…中間電極の群、54…制御電極、55…パッド、60…絶縁膜、61…撥水膜、62…窓、100…試料ディスクユニット、101…ピペッタ、102…液体、103…容器、104…試料ディスク、105…前処理ディスク、106…前処理容器、200…搬送基板ユニット、201…導入口、202…測定部、203…排出部、204…液体搬送路、300…光学ユニット、400…廃液ユニット、401…シッパー、402…廃液タンク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる成分量を検出する分析であって、搬送少量の試料の分析に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる成分量を検出する分析装置として、ハロゲンランプ等からの白色光を試料溶液に照射し、試料溶液を透過してきた光を回折格子で分光して必要な波長成分を取り出し、その吸光度を割り出すことで目的の成分量を測定する分光分析装置が広く用いられている。あるいは、白色光を回折格子で分光した後、試料溶液に照射する場合もある。これらの分析装置においては、従来、プラスチックやガラスの反応容器内に試料と試薬を分注し、これらを混合して試料溶液とした物に光を照射し、成分量を測定していた。
【0003】
しかし近年、試薬コストの削減や、環境への負荷低減のため、分析に用いる試料溶液の微少量化が求められており、従来方式での試料溶液微少量化では液の取り扱いが困難になり、分注、混合時に発生する気泡等により正確な測定ができなくなるという問題もあった。このため、微少量の液体を的確に搬送する技術が求められていた。
微少量の液体を搬送する一つの方式として、基板に形成された電極上の液体を電気的な制御により搬送する方式が上げられる。この方式には一般的に次の二つの方式が用いられている。
【0004】
一つ目の方式は、複数の電極を形成した二つの対向する基板間に搬送する液体を挟みこみ、二つの対向する基板間の表面に沿って配置された電極に電圧を印加することで、液体を駆動する方式(例えば(特許文献1))である。この方式では、通常、下側に配置された片方の基板上に液体を搬送させる液体搬送路に沿って多数の電極が形成され、もう一方の基板上にほぼ一面にグランドに接続された一つの電極を備える。液体がいくつかの電極上にまたがって静置している状態で液体下部の電極の一つに電圧を印加すると、電気毛管現象(例えば(特許文献2))により電圧を印加した電極上の液体の濡れ性が良くなり、最終的にその電圧を印加した電極の真上にその粒状の液体が搬送する。これを繰り返し搬送する。
【0005】
もう一つの方式として、多数の電極を有した一つの基板の上に搬送する液体を供給し、液体付近の電極に電圧を印加して、液体を駆動する方式(例えば(特許文献3))がある。多数の電極は液体を搬送させる液体搬送路に沿って配置される。液体の下部に存在する電極と液体付近の電極との間に電界を形成し、電界の力を利用し、駆動させる。これを繰り返し搬送する。
【0006】
これらの両方式とも微少量の液体を搬送する。また二つの微少量の液体同士を同じ電極上に搬送することにより混合させることも可能であり、さらには一つの微少量の液体を二つに分割することも可能である。このように、両方式とも電極を配置した基板上で電圧印加する電極を切り替えることで微量液体を搬送する。(このような搬送の駆動力を、以下、静電力という。)このようなシステムの利点は、周囲が壁に囲まれた容器に比べ、単一もしくは二枚の基板を利用するため気泡の影響を受けにくいことが挙げられる。
【0007】
基板上での分析システムを考案したものとしての報告もなされている(例えば[非特許文献1]及び[非特許文献2])。
上記文献記載の分析システム例では、基板上に試料を導入する試料導入部、試薬と混合する混合部、測定のための測定部、試料溶液を排出する排出部が存在し、各部は多数の電極から形成される液体搬送路で結ばれている。そして、試料導入部から導入された試料は、液体搬送路を搬送され、混合部において試薬と混合され反応液となり、測定部で成分を測定後、再び同じ液体搬送路を搬送され、排出部にて排出される。
【0008】
なお、静電力により液体を搬送させるために用いる電極の形状としては、例えば、相互にはめ合わされる三角形電極列(例えば(特許文献4))や凸状部分と凹状部分とを有する電極対や山形電極(例えば(特許文献5))が報告されている。また、互いに噛合う関係の突起部を各々有する複数の電極(例えば(特許文献6))が報告されている。また、突起部分が設けられた電極であって、隣接する電極の凹部へそれら突起部分が入り込む形状とすることが報告されている(例えば(特許文献7))。
【0009】
【特許文献1】特開昭60-216324号公報
【0010】
【特許文献2】特開2004-000935号公報
【特許文献3】特開平10-267801号公報
【特許文献4】米国特許第4636785号公報
【特許文献5】米国特許第4569575号公報
【特許文献6】米国特許6565727号公報
【特許文献7】特開2004-336898号公報
【非特許文献1】R. B. Fair et al. "Electrowetting-based On-Chip Sample Processing for Integrated Microfluidics" IEEE Inter. Electron Devices Meeting 2003
【非特許文献2】Vijay Srinivasan et al. "Clinical diagnostics on human whole blood、 plasma、 serum、 urine、 saliva、 sweat、 and tears on a digital microfluidic platform" μTAS 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
液体中に含まれる成分量を検出する装置等で、静電力を用いて粒状の液体を搬送するためには、まず、多数の電極を有した基板の上に、搬送する粒状の液体をいくつかの電極にまたがって静置する分量だけ供給する。この状態から粒状の液体を搬送するために、いくつかの電極上にまたがって静置している粒状の液体下部の電極の一つに電圧を印加する。すると、電気毛管現象等により、その電圧を印加した電極の真上にその粒状の液体が移動する。次に、電圧を印加した電極の電圧を切ると、粒状の液体は電圧を切った電極上で電気毛管現象が解除され、両隣の電極上にもわずかに掛かった状態で静止する。続いて、両隣の電極の内、粒状の液体の移動方向側の隣の電極に電圧を印加すると、再度、電気毛管現象等により、その電圧を印加した電極の真上にその粒状の液体が移動する。電圧を印加する電極を順次切り替え、以上の動作を繰り返すことで粒状の液体を搬送することができる。
