説明

液体検出方法及び液体検出システム

【課題】 液体容器内の液体の有無を確実に判定できる液体検出方法及びシステムを提供する。
【解決手段】 本発明は、液体噴射装置で使用される液体容器の内部の液体を液体検出装置を用いて検出する方法であって、液体検出装置の液体供給口及び液体排出口を介したキャビティへの流体の流出入が生じていない状態が所定時間以上にわたって維持された後に液体検出装置の圧電素子に駆動信号を印加して液体の有無を検出する検出工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置で使用される液体容器の内部の液体を検出するための液体検出方法及び液体検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体噴射装置の代表例としては、画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置がある。その他の液体噴射装置としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【0003】
液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置においては、圧力発生室を加圧する圧力発生手段と、加圧されたインクをインク滴として射出するノズル開口と、を有するインクジェット記録ヘッドがキャリッジに搭載されている。
【0004】
インクジェット式記録装置では、インク容器内のインクが流路を介して記録ヘッドに供給され続けることにより、印刷を継続可能に構成されている。インク容器は、例えばインクが消費された時点でユーザが簡単に交換できる、着脱可能なカートリッジとして構成されている。
【0005】
従来、インクカートリッジのインク消費の管理方法としては、記録ヘッドでのインク滴の射出数やメンテナンスにより吸引されたインク量をソフトウエアにより積算してインク消費を計算により管理する方法や、インクカートリッジに液面検出用の電極を取付けることにより実際にインクが所定量消費された時点を管理する方法などがある。
【0006】
しかしながら、ソフトウェアによりインク滴の吐出数やインク量を積算してインク消費を計算上管理する方法には、次のような問題がある。ヘッドの中には吐出インク滴に重量バラツキを有するものがある。このインク滴の重量バラツキは画質には影響を与えないが、バラツキによるインク消費量の誤差が累積した場合を考慮して、マージンを持たせた量のインクをインクカートリッジに充填してある。従って、個体によってはマージン分だけインクが余るという問題が生ずる。
【0007】
一方、電極によりインクが消費された時点を管理する方法は、インクの実量を検出できるので、インク残量を高い信頼性で管理できる。しかしながら、インクの液面の検出をインクの導電性に頼ることになるので、検出可能なインクの種類が限定されてしまったり、電極のシール構造が複雑化してしまうという欠点がある。また、電極の材料としては、通常は導電性が良く耐腐食性も高い貴金属が使用されるので、インクカートリッジの製造コストがかさむ。さらに、2本の電極を装着する必要があるため、製造工程が多くなり、結果として製造コストがかさんでしまう。
【0008】
上記の課題を解決すべく開発された装置が、特開2001−146024号に圧電装置として開示されている。この圧電装置は、液体残量を正確に検出でき、かつ複雑なシール構造を不要としたものであり、液体容器に装着して使用することができる。
【0009】
即ち、特開2001−146024号に記載の圧電装置によれば、圧電装置の振動部に対向する空間にインクが存在する場合とインクが存在しない場合とで、駆動パルスにより強制的に振動させた後の圧電装置の振動部の残留振動(自由振動)に起因して発生する残留振動信号の共振周波数が変化することを利用して、インクカートリッジ内のインク残量を監視することができる。
【0010】
図15は、上述した従来の圧電装置を構成するアクチュエータを示している。このアクチュエータ106は、ほぼ中央に円形状の開口161を有する基板178と、開口161を被覆するように基板178の一方の面(以下、「表面」という。)に配置される振動板176と、振動板176の表面の側に配置される圧電層160と、圧電層160を両方からはさみこむ上部電極164および下部電極166と、上部電極164と電気的に結合する上部電極端子168と、下部電極166と電気的に結合する下部電極端子170と、上部電極164および上部電極端子168の間に配設され両者を電気的に結合する補助電極172と、を有する。
【0011】
圧電層160、上部電極164および下部電極166は、それぞれの本体部としての円形部分を有する。そして、圧電層160、上部電極164および下部電極166のそれぞれの円形部分が、圧電素子を形成している。
【0012】
振動板176は、基板178の表面に、開口161を覆うように形成される。振動板176のうち実際に振動する振動領域は、開口161によって決定される。キャビティ162は、開口161と面する振動板176の部分と基板(キャビティ形成部材)178の開口161とによって形成される。圧電素子とは反対側の基板178の面(以下、「裏面」という。)は、インク容器内方に面している。これにより、キャビティ162は液体(インク)と接触するように構成されている。なお、キャビティ162内に液体が入っても基板178の表面側に液体が漏れないように、振動板176は基板178に対して液密に取り付けられている。
【0013】
そして、上述した従来の技術におけるアクチュエータ106では、圧電素子に駆動パルスを印加して振動部を強制的に振動させた後に生じる振動部の残留振動(自由振動)が、同じ圧電素子によって逆起電力として検出される。そして、インク容器内の液面がアクチュエータ106の設置位置(厳密にはキャビティ162の位置)を通過する前後で振動部の残留振動状態が変化すること利用して、インク容器内のインク残量を検出することができる。
【0014】
また、特開2001−146024号の図6乃至図8には、上部電極及び下部電極の引き出し方向におけるキャビティの長さを、これに直交する方向の長さよりも長くした構成が示されている。
【特許文献1】特開2001−146024号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述した従来のアクチュエータ(圧電装置)106は、図16に示したようにインクカートリッジ180の容器本体181の容器壁に装着され、検出対象のインクを受け入れるキャビティ162をインク容器180内部のインク貯留空間に露出させるように構成されている。
【0016】
