説明

液体洗浄剤組成物

【課題】低温安定性に優れ、洗浄後乾き際のべたつき感が少なく、使用感が良好であり、かつ起泡性にも優れている身体用液体洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】(a)N−アシル酸性アミノ酸又はその塩 1〜20重量%、(b)炭素数8〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するグリセリルエ−テル 0.1〜15重量%及び、(c)多価アルコ−ル 1〜15重量%を含有する液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗浄剤組成物に関し、特に身体に適した液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
身体洗浄料等の皮膚に直接接する洗浄剤組成物は、皮膚に対する刺激性が低くかつ、良好な起泡性、使用感等が求められている。更に冬場の低温条件下においても安定的に使用できるよう品質の安定性が求められている。
N−アシル酸性アミノ酸塩は皮膚刺激性が低く、起泡性に優れていることが知られており、これらの特性を生かして身体洗浄料への応用が検討されてきた。しかしながら、N−アシル酸性アミノ酸塩の水溶液は低温で結晶が析出し、これを配合した液体洗浄剤組成物は低温での品質安定性の確保が困難であった。この欠点を解決するため、特許文献1では多価アルコ−ルを洗浄剤全量に対して20重量%以上配合することが提案された。更に、特許文献2では多価アルコ−ルと糖類を合わせて洗浄剤全量に対して20〜50重量%配合することにより低温安定性に優れる洗浄剤が得られることが報告されている。
しかし、N−アシル酸性アミノ酸塩の水溶液に多価アルコ−ルを20重量%以上、又は多価アルコ−ルと糖類を合わせて20〜50重量%配合すると、洗浄後のべたつき感が生じ、かつ起泡性も不十分なものしか得られなかった。
一方、特許文献3にはN−アシルアミノ酸又はその塩とグリセリルエーテルを含有した洗浄剤組成物が、起泡性、低刺激性及びすすぎ時の感触に優れることを開示しているが、低温安定性については記載されていない。
【特許文献1】特開2000−87081号公報
【特許文献2】特開2001−140000号公報
【特許文献3】特開2001−114653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、低温安定性に優れ、かつ洗浄後のべたつき感が少なく、使用感が良好で、かつ起泡性にも優れる液体洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(a)N−アシル酸性アミノ酸又はその塩[以下(a)成分ともいう] 1〜20重量%、(b)炭素数8〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するグリセリルエ−テル[以下(b)成分ともいう] 0.1〜15重量%及び、(c)多価アルコ−ル[以下(c)成分ともいう] 1〜15重量%を含有する液体洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の液体洗浄剤組成物は、低温安定性に優れ、洗浄後のべたつき感が少なく、使用感が良好であり、起泡性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で用いる(a)N−アシル酸性アミノ酸又はその塩におけるアミノ酸部分としては、酸性アミノ酸であるグルタミン酸、アスパラギン酸が好ましく、より好ましくはグルタミン酸である。これらのアミノ酸部分はD体、L体あるいはD体とL体の混合物の何れでも良いが、L体が好ましい。
また、アシル基は、起泡性と低温安定性の観点から炭素数8〜18の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有するものが好ましく、このようなアシル基としては、例えばカプリノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ステアロイル基、ココイル基が挙げられ、この内好ましいものとしては、ラウロイル基、ココイル基が挙げられる。
【0007】
(a)成分のN−アシル酸性アミノ酸又はその塩は、酸、それらの塩、あるいは一部が塩の状態で用いられる。これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノ−ルアミン塩が挙げられる。好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩である。
【0008】
(a)成分のN−アシル酸性アミノ酸又はその塩の具体例としては、N−ラウロイルグルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸、N−パルミトイルグルタミン酸、N−ステアロイルグルタミン酸、N−ココイルグルタミン酸、N−ラウロイルアスパラギン酸、N−ココイルアスパラギン酸、N−ミリストイルアスパラギン酸、N−パルミトイルアスパラギン酸、N−ステアロイルアスパラギン酸、等が挙げられ、更にこれらのナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
この内、起泡性と低温安定性の観点から、好ましいものは、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸カリウム、N−ココイルグルタミン酸ナトリウム、N−ココイルグルタミン酸カリウムである。
また、(a)成分のN−アシル酸性アミノ酸又はその塩は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0009】
本発明で用いられる(a)成分のN−アシル酸性アミノ酸又はその塩は、本発明液体洗浄剤組成物中に1〜20重量%含まれる。起泡性の点で1重量%以上が好ましく、低温安定性の点から20重量%以下が好ましい。(a)成分の含有量は、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは1.5〜10重量%、更に好ましくは2〜8重量%である。
【0010】