【0012】
この時用いる多数の電極を有した基板には、電極を覆うように絶縁膜が設けられており、さらに絶縁膜を覆うように撥水膜が設けられている。そのため、粒状の液体と電極の間には絶縁膜と撥水膜があり、粒状の液体は撥水膜の上に供給され、撥水膜の上を搬送し、撥水膜の上で成分量を検出され、撥水膜の上から排出される。
【0013】
粒状の液体を搬送するために電極に電圧を印加すると、電気毛管現象によりその電圧を印加した電極の真上にその粒状の液体が移動し、電圧を切ると電気毛管現象が解除されるが、電極に印加した電圧を切っても電気毛管現象が解除されない場合がある。その理由は、粒状の液体と電極間にある絶縁膜や撥水膜が帯電するためである。このような状態になると粒状の液体は帯電した部分に吸い寄せられたままになり、隣の電極に電圧を印加しても移動することが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための手段として、電極上の絶縁膜や撥水膜に帯電した電荷を取り除くことにより、粒状の液体が帯電した部分に吸い寄せられたまま移動しない状態から脱し、スムーズに搬送することができる。
【0015】
具体的には、電極に印加する直流電圧に加え、全ての電極に、もしくは、少なくとも粒状の液体が配置されている電極と、その隣にある電極に、装置立ち上げ時から装置使用終了までの間、もしくは、液体搬送開始時点から液体搬送終了時点まで、交流電圧を印加し、帯電を除去すること、すなわち、全ての電極には通常交流電圧を加えておき、所望の電極にのみバイアスを印加することで解決する。また、電圧を印加する電極の近傍に接地電極を設けることと、撥水膜及びもしくは絶縁膜に僅かながら導電性を持たせることで、帯電した電荷を除去しやすくしている。
【0016】
液体搬送基板の一例としては、第1の基板と、前記第1の基板と対向する第2の基板と、前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、前記第2の基板上に設けられた第2電極と、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材と、第1の液体を導入するための導入口と、前記第1の液体を排出するための排出口と、前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加するための導電手段とを有することを特徴とする。
【0017】
液体搬送基板の他の例としては、第1の基板と、前記第1の基板と対向する第2の基板と、前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、前記第2の基板上に設けられた第2電極と、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材と、第1の液体を導入するための導入口と、前記第1の液体を排出するための排出口と、前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加し、前記起動電圧の印加、印加解除の少なくともいずれかのときに、前記駆動電圧を印加した第1電極に、減衰波形を持つ交流電圧を印加するための導電手段とを有することを特徴とする。
【0018】
液体搬送基板の他の例としては、第1の基板と、前記第1の基板と対向する第2の基板と、前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、前記第2の基板上に設けられた第2電極と、少なくとも1つの前記第1電極の近傍に設けられた、制御電極と、前記制御電極の少なくとも一部、及び、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、第1の液体を前記第1の層状部材の上に導入するための導入口と、前記第1の液体を排出するための排出口と、前記制御電極を接地電位とし、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部と前記第2電極との間に電圧を印加する導電手段を有することを特徴とする。
【0019】
分析システムの一例としては、第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、前記電圧印加手段は、前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加することを特徴とする。
【0020】
分析システムの他の例としては、第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、少なくとも1つの前記第1電極の近傍に設けられた制御電極と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、前記電圧印加手段は、前記制御電極を接地電位とし、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
液体中に含まれる成分量を検出する装置等で、静電力を用いて粒状の液体を搬送する際に、帯電により粒状の液体が搬送されなくなることを防止することができ、粒状の液体を所望する電極上に確実に移動することができる。これにより、粒状の液体を移動制御する際に、粒状の液体の位置を検出してフィードバックすることなしに、オープンループで制御することも可能になる。
【実施例1】
【0022】
図1から図3は液体搬送基板の構成の例を示す略図である。図1は基板の内部構成を示す略図であり、(a)は立体的に構成を説明するための図であり(b)は部分断面図である。図2はA-A断面における断面図を、図3はB-B断面における断面図を表している。本実施例での液体搬送基板は、大きく分けて下側の第1の基板1と上側の第2の基板2から構成されている。
【0023】
第1の基板1と第2の基板2は、後述する液体搬送、及び、試料中に含まれる成分量検出のために、絶縁物かつ必要な波長の光を透過する材質を用いている。このような材質は、例えば実質的に透明なものを使用できる。具体的にはガラスやプラスチック等でもよい。図1及び図2に於いて、第1の基板1には、測定部4と測定部4を含む液体搬送路3とを形成する複数の第1の電極5が構成され、第2の基板2には、複数の第1の電極5と対面する領域に第2の電極6が構成される。
【0024】
第1の電極5は、様々な形状を取ることが出来るが、図面の簡単のため、正方形に簡略化して説明する。