ところが、従来のアクチュエータ(圧電装置)106においては、前記の如くインクカートリッジ180内部のインク貯留空間にキャビティ162を露出させるように構成されていたため、振動等によってインクカートリッジ180内部のインクが泡立つと、アクチュエータ106のキャビティ162内に気泡が容易に進入してしまう。このようにキャビティ162に気泡が進入してそこに滞留すると、インクカートリッジ180のインク残量が十分であるにもかかわらず、アクチュエータ106により検出される残留振動の共振周波数が速くなり、液面がアクチュエータ106の位置を通過してインク残量が少なくなったものと誤判定するという問題があった。
【0017】
また、液面の通過タイミングを精度良く検出するためにアクチュエータ106のキャビティ162の寸法を小さくすると、キャビティ162内にインクのメニスカスが形成されやすくなる。このため、インクの消費により液面がキャビティ162の位置を通過したにもかかわらず、キャビティ162の内部にインクが残留することにより、液面がアクチュエータ106の位置を通過しておらずインク残量が十分にあるものと誤判定するという問題があった。
【0018】
上記の問題を解決するためには、本出願人により出願された特願2004−122763号で提案されているように、キャビティにインクを供給するためのインク供給路と、キャビティからインクを排出するためのインク排出路とを液体検出装置に設けることが考えられる。
【0019】
しかしながら、このインク供給路とインク排出路とを持つ液体検出装置においては、以下に述べるような問題があった。
【0020】
つまり、ヘッドクリーニングや印刷動作の最中においてインクカートリッジ内のインクが消費され続けている状態においては、液体検出装置のキャビティの内部に流体(インク及び/又は空気)の流れが生じている。
【0021】
そして、インク残量が少なくなってキャビティの内部を空気が通過する状態になった場合でも、キャビティの壁面に付着したインクが排出されにくいという現象がある。
【0022】
このようにキャビティの壁面にインクが付着した状態でインクの有無を検出しようとすると、本来ならインク無しと判定されるべき状態であるにもかかわらず、インク有りと誤判定されてしまう可能性がある。
【0023】
本発明は、上述した事情を考慮して成されたものであって、液体の有無を確実に判定することができる液体検出方法及び液体検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明は、液体噴射装置で使用される液体容器の内部の液体を液体検出装置を用いて検出する方法であって、前記液体検出装置は、互いに対向する第1面及び第2面を有する振動キャビティ形成基部であって、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが前記第1面側に開口するようにして形成され、前記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、前記振動キャビティ形成基部の前記第2面側に形成された第1電極、前記第1電極に積層された圧電層、及び前記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、前記キャビティに対して液体の供給及び排出を行うための液体供給口及び液体排出口と、を備えている、液体検出方法において、前記液体供給口及び前記液体排出口を介した前記キャビティへの流体の流出入が生じていない無流動状態が所定時間以上にわたって維持された後、前記液体検出装置の前記圧電素子に駆動信号を印加して液体の有無を検出することを特徴とする。
【0025】
また、好ましくは、前記無流動状態が所定時間以上にわたって維持された後、前記液体検出装置により液体の有無を検出する前に、フラッシング操作を行うフラッシング工程をさらに有する。
【0026】
また、好ましくは、前記フラッシング工程において吐出される液体の量は前記キャビティの容積以上である。
【0027】
また、好ましくは、前記所定時間は、ヘッドクリーニングにおける液体吸引動作が終了した時点からの経過時間である。
【0028】
また、好ましくは、前記所定時間は、印刷動作が終了した時点からの経過時間である。
【0029】
また、好ましくは、前記所定時間は2秒以上である。
【0030】
また、好ましくは、前記所定時間の少なくとも一部は、前記液体噴射装置に対して被処理物を所定の位置に供給するための動作時間内に経過する。
【0031】
上記課題を解決するために、本発明は、液体噴射装置で使用される液体容器の内部の液体を検出するための液体検出システムにおいて、前記液体容器に装着された液体検出装置と、前記液体検出装置を用いた液体検出動作を制御する制御手段と、を備え、前記液体検出装置は、互いに対向する第1面及び第2面を有する振動キャビティ形成基部であって、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが前記第1面側に開口するようにして形成され、前記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、前記振動キャビティ形成基部の前記第2面側に形成された第1電極、前記第1電極に積層された圧電層、及び前記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、前記キャビティに対して液体の供給及び排出を行うための液体供給口及び液体排出口と、を有し、前記制御手段は、前記液体供給口及び前記液体排出口を介した前記キャビティへの流体の流出入が生じていない無流動状態が所定時間以上にわたって維持された後、前記液体検出装置の前記圧電素子に駆動信号を印加して液体の有無を検出する検出実行機能を有することを特徴とする。
【0032】
また、好ましくは、前記制御手段は、前記無流動状態が所定時間以上にわたって維持された後、前記液体検出装置により液体の有無を検出する前に、フラッシング操作を行うフラッシング実行機能をさらに有する。
【0033】
また、好ましくは、前記フラッシング操作において吐出される液体の量は前記キャビティの容積以上である。
【0034】
また、好ましくは、前記所定時間は、ヘッドクリーニングにおける液体吸引動作が終了した時点からの経過時間である。
【0035】
また、好ましくは、前記所定時間は、印刷動作が終了した時点からの経過時間である。
【0036】
また、好ましくは、前記所定時間は2秒以上である。
【0037】