本発明で用いられる(b)成分のグリセリルエ−テルとしては、起泡性と低温安定性の観点から、炭素数8〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するモノアルキルグリセリルエ−テルが好ましい。ここでのアルキル基としては例えば、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基が挙げられ、好ましくは、炭素数8から10の分岐したアルキル基であり、具体的には2−エチルヘキシル基、イソデシル基が挙げられる。
【0011】
(b)成分のグリセリルエ−テルは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(b)成分のグリセリルエ−テルの含有量は起泡性と低温安定性の観点から液体洗浄剤組成物中に0.1〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.3〜8重量%、更に好ましくは0.3〜5重量%である。
【0012】
本発明の液体洗浄剤組成物に含有される(a)成分と(b)成分の重量比は、起泡性と低温安定性と洗浄後のべたつき感を低減する観点から、(a)/(b)=1〜10とすることが好ましく、2〜6.3とすることがより好ましい。
【0013】
本発明で用いられる(c)成分の多価アルコ−ルとしては、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、グリセリン、ソルビト−ル等が挙げられる。これらの中で、洗浄後のべたつき感を低減する観点から、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル及びグリセリンが好ましい。
(c)成分の多価アルコ−ルは1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(c)成分の多価アルコ−ルの含有量は低温安定性と洗浄後のべたつき感を低減する観点から液体洗浄剤組成物中に1〜15重量%、好ましくは2〜13重量%、より好ましくは3〜10重量%である。
【0014】
本発明の液体洗浄剤組成物は、水を媒体とすることが好ましい。
【0015】
更に、本発明の液体洗浄剤組成物は、通常の身体用液体洗浄剤組成物に用いられる成分、例えばエタノ−ル、イソプロパノ−ル、n−プロパノ−ル等の低級アルコ−ル類; グアーガムなどの植物由来の多糖類、キサンタンガムなどの微生物由来の多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース類、分子内にポリオキシエチレン鎖を有するエステルあるいはエーテル系化合物、アクリル酸重合体あるいはアクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体などのカルボキシビニルポリマー類などの増粘剤; カチオン化セルロースなどのカチオンポリマー、シリコーン化合物及びその誘導体などのコンディショニング成分、エチレングリコールジステアレート等のパール化剤; アルキルポリグリコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン性界面活性剤; アミドプロピルベタイン、アルキルアミンオキシド、ヒドロキスルホベタインなどの両性界面活性剤; アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルの塩などの陰イオン性界面活性剤; ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン性界面活性剤; 染料、顔料等の着色剤; 酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、有機アミン類などのpH調整剤; 塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩類;植物エキス類; 防腐剤; キレート剤; ビタミン剤; 抗炎症剤; 抗ふけ剤; 香料; 紫外線吸収剤; 酸化防止剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で配合することが可能である。
【0016】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は身体洗浄用として用いるのが好ましい。
【0017】
本発明の液体洗浄剤組成物のpH(25℃)は低温安定性と皮膚への刺激性の観点から好ましくは3〜10、より好ましくは4〜9、更に好ましくは5〜8に調整することが望ましい。また、本発明の液体洗浄剤組成物の20倍希釈液のpH(25℃)は、低温安定性と皮膚への刺激性の観点から、3〜10が好ましく、より好ましくは4〜9、特に好ましくは5〜8である。
【0018】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を特定量含んでいるため、起泡性及び低温安定性に優れると共に洗浄後のべたつき感が少なく、使用感が良好であることを同時に達成することができる。
本発明の液体洗浄剤組成物は常法に従って製造することができる。
即ち、(a)成分のN−アシル酸性アミノ酸又はその塩、(b)成分のグリセリルエーテル及び(c)成分の多価アルコールを配合して本発明の液体洗浄剤組成物を得ることができる。(a)成分の配合量は起泡性と低温安定性の観点から、1〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%、より好ましくは、1.5〜10重量%、更に好ましくは、2〜8重量%である。(b)成分の配合量は、起泡性と低温安定性の観点から、0.1〜15重量%、好ましくは、0.2〜10重量%、より好ましくは0.3〜8重量%、更に好ましくは0.3〜5重量%である。(c)成分の配合量は、低温安定性と洗浄後のべたつき感を低減する観点から1〜15重量%、好ましくは2〜13重量%、特に好ましくは3〜10重量%である。また、本発明の液体洗浄剤組成物に配合される(a)成分と(b)成分の重量比は、起泡性と低温安定性と洗浄後のべたつき感を低減する観点から、(a)/(b)=1〜10とすることが好ましく、特に2〜6.3とすることが好ましい。
【実施例】
【0019】