第1の電極5は図1に示されたような配列を構成するが、この配列は一端の電極51、他端の電極52、一端の電極51と他端の電極52との間に配置される中間電極の群53からなる。第1の電極5と第2の電極6は、通常第1の基板1もしくは第2の基板2の表面に薄膜として堆積された透明導電膜をパターンニングして形成され、やはり薄膜として堆積された光を透過する絶縁膜により覆われており、さらに絶縁膜の表面は光を透過する撥水膜で覆われている。電極、絶縁膜及び撥水膜は非常に薄いため、本実施例で使用する断面図では、ほとんどの場合電極のみが基板に埋め込まれたような形状で表すことにする。絶縁膜及び撥水膜は非常に薄いと述べたが、通常50nm程度から5μm程度であることが望ましい。この範囲は、製造上の厚さ精度を考慮すると50nm程度以上の厚さが必要であり、また5μm程度よりも厚くなると、電極と粒状の液体の距離が大きすぎ、粒状の液体を搬送するために十分な静電力を得ることが難しくなるため、搬送のためには高電圧の印加が必要となることによるものである。なお、ここでいう程度とは、製造上の誤差程度の範囲を指す。
【0025】
図1において、試料や試薬などの液体を導入するための導入口7と、前記液体を排出する排出口8は、第2の基板2に設けられている。
第1の基板1と第2の基板2は、一定の間隔を保って実質的に平行に向かい合わせるためのスペーサ9を挟み込んで固定されており、スペーサ9には、第1の基板1と第2の基板2との間の空間をシールする側壁10を兼ねた部分もある。ここで実質的に平行とは、平行と同一視できる程度の平行性をいう。この時、第1の基板1と第2の基板2は、第1の電極5が形成された面と第2の電極6が形成された面とが向かい合うように固定されている。
【0026】
第1の電極5からは、電圧を印加する導電手段としての配線(導線)11が引き出され、側壁10を通り越して外部に設けた配線接続部材たるパッド12に電気的に接続されている。このパッドは、外部の電源と接続するためのものである。第2の電極6からは、電圧を印加する導電手段としての配線13が引き出され、側壁10を通り越して外部に設けた配線接続部材たるパッド14に電気的に接続される。ここで、第2の電極6は第1の基板1に向き合う第2の基板2の面の一部に構成されている。具体的には、第2の基板における、第1の基板上の第1の電極が配置される領域と対面する部位を含む領域に構成されている。パッド12及びパッド14には、図3に示すように配線部材15を接続し、外部の電源を含む制御装置16に接続されている。
【0027】
ここで、図4に示すように、第2の電極を第2の基板略全面に設けることもできる。すなわち、第2の基板2上の第1の基板1と向き合う面の全面に第2の電極6を設け、第2の電極6の表面を覆っている絶縁膜60及び撥水膜61にエッチング等で窓62を加工し、配線接続部材たるパッド14の領域を設ける。このパッド14は第2の電極6のむき出しとなった部分であり、絶縁膜60及び撥水膜61は第2の電極6の第1の基板と向き合う面のうちパッド14の領域以外の領域に設けられることとなる。このような構成にすることにより、導電手段としての配線を意識することなく、パッド14に相当する領域を確保し、容易に液体搬送用の基板を作成することができる。パッド12及びパッド14には、図3に示すものと同様に配線部材15を接続し、外部の電源を含む制御装置16に接続されている。
【0028】
図5は、主として第2の電極6のパッド14にあたる領域を第1の基板側から見た部分拡大図である。図5の(a)は、第2の電極6から引き出された配線13が配線接続部材たるパッド14に接続された図1に対応する場合を示し、図5の(b)は、第2の電極6が第2の基板2全面に設けられ、電極の表面を覆っている絶縁膜60及び撥水膜61にエッチング等で窓62を加工し、第2の電極をむき出すことにより配線接続部材たるパッド14の領域を設けた図4に対応する場合を示している。
【0029】
図6を用い、本実施例での試料や試薬などの液体を導入、搬送、排出方法の例を説明する。本実施例では、第1の電極の数を6個にしているが、数が制限されている訳では無い。図6の(1)から(12)は、図2と同じ断面を用い、手順を時系列で示している。第1の電極5−1から第1の電極5−6の複数の第1の電極5は、それぞれスイッチ17−1からスイッチ17−6の複数のスイッチ17を介して電源18に接続されており、電源18の対極側は第2の電極6に接続されている。
【0030】
図6の(1)において、導入口7の上部には、試料や試薬などの液体19を吸引したディスペンサ20が待機している。図6の(2)において、ディスペンサ20の先端部分が導入口7から第1の基板1と第2の基板2の間の空間21内に入り、導入口7の下に配置されている第1の電極5−1のわずかに上で停止する。具体的には、ディスペンサ20の先端部分が第1の電極5−1の上部に位置する撥水膜の近傍に位置し、かつ撥水膜に接しない程度の位置で停止する。同時に第1の電極5−1に接続されたスイッチ17−1が閉になり、第1の電極5−1と第2の電極6との間に電圧が印加される。図6の(3)において、ディスペンサ20内の液体19を吐出すると、液体19は第1の電極5−1と第2の電極6との間に静電力で保持され、粒状の液体22となる。粒状の液体22は、第1の基板1と第2の基板2の間に挟まれた状態で保持されているため、つぶされた形状になっている。
【0031】
図6の(4)において、ディスペンサ20を退避する。図6の(5)から(9)において、スイッチ17を左から右方向に順次開閉を切り替えることによって、電圧が印加される第1の電極5が、左から右方向に順次切り替わり、粒状の液体22は第1の電極5−1の位置から、排出口8の下に配置されている第1の電極5−6の位置まで搬送される。図6の(10)において、待機していた、粒状の液体22を吸引するためのディスペンサ23の先端部分が、排出口8から第1の基板1と第2の基板2の間の空間21内に入り、排出口8の下に配置されている第1の電極5−6のわずかに上で停止する。具体的には、ディスペンサ20の先端部分が第1の電極5−6の上部に位置する撥水膜の近傍に位置し、かつ撥水膜に接しない程度の位置で停止する。同時に前記第1の電極5−6に接続されたスイッチ17−6が開になり、第1の電極5−6と第2の電極6との間に印加されていた電圧が解除される。図6の(11)において、第1の電極5−6上の粒状の液体22がディスペンサ23により廃液24として吸引される。図6の(12)において、ディスペンサ23が退避し液体搬送が終了する。
【0032】