また、好ましくは、前記所定時間の少なくとも一部は、前記液体噴射装置に対して被処理物を所定の位置に供給する動作時間内に経過する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、液体検出装置のキャビティの内部に液体が付着していない状態で圧電素子を駆動して液体の有無を検出することができるので、液体の有無を確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の一実施形態による液体検出システム及びこの液体検出システムを用いた液体検出方法ついて図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本実施形態による液体検出方法が適用されるインクジェット式記録装置(液体噴射装置)の概略構成を示し、図1中符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介し、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。
【0041】
キャリッジ1の記録用紙(被処理物)6に対向する側にはインクジェット式記録ヘッド12が搭載され、またその上部には記録ヘッド12にインクを供給するインクカートリッジ7が着脱可能に装着されている。このインクカートリッジ7の内部のインク残量は、本実施形態による液体検出システム及び液体検出方法によって検出される
この記録装置の非印字領域であるホームポジション(図中、右側)にはキャップ部材31が配置されており、このキャップ部材31はキャリッジ1に搭載された記録ヘッドがホームポジションに移動した時に、記録ヘッドのノズル形成面に押し当てられてノズル形成面との間に密閉空間を形成するように構成されている。そして、キャップ部材31の下方には、キャップ部材31により形成された密閉空間に負圧を与えてクリーニング等を実施するためのポンプユニット10が配置されている。
【0042】
そして、キャップ部材31における印字領域側の近傍には、ゴムなどの弾性板を備えたワイピング手段11が記録ヘッドの移動軌跡に対して例えば水平方向に進退できるように配置されていて、キャリッジ1がキャップ部材31側に往復移動するに際して、必要に応じて記録ヘッドのノズル形成面を払拭することができるように構成されている。
【0043】
図2乃至図7は、本実施形態による液体検出システムの一部を構成する液体検出装置60を示した図であり、この液体検出装置60は、図5に示したようにキャビティ板41に振動板42を積層して構成された振動キャビティ形成基部40を有し、この振動キャビティ形成基部40は、互いに対向する第1面40a及び第2面40bを有する。
【0044】
振動キャビティ形成基部40には、検出対象の媒体(インク)を受け入れるためのキャビティ43が、第1面40a側に開口するようにして形成されており、キャビティ43の底面部43aが振動板42にて振動可能に形成されている。換言すれば、振動板42全体のうちの実際に振動する部分は、キャビティ43によってその輪郭が規定されている。
【0045】
図2に示したようにキャビティ43の平面形状は、互いに直交する第1対称軸O1及び第2対称軸O2を有すると共に、第2対称軸O2に沿った長手方向寸法が第1対称軸O1に沿った幅方向寸法よりも長く設定されている。
【0046】
振動キャビティ形成基部40の第2面40b側の両端には、下部電極端子44及び上部電極端子45が形成されている。
【0047】
さらに、振動キャビティ形成基部40の第2面40bには下部電極(第1電極)46が形成されており、この下部電極46は、キャビティ43と略同形で且つキャビティ43よりも大きな寸法にて形成された本体部46aと、この本体部46aから下部電極端子44の方向に延出して下部電極端子44に接続された延出部46bとを有する。下部電極46の本体部46aは、キャビティ43に対応する領域の略全体を覆っている。
【0048】
この下部電極46の本体部46aは、キャビティ43の周縁43aに対応する位置よりも内側に入り込むようにして形成された切欠き部46cを含んでいる。
【0049】
下部電極46の上には圧電層47が積層されており、この圧電層47は、キャビティ43と略同形で且つキャビティ43よりも小さな寸法にて形成されている。図2から分かるように、圧電層47はその全体がキャビティ43に対応する領域の範囲内に収まっている。換言すれば、圧電層47は、キャビティ43の周縁43aに対応する位置を横切って延在する部分をまったく有していない。
【0050】
圧電層47は、キャビティ43と共通する第1対称軸O1及び第2対称軸O2を有しており、下部電極46の切欠き部46cに対応する部分を除いてその略全体が下部電極46の上に積層されている。
【0051】
また、振動キャビティ形成基部40の第2面40b側には補助電極48が形成されている。この補助電極48は、キャビティ43に対応する領域の外側から、キャビティ43の周縁43aに対応する位置を越えてキャビティ43に対応する領域の内部まで延在する。補助電極48の一部は、第1電極46の切欠き部46cの内部に位置して圧電層47の一部を基板40の第2面40b側から支持している。この補助電極48は、好ましくは、下部電極46と同じ材質で且つ同じ厚さを有している。このように補助電極48によって圧電層47の一部を基板40の第2面40b側から支持することによって、圧電層47に段差が生じないようにして機械的強度の低下を防止することができる。
【0052】
圧電層47には、上部電極(第2電極)49の本体部49aが積層されており、この上部電極49は、全体として圧電層47よりも小さな寸法にて形成されている。また、上部電極49は、本体部49aから延出して補助電極48に接続された延出部49bを有している。
【0053】
そして、この液体検出装置60においては、図2及び図6(b)に示したように、上部電極49が、キャビティ43の4つの隅部に対応する部分を切り欠くようにして略十字状に形成され、キャビティ43と共通する第1対称軸O1及び第2対称軸O2を有している。
【0054】
下部電極46、圧電層47、及び上部電極49によって圧電素子が形成されている。上述したように圧電層47は上部電極49と下部電極46とによって挟みこまれる構造となっており、これにより圧電層47は効果的に変形駆動される。
【0055】
図2及び図5から分かるように、上部電極49は補助電極48を介して上部電極端子45に電気的に接続されている。このように補助電極48を介して上部電極49を上部電極端子45に接続することによって、圧電層47及び下部電極46の合計の厚さから生じる段差を、上部電極49と補助電極48との両方によって吸収することができる。このため、上部電極49に大きな段差が生じて機械的強度が低下することを防止することができる。
【0056】
圧電層47と電気的に接続された下部電極46の本体部46aおよび上部電極49の本体部49aのうち、上部電極49の本体部49aの方が小さな寸法にて形成されている。従って、上部電極49の本体部49aが、圧電層47のうちで圧電効果を発生する部分の範囲を決定することになる。