以下、実施例を挙げて更に詳細に説明する。なお、以下の実施例における各成分の配合量は有効分を基準として示した。
【0020】
実施例1
表1に示す組成の液体洗浄剤組成物を常法により製造し、低温安定性、洗浄後のべたつき感、起泡性について評価した。その結果を表1に示す。
【0021】
<低温安定性試験方法と評価基準>
製造した液体洗浄剤組成物を100mLガラス製密閉容器に入れ−5℃で保存した。1ヶ月後目視観察により下記基準で評価した。(初期状態は−5℃で透明であった。)
◎:変化がない。
○:微量の白濁を生じるが25℃に戻すと透明に溶解する。
△:全体に白濁を生じるが25℃に戻すと透明に溶解する。
×:結晶析出又は、分離が生じ25℃に戻しても溶解しない。
【0022】
<洗浄後のべたつき感の試験方法と評価基準>
調製した液体洗浄剤組成物を用いて、健常者男女各5名のパネリストにより、下記の条件で手を洗浄しペーパードライ後、べたつき感を官能的に下記基準で評価した。洗浄条件(液体洗浄剤組成物各1mL/回、洗浄15秒、すすぎ15秒)。
4:べたつきがなく感触が極めて良好
3:殆どべたつきがなく感触は良好
2:ややべたつき感触はやや不良
1:べたついて感触が不良
【0023】
結果はパネリスト10名の平均値(小数点以下2桁目を四捨五入)を以下の基準により表した。
◎:3.3〜4.0
○:2.5〜3.2
△:1.8〜2.4
×:1.0〜1.7
【0024】
<起泡性の試験方法と評価基準>
(a)成分が有効分で0.5重量%となるよう液体洗浄剤組成物を希釈し、この希釈液を、1000mLメスシリンダ−に100ml(液温40℃)注入する。次いでこの希釈液中に、直径5cmの4枚攪拌羽根を設置し、1000r/minで30秒間攪拌し、10秒間静置した後に生じた泡の体積(mL)を測定して泡立ち量とし、下記基準で評価した。
◎:泡立ち量150mL以上
○:泡立ち量100mL〜150mL未満
△:泡立ち量50mL〜100mL未満
×:50mL未満
【0025】
【表1】

【0026】
本発明品は低温安定性に優れて、洗浄後の乾き際のべたつき感がなく、感触が良好である。又、起泡性にも優れていることが判る。比較品は低温安定性、洗浄後乾き際のべたつき感及び起泡性の全てを満足するものではなかった。
【0027】
実施例2 (ハンドソ−プ)
以下に示す組成のハンドソ−プを常法により製造した。水酸化ナトリウムでpHを調整し、6.0(25℃)とした。
【0028】
(成分) (重量%)
N−ココイル−L−グルタミン酸ナトリウム* 6.0
2−エチルヘキシルグリセリルエ−テル** 1.0
1,3−ブチレングリコ−ル 7.0
アスナロエキス 0.1
エタノ−ル 2.0
香料 0.01
精製水 バランス
計 100
*:アミソフトCS−11(F)〔味の素(株)製〕
**:〔花王(株)製〕
【0029】
得られたハンドソ−プは低温安定性に優れ、洗浄後のべたつき感がなく、感触が良好であった。又起泡性にも優れているものであった。
【0030】
実施例3 (ボディシャンプ−)
以下に示す組成のボディシャンプ−を常法により製造した。水酸化カリウムでpHを調整し、6.2(25℃)とした。
【0031】
(成分) (重量%)
N−ラウロイル−L−グルタミン酸カリウム* 8.0
n−オクチルグリセリルエ−テル** 2.0
プロピレングリコ−ル 5.0
グリセリン 3.0
ラウリルジメチルアミンオキサイド*** 0.5
エチレングリコールジステアレート 1.5
ヒドロキシエチルセルロ−ス 0.5
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.1
香料 0.01
精製水 バランス
計 100
*:アミソフトLK11−(F)〔味の素(株)製〕
**:〔花王(株)製〕
***:アンヒトール20N〔花王(株)製〕
【0032】
得られたボディシャンプ−は低温安定性に優れ、洗浄後のべたつき感はなく、感触が良好であった。又起泡性にも優れているものであった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の液体洗浄剤組成物は、低温安定性に優れ、洗浄後乾き際のべたつき感が少なく、使用感が良好であり、かつ起泡性にも優れているため身体用液体洗浄剤組成物として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)N−アシル酸性アミノ酸又はその塩 1〜20重量%、(b)炭素数8〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するグリセリルエ−テル 0.1〜15重量%及び、(c)多価アルコ−ル 1〜15重量%を含有する液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(a)成分が、炭素数8〜18の飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖のアシル基を有するN−アシルグルタミン酸又はその塩である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)成分のN−アシル酸性アミノ酸の塩が、ナトリウム塩、カリウム塩及びトリエタノ−ルアミン塩からなる群より選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(c)成分の多価アルコ−ルが、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、グリセリン及びソルビト−ルからなる群より選ばれる1種以上である請求項1〜3の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
(a)成分と(b)成分の重量比が、(a)/(b)=1〜10である請求項1〜4の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2008−189869(P2008−189869A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27868(P2007−27868)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】