本実施例のように微少量の液体を搬送する場合、その途中で粒状の液体が蒸発して体積が変化し、成分濃度が変化する可能性がある。それを防止するため、場合によって第1の基板1と第2の基板2の間の空間21内にオイルを入れ、そのオイル中に液体を導入して、粒状の液体22を搬送する。使用するオイルには、主にシリコーン系のオイルとフロロカーボン系があるが、粒状の液体22の成分が極力オイルに溶け込まないオイルを選択することが必要である。
【0033】
次に、前述の液体搬送基板により、試料中に含まれる成分量を検出する方法を、図7を用いて説明する。図7は、図2で示す液体搬送路3と測定部4とを形成する複数の第1の電極5の中の一部である測定部4の周辺を示す。測定部4の第1の電極5−5上には、前述の液体搬送手順により、試料である粒状の液体22が導入されている状態を示している。
【0034】
液体搬送基板外部には、光25を照射する光源26と、測定部4の電極を介して透過してきた光を受光して電気信号に変換する受光部27が計測部28として配置されている。
【0035】
本実施例による成分量検出方法は、大きく3通りある。1つ目の検出方法は、試料内の特定成分により、光の特定波長の減衰量を測定する方法である。光源26から出射された光25は、第2の基板2と第2の電極6を透過し、粒状の液体22に照射される。光25は、粒状の液体22に含まれる成分量により特定の波長領域が減衰され、第1の基板1と第1の電極5−5を透過し、受光部27で受光される。受光部で受光した光25の減衰量を計測することにより、試料内の成分量を検出することができる。一般的には特定の2波長の光の減衰量を比較することにより試料内の成分量を割り出すことが多い。
【0036】
2つ目の検出方法は、照射した光により試料内の特定成分が発した蛍光量を測定することにより成分量を測定する方法である。光源26から出射された光25は、第2の基板2と第2の電極6を透過し、粒状の液体22に励起光として照射される。粒状の液体22には、目的の成分量に比例して蛍光物質が含まれており、照射された光25により励起され蛍光を発する。その蛍光量を受光部27で受光し測定することにより、目的の成分量を計測することができる。このとき、励起光として照射される光25の波長と、蛍光物質から発する蛍光の波長は異なるように設定されており、フィルタ等の波長を分離するための機構、若しくは光25をパルス状に時分割して照射し、照射されていない時間に蛍光を計測する等で、励起光と蛍光を分離するようにしている。
【0037】
3つ目の検出方法は、試料から発する発光を計測する方法である。この場合光25と光源26は必要なく、単に粒状の液体22から発する発光量を受光部27で受光し測定する。
【0038】
以上、液体搬送基板を用い、試料や試薬などの液体を導入口7から導入し、液体搬送路3を搬送して、途中、測定部4で成分量を計測し、排出口8から排出する一連の動作を述べた。
【0039】
本実施例での試料や試薬などの液体を導入、搬送、排出方法の例を図6を用いて説明した際の、第1の電極5−1から第1の電極5−6それぞれに印加される電圧の一例を、図8に横軸を時間にして表す。図6を用いて説明した際には、スイッチ17−1からスイッチ17−6を順次開閉し、図8に示すようなタイミングで第1の電極5−1から第1の電極5−6に順次直流電圧が印加されている。電圧が印加されていない部分は0V若しくは接地されている。
【0040】
前述のスイッチ17の開閉時、一度スイッチ17が閉になり第1の電極5に電圧が印加されると、その後スイッチ17を開にしても、第1の電極5の上面部分の絶縁膜60や撥水膜61が部分的に帯電したままになる場合がある。それは、絶縁膜60や撥水膜61の材質による特性や厚さによるが、その場合、図9のような回路で第1の電極5を第2の電極6と同電位にするか、図10のような回路にし、第1の電極5に瞬間的に(スイッチを開とする前後に一時的に)逆電位を印加することにより解決することができる。しかし、このような手段では帯電を除去できない場合も想定される。その場合、第1の電極5に逆電圧を印加した後、再度正電圧を印加するという動作を繰り返すことで、帯電の除去を早めることが可能である。その場合、最初に印加した電圧よりも低い正負の電圧でも良い。また、正負の電圧を減衰波形として印加することにより、より短い時間での帯電除去が可能である。 そこで本実施例では、絶縁膜60や撥水膜61に起こる帯電を除去するため、電圧が印加されていない場合0V若しくは接地する代わりに、第1の電極5−1から第1の電極5−6それぞれに、装置立ち上げ時から装置使用終了までの間、もしくは、液体搬送開始時点から液体搬送終了時点まで、交流電圧を印加しておき、加えて、図8に示すようなタイミングで第1の電極5−1から第1の電極5−6に順次直流電圧を印加する代わりに、前記交流電圧にバイアスを与えるようにした。この場合の図8に代わる電圧印加の一例を図11に示す。本実施例では、第1の電極5−1から第1の電極5−6全てに常時交流電圧を印加しておき、所望の電極にバイアスを与えているが、交流電圧を印加しておくのは、少なくとも粒状の液体が配置されている電極と、その隣にある電極のみで良い。
【0041】
本実施例により、電圧を印加した電極上の絶縁膜や撥水膜が、正負どちらかの電圧で帯電したままになることを防ぐことができるため、粒状の液体を所望の電極上にスムーズに移動することができる。
【0042】
また、交流電圧にバイアスを与えるのではなく、交流と直流を切り替え、電極への印加時に直流となるように制御することにより、同様の効果を得ることもできる。その場合の電圧印加の一例を図12に示す。この方法によれば、交流と直流をリレー等で切り替えれば良いので、バイアスを印加する方法に比べて回路を簡略化することが可能である。
【0043】
以上、図11、図12を用いた説明では、連続的な交流電圧と直流電圧の組合せにより帯電を除去する例を述べた。この場合の交流波形は、正弦波に限らず、正負の電圧が繰り返していれば良い。
【0044】
次に、連続的な交流電圧ではなく、減衰波形を用いた例を示す。前述の連続的な交流電圧では、交流電圧にバイアスを印加している時間、若しくは直流電圧に切り替えて印加している時間、及び、それらの間隔よりも早い周波数で正負の電圧が変化する交流電圧を印加することにより、つまり、粒状の液体が移動する時間よりも短時間に正負の電圧を切り替えることにより、正負どちらかに帯電したままになることを防いで、粒状の液体がスムーズに移動するようにしている。
【0045】
それに対し減衰波形を用いる方式は、短時間に正負の電圧を切り替えながら電圧を下げて行き、最終的には0V(若しくは正負の略中間の電圧)にする。そのため、交流電圧を印加する場合のように連続的に印加しておくことは必要なく、一定時間の電圧印加だけであるため、電力消費が少なくて済み、前記第1の基板1や同じく第2の基板2の長寿命化にも有利である。