【0057】
圧電層47、上部電極49の本体部49a、及び下部電極46の本体部46aは、それらの中心がキャビティ43の中心と一致している。また、振動板42の振動可能な部分を決定するキャビティ43の中心は、液体検出装置60の全体の中心に位置している。
【0058】
キャビティ43によって規定される振動板42の振動可能な部分、下部電極46の本体部46aのうちのキャビティ43に対応する部分、圧電層47、並びに上部電極49全体のうちのキャビティ43に対応する部分は、液体検出装置60の振動部61を構成する。そして、この液体検出装置60の振動部61の中心は、液体検出装置60の中心と一致する。
【0059】
さらに、図5及び図4に示したように液体検出装置60は、振動キャビティ形成基部40の第1面40aに積層され接合された出入口形成板50を備えている。この出入口形成板50には、キャビティ43に検出対象のインクを供給するインク供給口(液体供給口)51と、キャビティ43から検出対象のインクを排出するインク排出口(液体排出口)52とが形成されている。
【0060】
インク供給口51及びインク排出口52は、キャビティ43に対応する領域の内側にて、キャビティ43の長手方向の両端部に対応する位置に配置されている。また、キャビティ43の長手方向の端縁部において、インク供給口51及びインク排出口52の各縁部が整合している。インク供給口51とインク排出口52とは、互いに同形同大にて形成されている。
【0061】
上述したようにインク供給口51及びインク排出口52をキャビティ43の長手方向の両端部に対応する位置に配置することにより、インク供給口51とインク排出口52との間の距離が大きくなり、液体検出装置60の容器本体への装着が容易となる。また、インク供給口51及びインク排出口52をキャビティ43に対応する領域の内側に配置することにより、液体検出装置60の小型化を図ることができる。
【0062】
液体検出装置60に含まれる部材、特にキャビティ板41、振動板42、及び出入口形成板50は、同一材質で形成されると共に互いに焼成されることによって一体的に形成されている。このように複数の基板を焼成して一体化することによって、液体検出装置60の取り扱いが容易になる。また、各部材を同一材質で形成することによって、線膨張係数の違いによるクラックの発生を防止することができる。
【0063】
圧電層47の材料としては、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、または、鉛を使用しない鉛レス圧電膜、を用いることが好ましい。キャビティ板41の材料としては、ジルコニアまたはアルミナを用いることが好ましい。また、振動板42には、キャビティ板41と同じ材料を用いることが好ましい。上部電極49、下部電極46、上部電極端子45および下部電極端子44は、導電性を有する材料、例えば、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いることができる。
【0064】
図8は、上述した液体検出装置60が装着されたインクカートリッジ(液体容器)70を示しており、このインクカートリッジ70は、内部に貯留したインクを外部に送出するインク送出口(液体送出口)71を有する容器本体72を備えている。
【0065】
液体検出装置60はその全体が容器本体72の外側に装着されており、容器本体72の容器壁には、液体検出装置60のインク供給口51に連通する第1開口73と、インク排出口52に連通する第2開口74とが貫通形成されている。
【0066】
容器本体72の内部は、容器本体72の内部空間全体のうちの主要な部分を構成する主貯留室(第1室)75と、この主貯留室75よりも小さな容積を有する副貯留室(第2室)76とに区画されており、主貯留室75と副貯留室76とは互いに分離されている。副貯留室76は、インク消費時のインクの流れ方向において主貯留室75よりもインク送出口71に近い側に位置すると共に、インク送出口71に連通している。
【0067】
容器本体72の容器壁に形成された第2開口74は、副貯留室76の上端部に連通している。上述したように第2開口74には、液体検出装置60のインク排出口52の出口52bが接続されている。
【0068】
主貯留室75の内部には、密閉された補助流路77が形成されており、この補助流路77の下端側には補助流路入口77aが形成されている。補助流路入口77aは、主貯留室75の内部の下端に位置している。また、補助流路77の上端部に、容器本体72の容器壁に形成された第1開口73が連通しており、この第1開口73が補助流路77の出口を構成している。
【0069】
上述したように液体検出装置60のインク供給口51が第1開口73に連通し、インク排出口52が第2開口74に連通しており、これにより、液体検出装置60のインク供給口51及びインク排出口52が主貯留室75と副貯留室76とを連絡する連絡流路を形成している。
【0070】
そして、インクカートリッジ70内のインクが消費される際には、主貯留室75内のインクは、補助流路入口77aから補助流路77内に流入し、この補助流路77を通って第1開口73へと流れる。第1開口73から流出したインクは、液体検出装置60のインク供給口51からキャビティ43に流入し、キャビティ43を通ってインク排出口52から流出する。インク排出口52から流出したインクは、第2開口74を介して副貯留室76内に流入する。そして、副貯留室76内に流入したインクが、インク送出口71を介してインクジェット式記録装置の記録ヘッド12へ供給される。
【0071】
このように本実施形態においては、副貯留室76を通ってインク送出口71に送られるインクの全量が、事前に液体検出装置60のインク供給口51及びインク排出口52を通過するように構成されている。
【0072】
上述した液体検出装置60を備えたインクカートリッジ70においては、容器本体72にインクが十分に残っており、副貯留室76の内部がインクで満たされている場合には、キャビティ43内はインクによって満たされている。一方、インクカートリッジ7の容器本体72内の液体が消費され、主貯留室75内のインクがなくなると、副貯留室76内の液面が低下し、液体検出装置60のキャビティ43の位置よりも下方まで液面が降下すると、キャビティ43内にインクが存在しない状態となる。
【0073】
そこで、液体検出装置60は、この状態の変化に起因する音響インピーダンスの相違を検出する。それによって、液体検出装置60は、容器本体72にインクが十分に残っている状態であるか、あるいは、ある一定以上のインクが消費された状態であるか、を検知することができる。
【0074】
より具体的には、液体検出装置60において、上部電極端子45および下部電極端子44を介して上部電極49と下部電極46との間に電圧を印加する。すると、圧電層47のうち、上部電極49および下部電極46に挟まれた部分に電界が生じる。この電界によって圧電層47が変形する。圧電層47が変形することによって、振動板42のうちの振動領域(キャビティ43の底面部43aに対応する領域)に、たわみ振動が生じる。このようにして圧電層47を強制的に変形させた後、電圧の印加を解除すると、しばらくは、たわみ振動が液体検出装置60の振動部61に残留する。
【0075】
この残留振動は、液体検出装置60の振動部61とキャビティ43内の媒体との自由振動である。従って、圧電層47に印加する電圧をパルス波形あるいは矩形波とすることで、電圧を印加した後の振動部61と媒体との共振状態を容易に得ることができる。この残留振動は、液体検出装置60の振動部61の振動であり、圧電層47の変形を伴う。このため、残留振動に伴って圧電層47は逆起電力を発生する。この逆起電力は、上部電極49、下部電極46、上部電極端子45および下部電極端子44を介して検出される。このようにして検出された逆起電力によって共振周波数が特定できるので、この共振周波数に基づいてインクカートリッジ7の容器本体72内のインクの有無を検出することができる。
【0076】
図9(a)、(b)は、液体検出装置60に駆動信号を供給して振動部61を強制的に振動させた場合における、液体検出装置60の振動部61の残留振動(自由振動)の波形と残留振動の測定方法とを示している。図9(a)は、液体検出装置60のキャビティ43内にインクがあるときの波形であり、一方、図9(b)は液体検出装置60のキャビティ43内にインクがないときの波形である。
【0077】
図9(a)、(b)において、縦軸は液体検出装置60に加えられる駆動パルス及び液体検出装置60の振動部61の残留振動によって発生した逆起電力の電圧を示し、横軸は経過時間を示す。液体検出装置60の振動部61の残留振動によって、電圧のアナログ信号の波形が発生する。次に、アナログ信号を、信号の周波数に対応するデジタル数値に変換(二値化)する。図9に示した例においては、アナログ信号の4パルス目から8パルス目までの4個のパルスが生じる時間を計測している。
【0078】
より詳細には、液体検出装置60に駆動パルスを印加して振動部61を強制的に振動させた後、残留振動による電圧波形が、予め設定された所定の基準電圧を低電圧側から高電圧側へ横切る回数をカウントする。そして、4カウントから8カウントまでの間をHighとしたデジタル信号を生成し、所定のクロックパルスによって4カウントから8カウントまでの時間を計測する。
【0079】
図9(a)と図9(b)とを比較すると、図9(a)の方が図9(b)よりも4カウントから8カウントまでの時間が長いことがわかる。換言すると、液体検出装置60のキャビティ43におけるインクの有無によって4カウントから8カウントまでの所要時間が異なる。この所要時間の相違を利用して、インクの消費状態を検出することができる。
【0080】
アナログ波形の4カウント目から数えるのは、液体検出装置60の残留振動(自由振動)が安定してから計測をはじめるためである。4カウント目からとしたのは単なる一例であって、任意のカウントから数えてもよい。ここでは、4カウント目から8カウント目までの信号を検出し、所定のクロックパルスによって4カウント目から8カウント目までの時間を測定している。この時間に基いて、共振周波数を求めることができる。クロックパルスは、8カウント目までの時間を測定する必要は無く、任意のカウントまで数えてもよい。
【0081】
図9においては、4カウント目から8カウント目までの時間を測定しているが、周波数を検出する回路構成にしたがって、異なったカウント間隔内の時間を検出してもよい。例えば、インクの品質が安定していてピークの振幅の変動が小さい場合には、検出の速度を上げるために4カウント目から6カウント目までの時間を検出することにより共振周波数を求めてもよい。また、インクの品質が不安定でパルスの振幅の変動が大きい場合には、残留振動を正確に検出するために4カウント目から12カウント目までの時間を検出してもよい。
【0082】
このように液体検出装置60においては、液体検出装置60の装着位置レベル(厳密にはキャビティ43の位置)を液面が通過したか否かについて、液体検出装置60の振動部61を強制的に振動させた後の残留振動の周波数の変化や振幅の変化によって検出することができる。
【0083】
そして、本実施形態においては、上述したようにキャビティ43の4つの隅部に対応する部分を切り欠くようにして上部電極49を略十字状に形成したので、圧電素子に駆動パルスを印可して強制的に変形させた場合でも、キャビティ43の4つの隅部に対応する部分の変形量が小さい。これにより、強制振動時の振動モードと強制振動後の残留振動(自由振動)時の振動モードとが近いモードになる。
【0084】
図10は、本実施形態による液体検出システムを説明するためのブロック図である。図10に示したようにインクジェット式記録装置の制御装置80は、液体検出装置60による液体検出動作を制御する液体検出制御手段81、キャリッジモータ(CRモータ)2を制御するキャリッジモータ制御手段82、ヘッド駆動手段13を制御して記録ヘッド12の動作を制御するヘッド制御手段83、及びポンプ駆動手段14を制御してポンプユニット10の動作を制御するポンプ制御手段84を備えている。
【0085】
そして、本実施形態においては、液体検出装置60及び液体検出制御手段81を含む液体検出システムを用いて、以下のようにしてインクカートリッジ7の内部のインク残量を検出する。
【0086】
すなわち、液体検出制御手段81は、インク供給口51及びインク排出口52を介したキャビティ43への流体(インク及び/又は空気)の流出入が生じていない状態が所定時間、好ましくは2秒以上5秒以下にわたって維持された後に、ヘッド制御手段83を介してヘッド駆動手段13を操作して記録ヘッド12からインク滴を吐出させてフラッシング操作を行う(フラッシング工程)。このフラッシング工程において吐出される液体の量は、キャビティ43の容積以上に設定される。
【0087】
上述したように、フラッシング操作を実施する前にキャビティ43の無流動状態を所定時間にわたって維持することにより、フラッシング操作直前に実施されたインク吸引操作(ヘッドクリーニング)等においてキャビティ43の内部に空気の通路が形成された場合でも、毛細管力によってキャビティ43の内部にインクが充満する。このようにキャビティ43の内部がインクで満たされた状態でフラッシングを実施することにより、キャビティ43の内部のインクをフラッシング操作によって確実に排出することができる。
【0088】