【0046】
図13に、図6の直流電源に変わり、減衰波形発生器29を用いた場合の略図を、図14に各第1の電極5に印加される電圧の一例を、横軸を時間にして表す。図14では、任意の電極へ直流電圧を印加し、その電圧の印加を切断するときに、いわゆる電圧の立下り(電圧の解除のとき)のときに減衰波形となるようにしている。これ以外にも、図15のように、任意の電極への印加電圧の立ち上がりと立ち下り両方で減衰波形となるように電圧を印加することも可能である。この場合、第1の電極5へ直流電圧を印加するときに一瞬高い電圧を与えることができるため、粒状の液体の移動レスポンスが良くなるという効果もある。
【0047】
絶縁膜60や撥水膜61に帯電が起こらなければ、粒状の液体22は第1の電極5−1上から第1の電極5−6上に移動する。しかし帯電すると、電圧を印加する第1の電極を切り替えても粒状の液体22はついて行かず、ステッピングモータの脱調のような現象が起こってしまうため、粒状の液体22の位置と動きを確認し、制御しながら電圧を印加する等の対策が必要になる。本実施例によれば、そのようないわゆるクローズドループによる粒状の液体の制御ではなく、オープンループによる粒状の液体の制御が可能になる。
【実施例2】
【0048】
図16に液体搬送基板の構成の例として第1の基板1を示す。第1の基板1上には、第1の電極5と、導電手段としての配線(導線)11及びパッド12が薄膜として堆積された透明導電膜をパターンニングして形成されており、やはり薄膜として堆積された光を透過する絶縁膜60により覆われており、さらに絶縁膜60の表面は光を透過する撥水膜61で覆われている。絶縁膜60と撥水膜61には、薄膜成膜時のマスキングや薄膜成膜後のエッチング等で窓62が加工されているため、パッド12が露出し、外部からの電圧を印加できるようになっている。
【0049】
本実施例では前記に加え、図17に示すように、第1電極5の近傍に制御電極54が設けられている。制御電極54は、第1の電極5と同時にパターンニングされ、窓62の部分でその一部がパッド55として露出している。本実施例での制御電極54は、第1の基板1の導線11、パッド12及び第1の電極5が形成されている面の上側からみて、導線11、パッド12及び第1の電極5が位置する領域と重ならない領域に配置されている。
ここで、この制御電極54は図示したように当該重ならない領域の少なくとも一部に配置されてもよく、またその全部に配置されても良い。また、図示したように粒状の液体22が第1の電極5の配列からなる液体搬送路3上を移動する範囲に重ならないように、かつ、第1の電極5に極力近接するように配置されてもよい。すなわち、制御電極54は、第1の電極5の配列からなる液体搬送路3上を移動する粒状の液体22が接さない領域であってかつ第1の電極5の近傍配置されてもよい。制御電極54はパッド55部分で接地されている。
【0050】
さらに、本実施例で使用している絶縁膜60と撥水膜61は、少なくともどちらか一方が僅かに導電性を持つように成膜されている。また、絶縁膜と撥水膜は、第1の基板と第2の基板の各々の上に形成されているものであるが、そのいずれか側において、僅かに導電性を持つように成膜されていてもよい。また、接地されていてもよい。ここで、僅かに導電性を持つとは、絶縁膜や撥水膜に、金属微粉末やカーボンナノチューブ等の微粉末をパーコレーションの閾値が導電性に変わる程度に添加して得られる導電性のことであり、表面の帯電は接地部に除去することができるが、粒状の液体を搬送するための静電力には影響を及ぼさない程度の僅かな導電性である。それぞれの比抵抗は108から1011Ωcm程度であり、高抵抗であるため、流れる電流はごくわずかであり、第1の電極5に印加された電圧が隣の電極に影響することは無い。
【0051】
制御電極54と導電性を持った絶縁膜60若しくは撥水膜61の役割は、帯電した電荷を絶縁膜60や撥水膜61、及び、制御電極54を通し、パッド55から除去することにある。これにより、実施例1で述べたような交流電圧や減衰波形の電圧を印加することなく帯電を防ぐことができ、粒状の液体22をスムーズに移動する事ができる。そのため、クローズドループによる粒状の液体の制御ではなく、オープンループによる粒状の液体の制御が可能になる。実施例1と実施例2を組み合わせて用いれば、更に帯電防止の効果が上がる。
【0052】
本実施例では、液体搬送基板の構成の例として第1の基板1を有し、実施例1で用いたような第2の基板を用いない構成を示したが、第2の基板として、実施例1で用いた第2の基板の絶縁膜及び撥水膜を上記の絶縁膜と撥水膜に置換えたものを使用してもよい。この場合には、第2の基板の表面も高抵抗であるため、帯電防止の効果をより高めることができる。
【実施例3】
【0053】
以下、実施例1、2に示した液体搬送基板を分析システムに用いた例を示す。本実施例では,試料として血清を用い,基板上で複数の試料を実質的に一方向に順次搬送させ,測定部において透過光量を測定し,試料の濁度を測定する。装置構成を図18に示す。装置は試料ディスクユニット100,搬送基板ユニット200,光学ユニット300,廃液ユニット400から構成されている。試料は試料ディスクユニット100内のピペッタ101により試料ディスクユニット100から搬送基板ユニット200内に分注され,搬送基板ユニット200内で基板に配置された電極に順次電圧を印加することにより搬送され,光学ユニット300により検出後,廃液ユニット400内のシッパー401により搬送基板ユニット200内から廃液タンク402に排出される。
【0054】
試料ディスクユニット100の構成を図19に示す。液体102は容器103の中に収められ,試料ディスク104の円周上に複数配置される。試料ディスク104はモーターにより回転する。試料ディスク104の内周側には前処理ディスク105が設けられ,複数配置された前処理容器106にて試料の希釈を行う。ピペッタ101は上下方向と支柱を中心とした円周方向に移動し,試料ディスク104と前処理ディスク105の回転移動と合わせて,容器103内の液体102を吸引し,前処理容器106内へ吐出,また,前処理容器106から吸引し,搬送基板ユニット200内に液体を吐出する。
【0055】