そして、フラッシング工程が終了した後、液体検出装置60の圧電素子に駆動信号を印加してインクの有無を検出する(検出工程)。上述したように先行実施されたフラッシング工程によってキャビティ43の内部のインクが確実に排出されるので、インクカートリッジ7の内部のインク残量が所定値以下になったことを確実に検出することができる。
【0089】
上述の所定時間は、例えば、ヘッドクリーニングにおけるインク吸引動作が終了した時点からの経過時間である。なお、ヘッドクリーニングは、ポンプ制御手段84及びポンプ駆動手段14を用いてポンプユニット10を駆動することにより実施される。
【0090】
また、上述の所定時間は、印刷動作が終了した時点からの経過時間とすることもできる。
【0091】
また、上述の所定時間の少なくとも一部が、インクジェット式記録装置に対して記録用紙6を所定の位置に供給する動作時間内に経過するようにしても良い。このようにすれば、記録用紙6の給排紙のための時間を有効に利用することができる。
【0092】
以上述べたように本実施形態によれば、液体検出装置60のキャビティ43の内部にインクが付着していない状態で圧電素子を駆動してインクの有無を検出することができるので、インクカートリッジ7の内部のインク残量を確実に検出することができる。
【0093】
また、本実施形態における液体検出装置60においては、上部電極49を略十字状に形成することにより、強制振動時の振動モードと強制振動後の残留振動時の振動モードとを近いモードとしたので、キャビティ43の形状を前記の如く細長い形状としたにもかかわらず、検出信号の中の不要振動成分が低減され、これによりインクの有無の判定を確実に行うことができる。
【0094】
また、本実施形態においては、キャビティ43へのインクの供給がインク供給口51を介して行われ、キャビティ43からのインクの排出がインク排出口52を介して行われるので、インクカートリッジ70に液体検出装置60を装着する際には、インクカートリッジ70の容器本体72内のインク収容空間に液体検出装置60のキャビティ43を露出させることなく、インク供給口51を介して容器本体72内のインクをキャビティ43に供給することができる。
【0095】
このため、インクカートリッジ70内のインクの消費時に、液体検出装置60のインク供給口51及びインク排出口52を介してキャビティ43内にインクの流れが生じるように構成することで、もし仮にキャビティ43の内部に気泡が進入したとしても、インクの流れによってキャビティ43内から気泡が押し出される。これにより、キャビティ43内に気泡が滞留することによる液体検出装置60の誤検出を防止することができる。
【0096】
しかも、本実施形態によれば、キャビティ43の形状を円形や正方形ではなく細長い形状としたので、キャビティ43の長手方向の両端部にインク供給口51及びインク排出口52を配置することにより、キャビティ43の内部にインクや気泡が滞留し難くなる。これにより、インクや気泡の排出性を十分に確保することが可能であり、インクの有無の判定を確実に行うことができる。
【0097】
また、本実施形態における液体検出装置60においては、キャビティ43を容器本体72内のインク収容空間に露出させる必要がないので、液面通過時にキャビティ43内にメニスカスが形成されることを防止できる。これにより、キャビティ43内でのインクの残留による液体検出装置60の誤検出を防止することができる。
【0098】
また、本実施形態におけるインクカートリッジ70においては、容器本体72の内部を、互いに分離された主貯留室75と副貯留室76とに区画すると共に、液体検出装置60のインク供給口51及びインク排出口52を介して主貯留室75と副貯留室76とを連絡し、液体検出装置60のキャビティ43を副貯留室76の上端部に配置するようにした。
【0099】
このため、主貯留室75内のインクが無くなった時点を液体検出装置60によって確実に検出することができるので、ユーザーにインクエンドが近づいていることを報知できる。さらに、予め分かっている副貯留室76内のインク量に基づいて、残存インクでの印刷可能枚数等をユーザーに知らせることが可能であり、1ページの途中でインクが無くなって印刷用紙を無駄にしてしまうようなことを防止できる。
【0100】
また、本実施形態におけるインクカートリッジ70においては、密閉された補助流路77を主貯留室75の内部に形成し、補助流路77の補助流路入口77aを主貯留室75の下端に位置させると共に、補助流路77の上端部に液体検出装置60のインク供給口51の入口51bを連通させるようにした。このため、主貯留室75内で発生した気泡は補助流口77の内部に進入し難く、液体検出装置60のキャビティ43への気泡の進入を防止することができる。
【0101】
さらに、本実施形態におけるインクカートリッジ70においては、主貯留室75内のインクがすべて消費されるまで、副貯留室76の内部はインクで満たされた状態にあるので、インクカートリッジ70に振動が加えられた場合でも、主貯留室75内にインクが残っている限りは副貯留室76内で液面が揺れるということがない。従って、液面の揺れによって液体検出装置60が誤検出を起こすことを防止することができる。
【0102】
また、本実施形態における液体検出装置60によれば、振動部61と液体とが接触する範囲が、キャビティ43が存在する範囲に限られているので、液体の検出をピンポイントで行うことが可能であり、これにより、インクレベルを高精度にて検出することができる。
【0103】
また、キャビティ43に対応する領域の略全体を下部電極46の本体部46aで覆うようにしたので、強制振動時の変形モードと自由振動時の変形モードとの相違が小さくなる。また、液体検出装置60の振動部61が液体検出装置60の中心に対して対称な形状であるので、この振動部61の剛性はその中心から見てほぼ等方的となる。
【0104】
このため、構造の非対称性から生じ得る不要な振動の発生が抑制される共に、強制振動時と自由振動時との間の変形モードの相違による逆起電力の出力低下が防止される。これにより、液体検出装置60の振動部61における残留振動の共振周波数の検出精度が向上すると共に、振動部61の残留振動の検出が容易になる。
【0105】
また、キャビティ43に対応する領域の略全体をキャビティ43よりも大きな寸法の下部電極46の本体部46aで覆うようにしたので、製造時における下部電極46の位置ズレに起因する不要振動の発生が防止され、検出精度の低下を防止することができる。
【0106】
また、硬いが脆弱な圧電層47の全体がキャビティ43に対応する領域の内部に配置されており、キャビティ43の周縁43aに対応する位置には圧電層47が存在しない。このため、キャビティの周縁に対応する位置での圧電層のクラックの問題がない。
【0107】
次に、本発明の他の実施形態として、液体検出装置の構成を変更した例について、図11及び図12を参照して説明する。なお、上述した実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0108】