搬送基板ユニット200としては実施例1または実施例2に示した搬送基板、もしくは実施例1と実施例2とを組み合わせた搬送基板を用いるが、ここでは簡単のため、概略図の図20を用いて説明する。搬送基板ユニット200内には,導入口201(導入口7等に対応),測定部202(測定部4等に対応),排出口203(排出口8等に対応)が配置され,導入口201と排出部203は粒状の液体を搬送する液体搬送路204で結ばれ,途中に測定部202が存在する。ピペッタ101により試料導入口201に分注された液体は,液体搬送路204を排出部203まで搬送される間に,測定部202にて測定される。その後,廃液ユニット400内のシッパー401により廃液タンク402に排出される。
【0056】
実施例1または実施例2に示した搬送基板、もしくは実施例1と実施例2とを組み合わせた搬送基板を用いることにより、粒状の液体の搬送について実施例1または実施例2、もしくは実施例1と実施例2とを組み合わせた場合の各々の効果を有する分析システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】液体搬送基板の構成の例を示す平面図である。
【図2】液体搬送基板の構成の例を示す正面側からの断面図である。
【図3】液体搬送基板の構成の例を示す側面側からの断面図である。
【図4】液体搬送基板の構成の例を示す平面図である。
【図5】パッド領域の一例を第1の基板側から見た部分拡大図である。
【図6】図2と同じ断面を用い、手順を時系列で示した略図である。
【図7】試料中に含まれる成分量検出の方法の例を示す、液体搬送基板の正面側からの断面図である。
【図8】電極に印加する電圧のタイムチャートである。
【図9】図4で示す方式の、別方式配線を示す回路図である。
【図10】図4で示す方式の、別方式配線を示す回路図である。
【図11】電極に印加する電圧のタイムチャートで、交流電圧とバイアス印加の例である。
【図12】電極に印加する電圧のタイムチャートで、交流電圧と直流電圧を切り替えて印加する例である。
【図13】図4で示す方式の、別方式配線を示す回路図である。
【図14】電極に印加する電圧のタイムチャートで、直流電圧と減衰波形電圧を印加する例である。
【図15】電極に印加する電圧のタイムチャートで、直流電圧と減衰波形電圧を印加する例である。
【図16】第1の基板の平面図である。
【図17】第1の基板の平面図である。
【図18】液体搬送基板を分析システムに用いた例である。
【図19】試料ディスクユニット110の構成の例である。
【図20】搬送基板ユニット200の概略図である。
【符号の説明】
【0058】
1…第1の基板、2…第2の基板、3…液体搬送路、4…測定部、5…第1の電極、5−1…第1の電極、5−2…第1の電極、5−3…第1の電極、5−4…第1の電極、5−5…第1の電極、5−6…第1の電極、6…第2の電極、7…導入口、8…排出口、9…スペーサ、10…側壁、11…配線、12…パッド、13…配線、14…パッド、15…配線部材、16…制御装置、17…スイッチ、17−1…スイッチ、17−2…スイッチ、17−3…スイッチ、17−4…スイッチ、17−5…スイッチ、17−6…スイッチ、18…電源、19…液体、20…ディスペンサ、21…空間、22…粒状の液体、23…ディスペンサ、24…廃液、25…光、26…光源、27…受光部、28…計測部、29…減衰波形発生器、51…電極、52…電極、53…中間電極の群、54…制御電極、55…パッド、60…絶縁膜、61…撥水膜、62…窓、100…試料ディスクユニット、101…ピペッタ、102…液体、103…容器、104…試料ディスク、105…前処理ディスク、106…前処理容器、200…搬送基板ユニット、201…導入口、202…測定部、203…排出部、204…液体搬送路、300…光学ユニット、400…廃液ユニット、401…シッパー、402…廃液タンク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板と対向する第2の基板と、
前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、
前記第2の基板上に設けられた第2電極と、
前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、
前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材と、
第1の液体を導入するための導入口と、
前記第1の液体を排出するための排出口と、
前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加するための導電手段とを有することを特徴とする液体搬送基板。
【請求項2】
前記導電手段は、前記駆動電圧にバイアスを印加するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項3】
前記駆動電圧は直流電圧であって、前記導電手段は、前記駆動電圧を印加するときに、前記交流電圧を駆動電圧に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項4】
前記導電手段は、前記起動電圧の印加、印加解除の少なくともいずれかのときに、前記複数の第1電極の少なくとも一部に、減衰波形を持つ交流電圧を印加することを特徴とする請求項2若しくは請求項3記載の液体搬送基板。
【請求項5】
前記第1の層状部材及び前記第2の層状部材は、各々絶縁膜と撥水膜とを有し、前記絶縁膜と前記撥水膜との少なくともいずれかは導電性を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項6】
前記第1の層状部材及び前記第2の層状部材は、各々絶縁膜と撥水膜とを有し、前記絶縁膜と前記撥水膜との少なくともいずれかは、金属微粉末又はカーボンナノチューブを添加されたものであることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項7】
第1の基板と、
前記第1の基板と対向する第2の基板と、
前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、
前記第2の基板上に設けられた第2電極と、
前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、
前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材と、
第1の液体を導入するための導入口と、
前記第1の液体を排出するための排出口と、
前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加し、前記起動電圧の印加、印加解除の少なくともいずれかのときに、前記駆動電圧を印加した第1電極に、減衰波形を持つ交流電圧を印加するための導電手段とを有することを特徴とする液体搬送基板。
【請求項8】
第1の基板と、
前記第1の基板と対向する第2の基板と、
前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、
前記第2の基板上に設けられた第2電極と、
少なくとも1つの前記第1電極の近傍に設けられた、制御電極と、
前記制御電極の少なくとも一部、及び、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、
第1の液体を前記第1の層状部材の上に導入するための導入口と、
前記第1の液体を排出するための排出口と、
前記制御電極を接地電位とし、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部と前記第2電極との間に電圧を印加する導電手段を有することを特徴とする液体搬送基板。
【請求項9】
前記制御電極は、前記第1の基板での前記導電手段と前記第1電極とが位置する領域と重ならない領域の少なくとも一部に配置されることを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項10】
前記導電手段は、前記第1の液体が前記複数の第1電極の配列に沿って搬送されるように前記複数の第1電極に前記電圧を印加するものであり、前記制御電極は、搬送される前記第1の液体の接さない領域に配置されることを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項11】
前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材をさらに有し、前記第1の層状部材及び第2の層状部材の少なくともいずれかは導電性を有することを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項12】
前記第1の層状部材及び第2の層状部材の少なくともいずれかは、金属微粉末又はカーボンナノチューブを添加されたものであることを特徴とする請求項11に記載の液体搬送基板。
【請求項13】
前記導電手段は、前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための前記電圧を印加することを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項14】
前記導電手段は、前記電圧にバイアスを印加するためのものであることを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項15】
前記導電手段は、前記電圧の印加及び印加解除の少なくともいずれかのときに、前記複数の第1電極の少なくとも一部に、減衰波形を持つ交流電圧を印加することを特徴とする請求項8若しくは請求項13もしくは請求項14に記載の液体搬送基板。
【請求項16】
前記電圧は直流電圧であって、前記導電手段は、前記電圧を印加するときに、前記交流電圧を前記電圧に切り替えることを特徴とする請求項13に記載の液体搬送基板。
【請求項17】
第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、
前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、
前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、
前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、
前記電圧印加手段は、前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加することを特徴とする分析システム。
【請求項18】
第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、
前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、少なくとも1つの前記第1電極の近傍に設けられた制御電極と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、
前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、
前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、
前記電圧印加手段は、前記制御電極を接地電位とし、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加することを特徴とする分析システム。
【請求項19】
前記第1の液体を供給する手段は、第1の液体を収める容器と、前記第1の液体を吸引及び吐出するピペットとを具備することを特徴とする請求項17若しくは18に記載の分析システム。
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板と対向する第2の基板と、
前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、
前記第2の基板上に設けられた第2電極と、
前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、
前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材と、
第1の液体を導入するための導入口と、
前記第1の液体を排出するための排出口と、
前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加するための導電手段とを有することを特徴とする液体搬送基板。
【請求項2】
前記導電手段は、前記駆動電圧にバイアスを印加するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項3】
前記駆動電圧は直流電圧であって、前記導電手段は、前記駆動電圧を印加するときに、前記交流電圧を駆動電圧に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項4】
前記導電手段は、前記起動電圧の印加、印加解除の少なくともいずれかのときに、前記複数の第1電極の少なくとも一部に、減衰波形を持つ交流電圧を印加することを特徴とする請求項2若しくは請求項3記載の液体搬送基板。
【請求項5】
前記第1の層状部材及び前記第2の層状部材は、各々絶縁膜と撥水膜とを有し、前記絶縁膜と前記撥水膜との少なくともいずれかは導電性を有することを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項6】