図11に示したように本実施形態における液体検出装置60Aにおいては、キャビティ43の長手方向(第2対称軸O2の延在方向)における圧電層47の寸法が、キャビティ43の長手方向の長さよりも長く設定されている。そして、この圧電層47は、キャビティ43の長手方向においてキャビティ43をその全長にわたって覆うように形成されている。なお、キャビティ43の幅方向(第1対称軸O1の延在方向)においては、圧電層47はキャビティ43よりも小さな寸法にてキャビティ43の内側に形成されている。
【0109】
さらに、本実施形態においては、下部電極46が略長方形に形成されており、キャビティ43の幅方向(第1対称軸O1の延在方向)においては下部電極46が圧電層47よりも大きな寸法を有し、キャビティ43の長手方向(第2対称軸O2の延在方向)においては下部電極46と圧電層47とが共通寸法である。
【0110】
本実施形態においても、上述した実施形態と同様に、不要振動の発生を防止することができると共に、気泡やインクの滞留を防止することができると共に、キャビティ43内にインクが付着していない状態でインクの有無を検出することによりインクカートリッジ7内のインク残量を確実に検出することができる。
【0111】
さらに、本実施形態によれば、圧電層47の長手方向の寸法がキャビティ43の長手方向の寸法よりも大きく設定されているので、圧電層47の形成位置がキャビティ43の長手方向においてずれた場合でも、圧電層47全体のうちの振動に寄与する部分の大きさは変化しない。このため、圧電層47の形成位置のズレによる不要振動の発生を防止することができる。
【0112】
また、上述した各実施形態の一変形例としては、液体検出装置60,60Aにおいて出入口形成板50を省略し、インクカートリッジ70の容器本体72に形成された第1開口73及び第2開口74を、液体検出装置60,60Aのキャビティ43へのインク供給口及びインク排出口として利用するように構成することもできる。この構成においては、容器本体72に形成された第1開口73及び第2開口74が、インクカートリッジ70の一部を構成すると共に液体検出装置60,60Aの一部を構成することになる。
【0113】
図13は、上述した実施形態の変形例として、液体検出装置60が装着されたインクカートリッジ(液体容器)70Aを示しており、このインクカートリッジ70Aは、内部に貯留したインクを外部に送出するインク送出口(液体送出口)71を前面に有する容器本体72を備えている。
【0114】
液体検出装置60は、その全体が容器本体72の外側に配置されると共に、容器本体72の上面上に装着されている。容器本体72の上面を構成する容器壁には、液体検出装置60のインク供給口51に連通する第1開口73と、インク排出口52に連通する第2開口74とが貫通形成されている。
【0115】
容器本体72の内部にはインク貯留室75が形成されており、このインク貯留室75と第1開口73とが第1連絡流路76を介して接続され、第2開口74とインク送出口71とが第2連絡流路77を介して接続されている。
【0116】
図14は、上述した実施形態の他の変形例として、液体検出装置60が装着されたインクカートリッジ(液体容器)70Bを示しており、このインクカートリッジ70Bにおいては、容器本体72の内部が第1貯留室75aと第2貯留室75bとに区画されており、第1貯留室75aと第2貯留室75bとは互いに分離されている。第2貯留室75bは、インク消費時のインクの流れ方向において第1貯留室75aよりもインク送出口71に近い側に位置すると共に、インク送出口71に連通している。
【0117】
液体検出装置60は容器本体72の上面上に装着されている。容器本体72の上面を構成する容器壁には、液体検出装置60のインク供給口51に連通する第1開口73と、インク排出口52に連通する第2開口74とが貫通形成されている。第1貯留室75aと第1開口73とが連絡流路76を介して接続されており、第2開口74は第2貯留室75bに連通している。インク送出口71は容器本体72の底面に設けられている。
【0118】
このように、液体検出装置60を介して第1貯留室75aと第2貯留室75bとが連通しており、第1貯留室75aから第2貯留室75bに送られるインクの全量が液体検出装置60を経由する。
【0119】
図13及び図14に示した各変形例においても、上述した実施形態と同様に、キャビティ43内にインクが付着していない状態でインクの有無を検出することにより、インクカートリッジ7内のインク残量を確実に検出することができる。
【0120】
また、上述した各実施形態における変形例としては、インク供給口51及びインク排出口52を介したキャビティ43へのインクの流出入が生じていない無流動状態が所定時間以上にわたって維持された後、フラッシング工程を行うことなく、液体検出装置60(60A)を駆動してインクの有無を検出するようにしても良い。この場合、インクの無流動状態に関する上記所定時間は、インク検出動作の直前に実施されたヘッドクリーニングにおけるインク吸引動作が終了した時点からの経過時間であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の一実施形態による液体検出方法が適用されるインクジェット式記録装置の概略構成を示した斜視図。
【図2】本発明の一実施形態による液体検出システムの一部を構成する液体検出装置を示した平面図。
【図3】図2に示した液体検出装置を示した底面図。
【図4】図2に示した液体検出装置のA−A線に沿った断面図。
【図5】図2に示した液体検出装置のB−B線に沿った断面図。
【図6】図2に示した液体検出装置の電極及び圧電層の部分の分解図であり、(a)は電極端子のパターンを示し、(b)は上部電極のパターンを示し、(c)は圧電層のパターンを示し、(d)は下部電極及び補助電極のパターンを示す。
【図7】図2に示した液体検出装置の基板の部分の分解図であり、(a)は振動板を示し、(b)はキャビティ板を示し、(c)は出入口形成板を示す。
【図8】図2に示した液体検出装置を備えたインクカートリッジを示した図であり、(a)は側面図、(b)は正面図。
【図9】本発明の一実施形態による液体検出装置における駆動パルス波形及び逆起電力波形を示す図であり、(a)はキャビティ内にインクが存在する場合の波形図、(b)はキャビティ内にインクが存在しない場合の波形図。
【図10】本発明の一実施形態による液体検出システムを説明するためのブロック図。
【図11】本発明の他の実施形態における液体検出装置を示した平面図。
【図12】図11に示した液体検出装置の電極及び圧電層の部分の分解図であり、(a)は電極端子のパターンを示し、(b)は上部電極のパターンを示し、(c)は圧電層のパターンを示し、(d)は下部電極及び補助電極のパターンを示す。