前記第1の層状部材及び前記第2の層状部材は、各々絶縁膜と撥水膜とを有し、前記絶縁膜と前記撥水膜との少なくともいずれかは、金属微粉末又はカーボンナノチューブを添加されたものであることを特徴とする請求項1に記載の液体搬送基板。
【請求項7】
第1の基板と、
前記第1の基板と対向する第2の基板と、
前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、
前記第2の基板上に設けられた第2電極と、
前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、
前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材と、
第1の液体を導入するための導入口と、
前記第1の液体を排出するための排出口と、
前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加し、前記起動電圧の印加、印加解除の少なくともいずれかのときに、前記駆動電圧を印加した第1電極に、減衰波形を持つ交流電圧を印加するための導電手段とを有することを特徴とする液体搬送基板。
【請求項8】
第1の基板と、
前記第1の基板と対向する第2の基板と、
前記第1の基板上に設けられた複数の第1電極と、
前記第2の基板上に設けられた第2電極と、
少なくとも1つの前記第1電極の近傍に設けられた、制御電極と、
前記制御電極の少なくとも一部、及び、前記第1電極を覆うように設けられた第1の層状部材と、
第1の液体を前記第1の層状部材の上に導入するための導入口と、
前記第1の液体を排出するための排出口と、
前記制御電極を接地電位とし、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部と前記第2電極との間に電圧を印加する導電手段を有することを特徴とする液体搬送基板。
【請求項9】
前記制御電極は、前記第1の基板での前記導電手段と前記第1電極とが位置する領域と重ならない領域の少なくとも一部に配置されることを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項10】
前記導電手段は、前記第1の液体が前記複数の第1電極の配列に沿って搬送されるように前記複数の第1電極に前記電圧を印加するものであり、前記制御電極は、搬送される前記第1の液体の接さない領域に配置されることを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項11】
前記第2電極を覆うように設けられた第2の層状部材をさらに有し、前記第1の層状部材及び第2の層状部材の少なくともいずれかは導電性を有することを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項12】
前記第1の層状部材及び第2の層状部材の少なくともいずれかは、金属微粉末又はカーボンナノチューブを添加されたものであることを特徴とする請求項11に記載の液体搬送基板。
【請求項13】
前記導電手段は、前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための前記電圧を印加することを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項14】
前記導電手段は、前記電圧にバイアスを印加するためのものであることを特徴とする請求項8に記載の液体搬送基板。
【請求項15】
前記導電手段は、前記電圧の印加及び印加解除の少なくともいずれかのときに、前記複数の第1電極の少なくとも一部に、減衰波形を持つ交流電圧を印加することを特徴とする請求項8若しくは請求項13もしくは請求項14に記載の液体搬送基板。
【請求項16】
前記電圧は直流電圧であって、前記導電手段は、前記電圧を印加するときに、前記交流電圧を前記電圧に切り替えることを特徴とする請求項13に記載の液体搬送基板。
【請求項17】
第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、
前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、
前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、
前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、
前記電圧印加手段は、前記複数の第1電極に交流電圧を印加し、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部を介して前記第1の液体の少なくとも一部に、第1の液体を駆動するための駆動電圧を印加することを特徴とする分析システム。
【請求項18】
第1の液体を供給する手段と、第2の液体を供給する手段とを具備する第1のユニットと、
前記第1の液体を供給する手段から吐出された前記第1の液体を導入する導入部と、前記第1の液体を導出する排出口と、複数の第1電極を備えてかつ前記導入部と前記排出口とをつなぐ液体搬送路と、少なくとも1つの前記第1電極の近傍に設けられた制御電極と、前記液体搬送路の少なくとも一部に設けられた測定部と、前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加する電圧印加手段を具備する第2のユニットと、
前記測定部で検出するための検出系を具備する第3のユニットと、
前記排出口から液体を排出するための第4のユニットとを有し、
前記電圧印加手段は、前記制御電極を接地電位とし、かつ前記複数の第1電極の少なくとも一部に電圧を印加することを特徴とする分析システム。
【請求項19】
前記第1の液体を供給する手段は、第1の液体を収める容器と、前記第1の液体を吸引及び吐出するピペットとを具備することを特徴とする請求項17若しくは18に記載の分析システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−337026(P2006−337026A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158298(P2005−158298)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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