【図13】上記実施形態の一変形例におけるインクカートリッジを備えた側面図。
【図14】上記実施形態の他の変形例におけるインクカートリッジを備えた側面図。
【図15】従来の液体検出装置を示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図、(c)は(a)のC−C線に沿った断面図。
【図16】図15に示した従来の液体検出装置を備えた従来のインクカートリッジの断面図。
【符号の説明】
【0122】
1 キャリッジ
6 記録用紙(被処理物)
7 インクカートリッジ
12 記録ヘッド
13 ヘッド駆動手段
14 ポンプ駆動手段
40 振動キャビティ形成基部
41 キャビティ板
42 振動板
43 キャビティ
43a キャビティの底面部
46 下部電極(第1電極)
47 圧電層
49 上部電極(第2電極)
50 出入口形成板
51 インク供給口(液体供給口)
52 インク排出口(液体排出口)
60、60A 液体検出装置
61 液体検出装置の振動部
70,70A,70B インクカートリッジ(液体容器)
71 インク送出口(液体送出口)
72 容器本体
73 第1開口
74 第2開口
75 主貯留室(第1室)
76 副貯留室(第2室)
77 補助流路
77a 補助流路入口
80 制御装置
81 液体検出制御手段
82 CRモータ制御手段
83 ヘッド制御手段
84 ポンプ制御手段
O1 キャビティの第1対称軸
O2 キャビティの第2対称軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置で使用される液体容器の内部の液体を液体検出装置を用いて検出する方法であって、前記液体検出装置は、互いに対向する第1面及び第2面を有する振動キャビティ形成基部であって、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが前記第1面側に開口するようにして形成され、前記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、前記振動キャビティ形成基部の前記第2面側に形成された第1電極、前記第1電極に積層された圧電層、及び前記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、前記キャビティに対して液体の供給及び排出を行うための液体供給口及び液体排出口と、を備えている、液体検出方法において、
前記液体供給口及び前記液体排出口を介した前記キャビティへの流体の流出入が生じていない無流動状態が所定時間以上にわたって維持された後、前記液体検出装置の前記圧電素子に駆動信号を印加して液体の有無を検出することを特徴とする液体検出方法。
【請求項2】
前記無流動状態が所定時間以上にわたって維持された後、前記液体検出装置により液体の有無を検出する前に、フラッシング操作を行うフラッシング工程をさらに有する請求項1記載の液体検出方法。
【請求項3】
前記フラッシング工程において吐出される液体の量は前記キャビティの容積以上である請求項2記載の液体検出方法。
【請求項4】
前記所定時間は、ヘッドクリーニングにおける液体吸引動作が終了した時点からの経過時間である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体検出方法。
【請求項5】
前記所定時間は、印刷動作が終了した時点からの経過時間である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体検出方法。
【請求項6】
前記所定時間は2秒以上である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体検出方法。
【請求項7】
前記所定時間の少なくとも一部は、前記液体噴射装置に対して被処理物を所定の位置に供給するための動作時間内に経過する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体検出方法。
【請求項8】
液体噴射装置で使用される液体容器の内部の液体を検出するための液体検出システムにおいて、
前記液体容器に装着された液体検出装置と、
前記液体検出装置を用いた液体検出動作を制御する制御手段と、を備え、
前記液体検出装置は、互いに対向する第1面及び第2面を有する振動キャビティ形成基部であって、検出対象の媒体を受け入れるためのキャビティが前記第1面側に開口するようにして形成され、前記キャビティの底面が振動可能に形成されている振動キャビティ形成基部と、前記振動キャビティ形成基部の前記第2面側に形成された第1電極、前記第1電極に積層された圧電層、及び前記圧電層に積層された第2電極を有する圧電素子と、前記キャビティに対して液体の供給及び排出を行うための液体供給口及び液体排出口と、を有し、
前記制御手段は、前記液体供給口及び前記液体排出口を介した前記キャビティへの流体の流出入が生じていない無流動状態が所定時間以上にわたって維持された後、前記液体検出装置の前記圧電素子に駆動信号を印加して液体の有無を検出する検出実行機能を有する、液体検出システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記無流動状態が所定時間以上にわたって維持された後、前記液体検出装置により液体の有無を検出する前に、フラッシング操作を行うフラッシング実行機能をさらに有する請求項8記載の液体検出システム。
【請求項10】
前記フラッシング操作において吐出される液体の量は前記キャビティの容積以上である請求項9記載の液体検出システム。
【請求項11】
前記所定時間は、ヘッドクリーニングにおける液体吸引動作が終了した時点からの経過時間である請求項8乃至10のいずれか一項に記載の液体検出システム。
【請求項12】
前記所定時間は、印刷動作が終了した時点からの経過時間である請求項8乃至10のいずれか一項に記載の液体検出システム。
【請求項13】
前記所定時間は2秒以上である請求項8乃至12のいずれか一項に記載の液体検出システム。
【請求項14】
前記所定時間の少なくとも一部は、前記液体噴射装置に対して被処理物を所定の位置に供給する動作時間内に経過する請求項8乃至13のいずれか一項に記載の液体検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−51814(P2006−51814A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205797(P2005−205797)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】